説明

組合せ端子金具

【課題】一つの固定場所について、三本以上の電線の端部を固定可能な組合せ端子金具を提供する。
【解決手段】端子本体24,33の表裏両面側に、互いに係合することで右端子金具TRと左端子金具TLを組み付け状態に保持する係合手段(係合部25,26,34,35)を設けたので、右端子金具TRと左端子金具TLを交互に積層した状態に組み付けることができ、1つの固定場所に3本以上の電線Wを固定することができる。組付け時は、右端子金具TRの電線Wと左端子金具TLの電線Wが最も離れた状態から次第に接近するようになっているので、左右の電線Wが重なったり干渉したりすることがない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、組合せ端子金具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図14及び図15には、特開平11−67305号公報に開示された一対の組合せ端子金具100,101を示した。両端子金具100,101には、電線Wの端部を組付可能な電線接続部102と、図示しないボルトを挿通可能な挿通孔103を設けた軸体固定部104とが設けられている。各軸体固定部104には、挿通孔103を挟んだ位置に、互いに係合可能な係合部105,106が設けられている。両端子金具100,101を組み付けるには、互いの係合部105を相手側端子金具の挿通孔103の内部に進入させた状態で、両挿通孔103,103が整合するようにして接続部104を相対的にスライドさせる。すると、互いの係合部105,106が係合して、図15に示すように、挿通孔103が厚さ方向に整合した状態で組み付けられる。
【0003】
両端子金具100,101を組み合わせた後に、一本のボルトによって両端子金具100,101を所定の場所に固定することで、一ヶ所に二つの端子金具100,101を取り付けることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の組合せ端子金具100,101では、最大でも二本の電線Wの端部を一ヶ所に組み付けることが限界となっているため、三本以上の電線Wの端部を固定する場合には、少なくとも二ヶ所以上の固定場所を設けなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一つの固定場所について、三本以上の電線の端部を固定可能な組合せ端子金具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、端子本体の右寄り位置から電線を後方へ延出させるように接続可能な電線接続部を備えた右端子金具と、端子本体の左寄り位置から電線を後方へ延出させるように接続可能な電線接続部を備えた左端子金具とを、その端子本体同士が積層され且つ前記電線が左右に分かれて平行配索されるように組み付けて構成される組合せ端子金具であって、前記端子本体の表裏両面側には、前記右端子金具を前記左端子金具に対して相対的に右から左へスライドさせることにより係合され、その係合作用によってその左右両端子金具を組み付け状態に保持する係合手段が設けられている構成とした。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記右端子金具の係合手段にはその左端縁から右方へ切欠されたスリットが形成され、前記左端子金具の係合手段にはその右端縁から左方へ切欠されたスリットが形成され、左右両端子金具が組み付けられる際には、一方の係合手段が相手側の係合部の前記スリットに嵌合されることで双方の端子金具の係合手段の係合代が確保される構成とした。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記左右各端子金具の係合手段が前記端子本体の表面又は裏面から突出する形態とされているとともに、平板状をなす端子本体の左右いずれか一方に片寄った位置から電線を後方へ延出させ、その端子本体にはその表裏いずれか一方の面側にのみ突出する形態の前記係合手段が設けられた片面端子金具を備えており、積層状態に組み付けられた端子金具群の積層方向両端に位置する端子金具のうち少なくとも一方の端子金具には、前記片面端子金具がその係合手段を前記端子金具群に対向させた姿勢で組み付けられている構成とした。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明において、前記端子本体は、1枚の金属板材を少なくとも2枚以上に折り重ねることで複数の板部から構成され、その複数の板部のうち最も表面側と最も裏面側に位置する板部に、夫々、前記係合手段が形成されている構成とした。
【0009】
【発明の作用及び効果】
[請求項1の発明]
右端子金具と左端子金具は、係合手段により交互に積層した状態に組み付けることができるので、1つの固定場所について3本以上の電線を固定することができる。しかも、電線接続部は、積層順に左右に交互に分かれて平行に配置されるので、例えば、右端子金具に接続された電線同士の間には左端子金具の厚さ分の間隔が確保され、これにより、右側の電線接続部及び電線同士の干渉を回避することが可能である。
【0010】
さらに、組み付けの際には、右寄りの位置に設けた電線接続部から電線を延出させた右端子金具を左端子金具に対して相対的に右から左へスライドさせるようにしているので、スライドの開始時には左右両電線接続部が最も離れた位置にあり、スライドが進むのに伴って両電線接続部が接近するようになる。したがって、組付けの際には、左右の電線接続部が重なったり干渉したりすることがなく、組付け作業性を向上できる。
[請求項2の発明]
左右の端子金具が組み付けられる場合には、右端子金具の係合手段のスリットの切欠方向と左端子金具の係合手段のスリットの切欠方向とが左右逆向きとなるため、双方の係合部の係止代が十分に確保されて係合可能となるのであるが、同種の端子金具同士を直接重ねて組み付けようとした場合は、双方のスリットの切欠方向が互いに同じ向きなので、係合手段の係合代を十分確保できず、係合不能となる。したがって、同じ側から電線を延出させる同種の端子金具同士を直接重なり合うように組み付けられることが防止され、ひいては、同種の端子金具の電線接続部及び電線同士が干渉することが防止される。
【0011】
[請求項3の発明]
積層状態に組み付けられた端子金具群に片面端子金具を組み付け、その片面端子金具の端子本体における係合手段とは反対側の面を固定面に当接させると、その固定面には係合手段が干渉しないので、端子金具群及び片面端子金具を固定面に対して安定した姿勢で固定することができる。
[請求項4の発明]
端子本体を複数の板部から構成し、表面側と裏面側の係合手段を、夫々、独立した板部に形成するようにしたので、係合手段の形成に際して設計上の自由度が高い。
【0012】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図12を参照して説明する。本実施形態の組合せ端子金具は4つの端子金具TRh,RL,TR,TLhを上下に積層して組み付けることによって構成され、最も上には右片面端子金具TRh、その下には左端子金具TL、その下には右端子金具TR、最も下には左片面端子金具TLhが配置されている。各端子金具TRh,RL,TR,TLhは、いずれも、所定形状に打ち抜いた金属板材を曲げ加工したものである。尚、以下の説明においては、上側と表側を同意で用い、下側と裏側を同意で用いる。また、同一構造のものについては、同一符号を付すに留め、重複する詳細説明は省略する。
【0013】
[右片面端子金具TRh]
右片面端子金具TRhは、角部が円弧状をなす略正方形の端子本体11と、この端子本体11の後縁右端(端子本体11における右寄りの位置)から後方へ延出する電線接続部12とからなる。電線接続部12は底板12aの左右両側縁からカシメ片12bを上方へ立ち上げたオープンバレル状をなし、この電線接続部12に圧着された電線Wが端子本体11から後方へ延出されている。端子本体11は、左右方向に長い前後一対の平板部13F,13Rと、この両平板部13F,13Rの右端部(左右方向において電線Wと同じ側の端部)同士を架橋状に連結する第1係合部14(本発明の構成要件である係合手段)と、平板部13F,13Rの左端部同士を架橋状に連結する第2係合部15(本発明の構成要件である係合手段)とからなり、これらに囲まれた中央部分には、ボルトを貫通させるための貫通孔16が開口されている。後側の平板部13Rには電線接続部12が連なり、また両平板部13F,13Rは同じ高さに位置している。
【0014】
第1係合部14と第2係合部15は、共に略平板状をなすとともに、互いに左右方向に間隔を空けて配置され、さらに、両係合部14,15はその板厚分だけ平板部13F,13Rよりも下方に位置している。尚、この2つの係合部14,15の組み合わせを便宜上Aタイプと称することにする。第1係合部14の右端部には係止孔17が形成され、第1係合部14の上面には、その左端縁から係止孔17に至るテーパ面18が形成されている。また、第1係合部14には、その左端縁から平板部13F,13Rとの境界に沿って右方へ切欠された前後一対のスリット19が形成されている。第2係合部15の上面における左端側の位置には、上方へ叩き出され且つ左方へ向かって下り勾配となる係止突起20が形成されている。また、第2係合部15には、その左端縁から平板部13F,13Rとの境界に沿って右方へ切欠された前後一対のスリット19が形成されれており、このスリット19により、第2係合部15のうち係止突起20の形成されている略左半分が上下に若干弾性撓みし得るようになっている。
【0015】
[左片面端子金具TLh]
左片面端子金具TLhは、端子本体21の後端縁左端部から電線接続部12を延出させたものであり、電線接続部12は底板12aからカシメ片12bを上方に立ち上げて構成され、その電線接続部12に圧着された電線Wが後方へ延出されている。端子本体21は、右片面端子金具TRhと同様に、前後一対の平板部13F,13Rと、この両平板部13F,13Rの左端(電線Wと同じ側の端部)同士を連結する第1係合部22(本発明の構成要件である係合手段)と、両平板部13F,13Rの右端同士を連結する第2係合部23(本発明の構成要件である係合手段)とからなり、中央に貫通孔16を有している。この2つの係合部22,23は、上記右端子金具TRのAタイプの係合部14,15を前後方向の軸を中心として180°回転させたものであり、右片面端子金具TRhの端子本体11と左片面端子金具TLhの端子本体21とは、前後方向の軸に関して点対称の関係となっている。
【0016】
[右端子金具TR]
右端子金具TRは、3枚の板部24a,24b,24cからなる平面視略正方形をなす端子本体24とこの端子本体24から後方へ延出する電線接続部12とからなる。端子本体24は、下板部24cと、この下板部24cの前端縁に連なる上板部24aと、この上板部24aの後端縁(展開状態では前端縁)に連なる中間板部24bを、密着するように、且つ上から順に上板部24a、中間板部24b、下板部24cの配置となるように折り重ねたものであり、各板部24a,24b,24cの中央には、夫々、ボルトを貫通させるための貫通孔16が互いに整合するように形成されている。電線接続部12は、底板12aの左右両側縁からカシメ片12bを上方へ立ち上げたものであって、その底板12aは下板部24cの後縁右端部に連なっており、この電線接続部12に圧着された電線Wが端子本体24から後方へ延出されている。
【0017】
下板部24cは、前後一対の平板部13Fと、その両平板部13Rの右端部(電線と同じ側)同士を架橋状に連結する第1係合部25(本発明の構成要件である係合手段)と、両平板部13F,13Rの左端部同士を架橋状に連結する第2係合部26(本発明の構成要件である係合手段)とからなる。この下板部24cの第1係合部25は上記右片面端子金具TRhの第1係合部14と形状、構成手段(係止孔17、テーパ面18、スリット19)、向き、配置が同一であり、第2係合部26は右片面端子金具TRhの第2係合部と形状、構成手段(スリット19、係止突起20)、向き、配置が同一である。つまり、この右端子金具TRの下板部24cの両係合部25,26はAタイプである。
【0018】
上板部24aは、下板部24cと同様に、前後一対の平板部13F,13Rと、その両平板部13F,13Rの右端部(電線Wと同じ側)同士を架橋状に連結する第1係合部27と、両平板部13F,13Rの左端部同士を架橋状に連結する第2係合部28とからなる。第1係合部27と第2係合部28は、共に略平板状をなすとともに、互いに左右方向に間隔を空けて配置され、さらに、両係合部27,28はその板厚分だけ平板部13F,13Rよりも上方に位置している。尚、この2つの係合部27,28の組み合わせを便宜上Bタイプと称することにする。この上板部の第1係合部27の下面における左端側の位置には、下方へ叩き出され且つ左方へ向かって上り勾配となる係止突起29が形成されている。また、第1係合部27には、その左端縁から平板部13F,13Rとの境界に沿って右方へ切欠された前後一対のスリット30が形成されれており、このスリット30により、第1係合部27のうち係止突起29の形成されている略左半分が上下に若干弾性撓みし得るようになっている。第2係合部28の右端部には係止孔31が形成され、第2係合部28の下面には、その左端縁から係止孔31に至るテーパ面32が形成されている。また、第2係合部28には、その左端縁から平板部13F,13Rとの境界に沿って右方へ切欠された前後一対のスリット30が形成されている。
【0019】
中間板部24bは、中央に貫通孔16を有するとともに上下両板部24a,24cの平板部13F,13Rと対応する部位を有し、上下両板部24a,24cの外周縁からはみ出さず且つ各係合部25,26,27,28のスリット19,30とは対応しない形状とされている。
[左端子金具TL]
左端子金具TLは、右端子金具TRと同様に、3枚の板部33a,33b,33cからなる平面視略正方形をなす端子本体33とこの端子本体33から後方へ延出する電線接続部12とからなる。端子本体33は、上板部33aと、この上板部33aの前端縁に連なる下板部33cと、この下板部33cの後端縁(展開状態では前端縁)に連なる中間板部33bを、密着するように、且つ上から順に上板部33a、中間板部33b、下板部33cの配置となるように折り重ねたものであり、各板部33a,33b,33cの中央には、夫々、ボルトを貫通させるための貫通孔16が互いに整合するように形成されている。電線接続部12は、底板12aの左右両側縁からカシメ片12bを上方へ立ち上げたものであって、その底板12aは上板部33aの後縁左端部に連なっており、この電線接続部12に圧着された電線Wが端子本体33から後方へ延出されている。
【0020】
上板部33aは、前後一対の平板部13F,13Rと、その両平板部13F,13Rの左端部(電線Wと同じ側)同士を架橋状に連結する第1係合部34(本発明の構成要件である係合手段)と、両平板部13F,13Rの左端部同士を架橋状に連結する第2係合部35(本発明の構成要件である係合手段)とからなる。この上板部33aの第1係合部34は、上記右端子金具TRの下板部24c(裏面側)の第1係合部25を前後方向の軸を中心として180°回転させた形態であり、上板部33aの第2係合部35は、右端子金具TRの下板部24c(裏面側)の第2係合部26を前後方向の軸を中心として180°回転させた形態である。つまり、この左端子金具TLの上板部33aの両係合部34,35はAタイプを反転させたものであって、各係合部34,35には、夫々、その右端縁から平板部13F,13Rとの境界に沿って左方へ切欠された前後一対のスリット19が形成されている。
【0021】
下板部33cは、上板部33aと同様に、前後一対の平板部13F,13Rと、その両平板部13F,13Rの左端部(電線Wと同じ側)同士を架橋状に連結する第1係合部36と、両平板部13F,13Rの左端部同士を架橋状に連結する第2係合部37とからなる。この下板部33cの第1係合部36は、右端子金具TRの上板部24a(表面側)の第1係合部27を前後方向の軸を中心として180°回転させた形態であり、下板部33cの第2係合部37は、右端子金具TRの上板部24a(表面側)の第2係合部28を前後方向の軸を中心として180°回転させた形態である。つまり、この左端子金具TLの下板部33cの両係合部36,37はBタイプを反転させたものである。したがって、この左端子金具TLの端子本体33と右端子金具TRの端子本体24とは、前後方向の軸に関して点対称の関係となっている。尚、左端子金具TLを180°反転させた状態では、その電線接続部12及び電線Wが右端子金具TRと同様に右側に位置するが、その電線接続部におけるカシメ片12bの立ち上がり方向は右端子金具TRの電線接続部12とは逆に下向きとなる。
【0022】
また、中間板部33bは、中央に貫通孔16を有するとともに上下両板部33a,33cの平板部13F,13Rと対応する部位を有し、上下両板部13F,13Rの外周縁からはみ出さず且つ各係合部34,35,36,37のスリット19,30とは対応しない形状とされている。
[作用及び効果]
4つの端子金具TRh,RL,TR,TLhの組み付け順序は任意であるが、本実施形態では、まず、右端子金具TRと左端子金具TLとを組み付け、その後、右片面端子金具TRhと左片面端子金具TLhとを陣に組み付けていく場合について説明する。
【0023】
組付けに際しては、まず、図1に示すように、右端子金具TRを左端子金具TLに対して右方且つ下方に位置させる。即ち、双方の電線Wが互いに平行で且つ最も離れた位置関係となるように準備する。この状態から、図12(a)(この断面図では左右逆向きとなっている)に示すように、右端子金具TRの上板部24a(表面側)の第2係合部28を左端子金具TLの下板部33c(裏面側)の貫通孔16に進入させてその第1係合部36の右方に位置させるとともに、右端子金具TRの上板部24a(表面側)の第1係合部27を左端子金具TLの下板部33c(裏面側)の第2係合部37の右方に位置させる。このとき、右端子金具TRの上板部24aの平板部13F,13Rの上面左端部を、左端子金具TLの下板部33cの平板部13F,13Rの下面右端部に当接させることにより、右端子金具TRの係合部27,28が左端子金具TLの係合部36,37よりも板厚分だけ上方に位置するようにする。
【0024】
このようにBタイプの係合部27,28,36,37同士を対応させた状態から右端子金具TRを左端子金具TLに対して相対的に左方へスライドさせると、右端子金具TRの第1係合部27と第2係合部28が、夫々、左端子金具TLの第2係合部37と第1係合部36に対してその上面を擦りつつ係合され、両端子本体24,33と貫通孔16同士が整合する正規組み付け状態に至ると、双方の係止突起29と係止孔31とが係止され、もって、両端子金具TL,TRが離脱不能に保持される。この状態では、双方の端子金具TL,TRの平板部13F,13Rと係合部27,28,36,37とが上下互い違いに当接するので、上下方向への離間も規制されている。さらに、各係合部27,28,36,37のスリット30には相手側の係合部27,28,36,37の前後両端が嵌合され、これにより、左右方向における係合部27,28,36,37同士の係止代が十分大きく確保されている。また、両端子金具TL,TRの組付け過程では、スライドが進むのに伴なって双方の電線接続部12及び電線Wが互いに接近するが、両端子金具TL,TRが正規組み付け状態に至る間に電線接続部12及び電線W同士が重なることはない。
【0025】
さて、この後は、左端子金具TLと右片面端子金具TRhとを左右にスライドさせつつ組み付けるが、このとき左端子金具TLの上板部33aの反転Aタイプの第1係合部34と第2係合部35が、夫々、左片面端子金具TLhのAタイプの第2係合部15と第1係合部14とに係合される。このAタイプの係合も、上記Bタイプの係合と同様にして行われ、両端子金具TRh,TLが正規組み付け状態に至ると、係止突起20と係止孔17とが係止する。また、双方の電線接続部12及び電線Wは、組付けが進むのに伴なって次第に接近するが、重なることはない。
【0026】
そして、最後に、右端子金具TRと左片面端子金具TLhとを左右にスライドさせつつ組み付ける。この組み付けは、右端子金具TRのAタイプの係合部25,26と左片面端子金具TLhの反転Aタイプの係合部22,23との係合によって行われるとともに、双方の電線Wが、最も離れた位置から接近するようになる。
以上により、4つの端子金具TRh,RL,TR,TLhが上下に積層し且つ貫通孔を整合させた状態で組み付けられ、これらの端子金具TRh,RL,TR,TLhから延出された電線Wは、積層順に左右に交互に振り分けられることで互いに平行に且つ干渉することなく配索される。
【0027】
上述のように本実施形態においては、右端子金具TRと左端子金具TLを、係合部27,28,36,37によって交互に積層した状態に組み付けることができるので、1つの固定場所について3本以上の電線Wを固定することができる。しかも、電線Wは、積層順に左右に交互に分かれて平行に配索されるので、例えば、右片面端子金具TRhと右端子金具TRに接続された電線W同士の間には左端子金具TLの厚さ分の間隔が確保されるので、右側の電線接続部12及び電線W同士の干渉を回避することが可能である。
【0028】
さらに、組み付けの際には、右寄りの位置から電線Wを延出させた右端子金具TRを左端子金具TLに対して相対的に右から左へスライドさせるようにしている。つまり、左右方向において電線Wとは反対側の端部を先に向けて左端子金具TLに組み付けるようにしている。したがって、スライドの開始時には左右の両電線接続部12及び両電線Wが最も離れた位置にあり、スライドが進むのに伴って左右の両両電線接続部12及び両電線Wが接近するようになるのであって、組付けの際には、左右の電線接続部12及び電線Wが重なったり干渉したりすることがない。
【0029】
また、左右の端子金具TL,TRが組み付けられる場合には、右端子金具TRの係合部27,28のスリット30の切欠方向と左端子金具TLの係合部36,37のスリット30の切欠方向とが左右逆向きとなるため、双方の係合部27,28,36,37の係止代が十分に確保されて係合可能となるのであるが、同種の端子金具例えば右端子金具TR同士を直接重ねて組み付けようとした場合は、双方のスリット19,30の切欠方向が互いに同じ向きとなるので、係止代を十分確保できず、係合不能となる。したがって、同じ側から電線Wを延出させる同種の端子金具同士を直接重なり合うように組み付けられることが防止され、ひいては、同種の端子金具の電線W同士が干渉することが防止されている。
【0030】
また、左端子金具TLと右端子金具TRの係合部25,26,27,28,34,35,36,37は、いずれも、端子本体33,24の平板部の表面又は裏面から突出する形態とされているため、この右端子金具TR又は左端子金具TLを直接固定面(図示せず)に当接させたときに係合部25〜28,34〜37が変形することが懸念される。しかし本実施形態では、係合部14,15,22,23が表裏いずれか一方の面のみに突出する形態の片面端子金具TLh,TRhを用いているので、積層状態に組み付けられた端子金具群(左端子金具TL及び右端子金具TR)にその片面端子金具TLh,TRhを組み付け、その片面端子金具TLh,TRhの平板部(端子本体11,21)における係合部14,15,22,23とは反対側の面を固定面に当接させることができる。これにより、その固定面に対して係合部25〜28,34〜37を干渉させることが回避されるので、端子金具群(左端子金具TL及び右端子金具TR)及び片面端子金具TLh,TRhを固定面に対して安定した姿勢で固定することができる。
【0031】
また、左右両端子金具TL,TRの端子本体24,33は、1枚の金属板材を少なくとも2枚以上に折り重ねることで3枚(複数)の板部24a,24b,24c,33a,33b,33cから構成され、その複数の板部のうち最も表面側と最も裏面側に位置する板部24a,24c,33a,33cに、夫々、係合部25〜28,34〜37が形成されているが、これは、表面側(上面側)の係合部27,28,34,35と裏面側(下面側)の係合部25,26,36,37を、夫々、独立した板部24a,24c,33a,33cに形成することを意味する。したがって、係合部を形成するに際して設計上の自由度が高い。
【0032】
[実施形態2]
なお、片面端子金具のうち、固定面に組み付けられる側の片面端子金具50としては、図1313に示すように、回り止め部51が設けられたものを用いることができる。この回り止め部51は、固定面付近に凹設された溝部(図示せず)に嵌まり込むことで、ボルトを回し付けるときに、端子金具の連れ回りを規制することができるので、ボルト締め操作が容易となる。
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0033】
(1)上記実施形態では左右両端子金具の端子本体を3枚の板部を重ねた形態としたが、本発明によれば、2枚重ねとしてもよく、4枚以上の板部を重ねてもよい。2枚重ねの場合は、表裏双方の板部を密着重ねにしてもよい。
(2)上記実施形態では左右端子金具の端子本体を1枚の金属板材を折り重ねて構成したが、本発明によれば、複数の独立した板材を重ね合わせて1つの端子本体を構成してもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では右端子金具の端子本体を構成する複数の板部のうち裏面側の板部が電線接続部に連なるようにしたが、本発明によれば、表面側の板部が電線接続部に連なるようにしてもよい。
(4)上記実施形態では左端子金具の端子本体を構成する複数の板部のうち表面側の板部が電線接続部に連なるようにしたが、本発明によれば、裏面側の板部が電線接続部に連なるようにしてもよい。
【0035】
(5)上記実施形態では左端子金具と右端子金具を1つずつ組み付ける場合について説明したが、本発明によれば、左右いずれか1つの端子金具のみ、又は3つ以上の左右端子金具を組み付ける場合にも適用できる。
(6)上記実施形態では2つの片面端子金具を組み付けるようにしたが、本発明によれば、いずれか一方の片面端子金具のみを組み付けるようにしてもよく、片面端子金具を全く組み付けない構成とすることもできる。
【0036】
(7)上記実施形態では係合手段が端子本体の表面又は裏面から突出する形態としたが、本発明によれば、表面と裏面のうちいずれか一方の係合手段を端子本体から突出しない形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の右端子金具と左端子金具の組み付け前の状態をあらわす斜視図
【図2】4つの端子金具の組み付け前の状態をあらわす斜視図
【図3】4つの端子金具の組み付け途中の状態をあらわす斜視図
【図4】4つの端子金具の組み付けが完了した状態をあらわす斜視図
【図5】右端子金具の展開図
【図6】右端子金具の平面図
【図7】右端子金具の底面図
【図8】図6のX−X線端子金具
【図9】図6のY−Y線端子金具
【図10】左端子金具の平面図
【図11】図10のZ−Z線断面図
【図12】(a)左右両端子金具の組み付け途中の状態をあらわす断面図
(b)左右両端子金具が組み付けられた状態をあらわす断面図
【図13】実施形態2の斜視図
【図14】従来例において端子金具を分離した状態をあらわす斜視図
【図15】従来例において端子金具を組み付けた状態をあらわす斜視図
【符号の説明】
TL…左端子金具
TR…右端子金具
TLh…左片面端子金具
TRh…右片面端子金具
W…電線
11,21,24,33…端子本体
14,22,25,27,34,36…第1係合部(係合手段)
15,23,26,28,35,37…第2係合部(係合手段)
19,30…スリット
24a,33a…上板部(板部)
24b,33b…中間板部(板部)
24c,33c…下板部(板部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子本体の右寄り位置から電線を後方へ延出させるように接続可能な電線接続部を備えた右端子金具と、端子本体の左寄り位置から電線を後方へ延出させるように接続可能な電線接続部を備えた左端子金具とを、その端子本体同士が積層され且つ前記電線が左右に分かれて平行配索されるように組み付けて構成される組合せ端子金具であって、
前記端子本体の表裏両面側には、前記右端子金具を前記左端子金具に対して相対的に右から左へスライドさせることにより係合され、その係合作用によってその左右両端子金具を組み付け状態に保持する係合手段が設けられていることを特徴とする組合せ端子金具。
【請求項2】
前記右端子金具の係合手段にはその左端縁から右方へ切欠されたスリットが形成され、前記左端子金具の係合手段にはその右端縁から左方へ切欠されたスリットが形成され、左右両端子金具が組み付けられる際には、一方の係合手段が相手側の係合部の前記スリットに嵌合されることで双方の端子金具の係合手段の係合代が確保される構成としたことを特徴とする請求項1記載の組合せ端子金具。
【請求項3】
前記左右各端子金具の係合手段が前記端子本体の表面又は裏面から突出する形態とされているとともに、
平板状をなす端子本体の左右いずれか一方に片寄った位置から電線を後方へ延出させ、その端子本体にはその表裏いずれか一方の面側にのみ突出する形態の前記係合手段が設けられた片面端子金具を備えており、
積層状態に組み付けられた端子金具群の積層方向両端に位置する端子金具のうち少なくとも一方の端子金具には、前記片面端子金具がその係合手段を前記端子金具群に対向させた姿勢で組み付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組合せ端子金具。
【請求項4】
前記端子本体は、1枚の金属板材を少なくとも2枚以上に折り重ねることで複数の板部から構成され、その複数の板部のうち最も表面側と最も裏面側に位置する板部に、夫々、前記係合手段が形成されていること特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の組合せ端子金具。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate



【図8】
image rotate



【図9】
image rotate



【図10】
image rotate



【図11】
image rotate



【図12】
image rotate



【図13】
image rotate



【図14】
image rotate



【図15】
image rotate


【公開番号】特開2004−63275(P2004−63275A)
【公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−220170(P2002−220170)
【出願日】平成14年7月29日(2002.7.29)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)