説明

組成物及びその製造方法

【課題】主に遊び用及び教育用のための組成物であって、すぐに造形、変形可能であるという特性を持ち、周囲(接触するもの)にあまり粘着せず、魅力的で気持ち良い構造を有する組成物を提供する。
【解決手段】粒体状の物質(2)と、粒体の表面に薄膜として配されるバインダ(3)を含む、遊び又は造形用の組成物である。バインダは、ホウ素化合物で架橋された、水酸基を末端に持つポリマー、特にシリコンオイルである。本発明によれば、粒体(2)の比率は最終製品の90〜98体積%である。組成物の製造方法は、粒体(2)をミキサに入れる工程と、水酸基を末端に持つポリマー、特にシリコンオイルを入れて粒体の表面に薄い層として分布させる工程と、そしてホウ素を含む架橋剤を溶液の形で投入、混合して架橋させ、粘度を上昇させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状又は顆粒状の物質とその粒子又は顆粒(以下、合わせて「粒体」という。)の表面をコーティングするバインダを含み、そのバインダはヒドロキシル基(水酸基)を末端に有し、ホウ素化合物で架橋されたポリマーを含む、組成物に関する。
【0002】
本発明は、ある量の粒子又は顆粒(粒体)をミキサに入れる工程と、水酸基を末端に持つ低粘度のポリマーを含むバインダに含まれる1以上の第1の成分をミキサに入れる工程と、ホウ素を含む架橋剤としての第2の成分をミキサに入れる工程と、を含む組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くのモデル(造形)用粘土や類似の塑性物質がすでに公知であり、芸術用及び子供の遊び用に用いられている。これらの物質の多くは、所望の可塑性と造形性を得るためにある程度捏ねて弱く加熱する必要があることが知られている。
【0004】
可塑性又は造形性の基材を、型による成形用に用いるには、型を形成する材料から基材が容易に分離し、はがれなければならない。したがって基材又は組成物の周囲(接触するもの)への粘着力は制限されねばならず、そのため基材は同時にべとつかず、取り扱いやすいように感じられるという効果も伴う。
【0005】
粘土或いはそのような組成物を小さな子供たちが扱う、特に繰り返して使う場合に問題となるのが、バクテリアその他の汚染物が取扱われた組成物の内部で増殖する可能性があることである。特に組成物が、保育サービス施設のような子供たちの大きな集団で使われる場合には好ましくない。同時に、造形粘土や組成物は、例えば汗や唾液の形で液体が吸収されることにより、粘稠度が低下する。
【0006】
このような物質の一つの公知例として、その大部分が小麦粉と水と塩分からなるいわゆるトリック粘土(trick dough)がある。類似の組成物として、さらに添加物を加えたものがプレイ・ドー(Play-Doh、登録商標)として販売されている。これらの物質は、使っているうちに水分が蒸発し、乾燥してしまう。また、この物質はプラスチックや類似の物質でできた深い型から容易に滑らずまたは分離しない。
【0007】
すぐに造形(成形)可能な興味深い構造を得る方法は、このような物質に比較的大きな割合で粒体を加えることである。それにより、例えば水分を含んだ砂のような、粒状構造を形成する。さらに、その可塑性物質の容積は、少なくとも加えた粒体の容積分だけ増加する。
【0008】
少なくとも取り扱いやすさ、十分に低い粘着性及び加えた粒体による所望の粒状構造に関する、上述の条件を満たす先行の物質例として、本出願人による出願番号SE0500663−0号による出願に記載されたものがある。しかしこの物質には、さらに耐水性を持つ固い形成物とするために、オーブンで焼成できるという特別の性質がある。もしも再度柔らかくしようと思えば、固くなった形成物を加熱し、冷却中に捏ねる(混練する)ことによって、室温において柔らかくすることができる。この柔らかくする作業は、かなりの時間と労力を必要とし、例えば保育サービス施設のように、時に人員が逼迫するような場合には欠点となりうる。型や道具に含まれる普通のプラスチックに対して、このような物質のバインダがある程度粘着するということも欠点と考えられるであろう。
【0009】
他の公知物質は米国特許第5607993号公報に開示された、いわゆる「弾力粘土(bounce clay)」である。しかし用いるにあたって、この物質は明確な粒状構造を有しておらず、しかも造形用に用いることを意図したものではなく、むしろその跳ね返り特性を楽しむためのものである。この弾力粘土にはわずかな比率の粒体が含まれているが、それは単に弾力粘土の密度を低くするための混ぜものとしての意義を有するに過ぎない。この粒体はきわめて小さく、シリコン材料に完全に覆われているので、その粒状構造はこの組成物を取り扱うときに何も感じられない。この「跳ね返る粘土」は、多くの異なる態様で利用可能であり、その化学的組成は、その物質の特性に基づく効果とともによく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5607993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、主に遊び用及び教育用のための組成物であって、容易に造形、変形可能であるという特性を持ち、周囲(接触するもの)にあまり粘着せず、魅力的で気持ち良い構造を有する、従来にない組成物を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の基礎となるこの目的は、冒頭に記載した組成物の粒体(粒子状又は顆粒状の物質)の含有率が最終的な組成物完成品(製品)の約90〜98体積%である組成物によって達成される。
【0013】
この組成物の製造方法に関しては、本発明の目的は、バインダに含まれる第1の成分が粒体の表面に薄い層(layers)として分布され、その後第1の成分の薄層(layers)を架橋するための架橋剤が溶液の形でミキサに供給されることにより達成される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
さらなる有利な効果は、請求項2〜6及び請求項8〜11に記載の特徴の少なくとも1つを有する本発明により与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下に本発明について、下記の図面を参照して詳細に説明する。
【図1】本発明に係る、バインダ粒子から構成される少量の組成物の拡大図である。
【図2】本発明に係る組成物の、製造及び使用(滅菌を含む)に関するブロックダイヤグラムである。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
図1は、本発明に係る組成物1の少量を拡大した図である。組成物1は、大量の粒体2の集合体であり、それぞれがバインダ3で覆われている。バインダ層と粒体の大きさの関係は、わかりやすくするために実際とは異なっていることに留意されたい。バインダ3で覆われた粒体(複数)2は互いに粘着しているが、その間に多数の小さなエアポケット4が形成されている。つまりバインダ3は、均質で連続したかたまりを形成しているわけではない。その結果組成物1は、粒体2が全容積に対してかなり大きな比率を占め、軽い(密度の低い、lightly)顆粒状構造を持ち、取扱いが簡単で心地よい。
【0017】
粒体2は組成物1の大部分の構成比を占める。典型的には、粒体の占める割合は組成物製品の80〜99.5体積%を占める。好ましくは粒体の比率は90〜98体積%である。組成物1の大部分を粒体2が占めるということは、少なくとも粒体2が余程高価でない限り、均質な物質に比べてかなり安価であることを示す。組成物1の大部分が粒体2であるということは、同時にバインダ3が粒体2の表面に(非常に)よく粘着する必要があるということである。
【0018】
粒体2の平均粒子径は、好ましい実施形態において、0.01〜1.0mmの範囲であり、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲であり、さらに好ましくは0.07〜0.15mmの範囲である。実験の結果、この粒子径の範囲であれば、組成物1の空間の多い粒状構造を抑制する又は損なうような、全体が均質な構造を形成することなく、粒体2の全表面が完全にバインダ3により覆われることが判明した。粒体2の典型的な物質は、上記平均粒子径を持つ砂である。しかし粉砕大理石、ポリマー粒又はポリマー球、(飛散灰ないしフライアッシュから得られる)セノスフィア(ないしバルーン、cenosphere)、プラスチック、セラミック又はガラスのマイクロスフィア、これらのいずれかの混合物といった多くの他の粒状体が考えられる。しかし基本的な基準は、粒子径が上記のバインダ層3を得るのに適切であることである。
【0019】
好ましい実施例において用いられる粒体は、珪素を含み、GA39の番号で販売されている自然の砂である。他の使用可能な粒体は、石炭燃焼時に飛散灰(フライアッシュ)とともに生成される、いわゆるセノスフィアからなるSL150である。セノスフィアは白色又は灰色であり、中空構造である。
【0020】
さらにこれまで試験されてきた粒子状物質は、完全に球状の固体ガラス球体からなるミクロパールAF(Mikroperl AF)である。好ましいサイズは75〜150μmである。これは透明で、組成物の製品に興味深く魅力的な美的効果を与えるために用いることができる。本発明に好ましく用いられるバインダ3は、このような粒体に非常によく付着するため、表面の改質やプライマは不要である。
【0021】
種々のタイプの粒体を試験した結果、完全な球状の粒体は組成物の柔軟な特性が増加することが判明した。これはバインダをより乾燥させることができ、可塑剤の必要性を減少できることを意味する。
【0022】
マイカ粒子のように単に美的効果を与える粒子を加えることもできる。おそらくバインダ3をこのような粒子に付着させるためには、表面の改質が必要となるであろう。
【0023】
従来技術に開示されたものとはかなり異なるバインダ3は、上記粒体2の表面に、0.1〜10μmの、好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは1〜2μmの厚さの層を形成することができる。この層厚は粒体2同士を付着させるには十分であるが、粒体2の間の空間をバインダ3が埋め尽くし、組成物1の粒子状構造(granular structure)が失われてしまうリスクを生じるほど厚くはない。粒体2が最終的にバインダ3で覆われたときには、既に述べたように、バインダ3の十分な量が粒体2表面に留まるような化学的又は物理的特性を持っている必要がある。そのような特性を持っていなければ、粒体の表面改質が必要となりうる。
【0024】
図1には、コーティングされた粒体13、14が互いに離れつつあるところを示している。バインダ3の細い糸15を除き、粒体13、14はその大部分がバインダ3に覆われている。つまり、バインダの覆い(envelopes)は十分健全である。図1の他の粒体16、17は、バインダの糸18が伸びきって切れている。このような糸18は2つの粒体16、17の覆いに戻る。糸の長さはバインダの粘度に依存するが、バインダの糸が長くなれるほど、組成物1は全体としてよりゴムのようになり、分離される粒体は少なくなる。その結果、組成物1はより散らばりにくい(ばらばらになりにくい)と感じられる。
【0025】
結局のところ、組成物1の製品の粘着性に最も大きな影響を与えるバインダ3の重要な他の特性は、粒体どうしは粘着するが、それ以外の外部とは粘着性が低いということである。このような特性により、組成物1を取り扱うときに、バインダの一部が手、衣服、型あるいは作業台等に残ることがない。組成物1がぼろぼろにならずに形状を留めておくためには、バインダ3の内部粘着力が強く、十分柔らかくて柔軟であることが必要である。これにより、取り扱いやすく、ばらばらにならない結合性が保持できる。
【0026】
とりわけ末端が水酸基であるポリマーから製造されるバインダ3を含む組成物1の製品(完成品)は、一連の有利な特性を示す。この製品は、周囲に存在するであろう物体表面に低い付着性を有する。ただしシリコン及びシリコンゴムは例外であるが、これらは例えば家の中や保育サービス施設の中のような普通の環境ではかなりまれな素材である。即ち、この組成物1は、テーブルや手で取り扱っても、それらにくっついたり汚したりすることはない。
【0027】
一方、組成物どうしの内部での粘着性は良好であり、これは内部的な形状保持性と、ばらばらにならない特性を持つ。この組成物1の粒子的構造により、バインダだけで構成された組成物や基材では達成できなかった、手触りがよく、塑像や造形(成形モールディング)に適した組成物ができるのである。特に組成物1は、造形(成形)のための型から、たとえそれが深いものであっても、容易に引き剥がし又は滑らせて取り出すことができる。
【0028】
好ましい実施形態において、水酸基を末端に持つポリマーと架橋剤の2つの主要成分により、ポリマー鎖が互いに結合され、その成分より高い粘度を持つバインダ3が得られる。
【0029】
水酸基を末端に持つポリマーとは、末端が水酸基であるポリマーである。好ましくは水素イオン(H)を持つ架橋剤は、ヒドロリシス即ち脱水反応により水酸基と反応する。表1に示す実験例においては、末端に水酸基を持つポリマーが多数用いられた。CDS750は、水酸基を末端に持つシリコンオイルであり、粘度は750cPである。H48V750は同じ物質の別の製造者番号である。CDS100とH48V100は、水酸基を末端に持つ、粘度100cPのシリコンオイルである。CDS750とH48V750に比べると、それ(CDS100とH48V100)に含まれるポリマー鎖の長さはより短く、形成される糸15、18はより短く切断される。ここで考えている適用条件に関しては、CDS100とH48V100の多くの特性は、CDS750とH48V750に比べて優れていると考えられる。唯一つの欠点は、CDS100/H48V100はより高価であるということである。
【0030】
末端に水酸基を持つポリマーが多数用いられうるが、末端に水酸基を持つシリコンオイルが主要な利点を有していることが明らかになった。1つには、内部の粘着性が非常に良いバインダ3が得られること、もう1つには、粒体2の表面処理に有利に用いることができるシリコン及びシリコンゴムに対して良好な粘着性を持つ、ということである。
【0031】
バインダとして好ましく用いられる他の成分として、必ずしも必要ではないが、水酸基を持つポリマーがある。これは、末端に水酸基を持つポリマーと同様、架橋剤と反応する水酸基を含むが、これらの水酸基は必ずしも分子の末端にある必要はない。実験に用いたこのようなポリマーの1つとして、水素化したリシンオイルがあり、これをLuvotix HTで示している。このポリマーは、12番目の炭素原子に1つの水酸基を持つ脂肪酸である。その有利な特性は、添加されることのある顔料と結合すること、立体配置が安定であること、そして非常に経済的であること、等である。末端に水酸基を持つポリマーであるCDS750と組み合わせることにより、その欠点が減少し又は完全に除去されて、CDS100のような有利な特性が得られる。
【0032】
表1〜10に示す実験例において、架橋剤としてホウ酸(HBO)を用いた。このような例においては、ホウ素原子が3つの原子又は原子団とそれ自身と結合できることに特に注意を要する。無水ホウ酸(B)のような他のホウ素化合物を、他の同様な特性を持つ化合物と同様に、架橋剤として用いることができる。
【0033】
したがって、架橋されうるほとんどのポリマーは、適切な架橋剤を選択することにより、バインダ3として利用できる。
【0034】
バインダ3の化学的組成のため、長く使用しているとある程度水分を吸収する。そのため、この組成物で作った成形物は、例えば水槽のような水中に入れることには適していない。しかし反対に、この組成物1は加熱により水分を飛ばすことができる。このように水分を水蒸気の形で加熱除去することにより、加熱滅菌効果を高めることもできる。好ましい実施形態において、水分はバインダ3内のヒドロリシスによっても加熱除去される。したがって、この組成物は原則として水分を含有しない。
【0035】
組成物1の粘稠度は温度によるが、ある限度内のことである。即ち、組成物1を塑像又は成形するために事前に柔軟化又は加熱等を行う必要がないことを意味する。また、組成物1をしばらく使用しないで放置したあとであっても、事前処置は不要である。それは水分が蒸発しないからである。
【0036】
先に述べたように、組成物1は、好ましくは標準的な家庭用オーブンで約120℃で加熱することが有利である。その場合、組成物の粘稠度に影響を与えるかも知れない吸収された湿分が、少なくとも組成物の大部分において除去される。同時に、加熱により、組成物を使用するうちに付着したバクテリアや汚染物を滅菌することができる。このことは、組成物はしばしば大勢の子供たちの集団が使うものであり、したがって種々の汚染物が付着し、それは子供たちの集団に広がるリスクがあることを考慮すると、非常に重要なことである。しかし簡単な加熱プロセスにより、組成物は再び使えるようになり、お金をかけて廃棄する必要がない。
【0037】
SE0500663−0に開示した組成物と異なり、本発明に係る組成物は、加熱プロセス後、使わなくても固くなることはない。これは、例えば加熱した組成物を冷却中に捏ねるような人手がない保育サービス施設を考慮すれば、多量の組成物を加熱する場合に明らかに有利である。
【0038】
いくつかの観点における特性を改良又は変化させるため、バインダ3に種々の添加物を選択的に加えることができる。可塑剤は、バインダに含まれるポリマー鎖間の潤滑剤となり、組成物により柔らかな粘稠性を与える。実験例では、可塑剤としてステアリン酸、オレイン酸をそれぞれ用いた。なお、オレイン酸は室温で液体状であり、そのため冷却した(常温の)組成物1に添加することが可能である。
【0039】
必要であれば、粘着性を減らすため、ワセリンを添加することも有利である。ワセリンは粘度の非常に大きい、半固体状のパラフィンオイルである。同じ目的のため、グリコールと同様界面活性剤(tensides)を用いることもできる。
【0040】
組成物1の色を変えるため、種々の顔料を添加することもできる。表1〜10に示す実験例では、顔料粒子をあらかじめワックスバインダ(Microlene)中に分散させて多くの例で用いている。
【0041】
組成物1は粒体又は顆粒状の物質がその大部分を占めているので、バインダ3の中に粒体2を練り込ませる方法は、不可能ではないが困難である。粘度が非常に大きくなるからである。ここで求めている均一にコーティングされた粒体2を得るために、粘度の大きなバインダ3に粒体を練りこむことは、非常に困難である。そうではなく、本発明に係る組成物1を製造する新規な方法を図2に示す。
【0042】
この方法はステップ5から始まる。ステップ5は、バインダ3でコーティングする粒体2を標準的な単純なミキサに投入することである。次のステップ6において、本発明の好ましい実施形態における、バインダ3の2つの主要成分のうちの1つである水酸基を末端に持つポリマー、好ましくは水酸基を末端に持つシリコンオイル、をミキサ中の粒体2に加える。同時に、最終製品をある観点において改善する他の任意的添加物、例えば顔料、可塑剤及び粘着性低減剤、を加えてもよい。しかしこのような物質は、本発明に係る機能的組成物1を製造するために必ずしも必要ではないことを強調しておく。
【0043】
次のステップ7で、ミキサを起動し、混合することにより、水酸基を末端に持つポリマー及び他の選択的添加物が粒体2の表面に均一な薄膜となって分散される。同時に約120℃まで加熱することにより、成分中の水分を蒸発させ、追い出す。ただしそのためには換気(air exchange)を十分行う必要がある。もしも(好ましい実施形態のように)ミキサが密閉式の場合、水分が蒸気の形でミキサ内に残存し、時間の経過と共に平衡状態に達する。そしてミキサ内の密閉空間は水蒸気で飽和し、組成物1にはある程度の水分が残る。
【0044】
ステップ8において、好ましい実施形態において用いた、架橋剤として好ましいホウ酸を水に溶かした状態で、なお密閉されているミキサに加える。ホウ酸は、この組成物1の2つ目の主要成分であり、架橋剤として水酸基を末端に持つポリマーと反応し、最終生成物である粘性のあるバインダ3を生成させる。ここで、粒体2に反応生成物であるバインダ3を均一に分散させるためには、架橋反応が起こる前に、ホウ酸を成分中に均一に分散させておくことが重要である。そのため、ステップ8で加えるホウ酸をミキサ内に均一に分散させるまではミキサを密閉しておく。この場合、ホウ酸の水への溶解度は温度とともに増加することに注意すべきである。つまり、ミキサ内で分散させるとき、ホウ酸は水溶液の状態で存在する。
【0045】
架橋剤としてのホウ酸と水酸基を末端に持つポリマーとの反応はヒドロリシス反応であり、反応生成物として水が脱離する。水分子は、ホウ酸中の水素イオンと水酸基を末端に持つポリマーの水酸基によって生成する。
【0046】
ホウ酸を組成物1に均一に分散させたのち、混合物はステップ9として低速ミキサに移送して換気(脱気)しながら捏ねる(混練する)。この場合、ミキサが開放され、水蒸気と熱が除去されて冷却が生ずる。水蒸気が脱離し温度が低下するに従い、ホウ酸が組成物中でゆっくり均一に、水酸基を末端に持つポリマーと反応する。このとき、粘度が徐々に増加し、粒体2の表面にバインダ3の均一な層が0.1〜10μmのオーダーで生成される。同時に混練プロセスにより、バインダ3は過度に充填されることなく、コーティングした粒体2の間には望ましいエアポケット(空間)4が発生する。
【0047】
組成物又は基材が十分冷却されたら、包装して輸送し、ステップ10において開包すればすぐに使用可能である。組成物の使用法は主に遊び用及び/又は療法用である。
【0048】
先に説明したように、組成物1は使用中に、多少汗や唾液のような液体を吸収する。その場合、組成物の粘稠度に影響を与えうる。そのため組成物はよりゆるくなり、場合によっては不快に感じることもありうる。この欠点を解消し、組成物1に混入したバクテリアや汚染物を滅菌するため、しばらく使用した後にこれをステップ11において加熱する。加熱操作により、汚染物を滅菌することができ、同時に組成物に吸収された水分が水蒸気の形で放出される。組成物全体が120℃程度に達するまで加熱したのち、ステップ12において放冷する。冷却プロセスにおいて作業は不要であり、室温になれば組成物はステップ10に戻って再使用可能である。
【0049】
(実施例2)
好ましい実施例によれば、砂が粒子状基材として良好に機能する物質である。これは、顕微鏡的にみれば完全に平坦とはいえない表面構造からすれば、全体として考えられることである。架橋剤と反応する、水酸基を末端に持つポリマーのバインダ3は、その粘着力がそれほどでもないにもかかわらず、この基材(砂)によく付着する。例えばセラミックのような表面構造がより滑らかな粒体2を用いる場合、粒体2の表面を改質する必要があるであろう。これはあらかじめシリコンゴムで0.02μmの厚さでコーティングすることで良好に達成できる。この表面改質により、所望の特性を持つ組成物1を得るのに必要なバインダの量を減らすことができるという利点もある。
【0050】
実験例においては、種々のタイプの粒体に対して、ヴァッカー液L655(Wacker fluid L655)によって表面改質を行った。ヴァッカー液L655は、酸素(空気)に接触させて用いる、アミニン(aminine)を含む低分子量のシリコンオイルである。表面改質は、固化する前にすべての処理すべき粒体表面に所望の薄膜として分散させるため、液相で適切に処理することにより得られる
【0051】
他の表面改質剤としては、2又は3成分系のシリコンゴム又は例えばジメチルジクロロシラン((CHSiCl)のようなオルガノハロシランが用いられる。
【0052】
本発明の他の変形例として、製造方法のステップ8において必ずしもホウ酸を水溶液としないものがある。その代わり、ホウ酸をより揮発しやすいエタノールに溶解させることが考えられる。それにより、ステップ9において、架橋剤と水酸基を末端に持つポリマーとの反応が早くなるであろう。しかし、エタノールは火災の危険性があり、環境への好ましくない問題を生じる可能性がある。
【0053】
架橋剤(ホウ酸)と水酸基を末端に持つポリマーとを、好ましい実施例とは逆の順番で粒体に加えることもできる。しかし、これらの物質を、粘度が低い間に粒体2の表面に均一に分布させるという大原則は保持しなければならない。製造方法の他の変形例として、加熱を水酸基を末端に持つポリマーの追加後に行うこと、つまり2つの主要成分を混合して粒体2に均一に分散させた後に加熱することもできる。
【0054】
最後に、本発明において、同等の粘度と粘着特性を持つ他のバインダ3を用いることもできる。その場合、製造方法は実質的に同じである。実験例で用いたこのようなバインダ3の詳細情報について表1〜10に示している。本発明は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内でさらに変形が可能である。











【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状又は顆粒状の物質(2)と、該粒子又は顆粒(以下、合わせて「粒体」という。)(2)のコーティングとして配されるバインダ(3)を含む組成物であって、
該バインダは、ホウ素化合物により架橋された、水酸基を末端に持つポリマーを含み、
該粒子状又は顆粒状の物質(2)の含有率は組成物完成品の約90〜98体積%であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記水酸基を末端に持つポリマーはシリコンオイルであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒体(2)は、前記バインダ(3)のコーティングの下に表面改質剤がコーティングされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記表面改質剤は、固体状シリコン層を形成することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒体の平均粒子径は約0.05〜0.5mmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒体の平均粒子径は約0.07〜0.15mmであることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
所定量の粒子又は顆粒(以下、合わせて「粒体」という。)(2)をミキサに供給する工程と、
バインダ(3)に含まれる、低粘度の水酸基を末端に持つポリマーを含む少なくとも第1の成分を該ミキサに供給する工程と、
ホウ素を含む架橋剤の形式の第2の成分を該ミキサに供給する工程と、
を含む、組成物の製造方法であって、
該バインダに含まれる該第1の成分が、該粒体の表面に薄い層として分散されており、
その後、溶液の形式の該架橋剤が該第1の成分の薄い層を架橋するために該ミキサに供給される、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記組成物の温度を上昇させる工程を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒体(2)の前記バインダ(3)への粘着性を改善するために、最初に該粒体が表面改質されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の成分を供給した後、混練及び脱気ないし換気を行うことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の成分は、水酸基を末端に持つシリコンオイルであることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−501084(P2010−501084A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524580(P2009−524580)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000726
【国際公開番号】WO2008/020800
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(507317144)デルタ オブ スウェーデン アーベー (2)
【Fターム(参考)】