細菌コロニ釣菌装置及びその前処理方法
【課題】釣菌対象とする細菌コロニの位置情報を簡易かつ小型の装置構成で実現する。
【解決手段】釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークの位置と細菌コロニの領域をそれぞれ別の波長成分画像から取得する。この後、撮像画像から識別されたマークに対応する細菌コロニの領域を、釣菌対象を与える位置情報として設定する。
【解決手段】釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークの位置と細菌コロニの領域をそれぞれ別の波長成分画像から取得する。この後、撮像画像から識別されたマークに対応する細菌コロニの領域を、釣菌対象を与える位置情報として設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同定薬剤感受性検査その他の細菌検査や細菌分析のために、培養プレートから特定の細菌コロニを自動的に釣菌する装置及びその前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症治療において、病原菌または起炎菌を同定し、菌の薬剤感受性を迅速に測定することは、適切な抗菌薬を選定して正しい治療方針を立案するために重要である。臨床では、一般に以下に示す順番に作業が実行される。まず、患者から取得された検体を培地に塗布して培養する。次に、形成された細菌のコロニを釣菌して生理食塩水に懸濁させ、菌懸濁液を調製する。その後、調製された菌懸濁液を細菌検査装置にセットし、菌の同定と薬剤感受性を検査する。
【0003】
多くの場合、細菌検査装置で使用する菌懸濁液は、濁り具合を定量化した濁度値にて表し、必要な濁度値が指定されている。そのため、所定の濁度値を得るために、生育した同一菌種のコロニを複数選択して釣菌し、1つの菌懸濁液を調製する。その際、複数種類のコロニが生育している培養プレート上から病原菌または起炎菌のコロニを選択し、さらに同一菌種のコロニを選択する必要があり、その選択には検査技師の高い技術が要求されている。現在手作業で実施されている作業を自動化することにより、検査技師が行う作業の簡易化・簡素化を図り、また作業の迅速化を計るため自動細菌検査前処理装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−058598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、作業者が培養プレートの裏面に釣菌対象とするコロニを指定するマークを付し、培養プレートの下側から当該マークの概略位置を低倍率のカメラ(第1カメラ)で取得し、取得された位置情報に基づいて釣菌対象とするコロニを識別し、培養プレートの上側から高倍率のカメラ(第2カメラ)でコロニの位置を正確に特定しながら自動釣菌する方法が記載されている。しかし、特許文献1に開示の方法は、高解像度かつ高精度のカメラを必要としない一方で、培養プレートの裏面側からマークを撮像するカメラ(第1カメラ)と、撮像されたマークの画像に基づいて培養プレートの表面側から釣菌対象とするコロニの位置を識別するカメラ(第2カメラ)の2台が必要であり、装置サイズが大きくなる問題がある。
【0006】
本発明者らは、釣菌対象とする細菌コロニの正確な位置情報を自動的に取得できる従来装置よりも小型かつ低コストの装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細菌コロニが培養された培養プレートについての複数種類の波長成分画像を1台の撮像部を用いて撮像し、当該複数種類の波長成分画像に基づいて釣菌対象である細菌コロニの位置情報を自動的に取得できる装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、釣菌対象とする細菌コロニの正確な位置を自動的に認識して釣菌できる装置の小型化と低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】細菌コロニ釣菌装置の概略構成例を示す図(2つの照明部と1つの撮像部が同じ側に位置する例)。
【図2】細菌コロニ釣菌装置の他の概略構成例を示す図(2つの照明部と1つの撮像部が異なる側に位置する例1)。
【図3】細菌コロニ釣菌装置の他の概略構成例を示す図(1つの照明部と1つの撮像部で構成する例)。
【図4】細菌コロニ釣菌装置の他の概略構成例を示す図(2つの照明部と1つの撮像部が異なる側に位置する例2)
【図5】細菌コロニ釣菌装置で実行される動作手順例を示すフローチャート。
【図6】ミューラーヒントン培地の光透過性を示す図。
【図7】血液培地培地の光透過性を示す図。
【図8】チョコレート培地の光透過性を示す図。
【図9】白色光照明を用いて取得される撮像画像例を示す図。
【図10】赤外光照明を用いて取得される撮像画像例を示す図。
【図11】白色光照明を用いて取得された撮像画像と赤外光照明を用いて取得された撮像画像の合成画像例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。なお、後述する装置構成や処理動作の内容は発明を説明するための一例であり、本発明は、後述する装置構成や処理動作に既知の技術を組み合わせた発明や後述する装置構成や処理動作の一部を既知の技術と置換した発明も包含する。
【0011】
(前作業)
まず、実施例に係る細菌コロニ釣菌装置が作業者に要求する前処理の内容を説明する。患者から採集した血液、喀痰、尿、糞便等の検体、水、土壌、食品から採取した検体等に含まれる細菌の有無を確認する場合、作業者は培養プレートの底面に敷設した寒天その他の培地に検体を塗布した後、当該培養プレートをインキュベータ(例えば恒温槽)に収容して細菌を培養する。培養時間は、通常12時間以上である。所定の培養時間が経過すると、検査技師である作業者は、培地上に細菌コロニが生育した培養プレートを確認し、釣菌対象とする細菌コロニを選定する。この選定の際、作業者は、選択した細菌コロニを特定的に示すマークを培養プレートの裏面に付ける。なお、培養プレートの蓋にマークを付けることもできる。
【0012】
マークの形状は、丸、四角、三角のように細菌コロニの領域を囲むことで面として指定するものでも良いし、×やドットのように細菌コロニの領域を点として指示するものでも良い。また、細菌コロニの種類毎に異なる色のマークを付けても良い。なお、以下に説明する実施例の場合、マークを形成するインクの光学特性(反射、透過、吸収)は、少なくともある特定の波長成分においては、撮像対象とする細菌コロニや培地の光学特性と異なる特性を有することが求められる。
【0013】
培養プレートの裏面にマークを付した場合、作業者は、細菌コロニ釣菌装置に蓋を開いた状態で培養プレートをセットする。もっとも、培養プレートをスタッカ(収納棚と搬送機構を備える装置)に一旦セットし、スタッカから自動的に細菌コロニ釣菌装置へ搬送することもできる。なお、細菌コロニ釣菌装置は、搬入された培養プレートを自動的に上下(表裏)反転する機構や自動的に蓋を開閉する機構を有していても良い。
【0014】
(装置の構成例)
図1に、実施例に係る細菌コロニ釣菌装置の概略構成例を示す。図1に示す細菌コロニ釣菌装置は、セットされた培養プレート1の縁部を底面側から支持する環状の台座と、培養プレート1を底面側から撮像する1台の撮像部2と、培養プレート1の底面を第1の波長成分の光で照明する照明部3と、培養プレート1の底面を第2の波長成分の光で照明する照明部4と、撮像部2で撮像された画像を処理する画像処理部5と、釣菌針6を上下左右に移動する釣菌機構7と、装置全体を制御する制御部8とで構成される。
【0015】
ここで、台座には、培養プレート1の底部を底面側から観察できるように、培地とほぼ同径の開口が形成されている。撮像部2は、位置情報を取得できれば良いので、低解像度のカメラを使用する。制御部8は、照明部3,4、画像処理部5、釣菌機構7を制御する。2種類の波長成分画像を取得する場合、制御部8は照明部3,4、画像処理部5を制御する。マーキング位置の細菌コロニを釣菌する場合、制御部8は画像処理部5から取得した位置情報に基づいて釣菌機構7を駆動制御する。釣菌機構7は、xyzステージを有している。
【0016】
なお、図1では撮像部2の図中左側に照明部3を配置し、撮像部2の図中右側に照明部4を配置する例を表しているが、撮像部2の片側にのみ照明部3と照明部4の両方を配置しても良い。この場合、照明部3及び4の配置に必要なスペースを狭小化することができる。また、撮像部2の両側に、照明部3及び4を一組とする照明ユニットをそれぞれ配置しても良い。この場合、培養プレート1の裏面全体を複数方向からの照射光で均一に照明することができる。
【0017】
図1に示す細菌コロニ釣菌装置の場合、撮像部2と照明部3及び4は、いずれも培養プレート1の底面側に配置される。従って、撮像部2は、照明部3又は4によって照明された培養プレート1の裏面側の画像を撮像対象とする。
【0018】
なお、図1との対応部分に同一符号を付して示す図2に示すように、照明部3及び4を培養プレート1の表面側に配置することもできる。この場合、撮像部2は、培養プレート1を透過した光に基づいて培養プレート1の裏面側の画像を撮像する。ただし、培養プレート1の表面側から光を照射することによる培養プレート表面の乾燥が分析に影響を与えるような場合には、図1に示す配置例のように培養プレート1の下側から光を照射する構成の採用が望ましい。
【0019】
図1に示す細菌コロニ釣菌装置では、2種類の波長成分画像を取得するために、それぞれが異なる波長成分の光を照射することができる2つの照明部3及び4を配置する。この実施例では、撮像対象であるマーク、細菌コロニ、培地の光学特性の違いに応じて、白色光源(ハロゲンランプ、白色LED等)、赤外光源(近赤外LED等)、単色光源(青、赤、緑などの単色光を発するLEDやレーザ等)等の中から好適な光源を選択することを想定する。なお、白色光は、青、赤、緑に対応するLEDから射出される光を所定の比率で合成することでも生成可能である。なお、白色光源から射出された光のうち特定波長成分だけを光学フィルタを用いて選択することで、擬似的に単色光源として用いることもできる。また、光源として白色光源(ハロゲンランプ)を選択する場合には、近赤外のみを透過する光学フィルタと組み合わせることにより、擬似的に赤外光源として用いることもできる。光学フィルタは、特定の波長成分の光だけを透過するものと、特定の波長成分だけ吸収する(透過させない)ものがある。
【0020】
このように光学フィルタを光源と組み合わせる場合、1つの光源を擬似的に2つの光源として使用することができる。また、3色のLEDで一体的に構成される光源にあっては、3色全てのLEDを同時点灯するか1色のLEDのみを点灯するかによって1つの光源を波長成分の異なる2つの光源として使用することができる。これらの場合、照明部の数を2つではなく、1つだけで用いることができる。図3に、2種類の波長成分を選択的に射出できる照明部11を有する細菌コロニ釣菌装置の構成例を示す。なお、図3に示す細菌コロニ釣菌装置における照明部と撮像部の配置関係は、後述する複数の波長成分を含む光を射出する1つの照射部と特定の波長成分だけを選択的に入射可能な光学フィルタ機能を有する1つの撮像部2を組み合わせる場合にも用いられる。
【0021】
なお、細菌コロニ釣菌装置には、これ以外の構成も考えられる。代表的な構成例を図4に示す。図4は、撮像部2を培養プレート1の表面側に配置し、照明部3及び4を培養プレート1の裏面側に配置する細菌コロニ釣菌装置の構成例である。この場合、撮像部2は、培養プレート1の透過光を観察する。
【0022】
(撮像画像に求められる条件)
実施例に係る細菌コロニ釣菌装置では、2種類の波長成分画像を撮像することにより、1台の撮像部2だけでも釣菌対象とする細菌コロニの正確な位置情報の取得を可能とする。ここで、1つの波長成分画像は、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像であり、他の波長成分画像は、培養プレート上に培養された細菌コロニを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像である。マークと細菌コロニを個別に取得できれば、マークされた特定の細菌コロニの位置情報(領域情報)を正確に抽出することができる。
【0023】
2種類の波長成分画像を取得する方法には、マークを撮像する場合と細菌コロニを撮像する場合において、培養プレート1に照射する光の波長成分を選択的に切り替える方法と、撮像部2で受光する波長成分を選択的に切り替える方法がある。
【0024】
例えば図1の場合であれば、照明部3として、釣菌対象とする細胞コロニを示すマークのみに吸収される波長成分の光を射出する光源を使用し、照明部4として、細菌コロニのみに吸収される波長成分の光を射出する光源を使用する方法、照明部3として、釣菌対象とする細胞コロニを示すマークのみを透過/反射する波長成分の光を照射する光源を使用し、照明部4として、細菌コロニのみを透過/反射させる波長成分の光を照射する光源を使用する方法等がある。
【0025】
例えば図3の場合であれば、照明部11を構成する1つの光源から射出する波長成分を撮像目的に応じて選択的に切り替える方法等がある。
【0026】
このように培養プレート1に照射する光の波長成分を選択的に切り替える場合、撮像部2は、照明部3から射出された光に含まれる複数の波長成分のうち特定波長の光だけを選択的に受光するフィルタを撮像面に配置したカメラ(例えばカラーCCDカメラ)を用いても良いし、特定波長の光を選択的に受光するフィルタを撮像面に有しない(すなわち、光量のみを検出する)カメラ(例えばモノクロCCDカメラ)を用いても良い。なお、モノクロCCDカメラの撮像面に入射する光の光路上に、特定の波長成分の光だけを吸収する又は透過する光学フィルタを選択的に配置すれば(例えば光学フィルタを着脱又は交換すれば)、カラーCCDカメラと同様の検出結果を実現することができる。なお、カラーCCDカメラを用いる場合、波長成分(色)に対応する電気信号の選択により2種類の特定波長画像を取得できる。もっとも、カラーCCDカメラを用いる場合であっても、各波長成分(色)に対応する電気信号を信号処理により輝度信号に変換すればモノクロCCDカメラと同じ使い方ができる。
【0027】
2種類の波長成分画像を撮像するには、必ずしも照明部から射出される光の波長成分を選択的に切り替えることは必須でない。例えば照射部は複数の波長成分を含む光を常に射出するだけとし、撮像部2側で受光する波長成分又は出力する受光信号を撮像目的に応じて選択的に切り替える方法等が考えられる。
【0028】
因みに、モノクロCCDカメラのように波長の選択機能を有しない撮像部を使用する場合には、受光光路上に特定の波長成分だけを透過又は吸収する光学フィルタを選択的に配置することにより又は着脱することにより複数の波長成分画像を取得することができる。この種の光学フィルタを使用する場合には、制御部8で駆動制御される駆動機構を配置する。例えば照明部11に白色光源を使用し、撮像部2に赤外カットフィルタ又は赤外透過フィルタの着脱機能を配置しても良い。
【0029】
(オートフォーカス機能)
実施例に係る撮像部2には、オートフォーカス機能を搭載する。ここでのオートフォーカス機能は、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークを撮像対象とする波長成分画像の撮像時には、マークが描画されている培養プレート1の裏面又は蓋の表面にフォーカスを自動的に合せ、細菌コロニを撮像対象とする波長成分画像の撮像時には、細菌コロニが培養されている培地上にフォーカスを自動的に合わせることを意味する。
【0030】
(処理動作例)
図5に、細菌コロニ釣菌装置に培養プレート1をセットしてから特定の細菌コロニを釣菌するまでの処理手順の概要を示す。なお、図5では、白色光源を有する照明部3と赤外光源を有する照明部4を備え、撮像部2は赤外カットフィルタの着脱機構を備えるカラーCCDカメラを備えるものとする。また、可視光の吸収度はマークの方が培地や細菌コロニよりも大きく、赤外光の吸収度は細菌コロニと培地の方がマークよりも大きいものとする。さらに、赤外光の吸収度は、培地よりも細菌コロニの方が大きいものとする。すなわち、可視領域ではマークだけを他の領域から区別して撮像することが可能であり、赤外領域では細菌コロニを培地から区別して撮像することが可能であるものとする。
【0031】
まず、ステップST1にて、細菌コロニ釣菌装置に培養プレート1がセットされる。この培養プレート1のセットは、手動で行われる場合もあれば、搬送ロボットを使用して実行される場合もある。
【0032】
ステップST2において、制御部8は照明部3を点灯制御する。すなわち、白色光(可視光)で培養プレート1の裏面を照明する。例えば図1のように、培養プレート1の裏面を白色光で照明する。
【0033】
ステップST3では、撮像部2が培養プレート1の裏面にフォーカスを合わせ、その状態で培養プレート1の裏面に付された釣菌対象の細菌コロニを示すマークの画像を撮像する。この際、撮像部2は、赤外カットフィルタを装着した状態で、培養プレート1の裏面を撮像する。可視領域では、マークの吸収度の方が培地や細菌コロニよりも相対的に高い。従って、マークは、他の領域に比して暗く(濃く)撮像される。従って、この波長成分画像を所定のしきい値と比較すれば、マークだけを抽出した波長成分画像を得ることができる。なお、マークの抽出が難しい場合にはコントラスト比を拡大するなどして、マークだけを抽出する。
【0034】
ステップST4において、制御部8は照明部3を消灯し、代わりに照明部4を点灯する。すなわち、赤外光で培養プレート1を照明する。例えば図1のように、培養プレート1の裏面を赤外光で照明する。
【0035】
ステップST5では、撮像部2が培地上の細菌コロニにフォーカスを合せ、その状態で培養プレート1の裏面を撮像する。この際、撮像部2は、赤外カットフィルタを取り外した状態で、培養プレート1の裏面を撮像する。赤外領域では、培地や細菌コロニの吸収度の方がマークよりも相対的に高い。従って、培地や細菌コロニは、他の領域に比して暗く(濃く)撮像される。さらに、培地と細菌コロニとでは、細菌コロニの方が暗く(濃く)撮像される。従って、この波長成分画像を所定のしきい値と比較すれば、細菌コロニだけを抽出した波長成分画像を得ることができる。やはり、細菌コロニの抽出が難しい場合にはコントラスト比を拡大するなどして細菌コロニだけを抽出する。このように、ステップST5の終了段階で、2種類の波長成分画像が得られる。
【0036】
ステップST6では、これら2種類の波長成分画像を用いた画像処理が実行される。すなわち、ステップST3で撮像されたマークの画像とステップST5で撮像された細菌コロニの画像が正確に重ね合わされる。この画像処理により、培養プレート1上に存在する複数の細菌コロニのうち一部の細菌コロニとマークとがデータ上対応付けられた状態になる。この画像処理は、画像処理部5が実行する。
【0037】
ステップST7では、画像処理部5において、釣菌対象として指定された細菌コロニの正確な位置情報が算出される。
【0038】
ステップST8では、制御部8が算出された位置情報に基づいて釣菌機構7を駆動制御する。この後、釣菌機構7は、釣菌棒6を指定された細菌コロニの上方に移動し、釣菌する。
【0039】
(透過特性例)
以下では、透明度が異なる複数種類の培地にそれぞれ細菌コロニを培養した場合と培養しない場合における波長成分と吸光度(透過率)の関係の違いを説明する。図6−図8に、3種類の培地について照射する波長成分を変化させた場合(波長を350nm〜850nmの範囲で変化させた場合)における吸光度(透過率)の変化を示す。なお、吸光度が低いほど透過率が高いことを示す。図6はミューラーヒントン培地を用いる場合の測定例であり、図7は血液培地を用いる場合の測定例であり、図8はチョコレート培地を用いる場合の測定例である。
【0040】
図6−図8に示すように、透明度の違いに関わらず長波長になるほど培地の透過率が高くなることが分かる。すなわち、いずれの培地も、赤外領域では透過率が高くなることが分かる。
【0041】
例えば図6に示すミューラーヒントン培地は透明度が高く、380nm〜780nmの可視領域においても吸光度が低く透過率が高い。また、可視領域及び赤外領域の両方において培地のみの状態と培地上に細菌コロニが生育された状態とで透過率に差が生じている。よって、ミューラーヒントン培地のような透明度が高い培地を用いる場合には、白色光とオートフォーカス機能を有した撮像部2を用いて培養プレート1を撮像することにより、釣菌対象とする細菌コロニを示すマークと細菌コロニの画像の両方を取得することが可能である。
【0042】
しかし、図7に示す血液培地や図8に示すチョコレート培地等のように透明度が低い培地を使用する場合、可視領域における培地と細菌コロニの吸光度がいずれも同程度に高い(すなわち、透過率が低い)ため、培地のみの状態と細菌コロニが生育した状態との透過率に差が生じない。このため、白色光とオートフォーカス機能を有した撮像部2を用いた撮像によって、釣菌対象とする細菌コロニを示すマークをその他の領域から識別できるように撮像することは可能であるが、細菌コロニと培地を識別できる画像の取得は難しい。
【0043】
しかし、可視領域と比較して吸光度が低い(すなわち透過率が高い)赤外領域では、培地のみの吸光度と培地上に細菌コロニが生育した状態の吸光度に差が生じる。このため、赤外光とオートフォーカス機能を有した撮像部2を用いて培養プレート1を撮像すると、培地上に存在する細菌コロニを培地から識別可能に撮像した画像を取得することができる。
【0044】
そこで、前述した処理手順例では、培地を透過する一方で細菌コロニを透過し難い、すなわち細菌コロニに吸収される波長の赤外光を使用して培地上の細菌コロニの画像を取得している。
【0045】
(撮像画面例)
図9に、白色光で培養プレート1を照明し、その画像をオートフォーカス機能付きのカラーCCDカメラを用いて撮像する場合に取得される画像例を示す。図中、網掛けで示す領域が細菌コロニであり、白抜きの大円が撮像範囲の外縁(培地の外縁)である。図9は、釣菌対象とする細菌コロニ21、22、23、24、25を囲むように描画されたマーク31、32、33、34、35の画像を示す。なお、図9では実際に撮像される像を実線で表し、実際には撮像されない像を点線で囲んで示している。従って、図9において実際に撮像されているのはマーク31−35だけとなる。
【0046】
ここで、細菌コロニ21、22、22と細菌コロニ24、25がそれぞれ同じ菌種の細菌コロニの場合、マーク31、32、33を赤ペンで描画し、マーク34、35を黒ペンで描画すれば、赤マーク31、32、33と黒マーク34、35の画像を取得することができる。なお、ミューラーヒントン培地のような透明度が高い培地を用いる場合には、白色光による照明により、マークだけでなく細菌コロニも識別できる画像を取得することが可能である。勿論、マークと細菌コロニの吸光度(透過率)は違うことが前提である。因みに、マークと細菌コロニの吸光度(透過率)が近い場合には、コントラスト比を拡大したり、しきい値を最適化することによりマークだけを選択的に検出することが望ましい。コントラスト比の調整やしきい値の調整は作業者が手動で行っても良いし、予め設定された情報に従って画像処理部5が自動的に調整しても良い。
【0047】
図10に、赤外光で培養プレート1を照明し、その画像をオートフォーカス機能付きのカラーCCDカメラを用いて撮像する場合に取得される画像例を示す。なお、図10では実際に撮像される像を黒丸等の実線で示し、実際には撮像されない像を点線で囲んで示している。この場合、赤外光はマークや培地を透過する一方で、細菌コロニは透過し難い。この透過率の違いにより、細菌コロニ21、22、23、24、25を含む全ての細菌コロニの画像が取得される。図10では、8個の細菌コロニを含む画像が取得される。
【0048】
図11に、図9に示す画像と図10に示す画像を画像処理することで得られる画像例を示す。図9に示す画像と図10に示す画像を重ね合せることで、培養プレート1上に存在する全ての細菌コロニのうち釣菌対象としてマークされた5個の細菌コロニ21−25だけの画像が得られる。なお、マーク31−33は赤色マークとして、マーク34−35は黒色マークとして表示される。
【0049】
この画像処理後の画像を用いれば、画面上で釣菌対象とする細菌コロニだけを確認することができ、当該細菌コロニの位置情報を画像処理部5において正確に検出することができる。また、この位置情報を釣菌機構7に与えて駆動制御することにより、作業者がマークした特定の細菌コロニだけを釣菌することができる。また、位置情報にマークの色情報を組み合わせれば、同種の細菌コロニだけをまとめて釣菌することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1:培養プレート
2:撮像部
3:照明部
4:照明部
5:画像処理部
6:釣菌針
7:釣菌機構
8:制御部
11:照明部
21−25:細菌コロニ
31−35:マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、同定薬剤感受性検査その他の細菌検査や細菌分析のために、培養プレートから特定の細菌コロニを自動的に釣菌する装置及びその前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症治療において、病原菌または起炎菌を同定し、菌の薬剤感受性を迅速に測定することは、適切な抗菌薬を選定して正しい治療方針を立案するために重要である。臨床では、一般に以下に示す順番に作業が実行される。まず、患者から取得された検体を培地に塗布して培養する。次に、形成された細菌のコロニを釣菌して生理食塩水に懸濁させ、菌懸濁液を調製する。その後、調製された菌懸濁液を細菌検査装置にセットし、菌の同定と薬剤感受性を検査する。
【0003】
多くの場合、細菌検査装置で使用する菌懸濁液は、濁り具合を定量化した濁度値にて表し、必要な濁度値が指定されている。そのため、所定の濁度値を得るために、生育した同一菌種のコロニを複数選択して釣菌し、1つの菌懸濁液を調製する。その際、複数種類のコロニが生育している培養プレート上から病原菌または起炎菌のコロニを選択し、さらに同一菌種のコロニを選択する必要があり、その選択には検査技師の高い技術が要求されている。現在手作業で実施されている作業を自動化することにより、検査技師が行う作業の簡易化・簡素化を図り、また作業の迅速化を計るため自動細菌検査前処理装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−058598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、作業者が培養プレートの裏面に釣菌対象とするコロニを指定するマークを付し、培養プレートの下側から当該マークの概略位置を低倍率のカメラ(第1カメラ)で取得し、取得された位置情報に基づいて釣菌対象とするコロニを識別し、培養プレートの上側から高倍率のカメラ(第2カメラ)でコロニの位置を正確に特定しながら自動釣菌する方法が記載されている。しかし、特許文献1に開示の方法は、高解像度かつ高精度のカメラを必要としない一方で、培養プレートの裏面側からマークを撮像するカメラ(第1カメラ)と、撮像されたマークの画像に基づいて培養プレートの表面側から釣菌対象とするコロニの位置を識別するカメラ(第2カメラ)の2台が必要であり、装置サイズが大きくなる問題がある。
【0006】
本発明者らは、釣菌対象とする細菌コロニの正確な位置情報を自動的に取得できる従来装置よりも小型かつ低コストの装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細菌コロニが培養された培養プレートについての複数種類の波長成分画像を1台の撮像部を用いて撮像し、当該複数種類の波長成分画像に基づいて釣菌対象である細菌コロニの位置情報を自動的に取得できる装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、釣菌対象とする細菌コロニの正確な位置を自動的に認識して釣菌できる装置の小型化と低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】細菌コロニ釣菌装置の概略構成例を示す図(2つの照明部と1つの撮像部が同じ側に位置する例)。
【図2】細菌コロニ釣菌装置の他の概略構成例を示す図(2つの照明部と1つの撮像部が異なる側に位置する例1)。
【図3】細菌コロニ釣菌装置の他の概略構成例を示す図(1つの照明部と1つの撮像部で構成する例)。
【図4】細菌コロニ釣菌装置の他の概略構成例を示す図(2つの照明部と1つの撮像部が異なる側に位置する例2)
【図5】細菌コロニ釣菌装置で実行される動作手順例を示すフローチャート。
【図6】ミューラーヒントン培地の光透過性を示す図。
【図7】血液培地培地の光透過性を示す図。
【図8】チョコレート培地の光透過性を示す図。
【図9】白色光照明を用いて取得される撮像画像例を示す図。
【図10】赤外光照明を用いて取得される撮像画像例を示す図。
【図11】白色光照明を用いて取得された撮像画像と赤外光照明を用いて取得された撮像画像の合成画像例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。なお、後述する装置構成や処理動作の内容は発明を説明するための一例であり、本発明は、後述する装置構成や処理動作に既知の技術を組み合わせた発明や後述する装置構成や処理動作の一部を既知の技術と置換した発明も包含する。
【0011】
(前作業)
まず、実施例に係る細菌コロニ釣菌装置が作業者に要求する前処理の内容を説明する。患者から採集した血液、喀痰、尿、糞便等の検体、水、土壌、食品から採取した検体等に含まれる細菌の有無を確認する場合、作業者は培養プレートの底面に敷設した寒天その他の培地に検体を塗布した後、当該培養プレートをインキュベータ(例えば恒温槽)に収容して細菌を培養する。培養時間は、通常12時間以上である。所定の培養時間が経過すると、検査技師である作業者は、培地上に細菌コロニが生育した培養プレートを確認し、釣菌対象とする細菌コロニを選定する。この選定の際、作業者は、選択した細菌コロニを特定的に示すマークを培養プレートの裏面に付ける。なお、培養プレートの蓋にマークを付けることもできる。
【0012】
マークの形状は、丸、四角、三角のように細菌コロニの領域を囲むことで面として指定するものでも良いし、×やドットのように細菌コロニの領域を点として指示するものでも良い。また、細菌コロニの種類毎に異なる色のマークを付けても良い。なお、以下に説明する実施例の場合、マークを形成するインクの光学特性(反射、透過、吸収)は、少なくともある特定の波長成分においては、撮像対象とする細菌コロニや培地の光学特性と異なる特性を有することが求められる。
【0013】
培養プレートの裏面にマークを付した場合、作業者は、細菌コロニ釣菌装置に蓋を開いた状態で培養プレートをセットする。もっとも、培養プレートをスタッカ(収納棚と搬送機構を備える装置)に一旦セットし、スタッカから自動的に細菌コロニ釣菌装置へ搬送することもできる。なお、細菌コロニ釣菌装置は、搬入された培養プレートを自動的に上下(表裏)反転する機構や自動的に蓋を開閉する機構を有していても良い。
【0014】
(装置の構成例)
図1に、実施例に係る細菌コロニ釣菌装置の概略構成例を示す。図1に示す細菌コロニ釣菌装置は、セットされた培養プレート1の縁部を底面側から支持する環状の台座と、培養プレート1を底面側から撮像する1台の撮像部2と、培養プレート1の底面を第1の波長成分の光で照明する照明部3と、培養プレート1の底面を第2の波長成分の光で照明する照明部4と、撮像部2で撮像された画像を処理する画像処理部5と、釣菌針6を上下左右に移動する釣菌機構7と、装置全体を制御する制御部8とで構成される。
【0015】
ここで、台座には、培養プレート1の底部を底面側から観察できるように、培地とほぼ同径の開口が形成されている。撮像部2は、位置情報を取得できれば良いので、低解像度のカメラを使用する。制御部8は、照明部3,4、画像処理部5、釣菌機構7を制御する。2種類の波長成分画像を取得する場合、制御部8は照明部3,4、画像処理部5を制御する。マーキング位置の細菌コロニを釣菌する場合、制御部8は画像処理部5から取得した位置情報に基づいて釣菌機構7を駆動制御する。釣菌機構7は、xyzステージを有している。
【0016】
なお、図1では撮像部2の図中左側に照明部3を配置し、撮像部2の図中右側に照明部4を配置する例を表しているが、撮像部2の片側にのみ照明部3と照明部4の両方を配置しても良い。この場合、照明部3及び4の配置に必要なスペースを狭小化することができる。また、撮像部2の両側に、照明部3及び4を一組とする照明ユニットをそれぞれ配置しても良い。この場合、培養プレート1の裏面全体を複数方向からの照射光で均一に照明することができる。
【0017】
図1に示す細菌コロニ釣菌装置の場合、撮像部2と照明部3及び4は、いずれも培養プレート1の底面側に配置される。従って、撮像部2は、照明部3又は4によって照明された培養プレート1の裏面側の画像を撮像対象とする。
【0018】
なお、図1との対応部分に同一符号を付して示す図2に示すように、照明部3及び4を培養プレート1の表面側に配置することもできる。この場合、撮像部2は、培養プレート1を透過した光に基づいて培養プレート1の裏面側の画像を撮像する。ただし、培養プレート1の表面側から光を照射することによる培養プレート表面の乾燥が分析に影響を与えるような場合には、図1に示す配置例のように培養プレート1の下側から光を照射する構成の採用が望ましい。
【0019】
図1に示す細菌コロニ釣菌装置では、2種類の波長成分画像を取得するために、それぞれが異なる波長成分の光を照射することができる2つの照明部3及び4を配置する。この実施例では、撮像対象であるマーク、細菌コロニ、培地の光学特性の違いに応じて、白色光源(ハロゲンランプ、白色LED等)、赤外光源(近赤外LED等)、単色光源(青、赤、緑などの単色光を発するLEDやレーザ等)等の中から好適な光源を選択することを想定する。なお、白色光は、青、赤、緑に対応するLEDから射出される光を所定の比率で合成することでも生成可能である。なお、白色光源から射出された光のうち特定波長成分だけを光学フィルタを用いて選択することで、擬似的に単色光源として用いることもできる。また、光源として白色光源(ハロゲンランプ)を選択する場合には、近赤外のみを透過する光学フィルタと組み合わせることにより、擬似的に赤外光源として用いることもできる。光学フィルタは、特定の波長成分の光だけを透過するものと、特定の波長成分だけ吸収する(透過させない)ものがある。
【0020】
このように光学フィルタを光源と組み合わせる場合、1つの光源を擬似的に2つの光源として使用することができる。また、3色のLEDで一体的に構成される光源にあっては、3色全てのLEDを同時点灯するか1色のLEDのみを点灯するかによって1つの光源を波長成分の異なる2つの光源として使用することができる。これらの場合、照明部の数を2つではなく、1つだけで用いることができる。図3に、2種類の波長成分を選択的に射出できる照明部11を有する細菌コロニ釣菌装置の構成例を示す。なお、図3に示す細菌コロニ釣菌装置における照明部と撮像部の配置関係は、後述する複数の波長成分を含む光を射出する1つの照射部と特定の波長成分だけを選択的に入射可能な光学フィルタ機能を有する1つの撮像部2を組み合わせる場合にも用いられる。
【0021】
なお、細菌コロニ釣菌装置には、これ以外の構成も考えられる。代表的な構成例を図4に示す。図4は、撮像部2を培養プレート1の表面側に配置し、照明部3及び4を培養プレート1の裏面側に配置する細菌コロニ釣菌装置の構成例である。この場合、撮像部2は、培養プレート1の透過光を観察する。
【0022】
(撮像画像に求められる条件)
実施例に係る細菌コロニ釣菌装置では、2種類の波長成分画像を撮像することにより、1台の撮像部2だけでも釣菌対象とする細菌コロニの正確な位置情報の取得を可能とする。ここで、1つの波長成分画像は、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像であり、他の波長成分画像は、培養プレート上に培養された細菌コロニを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像である。マークと細菌コロニを個別に取得できれば、マークされた特定の細菌コロニの位置情報(領域情報)を正確に抽出することができる。
【0023】
2種類の波長成分画像を取得する方法には、マークを撮像する場合と細菌コロニを撮像する場合において、培養プレート1に照射する光の波長成分を選択的に切り替える方法と、撮像部2で受光する波長成分を選択的に切り替える方法がある。
【0024】
例えば図1の場合であれば、照明部3として、釣菌対象とする細胞コロニを示すマークのみに吸収される波長成分の光を射出する光源を使用し、照明部4として、細菌コロニのみに吸収される波長成分の光を射出する光源を使用する方法、照明部3として、釣菌対象とする細胞コロニを示すマークのみを透過/反射する波長成分の光を照射する光源を使用し、照明部4として、細菌コロニのみを透過/反射させる波長成分の光を照射する光源を使用する方法等がある。
【0025】
例えば図3の場合であれば、照明部11を構成する1つの光源から射出する波長成分を撮像目的に応じて選択的に切り替える方法等がある。
【0026】
このように培養プレート1に照射する光の波長成分を選択的に切り替える場合、撮像部2は、照明部3から射出された光に含まれる複数の波長成分のうち特定波長の光だけを選択的に受光するフィルタを撮像面に配置したカメラ(例えばカラーCCDカメラ)を用いても良いし、特定波長の光を選択的に受光するフィルタを撮像面に有しない(すなわち、光量のみを検出する)カメラ(例えばモノクロCCDカメラ)を用いても良い。なお、モノクロCCDカメラの撮像面に入射する光の光路上に、特定の波長成分の光だけを吸収する又は透過する光学フィルタを選択的に配置すれば(例えば光学フィルタを着脱又は交換すれば)、カラーCCDカメラと同様の検出結果を実現することができる。なお、カラーCCDカメラを用いる場合、波長成分(色)に対応する電気信号の選択により2種類の特定波長画像を取得できる。もっとも、カラーCCDカメラを用いる場合であっても、各波長成分(色)に対応する電気信号を信号処理により輝度信号に変換すればモノクロCCDカメラと同じ使い方ができる。
【0027】
2種類の波長成分画像を撮像するには、必ずしも照明部から射出される光の波長成分を選択的に切り替えることは必須でない。例えば照射部は複数の波長成分を含む光を常に射出するだけとし、撮像部2側で受光する波長成分又は出力する受光信号を撮像目的に応じて選択的に切り替える方法等が考えられる。
【0028】
因みに、モノクロCCDカメラのように波長の選択機能を有しない撮像部を使用する場合には、受光光路上に特定の波長成分だけを透過又は吸収する光学フィルタを選択的に配置することにより又は着脱することにより複数の波長成分画像を取得することができる。この種の光学フィルタを使用する場合には、制御部8で駆動制御される駆動機構を配置する。例えば照明部11に白色光源を使用し、撮像部2に赤外カットフィルタ又は赤外透過フィルタの着脱機能を配置しても良い。
【0029】
(オートフォーカス機能)
実施例に係る撮像部2には、オートフォーカス機能を搭載する。ここでのオートフォーカス機能は、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークを撮像対象とする波長成分画像の撮像時には、マークが描画されている培養プレート1の裏面又は蓋の表面にフォーカスを自動的に合せ、細菌コロニを撮像対象とする波長成分画像の撮像時には、細菌コロニが培養されている培地上にフォーカスを自動的に合わせることを意味する。
【0030】
(処理動作例)
図5に、細菌コロニ釣菌装置に培養プレート1をセットしてから特定の細菌コロニを釣菌するまでの処理手順の概要を示す。なお、図5では、白色光源を有する照明部3と赤外光源を有する照明部4を備え、撮像部2は赤外カットフィルタの着脱機構を備えるカラーCCDカメラを備えるものとする。また、可視光の吸収度はマークの方が培地や細菌コロニよりも大きく、赤外光の吸収度は細菌コロニと培地の方がマークよりも大きいものとする。さらに、赤外光の吸収度は、培地よりも細菌コロニの方が大きいものとする。すなわち、可視領域ではマークだけを他の領域から区別して撮像することが可能であり、赤外領域では細菌コロニを培地から区別して撮像することが可能であるものとする。
【0031】
まず、ステップST1にて、細菌コロニ釣菌装置に培養プレート1がセットされる。この培養プレート1のセットは、手動で行われる場合もあれば、搬送ロボットを使用して実行される場合もある。
【0032】
ステップST2において、制御部8は照明部3を点灯制御する。すなわち、白色光(可視光)で培養プレート1の裏面を照明する。例えば図1のように、培養プレート1の裏面を白色光で照明する。
【0033】
ステップST3では、撮像部2が培養プレート1の裏面にフォーカスを合わせ、その状態で培養プレート1の裏面に付された釣菌対象の細菌コロニを示すマークの画像を撮像する。この際、撮像部2は、赤外カットフィルタを装着した状態で、培養プレート1の裏面を撮像する。可視領域では、マークの吸収度の方が培地や細菌コロニよりも相対的に高い。従って、マークは、他の領域に比して暗く(濃く)撮像される。従って、この波長成分画像を所定のしきい値と比較すれば、マークだけを抽出した波長成分画像を得ることができる。なお、マークの抽出が難しい場合にはコントラスト比を拡大するなどして、マークだけを抽出する。
【0034】
ステップST4において、制御部8は照明部3を消灯し、代わりに照明部4を点灯する。すなわち、赤外光で培養プレート1を照明する。例えば図1のように、培養プレート1の裏面を赤外光で照明する。
【0035】
ステップST5では、撮像部2が培地上の細菌コロニにフォーカスを合せ、その状態で培養プレート1の裏面を撮像する。この際、撮像部2は、赤外カットフィルタを取り外した状態で、培養プレート1の裏面を撮像する。赤外領域では、培地や細菌コロニの吸収度の方がマークよりも相対的に高い。従って、培地や細菌コロニは、他の領域に比して暗く(濃く)撮像される。さらに、培地と細菌コロニとでは、細菌コロニの方が暗く(濃く)撮像される。従って、この波長成分画像を所定のしきい値と比較すれば、細菌コロニだけを抽出した波長成分画像を得ることができる。やはり、細菌コロニの抽出が難しい場合にはコントラスト比を拡大するなどして細菌コロニだけを抽出する。このように、ステップST5の終了段階で、2種類の波長成分画像が得られる。
【0036】
ステップST6では、これら2種類の波長成分画像を用いた画像処理が実行される。すなわち、ステップST3で撮像されたマークの画像とステップST5で撮像された細菌コロニの画像が正確に重ね合わされる。この画像処理により、培養プレート1上に存在する複数の細菌コロニのうち一部の細菌コロニとマークとがデータ上対応付けられた状態になる。この画像処理は、画像処理部5が実行する。
【0037】
ステップST7では、画像処理部5において、釣菌対象として指定された細菌コロニの正確な位置情報が算出される。
【0038】
ステップST8では、制御部8が算出された位置情報に基づいて釣菌機構7を駆動制御する。この後、釣菌機構7は、釣菌棒6を指定された細菌コロニの上方に移動し、釣菌する。
【0039】
(透過特性例)
以下では、透明度が異なる複数種類の培地にそれぞれ細菌コロニを培養した場合と培養しない場合における波長成分と吸光度(透過率)の関係の違いを説明する。図6−図8に、3種類の培地について照射する波長成分を変化させた場合(波長を350nm〜850nmの範囲で変化させた場合)における吸光度(透過率)の変化を示す。なお、吸光度が低いほど透過率が高いことを示す。図6はミューラーヒントン培地を用いる場合の測定例であり、図7は血液培地を用いる場合の測定例であり、図8はチョコレート培地を用いる場合の測定例である。
【0040】
図6−図8に示すように、透明度の違いに関わらず長波長になるほど培地の透過率が高くなることが分かる。すなわち、いずれの培地も、赤外領域では透過率が高くなることが分かる。
【0041】
例えば図6に示すミューラーヒントン培地は透明度が高く、380nm〜780nmの可視領域においても吸光度が低く透過率が高い。また、可視領域及び赤外領域の両方において培地のみの状態と培地上に細菌コロニが生育された状態とで透過率に差が生じている。よって、ミューラーヒントン培地のような透明度が高い培地を用いる場合には、白色光とオートフォーカス機能を有した撮像部2を用いて培養プレート1を撮像することにより、釣菌対象とする細菌コロニを示すマークと細菌コロニの画像の両方を取得することが可能である。
【0042】
しかし、図7に示す血液培地や図8に示すチョコレート培地等のように透明度が低い培地を使用する場合、可視領域における培地と細菌コロニの吸光度がいずれも同程度に高い(すなわち、透過率が低い)ため、培地のみの状態と細菌コロニが生育した状態との透過率に差が生じない。このため、白色光とオートフォーカス機能を有した撮像部2を用いた撮像によって、釣菌対象とする細菌コロニを示すマークをその他の領域から識別できるように撮像することは可能であるが、細菌コロニと培地を識別できる画像の取得は難しい。
【0043】
しかし、可視領域と比較して吸光度が低い(すなわち透過率が高い)赤外領域では、培地のみの吸光度と培地上に細菌コロニが生育した状態の吸光度に差が生じる。このため、赤外光とオートフォーカス機能を有した撮像部2を用いて培養プレート1を撮像すると、培地上に存在する細菌コロニを培地から識別可能に撮像した画像を取得することができる。
【0044】
そこで、前述した処理手順例では、培地を透過する一方で細菌コロニを透過し難い、すなわち細菌コロニに吸収される波長の赤外光を使用して培地上の細菌コロニの画像を取得している。
【0045】
(撮像画面例)
図9に、白色光で培養プレート1を照明し、その画像をオートフォーカス機能付きのカラーCCDカメラを用いて撮像する場合に取得される画像例を示す。図中、網掛けで示す領域が細菌コロニであり、白抜きの大円が撮像範囲の外縁(培地の外縁)である。図9は、釣菌対象とする細菌コロニ21、22、23、24、25を囲むように描画されたマーク31、32、33、34、35の画像を示す。なお、図9では実際に撮像される像を実線で表し、実際には撮像されない像を点線で囲んで示している。従って、図9において実際に撮像されているのはマーク31−35だけとなる。
【0046】
ここで、細菌コロニ21、22、22と細菌コロニ24、25がそれぞれ同じ菌種の細菌コロニの場合、マーク31、32、33を赤ペンで描画し、マーク34、35を黒ペンで描画すれば、赤マーク31、32、33と黒マーク34、35の画像を取得することができる。なお、ミューラーヒントン培地のような透明度が高い培地を用いる場合には、白色光による照明により、マークだけでなく細菌コロニも識別できる画像を取得することが可能である。勿論、マークと細菌コロニの吸光度(透過率)は違うことが前提である。因みに、マークと細菌コロニの吸光度(透過率)が近い場合には、コントラスト比を拡大したり、しきい値を最適化することによりマークだけを選択的に検出することが望ましい。コントラスト比の調整やしきい値の調整は作業者が手動で行っても良いし、予め設定された情報に従って画像処理部5が自動的に調整しても良い。
【0047】
図10に、赤外光で培養プレート1を照明し、その画像をオートフォーカス機能付きのカラーCCDカメラを用いて撮像する場合に取得される画像例を示す。なお、図10では実際に撮像される像を黒丸等の実線で示し、実際には撮像されない像を点線で囲んで示している。この場合、赤外光はマークや培地を透過する一方で、細菌コロニは透過し難い。この透過率の違いにより、細菌コロニ21、22、23、24、25を含む全ての細菌コロニの画像が取得される。図10では、8個の細菌コロニを含む画像が取得される。
【0048】
図11に、図9に示す画像と図10に示す画像を画像処理することで得られる画像例を示す。図9に示す画像と図10に示す画像を重ね合せることで、培養プレート1上に存在する全ての細菌コロニのうち釣菌対象としてマークされた5個の細菌コロニ21−25だけの画像が得られる。なお、マーク31−33は赤色マークとして、マーク34−35は黒色マークとして表示される。
【0049】
この画像処理後の画像を用いれば、画面上で釣菌対象とする細菌コロニだけを確認することができ、当該細菌コロニの位置情報を画像処理部5において正確に検出することができる。また、この位置情報を釣菌機構7に与えて駆動制御することにより、作業者がマークした特定の細菌コロニだけを釣菌することができる。また、位置情報にマークの色情報を組み合わせれば、同種の細菌コロニだけをまとめて釣菌することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1:培養プレート
2:撮像部
3:照明部
4:照明部
5:画像処理部
6:釣菌針
7:釣菌機構
8:制御部
11:照明部
21−25:細菌コロニ
31−35:マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養プレート上から細菌コロニを釣菌する装置において、
釣菌機構と、
照明部と、
設置された培養プレートの画像を撮像する撮像部と、
前記照明部及び前記撮像部を制御して複数種類の波長成分画像を撮像し、撮像された複数種類の波長成分画像を比較して釣菌対象とする細菌コロニの位置情報を取得する画像処理部と、
取得された前記位置情報に基づいて前記釣菌機構を駆動制御する制御部と
を有する細菌コロニ釣菌装置。
【請求項2】
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像であり、
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、培養プレート上に培養された細菌コロニを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、波長成分画像に含まれる特定領域の明るさとその他の領域の明るさの違いに基づいて前記マーク、前記細菌コロニ、培地の各領域を識別し、識別された細菌コロニのうち前記マークが付された細菌コロニの位置情報だけを釣菌対象に選定された細菌コロニの位置情報として取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項4】
前記照明部は、波長成分が異なる複数種類の光を選択的に照射できる1つの光源又はそれぞれが前記複数種類の光に対応する複数個の光源を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項5】
前記照明部は、白色光を照射できる光源と、白色光のうち前記培養プレートに照射される波長成分を選択的に切り替える機構部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項6】
前記撮像部は、前記複数種類の波長成分画像に対応する全ての波長域の画像を撮像できる撮像装置と、培養プレートからの光のうち前記撮像装置に入射する波長成分を選択的に切り替える機構部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記複数種類の波長成分画像を、前記培養プレートの一方向のみから撮像する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項8】
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、釣菌対象とする細菌コロニを特定するために付されるマークに吸収される波長成分について撮像された画像であり、
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、培地を通過する又は培地と前記マークの両方を通過する一方で細菌コロニに吸収される波長成分について撮像された画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項9】
釣菌対象とする細菌コロニを特定するために付されるマークに吸収される波長成分を有する第1の光を前記照明部が照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの撮像画像を第1の波長成分画像として撮像し、
培地を通過する又は培地と前記マークの両方を通過する一方で細菌コロニに吸収される波長成分を有する第2の光を前記照明部が照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの撮像画像を第2の波長成分画像として撮像する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項10】
前記照明部が可視領域の第1の光を照射する第1の光源と長波長域の第2の光を照射する第2の光源を有し、かつ、前記撮像部が波長選択性能を有する場合において、
前記照明部が前記第1の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの長波長域以外の波長成分について得られる画像を第1の波長成分画像として取得し、
前記照明部が前記第2の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの長波長域成分について得られる撮像画像を第2の波長成分画像として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項11】
前記照明部が釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークのみに吸収される第1の光を照射する第1の光源と細菌コロニのみに吸収される第2の光を照射する第2の光源を有し、かつ、前記撮像部が波長選択性を有していない場合において、
前記照明部が前記第1の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第1の波長成分画像として取得し、
前記照明部が前記第2の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第2の波長成分画像として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項12】
前記照明部が複数の波長成分を含む光を照射する光源と、複数の波長成分を含む前記光のうち釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークのみを透過する第1の光と前記細菌コロニのみを透過する第2の光を選択的に通過する機構部とを有し、かつ、前記撮像部が波長選択性を有していない場合において、
前記照明部が前記第1の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第1の波長成分画像として取得し、
前記照明部が前記第2の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第2の波長成分画像として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項13】
前記撮像部は、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークの取得時には、当該マークの生成面に自動的に焦点を合わせ、培地上に培養された細菌コロニの画像の取得時には、培地上に自動的に焦点を合わせるオートフォーカス機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項14】
釣菌対象とする細菌コロニの位置は、吸収する波長成分又は透過する波長成分が異なる複数種類のマークによって特定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項15】
釣菌機構と、照明部と、設置された培養プレートの画像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像を処理する画像処理部と、取得された前記位置情報に基づいて前記釣菌機構を駆動制御する制御部とを有する細菌コロニ釣菌装置の前処理方法において、
前記画像処理部を通じて前記照明部及び前記撮像部を制御して、複数種類の波長成分画像を取得する処理と、
取得された複数種類の波長成分画像を比較して釣菌対象とする細菌コロニの位置情報を取得する処理と
を有する細菌コロニ釣菌装置の前処理方法。
【請求項1】
培養プレート上から細菌コロニを釣菌する装置において、
釣菌機構と、
照明部と、
設置された培養プレートの画像を撮像する撮像部と、
前記照明部及び前記撮像部を制御して複数種類の波長成分画像を撮像し、撮像された複数種類の波長成分画像を比較して釣菌対象とする細菌コロニの位置情報を取得する画像処理部と、
取得された前記位置情報に基づいて前記釣菌機構を駆動制御する制御部と
を有する細菌コロニ釣菌装置。
【請求項2】
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像であり、
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、培養プレート上に培養された細菌コロニを他の領域から識別可能に撮像できる波長成分について撮像された画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、波長成分画像に含まれる特定領域の明るさとその他の領域の明るさの違いに基づいて前記マーク、前記細菌コロニ、培地の各領域を識別し、識別された細菌コロニのうち前記マークが付された細菌コロニの位置情報だけを釣菌対象に選定された細菌コロニの位置情報として取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項4】
前記照明部は、波長成分が異なる複数種類の光を選択的に照射できる1つの光源又はそれぞれが前記複数種類の光に対応する複数個の光源を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項5】
前記照明部は、白色光を照射できる光源と、白色光のうち前記培養プレートに照射される波長成分を選択的に切り替える機構部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項6】
前記撮像部は、前記複数種類の波長成分画像に対応する全ての波長域の画像を撮像できる撮像装置と、培養プレートからの光のうち前記撮像装置に入射する波長成分を選択的に切り替える機構部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記複数種類の波長成分画像を、前記培養プレートの一方向のみから撮像する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項8】
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、釣菌対象とする細菌コロニを特定するために付されるマークに吸収される波長成分について撮像された画像であり、
前記複数種類の波長成分画像のうちの一つは、培地を通過する又は培地と前記マークの両方を通過する一方で細菌コロニに吸収される波長成分について撮像された画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項9】
釣菌対象とする細菌コロニを特定するために付されるマークに吸収される波長成分を有する第1の光を前記照明部が照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの撮像画像を第1の波長成分画像として撮像し、
培地を通過する又は培地と前記マークの両方を通過する一方で細菌コロニに吸収される波長成分を有する第2の光を前記照明部が照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの撮像画像を第2の波長成分画像として撮像する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項10】
前記照明部が可視領域の第1の光を照射する第1の光源と長波長域の第2の光を照射する第2の光源を有し、かつ、前記撮像部が波長選択性能を有する場合において、
前記照明部が前記第1の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの長波長域以外の波長成分について得られる画像を第1の波長成分画像として取得し、
前記照明部が前記第2の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの長波長域成分について得られる撮像画像を第2の波長成分画像として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項11】
前記照明部が釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークのみに吸収される第1の光を照射する第1の光源と細菌コロニのみに吸収される第2の光を照射する第2の光源を有し、かつ、前記撮像部が波長選択性を有していない場合において、
前記照明部が前記第1の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第1の波長成分画像として取得し、
前記照明部が前記第2の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第2の波長成分画像として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項12】
前記照明部が複数の波長成分を含む光を照射する光源と、複数の波長成分を含む前記光のうち釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークのみを透過する第1の光と前記細菌コロニのみを透過する第2の光を選択的に通過する機構部とを有し、かつ、前記撮像部が波長選択性を有していない場合において、
前記照明部が前記第1の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第1の波長成分画像として取得し、
前記照明部が前記第2の光を照射するとき、前記撮像部は前記培養プレートの画像を第2の波長成分画像として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項13】
前記撮像部は、釣菌対象とする細菌コロニを特定するマークの取得時には、当該マークの生成面に自動的に焦点を合わせ、培地上に培養された細菌コロニの画像の取得時には、培地上に自動的に焦点を合わせるオートフォーカス機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項14】
釣菌対象とする細菌コロニの位置は、吸収する波長成分又は透過する波長成分が異なる複数種類のマークによって特定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の細菌コロニ釣菌装置。
【請求項15】
釣菌機構と、照明部と、設置された培養プレートの画像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像を処理する画像処理部と、取得された前記位置情報に基づいて前記釣菌機構を駆動制御する制御部とを有する細菌コロニ釣菌装置の前処理方法において、
前記画像処理部を通じて前記照明部及び前記撮像部を制御して、複数種類の波長成分画像を取得する処理と、
取得された複数種類の波長成分画像を比較して釣菌対象とする細菌コロニの位置情報を取得する処理と
を有する細菌コロニ釣菌装置の前処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−101617(P2011−101617A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257829(P2009−257829)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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