細菌分析装置および細菌分析方法
【課題】強アルカリ溶液を装置内に導入する必要のない細菌分析装置を提供する。
【解決手段】この細菌分析装置1は、少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1細菌判別用試料とを調製する試料調製部5と、第1細菌判別用試料に含まれる細菌を検出する光学検出部6と、第1細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する分析部3とを備えている。具体的には前記第1酵素は、リゾチームであり、第2酵素は、リゾスタフィンであり、例えば、尿中に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを判定し、判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類を判別。
【解決手段】この細菌分析装置1は、少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1細菌判別用試料とを調製する試料調製部5と、第1細菌判別用試料に含まれる細菌を検出する光学検出部6と、第1細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する分析部3とを備えている。具体的には前記第1酵素は、リゾチームであり、第2酵素は、リゾスタフィンであり、例えば、尿中に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを判定し、判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類を判別。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌分析装置および細菌分析方法に関し、特に、検体に含まれる細菌の種類を判別するための細菌分析装置および細菌分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体に含まれる細菌の種類を判別するための装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、フローサイトメータを用いた粒子測定装置を用いて検体に含まれる細菌の種類を判別している。上記特許文献1では、検体から第1測定試料を調製するとともに、検体とアルカリ性溶液とから第2測定試料を調製し、第1測定試料および第2測定試料について、粒子測定装置により計測を行っている。また、第1測定試料の測定結果と第2測定試料の測定結果とに基づいて、細菌がグラム陽性細菌であるかグラム陰性細菌であるかを分析している。上記特許文献1には、アルカリ性溶液として、pH14程度のアルカリ性溶液を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−110629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、腐食性の強いpH14程度の強アルカリの溶液を装置内に導入する必要があるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、強アルカリ溶液を装置内に導入する必要のない細菌分析装置および細菌分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における細菌分析装置は、少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する試料調製部と、第1測定試料に含まれる細菌を検出する検出部と、第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する情報処理部とを備えている。
【0008】
この第1の局面による細菌分析装置では、上記のように、検体と第1酵素とから調製される第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する情報処理部を設けることによって、腐食性の強い強アルカリ溶液を装置内に導入しなくても、酵素(第1酵素)を用いて検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【0009】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、試料調製部は、少なくとも検体から調製される第2測定試料をさらに調製し、検出部は、前記第1測定試料に含まれる細菌および前記第2測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果と第2測定試料の検出結果とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、特定の細菌に影響する(特定の細菌と反応する)ことがわかっている酵素を第1酵素として用いることにより、第1測定試料の検出結果と第2測定試料の検出結果とに基づいて第1酵素の影響が認められた検体には、その細菌が含まれていると推定することができる。この推定した細菌の種類を、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報として出力することができる。
【0011】
上記検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得する構成において、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、第1測定試料および第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得するとともに、第1測定試料の細菌数を反映した値と第2測定試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1測定試料の細菌数を反映した値と第2測定試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを容易に取得することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、第1スキャッタグラムおよび第2スキャッタグラムに基づいて、第1測定試料に含まれる細菌数を反映した値および第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得する。このように構成すれば、第1スキャッタグラムおよび第2スキャッタグラムに基づいて、容易に、第1測定試料および第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得することができる。
【0013】
上記検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得する構成において、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、第1スキャッタグラムのパターンと第2スキャッタグラムとのパターンとに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1スキャッタグラムと第2スキャッタグラムとのパターンを比較する(たとえば、第1スキャッタグラムのパターンと第2スキャッタグラムのパターンとの重なる割合を算出する)ことにより、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを容易に取得することができる。
【0014】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、少なくとも、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を含む。このように構成すれば、検査者は、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を知ることができるので、その検体にどの細菌が含まれているかの判断を容易に行うことができる。
【0015】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、表示部をさらに備え、情報処理部は、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を表示部に表示するように制御する。このように構成すれば、検査者は、表示部を見ることによって検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を容易に得ることができる。
【0016】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、第1酵素は、細胞膜消化酵素である。このように構成すれば、特定の細菌に影響する(特定の細菌と反応する)細胞膜消化酵素を用いて特定の細菌を減菌させることができるので、細胞膜消化酵素を第1酵素として用いることによって、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【0017】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がグラム陽性細菌であるか否かの情報を含む。このように構成すれば、検査者は、検体に含まれる細菌がグラム陽性細菌であるか否かを容易に判断することができる。
【0018】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかの情報を含む。このように構成すれば、検査者は、出力された情報に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、第1酵素は、リゾチームである。このように構成すれば、リゾチームはブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌に対して反応するので、第1酵素としてリゾチームを用いて細菌の反応の有無を判別することにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0020】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかの情報を含む。このように構成すれば、検査者は、出力された情報に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかを容易に判断することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、第1酵素は、リゾスタフィンである。このように構成すれば、リゾスタフィンはブドウ球菌属の細菌に対して反応するので、第1酵素としてリゾスタフィンを用いて細菌の反応の有無を判別することにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかを容易に判断することができる。
【0022】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、試料調製部は、少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料をさらに調製し、検出部は、第1測定試料に含まれる細菌、第2測定試料に含まれる細菌および第3測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、情報処理部は、第1測定試料の検出結果、第2測定試料の検出結果および第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1酵素および第2酵素を用いて、検体に含まれる細菌の種類をより正確に推定することができる。
【0023】
上記情報処理部が第1〜第3測定試料の検出結果に基づいて検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する構成において、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果、第2測定試料の検出結果および第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを判定し、判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、検査者は、出力された情報に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0024】
この場合、好ましくは、第1酵素は、リゾチームであり、第2酵素は、リゾスタフィンである。このように構成すれば、リゾチームはブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌に対して反応するとともにグラム陰性細菌には反応せず、リゾスタフィンはブドウ球菌属の細菌(グラム陽性細菌)に対して反応するとともにグラム陰性細菌には反応しないので、リゾチームおよびリゾスタフィンを用いることにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0025】
上記第1酵素がリゾチームである構成において、好ましくは、測定試料中に含まれるリゾチームの濃度は、2.5mg/mL以上20mg/mL以下である。このように構成すれば、リゾチームとブドウ球菌属以外のグラム陽性菌との反応性が高まるので、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0026】
上記第2酵素がリゾスタフィンである構成において、好ましくは、測定試料中に含まれるリゾスタフィンの濃度は、0.5μg/mL以上100μg/mL以下である。このように構成すれば、リゾスタフィンとブドウ球菌属の細菌との反応性が高まるので、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0027】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体は、尿である。このように構成すれば、尿を上記第1の局面による細菌分析装置によって分析することにより、尿中に含まれる細菌の種類を容易に判別することができる。
【0028】
この発明の第2の局面による細菌分析方法は、少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する工程と、第1測定試料に含まれる細菌を検出する工程と、第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程とを備える。
【0029】
この第2の局面による細菌分析方法では、上記のように、検体と第1酵素とから調製される第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力している。このように構成することによって、腐食性の強い強アルカリ溶液を装置内に導入しなくても、酵素(第1酵素)を用いて検体に含まれる細菌の種類を分析することができる。
【0030】
上記第2の局面による細菌分析方法において、好ましくは、少なくとも検体から調製される第2測定試料を調製する工程と、第2測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程を含む。このように構成すれば、第1測定試料の検出結果と第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0031】
この場合、好ましくは、少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料を調製する工程と、第3測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、第1測定試料の検出結果、第2測定試料の検出結果および第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程を含む。このように構成すれば、第1酵素および第2酵素を用いて、検体に含まれる細菌の種類をより正確に推定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の細菌分析装置及び細菌分析方法によれば、腐食性の強い強アルカリ溶液を装置内に導入しなくても、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態による細菌分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析部を示したブロック図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の試料調製部および光学検出部を概略的に示す図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の光学検出部の構造を示す図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の1次解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の1次解析処理の解析結果を示す1次解析結果画面を示す図である。
【図8】図5に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の2次解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理の解析結果を示す総合分析結果画面を示す図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】リゾチームを用いた細菌の種類の判定原理を説明するための図である。
【図12】図1に示した第1実施形態の変形例による細菌分析装置の分析動作の1次解析処理の解析結果を示す1次解析結果画面を示す図である。
【図13】図1に示した第1実施形態の変形例による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理の解析結果を示す総合分析結果画面を示す図である。
【図14】図1に示した第2実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】リゾスタフィンを用いた細菌の種類の判定原理を説明するための図である。
【図16】本発明の第3実施形態による細菌分析装置の分析動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の第3実施形態による細菌分析装置の分析動作の2次解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】本発明の第3実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】リゾチーム濃度と大便連鎖球菌の細菌数との関係を示すグラフである。
【図20】リゾスタフィン濃度と黄色ブドウ球菌の細菌数との関係を示すグラフである。
【図21】リゾスタフィン濃度とS.sciuriの細菌数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による細菌分析装置1の全体構成について説明する。
【0036】
図1に示すように、第1実施形態による細菌分析装置1は、フローサイトメトリーによって検体の測定を行う測定部2と、測定部2における測定結果を分析する分析部3とを備えている。測定部2は、検体を収容する試験管100を収納するサンプルラック200(試験管立て)を移送するためのラックテーブル4と、検体などから測定試料を調製するための試料調製部5と、測定試料から尿中の有形成分や細菌の情報を検出するための光学検出部6と、ラックテーブル4、試料調製部5および光学検出部6などを制御する制御部7とを含んでいる。測定部2の筐体の側面には、アーム21を介して支持台22が取り付けられている。この支持台22にパーソナルコンピュータからなる分析部3が設置されている。また、測定部2と分析部3とはLAN接続されている。
【0037】
ラックテーブル4は、サンプルラック200を所定の検体吸引位置まで移送する機能を有している。
【0038】
検体吸引位置において、試験管100に入った検体(尿)は、吸引管8を用いて図示しないシリンジポンプにより吸引されるとともに、後述する測定試料調製部51に分注される。
【0039】
図3に示すように、試料調製部5は、検体と所定の液とを混合することにより、測定試料を調製する機能を有している。具体的には、試料調製部5は、測定試料調製部51と、希釈液保持部52と、染色液保持部53と、酵素保持部54とを含んでいる。第1実施形態では、酵素保持部54には、細胞壁溶解酵素の一つであるリゾチーム(Lysozyme)が保持されている。試料調製部5は、吸引管8を介して検体が分注された測定試料調製部51に希釈液および染色液を混合することにより、細菌検出用試料を調製することが可能である。また、試料調製部5は、検体が分注された測定試料調製部51に希釈液、染色液および酵素(リゾチーム)を混合することにより、第1細菌判別用試料を調製することが可能である。試料調製部5において調製された測定試料(細菌検出用試料および第1細菌判別用試料)は、後述する光学検出部6のフローセル61に導入されるように構成されている。
【0040】
光学検出部6では、フローサイトメトリーによる光学的な測定が行われる。すなわち、光学検出部6では、測定試料がシース液(図示せず)に包まれた細い流れがフローセル61において形成されるとともに、この細い流れに対してレーザ光が照射される。具体的な構成としては、図4に示すように、光学検出部6は、半導体レーザからなる光源62と、光源62から照射されたレーザ光をフローセル61の細い流れに集光するコンデンサレンズ63と、2つの集光レンズ64および65と、ダイクロイックミラー66と、フォトダイオードからなる散乱光受光部67と、フォトマルチプライヤからなる散乱光受光部68と、フォトマルチプライヤからなる蛍光受光部69とを含んでいる。
【0041】
集光レンズ64は、レーザ光が照射されたフローセル61内の測定試料(細い流れ)から発する光のうち、前方散乱光を散乱光受光部67に集光する機能を有する。集光レンズ65は、レーザ光が照射されたフローセル61内の測定試料から発する光のうち、側方散乱光および側方蛍光をダイクロイックミラー66に集光する機能を有する。ダイクロイックミラー66は、側方散乱光を散乱光受光部68に向かって反射するとともに、側方蛍光を蛍光受光部69の方に透過させるように構成されている。
【0042】
散乱光受光部67、散乱光受光部68および蛍光受光部69のそれぞれは、受光した光を電気信号に変換するように構成されている。これらの電気信号は、検体に含まれる細菌の形状、数などを反映したものとなる。すなわち、光学検出部6は、測定試料(検体)に含まれる細菌を検出することが可能である。これらの電気信号は、制御部7を介して分析部3に送信される。
【0043】
なお、試料調製部5による測定試料の調製動作および光学検出部6による測定動作などは、測定部2の制御部7(マイクロコンピュータ)の制御により、図示しない駆動部および電磁弁などを動作させることにより自動的に行われる。
【0044】
また、分析部3は、図1および図2に示すように、制御部31(図2参照)と、表示部32と、入力デバイス33とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。
【0045】
制御部31は、図2に示すように、CPU311と、ROM312と、RAM313と、ハードディスク314と、読出装置315と、入出力インタフェース316と、通信部317と、画像出力インタフェース318とから主として構成されている。CPU311、ROM312、RAM313、ハードディスク314、読出装置315、入出力インタフェース316、通信部317および画像出力インタフェース318は、バス319によって接続されている。
【0046】
CPU311は、ROM312に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM313にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述する細菌の種類を分析するためのプログラム34aをCPU311が実行することにより、コンピュータが分析部3として機能する。
【0047】
ここで、第1実施形態では、分析部3のCPU311は、通信部317を介して測定部2の制御部7から受信する測定データを解析して、検体(尿)に含まれる可能性のある細菌の種類を判定するとともに、その判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判断を支援するための情報を出力するように構成されている。具体的には、CPU311は、測定部2からのデータを解析することによって、検体に含まれる細菌に関するスキャッタグラムを作成するように構成されている。また、CPU311は、スキャッタグラムに基づいて、検体に含まれる細菌数に対応する数値を算出するように構成されている。CPU311は、検体から調製される細菌検出用試料の検出結果(スキャッタグラム、細菌数に対応する数値など)と、検体および酵素(リゾチーム)から調製される第1細菌判別用試料の検出結果とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する酵素の影響度合いを取得し、その影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判断を支援するための情報を表示部32に出力するように構成されている。
【0048】
ROM312は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU311に実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0049】
RAM313は、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM313は、ROM312およびハードディスク314に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU311の作業領域として利用される。
【0050】
ハードディスク314は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU311に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。第1実施形態の細菌の種類を分析するプログラムも、このハードディスク314にインストールされている。
【0051】
読出装置315は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、細菌の種類を分析するプログラム34aが格納されており、コンピュータがその可搬型記録媒体34から細菌の種類を分析するプログラム34aを読み出してハードディスク314にインストールすることが可能である。
【0052】
なお、上記細菌の種類を分析するプログラム34aは、それぞれ、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、細菌の種類を分析するプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク314内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータがアクセスして、細菌の種類を分析するプログラム34aをダウンロードし、これらをハードディスク314にインストールすることも可能である。
【0053】
また、ハードディスク314には、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、細菌の種類を分析するプログラム34aは、それぞれ上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0054】
入出力インタフェース316は、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース316には、入力デバイス33が接続されており、ユーザがその入力デバイス33を使用することにより、コンピュータにデータを入力することが可能である。これにより、ユーザは、分析部3に対して測定部2の測定指示(測定オーダの入力)を行うことが可能である。
【0055】
通信部317は、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。分析部3は、通信部317を介して、測定部2から測定データを受信可能に構成されている。さらに、分析部3は、通信部317を介して、測定部2に制御信号を送信可能である。
【0056】
画像出力インタフェース318は、LCDまたはCRTなどで構成された表示部32に接続されており、CPU311から与えられた画像データに応じた映像信号を表示部32に出力するように構成されている。表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示するように構成されている。
【0057】
次に、図5〜図10を参照して、第1実施形態による細菌分析装置1の分析動作について説明する。
【0058】
まず、検査者は、分析部3において分析の指示を行う。これにより、測定部2において分析が開始される。具体的には、ステップS1において、制御部7は、試料調製部5を制御することにより、細菌検出用試料の調製を行う。すなわち、検体(尿)、希釈液および染色液を混合することにより、細菌検出用試料を調製する。この後、調製した細菌検出用試料を光学検出部6に移送する。
【0059】
次に、ステップS2において、制御部7は、細菌検出用試料の測定を行う。具体的には、細菌検出用試料をフローセル61に流して細い流れを形成し、その流れ(検体)に光源62からレーザ光を照射する。そして、レーザ光が照射された検体からの前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光を、それぞれ、散乱光受光部67、散乱光受光部68および蛍光受光部69により受光する。この散乱光受光部67、散乱光受光部68および蛍光受光部69のそれぞれにおいて、前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光は電気信号に変換される。これらの電気信号は、制御部7においてデジタルデータに変換されるとともに、所定の波形処理が施される。このような処理により作製された細菌検出用試料の測定結果(前方散乱光に対応するデータ、側方散乱光に対応するデータ、及び側方蛍光に対応するデータ)は、分析部3に送信される。
【0060】
次に、ステップS3において、分析部3のCPU311により1次解析処理が行われる。すなわち、図6に示すように、CPU311は、ステップS10において、前方散乱光に対応するデータと、側方蛍光に対応するデータとに基づいて、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1を作成する。そして、ステップS11において、CPU311は、スキャッタグラムS1のうち、細菌が出現する領域Aを設定するとともに、ステップS12において、領域A内に含まれるドット数を計数して細菌検出用試料の計数結果B1を取得する。このドット数(計数結果B1)は、検体に含まれる細菌数を反映した値となる。そして、ステップS13において、CPU311は、領域Aおよび計数結果B1をハードディスク314に記憶する。
【0061】
そして、ステップS4において、CPU311は、1次解析結果を分析部3(パーソナルコンピュータ)の表示部32に表示する。具体的には、図7に示すように、ステップS10において作成した細菌検出用試料のスキャッタグラムS1と、細菌検出用試料の計数結果B1とを含む1次解析結果画面Cが表示部32に表示される。1次解析結果画面CのスキャッタグラムS1には、細菌の分布の状況を示すドットの集合D1と、集合D1を囲う領域Aとが示される。また、分析の結果、細菌が検出された場合には、その旨および検出された細菌の種類を判定するための測定の実行を促すメッセージEが1次解析結果画面Cに合わせて表示される。
【0062】
検査者は、この1次解析結果画面Cを参照して、検出された細菌の種類を判定するための測定を行うか否かを決定する。2次解析を行う場合には、検査者は、分析部3の表示部32に表示された画面上の図示しない測定指示ボタンを押すことによって、細菌分析装置1に対して測定の指示を行う。また、図5のステップS5において、CPU311は、測定指示ボタンが押されたか否かを判断する。測定指示ボタンが押されない場合には、細菌分析装置1による分析処理は終了する。測定指示ボタンが押された場合には、CPU311は、測定部2に測定の開始を指示する。
【0063】
測定部2の制御部7は、測定の指示があった場合、ステップS6において、試料調製部5を制御することにより、第1細菌判別用試料の調製を行う。すなわち、検体(尿)、希釈液、染色液に加えて酵素(リゾチーム)を混合することにより、第1細菌判別用試料を調製する。この後、調製した第1細菌判別用試料を光学検出部6に移送する。
【0064】
次に、ステップS7において、制御部7は、ステップS2と同様にして第1細菌判別用試料の測定を行う。第1細菌判別用試料の測定結果(前方散乱光に対応するデータ、側方散乱光に対応するデータ、及び側方蛍光に対応するデータ)は、分析部3に送信される。
【0065】
次に、ステップS8において、CPU311は、第1細菌判別用試料の測定データの解析(2次解析処理)を行う。すなわち、図8に示すように、ステップS14において、前方散乱光に対応するデータと、側方蛍光に対応するデータとに基づいて、第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2を作成する。そして、ステップS15において、ステップS11(図6参照)において設定した領域Aを読み出すとともに、スキャッタグラムS2に設定する。そして、ステップS16において、スキャッタグラムS2のうち、領域A内に含まれるドット数を計数して第1細菌判別用試料の計数結果B2を取得する。このドット数(計数結果B2)は、第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値となる。そして、ステップS17において、計数結果B2をハードディスク314に記憶する。
【0066】
この後、ステップS18において、総合分析が行われる。
【0067】
総合分析では、まず、図10に示すように、ステップS19において、ハードディスク314に記憶されている細菌検出用試料の計数結果B1および第1細菌判別用試料の計数結果B2を読み出す。次に、ステップS20において、予め設定された所定の閾値をハードディスク314から読み出す。
【0068】
そして、ステップS21において、CPU311は、計数結果B2/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。なお、計数結果B2/計数結果B1は、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを示す値である。この影響度合いを閾値と比較することにより、リゾチームの影響度合いを定量的に判断する。計数結果B2/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS22において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定する。また、計数結果B2/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS23において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌またはグラム陰性桿菌であると判定する。
【0069】
そして、ステップS24において、判定結果を記憶した後、ステップS9(図5参照)において、総合分析結果を示す総合分析結果画面Fを表示部32に表示する。図9に示すように、総合分析結果画面Fでは、ステップS4において1次解析結果画面Cに表示したスキャッタグラムS1と、ステップS14において作成したスキャッタグラムS2と、上記ステップS18(ステップS19〜S24)における総合分析の判定結果に基づいた情報とが表示される。スキャッタグラムS2には、ドットの集合D2と、スキャッタグラムS1と同様の領域Aとが示される。図9では、細菌検出用試料の計数結果B1に比べて第1細菌判別用試料の計数結果B2が著しく減少しており、第1細菌判別用試料の計数結果B2/細菌検出用試料の計数結果B1≦閾値である例を示している。この場合には、ステップS22(図10参照)において、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定されており、総合分析結果画面Fでは、検出された細菌がグラム陽性球菌であることを示唆するメッセージGおよび検出された細菌がブドウ球菌ではないことを示唆するメッセージHが表示される。このメッセージGおよびHなどを参考にして、検体に含まれる細菌の種類の判別をすることが可能である。
【0070】
次に、リゾチームを用いた細菌の種類の判定原理について説明する。
【0071】
図11には、下記に示す4種類の細菌のうち、いずれか1種類の菌が含まれる検体について、第1実施形態による細菌分析装置1の分析のように、検体、希釈液および染色液から調製された細菌検出用試料と、検体、希釈液、染色液およびリゾチームから調製された第1細菌判別用試料について、フローサイトメトリーによる測定を行って作成したスキャッタグラムを示している。4種類の細菌は、それぞれ、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大便連鎖球菌(E.faecalis)および大腸菌(E.coli)である。これら4種類の細菌は、尿路感染症の原因菌として知られている。特に単純性尿路感染症では、これら4種類の細菌のうちいずれか1種類の菌によって感染症が引き起こされていることが多い。なお、表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌属(Staphyrococcus属)のグラム陽性細菌である。また、大便連鎖球菌は、Enterococcus属(Staphyrococcus属以外)のグラム陽性細菌である。また、大腸菌は、グラム陰性桿菌である。
【0072】
図11に示すように、ブドウ球菌属および大腸菌については、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異は認められない。その一方、大便連鎖球菌については、細菌検出用試料の測定結果に比べて第1細菌判別用試料の測定結果のドット数が減少している。すなわち、リゾチームは、ブドウ球菌属および大腸菌には反応せずに大便連鎖球菌にのみ反応して溶菌させることがわかる。
【0073】
これにより、検体を2つに分けて、一方の検体でリゾチームを加えない細菌検出用試料を調製し、他方の検体でリゾチームを加えた第1細菌判別用試料を調製し、2つの測定試料の測定結果に基づいて、検体に含まれている細菌が大便連鎖球菌であるか否かを判定することが可能である。
【0074】
なお、第1細菌判別用試料に含まれるリゾチームの濃度としては、大便連鎖球菌といったStaphyrococcus属以外のグラム陽性細菌において、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異が認められる濃度を適宜設定すればよい。好ましくは、第1細菌判別用試料中のリゾチームの濃度が、2.5mg/mL以上20mg/mL以下である。リゾチームの濃度が2.5mg/mL以上であれば、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数の差を容易に認めることができる。リゾチームの濃度が20mg/mL以下であれば、リゾチームを第1細菌判別用試料中へ容易に溶解させることができるので、第1細菌判別用試料を容易に調製することができる。
【0075】
また、この第1実施形態のリゾチームを用いた構成では、大便連鎖球菌ではない細菌の判定(ブドウ球菌属とグラム陰性桿菌との間の細菌分析装置1による判定)が困難であるが、ブドウ球菌属のスキャッタグラムのパターンとグラム陰性桿菌のスキャッタグラムのパターンとが相違することを利用して、ブドウ球菌属とグラム陰性桿菌とを判別することが可能である。すなわち、ブドウ球菌属のパターンはドットの分布状態の傾きが大きく(パターンが立ち上がっている)、グラム陰性菌のパターンはドットの分布状態の傾きが小さい(パターンが寝ている)ことなどからブドウ球菌属とグラム陰性桿菌とを判別することが可能である。このように、第1実施形態の細菌分析装置1による分析結果およびスキャッタグラムのパターンの形状に基づいて、ブドウ球菌属と、大便連鎖球菌と、グラム陰性桿菌とを判別することが可能である。
【0076】
第1実施形態では、上記のように、検体から調製される細菌検出用試料の検出結果および検体とリゾチームとから調製される第1細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する分析部3を設けることによって、腐食性の強い強アルカリ溶液を細菌分析装置1に導入しなくても、腐食性の弱い酵素(リゾチーム)を用いて検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、分析部3は、細菌検出用試料の検出結果と第1細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力している。このように構成することによって、大便連鎖球菌(ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌)と反応することがわかっているリゾチームを用いることにより、細菌検出用試料の検出結果と第1細菌判別用試料の検出結果に基づいてリゾチームの影響が認められた検体には、その細菌(大便連鎖球菌)が含まれていると推定することができる。この推定した細菌の種類を、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報として出力することができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、細菌検出用試料の細菌数を反映した値と第1細菌判別用試料の細菌数を反映した値に基づいて、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力している。このように構成することによって、細菌検出用試料の細菌数を反映した値と第1細菌判別用試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを容易に取得することができる。
【0079】
また、第1実施形態では、上記のように、分析部3は、細菌検出用試料の検出結果および第1細菌判別用試料の検出結果のそれぞれに基づいて、細菌検出用試料に含まれる細菌に関するスキャッタグラムS1および第1細菌判別用試料に含まれる細菌に関するスキャッタグラムS2を作成するとともに、スキャッタグラムS1およびスキャッタグラムS2に基づいて、細菌検出用試料および第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値(計数結果B1およびB2)を取得している。このように構成することによって、スキャッタグラムS1およびスキャッタグラムS2に基づいて、容易に、細菌検出用試料および第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値を取得することができる。
【0080】
また、第1実施形態では、上記のように、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報として、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を表示部32に表示することによって、検査者は、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を知ることができるので、その検体にどの細菌が含まれているかの判断を容易に行うことができる。
【0081】
また、第1実施形態では、上記のように、リゾチームはブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌に対して反応するので、リゾチームを用いることにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0082】
また、第1実施形態では、上記のように、尿を細菌分析装置1によって分析することにより、尿中に含まれる細菌の種類を容易に判別することができる。
【0083】
また、第1実施形態では、検体にブドウ球菌が含まれているか否かを判断することができる。ブドウ球菌は、特定の薬剤に対して薬剤耐性になる可能性がある。たとえば、メチシリンを投与した場合には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に変異することがある。したがって、検体にブドウ球菌が含まれているか否かの判断は臨床検査において重要である。第1実施形態では、細菌分析装置1の総合分析結果画面FのメッセージGおよびHなどを参考にして、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1のパターン(ドットの集合D1)と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2のパターン(ドットの集合D2)とに基づいて、検体にブドウ球菌が含まれているか否かを判断することができる。
【0084】
なお、上記第1実施形態では、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2との領域A内のドットをそれぞれ計数した例を示したが、本発明はこれに限らず、図12に示す第1実施形態の変形例の1次解析結果画面Iのように、領域Aを指定せずに、スキャッタグラムのドットを全て計数してもよい。
【0085】
また、上記第1実施形態では、総合分析結果画面Fにおいて、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2とを並べて表示した例を示したが、本発明はこれに限らず、図13に示す第1実施形態の変形例の総合分析結果画面Jのように、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1のパターン(ドットの集合D1)と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2のパターン(ドットの集合D2)とを重ねて1つのスキャッタグラムKに表示してもよい。これにより、細菌測定用試料のスキャッタグラムS1に対する第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2のパターンの変化を検査者が容易に認識することができる。
【0086】
また、上記第1実施形態では、ドットの計数結果の比と所定の閾値とを比較して、細菌の種類の判定を行った例を示したが、本発明はこれに限らず、細菌測定試料のスキャッタグラムのパターン(ドットの集合D1)と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムのパターン(ドットの集合D2)との重なる領域の割合と、重なる割合について予め設定された所定の閾値とを比較して判定を行ってもよい。このスキャッタグラムのパターンの重なる割合は、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを示す値である。このようにパターンの重なり具合でリゾチームの影響度合いを定量する場合には、細菌の種類の判定にスキャッタグラムのドットの計数を行う必要がない。
【0087】
また、上記第1実施形態では、総合分析結果画面のメッセージの一例を示したが、他のメッセージでもよい。たとえば、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌(大便連鎖球菌)であると判定された場合には、「検体にブドウ球菌が含まれていません。検体には連鎖球菌が含まれている可能性があります。」などの細菌の名称を表示するメッセージでもよいし、「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などの細菌数を表示するメッセージでもよい。また、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌またはグラム陰性桿菌であると判定された場合には、「検体にはグラム陰性細菌が含まれている可能性があります。」などの細菌の種類を表示するメッセージでもよいし、「検体にブドウ球菌か大腸菌が含まれている可能性があります。」などの細菌の名称を表示するメッセージでもよいし、「検体に含まれるブドウ球菌の数:測定不能」などの細菌数を表示するメッセージでもよい。
【0088】
(第2実施形態)
次に、図14を参照して、本発明の第2実施形態による細菌分析装置1について説明する。この第2実施形態では、リゾチームを用いた上記第1実施形態と異なり、リゾスタフィン(Lysostaphin)を用いる例について説明する。なお、第2実施形態による細菌分析装置1の構造は、用いる酵素および分析部3の解析処理以外は上記第1実施形態と同様であるので、細菌分析装置1の構造についての説明を省略する。また、分析フローおよび解析フローについても、総合分析処理以外の処理は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0089】
第2実施形態の総合分析処理では、図14に示したステップS119およびS120において、図10のステップS19およびS20と同様の処理を行う。そして、ステップS121において、CPU311は、計数結果B2/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。計数結果B2/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS122において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌であると判定する。また、計数結果B2/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS123において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌以外の細菌であると判定する。そして、ステップS124において、判定結果を記憶した後、総合分析結果を表示部32の総合分析結果画面に表示する。
【0090】
なお、上記第2実施形態において、総合分析結果画面では、上記第1実施形態と同様、細菌検出用試料の検出結果のスキャッタグラムと、第1細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムと、S122およびS123における総合分析の判定結果に基づいた情報とが表示される。具体的には、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属のグラム陽性細菌であると判定された場合には、例えば「検体にブドウ球菌が含まれています」または「検体に含まれるブドウ球菌の数:○○○」などのメッセージが表示される。また、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属のグラム陽性球菌以外の細菌であると判定された場合には、例えば「検体にブドウ球菌は含まれていません。」または「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などのメッセージが表示される。
【0091】
次に、リゾスタフィンを用いた細菌の種類の判定原理について説明する。
【0092】
図15に示すように、図11に示すリゾチームの場合と同様にして、検体、希釈液および染色液から調製された測定試料と、検体、希釈液、染色液およびリゾスタフィンから調製された測定試料について、フローサイトメトリーによりスキャッタグラムを作成した。
【0093】
図15に示すように、大便連鎖球菌および大腸菌については、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異は認められない。その一方、ブドウ球菌属(表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌)については、細菌検出用試料の測定結果に比べて第1細菌判別用試料の測定結果のドット数が減少している。すなわち、リゾスタフィンは大便連鎖球菌および大腸菌には反応せずにブドウ球菌属にのみ反応することがわかる。
【0094】
これにより、検体を2つに分けて、一方の検体でリゾスタフィンを加えずに測定試料を調製し、他方の検体でリゾスタフィンを加えて測定試料を調製し、2つの測定試料の測定結果に基づいて、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属であるか否かを判定することが可能である。
【0095】
なお、第1細菌判別用試料に含まれるリゾスタフィンの濃度としては、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などStaphyrococcus属のグラム陽性球菌において、上記細菌検出用試料の測定結果と上記第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異が認められる濃度を適宜設定すればよい。好ましくは、第1細菌判別用試料中のリゾスタフィンの濃度が、0.5μg/mL以上100μg/mL以下である。リゾスタフィンが上記の濃度範囲であれば、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数の差を容易に認めることができる。さらに好ましくは第1細菌判別用試料中のリゾスタフィンの濃度が0.5μg/mL以上2.5μg/mL以下のときである。このとき、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数の差をより容易に認めることができるので、検体に含まれる細菌の種類をより容易に判断することができる。
【0096】
第2実施形態では、上記のように、ブドウ球菌属細菌に特異的な細胞壁溶解酵素であるリゾスタフィンを用いて細菌の反応の有無を判別することによって、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属であることを容易に判定することができる。
【0097】
また、第2実施形態では、上記のように、リゾスタフィンはブドウ球菌属のグラム陽性細菌に対して反応するので、リゾスタフィンを用いることにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかを容易に判断することができる。
【0098】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0099】
(第3実施形態)
次に、図16〜図18を参照して、本発明の第3実施形態による細菌分析装置1について説明する。この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と異なり、リゾチームおよびリゾスタフィンの2つの酵素を用いて細菌の分析を行う例について説明する。なお、第3実施形態による細菌分析装置1の構造は、用いる酵素および分析部3の解析処理以外は上記第1実施形態と同様であるので、細菌分析装置1の構造についての説明を省略する。
【0100】
第3実施形態の分析動作としては、まず、図16のステップS201〜S204において、CPU311は、図5のステップS1〜S4と同様の処理を行う。そして、検査者は、上記第1実施形態と同様に、1次解析結果画面を参照して、2次解析を行うか否かを決定する。2次解析を行う場合には、検査者は、分析部3の表示部32に表示された画面上の図示しない測定指示ボタンを押すことによって、細菌分析装置1に対して2次解析の指示を行う。また、ステップS205において、CPU311は、測定指示ボタンが押されたか否かを判断する。測定指示ボタンが押されない場合には、細菌分析装置1による分析処理は終了する。測定指示ボタンが押された場合には、CPU311は、測定部2に2次解析の開始を指示する。
【0101】
測定部2の制御部7は、2次解析の指示があった場合、ステップS206およびS207において、試料調製部5を制御することにより、第1細菌判別用試料および第2細菌判別用試料の調製を行う。すなわち、検体(尿)、希釈液、染色液に加えて酵素(リゾチーム)を混合することにより、第1細菌判別用試料を調製するとともに、検体(尿)、希釈液、染色液に加えて酵素(リゾスタフィン)を混合することにより、第2細菌判別用試料を調製する。
【0102】
次に、ステップS208において、第1細菌判別用試料および第2細菌判別用試料のそれぞれの検出(測定)が行われる。測定結果(前方散乱光に対応するデータ、側方散乱光に対応するデータ、及び側方蛍光に対応するデータ)は、分析部3に送信される。
【0103】
次に、ステップS209において、分析部3により2次解析処理が行われる。すなわち、図17のステップS211において、第1細菌判別用試料の前方散乱光に対応するデータと、側方蛍光に対応するデータとに基づいて、第1細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムを作成する。そして、ステップS212において、1次解析のスキャッタグラムで設定した領域(図7の領域A参照)を読み出すとともに、第1細菌判別用試料のスキャッタグラムに設定する。そして、ステップS213において、第1細菌判別用試料のスキャッタグラムのうち、領域内に含まれるドット数を計数して計数結果B2を取得する。このドット数(計数結果B2)は、第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値となる。そして、ステップS214において、計数結果をハードディスク314に記憶する。
【0104】
また、ステップS215〜S218において、ステップS211〜S214と同様にして、第2細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムの作成、領域内に含まれるドット数の計数およびドットの計数結果B3の記憶が行われる。
【0105】
この後、ステップS219において、総合分析(図18参照)が行われる。
【0106】
総合分析では、まず、図18のステップS220において、ハードディスク314に記憶されている細菌検出用試料の計数結果B1および第1細菌判別用試料の計数結果B2を読み出す。次に、ステップS221において、予め設定された所定の閾値をハードディスク314から読み出す。
【0107】
そして、ステップS222において、CPU311は、計数結果B2/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。計数結果B2/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS223において、CPU311は、検体に含まれる細菌はブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定する。この後、ステップS229において、判定結果を記憶する。
【0108】
また、計数結果B2/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS224において、CPU311は、ハードディスク314に記憶されている細菌検出用試料の計数結果B1および第2細菌判別用試料の計数結果B3を読み出す。次に、ステップS225において、予め設定された所定の閾値をハードディスク314から読み出す。そして、ステップS226において、計数結果B3/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。計数結果B3/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS227において、CPU311は、検体に含まれる細菌はブドウ球菌属のグラム陽性球菌であると判定する。計数結果B3/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS228において、検体に含まれる細菌は、グラム陰性桿菌であると判定する。ここで、既に上記ステップS222において検体に含まれる細菌が大便連鎖球菌でないこと(検体に含まれる細菌がブドウ球菌属またはグラム陰性桿菌であること)が判別されているので、ステップS228において計数結果B3/計数結果B1>閾値である場合(リゾスタフィンの影響がない場合)には、検体に含まれる細菌が大便連鎖球菌でもなく、ブドウ球菌属でもないことが推定される。これにより、ステップS228において計数結果B3/計数結果B1>閾値である場合には、検体に含まれる細菌がグラム陰性桿菌であると判定することが可能である。
【0109】
そして、ステップS229において、判定結果を記憶した後、ステップS210(図16参照)において、総合分析結果を表示部32の総合分析結果画面に表示する。総合分析結果画面では、細菌検出用試料の検出結果のスキャッタグラムと、第1細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムおよび第2細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムと、上記ステップS223、S227およびS228における判定結果に基づいた情報とが表示される。計数結果B1、B2およびB3も総合分析結果画面に表示される。具体的には、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定された場合には、たとえば、「検体に連鎖球菌が含まれている?」または「検体にブドウ球菌は含まれていません。検体に連鎖球菌が含まれている可能性があります。」または「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などのメッセージが表示される。検体に含まれている細菌がブドウ球菌属のグラム陽性球菌であると判定された場合には、たとえば、「検体にブドウ球菌が含まれている?」または「検体にブドウ球菌が含まれています。」または、「検体に含まれるブドウ球菌の数:○○○」などのメッセージが表示される。検体に含まれている細菌がグラム陰性桿菌であると判定された場合には、たとえば、「検体に大腸菌が含まれている?」または「検体にブドウ球菌は含まれていません。検体に大腸菌が含まれている可能性があります。」または、「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などのメッセージが表示される。
【0110】
第3実施形態では、上記のように、細菌検出用試料の検出結果、第1細菌判別用試料の検出結果および第2細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することによって、リゾチームおよびリゾスタフィンを用いて、検体に含まれる細菌の種類(ブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるか)をより正確に推定することができる。
【0111】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0112】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、リゾチームまたはリゾスタフィンを用いて細菌の種類を判定した例を示したが、本発明はこれに限らず、特定の細菌に反応する酵素(細胞膜消化酵素)があれば、その酵素を用いて判定を行ってもよい。このような酵素を用いることにより、上記第1〜第3実施形態で説明した細菌の種類以外の細菌についても判定することが可能である。
【0113】
また、上記第1〜第3実施形態では、検体が尿である例について説明したが、本発明はこれに限らず、フローサイトメトリーで計測可能な検体であれば、血液などの他の検体でもよい。
【0114】
また、上記第1〜第3実施形態では、分析部3において細菌の種類を分析する例について説明したが、本発明はこれに限らず、測定部2の制御部7において分析を行ってもよい。
【0115】
また、上記第1〜第3実施形態では、細菌分析装置1で細菌検出用試料を調製し測定を行う例について説明したが、本発明はこれに限らず、別の装置によって細菌検出用試料を調製し測定を行い、得られた測定結果を細菌分析装置1の分析部3に送信し、この測定結果と細菌判別用試料の測定結果とを用いて総合分析を行っても良い。このとき、測定結果は、電気通信回線(有線、無線を問わない)によって分析部3と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することができる。
【0116】
また、上記第1〜第3実施形態では、測定試料調製部51が1つである例について説明したが、本発明はこれに限らず、測定試料調製部を2つ以上備える構成であっても良い。例えば、測定試料調製部を2つ備え、細菌検出用試料と第1細菌判別用試料をそれぞれ別々の測定試料調製部で調製するように構成してもよい。
【0117】
また、上記第1〜第3実施形態では、吸引管8が1つである例について説明したが、本発明はこれに限らず、吸引管を2つ以上備える構成であっても良い。例えば、測定試料調製部と吸引管とを2つずつ備え、細菌検出用試料と第1細菌判別用試料とをそれぞれ別々の吸引管を介して別々の測定試料調製部に分注するように構成してもよい。
【0118】
また、上記第1〜第3実施形態では、検体に含まれる細菌に対する酵素の影響度合いを、「計数結果B2/計数結果B1」で示した例について説明したが、本発明はこれに限らず、影響度合いを、例えば「計数結果B2−計数結果B1」で示してもよいし、「計数結果B2/(計数結果B1+計数結果B2)」で示してもよい。
【0119】
また、上記第1〜第3実施形態では、総合分析結果を表示部32に出力する例について説明したが、本発明はこれに限らず、総合分析結果を紙などに印字してもよいし、他の装置などに送信してもよい。
【0120】
また、上記第1〜第3実施形態では、酵素を用いない1次解析を行った後、酵素を用いる2次解析を検査者が指示した場合に2次解析を行う例について説明したが、本発明はこれに限らず、検査者の指示を待たずに1次解析と2次解析とを自動的に行うように構成してもよい。
【0121】
また、上記第1〜第3実施形態では、細菌検出用試料を調製し測定を行い、測定結果によって2次解析が必要であるか否かを決定し、2次解析が必要である場合には第1細菌判別用試料を調製し測定を行う例について説明したが、本発明はこれに限らず、2次解析が必要であるか否かに関係なく、細菌検出用試料と第1細菌判別用試料の両方を調製し測定を行うように構成してもよい。
【0122】
[実施例]
実施例1:リゾチームの至適濃度の検討
測定試料中のリゾチームの至適濃度を調べるため、リゾチーム濃度を変化させた測定試料における細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を用いて測定した。
(1)測定試料の調製
まず、大便連鎖球菌を細菌培養液に加え、一晩培養した。細菌培養液は、一般細菌用液体培地であるハートインヒュージョン培地(日水製薬製)を、取扱い説明書に従い、加温融解した後に高圧蒸気滅菌して使用した。
次に、一晩培養した細菌培養液をハートインヒュージョン培地中に1/500希釈となるように添加し攪拌した。この培養液を35℃、4時間培養したものを大便連鎖球菌試料とした。
(2)細菌数の測定
上記大便連鎖球菌試料に、終濃度が10mg/mLとなるようにリゾチーム(和光純薬製)を添加し、ヒートブロックで37℃、5分間反応させた。
反応後の試料に含まれる細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を使用した。希釈液にはUFIIパック−BAC(商品名)(シスメックス社製)を、染色液にはUFIIサーチ−BAC(商品名)(シスメックス社製)をそれぞれ用いて、UF−1000iの取扱説明書に従って試料中に含まれる細菌数を測定した。
なお、終濃度が、0mg/mL、1mg/mL、2.5mg/mL、および、5mg/mLとなるようにリゾチームを添加した試料についても、それぞれ上記と同様の方法で細菌数を測定した。
(結果)
リゾチームの濃度が0mg/mLの試料に含まれる細菌数を100とした時の、各濃度における細菌数を表すグラフを図19に示す。
図19のグラフより、リゾチームの終濃度が2.5mg/mL以上のとき、リゾチームを添加していない試料と比較して、試料に含まれる細菌数が減少していることが分かった。また、リゾチームの終濃度が高くなるにつれて、試料に含まれる細菌数が減少していることが分かった。すなわち、リゾチームと細菌との反応は、リゾチームの濃度依存的な反応であることが分かった。このことから、測定試料中に含まれるリゾチーム濃度が高まるほど、細菌の種類をより容易に判断できることが示唆された。
【0123】
実施例2:リゾスタフィンの至適濃度の検討
測定試料中のリゾスタフィンの至適濃度を調べるため、リゾスタフィン濃度を変化させた測定試料における細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を用いて測定した。
(1)測定試料の調製
まず、黄色ブドウ球菌を細菌培養液に加え、一晩培養した。細菌培養液は、一般細菌用液体培地であるハートインヒュージョン培地(日水製薬製)を、取扱い説明書に従い、加温融解した後に高圧蒸気滅菌して使用した。
次に、一晩培養した細菌培養液をハートインヒュージョン培地中に1/1000希釈となるように添加し攪拌した。この培養液を35℃、4時間培養したものを黄色ブドウ球菌試料とした。
また、上記の黄色ブドウ球菌の代わりに、S.Sciuriを用いて、上記と同様の方法にてS.Sciuri試料を作製した。
(2)細菌数の測定
上記黄色ブドウ球菌試料に、終濃度が1.0μg/mLとなるようにリゾスタフィン(和光純薬製)を添加し、ヒートブロックで37℃、5分間反応させた。
反応後の試料に含まれる細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を使用して測定した。希釈液にはUFIIパック−BAC(商品名)(シスメックス社製)を、染色液にはUFIIサーチ−BAC(商品名)(シスメックス社製)をそれぞれ用いて、UF−1000iの取扱説明書に従って試料中に含まれる細菌数を測定した。
また、終濃度が、0μg/mL、0.5μg/mL、2.5μg/mL、5.0μg/mL、10.0μg/mL、および、100.0μg/mLになるようにリゾスタフィンを添加した試料についても、それぞれ上記と同様の方法で細菌数を測定した。
また、S.Sciuri試料についても上記と同様の方法で測定した。
(結果)
リゾスタフィンの濃度が0μg/mLの試料に含まれる細菌数を100とした時の、各濃度における細菌数を示すグラフを図20(黄色ブドウ球菌)および図21(S.Sciuri)に示す。
図20および図21のグラフより、黄色ブドウ球菌試料及びS.Sciuri試料のいずれにおいても、リゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上100μg/mL以下の試料では、リゾスタフィンを添加しなかった時の細菌数と比べて、細菌数は減少していることが分かった。さらに、リゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上2.5μg/mL以下のとき、リゾスタフィンと細菌との反応性が最も高く、細菌数はほぼ0となることが分かった。すなわち、リゾスタフィンと黄色ブドウ球菌試料及びS.Sciuri試料との反応は、リゾチームの反応のように濃度依存的な反応ではなく、至適濃度が存在することが分かった。
このことから、リゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上100μg/mL以下のとき、測定試料中に含まれる細菌の種類を容易に判断でき、さらにリゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上2.5μg/mL以下のとき、細菌の種類をより容易に判断できることが示唆された。
【符号の説明】
【0124】
1 細菌分析装置
3 分析部(情報処理部)
5 試料調製部
6 光学検出部(検出部)
32 表示部
S1 スキャッタグラム(第1スキャッタグラム)
S2 スキャッタグラム(第2スキャッタグラム)
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌分析装置および細菌分析方法に関し、特に、検体に含まれる細菌の種類を判別するための細菌分析装置および細菌分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体に含まれる細菌の種類を判別するための装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、フローサイトメータを用いた粒子測定装置を用いて検体に含まれる細菌の種類を判別している。上記特許文献1では、検体から第1測定試料を調製するとともに、検体とアルカリ性溶液とから第2測定試料を調製し、第1測定試料および第2測定試料について、粒子測定装置により計測を行っている。また、第1測定試料の測定結果と第2測定試料の測定結果とに基づいて、細菌がグラム陽性細菌であるかグラム陰性細菌であるかを分析している。上記特許文献1には、アルカリ性溶液として、pH14程度のアルカリ性溶液を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−110629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、腐食性の強いpH14程度の強アルカリの溶液を装置内に導入する必要があるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、強アルカリ溶液を装置内に導入する必要のない細菌分析装置および細菌分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における細菌分析装置は、少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する試料調製部と、第1測定試料に含まれる細菌を検出する検出部と、第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する情報処理部とを備えている。
【0008】
この第1の局面による細菌分析装置では、上記のように、検体と第1酵素とから調製される第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する情報処理部を設けることによって、腐食性の強い強アルカリ溶液を装置内に導入しなくても、酵素(第1酵素)を用いて検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【0009】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、試料調製部は、少なくとも検体から調製される第2測定試料をさらに調製し、検出部は、前記第1測定試料に含まれる細菌および前記第2測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果と第2測定試料の検出結果とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、特定の細菌に影響する(特定の細菌と反応する)ことがわかっている酵素を第1酵素として用いることにより、第1測定試料の検出結果と第2測定試料の検出結果とに基づいて第1酵素の影響が認められた検体には、その細菌が含まれていると推定することができる。この推定した細菌の種類を、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報として出力することができる。
【0011】
上記検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得する構成において、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、第1測定試料および第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得するとともに、第1測定試料の細菌数を反映した値と第2測定試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1測定試料の細菌数を反映した値と第2測定試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを容易に取得することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、第1スキャッタグラムおよび第2スキャッタグラムに基づいて、第1測定試料に含まれる細菌数を反映した値および第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得する。このように構成すれば、第1スキャッタグラムおよび第2スキャッタグラムに基づいて、容易に、第1測定試料および第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得することができる。
【0013】
上記検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得する構成において、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、第1スキャッタグラムのパターンと第2スキャッタグラムとのパターンとに基づいて、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1スキャッタグラムと第2スキャッタグラムとのパターンを比較する(たとえば、第1スキャッタグラムのパターンと第2スキャッタグラムのパターンとの重なる割合を算出する)ことにより、検体に含まれる細菌に対する第1酵素の影響度合いを容易に取得することができる。
【0014】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、少なくとも、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を含む。このように構成すれば、検査者は、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を知ることができるので、その検体にどの細菌が含まれているかの判断を容易に行うことができる。
【0015】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、表示部をさらに備え、情報処理部は、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を表示部に表示するように制御する。このように構成すれば、検査者は、表示部を見ることによって検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を容易に得ることができる。
【0016】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、第1酵素は、細胞膜消化酵素である。このように構成すれば、特定の細菌に影響する(特定の細菌と反応する)細胞膜消化酵素を用いて特定の細菌を減菌させることができるので、細胞膜消化酵素を第1酵素として用いることによって、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【0017】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がグラム陽性細菌であるか否かの情報を含む。このように構成すれば、検査者は、検体に含まれる細菌がグラム陽性細菌であるか否かを容易に判断することができる。
【0018】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかの情報を含む。このように構成すれば、検査者は、出力された情報に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、第1酵素は、リゾチームである。このように構成すれば、リゾチームはブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌に対して反応するので、第1酵素としてリゾチームを用いて細菌の反応の有無を判別することにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0020】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかの情報を含む。このように構成すれば、検査者は、出力された情報に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかを容易に判断することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、第1酵素は、リゾスタフィンである。このように構成すれば、リゾスタフィンはブドウ球菌属の細菌に対して反応するので、第1酵素としてリゾスタフィンを用いて細菌の反応の有無を判別することにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかを容易に判断することができる。
【0022】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、試料調製部は、少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料をさらに調製し、検出部は、第1測定試料に含まれる細菌、第2測定試料に含まれる細菌および第3測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、情報処理部は、第1測定試料の検出結果、第2測定試料の検出結果および第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、第1酵素および第2酵素を用いて、検体に含まれる細菌の種類をより正確に推定することができる。
【0023】
上記情報処理部が第1〜第3測定試料の検出結果に基づいて検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する構成において、好ましくは、情報処理部は、第1測定試料の検出結果、第2測定試料の検出結果および第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを判定し、判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する。このように構成すれば、検査者は、出力された情報に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0024】
この場合、好ましくは、第1酵素は、リゾチームであり、第2酵素は、リゾスタフィンである。このように構成すれば、リゾチームはブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌に対して反応するとともにグラム陰性細菌には反応せず、リゾスタフィンはブドウ球菌属の細菌(グラム陽性細菌)に対して反応するとともにグラム陰性細菌には反応しないので、リゾチームおよびリゾスタフィンを用いることにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0025】
上記第1酵素がリゾチームである構成において、好ましくは、測定試料中に含まれるリゾチームの濃度は、2.5mg/mL以上20mg/mL以下である。このように構成すれば、リゾチームとブドウ球菌属以外のグラム陽性菌との反応性が高まるので、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0026】
上記第2酵素がリゾスタフィンである構成において、好ましくは、測定試料中に含まれるリゾスタフィンの濃度は、0.5μg/mL以上100μg/mL以下である。このように構成すれば、リゾスタフィンとブドウ球菌属の細菌との反応性が高まるので、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0027】
上記第1の局面による細菌分析装置において、好ましくは、検体は、尿である。このように構成すれば、尿を上記第1の局面による細菌分析装置によって分析することにより、尿中に含まれる細菌の種類を容易に判別することができる。
【0028】
この発明の第2の局面による細菌分析方法は、少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する工程と、第1測定試料に含まれる細菌を検出する工程と、第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程とを備える。
【0029】
この第2の局面による細菌分析方法では、上記のように、検体と第1酵素とから調製される第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力している。このように構成することによって、腐食性の強い強アルカリ溶液を装置内に導入しなくても、酵素(第1酵素)を用いて検体に含まれる細菌の種類を分析することができる。
【0030】
上記第2の局面による細菌分析方法において、好ましくは、少なくとも検体から調製される第2測定試料を調製する工程と、第2測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、第1測定試料の検出結果および第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程を含む。このように構成すれば、第1測定試料の検出結果と第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類を容易に判断することができる。
【0031】
この場合、好ましくは、少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料を調製する工程と、第3測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、第1測定試料の検出結果、第2測定試料の検出結果および第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程を含む。このように構成すれば、第1酵素および第2酵素を用いて、検体に含まれる細菌の種類をより正確に推定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の細菌分析装置及び細菌分析方法によれば、腐食性の強い強アルカリ溶液を装置内に導入しなくても、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態による細菌分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析部を示したブロック図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の試料調製部および光学検出部を概略的に示す図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の光学検出部の構造を示す図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の1次解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の1次解析処理の解析結果を示す1次解析結果画面を示す図である。
【図8】図5に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の2次解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理の解析結果を示す総合分析結果画面を示す図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】リゾチームを用いた細菌の種類の判定原理を説明するための図である。
【図12】図1に示した第1実施形態の変形例による細菌分析装置の分析動作の1次解析処理の解析結果を示す1次解析結果画面を示す図である。
【図13】図1に示した第1実施形態の変形例による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理の解析結果を示す総合分析結果画面を示す図である。
【図14】図1に示した第2実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】リゾスタフィンを用いた細菌の種類の判定原理を説明するための図である。
【図16】本発明の第3実施形態による細菌分析装置の分析動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の第3実施形態による細菌分析装置の分析動作の2次解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】本発明の第3実施形態による細菌分析装置の分析動作の総合分析処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】リゾチーム濃度と大便連鎖球菌の細菌数との関係を示すグラフである。
【図20】リゾスタフィン濃度と黄色ブドウ球菌の細菌数との関係を示すグラフである。
【図21】リゾスタフィン濃度とS.sciuriの細菌数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による細菌分析装置1の全体構成について説明する。
【0036】
図1に示すように、第1実施形態による細菌分析装置1は、フローサイトメトリーによって検体の測定を行う測定部2と、測定部2における測定結果を分析する分析部3とを備えている。測定部2は、検体を収容する試験管100を収納するサンプルラック200(試験管立て)を移送するためのラックテーブル4と、検体などから測定試料を調製するための試料調製部5と、測定試料から尿中の有形成分や細菌の情報を検出するための光学検出部6と、ラックテーブル4、試料調製部5および光学検出部6などを制御する制御部7とを含んでいる。測定部2の筐体の側面には、アーム21を介して支持台22が取り付けられている。この支持台22にパーソナルコンピュータからなる分析部3が設置されている。また、測定部2と分析部3とはLAN接続されている。
【0037】
ラックテーブル4は、サンプルラック200を所定の検体吸引位置まで移送する機能を有している。
【0038】
検体吸引位置において、試験管100に入った検体(尿)は、吸引管8を用いて図示しないシリンジポンプにより吸引されるとともに、後述する測定試料調製部51に分注される。
【0039】
図3に示すように、試料調製部5は、検体と所定の液とを混合することにより、測定試料を調製する機能を有している。具体的には、試料調製部5は、測定試料調製部51と、希釈液保持部52と、染色液保持部53と、酵素保持部54とを含んでいる。第1実施形態では、酵素保持部54には、細胞壁溶解酵素の一つであるリゾチーム(Lysozyme)が保持されている。試料調製部5は、吸引管8を介して検体が分注された測定試料調製部51に希釈液および染色液を混合することにより、細菌検出用試料を調製することが可能である。また、試料調製部5は、検体が分注された測定試料調製部51に希釈液、染色液および酵素(リゾチーム)を混合することにより、第1細菌判別用試料を調製することが可能である。試料調製部5において調製された測定試料(細菌検出用試料および第1細菌判別用試料)は、後述する光学検出部6のフローセル61に導入されるように構成されている。
【0040】
光学検出部6では、フローサイトメトリーによる光学的な測定が行われる。すなわち、光学検出部6では、測定試料がシース液(図示せず)に包まれた細い流れがフローセル61において形成されるとともに、この細い流れに対してレーザ光が照射される。具体的な構成としては、図4に示すように、光学検出部6は、半導体レーザからなる光源62と、光源62から照射されたレーザ光をフローセル61の細い流れに集光するコンデンサレンズ63と、2つの集光レンズ64および65と、ダイクロイックミラー66と、フォトダイオードからなる散乱光受光部67と、フォトマルチプライヤからなる散乱光受光部68と、フォトマルチプライヤからなる蛍光受光部69とを含んでいる。
【0041】
集光レンズ64は、レーザ光が照射されたフローセル61内の測定試料(細い流れ)から発する光のうち、前方散乱光を散乱光受光部67に集光する機能を有する。集光レンズ65は、レーザ光が照射されたフローセル61内の測定試料から発する光のうち、側方散乱光および側方蛍光をダイクロイックミラー66に集光する機能を有する。ダイクロイックミラー66は、側方散乱光を散乱光受光部68に向かって反射するとともに、側方蛍光を蛍光受光部69の方に透過させるように構成されている。
【0042】
散乱光受光部67、散乱光受光部68および蛍光受光部69のそれぞれは、受光した光を電気信号に変換するように構成されている。これらの電気信号は、検体に含まれる細菌の形状、数などを反映したものとなる。すなわち、光学検出部6は、測定試料(検体)に含まれる細菌を検出することが可能である。これらの電気信号は、制御部7を介して分析部3に送信される。
【0043】
なお、試料調製部5による測定試料の調製動作および光学検出部6による測定動作などは、測定部2の制御部7(マイクロコンピュータ)の制御により、図示しない駆動部および電磁弁などを動作させることにより自動的に行われる。
【0044】
また、分析部3は、図1および図2に示すように、制御部31(図2参照)と、表示部32と、入力デバイス33とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。
【0045】
制御部31は、図2に示すように、CPU311と、ROM312と、RAM313と、ハードディスク314と、読出装置315と、入出力インタフェース316と、通信部317と、画像出力インタフェース318とから主として構成されている。CPU311、ROM312、RAM313、ハードディスク314、読出装置315、入出力インタフェース316、通信部317および画像出力インタフェース318は、バス319によって接続されている。
【0046】
CPU311は、ROM312に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM313にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述する細菌の種類を分析するためのプログラム34aをCPU311が実行することにより、コンピュータが分析部3として機能する。
【0047】
ここで、第1実施形態では、分析部3のCPU311は、通信部317を介して測定部2の制御部7から受信する測定データを解析して、検体(尿)に含まれる可能性のある細菌の種類を判定するとともに、その判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判断を支援するための情報を出力するように構成されている。具体的には、CPU311は、測定部2からのデータを解析することによって、検体に含まれる細菌に関するスキャッタグラムを作成するように構成されている。また、CPU311は、スキャッタグラムに基づいて、検体に含まれる細菌数に対応する数値を算出するように構成されている。CPU311は、検体から調製される細菌検出用試料の検出結果(スキャッタグラム、細菌数に対応する数値など)と、検体および酵素(リゾチーム)から調製される第1細菌判別用試料の検出結果とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する酵素の影響度合いを取得し、その影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判断を支援するための情報を表示部32に出力するように構成されている。
【0048】
ROM312は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU311に実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0049】
RAM313は、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM313は、ROM312およびハードディスク314に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU311の作業領域として利用される。
【0050】
ハードディスク314は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU311に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。第1実施形態の細菌の種類を分析するプログラムも、このハードディスク314にインストールされている。
【0051】
読出装置315は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、細菌の種類を分析するプログラム34aが格納されており、コンピュータがその可搬型記録媒体34から細菌の種類を分析するプログラム34aを読み出してハードディスク314にインストールすることが可能である。
【0052】
なお、上記細菌の種類を分析するプログラム34aは、それぞれ、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、細菌の種類を分析するプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク314内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータがアクセスして、細菌の種類を分析するプログラム34aをダウンロードし、これらをハードディスク314にインストールすることも可能である。
【0053】
また、ハードディスク314には、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、細菌の種類を分析するプログラム34aは、それぞれ上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0054】
入出力インタフェース316は、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース316には、入力デバイス33が接続されており、ユーザがその入力デバイス33を使用することにより、コンピュータにデータを入力することが可能である。これにより、ユーザは、分析部3に対して測定部2の測定指示(測定オーダの入力)を行うことが可能である。
【0055】
通信部317は、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。分析部3は、通信部317を介して、測定部2から測定データを受信可能に構成されている。さらに、分析部3は、通信部317を介して、測定部2に制御信号を送信可能である。
【0056】
画像出力インタフェース318は、LCDまたはCRTなどで構成された表示部32に接続されており、CPU311から与えられた画像データに応じた映像信号を表示部32に出力するように構成されている。表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示するように構成されている。
【0057】
次に、図5〜図10を参照して、第1実施形態による細菌分析装置1の分析動作について説明する。
【0058】
まず、検査者は、分析部3において分析の指示を行う。これにより、測定部2において分析が開始される。具体的には、ステップS1において、制御部7は、試料調製部5を制御することにより、細菌検出用試料の調製を行う。すなわち、検体(尿)、希釈液および染色液を混合することにより、細菌検出用試料を調製する。この後、調製した細菌検出用試料を光学検出部6に移送する。
【0059】
次に、ステップS2において、制御部7は、細菌検出用試料の測定を行う。具体的には、細菌検出用試料をフローセル61に流して細い流れを形成し、その流れ(検体)に光源62からレーザ光を照射する。そして、レーザ光が照射された検体からの前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光を、それぞれ、散乱光受光部67、散乱光受光部68および蛍光受光部69により受光する。この散乱光受光部67、散乱光受光部68および蛍光受光部69のそれぞれにおいて、前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光は電気信号に変換される。これらの電気信号は、制御部7においてデジタルデータに変換されるとともに、所定の波形処理が施される。このような処理により作製された細菌検出用試料の測定結果(前方散乱光に対応するデータ、側方散乱光に対応するデータ、及び側方蛍光に対応するデータ)は、分析部3に送信される。
【0060】
次に、ステップS3において、分析部3のCPU311により1次解析処理が行われる。すなわち、図6に示すように、CPU311は、ステップS10において、前方散乱光に対応するデータと、側方蛍光に対応するデータとに基づいて、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1を作成する。そして、ステップS11において、CPU311は、スキャッタグラムS1のうち、細菌が出現する領域Aを設定するとともに、ステップS12において、領域A内に含まれるドット数を計数して細菌検出用試料の計数結果B1を取得する。このドット数(計数結果B1)は、検体に含まれる細菌数を反映した値となる。そして、ステップS13において、CPU311は、領域Aおよび計数結果B1をハードディスク314に記憶する。
【0061】
そして、ステップS4において、CPU311は、1次解析結果を分析部3(パーソナルコンピュータ)の表示部32に表示する。具体的には、図7に示すように、ステップS10において作成した細菌検出用試料のスキャッタグラムS1と、細菌検出用試料の計数結果B1とを含む1次解析結果画面Cが表示部32に表示される。1次解析結果画面CのスキャッタグラムS1には、細菌の分布の状況を示すドットの集合D1と、集合D1を囲う領域Aとが示される。また、分析の結果、細菌が検出された場合には、その旨および検出された細菌の種類を判定するための測定の実行を促すメッセージEが1次解析結果画面Cに合わせて表示される。
【0062】
検査者は、この1次解析結果画面Cを参照して、検出された細菌の種類を判定するための測定を行うか否かを決定する。2次解析を行う場合には、検査者は、分析部3の表示部32に表示された画面上の図示しない測定指示ボタンを押すことによって、細菌分析装置1に対して測定の指示を行う。また、図5のステップS5において、CPU311は、測定指示ボタンが押されたか否かを判断する。測定指示ボタンが押されない場合には、細菌分析装置1による分析処理は終了する。測定指示ボタンが押された場合には、CPU311は、測定部2に測定の開始を指示する。
【0063】
測定部2の制御部7は、測定の指示があった場合、ステップS6において、試料調製部5を制御することにより、第1細菌判別用試料の調製を行う。すなわち、検体(尿)、希釈液、染色液に加えて酵素(リゾチーム)を混合することにより、第1細菌判別用試料を調製する。この後、調製した第1細菌判別用試料を光学検出部6に移送する。
【0064】
次に、ステップS7において、制御部7は、ステップS2と同様にして第1細菌判別用試料の測定を行う。第1細菌判別用試料の測定結果(前方散乱光に対応するデータ、側方散乱光に対応するデータ、及び側方蛍光に対応するデータ)は、分析部3に送信される。
【0065】
次に、ステップS8において、CPU311は、第1細菌判別用試料の測定データの解析(2次解析処理)を行う。すなわち、図8に示すように、ステップS14において、前方散乱光に対応するデータと、側方蛍光に対応するデータとに基づいて、第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2を作成する。そして、ステップS15において、ステップS11(図6参照)において設定した領域Aを読み出すとともに、スキャッタグラムS2に設定する。そして、ステップS16において、スキャッタグラムS2のうち、領域A内に含まれるドット数を計数して第1細菌判別用試料の計数結果B2を取得する。このドット数(計数結果B2)は、第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値となる。そして、ステップS17において、計数結果B2をハードディスク314に記憶する。
【0066】
この後、ステップS18において、総合分析が行われる。
【0067】
総合分析では、まず、図10に示すように、ステップS19において、ハードディスク314に記憶されている細菌検出用試料の計数結果B1および第1細菌判別用試料の計数結果B2を読み出す。次に、ステップS20において、予め設定された所定の閾値をハードディスク314から読み出す。
【0068】
そして、ステップS21において、CPU311は、計数結果B2/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。なお、計数結果B2/計数結果B1は、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを示す値である。この影響度合いを閾値と比較することにより、リゾチームの影響度合いを定量的に判断する。計数結果B2/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS22において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定する。また、計数結果B2/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS23において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌またはグラム陰性桿菌であると判定する。
【0069】
そして、ステップS24において、判定結果を記憶した後、ステップS9(図5参照)において、総合分析結果を示す総合分析結果画面Fを表示部32に表示する。図9に示すように、総合分析結果画面Fでは、ステップS4において1次解析結果画面Cに表示したスキャッタグラムS1と、ステップS14において作成したスキャッタグラムS2と、上記ステップS18(ステップS19〜S24)における総合分析の判定結果に基づいた情報とが表示される。スキャッタグラムS2には、ドットの集合D2と、スキャッタグラムS1と同様の領域Aとが示される。図9では、細菌検出用試料の計数結果B1に比べて第1細菌判別用試料の計数結果B2が著しく減少しており、第1細菌判別用試料の計数結果B2/細菌検出用試料の計数結果B1≦閾値である例を示している。この場合には、ステップS22(図10参照)において、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定されており、総合分析結果画面Fでは、検出された細菌がグラム陽性球菌であることを示唆するメッセージGおよび検出された細菌がブドウ球菌ではないことを示唆するメッセージHが表示される。このメッセージGおよびHなどを参考にして、検体に含まれる細菌の種類の判別をすることが可能である。
【0070】
次に、リゾチームを用いた細菌の種類の判定原理について説明する。
【0071】
図11には、下記に示す4種類の細菌のうち、いずれか1種類の菌が含まれる検体について、第1実施形態による細菌分析装置1の分析のように、検体、希釈液および染色液から調製された細菌検出用試料と、検体、希釈液、染色液およびリゾチームから調製された第1細菌判別用試料について、フローサイトメトリーによる測定を行って作成したスキャッタグラムを示している。4種類の細菌は、それぞれ、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大便連鎖球菌(E.faecalis)および大腸菌(E.coli)である。これら4種類の細菌は、尿路感染症の原因菌として知られている。特に単純性尿路感染症では、これら4種類の細菌のうちいずれか1種類の菌によって感染症が引き起こされていることが多い。なお、表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌属(Staphyrococcus属)のグラム陽性細菌である。また、大便連鎖球菌は、Enterococcus属(Staphyrococcus属以外)のグラム陽性細菌である。また、大腸菌は、グラム陰性桿菌である。
【0072】
図11に示すように、ブドウ球菌属および大腸菌については、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異は認められない。その一方、大便連鎖球菌については、細菌検出用試料の測定結果に比べて第1細菌判別用試料の測定結果のドット数が減少している。すなわち、リゾチームは、ブドウ球菌属および大腸菌には反応せずに大便連鎖球菌にのみ反応して溶菌させることがわかる。
【0073】
これにより、検体を2つに分けて、一方の検体でリゾチームを加えない細菌検出用試料を調製し、他方の検体でリゾチームを加えた第1細菌判別用試料を調製し、2つの測定試料の測定結果に基づいて、検体に含まれている細菌が大便連鎖球菌であるか否かを判定することが可能である。
【0074】
なお、第1細菌判別用試料に含まれるリゾチームの濃度としては、大便連鎖球菌といったStaphyrococcus属以外のグラム陽性細菌において、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異が認められる濃度を適宜設定すればよい。好ましくは、第1細菌判別用試料中のリゾチームの濃度が、2.5mg/mL以上20mg/mL以下である。リゾチームの濃度が2.5mg/mL以上であれば、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数の差を容易に認めることができる。リゾチームの濃度が20mg/mL以下であれば、リゾチームを第1細菌判別用試料中へ容易に溶解させることができるので、第1細菌判別用試料を容易に調製することができる。
【0075】
また、この第1実施形態のリゾチームを用いた構成では、大便連鎖球菌ではない細菌の判定(ブドウ球菌属とグラム陰性桿菌との間の細菌分析装置1による判定)が困難であるが、ブドウ球菌属のスキャッタグラムのパターンとグラム陰性桿菌のスキャッタグラムのパターンとが相違することを利用して、ブドウ球菌属とグラム陰性桿菌とを判別することが可能である。すなわち、ブドウ球菌属のパターンはドットの分布状態の傾きが大きく(パターンが立ち上がっている)、グラム陰性菌のパターンはドットの分布状態の傾きが小さい(パターンが寝ている)ことなどからブドウ球菌属とグラム陰性桿菌とを判別することが可能である。このように、第1実施形態の細菌分析装置1による分析結果およびスキャッタグラムのパターンの形状に基づいて、ブドウ球菌属と、大便連鎖球菌と、グラム陰性桿菌とを判別することが可能である。
【0076】
第1実施形態では、上記のように、検体から調製される細菌検出用試料の検出結果および検体とリゾチームとから調製される第1細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する分析部3を設けることによって、腐食性の強い強アルカリ溶液を細菌分析装置1に導入しなくても、腐食性の弱い酵素(リゾチーム)を用いて検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することができる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、分析部3は、細菌検出用試料の検出結果と第1細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力している。このように構成することによって、大便連鎖球菌(ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌)と反応することがわかっているリゾチームを用いることにより、細菌検出用試料の検出結果と第1細菌判別用試料の検出結果に基づいてリゾチームの影響が認められた検体には、その細菌(大便連鎖球菌)が含まれていると推定することができる。この推定した細菌の種類を、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報として出力することができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、細菌検出用試料の細菌数を反映した値と第1細菌判別用試料の細菌数を反映した値に基づいて、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを取得し、影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力している。このように構成することによって、細菌検出用試料の細菌数を反映した値と第1細菌判別用試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを容易に取得することができる。
【0079】
また、第1実施形態では、上記のように、分析部3は、細菌検出用試料の検出結果および第1細菌判別用試料の検出結果のそれぞれに基づいて、細菌検出用試料に含まれる細菌に関するスキャッタグラムS1および第1細菌判別用試料に含まれる細菌に関するスキャッタグラムS2を作成するとともに、スキャッタグラムS1およびスキャッタグラムS2に基づいて、細菌検出用試料および第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値(計数結果B1およびB2)を取得している。このように構成することによって、スキャッタグラムS1およびスキャッタグラムS2に基づいて、容易に、細菌検出用試料および第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値を取得することができる。
【0080】
また、第1実施形態では、上記のように、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報として、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を表示部32に表示することによって、検査者は、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を知ることができるので、その検体にどの細菌が含まれているかの判断を容易に行うことができる。
【0081】
また、第1実施形態では、上記のように、リゾチームはブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌に対して反応するので、リゾチームを用いることにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかを容易に判断することができる。
【0082】
また、第1実施形態では、上記のように、尿を細菌分析装置1によって分析することにより、尿中に含まれる細菌の種類を容易に判別することができる。
【0083】
また、第1実施形態では、検体にブドウ球菌が含まれているか否かを判断することができる。ブドウ球菌は、特定の薬剤に対して薬剤耐性になる可能性がある。たとえば、メチシリンを投与した場合には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に変異することがある。したがって、検体にブドウ球菌が含まれているか否かの判断は臨床検査において重要である。第1実施形態では、細菌分析装置1の総合分析結果画面FのメッセージGおよびHなどを参考にして、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1のパターン(ドットの集合D1)と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2のパターン(ドットの集合D2)とに基づいて、検体にブドウ球菌が含まれているか否かを判断することができる。
【0084】
なお、上記第1実施形態では、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2との領域A内のドットをそれぞれ計数した例を示したが、本発明はこれに限らず、図12に示す第1実施形態の変形例の1次解析結果画面Iのように、領域Aを指定せずに、スキャッタグラムのドットを全て計数してもよい。
【0085】
また、上記第1実施形態では、総合分析結果画面Fにおいて、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2とを並べて表示した例を示したが、本発明はこれに限らず、図13に示す第1実施形態の変形例の総合分析結果画面Jのように、細菌検出用試料のスキャッタグラムS1のパターン(ドットの集合D1)と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2のパターン(ドットの集合D2)とを重ねて1つのスキャッタグラムKに表示してもよい。これにより、細菌測定用試料のスキャッタグラムS1に対する第1細菌判別用試料のスキャッタグラムS2のパターンの変化を検査者が容易に認識することができる。
【0086】
また、上記第1実施形態では、ドットの計数結果の比と所定の閾値とを比較して、細菌の種類の判定を行った例を示したが、本発明はこれに限らず、細菌測定試料のスキャッタグラムのパターン(ドットの集合D1)と第1細菌判別用試料のスキャッタグラムのパターン(ドットの集合D2)との重なる領域の割合と、重なる割合について予め設定された所定の閾値とを比較して判定を行ってもよい。このスキャッタグラムのパターンの重なる割合は、検体に含まれる細菌に対するリゾチームの影響度合いを示す値である。このようにパターンの重なり具合でリゾチームの影響度合いを定量する場合には、細菌の種類の判定にスキャッタグラムのドットの計数を行う必要がない。
【0087】
また、上記第1実施形態では、総合分析結果画面のメッセージの一例を示したが、他のメッセージでもよい。たとえば、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌(大便連鎖球菌)であると判定された場合には、「検体にブドウ球菌が含まれていません。検体には連鎖球菌が含まれている可能性があります。」などの細菌の名称を表示するメッセージでもよいし、「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などの細菌数を表示するメッセージでもよい。また、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌またはグラム陰性桿菌であると判定された場合には、「検体にはグラム陰性細菌が含まれている可能性があります。」などの細菌の種類を表示するメッセージでもよいし、「検体にブドウ球菌か大腸菌が含まれている可能性があります。」などの細菌の名称を表示するメッセージでもよいし、「検体に含まれるブドウ球菌の数:測定不能」などの細菌数を表示するメッセージでもよい。
【0088】
(第2実施形態)
次に、図14を参照して、本発明の第2実施形態による細菌分析装置1について説明する。この第2実施形態では、リゾチームを用いた上記第1実施形態と異なり、リゾスタフィン(Lysostaphin)を用いる例について説明する。なお、第2実施形態による細菌分析装置1の構造は、用いる酵素および分析部3の解析処理以外は上記第1実施形態と同様であるので、細菌分析装置1の構造についての説明を省略する。また、分析フローおよび解析フローについても、総合分析処理以外の処理は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0089】
第2実施形態の総合分析処理では、図14に示したステップS119およびS120において、図10のステップS19およびS20と同様の処理を行う。そして、ステップS121において、CPU311は、計数結果B2/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。計数結果B2/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS122において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌であると判定する。また、計数結果B2/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS123において、CPU311は、検体に含まれる細菌は、ブドウ球菌属のグラム陽性球菌以外の細菌であると判定する。そして、ステップS124において、判定結果を記憶した後、総合分析結果を表示部32の総合分析結果画面に表示する。
【0090】
なお、上記第2実施形態において、総合分析結果画面では、上記第1実施形態と同様、細菌検出用試料の検出結果のスキャッタグラムと、第1細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムと、S122およびS123における総合分析の判定結果に基づいた情報とが表示される。具体的には、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属のグラム陽性細菌であると判定された場合には、例えば「検体にブドウ球菌が含まれています」または「検体に含まれるブドウ球菌の数:○○○」などのメッセージが表示される。また、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属のグラム陽性球菌以外の細菌であると判定された場合には、例えば「検体にブドウ球菌は含まれていません。」または「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などのメッセージが表示される。
【0091】
次に、リゾスタフィンを用いた細菌の種類の判定原理について説明する。
【0092】
図15に示すように、図11に示すリゾチームの場合と同様にして、検体、希釈液および染色液から調製された測定試料と、検体、希釈液、染色液およびリゾスタフィンから調製された測定試料について、フローサイトメトリーによりスキャッタグラムを作成した。
【0093】
図15に示すように、大便連鎖球菌および大腸菌については、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異は認められない。その一方、ブドウ球菌属(表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌)については、細菌検出用試料の測定結果に比べて第1細菌判別用試料の測定結果のドット数が減少している。すなわち、リゾスタフィンは大便連鎖球菌および大腸菌には反応せずにブドウ球菌属にのみ反応することがわかる。
【0094】
これにより、検体を2つに分けて、一方の検体でリゾスタフィンを加えずに測定試料を調製し、他方の検体でリゾスタフィンを加えて測定試料を調製し、2つの測定試料の測定結果に基づいて、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属であるか否かを判定することが可能である。
【0095】
なお、第1細菌判別用試料に含まれるリゾスタフィンの濃度としては、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などStaphyrococcus属のグラム陽性球菌において、上記細菌検出用試料の測定結果と上記第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数に差異が認められる濃度を適宜設定すればよい。好ましくは、第1細菌判別用試料中のリゾスタフィンの濃度が、0.5μg/mL以上100μg/mL以下である。リゾスタフィンが上記の濃度範囲であれば、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数の差を容易に認めることができる。さらに好ましくは第1細菌判別用試料中のリゾスタフィンの濃度が0.5μg/mL以上2.5μg/mL以下のときである。このとき、細菌検出用試料の測定結果と第1細菌判別用試料の測定結果との間でドット数の差をより容易に認めることができるので、検体に含まれる細菌の種類をより容易に判断することができる。
【0096】
第2実施形態では、上記のように、ブドウ球菌属細菌に特異的な細胞壁溶解酵素であるリゾスタフィンを用いて細菌の反応の有無を判別することによって、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属であることを容易に判定することができる。
【0097】
また、第2実施形態では、上記のように、リゾスタフィンはブドウ球菌属のグラム陽性細菌に対して反応するので、リゾスタフィンを用いることにより、検査者は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかを容易に判断することができる。
【0098】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0099】
(第3実施形態)
次に、図16〜図18を参照して、本発明の第3実施形態による細菌分析装置1について説明する。この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と異なり、リゾチームおよびリゾスタフィンの2つの酵素を用いて細菌の分析を行う例について説明する。なお、第3実施形態による細菌分析装置1の構造は、用いる酵素および分析部3の解析処理以外は上記第1実施形態と同様であるので、細菌分析装置1の構造についての説明を省略する。
【0100】
第3実施形態の分析動作としては、まず、図16のステップS201〜S204において、CPU311は、図5のステップS1〜S4と同様の処理を行う。そして、検査者は、上記第1実施形態と同様に、1次解析結果画面を参照して、2次解析を行うか否かを決定する。2次解析を行う場合には、検査者は、分析部3の表示部32に表示された画面上の図示しない測定指示ボタンを押すことによって、細菌分析装置1に対して2次解析の指示を行う。また、ステップS205において、CPU311は、測定指示ボタンが押されたか否かを判断する。測定指示ボタンが押されない場合には、細菌分析装置1による分析処理は終了する。測定指示ボタンが押された場合には、CPU311は、測定部2に2次解析の開始を指示する。
【0101】
測定部2の制御部7は、2次解析の指示があった場合、ステップS206およびS207において、試料調製部5を制御することにより、第1細菌判別用試料および第2細菌判別用試料の調製を行う。すなわち、検体(尿)、希釈液、染色液に加えて酵素(リゾチーム)を混合することにより、第1細菌判別用試料を調製するとともに、検体(尿)、希釈液、染色液に加えて酵素(リゾスタフィン)を混合することにより、第2細菌判別用試料を調製する。
【0102】
次に、ステップS208において、第1細菌判別用試料および第2細菌判別用試料のそれぞれの検出(測定)が行われる。測定結果(前方散乱光に対応するデータ、側方散乱光に対応するデータ、及び側方蛍光に対応するデータ)は、分析部3に送信される。
【0103】
次に、ステップS209において、分析部3により2次解析処理が行われる。すなわち、図17のステップS211において、第1細菌判別用試料の前方散乱光に対応するデータと、側方蛍光に対応するデータとに基づいて、第1細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムを作成する。そして、ステップS212において、1次解析のスキャッタグラムで設定した領域(図7の領域A参照)を読み出すとともに、第1細菌判別用試料のスキャッタグラムに設定する。そして、ステップS213において、第1細菌判別用試料のスキャッタグラムのうち、領域内に含まれるドット数を計数して計数結果B2を取得する。このドット数(計数結果B2)は、第1細菌判別用試料に含まれる細菌数を反映した値となる。そして、ステップS214において、計数結果をハードディスク314に記憶する。
【0104】
また、ステップS215〜S218において、ステップS211〜S214と同様にして、第2細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムの作成、領域内に含まれるドット数の計数およびドットの計数結果B3の記憶が行われる。
【0105】
この後、ステップS219において、総合分析(図18参照)が行われる。
【0106】
総合分析では、まず、図18のステップS220において、ハードディスク314に記憶されている細菌検出用試料の計数結果B1および第1細菌判別用試料の計数結果B2を読み出す。次に、ステップS221において、予め設定された所定の閾値をハードディスク314から読み出す。
【0107】
そして、ステップS222において、CPU311は、計数結果B2/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。計数結果B2/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS223において、CPU311は、検体に含まれる細菌はブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定する。この後、ステップS229において、判定結果を記憶する。
【0108】
また、計数結果B2/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS224において、CPU311は、ハードディスク314に記憶されている細菌検出用試料の計数結果B1および第2細菌判別用試料の計数結果B3を読み出す。次に、ステップS225において、予め設定された所定の閾値をハードディスク314から読み出す。そして、ステップS226において、計数結果B3/計数結果B1≦閾値であるか否かを判断する。計数結果B3/計数結果B1≦閾値である場合には、ステップS227において、CPU311は、検体に含まれる細菌はブドウ球菌属のグラム陽性球菌であると判定する。計数結果B3/計数結果B1>閾値である場合には、ステップS228において、検体に含まれる細菌は、グラム陰性桿菌であると判定する。ここで、既に上記ステップS222において検体に含まれる細菌が大便連鎖球菌でないこと(検体に含まれる細菌がブドウ球菌属またはグラム陰性桿菌であること)が判別されているので、ステップS228において計数結果B3/計数結果B1>閾値である場合(リゾスタフィンの影響がない場合)には、検体に含まれる細菌が大便連鎖球菌でもなく、ブドウ球菌属でもないことが推定される。これにより、ステップS228において計数結果B3/計数結果B1>閾値である場合には、検体に含まれる細菌がグラム陰性桿菌であると判定することが可能である。
【0109】
そして、ステップS229において、判定結果を記憶した後、ステップS210(図16参照)において、総合分析結果を表示部32の総合分析結果画面に表示する。総合分析結果画面では、細菌検出用試料の検出結果のスキャッタグラムと、第1細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムおよび第2細菌判別用試料の検出結果のスキャッタグラムと、上記ステップS223、S227およびS228における判定結果に基づいた情報とが表示される。計数結果B1、B2およびB3も総合分析結果画面に表示される。具体的には、検体に含まれている細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性球菌であると判定された場合には、たとえば、「検体に連鎖球菌が含まれている?」または「検体にブドウ球菌は含まれていません。検体に連鎖球菌が含まれている可能性があります。」または「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などのメッセージが表示される。検体に含まれている細菌がブドウ球菌属のグラム陽性球菌であると判定された場合には、たとえば、「検体にブドウ球菌が含まれている?」または「検体にブドウ球菌が含まれています。」または、「検体に含まれるブドウ球菌の数:○○○」などのメッセージが表示される。検体に含まれている細菌がグラム陰性桿菌であると判定された場合には、たとえば、「検体に大腸菌が含まれている?」または「検体にブドウ球菌は含まれていません。検体に大腸菌が含まれている可能性があります。」または、「検体に含まれるブドウ球菌の数:0」などのメッセージが表示される。
【0110】
第3実施形態では、上記のように、細菌検出用試料の検出結果、第1細菌判別用試料の検出結果および第2細菌判別用試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力することによって、リゾチームおよびリゾスタフィンを用いて、検体に含まれる細菌の種類(ブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるか)をより正確に推定することができる。
【0111】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0112】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、リゾチームまたはリゾスタフィンを用いて細菌の種類を判定した例を示したが、本発明はこれに限らず、特定の細菌に反応する酵素(細胞膜消化酵素)があれば、その酵素を用いて判定を行ってもよい。このような酵素を用いることにより、上記第1〜第3実施形態で説明した細菌の種類以外の細菌についても判定することが可能である。
【0113】
また、上記第1〜第3実施形態では、検体が尿である例について説明したが、本発明はこれに限らず、フローサイトメトリーで計測可能な検体であれば、血液などの他の検体でもよい。
【0114】
また、上記第1〜第3実施形態では、分析部3において細菌の種類を分析する例について説明したが、本発明はこれに限らず、測定部2の制御部7において分析を行ってもよい。
【0115】
また、上記第1〜第3実施形態では、細菌分析装置1で細菌検出用試料を調製し測定を行う例について説明したが、本発明はこれに限らず、別の装置によって細菌検出用試料を調製し測定を行い、得られた測定結果を細菌分析装置1の分析部3に送信し、この測定結果と細菌判別用試料の測定結果とを用いて総合分析を行っても良い。このとき、測定結果は、電気通信回線(有線、無線を問わない)によって分析部3と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することができる。
【0116】
また、上記第1〜第3実施形態では、測定試料調製部51が1つである例について説明したが、本発明はこれに限らず、測定試料調製部を2つ以上備える構成であっても良い。例えば、測定試料調製部を2つ備え、細菌検出用試料と第1細菌判別用試料をそれぞれ別々の測定試料調製部で調製するように構成してもよい。
【0117】
また、上記第1〜第3実施形態では、吸引管8が1つである例について説明したが、本発明はこれに限らず、吸引管を2つ以上備える構成であっても良い。例えば、測定試料調製部と吸引管とを2つずつ備え、細菌検出用試料と第1細菌判別用試料とをそれぞれ別々の吸引管を介して別々の測定試料調製部に分注するように構成してもよい。
【0118】
また、上記第1〜第3実施形態では、検体に含まれる細菌に対する酵素の影響度合いを、「計数結果B2/計数結果B1」で示した例について説明したが、本発明はこれに限らず、影響度合いを、例えば「計数結果B2−計数結果B1」で示してもよいし、「計数結果B2/(計数結果B1+計数結果B2)」で示してもよい。
【0119】
また、上記第1〜第3実施形態では、総合分析結果を表示部32に出力する例について説明したが、本発明はこれに限らず、総合分析結果を紙などに印字してもよいし、他の装置などに送信してもよい。
【0120】
また、上記第1〜第3実施形態では、酵素を用いない1次解析を行った後、酵素を用いる2次解析を検査者が指示した場合に2次解析を行う例について説明したが、本発明はこれに限らず、検査者の指示を待たずに1次解析と2次解析とを自動的に行うように構成してもよい。
【0121】
また、上記第1〜第3実施形態では、細菌検出用試料を調製し測定を行い、測定結果によって2次解析が必要であるか否かを決定し、2次解析が必要である場合には第1細菌判別用試料を調製し測定を行う例について説明したが、本発明はこれに限らず、2次解析が必要であるか否かに関係なく、細菌検出用試料と第1細菌判別用試料の両方を調製し測定を行うように構成してもよい。
【0122】
[実施例]
実施例1:リゾチームの至適濃度の検討
測定試料中のリゾチームの至適濃度を調べるため、リゾチーム濃度を変化させた測定試料における細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を用いて測定した。
(1)測定試料の調製
まず、大便連鎖球菌を細菌培養液に加え、一晩培養した。細菌培養液は、一般細菌用液体培地であるハートインヒュージョン培地(日水製薬製)を、取扱い説明書に従い、加温融解した後に高圧蒸気滅菌して使用した。
次に、一晩培養した細菌培養液をハートインヒュージョン培地中に1/500希釈となるように添加し攪拌した。この培養液を35℃、4時間培養したものを大便連鎖球菌試料とした。
(2)細菌数の測定
上記大便連鎖球菌試料に、終濃度が10mg/mLとなるようにリゾチーム(和光純薬製)を添加し、ヒートブロックで37℃、5分間反応させた。
反応後の試料に含まれる細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を使用した。希釈液にはUFIIパック−BAC(商品名)(シスメックス社製)を、染色液にはUFIIサーチ−BAC(商品名)(シスメックス社製)をそれぞれ用いて、UF−1000iの取扱説明書に従って試料中に含まれる細菌数を測定した。
なお、終濃度が、0mg/mL、1mg/mL、2.5mg/mL、および、5mg/mLとなるようにリゾチームを添加した試料についても、それぞれ上記と同様の方法で細菌数を測定した。
(結果)
リゾチームの濃度が0mg/mLの試料に含まれる細菌数を100とした時の、各濃度における細菌数を表すグラフを図19に示す。
図19のグラフより、リゾチームの終濃度が2.5mg/mL以上のとき、リゾチームを添加していない試料と比較して、試料に含まれる細菌数が減少していることが分かった。また、リゾチームの終濃度が高くなるにつれて、試料に含まれる細菌数が減少していることが分かった。すなわち、リゾチームと細菌との反応は、リゾチームの濃度依存的な反応であることが分かった。このことから、測定試料中に含まれるリゾチーム濃度が高まるほど、細菌の種類をより容易に判断できることが示唆された。
【0123】
実施例2:リゾスタフィンの至適濃度の検討
測定試料中のリゾスタフィンの至適濃度を調べるため、リゾスタフィン濃度を変化させた測定試料における細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を用いて測定した。
(1)測定試料の調製
まず、黄色ブドウ球菌を細菌培養液に加え、一晩培養した。細菌培養液は、一般細菌用液体培地であるハートインヒュージョン培地(日水製薬製)を、取扱い説明書に従い、加温融解した後に高圧蒸気滅菌して使用した。
次に、一晩培養した細菌培養液をハートインヒュージョン培地中に1/1000希釈となるように添加し攪拌した。この培養液を35℃、4時間培養したものを黄色ブドウ球菌試料とした。
また、上記の黄色ブドウ球菌の代わりに、S.Sciuriを用いて、上記と同様の方法にてS.Sciuri試料を作製した。
(2)細菌数の測定
上記黄色ブドウ球菌試料に、終濃度が1.0μg/mLとなるようにリゾスタフィン(和光純薬製)を添加し、ヒートブロックで37℃、5分間反応させた。
反応後の試料に含まれる細菌数を、全自動尿中有形成分分析装置UF−1000i(商品名)(シスメックス社製)を使用して測定した。希釈液にはUFIIパック−BAC(商品名)(シスメックス社製)を、染色液にはUFIIサーチ−BAC(商品名)(シスメックス社製)をそれぞれ用いて、UF−1000iの取扱説明書に従って試料中に含まれる細菌数を測定した。
また、終濃度が、0μg/mL、0.5μg/mL、2.5μg/mL、5.0μg/mL、10.0μg/mL、および、100.0μg/mLになるようにリゾスタフィンを添加した試料についても、それぞれ上記と同様の方法で細菌数を測定した。
また、S.Sciuri試料についても上記と同様の方法で測定した。
(結果)
リゾスタフィンの濃度が0μg/mLの試料に含まれる細菌数を100とした時の、各濃度における細菌数を示すグラフを図20(黄色ブドウ球菌)および図21(S.Sciuri)に示す。
図20および図21のグラフより、黄色ブドウ球菌試料及びS.Sciuri試料のいずれにおいても、リゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上100μg/mL以下の試料では、リゾスタフィンを添加しなかった時の細菌数と比べて、細菌数は減少していることが分かった。さらに、リゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上2.5μg/mL以下のとき、リゾスタフィンと細菌との反応性が最も高く、細菌数はほぼ0となることが分かった。すなわち、リゾスタフィンと黄色ブドウ球菌試料及びS.Sciuri試料との反応は、リゾチームの反応のように濃度依存的な反応ではなく、至適濃度が存在することが分かった。
このことから、リゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上100μg/mL以下のとき、測定試料中に含まれる細菌の種類を容易に判断でき、さらにリゾスタフィンの終濃度が0.5μg/mL以上2.5μg/mL以下のとき、細菌の種類をより容易に判断できることが示唆された。
【符号の説明】
【0124】
1 細菌分析装置
3 分析部(情報処理部)
5 試料調製部
6 光学検出部(検出部)
32 表示部
S1 スキャッタグラム(第1スキャッタグラム)
S2 スキャッタグラム(第2スキャッタグラム)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する試料調製部と、
前記第1測定試料に含まれる細菌を検出する検出部と、
前記第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する情報処理部と、を備える細菌分析装置。
【請求項2】
前記試料調製部は、少なくとも検体から調製される第2測定試料をさらに調製し、
前記検出部は、前記第1測定試料に含まれる細菌および前記第2測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項1に記載の細菌分析装置。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果と前記第2測定試料の検出結果とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する前記第1酵素の影響度合いを取得し、前記影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項2に記載の細菌分析装置。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌数を反映した値および前記第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得するとともに、前記第1測定試料の細菌数を反映した値と前記第2測定試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する前記第1酵素の影響度合いを取得し、前記影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項3に記載の細菌分析装置。
【請求項5】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび前記第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、前記第1スキャッタグラムおよび前記第2スキャッタグラムに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌数を反映した値および前記第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得する、請求項4に記載の細菌分析装置。
【請求項6】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび前記第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、前記第1スキャッタグラムのパターンと前記第2スキャッタグラムとのパターンとに基づいて、検体に含まれる細菌に対する前記第1酵素の影響度合いを取得し、前記影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項3に記載の細菌分析装置。
【請求項7】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、少なくとも、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項8】
表示部をさらに備え、
前記情報処理部は、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を前記表示部に表示するように制御する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項9】
前記第1酵素は、細胞壁溶解酵素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項10】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がグラム陽性細菌であるか否かの情報を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項11】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかの情報を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項12】
前記第1酵素は、リゾチームである、請求項11に記載の細菌分析装置。
【請求項13】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかの情報を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項14】
前記第1酵素は、リゾスタフィンである、請求項13に記載の細菌分析装置。
【請求項15】
前記試料調製部は、少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料をさらに調製し、
前記検出部は、前記第1測定試料に含まれる細菌、前記第2測定試料に含まれる細菌および前記第3測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果、前記第2測定試料の検出結果および前記第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項1に記載の細菌分析装置。
【請求項16】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果、前記第2測定試料の検出結果および前記第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを判定し、判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項15に記載の細菌分析装置。
【請求項17】
前記第1酵素は、リゾチームであり、
前記第2酵素は、リゾスタフィンである、請求項15または16に記載の細菌分析装置。
【請求項18】
測定試料に含まれるリゾチームの濃度が、2.5mg/mL以上20mg/mL以下である、請求項12または17に記載の細菌分析装置。
【請求項19】
測定試料に含まれるリゾスタフィンの濃度が、0.5μg/mL以上100μg/mL以下である、請求項14または17に記載の細菌分析装置。
【請求項20】
検体は、尿である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項21】
少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する工程と、
前記第1測定試料に含まれる細菌を検出する工程と、
前記第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程とを備える、細菌分析方法。
【請求項22】
少なくとも検体から調製される第2測定試料を調製する工程と、
前記第2測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、
検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程と含む、請求項21に記載の細菌分析方法。
【請求項23】
少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料を調製する工程と、 前記第3測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、前記第1測定試料の検出結果、前記第2測定試料の検出結果および前記第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程を含む、請求項22に記載の細菌分析方法。
【請求項1】
少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する試料調製部と、
前記第1測定試料に含まれる細菌を検出する検出部と、
前記第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する情報処理部と、を備える細菌分析装置。
【請求項2】
前記試料調製部は、少なくとも検体から調製される第2測定試料をさらに調製し、
前記検出部は、前記第1測定試料に含まれる細菌および前記第2測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項1に記載の細菌分析装置。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果と前記第2測定試料の検出結果とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する前記第1酵素の影響度合いを取得し、前記影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項2に記載の細菌分析装置。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌数を反映した値および前記第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得するとともに、前記第1測定試料の細菌数を反映した値と前記第2測定試料の細菌数を反映した値とに基づいて、検体に含まれる細菌に対する前記第1酵素の影響度合いを取得し、前記影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項3に記載の細菌分析装置。
【請求項5】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび前記第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、前記第1スキャッタグラムおよび前記第2スキャッタグラムに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌数を反映した値および前記第2測定試料に含まれる細菌数を反映した値を取得する、請求項4に記載の細菌分析装置。
【請求項6】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果のそれぞれに基づいて、前記第1測定試料に含まれる細菌に関する第1スキャッタグラムおよび前記第2測定試料に含まれる細菌に関する第2スキャッタグラムを作成するとともに、前記第1スキャッタグラムのパターンと前記第2スキャッタグラムとのパターンとに基づいて、検体に含まれる細菌に対する前記第1酵素の影響度合いを取得し、前記影響度合いに基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項3に記載の細菌分析装置。
【請求項7】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、少なくとも、検体に含まれる可能性のある細菌の名称を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項8】
表示部をさらに備え、
前記情報処理部は、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を前記表示部に表示するように制御する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項9】
前記第1酵素は、細胞壁溶解酵素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項10】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がグラム陽性細菌であるか否かの情報を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項11】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、ブドウ球菌属のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌であるかの情報を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項12】
前記第1酵素は、リゾチームである、請求項11に記載の細菌分析装置。
【請求項13】
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報は、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外の細菌であるかの情報を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項14】
前記第1酵素は、リゾスタフィンである、請求項13に記載の細菌分析装置。
【請求項15】
前記試料調製部は、少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料をさらに調製し、
前記検出部は、前記第1測定試料に含まれる細菌、前記第2測定試料に含まれる細菌および前記第3測定試料に含まれる細菌をそれぞれ検出し、
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果、前記第2測定試料の検出結果および前記第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項1に記載の細菌分析装置。
【請求項16】
前記情報処理部は、前記第1測定試料の検出結果、前記第2測定試料の検出結果および前記第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌がブドウ球菌属の細菌であるか、ブドウ球菌属以外のグラム陽性細菌であるか、グラム陰性細菌であるかを判定し、判定結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する、請求項15に記載の細菌分析装置。
【請求項17】
前記第1酵素は、リゾチームであり、
前記第2酵素は、リゾスタフィンである、請求項15または16に記載の細菌分析装置。
【請求項18】
測定試料に含まれるリゾチームの濃度が、2.5mg/mL以上20mg/mL以下である、請求項12または17に記載の細菌分析装置。
【請求項19】
測定試料に含まれるリゾスタフィンの濃度が、0.5μg/mL以上100μg/mL以下である、請求項14または17に記載の細菌分析装置。
【請求項20】
検体は、尿である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の細菌分析装置。
【請求項21】
少なくとも検体と第1酵素とから調製される第1測定試料を調製する工程と、
前記第1測定試料に含まれる細菌を検出する工程と、
前記第1測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程とを備える、細菌分析方法。
【請求項22】
少なくとも検体から調製される第2測定試料を調製する工程と、
前記第2測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、
検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、前記第1測定試料の検出結果および前記第2測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程と含む、請求項21に記載の細菌分析方法。
【請求項23】
少なくとも検体と第2酵素とから調製される第3測定試料を調製する工程と、 前記第3測定試料に含まれる細菌を検出する工程とをさらに備え、
前記検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程は、前記第1測定試料の検出結果、前記第2測定試料の検出結果および前記第3測定試料の検出結果に基づいて、検体に含まれる細菌の種類の判別を支援する情報を出力する工程を含む、請求項22に記載の細菌分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−87571(P2011−87571A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191297(P2010−191297)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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