説明

細菌からのホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ

本発明は、一般的には、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸のごとき長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を合成するためのポリケチドシンターゼ複合体の活性化に必要なホスホパンテテイニルトランスフェラーゼに関する。特に、本発明は、細菌ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ、宿主細胞中のそれらの発現のためのDNA構築物、および宿主細胞が植物を含む場合の種子、油およびミールに関する。また、ドコサヘキサエン酸および/またはエイコサペンタエン酸を含有する植物油を調製する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、(ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸のごとき)長鎖多価不飽和脂肪酸を合成するためのポリケチドシンターゼの活性化に関与するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼに関する。
【0002】
この出願は、2006年1月31日付けで出願された米国仮特許出願第60/763,644号および2007年1月29日付けで出願された米国特許出願第11/668,354号の優先権を主張し、それらの開示をここに出典明示してそれらの全てを本明細書の一部とみなす。
(発明の分野)
【背景技術】
【0003】
大部分の生物における脂肪酸生合成の主要生成物は、16および18−炭素化合物である。これらの脂肪酸の鎖長の相対的な比率および不飽和度は、種の中で広範囲に変化する。哺乳動物は、例えば、主要な飽和および一価不飽和脂肪酸を生成するが、大部分の高等植物は、1、2または3個の二重結合を持つ脂肪酸を生成し、後者の2つは多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む。ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6)およびエイコサペンタエン酸(EPA、20:5)のごとき非常に長鎖のPUFAは、Moritella (Vibrio) marina およびShewanella sp.(米国特許第6,140,486号)を含めたいくつかの種の海洋細菌から、およびSchizochytrium sp.およびThraustochytrium sp.(米国特許公開第20040235127号)のごとき海藻から報告されている。
【0004】
主要な2つのファミリーのPUFAは、ドコサヘキサエン酸によって例示されるオメガ−3脂肪酸(「n−3」脂肪酸としても表わされる)、およびアラキドン酸(ARA、20:4)によって例示されるオメガ−6脂肪酸(「n−6」脂肪酸としても表わされる)である。PUFAは、細胞および脂肪組織の原形質膜の重要な成分であり、それらは、各々、リン脂質およびトリグリセリド中で見出され得る。PUFAは、哺乳動物、特に、発育中の幼児の脳における適当な発生、および組織形成および修復のために必要である。
【0005】
いくつかの障害はPUFAでの処置に応答する。PUFAでの補足は血管形成術後の再狭窄の比率を低下させることが示されている。また、心疾患および慢性関節リウマチについてのある種の食事オメガ−3脂肪酸の健康上の利益が、十分に立証されている(Simopoulos, 1997;Jamesら, 2000)。さらに、PUFAは喘息および乾癬についての治療における使用を示唆されている。証拠は、PUFAがカルシウム代謝に関与し得ることを示し、PUFAが骨粗鬆症、および腎臓または尿路の結石の治療または予防に有用で有り得ることを示す。
【0006】
健康上の利益についての大多数の証拠は、魚および魚油中にある長鎖オメガ−3脂肪のEPAおよびDHAに適用されている。この証拠の基礎を用いて、カナダ(Scientific Review Committee, 1990, Nutrition Recommendations, Minister of National Health and Welfare, Canada, Ottowa)、欧州(de Deckererら, 1998)、英国(The British Nutrition Foundation, 1992, Unsaturated fatty−acids − nutritional and physiological significance: The report of the British Nutrition Foundation’s Task Force, Chapman and Hall, London)および米国(Simopoulosら, 1999)における保健機関および栄養学者は、これらのPUFAの食事の消費の増加を推奨した。
【0007】
重要な主な長鎖PUFAは、異なるタイプの魚油中で主に見出されるDHAおよびEPA、およびMortierellaのごとき糸状菌中で見出されるARAを含む。DHAについては、多数の源は、様々な海産生物を含む商業製品、冷水海水魚から得られる油、および卵黄画分に存在する。しかしながら、自然源からのPUFAの商業製品に関連したいくつかの不都合がある。動物および菌類のごときPUFAの天然源は、高度に不均質の油組成物を有する傾向がある。従って、これらの源から得られた油は、1以上の所望のPUFAを分離するか、または1以上のPUFAにおいて富化した油を生成するための広範囲の精製を必要としかねない。
【0008】
また、PUFAの天然源は有効性における制御しがたい変動に付される。魚貯蔵は自然の変化を受け得るか、または魚の濫獲により枯渇し得る。加えて、それらの治療上の利益の圧倒する証拠を持ってさえ、オメガ−3脂肪酸に関する食事の推奨に留意されない。魚油は不快な味および匂いを有し、それは、所望の生成物から経済的にそれを分離することは不可能で有り得、かかる生成物を食物サプリメントとして受け入れさせない。動物油、特に魚油は、環境汚染物を蓄積しかねない。食品は魚油で富化し得るが、再度、かかる富化は、コストおよび世界中の魚貯蔵の低下のために問題である。また、この問題は全体の魚の消費および摂取にとっての障害である。それにもかかわらず、魚摂取を増加させるための健康メッセージがコミュニティによって受け入れられれば、魚の需要に応じた問題が恐らく存在するであろう。さらに、この産業の持続性での問題があり、それは、水産養殖飼料のための野生の魚貯蔵に極度に依拠する(Naylorら, 2000)。
【0009】
他の自然の制限は、オメガ−3脂肪酸の生産のための新規なアプローチを支持する。天候および病気は、魚からの収率の変動を引き起こしかねない。Mortierellaのごとき生物の大規模発酵は高価である。天然の動物組織は低い量のARAを含み、処理するのが難しい。PorphyridiumおよびMortierellaのごとき微生物は商業的スケールでの培養が難しい。
【0010】
多数の海洋微生物は、ポリケチドシンターゼ(PKS)メカニズムによりDHAおよびEPAのごとき非常に長鎖のPUFAを生成する。PKSは、反復する様式で単純な基質からの複合体分子の合成を触媒する多機能ポリペプチドよりなる酵素複合体である。PKSは当該技術分野においてよく知られ、かかる配列の多数の例が文献中で見出すことができる。Moritella marinaにおいて、PKSは、マロニルCoAおよびアセチルCoAからDHAを合成する。このPKSを活性化するために、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼは必要である。
【0011】
ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(Ppt)は、脂肪酸、ポリケチドおよび非リボソームペプチドを含めた天然生成物の生合成のために必要とされる反応である、保存されたセリン残基への補酵素Aの4’−ホスホパンテテイン部分の共有結合による担体蛋白質、脂肪酸シンターゼ、ポリケチドシンターゼおよび非リボソームのポリペプチドシンターゼの翻訳後の活性化を触媒する。Pptはそれらの担体蛋白質特異性によって分類されている。複数のホスホパンテテイン要求性経路を含む生物において、各経路がそれ自身のPptを有することが示唆された。M. marina PKSがクローニングされた(米国特許第6,140,486号(Facciottiら))が、Pptは見出されなかった。Allen およびBartlett(2002)は、それらがMoritellaからのPpt遺伝子をクローニングできないと言及した。
【0012】
多数のアプローチは、植物におけるDHAおよびEPAの生産につき試みられた(WO05103253A1(Singhら)、WO04071467A2(Kinneyら))。これらのアプローチは、段階的なデサチュラーゼ/エロンガーゼの使用を共通して有した。このアプローチは、6〜8個の遺伝子を用いるという不便さを有しており、潜在的に望ましくない結果の中間物の蓄積に導く。PKS/Pptアプローチを用いると、必要とされる導入遺伝子数はより少なく(4〜5個)、中間物の蓄積は期待されない。
【0013】
従って、長鎖のPUFA生合成に関与する遺伝物質を得、商業上の量の1以上のPUFAの生産を提供するために操作できる植物系、特に、地上の陸生作物系において単離された物質を発現することは有利であろう。また、ヒトおよび動物におけるオメガ−3脂肪酸摂取を増加させる必要性が存在する。かくして、対象がかれらの通常の食習慣に適する飼料、飼料成分、食物および食物成分を選定できるように広範囲のオメガ3−富化の食物および食物サプリメントを供給する必要性が存在する。増加したDHAまたはEPAを含む種子油が特に有利であろう。
【0014】
現在、植物油において利用可能な1つのオメガ−3脂肪酸のALAだけが存在する。しかしながら、EPAおよびDHAのごときより長鎖のオメガ−3脂肪酸への摂取されたALAの貧弱な変換がある。「炎症障害の治療および予防」についての同時継続の米国公開第20040039058号において、アマニ油の使用によるコミュニティ平均の1g/日から14g/日へのALA摂取の増加は、単に適度に血漿リン脂質EPAレベルを増加させることが示されている。ALA摂取における14倍の増加の結果、血漿リン脂質EPAを2倍に増加させた(Manziorisら, 1994)。かくして、その目的のために、ポリケチド合成複合体、およびその複合体を活性化するPpt、そのPptをコードする遺伝子およびそれらを生成する組換え方法を用いるPUFAの効率的でかつ商業的に実行できる生成についての必要性が存在する。また、相対的により高い割合のDHAまたはEPAを含有する油、ならびにそれらを含有する植物組成物およびサプリメントについての必要性が存在する。また、特定のPUFAを生成する信頼できかつ経済的な方法についての必要性が存在する。細菌PKS複合体を発現するキャノーラ、大豆、トウモロコシ、ヒマワリまたはアマのごとき脂肪種子作物に由来した油は、長鎖PUFA、DHAまたはEPAについて富化される。かかる油はオメガ−3脂肪酸において富化された食物および食物サプリメントを生成するために利用でき、かかる食物の消費は、EPAおよびDHAの組織内濃度を有効に増加させる。オメガ−3を富化した油で作成または調製されたミルク、マーガリンおよびソーセージのごとき食物および食料は、治療的な利益を生じるであろう。かくして、PUFAにおいて富化した油を含む遺伝子組み換えの作物に用いるPKSを活性化できるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの新規な核酸、ならびにそれにより生成された改善された油についての強力な必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、一般的には、(ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸のごとき)長鎖多価不飽和脂肪酸を合成するためのポリケチドシンターゼの活性化に関与するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの態様において、本発明は、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を持つポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。これらを用いて、細胞を形質転換するか、あるいは植物の脂肪酸組成または植物により生成された油を改変し得る。本発明の1つの具体例は、(a)5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で配列番号:6もしくは配列番号:8、またはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド;(b)配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド;および(c)配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなる群から選択される単離されたポリヌクレオチド配列である。本発明のさらなるある種の具体例において、ポリヌクレオチドは、配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列に対して、約82%、87%、89%、92%、95%、98%および99%の同一性を含めて、少なくとも80%、85%または90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする。当業者ならば、これらの配列が関連付けられると、所与のポリペプチドは、1を超えるこれらのポリペプチド配列に90%またはそれより大きい相同性を同時に共有し得ることを認識するであろう。さらなる具体例において、そのコード化されたポリペプチドはホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有する。
【0017】
さらにもう一つの態様において、本発明は、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子に作動可能に連結された異種プロモーターを含むDNA構築物を提供し、ここに、そのDNA分子は、(a)配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド;(b)5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で、配列番号:6もしくは配列番号:8またはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド;および(c)配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなる群から選択される。他の具体例において、プロモーターは原核細胞または真核細胞において機能的である。ある具体例において、プロモーターが機能的である真核細胞は植物細胞である。さらなる具体例において、プロモーターは種子増強プロモーターである。
【0018】
依然としてさらにもう一つの態様において、本発明は、本発明によって供されるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子に作動可能に連結された異種プロモーターを含むDNA構築物で形質転換された宿主細胞を提供する。もう一つの具体例において、宿主細胞は、ホスホパンテテイン結合部位を含むポリケチドシンターゼポリペプチドをコードするDNA分子に作動可能に連結された異種プロモーターをさらに含む。さらなる具体例において、ホスホパンテテイン結合部位を含むポリケチドシンターゼポリペプチドをコードするDNA分子は、Moritella marinaからのものである。さらにもう一つの具体例において、DNA分子は、配列番号:19に少なくとも70%の配列同一性を持つポリケチドシンターゼポリペプチド、または本明細書に後記されるいずれかの公知のポリケチドシンターゼをコードする。宿主細胞は植物、菌類または細菌の細胞で有り得る。
【0019】
依然としてさらにもう一つの態様において、本発明は、本明細書に供されるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子に作動可能に連結された異種プロモーターを含むDNA構築物で形質転換された宿主細胞よりなる植物およびその子孫を提供する。かかる植物は、DNA構築物を欠失する同一遺伝子型の植物に対し、改変された脂肪酸代謝を含むと定義し得る。1つの具体例において、植物は、キャノーラ、Brassica campestris、アブラナ、菜種、大豆、ハマナ、カラシ、トウゴマ(castor bean)、ピーナッツ、ごま、綿実、アマニ、サフラワー、アブラヤシ、アマ、ヒマワリ、トウモロコシ、コメ、大麦、雑穀(millet)、ライ麦、小麦、オート麦、アルファルファおよびソルガムよりなる群から選択される。また、本発明は、本発明によって供される検出可能なDNA分子またはポリペプチドを含むと定義される、植物から生成された種子、油およびミールを提供する。加えて、本発明は動物飼料およびヒト食物の組成物を提供する。
【0020】
依然としてさらにもう一つの態様において、本発明は、(a)さらにポリケチドシンターゼを含む本発明の宿主細胞を含む植物を育て;(b)種子を生成し;次いで(c)種子を処理して油を得る工程を含む、ドコサヘキサエン酸および/またはエイコサペンタエン酸を含有する植物油を調製する方法を提供する。
【0021】
(図面の簡単な記載)
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある態様を示すために含まれる。本発明は、本明細書に示された特定の具体例の詳細な記載と組み合わせて1以上のこれらの図面への参照によってより良好に理解され得る。
【0022】
図1は、ベクターpMON68081の地図を示す。
図2は、ベクターpMON68080の地図を示す。
図3は、ベクターpMON94547の地図を示す。
図4は、ベクターpMON94544の地図を示す。
図5は、ベクターpMON94534の地図を示す。
図6は、ベクターpMON68084の地図を示す。
【0023】
図7は、ベクターpMON68085の地図を示す。
図8は、ベクターpMON97063の地図を示す。
図9は、ベクターpMON94563の地図を示す。
図10は、ベクターpMON97066の地図を示す。
図11は、ベクターpMON96401の地図を示す。
図12は、ベクターpMON78528の地図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、改善されたDHAおよび/またはEPA含量を持つ植物の創製のための方法および組成物を提供することによって先行技術の限界を克服する。植物のごとき生物の脂肪酸含量の改変は、改善された栄養および健康上の利益を含めた多数の利点を与える。脂肪酸含量の改変を用いて、植物、植物器官、および植物種子油を含めた植物生成物ならびに細菌および菌類において有益なレベルのDHAおよび/またはEPAを達成できる。例えば、DHAが植物の種子組織において生成される場合、油は種子から単離でき、典型的には、その結果、油はDHAを含有し、今度はこれを用いて、食料および他の生成物における有益な特性を提供し得る。
【0025】
本発明の種々の態様は、細胞のPUFA含量の改変、例えば、植物細胞のPUFA含量の改変のための方法および組成物を含む。本発明に関係する組成物は、新規な単離ポリヌクレオチド配列、DNA構築物および本発明のポリヌクレオチドによって形質転換された植物および/または植物器官を含む。宿主細胞を操作して、もう一つのポリペプチドのホスホパンテテイン結合部位のパンテテイニル化を触媒するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現し得る。
【0026】
以下の定義はこの発明の理解の補助として提供される。「DNA配列」、「核酸配列」、「核酸分子」および「核酸セグメント」なる語句は、ヌクレオチドの整然とした配置を含む物理的構造をいう。DNAセグメント、配列またはヌクレオチド配列は、より大きなヌクレオチド分子、ベクター等に含まれ得る。さらに、これらの配列の核酸の整然とした配置は、配列表、図、表、電子媒体等の形態で示し得る。
【0027】
「コード配列」、「コード領域」、「構造配列」および「構造核酸配列」なる語句は、すべてまたはセグメントのDNA配列、核酸配列、核酸分子をいい、ここに、ヌクレオチドは、各々がコドンを形成する一連のトリプレットで整列される。各コドンは、特定のアミノ酸をコードする。かくして、コード配列、コード領域、構造配列および構造核酸配列は、蛋白質、ポリペプチドまたはペプチド配列を形成する一連のアミノ酸をコードする。コード配列、コード領域、構造配列および構造核酸配列は、より大きな核酸分子、ベクター等に含まれ得る。加えて、これらの配列におけるヌクレオチドの配置は、配列表、図、表、電子媒体等の形態で示し得る。
【0028】
「cDNA」なる用語とは、mRNAに相補的で、かつmRNAから誘導される二本鎖DNAをいう。
【0029】
「発現」とは、遺伝子のコード化された情報が、細胞中に存在し細胞中で作動する構造に変換されるプロセスをいう。発現した遺伝子は、RNAに転写され、次いで、翻訳されるもの、ならびにRNAに転写されるが、蛋白質に翻訳されないものを含む(例えば、転移RNAおよびリボソームRNA)。
【0030】
本明細書に用いた「遺伝子」とは、コード配列に先行する(5’非コード配列)およびコード配列に続く(3’非コード配列)調節配列を含めた、特定の蛋白質を発現する核酸断片をいう。「天然遺伝子」はそれ自身の調節配列を持つ天然に見出される遺伝子をいう。「キメラ遺伝子」とは、天然に一緒に見出されない調節およびコード配列を含む天然遺伝子ではないいずれかの遺伝子をいう。結果的に、キメラ遺伝子は、異なる源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ源に由来するが、天然に見出されたものとは異なる方法で配置された調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性遺伝子」とは、生物のゲノムにおけるその天然の位置の天然遺伝子をいう。「外因性」遺伝子または「導入遺伝子」とは、形質転換手順によってゲノムに導入された遺伝子をいう。導入遺伝子は、形質転換手順により導入されたゲノムDNA(例えば、その活性プロモーターに連結されたゲノムDNA)を含む。
【0031】
「異種」とは、異なる源に由来する2以上の核酸または蛋白質の配列間の関係をいう。例えば、プロモーターは、かかる組合せが天然に通常見出されないならば、コード配列に関して異種である。加えて、特定の核酸配列は、特定の細胞または生物中で天然には生じないならば、それが挿入された細胞および生物に関して「異種」であり得る。
【0032】
「配列相同性」とは、位置の同一性のパーセントの点から2以上の核酸またはアミノ酸の配列間の類似レベルをいう。また、相同性なる用語を用いて、異なる核酸または蛋白質間の類似する機能特性の概念をいう。
【0033】
「ハイブリダイゼーション」とは、核酸鎖が十分な配列相補性を有する場合の水素結合塩基対を介して第2の鎖と結合するための核酸の第1の鎖の能力をいう。本明細書に用いた核酸分子とは、それらが完全な相補性を示すならばもう一つの核酸分子の「相補体」であることをいう。本明細書に用いた分子は、一方の分子のうちのすべてのヌクレオチドが他方のヌクレオチドに相補的である場合に、「完全な相補性」を示すという。かくして、2つの核酸鎖が、適当な条件下で相互にアニーリングされたままにすることを可能とするような十分な安定性で相互にハイブリダイズできる場合に十分な相補性を有するという。
【0034】
本明細書に用いた「相同性」なる用語とは、パーセントのヌクレオチド位置同一性(すなわち、配列類似性または同一性)に関するポリヌクレオチド配列間の類似性またはパーセント同一性のレベルをいう。また、本明細書に用いた相同性なる用語は、異なるポリヌクレオチド分子中の類似する機能特性の概念をいう。ポリヌクレオチド分子は、それらが二重鎖分子を形成するように特異的にハイブリダイズする条件下で相同性である。ストリンジェンシー条件というこれらの条件下で、1つのポリヌクレオチド分子をプローブまたはプライマーとして用いて、相同性を共有する他のポリヌクレオチド分子を同定できる。「ストリンジェントな条件」なる語句は、標的核酸(すなわち、注目する特定の核酸配列)に対する核酸プローブのハイブリダイゼーションに関して、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition Volumes 1, 2, and 3. J. F. Sambrook, D. W. Russell, and N. Irwin, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000(Sambrookら)に言及された特定のハイブリダイゼーション手順により機能的に定義される。結果的に、本発明によって提供されるヌクレオチド配列は、選択的にポリヌクレオチド分子フラグメントの相補的な伸張を持つ二重分子を形成するそれらの能力のために用い得る。想定される適用に依存して、ハイブリダイゼーションの変化する条件を使用して、標的配列へのプローブの変化する度合の選択性を達成することが望まれるであろう。高選択性を必要とする適用において、典型的にはハイブリッドを形成する比較的高いストリンジェントな条件を使用することが望まれるであろう、例えば、約50℃〜約70℃の温度の約0.02M〜約0.15MのNaClにより供される、例えば、比較的低い塩および/または高温条件が選択されるであろう。高ストリンジェントな条件は、例えば、高ストリンジェンシーの洗浄緩衝液(0.2×SSC、0.1%SDS、65℃)で少なくとも2回ハイブリダイゼーションフィルターを洗浄することである。加えて、ホルムアミドを用いて、ストリンジェンシーを増加し得る。従って、高ストリンジェンシー条件は5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃も含む。ハイブリダイゼーションを介するポリヌクレオチド分子の検出は当業者によく知られ、米国特許第4,965,188号および第5,176,995号の教示はハイブリダイゼーション分析方法の典型例である。
【0035】
「単離された」なる語句は、その最終的な性質にかかわらずその自然環境から取り出されたことを意味する。例えば、コメ細胞からクローニングすることによってのごとく、コメから「単離された」核酸配列は、トウモロコシ細胞のゲノムに挿入される場合に「単離された」ままである。
【0036】
「作動可能に連結した」なる語句は、それらが相互に関して適当な効果を奏するような2以上の核酸領域または核酸配列の空間的配置をいう。例えば、プロモーター領域は、核酸配列の転写がプロモーター領域によって指令されるように核酸配列に対し配置し得る。プロモーター領域および核酸配列は「作動可能に連結される」。
【0037】
「ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼまたはPPT」なる用語は、担体蛋白質、例えば、ポリケチドシンターゼのポリペプチドの翻訳後の活性化を、保存セリン残基への補酵素Aの4’−ホスホパンテテイン部分の共有結合により触媒する酵素をいう。
【0038】
「ポリケチドシンターゼ」なる用語は、反復する様式で単純な基質からの複合体分子の合成を触媒する複数機能のポリペプチドからなる酵素複合体をいう。Moritella marinaにおいて、PKS複合体は、マロニルCoAおよびアセチルCoAからDHAを合成する。例えば、M. marinaにおいて、PKSは、オープンリーディングフレームOrf5、Orf6、Orf7およびOrf8によってコード化された4種のポリペプチドを含み(Metzら、2001)、それらは、米国特許第6,140,486号において、各々、Orf6、Orf7、Orf8およびOrf9として記載されている。この複合体を活性化するために、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼは、Orf5によってコード化されたポリペプチドをパンテテニル化することが必要である。Shewanella sp.SCRC2738のPKS複合体は、EPAを合成する(Metzら、2001)。
【0039】
「上流」および「下流」は、通常5’から3’方向に進むヌクレオチド配列の位置、およびコード配列の転写または翻訳の方向に関して用いられる位置の用語である。
【0040】
「プロモーター」または「プロモーター領域」なる用語は、RNA分子に核酸配列の転写を指令できる、通常、コード配列に対して上流(5’)に見出される核酸配列をいう。プロモーターまたはプロモーター領域は、典型的にはRNAポリメラーゼおよび転写の適当な開始に必要な他の因子についての認識部位を供する。本明細書で考えられるプロモーターまたはプロモーター領域は、調節領域の挿入または欠失、プロモーターをランダムまたは部位特異的変異誘発に付すこと等により誘導したプロモーターの変形を含む。プロモーターの活性または強度は、同様に測定される第2のプロモーターに対し、それが生成するRNA量または細胞もしくは組織中の蛋白質蓄積量で測定し得る。
【0041】
「3’非コード配列」なる語句は、コード配列の下流に位置したヌクレオチド配列をいい、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響できる調節シグナルをコードする他の配列を含む。これらを3’−非翻訳領域または3’−UTRと一般的にいう。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸域の付加に影響することによって通常特徴づけられる。異なる3’非コード配列の使用は、Ingelbrechtら(1989)によって例示されている。
【0042】
「翻訳リーダー配列」または「5’−非翻訳領域」もしくは「5’−UTR」のすべては、遺伝子のプロモーター配列およびコード配列間に位置したヌクレオチド配列をいう。5’−UTRは、翻訳開始配列の上流の十分にプロセンシングされたmRNA中に存在する。5’−UTRは、mRNAへの一次転写産物のプロセンシング、mRNA安定性または翻訳効率に影響し得る。翻訳リーダー配列の例は記載されている(Turner and Foster,1995)。
【0043】
「RNA転写物」とは、DNA配列のRNAポリメラーゼで触媒された転写に起因する生成物をいう。RNA転写物がDNA配列の完全に相補的なコピーである場合、それを一次転写産物という。一次転写産物の転写後プロセッシングから誘導されたRNA配列を成熟RNAという。「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、イントロンがなく、細胞によってポリペプチドに翻訳できるRNAをいう。
【0044】
「DNA構築物」とは、組換えDNA分子を構築する相互に作動可能に連結された異種の遺伝子要素をいい、宿主細胞中でDNAポリヌクレオチド分子の発現を提供する要素、ならびに構築物の維持を提供する要素を含み得る。植物発現カセットは、植物細胞へ移された場合、望ましい遺伝子産物の発現を提供する遺伝子要素の操作可能な連結を含む。
【0045】
「組換えベクター」とは、それによりまたはそれにおける注目する核酸が増幅、発現または貯蔵されるいずれかの作用物質、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、自己複製配列、ファージ、または線形の単鎖、環状の単鎖、線形の二本鎖または環状の二本鎖のDNAまたはRNAヌクレオチド配列をいう。組換えベクターは、いずれかの源から合成されるかまたは由来でき、ゲノムの組込みまたは自律複製できる。
【0046】
「調節配列」とは、コード配列またはイントロンに関して上流(5’)、その中または下流(3’)に位置したヌクレオチド配列をいい、その存在または不存在は、コード配列の転写および発現に影響する。
【0047】
「実質的に相同性」とは、例えば、DNAStar(Madison, WI)におけるCLUSTAL Wアルゴリズムにより測定される、配列において少なくとも約90%の同一性である2つの配列をいう。
【0048】
「実質的に精製された」とは、その自然な状態におけるものと通常関連付けた実質的に全ての他の分子から分離された分子をいう。より好ましくは、実質的に精製された分子は、調製中に存在する優位な種である。実質的に精製された分子は、天然の混合物中に存在する他の分子(溶剤を除外する)が、約60%を超えて、より好ましくは約75%を超えて、より好ましくは約90%を超えて、最も好ましくは約95%を超えてないもので有り得る。「実質的に精製された」なる語句は、それらの自然な状態で存在する分子を包含するようには意図されない。好ましくは、この発明の核酸分子およびポリペプチドは実質的に精製される。
【0049】
「形質転換」なる用語は、受容宿主への核酸の導入をいう。「宿主」なる用語は、細菌細胞、菌類、動物もしくは動物細胞、植物もしくは種子または植物細胞、原形質体、カルス、根、塊茎、種子、茎、葉、実生、胚および花粉を含めたいずれかの植物器官もしくは組織をいう。
【0050】
本明細書に用いた「遺伝子組換え植物」は、そのゲノムに、例えば、核または色素体ゲノム、外因性核酸を安定して導入した植物である。
【0051】
導入遺伝子を有するまたは欠く植物または植物系間の相対的な用語としての「同質遺伝子的」なる用語は、当該導入遺伝子を除いて、同一または類似の遺伝的背景を有する植物または系を意味する。例えば、同じ親F2集団からの表現型上で類似または同一の選択を表わすいわゆる姉妹系は、「同質遺伝子的」であると考えられる。タイプ(分子マーカー分析による遺伝子型、圃場観察による表現型または両方)および導入遺伝子につき選択しつつ、反復親として未形質転換の親を用いて、安定した形質転換体植物の子孫が3〜6世代(またはそれを超えて)で未形質転換の親系の植物と交配および戻し交配される場合、得られた遺伝子組み換え系は、その未形質転換の親系に高度に「同質遺伝子的」であると考えられる。
【0052】
「種子」、「穀粒」および「子実」なる用語は、意味において等価であると理解される。穀粒なる用語は、トウモロコシまたはコメ植物の種子の記載に頻繁に用いられる。すべての植物において、種子は、種皮、胚、糊粉および内乳からなる成熟した胚珠である。
【0053】
ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードする核酸
1つの具体例において、本発明は、Moritella marinaからのホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードする新規な核酸を提供する。ある具体例において、核酸は配列番号:2、4、6または8を含む。また、本発明は、配列番号:2、4、6および8を含めたかかる核酸の使用方法を提供する。1つの具体例において、これらの核酸分子は、この発明の文脈において、植物からの種子の油組成物を改変するために用いられる。
【0054】
かかる核酸は、標準PCRTM増幅技術によりテンプレートおよび適当なオリゴヌクレオチドプライマーとしてcDNA、mRNAまたはゲノムDNAを用いて増幅できる。あるいは、それらは、自動DNA合成装置のごとき標準合成技術を用いて合成できる。所望のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドは、種々の方法で同定できる。一例として、所望のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの源、例えば、Moritellaからのライブラリーを検出可能な酵素的または化学的に合成されたプローブでスクリーニングし、そのプローブはDNA、RNAもしくは非自然発生のヌクレオチドまたはその混合物から調製できる。プローブは、通常または低下したストリンジェンシーハイブリダイゼーション法についての公知のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼのポリヌクレオチドから酵素的に合成し得る。また、オリゴヌクレオチドプローブを用いて、源をスクリーニングでき、公知のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ中に保存された配列を含めた公知のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの配列、または所望の精製された蛋白質から得られたペプチド配列に基づくことができる。アミノ酸配列に基づいたオリゴヌクレオチドプローブを縮重して、遺伝子コードの縮重を包含できるか、または、ソース生物の好ましいコドンに有利に片寄らせることができる。また、オリゴヌクレオチドは、公知または疑わしい源からの逆転写したmRNAからのPCRTMについてのプライマーとして用いることができ;PCRTM生成物は、全長cDNAで有り得るか、またはPCRTM生成物を用いて、プローブを生成して、所望の全長cDNAを得ることができる。あるいは、所望の蛋白質を完全に配列決定でき、そのポリペプチドをコードするDNAのトータル合成を行うことができる。
【0055】
一旦所望のゲノムまたはcDNAが単離されると、それは公知の方法によって配列決定できる。かかる方法が誤りを免れないことは当該技術分野において認識され、同一領域の複数の配列決定はルーチンであり、得られた推定配列、特に、反復ドメイン、広範囲の二次構造または異常な塩基組成を有する領域、例えば、高GC塩基含量を持つ領域における測定可能な割合の誤りに導くことが依然として予想される。不一致が生起した場合、再配列決定を行うことができ、特殊な方法を使用できる。特殊な方法は、異なる温度;異なる酵素;より高次元構造を形成するオリゴヌクレオチドの能力を改変する蛋白質;ITPまたはメチル化dGTPのごとき改変されたヌクレオチド;異なるゲル状組成物、例えば、ホルムアミドの付加;問題領域からの異なる距離に位置する異なるプライマーまたはプライマー群;または一本鎖DNAのごとき異なるテンプレートを用いることにより配列決定条件を改変することを含むことができる。また、mRNAの配列決定を使用できる。
【0056】
所望ならば、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードする核酸の配列は、配列が植物宿主における発現を受け入れるように、発現された蛋白質の得られたアミノ酸配列の変更なくして改変できる。本明細書に用いた人工DNAは、自然発生しないDNAポリヌクレオチド分子を意味する。人工DNA分子は様々な方法、例えば、この新しい人工ポリヌクレオチドが遺伝子組換え植物における増強された発現に有用である場合に、等価物、または改善された第2世代の人工ポリヌクレオチドさえも創製するために第1のポリヌクレオチドのコドンの置換に基づくという当該技術分野において知られた方法により設計できる。しばしば、設計態様は、植物、植物タイプ、ファミリーまたは属から単離されたコード配列のコレクションにおけるコドンの出現頻度を集計することによって生成されたコドン使用表を使用する。他の設計態様は、ポリアデニル化シグナル、イントロンスプライス部位、あるいは長いATまたはGCストレッチの配列(米国特許第5,500,365号)の発生を低減することを含む、全長のコード配列またはそのフラグメントを当業者に知られた方法を用いて人工DNAで調製できる。本明細書において考えられる機能を維持する本明細書に開示されたヌクレオチド配列または調節要素の改変は、本発明の範囲内にある。かかる改変は挿入、置換および欠失、特に遺伝子コードの縮重を反映する置換を含む。
【0057】
発明者らは、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を持つポリペプチドを生成するMoritella marinaからDNA配列を単離した。ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードする配列を遺伝子組換え植物、微生物または動物中で発現し、ポリケチドシンターゼの活性化を達成し得る。また、本明細書に供されたホスホパンテテイニルトランスフェラーゼポリヌクレオチドと実質的に同一である、またはホスホパンテテイニルトランスフェラーゼポリペプチドと実質的に同一であるポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドを用いることができる。「実質的に同一の」は、配列番号:5、配列番号:7またはこれらのポリペプチドをコードする配列において、増加する優先度の順に、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼポリペプチド配列に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を示すアミノ酸配列または核酸配列をいう。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの比較は、配列分析ソフトウェア、例えば、GCG Wisconsin Package(Accelrys, San Diego, CA)および MEGAlign(DNAStar, Inc., 1228 S. Park St., Madison, Wis. 53715)のSequence Analysisソフトウェアパッケージを用いて実行し得る。かかるソフトウェアは類似性または同一性の程度を指定することにより、類似する配列と対応する。
【0058】
DNA構築物
本発明は、本明細書に記載された核酸に作動可能に連結された異種プロモーターを含むDNA構築物を提供する。プロモーター、例えば、強力に発現された、弱く発現された、誘導可能に発現された、組織増強して発現された(すなわち、特異的または優先的に組織中で発現された)、器官増強して(すなわち、特異的または優先的に器官中で発現された)および発生的に増強して発現された(すなわち、発生の特定の段階において特異的または優先的に発現された)と記載し得るプロモーターの選択は、当該技術分野における技量内にある。また、同様に、プロモーターとの前記のごとき核酸分子の組合せは、当該技術分野における技量内にある(例えば、Sambrookら、1989参照)。
【0059】
本発明で用いるプロモーターは、限定されるものではないが、細菌、バクテリオファージ、菌類または植物細胞において機能するプロモーターを含む。細菌発現用の有用なプロモーターは、lacZ、Sp6、T7、T5またはE. coli glgCプロモーターである。菌類用の有用なプロモーターは、Saccharomyces cerevisiae Gal1(Westら、(1984))、Saccharomyces pombe nmt1(Maundrell, K.(1990)), Neurospora crassa ccg−1(Freitag M and Selker EU(2005)) およびPichia methanolica AUG1(Invitrogen)を含む。植物細胞用の有用なプロモーターは、ガンマゼインZ27プロモーター、(例えば、Lopesら(1995)参照, L3オレオシンプロモーター(米国特許第6,433,252号)、大麦PER1プロモーター(Staceyら, 1996), CaMV 35Sプロモーター(Odellら 1985)、CaMV 19S(Lawtonら, 1987), nos(Ebertら, 1987)、Adh(Walkerら, 1987)、スクロースシンターゼ(Yangら, 1990)、アクチン(Wangら, 1992)、cab(Sullivanら, 1989)、PEPCaseプロモーター(Hudspethら, 1989)、またはR遺伝子複合体と関連したもの(Chandlerら, 1989)を含む。ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)プロモーター(Richinsら、1987)、アルセリン(arcelin)、トマトE8、パパチン(papatin)、ユビキチン、マンノピンシンターゼ(mas)およびチューブリンプロモーターは、有用なプロモーターの他の例である。
【0060】
遺伝子組換え植物におけるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドの組織特異的発現を駆動するのに用い得る広範囲の種々の植物プロモーター配列がある。事実、本発明の特定の具体例において、用いたプロモーターは、種子特異的なプロモーターである。かかるプロモーターの例は、ナピン(Kridlら, 1991)、ファゼオリン(Bustosら, 1989)、ダイズトリプシン阻害因子(Riggs,ら, 1989)、ACP(Baersonら, 1993)、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(Slocombeら, 1994)、β−コングリシニンの大豆αサブユニット(P−Gm7S alpha’、例えば、Chenら、1986参照), Vicia faba USP(P−Vf.Usp, 例えば、米国特許出願第10/429,516号、配列番号:1、2および3参照)、グロブリンプロモーター(例えば、BelangerおよびKriz,(1991)参照、β−コングリシニンの大豆アルファサブユニット(7Sアルファ)(米国特許出願第10/235,618号、出典明示して本明細書の一部とみなす)およびZea mays L3オレオシンプロモーター(P−Zm.L3、例えば、Hongら, 1997参照)のごときかかる遺伝子からの5’調節領域を含む。
【0061】
トウモロコシにおいて発現されたプロモーターは、トウモロコシ内乳で見出された一群の貯蔵蛋白質であるゼインをコードする遺伝子からのプロモーターを含む。ゼイン遺伝子用ゲノミッククローンが単離され(Pedersenら, 1982;Russellら, 1997)、15kD、16kD、19kD、22kDおよび27kDの遺伝子を含むこれらのクローンからのプロモーターを用いることができる。トウモロコシおよび他の植物中で機能することが知られた他の種子発現増強プロモーターは、以下の遺伝子:Waxy(顆粒結合スターチシンターゼ)、BrittleおよびShrunken 2(ADPグルコース・ピロホスホリラーゼ)、Shrunken 1(スクロースシンターゼ)、分岐酵素IおよびII、スターチシンターゼ、脱分岐酵素、オレオシン、グルテリンおよびBetl1(基底内乳転移層)についてのプロモーターを含む。また、当業者により知られた本発明の実施に有用な他のプロモーターは、本発明により考えられる。
【0062】
さらに、転写エンハンサーまたはエンハンサーの重複を用いて、特定のプロモーターからの発現を増加できる。かかるエンハンサーの例は、限定されるものではないが、Adhイントロン1(Callisら, 1987)、コメアクチンイントロン(McElroyら, 1991;米国特許第5,641,876号)、スクロースシンターゼイントロン(Vasilら, 1989)、トウモロコシHSP70 イントロン(Zm.DnaKともいう)(米国特許第5,424,412号, Brownら) TMVオメガエレメント(Gallieら, 1999)、CaMV 35Sエンハンサー(米国特許第5,359,142号および第5,196,525号, McPhersonら)またはオクトピンシンターゼエンハンサー(米国特許第5,290,924号, Lastら)を含む。また、転写開始部位およびコード配列の開始、すなわち、非翻訳リーダー配列間のDNA配列が遺伝子発現に影響し得るので、特定のリーダー配列を使用したいかもしれない。当業者に利用可能ないずれのリーダー配列も使用し得る。例えば、mRNA安定性を増加または維持することによって、および/または翻訳の不適当な開始を防止することによって、好ましいリーダー配列は、付属的な遺伝子の発現の適正レベルを指令する(Joshi, 1987)。かかる配列の選択は当業者の裁量である。
【0063】
本発明のDNA構築物は、異種の核酸からの転写を終了するためのシグナルとして作用し、得られたmRNAのポリアデニル化を指令するカセットの3’末端付近の配列を含み得る。これらは、一般的に3’非翻訳領域または3’UTRと呼ばれる。転写終止シグナルとして作用できるいくつかの3’エレメントは、Agrobacterium tumefaciensのナパリンシンターゼ遺伝子(nos)(Bevanら, 1983)、ナピン3’非翻訳領域(Kridlら, 1991)、グロブリン3’非翻訳領域(BelangerおよびKriz, 1991)、大豆のAdr12遺伝子からの3’非翻訳領域(オーキシン下方調節)(Wangら, PCT公開WO200250295)またはZ27のごときゼイン遺伝子からのもの(Lopesら, 1995)からのものを含む。また、当該技術分野に知られた他の3’調節要素は、本発明のベクターに用いることができる。
【0064】
本明細書に記載された核酸分子は、いずれかの適当なベクターにクローニングでき、その分子を用いて、いずれかの適当な宿主に形質転換またはトランスフェクトできる。ベクターの選択およびそれらを構築する方法は、当該技術分野に一般的に知られており、一般的な技術的な引用文献に記載されている(一般的には、「Recombinant DNA Part D」(1987)参照)。ベクターは、必要に応じて、ベクターがDNAまたはRNAであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主(例えば、細菌、菌類または植物)のタイプに特異的である転写および翻訳開始、および終止コドンのごとき調節配列を好ましくは含むであろう。
【0065】
環状または線形であるベクターを調製して、原核生物または真核生物の宿主細胞中で機能的な複製系に連結された前記の全核酸配列またはその一部分を含有できる。複製系は、ColE1、2 mμプラスミド、λファージ、f1繊維状ファージ、Agrobacterium種(例えば、A.tumefaciensおよびA.rhizogenes)等に由来できる。
【0066】
複製系および挿入された核酸配列に加えて、ベクターは、形質転換またはトランスフェクトした宿主の選択を可能とする1以上の標識遺伝子を含むことができる。標識遺伝子は、抗生物質、重金属、除草剤等に対する耐性のごとき殺生物剤抵抗性、原栄養性を供する栄養要求性宿主における相補性等を含む。
【0067】
本発明は、本明細書に記載された核酸分子を含む宿主細胞を所望によりベクターの形態で提供する。適当な宿主は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Agrobacterium tumefaciens、Saccharomyces cerevisiaeおよびNeurospora crassaを含めた植物、細菌および菌類の細胞を含む。E. coli宿主は、TB−1、TG−2、DH5α、XL−Blue MRF’(Stratagene, Austin, TX)、SA2821、Y1090およびTG02を含む。植物細胞は、限定されるものではないが、大豆、Brassica campestris、キャノーラ、アブラナ、菜種、ハマナ、カラシ、トウゴマ、ピーナッツ、ごま、綿実、アマニ、サフラワー、アブラヤシ、アマ、ヒマワリ、アルファルファ、トウモロコシ、小麦、大麦、オートミール、ライ麦、雑穀、ソルガムおよびコメを含む。
【0068】
宿主細胞における発現は、一過性または安定な様式で達成できる。一過性発現は、宿主細胞において機能的な発現シグナルを含む導入された構築物から生じるが、その構築物が宿主細胞中で複製されなく、めったに組み込まれないか、あるいは宿主細胞が増殖していない場合に生じる。また、一過性発現は、かかる誘導可能な系が頻繁に低い基礎レベルの発現を示すが、注目する遺伝子に作動可能に連結された調節可能なプロモーターの活性を誘導するこすことにより達成できる。安定な発現は、宿主ゲノムに組み込むことができるか、または宿主細胞中で自己複製する構築物の導入によって達成できる。発現構築物に位置したか、または構築物でトランスフェクトされた選択マーカーの使用を通して注目する遺伝子の安定な発現を選択でき、続いて、そのマーカーを発現する細胞を選択する。安定な発現が組込みに起因する場合、構築物の組込みは、宿主ゲノム内でランダムに生じることができ、あるいは宿主遺伝子座との再結合を標的とするのに十分な宿主ゲノムと相同性の領域を含む構築物の使用を通じて標的とできる。構築物が内因性の遺伝子座に対する標的とされる場合、転写および翻訳の調節領域のすべてまたはいくらかは内因性遺伝子座によって提供できる。
【0069】
宿主細胞における発現は、当業者に知られた発酵技術を含む。発酵した宿主細胞は、Escherichia coliのごとき原核生物、または酵母Saccharomyces cerevisiaeのごとき真核生物、あるいは糸状菌のNeurospora crassaで有り得る。発酵によるPUFAの生産の例は、Mortierella(米国特許第6,319,698号)およびThraustrochytriales(米国特許第6,451,567号)を含む。
【0070】
1を超える遺伝子をエピゾームまたは組み込まれた発現ベクターの使用を介して宿主細胞中に導入および増殖し得る。2以上の遺伝子が別々の複製ベクターから発現する場合、各ベクターは複製の異なる手段を有することが望ましい。組み込まれていてもなかったとしても、導入されたた各構築物は、異なる手段の選択を有し、他の構築物に対する相同性を欠失して、安定な発現を維持し、構築物中の要素の再集合を防止するであろう。調節領域、選択手段、および導入された構築物の増殖方法の賢明な選択は、導入された全てのポリヌクレオチドが所望の生成物の合成を提供するのに必要なレベルで発現されるように実験的に決定できる。
【0071】
ポリペプチド
本発明は、本明細書に記載された核酸分子によってコード化されたホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを提供する。ポリケチドシンターゼは、反復する方法で単純な基質からの複合体分子の合成を触媒する多機能性ポリペプチドよりなる酵素複合体である。Moritella marinaにおいて、PKS複合体は、マロニルCoAおよびアセチルCoAからDHAを合成する。この複合体を活性化のために、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼが必要である。ポリペプチドは、好ましくはアミノ末端およびカルボキシル末端を含む。ポリペプチドは、D−アミノ酸、L−アミノ酸またはD−およびL−アミノ酸の混合物を含むことができる。
【0072】
変異体ポリペプチドを生成するための未変性のアミノ酸配列の改変は、当業者に知られている様々な手段によって、調製できる。例えば、アミノ酸置換は、合成の時点に核酸分子の配列を変更することによって都合よくポリペプチドに導入できる。また、部位特異的変異が、発現ベクターに、改変された配列を含む合成されたオリゴヌクレオチドを連結することによって導入できる。別法として、Walderら(1986);Bauerら (1985);ならびに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号に開示されるごときオリゴヌクレオチド指向の部位特異的変異手順を用いることができる。
【0073】
いずれかの特定の自然発生のアミノ酸についての保存的または中性の置換に影響する合成および自然発生のアミノ酸を選択することは、当業者の技量内にある。当業者は、望ましくは、側鎖の疎水性または極性、側鎖の一般的なサイズ、および生理学的条件下の酸性または塩基性特性を持つ側鎖のpK値の考慮に加えて、いずれかの特定のアミノ酸置換がなされる文脈を考えるであろう。例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジンは、しばしば相互に適当に置換され、よりしばしば、アルギニンおよびヒスチジンが相互に適当に置換される。当該技術分野において知られているように、これは、全ての3つのアミノ酸が塩基性側鎖を有するが、リジンおよびアルギニンの側鎖についてのpK値が、ヒスチジン(約6)によりも相互(約10および12)に非常に接近しているためである。同様に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは、しばしば相互に適当に置換され、但し、グリシンは、適当にではなく頻繁にその群の他のメンバーに代えて置換される。これは、これらの各アミノ酸がポリペプチドに組み入れられた場合に比較的疎水性であるが、グリシンのα−炭素の欠如が、(α−炭素の周囲の)回転のファイおよびプサイ角を非常に立体配座的に自由にさせるので、グリシニル残基は他のアミノ酸が相互に置換される場合にしばしばは生じない立体配座または二次構造における変化を引き起こすことができるためである。頻繁に相互に適当に置換される他の群のアミノ酸は、限定されるものではないが、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群;フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群;およびセリン、トレオニンおよび所望によりチロシンからなる群を含む。加えて、当業者は、自然発生のアミノ酸で合成アミノ酸を容易にグループ化できる。
【0074】
所望ならば、ポリペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドのグリコシル化、アミド化、カルボキシル化またはリン酸化によって、あるいは酸付加塩、アミド、エステル、特に、C末端エステルおよびN−アシル誘導体の創製によって改変できる。また、当該技術分野において知られた方法により、ポリペプチドを改変して、他の部分との共有結合または非共有結合の複合体を形成することにより蛋白質誘導体を創製できる。共有結合の複合体は、化学的部分をポリペプチドを含むアミノ酸の側鎖上あるいはNまたはC末端での官能基に連結することによって調製できる。望ましくは、かかる改変および接合は、ポリペプチド(およびその変異体)の活性に悪影響しない。かかる改変および接合はより大きいまたは小さい活性を有するが、活性は、望ましくは否定されず、未改変のポリペプチドの特性である。
【0075】
ポリペプチド(およびフラグメント、変異体および融合タンパク質)は、多数の従来技術のいずれによっても調製できる。ポリペプチドは、自然発生の源または組み換えの源から単離されているか実質的に精製できる。例えば、組換え蛋白質の場合には、所望の蛋白質をコードするDNA断片を、よく知られている分子遺伝子技術(例えば、Maniatisら, 1989参照)および「実施例」下で本明細書に引用された他の引用文献を用いて適当なベクターにサブクローニングできる。フラグメントは転写でき、引き続いて、蛋白質をin vitroにて翻訳できる。また、(例えば、Clontech, Mountain View, CA;Amersham Life Sciences, Inc., Arlington Heights, IL;Invitrogen, Carlsbad, CA等により製造された)商業的に入手可能なキットを使用できる。ポリメラーゼ連鎖反応を核酸の操作において所望により使用できる。
【0076】
ポリペプチドは、当該技術分野において知られた方法により自動ペプチド合成機を用いて合成できる。別法として、ポリペプチド(およびフラグメント、変異体および融合タンパク質)は、当業者によく知られている標準的ペプチド合成技術を用いて合成できる(例えば、Bodanszky(1984)に要約された)。特に、ポリペプチドは、固相合成(例えば、Merrifield, 1963;Baranyら, 1987;および米国特許第5,424,398号)の手順を用いて合成できる。所望ならば、これは自動ペプチド合成機を用いて行うことができる。t−ブチルオキシカルボニル(t−BOC)または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸保護基の除去および樹脂からの蛋白質の分離は、例えば、低下させた温度での酸処理によって達成できる。次いで、ポリペプチド含有混合物を、例えば、ジエチルエーテルで抽出して、非ペプチドの有機化合物を除去し、合成された蛋白質を、樹脂粉末から(例えば、約25%w/v酢酸で)抽出できる。ポリペプチドの合成後、さらなる精製(例えば、HPLCを用いて)を、いずれかの不完全な蛋白質、ポリペプチド、ペプチドまたは遊離アミノ酸を除去するために所望により行うことができる。アミノ酸および/またはHPLC分析を合成されたポリペプチドについて行ない、その同一性を確認できる。本発明による他の適用のために、化学的な接合により、または当該技術分野に知られた遺伝子手段を介してのいずれかによりより大きな融合タンパク質の一部としてポリペプチドを生成することが好ましいかもしれない。また、この点では、この発明は、そのポリペプチド(またはそのフラグメント)またはその変異体、およびいずれかの所望の特性またはエフェクター機能を有する1以上の他のポリペプチド/蛋白質を含む融合タンパク質を提供する。
【0077】
特定の蛋白質の生成および同定のためのアッセイ方法は、蛋白質の種々の物理−化学的、構造的、機能的または他の特性に基づく。ユニークな物理−化学的特性または構造特性は、蛋白質が、天然または変性ゲル電気泳動または等電点電気泳動のごとき電気泳動手順、あるいはイオン交換またはゲル排除クロマトグラフィーのごときクロマトグラフィー技術によって分離され同定されることを可能にする。個々の蛋白質のユニークな構造を特異抗体の使用のための機会を与え、ELISAアッセイのごとき様式でそれらの存在を検出する。アプローチの組合せを用いて、ウエスタンブロットのごときさらに大きな特異性を達成でき、ここに、抗体を用いて、電気泳動の技術によって分離された個々の遺伝子産物を位置付ける。さらなる技術を用いて、精製後のアミノ酸の配列決定による評価のごとき注目する生成物の同一性を絶対的に確認できる。また、これらは最も一般的なものの中にあるが、他の手順を用いることができる。
【0078】
アッセイ手順は、特に発現された蛋白質が特定の基質および生成物を含む化学反応を触媒できる酵素である場合に、それらの機能性により蛋白質の発現を同定できる。例えば、植物抽出エキスにおいて、これらの反応は、物理的および/または化学的な手順による基質の損失または反応の生成物の生成を提供および定量することによって測定できる。
【0079】
多数の場合において、遺伝子産物の発現は、その発現の表現型の結果の評価によって決定される。かかる評価は、単に視覚観察で有り得、またはアッセイ方法を含み得る。かかるアッセイ方法は、植物の化学組成、形態学または生理的特性における変化を分析することのごとき多数の形態を取ることができる。化学組成は、アミノ酸組成を変化させる酵素または貯蔵蛋白質をコードする遺伝子の発現によって改変でき、これらの変化は、アミノ酸分析またはスターチ量を変化させる酵素によって検出でき、それらは、近赤外線反射分光法によって、またはガスクロマトグラフィーによって検出できる油組成を変化させる酵素によって分析できる。形態学的変化は、より大きな高さまたはより厚い茎を含み得る。
【0080】
この発明の核酸分子、DNA構築物およびポリペプチドは、農業方法および種々のスクリーニングアッセイに用いることができる。例えば、核酸分子を用いて、宿主細胞においてベクターを介するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを発現でき、生物学的試料においてホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードするmRNA転写物を検出でき、サザンブロットを介してホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子における遺伝的改変を検出でき、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを抑制でき、またはホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを上方調節できる。そのポリペプチドを用いて、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼにおける欠失、または植物における低下した活性を有するかまたは活性を有しない変異したホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの存在を補うか、あるいは植物におけるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼにつき直接または間接的のいずれかで過度のレベルの基質を処理できる。あるいは、ポリペプチドを用いて、それらの活性を調整する能力につき作用物質をスクリーニングできる。抗体を用いて、各々のポリペプチドを検出および単離でき、ならびにin vivoでのかかるポリペプチドの有効性を減少できる。
【0081】
植物形質転換
本発明の好ましい実施例において、所望の蛋白質または蛋白質群を発現する遺伝子組換え植物が生成される。植物細胞への所望の蛋白質をコードする所望のポリヌクレオチド配列の導入のための種々の方法は、(1)マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、微粒子媒介送達(微粒子銃または遺伝子銃技術)のごとき物理的方法;(2)ウイルス媒介送達;および(3)アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換を含めて当該技術分野に知られている。
【0082】
植物細胞の形質転換用の最も一般的に用いられている方法はアグロバクテリウム媒介DNA転移プロセスまたは微粒子銃もしくはマイクロプロジェクティル微粒子衝撃媒介プロセスである。典型的には、核形質転換が望ましいが、特に葉緑体またはアミロプラストのごとき色素体を形質転換することが望ましい場合、植物色素体は所望のポリヌクレオチドの微粒子媒介送達を利用して形質転換され得る。
【0083】
アグロバクテリウム媒介形質転換は、アグロバクテリウム属に属する遺伝子操作された土壌細菌の使用を通じて達成される。TiまたはRiプラスミドを保護するAgrobacterium tumefaciens およびAgrobacterium rhizogenesの多数の野生型および安全化株を植物中への遺伝子転移のために用いることができる。遺伝子転移は、例えば、その開示をここに出典明示して本明細書の一部とみなすBidneyらの米国特許第6,265,638号に詳述された、多数の植物種にDNAのいずれかの所望の一部分を運ぶように遺伝子操作できる「T−DNA」として知られる特定のDNAの転移を介してなされる。
【0084】
植物のアグロバクテリウム媒介形質転換は、いくつかの工程を含む。病原性アグロバクテリウムおよび植物細胞を相互に最初に接触させる第一工程は、一般的に「接種」と呼ばれる。接種は、好ましくは、いくらかの植物細胞にいくらかの方法の損傷を伴い、それは、アグロバクテリウム中の病原性因子を活性化するクマリルアルコール、シナピナート(アセトシリンゴンに還元される)、シナピルアルコールおよびコニフェリルアルコールのごとき植物細胞構築物を遊離する。接種後に、アグロバクテリウムおよび植物細胞/組織は、増殖およびT−DNA転移に適した条件下で、数時間〜数日またはそれを超える期間一緒に増殖するのを可能とする。この工程は、「共培養」と命名される。共培養およびT−DNA送達に続いて、植物細胞を殺菌剤または静菌剤で処理して、組織片に接した、および/または組織片を含む容器中に残るアグロバクテリウムを死滅させる。これが非遺伝子組換え植物細胞に対する遺伝子組み換え植物細胞の優先的増殖を促進するためのいずれかの選択的な作用物質の不存在下で行われるならば、これは典型的には「遅延」工程と呼ばれる。遺伝子組換え植物細胞を支持する選択的圧力の存在下で行なわれるならば、それは「選択」工程と呼ばれる。「遅延」が用いられる場合、典型的には、1以上の「選択」工程に続く。
【0085】
微粒子衝撃(ここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす、米国特許第5,550,318号(Adamsら);米国特許第5,538,880号(Lundquistら)、米国特許第5,610,042号(Changら);およびPCT WO95/06128(Adamsら))に関して、微細粒子は核酸で覆われ、推進力によって細胞に送達される。典型的な粒子は、タングステン、白金および好ましくは金からなるものを含む。
【0086】
促進によって植物細胞にDNAを送達する方法の例示的な具体例は、Biolistics Particle Delivery System(BioRad, Hercules, CA)であり、それを用いて、ステンレス鋼またはNytexスクリーンのごときスクリーンを通して、懸濁物中で培養された単子葉植物植物細胞で覆われていたフィルター表面上にDNAまたは細胞で覆われた粒子を推進できる。
【0087】
微粒子衝撃技術は広範囲に適用でき、それを用いて、いずれの植物種も実質的には形質転換し得る。微粒子衝撃によって形質転換された種の例は、ここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす、トウモロコシ(国際公開番号WO95/06128(Adamsら))、大麦、小麦(米国特許第5,563,055号(Townsendら))、コメ、オート麦、ライ麦、サトウキビおよびソルガムのごとき単子葉植物種;ならびにここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす、タバコ、大豆(米国特許第5,322,783号(Tomesら))、ヒマワリ、ピーナッツ、綿、トマトおよび一般的なマメ科植物(米国特許第5,563,055号(Townsendら))を含めた多数の双子葉植物を含む。
【0088】
形質転換方法にかかわらず形質転換された植物細胞を選択またはスコアするために、細胞に導入されたDNAは、再生可能な植物組織において機能する遺伝子を含み、それ以外の毒性化合物に対する植物組織抵抗性を与える化合物を生成する。選択可能、スクリーニング可能、スコア可能なマーカーとしての注目する遺伝子は、限定されるものではないが、β−グルクロニダーゼ(GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ(LUX)、抗生物質または除草剤抵抗性遺伝子を含むであろう。抗生物質抵抗性遺伝子の例は、ペニシリン、カナマイシン(およびネオマイシン、G418、ブレオマイシン);メトトレキセート(およびトリメトプリム);クロラムフェニコール;カナマイシンおよびテトラサイクリンを含む。除草剤耐性に関与する蛋白質をコードするポリヌクレオチド分子は、当該技術分野において知られており、それは、限定されるものではないが、米国特許第5,627,061号(Barryら)および米国特許第5,633,435号(Barryら)および米国特許第6,040,497号(Spencerら)に記載された5−エノールピルビルシキマート−3−ホスフェートシンターゼ(EPSPS)をコードするポリヌクレオチド分子およびグリホサート耐性につき米国特許第5,094,945号(Comai)に記載されたaroAをコードするポリヌクレオチド分子;ブロモキシニル耐性につき米国特許第4,810,648(Duerrschnabelら)に記載されたブロモキシニル・ニトリラーゼ(Bxn)をコードするポリヌクレオチド分子;ノルフルラゾン耐性につきMisawaら、(1993);Misawaら、(1994)に記載されたフィトエンデサチュラーゼ(CcrtI)をコードするポリヌクレオチド分子;スルホニル尿素系除草剤に対する耐性につきSathasiivanら(1990)に記載されたアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS、aka ALS)をコードするポリヌクレオチド分子;ならびにWohllebenら(1988)に記載されたpat遺伝子およびDeBlockら(1987)に記載されたbar遺伝子の双方(各々、グルホシネートおよびビアラホスを供する)を含む。
【0089】
種々の形質転換された組織片からの植物の再生、発生および栽培は、当該技術分野においてよく実証されている。この再生および成長過程は、典型的には、形質転換細胞を選択し、次いで、胚発生の通常の段階ないし根付いた苗木段階を通ってこれらの個別化された細胞を培養する工程を含む。遺伝子組み換えの胚および種子は同様に再生される。その後、得られた遺伝子組み換えの根付いた苗条は、土のごとき適当な植物生育培地中に植えられる。選択的な作用物質に対する接触から生存した細胞、またはスクリーニングアッセイにおいて陽性とスコアされた細胞を、植物の再生を支持する培地中で培養し得る。生育している苗木は、無土壌植物成長ミックスに移され、成熟のための温室またはグロースチャンバへの移行に先立って寒気にさらして強くした。
【0090】
この発明はいずれかの形質転換可能な細胞または組織で用いることができる。本明細書に用いた形質転換可能なにより、植物を生じさせるさらなる繁殖ができる細胞または組織を意味する。当業者ならば、多数の植物細胞または組織が形質転換でき、外因性DNAの挿入および適当な培養条件の後、植物細胞または組織は分化した植物に形成できることを認識している。これらの目的に適する組織は、限定されるものではないが、未成熟胚、胚盤組織、懸濁細胞培養物、未成熟花序、苗条分裂組織、結節組織片、カルス組織、胚軸組織、子葉、根および葉を含むことができる。上記に引用されたTomesら’783特許は、サイトカイニンでの処理に続いて、子葉結節組織中の未分化細胞が、分裂組織細胞に分化するのを可能とし、細胞が、形質転換についての感受性を改善すると述べられる発生のG1および分裂相間の相に入ることを可能にするのに十分な期間培養する方法を記載する。
【0091】
いずれの適当な植物培養培地も用いることができる。適当な培地は、限定されるものではないが、オーキシン、サイトカイニン、ABAおよびジベレリンを含めたさらなる植物成長調整剤を補足したMS基礎培地(Murashige およびSkoog, 1962)またはN6基礎培地(Chuら, 1975)を限定されるものではないが含む。当業者ならば、適当に補足された場合に植物組織成長または発生を支持し、植物の形質転換および再生に適した組織培養培地の種類に精通している。これらの組織培養培地は、商業的調製物として購入できるか、または習慣的に調製または改変できる。当業者は、形質転換および再生に用いられる栄養素および発育調節物質のごとき培地および培地補足物ならびに培養中の光量、pHおよび培養温度のごとき他の培養条件が、注目する特定の品種につき最適化できることを知っている。
【0092】
DNA構築物が遺伝子組換え植物中に安定して組み入れられ、作動可能であることが確認された後、それは、性的交配によって同一またはもう一つの性的に互換性の種の他の植物に導入できる。多数の標準育種技術のいずれも、交配される種に依存して用いることができる。従って、本発明は、本発明により直接的に形質転換されたまたは形質転換された細胞から再生された植物だけでなく、かかる植物の子孫も包含する。本明細書に用いた「子孫」なる用語は、本発明に従って調製されたいずれかの世代の親植物の子孫を示し、その子孫は、本発明に従って調製された、選択されたDNA構築物を含む。本明細書に開示された開始植物系に対して、1以上のさらなる導入遺伝子または対立遺伝子を有する植物系を供するための植物を「交配する」は、特定の配列が、開始系を本発明の導入遺伝子または対立遺伝子を含むドナー植物系と交配させることにより植物系に導入されることを生じる技術と定義される。これを達成するために、例えば、下記工程をを行なうができるであろう。(a)第1(開始系)および第2(所望の導入遺伝子または対立遺伝子を含むドナー植物系)の親株の種子を植え;(b)花を生じる植物に第1および第2の親植物の種子を生育させ;(c)第1の親植物からの花を第2の親植物からの花粉で授粉し;次いで、(d)授精した花を生じる親植物で生成された種子を収穫する。
【0093】
戻し交配は、(a)所望の遺伝子、DNA配列または要素を含む第1の遺伝子型の植物を、該所望の遺伝子、DNA配列または要素を欠く第2の遺伝子型の植物に交配し;(b)所望の遺伝子、DNA配列または要素を含む1以上の子孫植物を選択し;(c)第2の遺伝子型の植物に子孫植物を交配し;次いで、(d)所望のDNA配列を第1の遺伝子型の植物から第2の遺伝子型の植物に移す目的で、工程(b)および(c)を繰り返す工程を含むプロセスと本明細書で定義される。
【0094】
植物遺伝子型へのDNA要素の遺伝子移入は、戻し交配転換のプロセスの結果と定義される。DNA配列が遺伝子移入された植物遺伝子型は、戻し交配で変換された遺伝子型、系、同系交配またはハイブリッドといえる。同様に、所望のDNA配列を欠く植物遺伝子型は、未変換の遺伝子型、系、同系交配、またはハイブリッドをいう。
【0095】
種子、ミール、油、および種子、ミールおよび油を含む生成物
また、この発明は、約10%を超える、より好ましくは約25%を超える、より好ましくは約50%を超える、さらにより好ましくは約75%を超える、またはより好ましくは約90%を超える種子がこの発明の植物に由来する種子である場合に、約1000粒を超える、より好ましくは20,000粒を超える、さらにより好ましくは40,000粒を超える種子の容器を提供する。
【0096】
また、この発明は、約10%を超える、より好ましくは約25%を超える、より好ましくは約50%を超える、さらにより好ましくは約75%を超える、またはより好ましくは約90%を超える種子がこの発明の植物に由来する種子である場合に、約10kgを超える、より好ましくは約25kgを超える、さらにより好ましくは約50kgを超える種子の容器を提供する。
【0097】
この発明の植物またはその器官のいずれも収穫し得、所望により、飼料、ミールまたは油調製物を生成するために処理し得る。この目的のための特に好ましい植物器官は収穫された穀粒であるが、他の植物器官を収穫し、わらまたはサイレージに用いることができる。飼料、ミールおよび油調製物を生成する方法は当該技術分野において知られている。例えば、米国特許第4,957,748号;第5,100,679号;第5,219,596号;第5,936,069号;第6,005,076号;第6,146,669号;および第6,156,227号参照。この発明の穀粒またはミールは他の穀粒またはミールに混合し得る。
【0098】
方法
本発明は、増加した含量のDHAまたはEPAを持つ遺伝子組換え植物を供する方法を提供する。この方法は、例えば、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼならびにPKS複合体をコードするDNAを植物細胞に導入し、遺伝子組み換え細胞からの増加したDHAまたはEPA含量を持つ植物を再生することを含み得る。
【0099】
より詳細には、本発明は、DHAまたはEPAを含有する植物油を調製する方法を提供し、(a)ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子に作動可能に連結された異種プロモーターを含むDNA構築物で形質転換された宿主細胞を含む植物を生育し;(b)種子を生成し;次いで、(c)種子を処理して油を得る工程を含み、ここに、そのDNA分子は、5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で、配列番号:6もしくは配列番号:8またはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド;配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド;配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;配列番号:1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および配列番号:3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなる群から選択され、宿主細胞はさらにポリケチドシンターゼを含む。
【0100】
本発明は、上昇したレベルのDHAまたはEPAを含み得る遺伝子組換え植物を供する方法をさらに提供し、該上昇したレベルは、形質転換されていない植物で判明したレベルより大きい。
【0101】
食事補給について、精製されたPUFA、形質転換された植物もしくは植物器官、またはその誘導体を処方された料理用油、脂肪またはマーガリンに組み込みことができるので、通常の使用において、受容者は所望量を受け取るであろう。また、PUFAは、乳児用調合乳、栄養剤または他の食物製品に組み込むことができ、抗炎症またはコレステロール低下剤としての使用を見出し得る。
【0102】
本明細書に用いた「食用組成物」は、食料、栄養物質および医薬組成物のごとき、哺乳動物によって摂取し得る組成物と定義し得る。本明細書に用いた「食料」とは、哺乳動物用の食物としての使用に用いるまたは調製できる、あるいは食物(フライ油のごとき)または食品添加物の調製に用い得る物質を含む。例えば、食料は、ヒト消費に用いられた動物または、例えば、卵のごときそれからのいずれかの生成物を含む。典型的な食料は、限定されるものではないが、飲料(例えば、ソフトドリンク、炭酸飲料、混合準備(ready to mix)飲料)、注入された食物(例えば、果物および野菜)、ソース、調味料、サラダドレッシング、果実液、シロップ、デザート(例えば、プディング、ゼラチン、アイシングおよび充填物、焼かれた品物、およびアイスクリームおよびシャーベットのごとき冷凍デザート)、ソフト凍結生成物(例えば、ソフト凍結クリーム、ソフト凍結アイスクリームおよびヨーグルト、乳または非乳のホイップトッピング)、油および乳化生成物(例えば、ショートニング、マーガリン、マヨネーズ、バター、食用油およびサラダドレッシング)ならびに中間水分食物(例えば、コメおよびドッグフード)を含む。
【0103】
さらに、本明細書に記載された食用組成物は、食物および飲料中に含まれる添加剤または栄養補助食品として摂取できる。これらは、種々のビタミンおよび無機質のごとき栄養物質と一緒に処方でき、栄養飲料、豆乳およびスープのごとき実質的に液状組成物;実質的に固形組成物;およびゼラチンに組み込むことができるか、または種々の食物に組み込まれる粉末の形態で用いることができる。かかる機能または健康食品中の有効成分の含量は、典型的な医薬中に含まれていた用量に同様であり得る。
【0104】
また、精製されたPUFA、形質転換された植物または植物器官は、動物、特に家畜、飼料に組み込み得る。このように、動物自体は、PUFAの豊富な食事から利益を得ることもできるが、かかる家畜から生成された食物製品のヒト消費者は同様に利益を得ることもできる。
【0105】
医薬用途(ヒトまたは家畜)について、組成物は一般的に経口投与され得るが、うまく吸収され得るいずれの経路、例えば、非経口的(すなわち、皮下、筋肉内にまたは静脈内)、直腸、経膣的または局所的、例えば、皮膚軟膏もしくはローション剤としてによっても投与できる。本発明のPUFA、形質転換された植物または植物器官は、単独または医薬上許容される担体もしくは賦形剤と組み合わせて投与し得る。利用可能な場合、ゼラチンカプセル剤は経口投与の好ましい形態である。また、前記のような食事補給は、経口経路の投与を提供できる。本発明の不飽和酸は、コンジュゲートした形態、または脂肪酸の塩、エステル、アミドまたはプロドラッグとして投与され得る。いずれの医薬上許容される塩も本発明によって包含され;特に、ナトリウム、カリウムまたはリチウム塩が好ましい。また、PCT公開WO96/33155中で見出されるN−メチルグルカミンのごときN−アルキルポリヒドロキサミン塩が包含される。好ましいエステルはエチルエステルである。また、固体塩としてのPUFAを錠剤形態で投与できる。静脈内投与について、PUFAまたはその誘導体はイントラリピッドのごとき市販製剤に組み込み得る。
【0106】
実施例
以下の実施例は本発明の具体例を示すために含まれる。以下の実施例に開示された技術は、発明者らによって見出された技術を表し、本発明の実施に良好に機能することが当業者によって理解されるであろう。しかしながら、当業者は、本開示に徴して、開示される特定の具体例において多数の変更を行なうことができ、依然として、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく同様または類似する結果を得ることを認識するであろう。より詳細には、化学的および生理学的の双方に関連するある種の作用物質が本明細書に記載された作用物質と置換し得るが、その同一または類似する結果が達成されるであろうことは明白であろう。当業者に明白なかかる同様の置換および改変のすべてが、添付された特許請求の範囲により規定された本発明の精神、範囲および概念内にあると考えられる。
【0107】
実施例1
ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ配列のクローニング
3つの細菌性ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをクローニングした。Shewanella SCRC−2738(配列番号:17)からのホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(ppt)のアミノ酸配列を用いて、EPAまたはDHA生合成において機能する、新規なpptにつき公のデータベースを検索した。この探索は、Shewanella oneidensis MR−1(配列番号:1)(So−ppt)およびColwellia psychrerythraea(配列番号:3)(Cp−ppt)からの推定pptを与えた。Shewanella oneidensis MR−1(配列番号:2)およびColwellia psychrerythraea(配列番号:4)からのpptの核酸配列は、以下のプライマー対を持つExpand High Fidelity PCR system(Roche, Applied Science, Indianapolis, IN)を用いてクローニングした。
Shew new 5’: tcgagctcgcatatgaagattgagcttttttttatacc(配列番号:9)
Shew 3’: tcttaattaattagtcagccaaactagccgc(配列番号:10)
Colwe new 5’: tcgagctcgcatatgacttctttttctcaatctg(配列番号:11)
Colwe 3’: tcttaattaattagatttcctgataaccaagtag(配列番号:12).
【0108】
その遺伝子を、ShewanellaおよびColwelliaのpptについて、各々、55℃および52℃に設定された融解温度で25サイクルの間増幅した。PCR生成物はNdeIおよびPacIで消化し、NdeIおよびPacIで消化したNovagen pACYC−Duet−1(1(EMD Biosciences, Darmstadt, Germany)に連結した結果、各々、pMON68081(図1)およびpMON68080(図2)を形成した。
【0109】
Moritella marinaホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(Mm−ppt)をクローニングするために、Shewanella SCRC−2738ppt(配列番号:18)、C.psychrerythraea pptおよびS.oneidensis MR−1 pptのヌクレオチド配列を整列させて、これらの配列の中で最も保存された領域を同定した。So−ppt(配列番号:2のbps 425−635)およびCp−ppt(配列番号:4のbps 389−596)における保存されたヌクレオチド配列の領域は、この整列によって同定され、この領域の配列を選定して、鋳型DNAとしてC.psychrerythraeaおよびS.oneidensis MR−1からのゲノムDNA、ならびに以下のプライマー:
Shewanella F1 taggtgtcgatattgagcggg(配列番号:13)
Shewanella R1 tcaaaggcaaaggattttaac(配列番号:14)
Colwellia F1 tcggttgtgatgttgaaaatac(配列番号:15)
Colwellia R1 ttaaaactaaaatcagcgagt(配列番号:16)
を用いて、プローブを生成した。
【0110】
ジゴキシゲニン標識プローブをPCR DIG Probe Synthesis Kit(Roche)を用いて、94℃、55℃および65℃にて各30秒の30サイクルに続いて、65℃にて7分間のインキュベーション、および4℃での引き続いてのインキュベーションという製造者のプロトコールにより生成した。ジゴキシゲニン標識プローブをサザンハイブリダイゼイションに用いて、陽性対照としてS. oneidensis MR−1およびC. psychrerythraeaで、M. marina合計ゲノムDNAにおける相同性配列を探索した。ハイブリダイゼーションは、製造者のプロトコールに従いDIG Easy Hyb(Roche)を用いて30℃で行った。フィルターは、室温にて0.5×SSC、0.1%SDSを用いて2回洗浄した。Dig標識プローブは、製造者プロトコールに従い、抗ジゴキシゲニン−AP、FabフラグメントおよびDig WashおよびBlock Buffer Set(Roche)を用いて視覚化した。
【0111】
M. marina DNAからの最強のシグナルは、Colwelliaプローブを用いて得た。いくつかの場合に、これらのシグナルは、Shewanellaプローブを用いて、M. marina DNAから得た弱いシグナルと一致した。
【0112】
サザンハイブリダイゼイション実験に基づいて、M. marinaDNAのBglII消化物およびPstI消化物を選定して、ハイブリダイズしているフラグメントをクローニングした。合計ゲノムDNAはBglIIまたはPstIで消化し、アガロースゲル上でサイズ分画し、適当に大きさで分類したフラグメントを切り取った。DNA断片は、Qiagen Gel Extraction kit(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。分画したDNAのアリコートを製造者プロトコールに従い、アガロースゲル上で泳動し、Turboblotter(Schleicher & Schuell, Keene, NH)を用いてナイロン膜(Roche, Mannheim, Germany)にブロットした。標的フラグメントをColwelliaプローブを用いてサザンハイブリダイゼイションにより同定した。
【0113】
BglII画分5およびPstI画分4を選定して、pSP72(Promega, Madison, WI)中で部分的ライブラリーを生成した。これらのライブラリーをEscherichia coli DH5αにトランスフォームし、クローンのプールを一晩の増殖で96ウェルプレートのウェルに等分した。培養物アリコートを遠心沈殿させ、上清を捨て、細胞ペレットを10μlの10%SDS溶液に再懸濁させた。細胞ペレットを100℃に1分間加熱し、ナイロン細胞膜(Roche)上にスポットした。DNAは、製造者プロトコールに従い、1.5M NaClを含有する0.5M NaOH中で5分間のインキュベーションにより変性させ、1.5M NaClを含有するpH7.6の0.5Mトリス/HCl中での5分間のインキュベーションにより中和し、2×SSC中で5分間洗浄し、Stratagene UV−Stratalinker 2400(Stratagene, La Jolla, CA)中での1分間のUVインキュベーションにより固定した。ブロットはColwellia pptプローブで探査した。陽性シグナルは起原のウェルに遡り、それらのウェルからのアリコートを単一のコロニーを得るためにプレートした。それらの単一コロニーは100mg/lのカルバンピシリンを含有する250μl LBに接種した。細胞を増殖させ、前記のハイブリダイゼーション手順を繰り返して、単一の陽性クローンを含有するウェルを同定した。陽性クローンを増殖させ、プラスミドDNAを単離し、BglII、PvuII、PstIまたはSalIで消化した。これらの消化物をサザンハイブリダイゼイションに用いて、陽性クローンを確認した。この点で、残りのクローンはすべて陽性であると判明した。
【0114】
最終クローンのうち3つ(2つのBglIIクローンおよび1つのPstIクローン)をDNA配列解析のために選定した。完全な配列のバイオインフォマティクス解析は、PstIクローンが部分的なMm−pptだけを含むことを明らかにしたが、BglIIクローンは、完全なオープンリーディングフレームを含んだ。3つのクローンすべての完全なDNA配列は、1つのコンチグコンティグにおいて組み立てた。1つのBglIIクローンを、さらなるクローニング実験のために選定した(pMON96400)。開始コドンがTTG(Mm−ppt longという)であるならば、Mm−pptの推定アミノ酸配列は配列番号:5に示される。Metを用いる代替的な開始コドンは、配列番号:5のアミノ酸43にて見出される(Mm−ppt short 配列番号:7というポリペプチドを得た)。Mm−ppt longの核酸配列は配列番号:6である。Mm−ppt shortの核酸配列を配列番号:8に示す。本発明のPptのアミノ酸関連性の比較を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
実施例2
Escherichia coliにおけるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ配列の発現
実施例1に記載したpptの機能性を示すために、Moritella marinaポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子を、1組の4つの適合性E. coli発現ベクターのNovagen pDUET ベクター(EMD, Biosciences, Darmstadt, Germany)にクローニングした。このPKSは、核酸orf5(配列番号:20)、orf6(配列番号:22)、orf7(配列番号:24)およびorf8(配列番号:26)によりコード化された4つのポリペプチドからなり、それらは、米国6,140,486号において、各々、orf6、orf7、orf8およびorf9として記載されている。発現ベクターpMON94547(Orf5およびOrf6)(図3)、pMON94544(Orf7)(図4)およびpMON94534(Orf8)(図5)をpDUETベクターのうちの3つを用いて構築した。第4のpDUETベクターはppt発現に用いた。
【0117】
酵素的に活性なPKSを得るために、Orf5発現産物は、Pptによって触媒されるパンテテイニル化を必要とする。細菌の各pptをpACYC−DUET−1にクローニングした。pMON68081およびpMON68080の構築物を実施例1に記載する。同様に、2つの異なる推定M. marina pptのMm−ppt shortまたはMm−ppt longをColwelliaおよびShewanella pptと同一ベースのベクターにクローニングして、各々、pMON68084(図6)およびpMON68085(図7)を得た。Mm−ppt long PCRTMプライマー(配列番号:27)は推定TTG開始をATGに変更した。次いで、各pptをE. coliにおいてM. marina PKS遺伝子と一緒に発現させ、24時間培養し、次いで、凍結乾燥したE. coli細胞を、硫酸/メタノールで直接的にメチル化し、脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーによってEPAおよびDHA含量につき分析する。結果を以下の表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
E. coli中のいずれかのテストしたホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを含む完全なMoritella marinaPKSの共発現の結果、DHAが蓄積するが、Pptの共発現のないM. marina PKSの発現の結果、DHA蓄積は生じなかった。また、不完全なPKS(Orf8を欠く)でのCp−pptの共発現の結果、DHA蓄積は生じなかった。これらの結果は、テストした全てのPPTがM. marina PKSをパントテイニル化する結果、活性な多酵素複合体を形成することを示す。
【0120】
Orf7(米国特許第6,140,486号におけるOrf8)がPUFA産生PKSの最終生産物において鎖長を制御することを示した。Shewanella putrefaciensのPKSはEPAを生成する。S.putrefaciens PKSクラスターを含有するE. coliの実験において、orf7欠損変異体は、Moritella marina orf7を補足した場合にDHAを生成した。PKSを活性化するために用いたPptは生成物を変更しない、従って、この発明のPptを用いて、EPA産生PKSと組み合わせた場合にEPAを、ならびにDHAを産生するPKSと組み合わせた場合にDHAを生成する。
【0121】
実施例3
植物におけるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ配列の発現
植物におけるDHAを合成するためのM. marina pptを含むM. marina PKSの能力を示すために、いくつかの植物発現カセットを生成した。orf5〜8用の遺伝子を双子葉植物における発現のために改変した。非内因性蛋白質をコードする配列は植物においてうまく発現し得ないことが知られている(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第5,880,275号)。従って、Orf5〜8(配列番号:19、21、23および25)についての本来のPKSポリペプチド配列を用いて、人工蛋白質をコードするポリヌクレオチド配列を、1)高度に発現した大豆タンパクのものに類似するコドン利用バイアスを用いて、および2)従前に特徴づけられ、植物中でmRNA安定性に影響することが知られた要素を不安定にするRNAを除去し(米国特許第5,880,275号)、ATG開始コドン(Joshiら、1997年)に先立ってKozak配列を導入することによって設計および構築した。得られた改変したポリヌクレオチド配列は本来のポリペプチドに配列において同一であるポリペプチドをコードする。
【0122】
バイナリーベクターpMON97063(図8)は、(L−Ph.DnaKリーダーでのFMV.35S−enhプロモーターの制御下での)orf5(コドン改変した、配列番号:28)用の発現カセット、ならびに(CaMV35S−enhプロモーターおよびL−CaMV35Sリーダーの制御下での)Mm−ppt short(配列番号:8)を含む。このベクターは選択マーカーとしてBar遺伝子を運ぶ。バイナリーベクターpMON94563(図9)を、(L−CaMV35SリーダーでのCaMV35S−enhプロモーターの制御下での)orf6(コドン改変した、配列番号:29)、(L−Ph.DnaKリーダーでのFMV35S−enhプロモーターの制御下での)orf7(コドン改変した、配列番号:30)、ならびに(L−CaMV35SリーダーでのCaMV35S−enhプロモーターの制御下での)orf8(コドン改変した、配列番号:31)用の発現カセットのクローニングによって生成した。pMON94563は、グリホサート抵抗性を供するCP4マーカーを運ぶ。バイナリーベクターpMON97066(図10)はpMON94563と同じ発現カセットを含むが、orf7カセットは、それに続く代わりにorf6カセットに先行する。すべての構築物はDNA配列決定によって確認した配列であった。
【0123】
バイナリーベクター対のpMON97063およびpMON94563、またはpMON97063およびpMON97066を、アグロバクテリウム媒介形質転換を用いるArabidopsis thalianaに共形質転換する。植物を再生し、形質転換したR1 Arabidopsisの葉材料を植え、これらの植物のR2種子を脂肪酸含量および組成につき分析する。
【0124】
全ての4つのPKS遺伝子およびpptを保護する単一の複数遺伝子を生成するために、低コピー数のバイナリーベクターpMON83934をHindIIIおよびNotIで消化し、DNAオリゴマーMCS−3(配列番号:32)およびMCS−4(配列番号:33)からなるポリリンカーと連結した。得られたベクターはpMON68091と命名した。orf6、orf7、orf8用の発現カセットおよびCP4選択マーカーをpMON94563からのHindIII/BsiWI消化物によって切り取り、HindIII/BsiWIで消化したpMON68091に連結した。得られたバイナリーベクターを、AscIおよびBsiWIで消化し、BsiWI/AscI消化物によって切り取られたpMON97063からのorf5およびMm−pptを含有する発現カセットと連結した。得られたバイナリーベクターのpMON96401(図11)をアグロバクテリウム媒介形質転換によってArabidopsis thalianaおよび大豆に形質転換する。植物を再生し、これらの植物からの葉および種子材料を脂肪酸含量および組成につき分析する。
【0125】
pMON96401を含む48個のR1事象を、Arabidopsisにおいて生成した。この試験からの成熟したR2種子をガスクロマトグラフィーによって分析した。分析した48個の事象のうちの9つはDHAを生成した(表3)。
【0126】
【表3】

【0127】
pMON96401種子で形質転換したR2 Arabidopsisの4つのDHA含有事象の分子特徴付けを表4に表す。データは、DHAを生成した事象がTaqMan(Applied Biosystems, Foster City, CA) エンドポイントアッセイにより決定された5つの導入遺伝子の存在に陽性であったことを示す。
【0128】
【表4】

【0129】
pMON96401 Arabidopsis種子のR3世代について、表現型はガスクロマトグラフィーによって0.025〜0.1%の範囲のDHAを持続した。ガスクロマトグラフィーピークは、標準としての魚油を用いる飛行質量分析法のガスクロマトグラフィー/時間によりDHAと確認した。
【0130】
Moritella marina PKSの種子特異的発現のために、本来またはコドン変更遺伝子は、p7Sa、p7Sa’、Arcelin−5、USP88、pNapin、pFAEまたはpOleosinのごとき種子に特異的なプロモーターを用いて単一の遺伝子発現カセットとしてクローニングされる。引き続いて、これらの発現カセットを組み立て、ベースベクターとしてpMON83934のごとき低コピー数バイナリーベクターを用いて単一のバイナリーベクターにおける5つの遺伝子をすべて組み合わせる。得られた5−遺伝子ベクター(それらの各々は4つのPKS遺伝子すべて+ppt発現カセットを保護する)は、相互に対し、変化するオーダーまたは配向における発現カセットを含み得る。これらのベクターを大豆に形質転換し、得られた大豆種子を、脂肪酸含量および組成につき分析する。
【0131】
M. marina PKSおよびM. marina pptの種子特異的発現用の多重遺伝子ベクターの例を以下に述べる。双子葉植物のコドンを増強したPKSおよびppt遺伝子の種子特異的発現用の発現カセットを表5に記載されるように組み立てる。
発現カセットを頭〜尾配向で組み立てる結果、pMON78528を形成する(図12)。このバイナリーベクターは、アグロバクテリウム媒介形質転換を用いて大豆およびArabidopsisに転換し、得られた種子を、脂肪酸含量および組成につき分析する。
【0132】
【表5】

【0133】
トウモロコシにおけるDHAを合成するための、M. marina pptと一緒に、M. marina PKSの能力を示すために、いくつかの植物発現カセットを生成する。orfs5〜8およびpptについての遺伝子を単子葉植物における発現のために改変する。非内因性蛋白質をコードする配列が植物中で良好に発現しないかもしれないことが知られている(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第5,880,275号)。従って、従前に記載した本来のorfsおよびpptポリペプチド配列を用いて、1)高度に発現したトウモロコシ蛋白質のものに類似するコドン使用バイアスを用いることによって、および2)従前に特徴づけられ、生育して(in planta)mRNA安定性に影響することが知られた要素を不安定にするRNAの除去(米国特許第5,880,275号)によって、人工蛋白質をコードするポリヌクレオチド配列を設計および構築する。得られた修飾されたポリヌクレオチド配列は、本来のポリペプチドに配列において同一のポリペプチドをコードする。形質転換した組織片は、改変したポリヌクレオチド配列を含むベクターについてのAgrobacterium tumefaciens媒介形質転換を介して得る。植物は形質転換した組織から再生する。次いで、注目する遺伝子の発現レベルならびにDHAまたはEPAを含めた油組成につき温室生育植物を分析する。
【0134】
実施例4
ポリケチドシンターゼ配列のクローニング
8つの候補ポリケチドシンターゼ遺伝子を2種からクローニングした。M. marina PKS遺伝子の推定アミノ酸配列(配列番号:19、21、23および25)を用いて、Shewanella oneidensis(ATCC番号700550)およびColwellia psychrerythreae(ATCC番号BAA−681)における新規なポリケチドシンターゼ遺伝子に利用可能なデータベースを検索した。S.oneidensisはEPAを蓄積し、一方、C.psychrerythreaeはDHAを蓄積する。これに基づいて、これらの細菌におけるPUFA生産はPKSメカニズムに起因するであろうと考えられた。その探索は、各細菌からの1組の4つの候補PKS遺伝子を与えた。PCRクローニング技術を用いて、これらの遺伝子をTOPOクローニングベクターにクローニングし、配列確認し、次いでデュエット発現ベクターにサブクローニングした(表6参照)。E. coli中のM. marina orf6、orf7、orf8およびpptと一緒のS.oneidensis orf5の発現は、ガスクロマトグラフィーによって測定された0.2%以内のDHAの形成を生じることが判明し、S.oneidensis orf5の予測された機能を確認した。同様に、表6にリストした各遺伝子の機能を、E. coliにおけるM. marina PKS遺伝子での発現によって、またはShewanellaまたはColwelliaからの完全なPKS遺伝子、あるいは、E. coli中の2種の組合せの発現によって確認する。あるいは、機能は植物中で示す。
【0135】
【表6】

【0136】
参考文献
以下にリストした参考文献は、本明細書に使用した方法、技術および/または組成を補足する、説明する、それらの背景を供する、あるいはそれらを教示する範囲までここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0137】
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【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、ベクターpMON68081の地図を示す。
【図2】図2は、ベクターpMON68080の地図を示す。
【図3】図3は、ベクターpMON94547の地図を示す。
【図4】図4は、ベクターpMON94544の地図を示す。
【図5】図5は、ベクターpMON94534の地図を示す。
【図6】図6は、ベクターpMON68084の地図を示す。
【図7】図7は、ベクターpMON68085の地図を示す。
【図8】図8は、ベクターpMON97063の地図を示す。
【図9】図9は、ベクターpMON94563の地図を示す。
【図10】図10は、ベクターpMON97066の地図を示す。
【図11】図11は、ベクターpMON96401の地図を示す。
【図12】図12は、ベクターpMON78528の地図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)5×SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の条件下で配列番号:6もしくは配列番号:8、またはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ここに、該ポリヌクレオチドは、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を持つポリペプチドをコードする;
(b)配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド;および
(c)ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を持つポリペプチドをコードし、配列番号:5もしくは配列番号:7のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリヌクレオチドよりなる群から選択される配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
異種プロモーターに作動可能に連結されるとさらに規定される請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1記載の単離されたポリヌクレオチドに作動可能に連結された異種プロモーターを含むDNA構築物。
【請求項4】
プロモーターが原核細胞において機能的である請求項3記載のDNA構築物。
【請求項5】
プロモーターが真核細胞において機能的である請求項3記載のDNA構築物。
【請求項6】
プロモーターが植物細胞において機能的である請求項5記載のDNA構築物。
【請求項7】
プロモーターが種子増強プロモーターである請求項6記載のDNA構築物。
【請求項8】
宿主細胞において機能的なプロモーターに作動可能に連結するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子で形質転換された宿主細胞であって、DNA分子は、
(a)請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号:1のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(c)配列番号:3のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなる群から選択される配列を含む該宿主細胞。
【請求項9】
ホスホパンテテイン結合部位を含むポリケチドシンターゼポリペプチドをコードするDNA分子をさらに含み、ポリケチドシンターゼポリペプチドをコードするDNA分子は、異種プロモーターに作動可能に連結される請求項8記載の宿主細胞。
【請求項10】
ポリケチドシンターゼポリペプチドが、Moritella marinaからのホスホパンテテイン結合部位を含む請求項9記載の宿主細胞。
【請求項11】
配列番号:19のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリケチドシンターゼポリペプチドをコードするDNA分子をさらに含む請求項9記載の宿主細胞。
【請求項12】
植物細胞である請求項8記載の宿主細胞。
【請求項13】
菌類または細菌細胞である請求項8記載の宿主細胞。
【請求項14】
該宿主細胞と同じ遺伝子型の細胞に対し、改変された脂肪酸生合成を示すが、そのDNA分子を欠失する請求項8の宿主細胞。
【請求項15】
植物において機能的なプロモーターに作動可能に連結するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子を含む遺伝子組換え植物であって、DNA分子は、
(a)請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号:1のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(c)配列番号:3のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなる群から選択される配列を含む該遺伝子組換え植物。
【請求項16】
キャノーラ、Brassica campestris、アブラナ、菜種、大豆、ハマナ、カラシ、トウゴマ、ピーナッツ、ごま、綿実、アマニ、サフラワー、アブラヤシ、アマ、ヒマワリ、トウソルガム、コメ、大麦、雑穀、ライ麦、小麦、オート麦、アルファルファおよびソルガムよりなる群から選択される請求項15記載の植物。
【請求項17】
ポリケチドシンターゼをコードするDNA分子を含むとさらに規定される請求項15記載の植物。
【請求項18】
種子がDNA分子を含む請求項15記載の遺伝子組換え植物の種子。
【請求項19】
(a)請求項15記載の遺伝子組換え植物またはその器官を得;次いで
(b)該食物または飼料をそれから製造する
工程を含む食物または飼料の製造方法。
【請求項20】
食物または飼料が、油、サイレージ、ミール、穀粒、スターチ、粉末または蛋白質である請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項19記載の方法によって製造され、かつ請求項1記載の単離されたポリヌクレオチドを含む検出可能な核酸分子を含む食物または飼料組成物。
【請求項22】
請求項 の方法によって製造された食物または飼料組成物であって、請求項15記載の植物は、ポリケチドシンターゼをコードするDNA分子を含み、食物または飼料組成物は、ドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸を含む該食物または飼料組成物。
【請求項23】
植物がポリケチドシンターゼをコードするDNA分子およびホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA分子を欠失する場合に、植物はドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸を生成しない種である請求項21記載の食物または飼料組成物。
【請求項24】
(a)ポリケチドシンターゼをコードするDNA分子を含む植物の種子において、ドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸を生成するために、(i)請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド配列、(ii)配列番号:1のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および(iii)配列番号:3のポリペプチド配列に少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなる群から選択されるポリヌクレオチドを発現させ;次いで
(b)該種子からドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸を得る工程を含むドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸の製造方法。
【請求項25】
ドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸を含む、請求項24により調製された植物から製造された食物または飼料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−529319(P2009−529319A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553467(P2008−553467)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/061314
【国際公開番号】WO2007/090121
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】