説明

組成物、液体及びゲル形成方法

【課題】活性エネルギー線の照射により、効率良く反応(硬化)する新規な感光性高分子化合物の組成物、該組成物を含む液体、および該液体を用いたゲル形成方法を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線を照射することにより、重合性基に対して付加反応性を示すラジカルが側鎖自身に発生する側鎖aを複数有する高分子化合物Aと、重合性基を有する側鎖bを複数有する高分子化合物Bとを含有することを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な活性エネルギー線硬化型の高分子化合物を含む組成物、該組成物を含む液体、および該液体を用いたゲル形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、側鎖に重合性基もしくは光二量化型の反応性基を有し、活性エネルギー線を照射することにより側鎖間で反応して三次元的な架橋構造を形成する高分子化合物が知られている(例えば、特許文献1〜3および5参照。)。更に、これらの高分子化合物を水や親水性溶媒に含有させ、光照射することによりゲルを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【0003】
このような高分子化合物は、三次元架橋構造を形成した後の不溶性を活かして、フォトレジストに適用されたり、あるいは溶媒存在下でのゲル化特性を活かして酵素や菌体の固定や廃水処理に応用されている。
【0004】
しかしながら、より広範な用途に適用するために、ゲル化特性、増粘特性をより一層高めた高分子化合物の開発が求められている。
【特許文献1】特開昭60−129742号公報
【特許文献2】特開2000−181062号公報
【特許文献3】特開2002−341530号公報
【特許文献4】特公平8−23545号公報
【特許文献5】特開2004−189841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、活性エネルギー線の照射により、効率良く反応(硬化)する新規な感光性高分子化合物の組成物、該組成物を含む液体、および該液体を用いたゲル形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0007】
1.活性エネルギー線を照射することにより、重合性基に対して付加反応性を示すラジカルが側鎖自身に発生する側鎖aを複数有する高分子化合物Aと、重合性基を有する側鎖bを複数有する高分子化合物Bとを含有することを特徴とする組成物。
【0008】
2.前記側鎖aの部分構造が、アセトフェノンであることを特徴とする前記1に記載の組成物。
【0009】
3.前記側鎖aの部分構造が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1に記載の組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Xは二価の連結基を表し、nは0または1を表す。Ar1は置換または無置換の芳香族基を表し、R1、R2は各々水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。R3、R4は各々水素原子または置換基を表す。〕
4.前記高分子化合物Aの主鎖が、ポリ酢酸ビニルのケン化物であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【0012】
5.前記高分子化合物Bの主鎖が、ポリ酢酸ビニルのケン化物であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【0013】
6.前記高分子化合物A及び高分子化合物Bの主鎖が、いずれもポリ酢酸ビニルのケン化物であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【0014】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする液体。
【0015】
8.前記7に記載の液体に、活性エネルギー線を照射してゲルを形成することを特徴とするゲル形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、活性エネルギー線の照射により、効率良く反応(硬化)する新規な感光性高分子化合物の組成物、該組成物を含む液体、および該液体を用いたゲル形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行い、反応性側鎖を修飾した感光性高分子化合物のゲル化特性、増粘特性の低下要因について、様々な分析手法を用いて解析を試みた。その結果、特に、感光性高分子化合物が低濃度の条件でゲル化特性の変動や増粘特性の低下が顕著であるが、これは、異なる分子の反応性側鎖間距離が必ずしも近接していないため、下記に示す反応式(1)の様に、分子間の架橋反応(I)の頻度が低下し、その一方で分子内架橋反応(II)が生じやすくなることが判明した。
【0019】
【化2】

【0020】
なお、上記反応式(1)において、PIは光開始剤を表し、PI・はラジカルを発生した光開始剤を表す。1は側鎖に反応性基(重合性基)を有する高分子化合物を、2は分子間架橋した高分子化合物、3は分子内架橋した高分子化合物をそれぞれ表す。
【0021】
上記反応式(1)に示すような傾向により、従来公知の感光性高分子化合物では分子量の増大や三次元的な架橋構造の形成が十分とはならず、活性エネルギー線照射時の増粘効率が不十分となることがあったものと推測される。
【0022】
本発明者らは、上記のような解析を基に、如何に分子間架橋反応を効率よく生じさせるか、数々の検討を行った結果、本発明に至ったものである。すなわち、本発明においては、従来公知の感光性高分子化合物の反応に用いていた光開始剤の反応過程に着目し、光開始剤の機能を持つ側鎖aを複数有する高分子化合物Aを、従来の光開始剤に代えて適用したものである。更には、前記の光開始剤の機能を持つ側鎖aは、活性エネルギー線を照射した時に、重合性基に対して付加反応性を示すラジカルが側鎖自身に発生することを特徴としている。さらに、この高分子化合物Aと、側鎖に重合性基を有する高分子化合物Bを併せて用いることにより、高分子化合物の使用量が少量でも、活性エネルギー線の照射によって効率良く増粘させることが可能となったものである。
【0023】
本発明の効果が発現する推定機構について、下記反応式(2)を用いて説明する。
【0024】
【化3】

【0025】
上記反応式(2)において、PIは光開始剤を表し、PI・はラジカルを発生した光開始剤を表す。4は高分子化合物Aを、5は側鎖にラジカルを発生した高分子化合物Aを、6はラジカル再結合により分子内架橋した高分子化合物A、7は5(側鎖にラジカルを発生した高分子化合物A)と反応式(1)に記載の1(側鎖に反応性基(重合性基)を有する高分子化合物)の反応により分子間架橋した高分子化合物をそれぞれ表す。
【0026】
反応式(2)に示すように、活性エネルギー線を照射することにより、高分子化合物Aの側鎖aに付加反応性を示すラジカル(5)が発生する。ラジカル種の寿命は一般的に大変短いため、同一分子内で同時に複数のラジカルが発生することはまれであり、従って分子内でラジカル同士が再結合して分子間架橋を形成することはほとんど無い。このような機構により、反応の開始段階において分子内架橋反応(I)を抑制することができていると考えられる。さらに、高分子化合物Aの側鎖aに発生したラジカル(PI・)は、もう一方の高分子化合物Bの重合性側鎖bに付加し、この反応(II)により異なる高分子化合物同士が分子間で架橋される。このように光開始剤の機能を高分子化合物に組み込み、さらに異なる働きを持つ二種類の高分子化合物の組み合わせとすることによって、分子間架橋反応を促進することができ、その結果、増粘特性を得ることができたものと推定している。
【0027】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0028】
〔高分子化合物A〕
本発明に係る高分子化合物Aは、その側鎖aに光開始剤の機能を示す構造部位を複数有しており、かつ活性エネルギー線を照射したときに、重合性基に対して付加反応性を示すラジカルが側鎖自身に発生することを特徴としている。
【0029】
光開始剤の機能を示す構造部位としては、従来公知の光開始剤やその類縁体が挙げられる。これらの光開始剤は、大きく分けて下記に例示するような「水素引き抜き型」と「開裂型」があることが知られている。
【0030】
【化4】

【0031】
前者の水素引き抜き型は、他の分子から水素を引き抜いた後、水素を引き抜かれた分子によって重合反応が開始するタイプの光開始剤であり、自身は重合性基に付加しない。従って、本発明に係る高分子化合物Aの側鎖aに用いる構造部位としては適当ではない。また、開裂型の光開始剤を側鎖の構造部位とした場合でも、活性エネルギー線を照射して側鎖が開裂した際、重合性基に付加反応性を示すラジカルが高分子化合物Aの側鎖自身に発生するように構造設計することが必要である。
【0032】
本発明に係る高分子化合物Aの側鎖aにおいて、活性エネルギー線を照射したときにラジカルを発生する部分構造の具体例としては、アセトフェノン、ベンジルケタール、ベンゾイン等が挙げられる。これらの中でも、活性エネルギー線照射時の反応効率の点からアセトフェノン、ベンジルケタールが好ましく、側鎖構造として高分子化合物に組み込むときの設計の自由度の点から、アセトフェノンがより好ましい。
【0033】
更には、下記一般式(1)で表される高分子化合物Aの側鎖aの部分構造とすることが、合成時の簡便性や副生成物抑制の点で好ましい。
【0034】
【化5】

【0035】
上記一般式(1)において、Xは二価の連結基を表し、nは0または1を表す。Ar1は置換または無置換の芳香族基を表し、R1、R2は各々水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。R3、R4は各々水素原子または置換基を表す。
【0036】
Xで表される具体的な例としては、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等のアルキレン基、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、ジエチレンオキサイド、トリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
【0037】
高分子化合物Aの側鎖aの部分構造である一般式(1)は、R1、R2、R3、R4、Ar1もしくはXにより、直接もしくは置換基を介して高分子化合物Aの主鎖と連結している。
【0038】
一般式(1)で表される部分構造の原料として適当な市販の光開始剤としては、例えば、Irgacure2959(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。なお、異なる構造の側鎖を同一の主鎖に対して導入し、高分子化合物Aとしても良い。
【0039】
高分子化合物Aの主鎖としては、特に限定はないが、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン及びこれらの共重合体等を挙げることができる。これらの中でも分子設計、合成の容易性から、高分子化合物Aの主鎖としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ酢酸ビニルのケン化物であることが好ましく、活性エネルギー線照射後の増粘性及びゲル強化の点から、ポリ酢酸ビニルのケン化物が更に好ましい。
【0040】
高分子化合物Aの分子量は、好ましくは5000以上、200000以下である。分子量を5000以上とすることにより、活性エネルギー線を照射したときの増粘効率が向上しやすく、分子量を200000以下とすることで、高分子化合物を含有する液の粘度が高くなりにくく、液の取り扱いがしやすくなる。
【0041】
側鎖の導入方法としては、従来公知の化学反応を特に限定無く使用することができるが、高分子化合物Aの主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物の場合、反応収率や合成の簡便性から、アセタール化反応を利用することが好ましい。
【0042】
側鎖の変性率は、0.5モル%以上、10モル%以下であることが好ましく、このような設計とすることで、活性エネルギー線照射時の反応効率が向上しやすくなる。
【0043】
高分子化合物Aの具体例としては、特開平7−33811に記載のカルボン酸を含有する重量平均分子量が5000以上の付加重合ポリマーと水酸基を含有するフェニルケトン化合物とをエステル化反応させて得られる光開始剤等が挙げられる。
【0044】
〔高分子化合物B〕
本発明に係る架橋性高分子化合物Bは、重合性基を有する側鎖bを複数有している。側鎖の部分構造である重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が挙げられ、具体的には、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基、アリル基、無水マレイン酸、マレイミド等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
高分子化合物Bの主鎖としては、特に限定は無いが、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン及びこれらの共重合体等を用いることができる。これらの中でも分子設計、合成の容易性から、高分子化合物Bの主鎖としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ酢酸ビニルのケン化物であることが好ましく、活性エネルギー線照射時の増粘速度が速く、比較的低照射量のエネルギーで効率よく増粘しやすいことから、ポリ酢酸ビニルのケン化物がさらに好ましい。
【0046】
高分子化合物Bの分子量は、好ましくは5000以上、200000以下である。分子量を5000以上とすることにより、活性エネルギー線を照射したときの増粘効率が向上しやすく、分子量を200000以下とすることで、高分子化合物を含有する液の粘度が高くなりにくく、液の取り扱いがしやすくなる。
【0047】
側鎖の導入方法としては、従来公知の化学反応を特に限定無く使用することができるが、高分子化合物Bの主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物の場合、反応収率や合成の簡便性から、アセタール化反応を利用することが好ましい。
【0048】
側鎖の変性率は0.5モル%以上、10モル%以下であることが好ましく、更には1.モル%以上、5モル%以下であることが反応性の観点からより好ましい。側鎖の変性率が0.5モル%以上であれば十分な架橋性を有し、本発明の目的効果を十分なものとしやすい。また、5モル%以下であれば適度な架橋密度であるために、柔軟性のあるゲルを得やすくなる。
【0049】
本発明における高分子化合物Bの主鎖と側鎖の部分構造は、下記一般式(A)で表されるものが好ましい。
【0050】
一般式(A)
Poly−{(X1m−〔B−(Y1np
上記一般式(A)において、Polyは主鎖を表し、具体的には、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン及びこれらの共重合体が好ましい。
【0051】
{ }は側鎖を表す。側鎖中、X1は(p+1)価の連結基を表わす。pは正の整数を表し、好ましくは1〜5の整数である。具体的には、p=1のとき、X1が2価の連結基を表し、例えば、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、イミノ基、エステル基、アミド基、スルホニル基などが挙げられ、又、これらが組み合わさって一つの2価以上の基を形成してもよい。またp=2以上のとき、後述する複数のB及びY1は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
1の好ましい例としては、アルキレンオキシドまたは芳香族基を少なくとも含む2価以上の連結基が挙げられる。
【0053】
Bは、重合性基を表す。具体的には、エチレン性不飽和結合を含有する基であり、例えば、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基、アリル基、無水マレイン酸、マレイミドを表す。好ましくは、アクリル基、メタクリル基である。
【0054】
1は、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ペンジル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ブチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アルキルウレイド基(例えば、メチルウレイド、エチルウレイド、メトキシエチルウレイド、ジメチルウレイド等)、アリールウレイド基(例えば、フェニルウレイド等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド等)、アリールスルホンアミド基(例えば、フェニルスルホンアミド、トリルスルホンアミド等)、アルキルアミノスルホニルアミノ基(例えば、メチルアミノスルホニルアミノ、エチルアミノスルホニルアミノ等)、アリールアミノスルホニルアミノ基(例えば、フェニルアミノスルホニルアミノ等)、ヒドロキシ基、複素環基(例えば、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)などが挙げられ、更にこれらは置換基を有していても良い。
【0055】
mは、0または1を表し、nは、0または1を表す。
【0056】
高分子化合物Bの具体例としては、例えば、特開2000−181062号、特開2004−189841号に示されるポリ酢酸ビニルのケン化物の側鎖に(メタ)アクリル基を導入した高分子化合物、特開2002−341530号、特開2005−213350号に記載のカルボキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートの側鎖に(メタ)アクリル基を導入した高分子化合物等が挙げられる。
【0057】
〔高分子化合物の組み合わせ〕
本発明において、高分子化合物Aと高分子化合物Bの組み合わせについては、特に制限は無いが、活性エネルギー線照射後の粘度、ゲル強度を大きくしやすいこと、活性エネルギー線を照射したときの増粘効率に優れることから、いずれもポリ酢酸ビニルを主鎖とする高分子化合物を用い、組み合わせることが好ましい。
【0058】
高分子化合物Aと高分子化合物Bの含有比率は、1:0.1以上、1:10以下であることが好ましい。1:0.1以上とすることで、活性エネルギー線照射時の到達粘度が高くなりやすくなり、1:10以下とすることで、活性エネルギー線照射時の増粘速度が速くなり、照射エネルギーが比較的小さくても効率よく増粘する特性を備えた組成物としやすい。
【0059】
〔光開始剤、増感剤〕
本発明においては、高分子化合物Aに加え、従来公知の光開始剤や増感剤を添加しても良い。これらの化合物は、溶媒に溶解、あるいは分散した状態のいずれでインクに添加してもよい。適用される光開始剤、増感剤について特に制限はないが、水系のインクジェットとインクとする場合は、水溶性の光開始剤、増感剤が混合性、反応効率の点から好ましく、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)、チオキサントンアンモニウム塩(QTX)、ベンゾフェノンアンモニウム塩(ABQ)が水系溶媒への混合性という観点で好ましい。
【0060】
その他の光開始剤、増感剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサトン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類、エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、等を用いることができる。
【0061】
〔モノマー〕
また、本発明の感光性高分子化合物を含む組成物には、感度、コントラストの増加、硬化物の物性向上を目的として、従来公知の重合性モノマーを併用することも可能である。一例として、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジメタクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジメタクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジメタクリレート、多価カルボン酸(無水フタル酸等)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等)とのエステル化物、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシルエステル等)などが挙げられる。
【0062】
〔他の添加剤〕
本発明の感光性高分子化合物を含む組成物には、他の成分として、重合禁止剤、可塑剤、顔料、染料、消泡剤、カップリング剤等、従来公知のものを必要に応じて配合しても良い。
【0063】
〔溶媒〕
本発明の感光性高分子化合物を含む組成物には、様々な溶媒を制限なく使用することができる。主に高分子化合物の主鎖が溶媒への溶解性に影響するため、主鎖に応じて使用する溶媒を選択すると良い。なお、主鎖としてポリ酢酸ビニルのケン化物を用いる場合、主として水、水溶性の有機溶媒を含有することが好ましい。好ましい水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環化合物(例えば、2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
【0064】
〔用途〕
本発明の感光性高分子化合物を含む組成物は、機能を形成する各種の薬効成分、酵素、菌体等を混合することができる。この場合は、各種の薬効成分、酵素、菌体等を含有する感光性高分子化合物の組成物を光硬化させることにより、各種の薬効成分、酵素、菌体等を包含した含水ゲルを形成することができる。勿論、本発明の感光性高分子化合物の組成物から含水ゲルを形成した後に、各種の薬効成分、酵素、菌体等を含浸させてもよい。
【0065】
なお、本発明の感光性高分子化合物を含む組成物は、通常のレジスト組成物と同様にパターニングすることができるため、機能を形成する各種の薬効成分、酵素、菌体等をフォトリソグラフィーによりパターニングすることも可能である。その高いゲル化特性、増粘特性を活かし、優れたフォトレジストとして使用することもできる。
【0066】
本発明の感光性高分子化合物を含む組成物をフォトパターニングに用いる場合、現像方法は、スプレー式、パドル式、浸漬式等、いずれも可能であるが、残渣の少ないスプレー式が好ましい。必要に応じて、超音波等を照射することもできる。現像液は中性の水が好ましいが、弱酸性、弱アルカリ性であってもかまわない。現像性補助の目的で有機溶剤、界面活性剤、消泡剤等を添加することも可能である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0068】
《高分子化合物の合成》
〔側鎖修飾化合物の合成〕
(側鎖修飾化合物a1の合成)
下記反応式に従って、側鎖修飾化合物a1を合成した。
【0069】
【化6】

【0070】
1Lの三口フラスコに、テレフタルアルデヒド酸を50g、Irgacure2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を75g、4−ジメチルアミノピリジンを33g、ジクロロメタン500mlを入れ、室温でしばらく撹拌した後、反応容器を氷冷しながら、ジシクロヘキシルカルボジイミド75gを10分間かけて添加した。反応容器を氷冷したまま10分間撹拌を続け、室温に戻してさらに10時間撹拌した。反応により生じたジシクロヘキシルウレアをろ過により除去し、ろ液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムにより一晩脱水した。減圧蒸留により溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルカラムにより精製して、目的とする側鎖修飾化合物a1を得た。収量は81g、収率は67%であった。
【0071】
(側鎖修飾化合物a2の合成)
下記反応式に従って、側鎖修飾化合物a2を合成した。
【0072】
【化7】

【0073】
上記側鎖修飾化合物a1の合成において、Irgacure2959を、ベンゾインエーテルに変更した以外は同様にして、側鎖修飾化合物a2を得た。
【0074】
(側鎖修飾化合物a3の合成)
下記反応式に従って、側鎖修飾化合物a3を合成した。
【0075】
【化8】

【0076】
500mlの三口フラスコに、グリシジルメタクリレートを50g、4−ヒドロキシフェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンを43g、4−ジメチルアミノピリジンを2.2g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを0.3g入れ、85℃で8時間撹拌した。反応溶液に5質量%の炭酸ナトリウム水溶液250gを入れて1時間撹拌し、酢酸エチルを加えて有機層を抽出した後、有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水した。減圧蒸留により溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルカラムにより精製して、側鎖修飾化合物a3を得た。収量は85g、収率は75%であった。
【0077】
(側鎖修飾化合物b1の合成)
下記反応式に従って、側鎖修飾化合物b1を合成した。
【0078】
【化9】

【0079】
500mlの三口フラスコに、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)を60g、テレフタルアルデヒド酸を60g、4−ジメチルアミノピリジンを1.8g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを0.4g入れ、85℃で8時間撹拌した。反応溶液に5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を250g入れて1時間撹拌し、酢酸エチルを加えて有機層を抽出した後、有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水した。減圧蒸留により溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルカラムにより精製して、目的とする側鎖修飾化合物b1を得た。収量は75g、収率は71%であった。
【0080】
〔高分子化合物A1の合成〕
1Lのセパラブルフラスコに、けん化率98%、重合度300のポリ酢酸ビニルのケン化物を100g、イオン交換水を530g入れ、90℃で加熱撹拌し、ポリ酢酸ビニルのケン化物を溶解させた。この溶液を60℃まで冷却した後、イソプロピルアルコールを175g、側鎖修飾化合物a1を24g、リン酸を6.5g加え、10時間撹拌した。反応溶液を45℃まで冷却し、イオン交換樹脂(ダイヤイオンWA20、三菱化学社製)100gを加え、12時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂をろ過し、側鎖修飾化合物a1の変性率が3モル%であり、ポリ酢酸ビニルのケン化物を主鎖とする高分子化合物A1の15質量%溶液を得た。
【0081】
〔高分子化合物A2の合成〕
上記高分子化合物A1の合成において、側鎖修飾化合物a1を側鎖修飾化合物a2に変更した以外は同様にして、高分子化合物A2の15質量%溶液を得た。
【0082】
〔高分子化合物A3の合成〕
窒素気流下で、1Lのセパラブルフラスコに側鎖修飾化合物a3を30g、メチルメタクリレートを100g、アクリル酸を70g、酢酸エチルを400g入れ、80℃に加熱した。アゾビスイソブチロニトリル2gを1時間かけて添加し、さらに5時間加熱撹拌を続けた。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.2gをさらに加え、85℃に昇温して1時間加熱した。
【0083】
以上の反応により得られた高分子化合物の溶液から、減圧蒸留により溶媒を除去した。残渣にジメチルアミノエタノール85g、イオン交換水1600gを加えて高分子化合物を溶解させ、フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンの変性率が4.5モル%であり、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とする高分子化合物A3の15質量%水溶液を得た。なお、高分子化合物A4の重量平均分子量をGPCにより定量したところ、32000であった。
【0084】
〔高分子化合物B1の合成〕
1Lのセパラブルフラスコに、けん化率98%、重合度300のポリ酢酸ビニルのケン化物を71g、イオン交換水を408g入れ、90℃で加熱撹拌し、ポリ酢酸ビニルのケン化物を溶解させた。この溶液を60℃まで冷却した後、イソプロピルアルコールを90g、側鎖修飾化合物b1を48.5g、リン酸を4.5g加え、10時間撹拌した。反応溶液を40℃まで冷却し、イオン交換樹脂(ダイヤイオンWA20、三菱化学社製)60gを加え、12時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂をろ過し、側鎖修飾化合物b1の変性率が3モル%であり、ポリ酢酸ビニルのケン化物を主鎖とする高分子化合物B1の15質量%溶液を得た。
【0085】
〔高分子化合物B2の合成〕
窒素気流下で、1Lのセパラブルフラスコにアクリル酸を60g、メチルメタクリレートを140g、酢酸エチルを400g入れ、80℃に加熱した。アゾビスイソブチロニトリル2gを1時間かけて添加し、さらに5時間加熱撹拌を続けた。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.2gをさらに加え、85℃に昇温して1時間加熱した。
【0086】
得られた高分子化合物の溶液を60℃まで冷却し、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)を23g、ピリジンを20g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを0.1g入れ、24時間撹拌した。
【0087】
以上の反応により得られた高分子化合物の溶液から、減圧蒸留により溶媒を除去した。残渣にジメチルアミノエタノール75g、イオン交換水1700gを加えて高分子化合物を溶解させ、重合性基の変性率が5モル%であり、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とする高分子化合物B2の15質量%水溶液を得た。なお、高分子化合物B2の重量平均分子量をGPCにより定量したところ、32000であった。
【0088】
《感光性液体の調製》
上記調製した各高分子化合物を用いて、下記の方法に従って感光性液体1−1〜5−2、6,7を調製した。
【0089】
〔感光性液体1−1の調製〕
高分子化合物A1 固形分として0.6部
高分子化合物B1 固形分として1.4部
溶媒:プロピレングリコール 45部
さらに全体が100部となるようにイオン交換水を添加して、本発明の高分子化合物を含む組成物を含有した感光性液体1−1を調製した。
【0090】
〔感光性液体1−2の調製〕
上記感光性液体1−1の調製において、高分子化合物A1を使用せず、光開始剤としてIrgacure2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)1部を使用し、高分子化合物の総量が感光性液体1−1と等しくなるように高分子化合物B1の添加量を2部とした以外は同様にして、比較例の感光性液体1−2を調製した。
【0091】
〔感光性液体2−1〜5−2の調製〕
上記のインク1−1、1−2の調製において、表1に記載のように高分子化合物Aの種類及び添加量、高分子化合物Bの種類及び添加量を表1に記載のように変更した以外は同様にして、感光性液体2−1〜5−2を調製した。
【0092】
〔感光性液体6の調製〕
高分子化合物A1 固形分として3部
アクリルオリゴマー:NKエステル A−TMPT−9EO(新中村化学社製)5部
アクリルモノマー:NKエステル A−200(新中村化学社製) 5部
溶媒:プロピレングリコール 45部
更に、全量が100部となるようにイオン交換水を添加して、比較例の感光性液体6を調製した。
【0093】
〔感光性液体7の調製〕
上記感光性液体6の調製において、高分子化合物A1を高分子化合物A4に変更した以外は同様にして、比較例の感光性液体7を調製した。
【0094】
【表1】

【0095】
なお、表1に略称で記載の各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0096】
〈主鎖〉
PVA:ポリ酢酸ビニルのケン化物
PMA:ポリ(メタ)アクリレート
〈側鎖〉
BA:ブチルアクリレート
〈光重合開始剤〉
Irg.2959:Irgacure2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)
《評価》
上記調製した各感光性液体について、下記の増粘特性評価を行った。
【0097】
(増粘特性の評価)
スポット光源SP−7(ウシオ電機社製)を搭載したUVレオメーターVAR−200AD(ジャスコインターナショナル社製)を用意し、測定部における光源の照度が90mW/cm2となるように調整した。スポット光源により活性エネルギー線を照射しながら、各感光性液体の粘度の変化を測定した。また、同様にして光源の照度条件を45mW/cm2に変更して同様の測定を行い、得られたそれぞれの照度条件での増粘特性を、図1、図2に示す。
【0098】
図1は、照度90mW/cm2における増粘特性を示すグラフであり、縦軸がUVレオメーターVAR−200ADにより25℃において周波数1Hzで高速オシレーション測定を行った時の粘度(mPa・s)の値であり、横軸は光源の照射時間(秒)である。
【0099】
また、図1に示した各シンボルは、■は感光性液体1−1、◆は感光性液体2−1、△は感光性液体3−1、○は感光性液体4−1、□は感光性液体5−1の増粘プロファイルを表し、×は感光性液体1−2、2−2、3−2、4−2、5−2の増粘プロファイルを一括して表す。また、+は感光性液体6、*は感光性液体7の増粘プロファイルを表す。
【0100】
図2は、照度45mW/cm2における増粘特性を示すグラフであり、測定方法、表示内容は図1と同様である。
【0101】
図1、図2に記載の結果から明らかなように、本発明の感光性液体は、活性エネルギー線の照射により10倍以上の増粘が見られ、優れた増粘特性を有していることが分かる。中でも、高分子化合物Aの主鎖をポリ酢酸ビニルのケン化物とした場合は、活性エネルギー線を照射したときの到達粘度が高くなり、また、高分子化合物Bの主鎖をポリ酢酸ビニルのケン化物とした場合は、短時間の照射でも増粘しており、さらに、高分子化合物Aの側鎖の部分構造をアセトフェノンとした場合には、低照度条件でも増粘特性の低下が少ないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例において、90mW/cm2の照度で活性エネルギー線を照射したときの増粘特性を示すグラフである。
【図2】実施例において、45mW/cm2の照度で活性エネルギー線を照射したときの増粘特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線を照射することにより、重合性基に対して付加反応性を示すラジカルが側鎖自身に発生する側鎖aを複数有する高分子化合物Aと、重合性基を有する側鎖bを複数有する高分子化合物Bとを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記側鎖aの部分構造が、アセトフェノンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記側鎖aの部分構造が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【化1】

〔式中、Xは二価の連結基を表し、nは0または1を表す。Ar1は置換または無置換の芳香族基を表し、R1、R2は各々水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。R3、R4は各々水素原子または置換基を表す。〕
【請求項4】
前記高分子化合物Aの主鎖が、ポリ酢酸ビニルのケン化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記高分子化合物Bの主鎖が、ポリ酢酸ビニルのケン化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記高分子化合物A及び高分子化合物Bの主鎖が、いずれもポリ酢酸ビニルのケン化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする液体。
【請求項8】
請求項7に記載の液体に、活性エネルギー線を照射してゲルを形成することを特徴とするゲル形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−208299(P2008−208299A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48775(P2007−48775)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】