説明

組成物の特性を変化させる方法、触媒物質の性能を調整する方法、および、組成物

本発明は、約3ナノメートル未満の寸法の第1成分からなる粒子と、第2成分からなる基材とを提供することによって、組成物の特性を変化させる方法に関するものである。第1成分からなる粒子は基材上に置かれる。それにより、第1成分からなる粒子と基材とは相互作用する。そして、第1成分からなる粒子の少なくとも1つの特性は、第2成分からなる基材上に置かれた約10ナノメートルを超える寸法の第1成分からなる粒子の特性と違ったものに変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、先に出願された米国の仮出願(2006年11月22日出願。出願番号第60/860,497号)による利益を主張する。そして、その仮出願の内容は、すべての目的のために、参照されることによって完全に本書面に取り入れられる。
【0002】
本発明は、ナノサイズ化された粒子の特性を、基材または担持物質との相互作用を通じて変化させる、あるいは調整する方法に関する。また、本発明は、基材または担持物質との相互作用によって変化した特性を有するナノ粒子を含む組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
従来の研究では、概して約3ナノメートルよりも大きい直径を有し、アルミニウム基材に埋め込まれたナノ粒子の融解温度が、埋め込まれたナノ粒子の粒径と反比例して下がることが示されている。同様に、埋め込まれたナノ粒子の凝固温度は、埋め込まれたナノ粒子の粒径によって影響される(非特許文献1参照)。非特許文献1において、埋め込まれたナノ粒子は、アルミニウム基材へのボールミリング(粉砕対象物質と金属球等を入れた装置の回転による粉砕対象物質の粉砕)によって得られ、13〜22ナノメートルの範囲の平均直径を有していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sheng et al., "Melting and Freezing Behavior of Embedded Nanoparticles in Ball-Milled Al-10 Wt% M (M = In, Sn, Bi, Cd, Pb) Mixtures," Acta. Mater. Vol. 46, No. 14, pp. 5195-5205 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、約3ナノメートル未満の粒径の影響や、基材を伴うそのような粒子の粒子特性による相互作用について、検討されていない。
【0006】
ドーピング(ある物質に他の物質(ドーパント)を添加すること)は、ドープ処理される物質の電子構造や結晶構造を変える方法である。しかし、電子構造と結晶構造の両方の変化は、必ずしも制御可能ではない。
【0007】
ナノ粒子の特性における粒径の影響、特に、ナノ粒子が約3ナノメートル未満のときの影響や、ナノ粒子の特性による基材を伴うナノ粒子の相互作用の影響を、さらに理解する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、粒径と、基材・粒子間の相互作用とを制御することにより、約3ナノメートル未満の平均寸法の粒子の特性を変化させる方法について開示する。
【0009】
本発明の開示では、約3ナノメートル未満の寸法(大きさ)の第1成分からなる粒子と、第2成分からなる基材とを提供することによって、組成物の特性を変化させる方法の需要を充足する。第1成分からなる粒子は基材上に置かれる。そのため、第1成分からなる粒子と基材は相互作用する。そして、第1成分からなる粒子の少なくとも1つの特性は、第2成分からなる基材上に置かれた約10ナノメートルを超える寸法の第1成分からなる粒子の特性と違ったものに変化する。
【0010】
また、本発明は、次の3つの方法を開示する。1つ目は、第1の物質と担持物質を選択することによって、物質の特性を変化させる方法である。2つ目は、約3ナノメートル未満の寸法の第1の物質の粒子と、担持物質の基材とを提供する方法である。3つ目は、第1の物質の粒子を担持物質の基材に接触させる方法である。接触によって、第1の物質の粒子と基材は相互作用する。第1の物質と担持物質はともに選択される。それにより、第1の物質が担持物質に接触したとき、第1の物質に関する少なくとも1つの特性が変化し、約10ナノメートルの寸法の第2の物質の粒子に関する特性と類似する少なくとも1つの特性を示すようになる。
【0011】
また、本発明では、約3ナノメートル未満の寸法の第1の触媒成分の粒子と第1および第2の担持物質からなる基材とを提供することを含む触媒物質の性能を調整する方法を開示する。第1の触媒成分の粒子は、第1および第2の担持物質とそれぞれ接触する。その触媒成分の粒子とそれぞれの担持物質との接触によって、第1の触媒成分の粒子の触媒としての性能が変化する。
【0012】
組成物は、また、本発明の開示によって提供される。組成物の組成は、約3ナノメートル未満の寸法の第1成分からなる粒子と、第1の担持物質の基材とを含む。粒子と基材は互いに接触し、第1成分からなる粒子の少なくとも1つの特性は、基材と接触することにより、基材と接触する約10ナノメートルを超える寸法の第1成分の粒子の特性と違ったものに変化する。
【0013】
予想外に、本発明の開示によって、約3ナノメートル未満まで粒子のサイズを減少させることが粒子と基材の相互作用によって定まるように見える特性の変化を規定する、ということがわかる。それに限定されることなく、ナノ粒子と基材の間の相互作用は、ナノ粒子自体の特性を変えるナノ粒子の電子構造を変化させると考えられている。基材とナノ粒子の相互作用を変えることによって、これらの2つの成分の選択を通して、ナノ粒子の特性を望み通りに調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ナノサイズ化された粒子の特性を、基材または担持物質との相互作用を通じて変化させる、あるいは調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】20mLのヘキサンに0.2mgのFe(NO9HOを溶かした溶液から作成された鉄の粒子について、(A)は粒径分布のグラフであり、(B)は電子顕微鏡写真である。
【図2】20mLのヘキサンに0.5mgのFe(NO9HOを溶かした溶液から作成された鉄の粒子について、(A)は粒径分布のグラフであり、(B)は電子顕微鏡写真である。
【図3】20mLのヘキサンに1.0mgのFe(NO9HOを溶かした溶液から作成された鉄の粒子について、(A)は粒径分布のグラフであり、(B)は電子顕微鏡写真である。
【図4】メタン分解のための温度に対する水素濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、物質が約3ナノメートル未満の寸法の粒子の形状で、基材の上に配置され、すなわち、基材と接触している場合の、物質特性の変化に関連する方法と物質について開示する。
【0017】
本発明の1つの実施形態は、約3ナノメートル未満の寸法の第1成分からなる粒子と、第2成分からなる基材とを提供することによって組成物の特性を変化させる方法を含む。第1成分からなる粒子は基材上に置かれ、第1成分からなる粒子と基材が相互作用する。それにより、第1成分からなる粒子の有する少なくとも1つの特性が、第2成分からなる基材に置かれた約10ナノメートルを超える寸法の第1成分からなる粒子の特性と違ったものに変化する。
【0018】
この方法では、第1成分の変化した特性は、例えば、融点、凝固点、電子構造、触媒活性であればよい。
【0019】
第1成分は、2つ以上の元素からなるものとしてもよいし、または、単一の元素からなるものとしてもよい。第1成分の元素は、どの金属を含むグループからでも選択されるものとしてよい。例えば、金属からなる元素グループは、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛を含むものが該当するが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の方法によれば、第1成分からなる粒子の大きさは約2ナノメートル未満でもよい。あるいは、他の実施形態において、第1成分からなる粒子の大きさは約1ナノメートル未満でもよい。
【0021】
第2成分は、例えば、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウムの酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物であればよい。好適な酸化物は、第1成分からなる粒子と基本的に共有結合をつくらないそれらの酸化物であればよい。
【0022】
本発明のもう一つの実施形態によれば、物質の特性を変化させる方法が提供される。その方法は、第1の物質と担持物質を選択することと、約3ナノメートル未満の寸法の第1の物質の粒子と担持物質の基材を提供することとからなる。第1の物質の粒子は、それから、第1の物質の粒子と基材の間の相互作用を引き起こすために、担持物質の基材と接触させられる。第1の物質と担持物質の両方が選択され、第1の物質が担持物質と接触する。そして、第1の物質の少なくとも1つの特性は、約10ナノメートルを超える寸法の第2の物質の粒子の特性に類似した少なくとも1つの特性を示すように、変化する。
【0023】
約10ナノメートルを超える第2の物質の粒子は、担持物質の基材と相互に作用するか、あるいは、担持物質の基材上に担持される。
【0024】
第1の物質の変化した特性は、熱力学特性または電子特性であればよく、例えば、融点、凝固点、電子構造、触媒活性を含んでいてもよい。
【0025】
第1の物質は、2つ以上の元素からなるものでもよいし、または、単一の元素だけからなるものでもよい。第1の物質の中に2つ以上の元素がある場合、2つ以上の元素が合金の形となっていてもよい。
【0026】
本方法によれば、第1の物質は、次のグループから選択される少なくとも1つの元素を含むものでよい。そのグループは、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛から構成されるが、これらに限定されない。第1の物質の粒子は、約2ナノメートル未満の寸法でもよく、または、場合によっては、約1ナノメートル未満の寸法でもよい。基材担持物質との相互作用が第1の物質の少なくとも1つの観察可能な特性が変わる原因になるように、第1の物質の粒子の寸法は充分に小さくなければならない。
【0027】
担持物質は、例えば、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウムの酸化物を含んでいてもよい。
【0028】
第2の物質は、例えば、選択された第1の物質より触媒として活性がある物質、または、選択された第1の物質より豊富でない物質、または、選択された第1の物質より得るのが難しい物質、または、選択された第1の物質より触媒抑制に対して抵抗力の強い物質であればよい。好ましくは、第2の物質は、前記したように、第1の物質が約3ナノメートルを超える寸法で基材と相互作用していないとき、一般的に第1の物質よりも有利な特性がある物質である。本方法のいくつかの実施形態において、第2の物質は、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、プラチナ、金を含んでいてもよい。
【0029】
本発明は、また、約3ナノメートル未満の寸法で第1および第2の担持物質を有する第1の触媒成分の粒子を提供することによって、触媒物質の性能を調整する方法を提供する。第1の触媒成分の粒子は、第1の担持物質と第2の担持物質の両方のそれぞれに接触する。第1の触媒成分の粒子と各担持物質との接触により、第1の触媒成分の粒子の触媒性能が変化する。望ましくは、第1の触媒成分の粒子の触媒性能は、程度が様々に変化する。
【0030】
本方法のいくつかの実施形態によれば、、第1の触媒成分は単一の元素のみを含むものでもよいし、あるいは、2つ以上の元素からなるものでもよい。いくつかの例において、第1の触媒成分は、存在する2つ以上の元素から形成される合金でもよい。
【0031】
第1の触媒成分は、この本方法のためには、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛であればよいが、これらに限定されない。
【0032】
本方法のいくつかの実施形態において、第1の触媒成分の粒子は約2ナノメートル未満の寸法でもよく、好ましくは、その粒子は、充分に小さく、基材との相互作用によって第1の触媒成分の望ましい特性が変化するものである。この本方法のいくつかの例において、第1の触媒成分の粒子は、約1ナノメートル未満の寸法でもよい。
【0033】
本発明による方法によれば、第1の担持物質と第2の担持物質の各々が、独立して、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物を含むものであればよい。
【0034】
変化した第1の触媒成分の触媒性能は、第2の触媒成分の触媒性能と類似していてもよい。例えば、第2成分からなる基材上に配置される約3ナノメートル未満の粒径の第1の元素(例えば鉄)の粒子は、約10ナノメートルを超える大きさの第2の元素(例えばロジウム)の粒子と同じ触媒性能となりえる。
【0035】
第1の触媒成分の触媒性能は、基板物質によって変化する。本方法で教示される触媒成分は、多種多様なアプリケーション(例えば燃料電池、水素貯蔵、水性ガスシフト、水素化処理、脱水素、および、炭化水素の様々な機能化反応)のために利用される。
【0036】
また、約3ナノメートル未満の寸法の成分の粒子と担持物質の基材とからなる組成物は、本発明によって開示される。粒子と基材は互いに接触し、成分の粒子の少なくとも1つの特性は、基材と接触することによって、基材と接触する約10ナノメートルを超える寸法の成分の粒子の特性と違ったものに変化する。
【0037】
本発明による組成物において、組成物の組成は、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウムおよび鉛から選択された元素のうち、2つ以上の元素または単一の元素を含んでいればよいが、これらに限定されない。成分の粒子は、約2ナノメートル未満の寸法でもよく、また、いくつかの例では約1ナノメートル未満の寸法でもよい。
【0038】
担持物質は、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物からなる。
【0039】
本発明において利用される組成物は、様々な既知のルートによって準備できる。基材または担持物質は、商業的に(適切であれば)得られ、あるいは、準備される。適切な基材または担持物質は、ナノ粒子が堆積できる、あるいは、大きくなることができる表面を提供する物質である。ナノ粒子は、例えば、湿った化学手段、プラズマまたはレーザーによる気相反応、蒸発凝固メカニズム、熱分解を含む、いかなる適切な準備ルートによって準備されてもよい。ナノ粒子は、基材の上で直接大きくなるか、あるいは、基材上に液体またはガス状の溶液から堆積することができる。様々な適切な準備方法が、米国特許第6974492号明細書と米国特許第6974493号明細書に記述されている。
【0040】
基材の表面上でナノ粒子を分離したり希釈したりすることは、ナノ粒子の凝集化や焼結の影響を制限する1つのアプローチである。特に、高温への露出時に、粒子は、基板上で凝集化や大きなサイズ粒子の形成を始める。この凝集化は、粒子の特性に影響を与えてしまう。基材の表面上でナノ粒子を希釈あるいは分離することは、凝集化に対する抵抗力を向上させる。基材の表面上でのナノ粒子の安定化は、例えば、ナノ粒子と基材の間の結合力を増大させるための化学安定剤の使用によって、実現される。
【0041】
ここで、粒子の特性についての、約3ナノメートル未満の寸法の粒子と基材(または担持物質)との間の接触に関して、「変えられた」、「変化した」という用語は、次のことを意味する。つまり、約3ナノメートル未満の寸法の粒子の特性の意義が、特性の意義が約10ナノメートルを超える寸法の異なる組成物の粒子の特性と類似しているという程度に変化することを意味する。ここで、「類似する」という用語は、約10ナノメートルを超える寸法の異なる組成物の粒子の特性の意義の約5%の範囲内を意味する。
【0042】
すべての出版物、論文、書類、特許、特許公報およびこれらの中の他の引用文献は、すべての目的のために全体としてここに取り入れられる。
【0043】
前記した説明が本発明の好ましい実施形態に向けられるが、他のバリエーションや変形は、当業者にとって明らかとなり、本発明の趣旨や範囲から逸脱することなく創作される点に注意する。
【0044】
以下の例は、本発明のより完全な理解を与えるために示される。本発明の原理を例示するための以下の特定の技術、状況、物質および記録されたデータセットは、典型例であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例1】
【0045】
Fe(NO9HO(99.999%、アルファ・イーザー社製)を、メタノールで溶かし、アルミナ(99.9%、アルファ・イーザー社製)のメタノール懸濁液で、1時間完全に混ぜた。その後、溶媒を蒸発させ、残ったかたまりを、窒素ガス流の雰囲気で3時間、90−100℃まで熱した。その後、このかたまりを炉から取り出し、孔鉢で粉砕した。結果として生じる微細な粉末を、その後、500℃で1時間、仮焼(物質を強く熱して脱水や分解などを起こさせ揮発成分を除くこと)した。粒径は、ブロッキング温度値(TB)に基づくSQUID磁力計(MPMS、クアンタム・デザイン社製)を使用することにより、または、後記するA.R.ハルチュンヤンらによる”Journal Of Applied Physics” (Vol. 100, p. 044321 (2006) )にしたがうランジュヴァン機能分析に基づき、推定した。
【実施例2】
【0046】
Fe(SO5HO(99.999%、アルファ・イーザー社製)を、メタノールで溶かし、アルミナ(99.9%、アルファ・イーザー社製)のメタノール懸濁液で、1時間完全に混ぜた。その後、溶媒を蒸発させ、残ったかたまりを、窒素ガス流の雰囲気で3時間、90−100℃まで熱した。その後、このかたまりを炉から取り出し、孔鉢で粉砕した。結果として生じる微細な粉末を、その後、500℃で1時間、仮焼した。粒径は、ブロッキング温度値(TB)に基づくSQUID磁力計(MPMS、クアンタム・デザイン社製)を使用することにより、または、後記するA.R.ハルチュンヤンらによる”Journal Of Applied Physics” (Vol. 100, p. 044321 (2006) )にしたがうランジュヴァン機能分析に基づき、推定した。
【実施例3】
【0047】
2−プロパノールにおけるFe(NO9HO(99.999%、アルファ・イーザー社製)の溶液を準備し、10分間撹拌した。それから、二酸化ケイ素基板を20秒間その溶液に浸漬し、その後ヘキサンでリンスした。基材を約110℃で乾燥させ、長さ90cmで直径5cmの石英管炉内に入れて、仮焼した。ドライ気流の雰囲気で1時間、約500℃で仮焼した後、その基材を取り出し、そして、粒径をAFMで測定した。硝酸鉄と2−プロパノールの異なるモル比を用いることによって、粒径は変化する。
【実施例4】
【0048】
20mLのヘキサンに、Fe(NO9HO(99.999%、アルファ・イーザー社製)を、それぞれ0.2mg、0.5mgと1.0mg溶かすことによって、硝酸鉄の溶液を準備した。二酸化ケイ素基板を、20秒間各溶液に浸漬し、その後ヘキサンでリンスした。基材を約110℃で乾燥し、長さ90cmで直径5cmの石英管炉内に入れて、仮焼した。ドライ気流の下での1時間の約500℃による仮焼の後、その基材を取り出し、そして、粒径とその粒径の分布をAFMで測定した。
【0049】
それぞれ、結果を図1,2および3に示す。これらの図は、用意した溶液の濃度が高いほど、粒径と粒子の濃度が増加することを示している。
【実施例5】
【0050】
アルミナ(Al)粒子上に担持されたFe:Mo比が1:16で同一であるFe:Mo触媒の4つのサンプルを、金属塩類(メタノールで溶かした硫酸鉄(II)と(NHMo244HO(99.999%、アルファ・イーザー社製))を用いて準備し、異なる比率でアルミナ(99.9%、BET法表面積が約90m/g、デグッサ社製)のメタノール懸濁液で1時間完全に混ぜ合わせた。その後、溶媒を蒸発させ、残ったかたまりを、窒素ガス流の雰囲気で3時間、90℃まで熱した。微細な粉末を、その後、500℃で1時間、仮焼し、それから、孔鉢で粉砕した。最終的な触媒のBET法表面積は、約43m/gであった。
【0051】
担持物質における触媒の濃度を変えることによって、結果として生じる触媒のサイズが変わった。アルミナへの触媒の濃度を、1:5の比率から1:100の比率まで変化させた。ここで評価された4つのサンプルにおいて、触媒粒子の平均サイズは、それぞれ、10±4nm、6±2.3nm、3±1nmおよび約1〜2nmであった。アルミナ担持物質だけを含んでいるブランクサンプルも、評価した。
【0052】
各々のサンプルのためのメタンの触媒作用による分解を、それから評価した。各サンプルとアルミナブランクのために質量分光測定法によって測定されるような水素濃度は、図4に示されている。メタンの熱の分解だけは、アルミナブランクサンプルの上で起こると考えられている。
【0053】
図4に示した結果によって例示されるように、このFe:Mo触媒系の場合、担持された触媒粒子の平均サイズが減少すると、メタンの触媒作用による分解のために必要な最低温度が高くなる。
【0054】
本発明の様々な実施形態についての前記した詳細な説明は、図面と説明の目的に対して提供されている。それは、完全であることを意図しておらず、あるいは、本発明を、開示した厳密な実施形態に限定することを意図していない。多くの変更や変形が、この技術に熟練した者にとって明らかである。実施形態は、選別されて記述され、本発明の原理とその実用的な応用を最良に説明している。それにより、他の当業者は、様々な実施形態として、また、予想される特定の使用に適した様々な変更とともに、本発明を理解することができる。本発明の範囲が以下の請求項とその等価物によって定義されることが意図されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の特性を変化させる方法であって、
約3ナノメートル未満の寸法の第1成分からなる粒子を提供し、
第2成分からなる基材を提供し、
前記基材の上に前記第1成分からなる粒子を置き、それにより、前記第1成分からなる粒子と前記基材とを相互作用させ、前記第1成分からなる粒子の少なくとも1つの特性を、前記第2成分からなる基材上に置かれた約10ナノメートルを超える寸法の前記第1成分からなる粒子の有する特性と違ったものに変化させる
ことを特徴とする組成物の特性を変化させる方法。
【請求項2】
前記第1成分の変化した特性は、融点、凝固点、電子構造および触媒活性からなるグループから選択された少なくとも1つの特性を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項3】
前記第1成分は、2つ以上の元素からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項4】
前記第1成分は、単一の元素からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項5】
前記第1成分は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウムおよび鉛からなる元素グループから選択された少なくとも1つの元素を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項6】
前記第2成分は、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項7】
組成物の特性を変化させる方法であって、
第1の物質を選択し、
担持物質を選択し、
約3ナノメートル未満の寸法の第1の物質からなる粒子と、担持物質からなる基材と、を提供し、
前記第1の物質からなる粒子を前記担持物質からなる基材に接触させることで、前記第1の物質からなる粒子と前記基材とを相互作用させ、
前記第1の物質と前記担持物質とをともに選択することで、前記第1の物質が前記担持物質に接触したときに、前記第1の物質の少なくとも1つの特性を、約10ナノメートルを超える寸法の前記担持物質からなる基材上に担持される第2の物質からなる粒子の特性と類似する少なくとも1つの特性を示すように、変化させる
ことを特徴とする組成物の特性を変化させる方法。
【請求項8】
前記第1の物質の少なくとも1つの特性は、融点、凝固点、電子構造および触媒活性からなるグループから選択された少なくとも1つの特性を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項9】
前記第1の物質は、2つ以上の元素からなる
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項10】
前記第1の物質は、単一の元素からなる
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項11】
前記第1の物質は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウムおよび鉛からなる元素グループから選択された少なくとも1つの元素を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項12】
前記担持物質は、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項13】
前記第2の物質は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、プラチナおよび金からなる元素グループから選択された少なくとも1つの元素を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項14】
前記第1の物質の粒子は、約2ナノメートル未満の寸法である
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物の特性を変化させる方法。
【請求項15】
触媒物質の性能を調整する方法であって、
約3ナノメートル未満の寸法の第1の触媒成分の粒子を提供し、
第1の担持物質と第2の担持物質とを提供し、
前記第1の触媒成分の粒子を前記第1の担持物質に接触させ、
前記第1の触媒成分の粒子を前記第2の担持物質に接触させ、
前記第1の触媒成分の粒子と前記担持物質それぞれとの各接触によって、前記第1の触媒成分の粒子の触媒としての性能を調整する
ことを特徴とする触媒物質の性能を調整する方法。
【請求項16】
前記第1の触媒成分は、2つ以上の元素からなる
ことを特徴とする請求項15に記載の触媒物質の性能を調整する方法。
【請求項17】
前記第1の触媒成分は、単一の元素からなる
ことを特徴とする請求項15に記載の触媒物質の性能を調整する方法。
【請求項18】
前記第1の触媒成分は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウムおよび鉛からなる元素グループから選択された少なくとも1つの元素を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の触媒物質の性能を調整する方法。
【請求項19】
前記第1の担持物質と前記第2の担持物質とは、それぞれ独立に、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物からなる元素グループから選択される少なくとも1つの酸化物を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の触媒物質の性能を調整する方法。
【請求項20】
前記第1の触媒成分の触媒性能は、約10ナノメートルを超える大きさの粒子を有する第2の触媒成分の触媒性能と類似している
ことを特徴とする請求項15に記載の触媒物質の性能を調整する方法。
【請求項21】
約3ナノメートル未満の寸法の成分からなる粒子と、
担持物質からなる基材と、を備え、
前記粒子と前記基材とは互いに接触しており、
前記成分からなる粒子の少なくとも1つの特性が、前記基材と接触する約10ナノメートルを超える寸法の前記成分からなる粒子の特性と違うように、前記基材との接触によって変化している
ことを特徴とする組成物。
【請求項22】
前記成分は、2つ以上の元素からなる
ことを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記成分は、単一の元素からなる
ことを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記成分は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、タリウムおよび鉛からなる元素グループから選択された少なくとも1つの元素を含む
ことを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記担持物質それぞれは、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物からなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物を含む
ことを特徴とする請求項21に記載の組成物。


【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−510082(P2010−510082A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538464(P2009−538464)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/084971
【国際公開番号】WO2008/127427
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】