説明

細胞電位測定デバイスとそれに用いる基板、細胞電位測定デバイス用基板の製造方法

【課題】細胞の貫通孔との密着性を高め、細胞電位測定デバイスの測定精度を向上させる。
【解決手段】上記課題を解決するため本発明の細胞電位測定デバイス用基板は、第1面と前記第1面に対向する第2面とを有し、(100)面配向のダイヤモンド構造を有する単結晶の基板15からなり、前記第1面に凹部20が形成されるとともに、前記凹部20から前記第2面に向けて貫通孔21が形成され、前記凹部20は前記貫通孔21の開口部から外周へ広がり、湾曲して前記第1面に繋がる内壁を備え、前記貫通孔21の直径が0μmより大きく3μm以下であるとした。
これにより凹部20内壁の表面粗さを低減し、細胞と貫通孔21との密着性を高めることが出来、その結果細胞電位測定デバイス11の測定精度を向上させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の電気生理活動を測定するための細胞電位測定デバイスとそれに用いる基板、および細胞電位測定デバイス用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッチクランプ法は、細胞の電気的活動を指標にして細胞膜に存在するイオンチャネルの機能を解明したり、薬品をスクリーニング(検査)したりする従来の方法の一つである。パッチクランプ法では、マイクロピペットの先端部分で細胞膜の微小部分(パッチ)を軽く吸引する。そしてマイクロピペットに設けられた微小電極プローブを用いて、固定された膜電位においてパッチを横切る電流を測定する。これにより、パッチに存在する1個または少数個のイオンチャネルの開閉の様子を電気的に計測する。この方法は、細胞の生理機能をリアルタイムで調べることのできる数少ない方法の一つである。
【0003】
しかし、パッチクランプ法はマイクロピペットの作製や操作に特殊な技術、技能を必要とし、一つの試料の測定に多くの時間を要する。そのため、大量の薬品候補化合物を高速でスクリーニングする用途には適していない。これに対し近年、微細加工技術を利用した平板型の微小電極プローブが開発されている。このような微小電極プローブは個々の細胞についてマイクロピペットの挿入を必要としない自動化システムに適している。以下にその例を説明する。
【0004】
例えば特許文献1は、細胞保持基板に設けられた複数の貫通孔の下方に配置した電極で、貫通孔の開口部に接着された被験体細胞の電位依存性のイオンチャネル活性を測定する技術を開示している。また近年、シリコン酸化物製の細胞保持基板の内部に2.5μmの貫通孔を形成し、この貫通孔にヒト培養細胞株の一種であるHEK293細胞を保持させて高い密着性を確保して高精度に細胞外電位を測定する技術も開示されている。
【0005】
特許文献2は図27に示す細胞電位測定デバイス1を開示している。細胞電位測定デバイス1は基板2と、基板2の上方に配置された電極層3とを有する。基板2の上面には凹部4が形成され、凹部4の下部から基板2の下面まで貫通する貫通孔5が設けられている。電極層3の内部には第1電極6が配置され、貫通孔5の内部には第2電極7が配置されている。さらに第2電極7は、配線8を経て信号検出部に連結されている。
【0006】
次に細胞電位測定デバイス1の動作方法について説明する。まず、電極層3内に被験体細胞(以下、細胞)10と電解液9とを注入する。細胞10は凹部4によって捕捉され、保持される。測定の際に細胞10は貫通孔5の下方から吸引ポンプなどで吸引され、貫通孔5の開口部に密着した状態で保持される。すなわち、貫通孔5がガラスピペットの先端穴と同様の役割を果たす。細胞10のイオンチャネルの機能性や薬理反応などは、反応前後の第1電極6と第2電極7との間の電圧、あるいは電流を測定し、細胞10の内外の電位差を求めることによって分析される。なお、上記のように凹部4を設けることによって、機械的強度を確保するために厚い基板2を用いても貫通孔5の長さは小さくなり、加工が容易になる。また基板2の下方からの細胞10に対する吸引力が高まる。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、下記の特許文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2002−518678号公報
【特許文献2】国際公開第02/055653号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらドライエッチングなどを用いた従来の技術では、基板2に凹部4と貫通孔5とを加工している間、どの程度加工が進んでいるかを把握できない。そのため凹部4や貫通孔5の深さを高精度に管理できない。その結果、貫通孔5の長さがばらつきやすく、細胞10を貫通孔5に的確に密着させることができないことがある。細胞10を吸引する際、貫通孔5の長さによっては、細胞10に掛かる圧力が不足する。結果として細胞10が破損する、あるいは細胞10と貫通孔5との密着性(シール抵抗)が低下し、細胞電位測定デバイス1の測定精度が低くなることがある。
【0010】
また凹部4を形成する際、凹部4の内壁の、特に貫通孔5の周囲の表面粗さが増大する。そしてこの現象は、貫通孔5を形成するために基板2の上面に開口径が3μm以下のマスクホールを有するレジストマスクを設け、このレジストマスクを介して基板2をドライエッチングして貫通孔5を形成する場合に特に顕著である。また、凹部4を形成する場合、水平方向のエッチング速度が深さ方向のエッチング速度より速く、凹部4の中間で段差が形成されるなど、凹部4の形状対称性は低い。
【0011】
これらの原因についてはまだ明らかとなっていないが、例えば微細なマスクホールからエッチングガスを凹部4の内部に充填するとエッチングガスが均一に拡散しないことに起因すると考えられる。このように凹部4の表面粗度は大きく、形状の対称性が低い。これも一因となって細胞10と貫通孔5との密着性(シール抵抗)が低下し、細胞電位測定デバイス1の測定精度が低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、貫通孔の深さのばらつきを低減させ、測定精度が向上した細胞電位測定デバイスとそれに用いる基板、細胞電位測定デバイス用基板の製造方法である。本発明の細胞電位測定デバイスは、基板と第1電極槽と第1電極と第2電極槽と第2電極とを有する。第1電極槽は基板の上方に、第2電極槽は基板の下方にそれぞれ配置されている。第1電極は第1電極槽の内部に、第2電極は第2電極槽の内部にそれぞれ配置されている。基板は(100)面配向または(110)面配向のダイヤモンド構造を有する単結晶板からなる。基板は凹部が形成された第1面とこの第1面に対向する第2面を有する。また凹部から第2面に向けて貫通孔が形成されている。凹部は貫通孔の開口部から外周へ広がり、湾曲して第1面に繋がる内壁を有する。貫通孔の直径は0μmより大きく3μm以下である。
【0013】
このような基板は以下のようにして作製される。すなわち、上記のような単結晶板材の第1面にフォトマスクを用いてマスクホールを有するレジストマスクを形成し、第1面にドライエッチングにより凹部を形成する。そして凹部から第2面までドライエッチングにより基板を貫通させ、マスクホールと同開口径を有する貫通孔を設ける。
【発明の効果】
【0014】
これにより、貫通孔の長さのばらつきを低減し、細胞電位測定デバイスの測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1による細胞電位測定デバイスの断面図
【図2】図1に示す細胞電位測定デバイスにおけるチップの斜視図
【図3】図2に示すチップの断面図
【図4】図3に示すチップの拡大断面図
【図5】図2に示すチップの製造ステップを示す断面図
【図6】図2に示すチップの、図5に続く製造ステップを示す断面図
【図7】図2に示すチップの、図6に続く製造ステップを示す断面図
【図8】図2に示すチップの、図7に続く製造ステップを示す断面図
【図9】図2に示すチップの、図8に続く製造ステップを示す断面図
【図10A】図1に示す細胞電位測定デバイスにおける基板の走査型電子顕微鏡観察像を示す図
【図10B】図10Aに示す走査型電子顕微鏡観察像の模式図
【図11】本発明の実施の形態1による細胞電位測定デバイスの基板である、(100)面配向の単結晶シリコン板における(111)面配向の位置を示す模式図
【図12】本発明の実施の形態2による細胞電位測定デバイスにおけるチップの斜視図
【図13】図12に示すチップの断面図
【図14】本発明の実施の形態2による細胞電位測定デバイスの基板である、(110)面配向の単結晶シリコン板における(111)面配向の位置を示す模式図
【図15】本発明の実施の形態3による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図
【図16】図15に示すチップの製造ステップを示す断面図
【図17】図15に示すチップの、図16に続く製造ステップを示す断面図
【図18】図15に示すチップの、図17に続く製造ステップを示す断面図
【図19】図15に示すチップの、図18に続く製造ステップを示す断面図
【図20】図15に示すチップの、図19に続く製造ステップを示す断面図
【図21】図15に示すチップの、図20に続く製造ステップを示す断面図
【図22】本発明の実施の形態4による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図
【図23】本発明の実施の形態5による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図
【図24】図23に示すチップの拡大断面図
【図25】本発明の実施の形態6による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図
【図26】図25に示すチップの拡大断面図
【図27】従来の細胞電位測定デバイスの断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお各実施の形態において先行する実施の形態と同様の構成をなすものには同じ符号を付して説明し、詳細な説明を省略する場合がある。また本発明は以下の各実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による細胞電位測定デバイスの断面図である。図2は図1に示す細胞電位測定デバイスにおけるチップの斜視図である。図3は図2に示すチップの断面図である。図4は図3に示すチップの拡大断面図である。細胞電位測定デバイス11は、ウェルプレート12と、ウェルプレート12の下面に配置されたチッププレート13と、チッププレート13の下面に配置された流路プレート14とを有する。
【0018】
チッププレート13の開口部には基板15と基板15の下面から起立した側壁22Aとを有するチップ22が挿入され、基板15の上方には第1電極槽16が設けられている。第1電極槽16の内部であって、チッププレート13の上面には第1電極17が配置されている。またチッププレート13の下方には流路プレート14との間に第2電極槽18が設けられている。第2電極槽18の内部であって、チッププレート13の下面には第2電極19が配置されている。
【0019】
図2、図3に示すように、基板15の上面(第1面)には凹部20が形成され、凹部20の最深部から基板15の下面(第2面)に向けて貫通孔21が垂直に形成されている。すなわち、基板15は第1面とこの第1面に対向する第2面とを有し、第1面に凹部20が形成されるとともに、凹部20から第2面に向けて貫通孔21が形成されている。
【0020】
凹部20は貫通孔21の開口部を中心にその外周へ広がり、上方に向けて滑らかに湾曲して立ち上がる内壁を有する略半球形状に形成されている。貫通孔21の内壁の表面粗度は、凹部20の内壁の表面粗度よりも大きい。
【0021】
基板15はダイヤモンド構造を有するシリコンの単結晶板であり、面方位が(100)である。図3における矢印Bは(100)面配向の法線ベクトルを示している。基板15の厚みは約20μmである。なお、(100)面配向は、結晶構造の対称性によって等価となる(010)面配向、(001)面配向を含む。
【0022】
凹部20の開口部の直径は約30μmであり、貫通孔21の最小開口径は3μmである。凹部20は略半球形状を有するため、凹部20の深さは約15μmであり、貫通孔21の長さは約5μmである。
【0023】
貫通孔21の最小開口径と凹部20の開口部の直径とは、被験体である細胞25の大きさ、形状、性質によって決定される。細胞25が5〜50μm程度の大きさの場合、細胞25と貫通孔21との密着性を高く維持するためには、貫通孔21の最小開口径を0μmより大きく3μm以下とすることが望ましい。なお、第1電解液23を吸引しにくい場合は、最小開口径を0.1μm以上にすると流動性が向上するため好ましい。また貫通孔21の長さは、後述のように、細胞25を貫通孔21に的確に吸引するため、吸引時の圧力に応じて設定される。本実施の形態では、貫通孔21の長さは2μm〜10μm程度に設定されている。
【0024】
次に細胞電位測定デバイス11の動作について説明する。図4に示すように、まず第1電極槽16に細胞25と第1電解液23を満たし、第2電極槽18には第2電解液24を満たしておく。
【0025】
そして基板15の下方を減圧するか、上方を加圧することにより、細胞25と第1電解液23とを貫通孔21に引き付ける。この時、細胞25は凹部20に捕捉され、貫通孔21の開口部を塞ぐように保持される。その後、減圧または加圧により細胞25を凹部20に保持したまま、保持されない細胞を生理食塩水で洗い流して取り除く。
【0026】
なお、細胞25が哺乳類筋細胞の場合、第1電解液23としては、例えばカリウムイオン(K+)を155mM(mmol/dm3)、ナトリウムイオン(Na+)を12mM、塩素イオン(Cl-)を4.2mM添加した水溶液を用い、第2電解液24としては、K+を4mM、Na+を145mM、Cl-を123mM添加した水溶液を用いる。なお、第1電解液23と第2電解液24とは、本実施の形態のように異なる組成のものを用いてもよく、同じものを用いてもよい。
【0027】
次に、基板15の下方から吸引するか、あるいは基板15の下方からナイスタチンなどの薬剤を投入し、細胞25に微細小孔を形成する。その後、細胞25に化学的刺激、あるいは物理的刺激を付与する。化学的刺激としては、化学薬品、毒物、物理的刺激としては機械的変異、光、熱、電気、電磁波などが挙げられる。細胞25がこれらの刺激に対して活発に反応する場合、細胞25はその細胞膜にあるイオンチャネルを通じて各種イオンを放出あるいは吸収する。すると、細胞25を通るイオン電流が発生し、細胞25内外の電位勾配が変化する。この変化を反応前後の第1電極17と第2電極19との間の電圧、あるいは電流を測定することによって検出する。
【0028】
次に、本発明の実施の形態における細胞電位測定デバイス11の製造方法に関する発明について図5〜図9を用いて説明する。図5〜図9はそれぞれ図2に示すチップの製造ステップを示す断面図である。
【0029】
まず図5に示すように、(100)面配向した単結晶シリコン板材からなるチップ基板26の下面にレジストマスク27を形成する。次に、図6のようにチップ基板26の下面から所定の深さだけエッチングし、上面に基板15を有するチップ22を形成する。その後、レジストマスク27を除去する。
【0030】
次に、図7に示すように基板15の上面(第1面)にレジストマスク28を形成する。このとき、レジストマスク28のマスクホール29の形状は、図3の貫通孔21の開口部の形状とほぼ同じになるように設計しておく。本実施の形態では、貫通孔21の最小開口径を3μmとするため、マスクホール29の開口径も3μmとする。またレジストマスク28はマスクホール29の形状が変わらないよう、エッチングされにくい材料で構成することが好ましい。具体的にはシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコンオキシ窒化物またはこれらの混合物を用いることが望ましい。
【0031】
その後、図8のように、ドライエッチング法により、基板15の上面に凹部20を形成する。基板15がシリコンである場合、エッチングを促進するエッチングガスとしてSF6またはCF4またはNF3またはXeF2、またはこれらのうち2種以上の混合ガスのいずれかを用いることができる。これらはシリコンのエッチングを深さ方向だけでなく、水平方向へのエッチングも促進する作用があるため、基板15を半球形状の碗型にエッチングする。
【0032】
次に、図9に示すようにレジストマスク28を配置した状態で、凹部20の最深部から基板15の下面(第2面)までを垂直方向に貫く貫通孔21を形成する。貫通孔21を形成する際にはエッチングを促進する前述のエッチングガス(SF6、CF4、NF3、XeF2の少なくともいずれか一つ)とエッチングを抑制するガスとを交互に用いてドライエッチング加工を行う。エッチングを抑制するガスとしてはCHF3、C48、あるいはこれらの混合ガスを用いることができる。このようなガスを、エッチングされた壁面に吹き付けると、その表面にCF2のポリマーである保護膜が形成される。そのため、貫通孔21を凹部20の最深部から基板15の下面に向けて垂直に進行させることができる。
【0033】
以上のように貫通孔21を形成した後、レジストマスク28を除去すれば、図10Aの走査型電子顕微鏡観察像と図10Bの模式図に示すような凹部20と貫通孔21とが設けられた基板15が完成する。なお、図10Aは、基板15の表面より30°の角度からの観察結果である。
【0034】
なお基板15を斜めに傾けた状態で前述のようなエッチング加工をすることにより、貫通孔21を基板15の下面に向けて垂直に形成する以外に、貫通孔21の方向に傾斜をつけることができ、このようにしてもよい。
【0035】
以上のように貫通孔21を形成した後、図1に示すように、チッププレート13の上面に第1電極17を、下面に第2電極19を金属蒸着や無電解めっきなどでパターニングする。なお、第1電極17、第2電極19は、チップ22毎に形成してもよく、複数のチップ22と共有させてもよい。
【0036】
次に接着剤を用いて、チッププレート13の上面にウェルプレート12を貼り付けるとともに、チッププレート13の開口部にチップ22を実装する。そしてチッププレート13の下面に流路プレート14を貼り付ける。このようにして基板15の上方に第1電極槽16を、基板15の下方に第2電極槽18をそれぞれ配置して細胞電位測定デバイス11が完成する。
【0037】
本実施の形態では図10Aに示すように、基板15に(100)面配向のダイヤモンド構造のシリコン単結晶板を用いている。そのため、凹部20をドライエッチングで形成しても凹部20の表面の凹凸が少なくなり、エッチングが均一に進む。その結果、形成された凹部20は貫通孔21の開口部を中心とした対称性に優れた形状を有する。これにより、凹部20の深さは、外観から測定できる凹部20の開口径から容易に算出することができる。そして凹部20の深さと基板15の厚みとから貫通孔21の長さを算出できる。その結果、貫通孔21の長さのばらつきを低減させて、細胞電位測定デバイス11の測定精度を向上することができる。
【0038】
また上述のように凹部20内壁の表面粗さが低減する。そのため、平滑な凹部20に細胞25を捕捉することによって、貫通孔21と細胞25との密着性(シール抵抗)を高めることができる。結果として細胞電位測定デバイス11の測定精度を向上させることができる。
【0039】
ここで凹部20の内壁の表面粗さを低減できる理由を、図11を用いて説明する。図11は本実施の形態で用いた(100)面配向の単結晶シリコン板からなる基板15の模式図である。ベクトルAは(100)面配向の基板15における(111)面配向の法線ベクトルを示しており、ベクトルBは(100)面配向の法線ベクトルを示している。
【0040】
ベクトルAは基板15の上面に対して35.3°の傾きを有し、基板15の上面に対し、54.7°の角度で(111)面配向を有している。基板15はこのようなベクトルAを中心Oから同心半球状に均等な位置に有している。
【0041】
基板15を形成するシリコンはダイヤモンド結晶構造を有し、どのシリコン原子も4個の結合肢で互いに結びついている。そしてこの(111)面配向はシリコン原子密度が最も高く、またシリコン同士の結合肢は3個が基板15表面から下部へと伸び、表層にある自由な結合肢は1個しかない構造となっている。一方、(100)面配向は二本の自由な結合肢が基板15の表面から突き出すように存在し、反応性が高くなっている。よって、(100)面配向の法線ベクトルBの方向のエッチングは、(111)面配向の法線ベクトルAの方向のエッチングと比較し、非常に速くなる。
【0042】
すなわち、本実施の形態で用いた(100)面配向のシリコン基板15は、ベクトルBの方向のエッチングが速いことから凹部20の深さ方向のエッチングが促進される。さらにベクトルAが均等な放射状に存在していることから、エッチングが対称に進みやすく、凹部20内壁の表面粗さを低減することができると考えられる。その結果、凹部20の形状は対称性の優れた半球形状となる。
【0043】
エッチング加工時間などのエッチング条件は、凹部20の外観を光学顕微鏡などで確認しながら、容易に調整でき、製造プロセスを簡易にすることができる。そして凹部20の深さと基板15の厚みとから貫通孔21の長さを高精度に設定することができる。また凹部20の表面が平滑になることにより、細胞25と貫通孔21との密着性が高まり、細胞電位測定デバイス11の測定精度が向上する。
【0044】
なおドライエッチングに用いるエッチングガスに、N2、Ar、He、H2またはこれらの混合ガスであるキャリアガスを混合して用いてもよい。またエッチングガスのキャリアガスに対するモル比は、0を超え、2.0以下であることが望ましい。このような組成およびモル比のキャリアガスを用いることによって前述のエッチングガスの拡散が均一となり、凹部20の平滑性を向上させることができる。また凹凸などの形状を左右する複雑な因子を極力減らし平滑にすることによって、複数の凹部20を実質的に同一形状に形成することが容易となる。
【0045】
なおドライエッチング加工では、エッチングガスをレジストマスク28の上方から凹部20の内部へ注入し、所定時間充填する。その後、エッチングガスを吸引(除去)して回収し、再びエッチングガスを充填・回収する。このような操作を複数回繰り返すことが好ましい。これによりエッチングガスを均一に拡散することが容易となる。そして貫通孔21の内壁に僅かな凹凸を繰り返し形成しながら略直線に貫通孔21を形成することができる。したがって、貫通孔21の長さをより高精度に設計することができると共に、貫通孔21の開口部付近では、その凹凸に細胞25が食い込み、細胞25と貫通孔21との密着性が向上する。
【0046】
さらに本実施の形態では、図9に示すように1枚のレジストマスク28を用い、ドライエッチングによって凹部20、貫通孔21の順に形成している。そのため、貫通孔21の開口部の位置を凹部20の最深部に正確に定めることができる。細胞25は重力に従って落下するため、凹部20の最深部にトラップされやすい。したがって、貫通孔21の開口部の位置を凹部20の最深部にすることによって細胞電位測定デバイス11の測定精度が向上する。また、凹部20と貫通孔21との複数の組を略同形状に形成することができ、これらの組の間での形状ばらつきによる測定誤差のばらつきが減少するため測定精度が向上する。さらに2種類のレジストマスクを用いる場合と比較して製造の手間が省かれ、コスト低減に寄与する。
【0047】
本実施の形態では、凹部20が貫通孔21の開口部から外周上方へと滑らかに湾曲して立ち上がる内壁を有している。細胞25は重力に従い、この内壁に沿って滑らかに貫通孔21へと転がることができる。したがって、細胞25が的確に凹部20に捕捉され、細胞25と貫通孔21との密着性が高まり、細胞電位測定デバイス11の測定精度向上に寄与する。
【0048】
(実施の形態2)
図12、図13はそれぞれ本発明の実施の形態2による細胞電位測定デバイスにおけるチップの斜視図と断面図である。図14は本実施の形態による細胞電位測定デバイスの基板である、(110)面配向の単結晶シリコン板における(111)面配向の位置を示す模式図である。本実施の形態と実施の形態1との違いは、基板15Aの材料として(110)面配向の単結晶シリコンを用いていることである。それ以外は実施の形態1と同様である。なお、(110)面配向は、結晶構造の対称性によって等価となる(101)面配向、(011)面配向を含む。
【0049】
図14に示すように(110)面配向の単結晶シリコン板からなる基板15Aは、表面に対し90°及び35.3°の角度で(111)面配向を有している。すなわち、ベクトルAは(110)面配向における(111)面配向の法線ベクトルであり、基板15Aの中心Oから90°または54.7°の傾きを有している。またベクトルCは(110)面配向の法線ベクトルであり、点線は基板15A上の基準線を示している。
【0050】
本実施の形態では、実施の形態1と異なり、凹部20Aの形状は略半楕円球形状となる。これは図14に示すように、(111)面配向の法線ベクトルAが中心Oから同心半球状に均等に配置していないことから、基板15Aの表面のエッチング形状は楕円に近い形状となるためである。
【0051】
このように本実施の形態では、基板15Aとして(110)面配向の単結晶シリコン板を用いている。この場合も凹部20Aの内壁の表面粗さは低減され、平滑な形状となる。そのため凹部20Aは貫通孔21の開口部を中心に対称性に優れた形状となる。したがって、エッチング条件毎に凹部20Aの開口径と深さとの関係を算出しておけば、同じエッチング条件においては外観から計測できる凹部20Aの開口径から凹部20Aの深さを算出することができる。結果として貫通孔21の長さを高精度に設計することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、実施の形態1と異なり、(110)基板の表面に存在するシリコン原子の自由な結合肢は1個しかないが、2個は基板15Aの表面に平行に存在している。そのため、結合肢は反応しやすい状態にある。よって、(110)面配向のシリコン基板15Aを用いた場合も、(100)面配向のシリコン基板15を用いた場合と同様に、(110)面配向の法線ベクトルC方向のエッチングは速くなる。そしてシリコン原子の水平方向のエッチング速度が顕著に速くなることは抑制される。また法線ベクトルAは半球状ではないが、対称性をもって放射状に配置されているため、エッチングは法線ベクトルCに対し左右対称に進みやすいと推測される。
【0053】
以上のように本実施の形態でも、凹部20Aの内壁の表面粗さが低減され、凹部20Aは平滑な形状となる。よって貫通孔21と細胞25との密着性が高まり、細胞電位測定デバイス11の測定精度が向上する。
【0054】
また、本実施の形態では、凹部20Aの形状が略半楕円球形状となる。そのため楕円球形状の細胞25を測定対象とする場合に、凹部20Aに細胞25を安定して保持することができ、測定精度の向上に寄与する。
【0055】
(実施の形態3)
図15は本発明の実施の形態3による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図である。本実施の形態3と実施の形態1との違いは、基板15の下面(第2面)上にシリコン酸化物層30が形成されている点である。すなわち、本実施の形態におけるチップ31は、約20μmの基板15と厚み約2μmのシリコン酸化物層30と厚み400〜500μm程度の下部シリコン層32とを有する。シリコン酸化物層30は基板15の下面に配置され、下部シリコン層32はシリコン酸化物層30の下面に形成され、基板15の下面から起立した側壁を構成している。基板15は(100)面配向した単結晶シリコン板からなる。これ以外は実施の形態1と同様である。なお、図15で示すベクトルBは(100)面配向の法線ベクトルを示す。
【0056】
次に、チップ31の製造方法について図16〜図21を用いて説明する。図16〜図21は図15に示すチップの製造ステップを示す断面図である。
【0057】
まず、図16に示すように、チップ基板33の基板15の上面にレジストマスク34を形成する。チップ基板33は基板15とシリコン酸化物層30と下部シリコン層32の3層で構成されている。基板15は厚みが約20μmであり(100)面配向した単結晶シリコン板からなる。厚みが約2μmのシリコン酸化物層30は基板15の下面に配置されている。厚みが400〜500μm程度の下部シリコン層32はシリコン酸化物層30の下面に配置されている。
【0058】
レジストマスク34のマスクホール35の形状は図15の貫通孔21の形状とほぼ同じになるように設計しておく。本実施の形態では貫通孔21の最小開口径を3μmとするので、マスクホール35の開口径も3μmである。
【0059】
その後、図17に示すようにSF6、CF4、NF3、XeF2の少なくともいずれかであるエッチングガスを用いドライエッチングによって基板15の上面からエッチングを行い、凹部20を形成する。凹部20の形成方法は実施の形態1と同様である。
【0060】
次に、図18に示すように、凹部20から基板15の下面までドライエッチングを行い、貫通孔21となるホール21Aを形成する。このとき、ドライエッチングガスとしてシリコンのエッチングを促進するSF6などを用いると、エッチンググレートの差によりシリコン酸化物層30がエッチングストップ層となる。すなわちシリコン酸化物層30は基板15を構成する材料よりもエッチンググレートの小さいエッチングストップ層である。そして、ホール21Aの長さを設計通り一定に形成することができ、簡便な方法で高精度にホール21Aを形成することができる。
【0061】
次に、図19に示すように、シリコン酸化物層30を、基板15の上面から例えばCF4などのガスを用いてエッチングする。これにより貫通孔21を形成する。その後、レジストマスク34を除去する。そして、図20に示すように、下部シリコン層32の下面にレジストマスク38を形成する。その後、図21のように下部シリコン層32の下面からシリコン酸化物層30までエッチングして貫通孔21を完成させる。このときも、シリコン酸化物層30がエッチングストップ層となるので、高精度に基板15の厚みを調整することができる。その結果、貫通孔21を高精度な長さにすることができる。その他の効果については実施の形態1と同様であるため省略する。
【0062】
なお、基板15には(100)面配向の単結晶シリコン層を用いたが、(110)面配向の単結晶シリコン層を用いても、凹部20の表面粗さを低減し、表面形状を平滑にすることができる。また内壁形状は段差のない対称性の優れた形状とすることができる。さらに表面に凹凸が少ないと、形状を左右する因子が少なくなるため、凹部20を複数個形成した場合、それらの形状の均一性を高めることができる。すなわち実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0063】
また本実施の形態では基板15がシリコンの場合にシリコン酸化物層30をエッチングストップ層としたが、その他シリコン窒化物(Si34)でエッチングストップ層を形成してもよい。
【0064】
(実施の形態4)
図22は本発明の実施の形態4による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図である。本実施の形態と実施の形態1との違いは、基板15の上面と凹部20の内壁とがシリコン酸化物の膜37で被覆されている点にある。すなわち、少なくとも凹部20の表面に絶縁材料からなる膜37が設けられている。それ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0065】
これによりさらに凹部20の内壁の表面粗さが小さくなり、平滑になる。したがって、細胞25が貫通孔21の開口部に密着しやすくなり、細胞電位測定デバイス11の測定精度が向上する。また膜37の材料として絶縁物を用いることにより、貫通孔21の上部と下部との電気絶縁性が高まり、測定精度の信頼性向上に寄与する。
【0066】
膜37の材料としてはシリコン酸化物以外にシリコン窒化物、シリコンオキシ窒化物、またはこれらの混合物などの材料を用いることができる。例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物からなる膜37は、シリコン酸化物やシリコン窒化物をスパッタ成膜することによって形成することができる。このような方法を用いるとアスペクト比の大きい貫通孔21の内壁には膜37が形成されにくく、基板15の上面と凹部20の内壁にのみ膜37が形成される。また酸素雰囲気でシリコンからなるチップ22を熱処理すればチップ22の表面全体にシリコン酸化物からなる膜37が形成される。このように膜37は少なくとも凹部20の表面に絶縁材料からなる膜37が設けられていればよい。
【0067】
膜37としてシリコン酸化物を用いる場合、膜37を被覆しない場合と比較して凹部20の内壁の親水性が向上する。一般に、細胞25の表面は親水性を有するため、凹部20の内壁の親水性が向上することによって、細胞25は凹部20の内壁により密着して保持される。具体的には、膜37を設けることによって膜37がない場合と比べて細胞25と凹部20表面との接触角が約1/3まで低減する。その他の効果については実施の形態1と同様であるため省略する。
【0068】
(実施の形態5)
図23は本発明の実施の形態5による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図である。図24は図23に示すチップの拡大断面図である。本実施の形態と実施の形態1との違いは、チップ22を上下反転させて図1のチッププレート13に配置している点である。
【0069】
すなわち本実施の形態は、基板15は(100)面配向のシリコン板であり、基板15の上面(第2面)には貫通孔21が形成され、下面(第1面)には凹部20が形成されている。そして凹部20は略半球形状であって、貫通孔21の開口部から外周へ広がり、滑らかに湾曲して上面に繋がる内壁を有している。
【0070】
これにより本実施の形態では、貫通孔21の長さのばらつきが低減されるだけでなく、貫通孔21から図1に示す第2電極槽18にかけて流路の断面積変化が緩やかになり、流体抵抗が小さくなって電解液等が流れやすくなる。また基板15の下方からの吸引がしやすくなり、細胞25を的確に貫通孔21の開口部に密着させることができる。またナイスタチンなど、基板15の下方から注入する薬液が貫通孔21に流れ込みやすくなり、細胞25に迅速に到達させることができる。
【0071】
さらに、凹部20の内壁表面が平滑であるため、凹部20の内壁に発生する気泡が低減される。そのため細胞25を貫通孔21に吸引する際の圧力が気泡の存在によって伝達しにくくなるのを抑制することができる。したがって、細胞25を的確に貫通孔21に密着させることができる。
【0072】
また、貫通孔21の表面粗度を凹部20の表面粗度よりも大きくしておくことが好ましい。これによって、貫通孔21の内壁の凹凸が細胞25に対するアンカー効果となり、基板15上面に凹部20を形成しなくとも、貫通孔21との密着性をより向上させることができ、測定精度を高めることができる。その他、実施の形態1と同様の構成・効果については、説明を省略する。
【0073】
なお、本実施の形態では、基板15として(100)面配向のシリコン板を用いたが、実施の形態2と同様に基板15として(110)面配向のシリコン板を用いても同様の効果が得られる。また、凹部20の内壁や基板15の下面を、実施の形態4と同様にシリコン酸化物等の絶縁性の膜37で被覆してもよい。これにより凹部20の内壁がさらに平滑になり、貫通孔21の上部と下部との電気絶縁性が高まる。
【0074】
(実施の形態6)
図25は本発明の実施の形態6による細胞電位測定デバイスにおけるチップの断面図である。図26は図25に示すチップの拡大断面図である。本実施の形態と実施の形態3との違いは、チップ31を上下反転させて図1に示すチッププレート13に配置させるとともに、基板15の上面(第2面)にシリコン酸化物層30が形成されている点である。
【0075】
すなわち、チップ31は、厚み約20μmの基板15と厚み約2μmのシリコン酸化物層30と厚み400〜500μm程度の上部シリコン層40とを有する。シリコン酸化物層30は基板15の上面に配置され、上部シリコン層40はシリコン酸化物層30の上に形成されている。このように本実施の形態は、実施の形態3と実施の形態5とを組み合わせた構成となる。
【0076】
この構成でも実施の形態3と同様に、シリコン酸化物層30がエッチングストップ層となり、基板15の厚みを高精度に設計できる。また凹部20の深さも実施の形態1と同様に、高精度に設計できることから、結果として貫通孔21の長さの管理精度が向上する。合せて実施の形態5と同様の効果も得られる。
【0077】
さらに本実施の形態では、凹部20からシリコン酸化物層30まで基板15に貫通孔21を形成した後、シリコン酸化物層30にホール41を形成する。したがって、基板15に貫通孔21を形成するためのエッチングガス(例えばSF5+)がシリコン酸化物層30上で溜まり、このエッチングガスのプラスイオン同士が反発して、貫通孔21の横方向に拡散し、意図的にエッチングを横方向に進ませることができる。
【0078】
その結果、図26に示すように、基板15とシリコン酸化物層30との接触面において、貫通孔21の開口径がシリコン酸化物層30のホール41より広がり、貫通孔21内壁に窪み42ができる。ホール41の開口部に密着した細胞25は窪み42に引っかかり、ホール41開口部と細胞25との密着性がより向上する。なお、本実施の形態も基板15に(110)面配向のシリコン板を用いてもよい。
【0079】
また、実施の形態1〜6では基板15としてシリコン板を用いたが、その他ダイヤモンドなど、ダイヤモンド構造の単結晶板を用いてもよい。なお、ダイヤモンドの場合、エッチングガスとして酸素などを用いることができる。またチップ22、31は基板15の下面から起立した側壁22Aまたは下部シリコン層32を有しているが、基板15のみをチッププレート13の開口部に固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明による基板とその製造方法では、貫通孔の長さを管理することができ、高精度に貫通孔の長さを同等にすることができる。また基板に設けられ、細胞を保持する凹部の内壁の表面形状が平滑になる。これらによりこの基板を用いた細胞電位測定デバイスの測定精度が向上する。したがって、高精度の測定が求められる医療・バイオ分野における、微小電子機械システム(MEMS)技術を応用したデバイスに有用である。
【符号の説明】
【0081】
11 細胞電位測定デバイス
12 ウェルプレート
13 チッププレート
14 流路プレート
15,15A 基板
16 第1電極槽
17 第1電極
18 第2電極槽
19 第2電極
20,20A 凹部
21 貫通孔
21A ホール
22,31 チップ
22A 側壁
23 第1電解液
24 第2電解液
25 細胞
26,33 チップ基板
27,28,34,38 レジストマスク
29,35 マスクホール
30 シリコン酸化物層(エッチングストップ層)
32 下部シリコン層
37 膜
40 上部シリコン層
41 ホール
42 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有し、(100)面配向のダイヤモンド構造を有する単結晶板からなり、
前記第1面に凹部が形成されるとともに、前記凹部から前記第2面に向けて貫通孔が形成され、前記凹部は前記貫通孔の開口部から外周へ広がり、湾曲して前記第1面に繋がる内壁を備え、
前記貫通孔の直径が0μmより大きく3μm以下である、
細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項2】
前記凹部は半球形状である、
請求項1記載の細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項3】
前記凹部の表面に配置された絶縁材料からなる膜をさらに備えた、
請求項1記載の細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項4】
前記基板の前記第2面上に形成され、前記基板を構成する材料よりもエッチングレートの小さいエッチングストップ層をさらに備えた、
請求項1記載の細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項5】
請求項1記載の細胞電位測定デバイス用基板と、
前記基板の上方に配置された第1電極槽と、
前記第1電極槽の内部に配置された第1電極と、
前記基板の下方に配置された第2電極槽と、
前記第2電極槽の内部に配置された第2電極と、を備えた、細胞電位測定デバイス。
【請求項6】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有し、(110)面配向のダイヤモンド構造を有する単結晶板からなり、
前記第1面に凹部が形成されるとともに、前記凹部から前記第2面に向けて貫通孔が形成され、前記凹部は前記貫通孔の開口部から外周へ広がり、湾曲して前記第1面に繋がる内壁を備え、
前記貫通孔の直径が0μmより大きく3μm以下である、
細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項7】
前記凹部は半楕円球形状である、
請求項6記載の細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項8】
前記凹部の表面に配置された絶縁材料からなる膜をさらに備えた、
請求項6記載の細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項9】
前記基板の前記第2面上に形成され、前記基板を構成する材料よりもエッチングレートの小さいエッチングストップ層をさらに備えた、
請求項6記載の細胞電位測定デバイス用基板。
【請求項10】
請求項6記載の細胞電位測定デバイス用基板と、
前記基板の上方に配置された第1電極槽と、
前記第1電極槽の内部に配置された第1電極と、
前記基板の下方に配置された第2電極槽と、
前記第2電極槽の内部に配置された第2電極と、を備えた、
細胞電位測定デバイス。
【請求項11】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有し、(100)面配向のダイヤモンド構造と(110)面配向のダイヤモンド構造とのいずれかを有する単結晶板の前記第1面にフォトマスクを用いてマスクホールを有するレジストマスクを形成するステップと、
前記第1面にドライエッチングにより半球形状の碗型に凹部を形成するステップと、
前記凹部から前記第2面までドライエッチングにより前記単結晶板を貫通させ、前記マスクホールと同開口径を有する貫通孔を設けるステップと、を備え、
前記マスクホールの開口径が0μmより大きく3μm以下である、
細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項12】
前記凹部を形成するステップにおいてエッチングガスを用い、前記エッチングガスがCF4、SF6、NF3、XeF2の少なくともいずれか一つである、
請求項11記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項13】
前記凹部を形成するステップにおいてエッチングガスとキャリアガスとを用い、前記キャリアガスがN2、Ar、He、H2の少なくともいずれか一つである、
請求項11記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項14】
前記凹部を形成するステップにおいてエッチングガスとキャリアガスとを用い、前記エッチングガスの前記キャリアガスに対するモル比が0を超え、2.0以下である、
請求項11記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項15】
前記凹部を形成するステップにおいてエッチングガスを用い、前記エッチングガスの充填と除去とを複数回繰り返す、
請求項11記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項16】
前記貫通孔を形成するステップにおいてエッチングガスとエッチング抑制ガスとを交互に用いる、
請求項11記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項17】
前記エッチングガスがCF4、SF6、NF3、XeF2の少なくともいずれか一つである、
請求項16記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。
【請求項18】
前記エッチング抑制ガスがCHF3、C48の少なくともいずれか一つである、
請求項16記載の細胞電位測定デバイス用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図10A】
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【公開番号】特開2011−22153(P2011−22153A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186807(P2010−186807)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2007−536527(P2007−536527)の分割
【原出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】