説明

細菌に汚染されることなくヨーグルトを調製する方法

細菌に汚染されることなくヨーグルトを調製する方法、特にヨーグルトの無菌包装技法に関する。無菌被覆プロセスは、牛乳を殺菌消毒する工程と無菌被覆する工程との二つの工程に分けられ、一つの乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクは、当該二つの工程の間に接続される。乳酸菌のみを含有し、2〜3ヶ月間維持することができるヨーグルトを得るために、無菌室内において、乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクを開放し乳酸菌を導入して均等に泡立てた後、乳酸桿菌属菌牛乳を無菌経路によって無菌被覆装置に入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルトのプロセス技法、特にヨーグルトが細菌に汚染されない無菌包装技法に関する。
【背景技術】
【0002】
この無菌液体被覆(canning)プロセスは、瞬時に極めて高い温度で細菌を根絶し、通常の温度で数ヶ月、殺菌せずにヨーグルトを維持するという利点があるので、このプロセスは国内の酪農産業で幅広く使用されている。ヨーグルトは、乳酸菌を含有する発酵した殺菌消毒牛乳で作られ、この乳酸菌を含有する殺菌消毒牛乳は、殺菌プロセスでは処理することができないので、現行の無菌液体被覆技法によって直接被覆することはできない。殺菌消毒牛乳中の乳酸桿菌属菌は容器内において細菌を抑制することができるので、ヨーグルトは2〜6℃では20日間のみ維持することができる。ヨーグルトの保証期間は、通常の製造時間および消費時間に対応させることができるが、大規模な酪農企業がヨーグルトを製造し、それを長距離、長時間の輸送および保管で全国に販売することは制限される。
【0003】
現行の無菌牛乳プロセス(図1)および機器は無菌牛乳を製造することしかできないが、ヨーグルトは細菌を含有する牛乳の一種なので、元の無菌プロセスおよび機器を適用することができない。現行のヨーグルトプロセス(図2)は、細菌環境下で牛乳を製造し、無菌被覆プロセスを使用しないので、ヨーグルトの保証期間は2〜6℃でわずか20日間だけであり、保存期間が限定されているので、酪農企業がこれらの製品を製造および販売するための要求は満たされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、細菌に汚染されることなく2〜3ヶ月間維持することができるヨーグルトを調製するプロセスを提供し、且つ被覆ヨーグルト(the canning yoghourt)が細菌に汚染されることなく乳酸菌を含有するという技術的問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
無菌被覆プロセス(図3)は、牛乳を殺菌消毒する工程と無菌被覆をする工程との二つの工程に分けられ、一つの乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクは、当該二つの工程の間に接続される。乳酸菌のみを含有し、2〜3ヶ月間維持することができるヨーグルトを得るために、無菌室内において、乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクを開放し乳酸菌を導入して均等に泡立てた後、乳酸桿菌属菌牛乳を無菌経路によって無菌被覆装置に入れる。
【0006】
細菌に汚染されないヨーグルト、すなわち長い保証期間を有するヨーグルトは、無菌被覆機器に適用可能な柔らかい包装材料と柔らかい容器で包装されるヨーグルトとから構成される。柔らかい容器の材料は、紙、プラスチックおよびアルミホイルの化合物材料、または細菌を含まないプラスチック袋である。上記の柔らかい容器の外部構造は、テトラブリック、テトラピロー、カンメイバオ(kangmeibao)またはプラスチック袋のいずれか一つの構造である。上記のヨーグルトは、乳酸桿菌属菌を植菌した殺菌消毒牛乳である。この種の牛乳は無菌環境下で無菌被覆装置において被覆および密封されるので、柔らかい容器内のヨーグルトは、細菌に汚染されることなく乳酸菌を含有する。ヨーグルトのこの長い保証期間は2〜6℃で2〜3ヶ月間は維持されないが、GB2746−1999基準を満たし得る。
【0007】
ヨーグルトで植菌される乳酸桿菌属菌は、ブルガリア菌(Bulgaria lactobacillus)およびサーモフィルス菌(streptococcus thermophilus)である。
【0008】
上記のヨーグルトは、細菌に汚染されない殺菌消毒牛乳から作られ、乳酸桿菌属菌が植菌され、発酵される。
【0009】
上記の包装材料は、殺菌消毒処理を受けている。殺菌消毒処理の方法は、オキシドールを使用して細菌を根絶すること、つまり30%〜50%の食料用オキシドールを使用して、包装材料上に塗るか、またはその包装材料をオキシドールに浸漬させた後、細菌を含まない包装材料を製造するために、100〜140℃の無菌温風を使用して包装材料を乾燥させ、オキシドールをふき取ることである。上記の包装材料は、紙、プラスチックおよびアルミホイルの化合物材料、または無菌プラスチック袋から構成される。
【0010】
本特許において、いわゆるテトラブリックは、紙、プラスチックおよびアルミホイルの化合物材料から構成される柔らかい容器であり、レンガ形状を有し、スウェーデンのTetra Pak社により提供される。いわゆるテトラピローは、紙、プラスチックおよびアルミホイルの化合物材料から構成される柔らかい容器であり、クッション形状を有し、スウェーデンのTetra Pak社により提供される。いわゆるカンメイバオ(kangmeibao)は、紙、プラスチックおよびアルミホイルの化合物材料から構成される柔らかい容器であり、レンガ形状を有し、スイスのSIG Group kangmeibao Limited. Co.により提供される。これらの柔らかい容器(テトラブリック、テトラピロー、およびカンメイバオ)の名称は、酪農産業および飲料産業で一般的に呼ばれる名称である。また、テトラブリック、テトラピロー、およびカンメイバオは、Tetra Pak社およびkangmeibao Limited. Co.により提供される必要はないが、容器の材料および形状は上記のようなものである必要がある。
【0011】
細菌に汚染されないヨーグルトを調製するプロセス(図3)は、通常の酸乳調製プロセスにおいて乳酸菌を植菌する殺菌消毒牛乳を使用する技法、通常の無菌牛乳製造における容器の無菌技法、および無菌被覆技法、すなわち無菌容器において、細菌に汚染されることなく乳酸桿菌属菌を植菌した牛乳を被覆して、乳酸菌のみを含有し、2〜6℃で2〜3ヶ月間維持することができるヨーグルトを得ることを含む三つの部分が組み合わされている。詳細な工程は、
(1)調製:牛乳と砂糖とを混合し、最大80℃で5〜10分間加熱することにより、混合牛乳を得ること、
(2)細菌の根絶:瞬間的に極めて高い温度または高温で細菌を根絶させることにより、殺菌消毒牛乳を得ること(細菌を根絶させる瞬間的に高い温度は、牛乳を130℃〜137℃で4〜15秒間置くことであり、また細菌を根絶させる高温は、牛乳を94〜96℃で5〜6分間置くことである。その後、42〜44℃まで温度を下げて、乳酸桿菌属菌が植菌されるのを待つ)、
(3)乳酸桿菌属菌の植菌:無菌室において、乳酸桿菌属菌を植菌した牛乳タンクを開放し、乳酸菌を導入して、それを均等に泡立てることにより、乳酸桿菌属菌牛乳を得ること、
(4)包装材料の無菌化:オキシドールを使用して、細菌を根絶させることにより、無菌包装材料を得ること(包装材料の無菌化は、30%〜35%のオキシドールを使用して、包装材料上に塗るか、またはその包装材料をオキシドールに浸漬させた後、100〜140℃の無菌温風を使用して、オキシドールをふき取ることにより、無菌包装材料を得ることである)、
(5)無菌被覆:無菌被覆装置における無菌容器を使用することによって、乳酸桿菌属菌牛乳を被覆および密封すること、
(6)細菌に汚染されないヨーグルトの発酵:0〜40℃の環境下に5〜8時間、当該ヨーグルトを置くことにより、細菌に汚染されないヨーグルトを得た後で、販売のために2〜6℃でヨーグルトを保存すること
である。
【0012】
細菌に汚染されることなくヨーグルトを調製する装置は、牛乳を殺菌消毒する装置と無菌被覆する装置とを含む。植菌口を備える無菌タンクを上記二つの装置の間に接続する。無菌タンクは、密封蓋を有する開口と泡立て器とを備える。最初に、乳酸菌を導入し、次に密封蓋を閉じて、最後に泡立て器を回転させ、均等に混合無菌牛乳を泡立てることにより発酵させる。
【0013】
本発明の利点は、植菌した乳酸桿菌属菌牛乳を無菌環境下で無菌容器において被覆するので、ヨーグルトは細菌に汚染されることなく有用な細菌のみを含むことである。この種のヨーグルトは、2〜6℃で2〜3ヶ月維持することができるが、現行のプロセスでは、ヨーグルトを2〜6℃で20日間しか維持することができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例1
細菌に汚染されないヨーグルトは、無菌被覆装置に適用される柔らかい容器および容器内で密封される酸乳から構成される。酸乳は乳酸菌のみを含有するヨーグルトであり、柔らかい容器の材料はテトラブリックである。
【0015】
実施例2
細菌に汚染されないヨーグルトは、無菌被覆装置に適用される柔らかい容器および容器内で密封される酸乳から構成される。酸乳は乳酸菌のみを含有するヨーグルトであり、柔らかい容器の材料はテトラピローである。
【0016】
実施例3
細菌に汚染されないヨーグルトは、無菌被覆装置に適用される柔らかい容器および容器内で密封される酸乳から構成される。酸乳は乳酸菌のみを含有するヨーグルトであり、柔らかい容器の材料はカンメイバオである。
【0017】
実施例4
細菌に汚染されないヨーグルトは、無菌被覆装置に適用される柔らかい容器および容器内で密封される酸乳から構成される。酸乳は乳酸菌のみを含有するヨーグルトであり、柔らかい容器の材料は食料用に配合したプラスチック無菌袋である。
【0018】
実施例5
無菌被覆技法は、牛乳を殺菌消毒すること、および無菌被覆することの二つの部分に分けられ、一つの乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクは、当該二つの工程の間に接続される。乳酸菌のみを含有し、2〜3ヶ月間維持することができるヨーグルトを得るために、無菌室内において、乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクを開放し乳酸菌を導入して均等に泡立てた後、乳酸桿菌属菌牛乳を無菌経路によって無菌被覆装置に入れる。この工程は、
(1)調製:牛乳と砂糖とを混合し、最大80℃で5〜10分間加熱することにより、混合牛乳を得て、それからそれを無菌装置に入れること、
(2)細菌の根絶:混合牛乳を94〜96℃で5〜6分間加熱した後、42〜44℃まで温度を下げて、無菌牛乳を得ること、
(3)乳酸菌の植菌:無菌装置から無菌室の乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクに無菌牛乳を送り出し、タンクを開放して、ブルガリア菌およびサーモフィリス菌を導入し、それを均等に泡立てることにより、混合牛乳を得ること(乳酸菌はオランダのDissiman Corporationにより提供され、細菌の種類はCY−340であり、ブルガリア菌とサーモフィリス菌との比は2:98である。2Uの細菌を1トンの無菌牛乳に植菌した。2Uは細菌のエネルギー単位であり、1Uは1012cfuの活性細菌を含む。1トンの無菌牛乳は、オランダのDissiman Corporationにより提供される約50gのCY−340細菌を植菌する必要がある(50g≒2U))
(4)包装材料の無菌化:オキシドールを使用し細菌を根絶することにより、無菌包装材料を得ること(30%〜35%のオキシドールに0.5〜3.0秒間、包装材料を浸漬させた後、100〜140℃の無菌温風により乾燥させ、包装材料上のオキシドールをふき取ること。包装材料はテトラブリック、テトラピロー、カンメイバオまたは食品用に配合された無菌プラスチック袋等の無菌被覆装置用の任意の種類の柔らかい包装材料を使用することができる)
(5)無菌被覆:無菌被覆装置において無菌包装材料を使用することによって、乳酸桿菌属菌牛乳を被覆および密封すること、
(6)細菌に汚染されないヨーグルトの発酵:0〜40℃の環境下に5〜8時間、当該ヨーグルトを置くことにより、細菌に汚染されないヨーグルトを得た後で、販売のために2〜6℃でヨーグルトを保存すること
である。
【0019】
実施例1、実施例2、実施例3および実施例4における細菌に汚染されない上記のヨーグルトは、実施例5に従って製造される。
【0020】
実施例6
非常に高温で細菌を根絶するという実施例5の工程(2)を変更する、すなわち130〜137℃で4〜15秒間ミルクを置いた後、42〜44℃まで温度を下げることにより、無菌牛乳を得る。他の工程、装置および材料は実施例5と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】無菌牛乳を製造する現行のプロセスを示す図である。
【図2】ヨーグルトを製造する現行のプロセスを示す図である。
【図3】細菌に汚染されることなくヨーグルトを調製するプロセスのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌に汚染されることなくヨーグルトを調製する方法であって、調製工程、細菌を根絶させる工程、乳酸桿菌属菌(lactobacillus:ラクトバチルス菌)を植菌する工程、包装材料を無菌化する工程、無菌被覆する(canning)工程、およびヨーグルトを発酵させる工程を包含すること、並びに、
(1)前記調製工程が、牛乳と砂糖とを混合し、最大80℃で5〜10分間加熱することにより、混合牛乳を得ることから成ること、
(2)前記細菌を根絶させる工程が、極めて高い引火温度でまたは高温で前記細菌を根絶させることにより、殺菌消毒牛乳を得ることから成り、前記牛乳中の該細菌を根絶させる前記極めて高い引火温度が4〜15秒で130℃〜137℃に設定され、前記高温が5〜6分で94〜96℃に設定されること、
(3)前記乳酸桿菌属菌を植菌する工程が、無菌室で行われ、乳酸桿菌属菌を植菌する牛乳タンクを開放すること、乳酸菌を導入すること、および前記牛乳を均等に泡立てることにより、乳酸桿菌属菌牛乳を得ることから成ること、
(4)前記包装材料を無菌化する工程が、オキシドールを使用して、前記細菌を根絶させることにより、無菌包装材料を得ることから成ること、
(5)前記無菌被覆する工程が、無菌被覆装置中の無菌容器を使用することによって、前記乳酸桿菌属菌牛乳を被覆および密封することから成ること、および
(6)前記細菌に汚染されることなくヨーグルトを発酵する工程が、0〜40℃の環境下で5〜8時間、細菌に汚染されることなく該ヨーグルトを発酵させることにより、細菌に汚染されることなく該ヨーグルトを得ること
を特徴とする、細菌に汚染されることなくヨーグルトを調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−536502(P2008−536502A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506906(P2008−506906)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/CN2006/000767
【国際公開番号】WO2006/111102
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507349905)チョントゥー ジュール コーポレーション (グループ),リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU JULE CORPORATION (GROUP),LTD.
【Fターム(参考)】