説明

組成物、銅膜および銅膜形成方法

【課題】低コストで低抵抗値の銅膜を形成することができる組成物を提供し、その組成物を用いて銅膜を形成し、銅膜形成方法を提供する。
【解決手段】組成物を亜酸化銅、銅塩および還元剤を含有させて調製する。銅塩としては、ギ酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、水酸化第二銅、硫酸銅、硫化第一銅、硫化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、塩基性炭酸銅およびそれらの水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用い、還元剤としては、グリコール類およびアルデヒド類よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる。得られた組成物を用い、塗膜を形成し、この塗膜を大気下で加熱することにより、銅膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、銅膜および銅膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機溶剤等に金属微粒子を分散させて得られた分散体を用い、回路基板における配線等を形成する技術が注目を集めている(例えば、特許文献1を参照。)。例えば、金属微粒子の分散体を用い、インクジェット印刷法や、スクリーン印刷法により所望の導電性パターンを形成する。金属微粒子の平均粒子径が数nm〜数10nm程度である場合、バルクの金属よりも融点が著しく降下し、低い温度で粒子同士の融着が起こる。前述の技術はこうした現象を利用し、金属微粒子を低温で焼結させて導電膜を得る。そして、導電性パターンを形成する。
【0003】
現状、このような導電膜を形成するための組成物は、金属微粒子として、例えば、銀ナノ粒子を含有するものが知られている。
しかし、銀の場合、エレクトロマイグレーション(electromigration)が発生しやすいという問題が知られている。また、銀は貴金属であり、銀ナノ粒子自体が高価であってパターン形成工程の高コスト化を招くといった問題がある。尚、エレクトロマイグレーションとは、電界の影響で、金属成分(例えば、配線や電極に使用した金属)が非金属媒体(例えば、絶縁物)の上や中を横切って移動する現象である。
【0004】
そこで、入手の容易な材料を用いて低コスト化が可能で、且つエレクトロマイグレーションが生じるおそれの少ない導電性の膜形成のための組成物が求められている。
【0005】
また、このような金属微粒子を用いた技術は、低温での焼結によって金属微粒子を完全に融合させることは困難である。そのため、焼結後に得られる導電性パターンにおいて、所望とする電気抵抗特性が得られないという問題があった。そこで、金属微粒子に代えて、金属塩を用いる技術が検討されている(例えば、特許文献2および特許文献3を参照。)。すなわち、金属塩と還元剤とを用いて組成物を調整し、この組成物を用いて導電膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−321215号公報
【特許文献2】特開2008−205430号公報
【特許文献3】特開2005−2471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の金属塩を含有する組成物の場合においても、形成される導電膜の電気抵抗特性が十分なものとならないという課題があった。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、入手容易な材料を用いて、抵抗値の低い導電性の膜を形成することができる組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、上述の組成物を用いて抵抗値の低い銅膜を提供するとともに、その銅膜形成方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、亜酸化銅、銅塩および還元剤を含むことを特徴とする組成物に関する。
【0011】
本発明の第1の態様において、銅塩は、ギ酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、水酸化第二銅、硫酸銅、硫化第一銅、硫化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、塩基性炭酸銅およびそれらの水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の第1の態様において、還元剤は、グリコール類およびアルデヒド類よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様において、亜酸化銅の含有量は、0.01質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の組成物から形成されることを特徴とする銅膜に関する。
【0015】
本発明の第3の態様は、
(1)亜酸化銅、銅塩および還元剤を含む組成物の塗膜を基板上に形成する工程と、
(2)前記塗膜を加熱する工程と
を有することを特徴とする銅膜形成方法に関する。
【0016】
本発明の第3の態様において、工程(2)は、大気下で前記塗膜の加熱を行う工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、低抵抗値の銅膜を形成することができる組成物が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、低抵抗値の銅膜が提供される。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、入手容易な材料を用いて低抵抗値の銅膜を形成できる銅膜形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、鋭意検討した結果、低コストでの入手が可能な銅塩と還元剤とを用いた組成物において、さらに亜酸化銅(CuO)を含有させることにより、それを用いて得られる銅膜の低抵抗化を実現できることを見出した。亜酸化銅は、還元剤により銅塩が還元されて金属銅となる際の反応を促進する。その結果、形成される銅膜の内部の空隙を少なくし、膜密度の高い銅膜の形成が可能となる。そして、本実施の形態の組成物は、200℃程度の比較的低温での加熱であっても、低抵抗値の銅膜を形成することができる。
【0021】
尚、本発明において、「銅膜」とは、銅からなるベタ状の膜とともに、パターニングされた銅膜である、銅からなるパターン等を含む概念である。すなわち、銅配線パターン等についても本発明の「銅膜」の中に含まれる。同様に、「膜」についても、パターンを含む概念として使用されることがある。すなわち、本実施の形態の組成物は、銅配線パターン等の銅からなるパターンを形成することが可能である。
【0022】
そして、本実施の形態の組成物は、還元剤を含有して構成されており、膜形成時において、水素雰囲気下等の還元雰囲気下での加熱は不要である。本実施の形態の組成物は、大気下での加熱により銅膜を形成できる。したがって、本実施の形態の組成物は、銅膜形成時の加熱工程で爆発の危険がある水素ガスを使用すること無く、安全な加熱工程によって銅膜を形成できる。
【0023】
以下で、本実施の形態の組成物と、この組成物を用いた銅膜の形成について説明する。
【0024】
〔組成物〕
本実施の形態の組成物は、以下に説明する、亜酸化銅、銅塩および還元剤を含有する。そして、本実施の形態の組成物は適当な基板上に塗布され、加熱されて本実施の形態の銅膜を形成する。
尚、上述したように、本発明では、「銅膜」は、銅からなるパターン等を含む概念であり、本実施の形態の組成物は、パターニングされた銅膜として、銅配線パターン等の銅からなるパターンを形成することができる。
【0025】
<亜酸化銅>
本実施の形態の組成物は、亜酸化銅を含有することで、形成される銅膜の低抵抗化を実現する。
【0026】
亜酸化銅の純度については特に限定するものではない。しかし、低純度であると、導電性の膜として銅膜を形成する際に、導電性を低下させる懸念がある。したがって、亜酸化銅の純度は90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。亜酸化銅は市販品の使用が可能であり、入手方法等については特に限定されない。
【0027】
本実施の形態の組成物中の亜酸化銅の含有量としては、本実施の形態の組成物が含有する全成分の100質量%に対して0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜2質量%がより好ましい。亜酸化銅の含有量を0.01質量%〜5質量%とすることによって、優れた導電性を有する銅膜を形成できる。亜酸化銅の使用割合を0.01質量%〜2質量%とすることによって、より低い抵抗値の銅膜を形成することができる。
【0028】
<銅塩>
銅塩としては、ギ酸銅、ギ酸銅・4水和物、酢酸第一銅、酢酸第二銅、水酸化第二銅、硫酸銅、硫酸銅・5水和物、硫化第一銅、硫化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、塩基性炭酸銅等が好適な銅塩の例として挙げられる。これらの銅塩は市販品の使用が可能であり、入手方法等については特に限定されない。
【0029】
銅塩の純度については特に限定するものではない。しかし、低純度であると、導電性の膜として銅膜を形成する際に、導電性を低下させる懸念がある。したがって、銅塩の純度は90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0030】
本実施の形態の組成物中の銅塩の含有量としては、本実施の形態の組成物が含有する全成分の100質量%に対して1質量%〜40質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。銅塩の含有量を1質量%〜40質量%とすることによって、優れた導電性を有する銅膜を形成できる。銅塩の含有量を5質量%〜20質量%とすることによって、より低い抵抗値の銅膜を形成することができる。
【0031】
<還元剤>
還元剤としては、グリコール類として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、およびグリセリン等が挙げられる。
【0032】
また、アルデヒド類として、パラアルデヒド、パラ−トルアルデヒド、グリオキシル酸、n−ペンタナール、i−ペンタナール、t−ペンタナール、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、シクロヘキサンカルボアルデヒド、n−オクタナール、2−エチルヘキサナール、n−ノナナール、グルタルアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、2,6−ジメチルベンズアルデヒド、パラ−アセトキシベンズアルデヒド、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、スベリンアルデヒド、アゼラインアルデヒド、セバシンアルデヒド、イソフタルアルデヒド、およびテレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0033】
これらのグリコール類およびアルデヒド類よりなる群より選ばれる1種、または互いに相溶性のある2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。これらの還元剤は、市販品の使用が可能であり、入手方法等については特に限定されない。
【0034】
還元剤の純度については特に限定するものではないが、組成物が電子材料分野で使用されることを考慮し、不純な含有物を低減するように、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0035】
還元剤の含有量としては、本実施の形態の組成物が含有する全成分の100質量%に対して40質量%〜99質量%が好ましく、75質量%〜95質量%がより好ましい。還元剤の含有量を40質量%〜99質量%とすることによって、優れた導電性を有する銅膜を形成できる。還元剤の含有量を75質量%〜95質量%とすることによって、より低い抵抗値の銅膜を形成することができる。
【0036】
<溶剤>
本実施の形態の組成物において、溶剤を成分として添加することが可能である。溶剤を添加して組成物中に含有させることにより、組成物の均一性が向上し、安定した物性の銅膜を形成することが可能となる。
【0037】
添加する溶剤としては、上述した還元剤が溶解し、亜酸化銅、銅塩、還元剤と反応しないものであれば、特に限定するものではない。例えば、水、アルコール類、グリコール類、エーテル類、エステル類、炭化水素類および芳香族炭化水素類から選ばれる1種の他、相溶性のあるそれら2種以上の混合物が挙げられる。
【0038】
溶剤の具体例について、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール(1−プロパノール)、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール(1−ブタノール)、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。
【0039】
グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0040】
エーテル類としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0041】
エステル類としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、炭化水素類としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられる。
【0042】
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0043】
これらの溶剤よりなる群より選ばれる1種、または互いに相溶性のある2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0044】
本実施の形態の組成物に含有される溶剤の含有量は特に制限されないが、本実施の形態の組成物が含有する全成分の100質量%に対して0質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0質量%〜20質量%の範囲とするのがより好ましい。溶剤の含有量が50質量%を超えるように添加されても、含有量に対応するような、上述の組成物の均一性向上効果は得られない。さらに、組成物の単位重量当たりの金属銅の形成量が低下し、所望とする特性の銅膜を高い効率で形成できないおそれもある。
【0045】
<その他任意成分>
本実施の形態の組成物は、上述した亜酸化銅、銅塩および還元剤に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他任意成分として、分散剤、酸化防止剤、濃度調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、塗膜形成補助剤を含有することが可能である。
【0046】
その他任意成分については、所望とする特性を備えているものであれば、特に制限するものではない。例えば、上述した各成分が溶解して反応をしない有機溶剤の中から選択し、その他任意成分として含有させることも可能である。そして、その有機溶剤を添加することにより、組成物を所望の濃度、表面張力、粘度となるよう調製することができる。
【0047】
本実施の形態の組成物におけるその他任意成分の含有量は特に制限はないが、本実施の形態の組成物が含有する全成分の100質量%に対して0質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0質量%〜20質量%の範囲とするのがより好ましい。その他任意成分の含有量が50質量%を超えるように添加されても、含有量に対応するような、その他任意成分による効果は得られない。さらに、組成物の単位重量当たりの金属銅の形成量が低下し、所望とする特性の銅膜を高い製造効率で形成できないおそれがある。
【0048】
〔組成物の調製〕
<調整方法>
本実施の形態の組成物は、上述した亜酸化銅、銅塩、還元剤を混合することで、簡便に調製することができる。混合する順序は特に限定するものではない。
【0049】
組成物の製造方法において、上述したように溶剤を添加することが可能である。添加する溶剤としては、上述したように、亜酸化銅、銅塩および還元剤を混合した後、それらを溶解し、それらと反応しないものであれば特に限定はされない。溶剤として、例えば、水、アルコール類、グリコール類、エーテル類、エステル類、炭化水素類および芳香族炭化水素類から選ばれる1種、または相溶性のある2種以上の混合物を添加することが可能である。
【0050】
本実施の形態の組成物の調製において、その他任意成分として、上述した分散剤、酸化防止剤、濃度調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤等を添加することができる。その他任意成分は、例えば、亜酸化銅、銅塩および還元剤を混合した後に添加される。そして、その他任意成分は、他の成分とともに溶解され、銅塩等と反応すること無く、本実施の形態の組成物が所望の濃度、表面張力、粘度等となるように調整する。
【0051】
<混合方法>
本実施の形態の組成物の調製において、混合方法としては、特に限定するものではないが、例えば、超音波ホモジナイザー、ビーズミル、ペイントシェーカー、攪拌脱泡装置等を使用した混合方法が挙げられる。
【0052】
〔銅膜および銅膜形成方法〕
本実施の形態の銅膜は、上述した本実施の形態の組成物を用いて得ることができる。すなわち、本実施の形態の組成物を後述する適当な基材上に塗布し、大気下(以下、空気雰囲気下とも言う。)で加熱することにより、当該基材上に本実施の形態の銅膜を容易に形成することができる。このとき、水素ガス等を用いた還元雰囲気を形成する必要は無く、安全な状態での加熱が可能である。
尚、上述したように本発明においては、「銅膜」は、パターニングされた銅膜として、銅配線パターン等の銅からなるパターン等を含むものである。
【0053】
基材上に塗布された本実施の形態の組成物の塗膜を加熱することによって、組成物に含有される銅塩等が還元剤により還元され、金属銅を形成する。同時に、上記塗膜中に含有される有機物は分解、揮発することにより除去される。このとき、本実施の形態の組成物に含有される亜酸化銅は、銅塩の反応を促進する。
【0054】
したがって、本実施の形態の銅膜形成方法は、(1)亜酸化銅、銅塩および還元剤を含む組成物である、本実施の形態の組成物の塗膜を基材上に形成する工程と、(2)その基材上の塗膜を加熱する工程とを含んで構成することができる。
【0055】
<基材>
本実施の形態の銅膜形成方法において、基材としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0056】
基材としては、例えば、樹脂、紙、金属、ガラス等が挙げられ、より具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂) 、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート)、ポリアセタール樹脂、セルロース誘導体等の樹脂基材、非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール段ボール等の紙基材、銅板、鉄板、アルミ板等の金属基材、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、石英ガラス等のガラス基材、アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、ITO(インジウム錫オキサイド)等の基材等が挙げられる。
【0057】
<塗布方法>
本実施の形態の銅膜形成方法において、本実施の形態の組成物を基材に塗布してその塗膜を形成する方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定はされない。例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法、ディスペンサーでの塗布法等が挙げられる。組成物を基材に塗布する塗布量としては、所望する導電膜の膜厚に応じて適宜調整することができる。
【0058】
<加熱条件>
本実施の形態の銅膜形成方法において、組成物から銅膜を形成するための加熱は、空気雰囲気下で行うことができる。例えば、基材上に形成された組成物の塗膜を空気雰囲気下で加熱して、その基材上に銅膜を形成することができる。
【0059】
加熱温度は、銅塩が還元剤により還元され、有機物が分解、揮発する温度であればよく、特に限定するものではないが、50℃〜300℃の範囲が好ましく、100℃〜250℃の範囲がより好ましい。加熱温度が50℃未満であると、銅塩の還元が完全に進行せず、また有機物の残存が顕著になる場合があり、300℃を超えると基材として樹脂基材等の有機基材を利用できなくなる恐れがある。
【0060】
加熱時間は、銅塩および還元剤の種類や、所望する銅膜の導電性(抵抗値)を考慮して適宜選択すればよく、特に限定するものではない。そして、200℃程度の低温の加熱温度を設定した場合には、10分間〜100分間程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明の実施形態をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0062】
〔組成物の調製〕
[実施例1〜20および比較例1〜28]
表1および表2に示す種類、配合量の銅塩、亜酸化銅および還元剤、並びに必要に応じて添加される溶剤およびその他の成分を混合し、ビーズミルを使用して、室温で回転数2000rpm、60分間のビーズミル分散を行い、組成物を調整した。表1および表2の欄中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
【0063】
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例28を構成する銅塩、亜酸化銅、還元剤および溶剤は、全て和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0064】
〔銅膜の形成〕
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例28の組成物を用い、基材である縦150mm、横150mmの正方形状の無アルカリガラス基板上に、バーコーターを用いて塗布し、縦50mm、横100mmの長方形状にパターニングされ、膜厚が90μmである塗膜を形成した。次に、空気雰囲気下で、ホットプレートを用い、前述の塗膜の形成されたガラス基板を200℃で90分間加熱処理し、膜厚が10μm〜20μm程度の上記形状にパターニングされた薄膜として銅膜を得た。
【0065】
〔評価〕
<体積抵抗値測定>
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例28の組成物を用いて上述した方法により形成された銅膜を用い、それらの比抵抗値(体積抵抗値(mΩ・cm))を、四探針抵抗測定機(商品名:Model sigma−5、NPS社)にて測定した。評価結果は、表1および表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1および表2に示すように、実施例1〜実施例4の組成物により得られた銅膜の体積抵抗値は、比較対象となる比較例1の組成物により得られた銅膜の体積抵抗値より低い。銅塩および還元剤とともに亜酸化銅を含有する組成物は、低抵抗の銅膜を形成できることがわかった。すなわち、組成物における亜酸化銅の含有は、銅膜の低抵抗化に有効であることが分かった。そして、亜酸化銅の含有量を0.01質量%(表1および表2中では濃度の単位をwt%と示す。)〜5質量%とすることで、形成される銅膜の体積抵抗値を格段に低下させることができることが分かった。
【0069】
また、比較例1の組成物により得られた銅膜の体積抵抗値と、比較例2の組成物により得られた銅膜の体積抵抗値との比較から、亜酸化銅に代えて、組成物に酸化銅を添加することは、形成される銅膜の低抵抗化に有効ではないことが分かった。
【0070】
実施例6〜実施例8の組成物により得られた銅膜の体積抵抗値は、実施例2の組成物により得られた銅膜の体積抵抗値と同様であり、エタノール、1−プロパノールおよび1−ブタノールの添加は、形成される銅膜の抵抗値を上昇させることが無いことが分かった。
【0071】
実施例2および実施例10〜実施例20の組成物から銅膜が形成され、水酸化第二銅、ギ酸銅、ギ酸銅・4水和物、酢酸第一銅、酢酸第二銅、硫酸銅、硫酸銅・5水和物、塩化第一銅、塩化第二銅、硫化第一銅、硫化第二銅および塩基性炭酸銅は、組成物に用いられる銅塩として好適であることが分かった。
【0072】
また、形成された銅膜の体積抵抗値の比較から、銅塩として使用した水酸化第二銅、ギ酸銅、ギ酸銅・4水和物、酢酸第一銅、酢酸第二銅、硫酸銅、硫酸銅・5水和物、塩化第一銅、塩化第二銅、硫化第一銅、硫化第二銅および塩基性炭酸銅の中で、水酸化第二銅の使用が最も好ましく、酢酸第一銅、酢酸第二銅、ギ酸銅およびギ酸銅・4水和物の使用が、水酸化第二銅の使用に次いで好ましいことが分かった。
【0073】
実施例9の組成物により銅膜が得られ、その銅膜が低い体積抵抗値を示したことから、組成物の還元剤として、グリセリンとともに、ベンズアルデヒドが有効であることが分かった。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の組成物は、特にエレクトロニクス分野における配線基板の回路パターン形成用の塗布液として好適に使用できる。そして、本発明の銅膜および本発明の銅膜形成方法は、エレクトロニクス分野における配線基板の回路パターン形成に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜酸化銅、銅塩および還元剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記銅塩は、ギ酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、水酸化第二銅、硫酸銅、硫化第一銅、硫化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、塩基性炭酸銅およびそれらの水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記還元剤は、グリコール類およびアルデヒド類よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記亜酸化銅の含有量は、0.01質量%〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物から形成されることを特徴とする銅膜。
【請求項6】
(1)亜酸化銅、銅塩および還元剤を含む組成物の塗膜を基板上に形成する工程と、
(2)前記塗膜を加熱する工程と
を有することを特徴とする銅膜形成方法。
【請求項7】
工程(2)は、大気下で前記塗膜の加熱を行う工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の銅膜形成方法。

【公開番号】特開2013−77602(P2013−77602A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215014(P2011−215014)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】