説明

組成物

本発明は、ニブがポリフェノールを少なくとも20mg/g、好ましくはポリフェノールを30mg/g超、もっとも好ましくはポリフェノールを40から60mg/g含む酸性化カカオニブ、それらのニブから得られるカカオ精製フレークまたは圧搾フレーク、リカー、ケーク、およびカカオパウダー、ならびに(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有する豆または種子から得られたカカオニブを酸で処理するステップ、および(ii)場合によりニブを乾燥するステップを含む、カカオ由来材料を生成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いレベルのポリフェノールを含む酸性化カカオニブ、ならびにそれらのニブから得られる精製フレークまたは圧搾フレーク、カカオリカー、カカオケーク、およびカカオパウダー、ならびに処理カカオ由来材料を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カカオ生成物は、渋みが少なく、より濃厚な味を有し、より濃く、より魅力的な色を有する生成物を得るために、多くの場合アルカリ化剤の溶液、たとえばナトリウムまたはカリウムの水酸化物または炭酸塩で処理される。一部の消費者のなかで、異なる色を有するカカオ生成物が望まれている。着色カカオ生成物を使用することにより、たとえば人工食品着色料の使用を制限することができ、またはより少ない着色材料の使用を可能にすることができる。
【0003】
様々な色を有するカカオパウダーを得るために、たとえば、英国特許第1243909号、米国特許第2,380,158号、米国特許第4,435,436号、米国特許第4,704,292号、米国特許第4,784,866号、および米国特許第5,009,917号に記載されているように、カカオ種子、カカオ豆、およびカカオニブなどのカカオ生成物のアルカリ化が用いられてきた。焙煎も米国特許第4,704,292号および英国特許第2416106号に記載されている。
【0004】
米国特許第5,114,730号は、約60分未満、温度200°F未満で水スラリー中のカカオパウダーからダークカカオパウダーを製造し、最終生成物を噴霧乾燥する方法を開示している。
【0005】
米国特許第2,957,769号は、発酵未焙煎カカオ材料の抽出、ならびに抽出物および残留材料両方の処理を記載している。
【0006】
米国特許第2,965,490号は、チョコレートフレーバーを生じるための未発酵カカオの加水分解を開示している。米国特許第2003/0129276号は、チョコレート片を製造するための、処理カカオリカーを記載している。米国特許第2005/0031762号は、新鮮種子および/または発酵中種子に酢酸を添加することによる、低脂肪カカオ抽出物の生成を開示している。
【0007】
米国特許第2,512,663号は、カカオ含有材料からフレーバーまたはエッセンス成分を生成するための、焙煎カカオニブの処理を記載している。
【0008】
米国特許第2007/0254068号は、有益なカカオポリフェノールを含有するカカオ飲料を生成する方法を開示している。そのようなポリフェノールは、米国特許第7,115,656号にも記載されている。
【0009】
英国特許第345250号は、カカオ生成物からのアルカロイドの回収および精製を開示している。
【0010】
WO2008/043058および米国特許第2008/107783号は、高輝度カカオパウダーおよび関連成分を生成する方法を記載している。
【0011】
WO98/09533は、増大されたポリフェノール含量を有するカカオ成分、食用製品、それらを製造する方法、および医療上の使用を開示している。
【0012】
米国特許第20080268097号は、増大されたスチルベン化合物レベルを有するカカオ成分、およびそれらを生成する方法を記載している。
【0013】
欧州特許第1946643 A1号は、低いpHで低減された酸味を有する食品成分を開示している。米国特許第5,888,562号は、カカオの酵素処理を記載している。米国特許第2004/0191403号は、チョコレートフレーバーの取扱いを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許第1243909号
【特許文献2】米国特許第2,380,158号
【特許文献3】米国特許第4,435,436号
【特許文献4】米国特許第4,704,292号
【特許文献5】米国特許第4,784,866号
【特許文献6】米国特許第5,009,917号
【特許文献7】英国特許第2416106号
【特許文献8】米国特許第5,114,730号
【特許文献9】米国特許第2,957,769号
【特許文献10】米国特許第2,965,490号
【特許文献11】米国特許第2003/0129276号
【特許文献12】米国特許第2005/0031762号
【特許文献13】米国特許第2,512,663号
【特許文献14】米国特許第2007/0254068号
【特許文献15】米国特許第7,115,656号
【特許文献16】英国特許第345250号
【特許文献17】WO2008/043058
【特許文献18】米国特許第2008/107783号
【特許文献19】WO98/09533
【特許文献20】米国特許第20080268097号
【特許文献21】欧州特許第1946643 A1号
【特許文献22】米国特許第5,888,562号
【特許文献23】米国特許第2004/0191403号
【特許文献24】米国特許第7,132,296 B2号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Chocolate,Cocoa,and Confectionery:Science and Technology、Bernard W.Minifie Springer;第3版(December 15,1988)
【非特許文献2】Industrial Chocolate Manufacture and Use、S T Beckett編(第3版、1999、Blackwell Science)
【非特許文献3】Hunter R.S.、The Measurement of Appearance、John Wiley and Sons、New York、1975
【非特許文献4】Ferrieraら、Diversity of Structure and Function in Oligomeric Flavanoids、Tetrahedron、48:10、1743−1803、1992
【非特許文献5】Singleton VL、Orthofer R、Lamuela−Raventos RM、Analysis of total phenols and other oxidation substrates and antioxidants by means of Folin−Ciocalteu reagent、Meth Enzymol 1999;99:152−178
【非特許文献6】Ou,B;Hampsch−Woodill,M.;Prior,R.L.;Development and Validation of an Improved Oxygen Radical Absorbance Capacity Assay using Fluorescein as the Fluorescent Probe.Journal of Agricultural and Food Chemistry;2001;49(10);4619−4626
【非特許文献7】Ou,B;Huang,D.;Hampsch−Woodill,M.;Method for Assaying the Antioxidant Capacity of A Sample
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
都合良く効率的に生成することのできる着色カカオ由来材料が依然として求められている。好ましくは、そのような材料は、健康上の利益を提供し、かつ/または、たとえばヨーグルトの着色剤としてなど、低いpH環境での使用に適した特性を有することができる。そのような材料は、アルカリ化および/または焙煎に関連する不利益を回避する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、第1の態様において、酸性化赤色または紫色のカカオニブが提供され、赤色または紫色のカカオニブは、ポリフェノール少なくとも20mg/g、好ましくはポリフェノール30mg/g超、もっとも好ましくはポリフェノール40から60mg/gを含む。好ましくは、酸性化カカオニブは、本明細書で定義される赤色または紫色である。
【0018】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるニブから得られる赤色または紫色のカカオ精製フレークまたは圧搾フレークを提供する。好ましくは、精製フレークまたは圧搾フレークは、赤色または紫色である。
【0019】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるニブから得られる赤色または紫色のカカオリカーを提供する。カカオリカーは、好ましくは赤色または紫色である。
【0020】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様によるリカーから得られる赤色または紫色のカカオケークを提供する。ケークは、好ましくは赤色または紫色である。
【0021】
第5の態様において、本発明は、本発明の第3の態様によるカカオリカー、または本発明の第4の態様によるカカオケーク、または本発明の第2の態様による圧搾フレークから得られる赤色または紫色のカカオパウダーを提供する。
【0022】
第6の態様において、本発明は、粉末の形態であり、L値が約40から45、C値が約28から33、h°値が約17から25、および場合によりa対b比が約2.2から3.1を有するカカオ由来材料を提供する。あるいは、L値は約40から57であり、C値は約18から40であり、h°値は約7から40であり、場合によりa対b比は約1から8である。
【0023】
第7の態様において、本発明は、粉末の形態であり、L値が約47から57、C値が約18未満、好ましくは約10から17、h°値が約20から約50、好ましくは約25から40、または25から30、および場合によりa対b比が約2.3未満、好ましくは約1から2.1を有するカカオ由来材料を提供する。
【0024】
色パラメータは、酸性化反応条件に応じて変化し得ることが見出されている。
【0025】
カカオ由来材料は、好ましくは酸性化されており、ポリフェノール少なくとも20mg/g、好ましくはポリフェノール30mg/g超、もっとも好ましくはポリフェノール40から60mg/gを含む。カカオ由来材料は、場合により脱脂された材料である。カカオ由来材料は、好ましくは以下に定義されるとおりである。
【0026】
第8の態様において、本発明は、本発明の第2の態様によるカカオ精製もしくは圧搾フレーク、および/または本発明の第3の態様によるカカオリカー、および/または本発明の第4の態様によるカカオケーク、および/または本発明の第5の態様による赤色カカオパウダー、および/または本発明の第6もしくは第7の態様によるカカオ由来材料を含む食品、菓子製品、乳製品、またはベーカリー製品を提供する。
【0027】
第9の態様において、本発明は、赤色または紫色のカカオ由来材料を生成する方法であって、
(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有するカカオ豆または種子から得られたカカオニブを酸で処理するステップ、および
(ii)場合によりニブを乾燥するステップを含む方法を提供する。
【0028】
第10の態様において、本発明は、赤色または紫色のカカオ由来材料を生成する方法であって、
(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有する豆または種子から得られたカカオ由来材料を酸で処理するステップ、および
(ii)場合により材料を乾燥するステップを含む方法を提供する。
【0029】
第10の態様において、カカオ由来材料は、以下に定義されるとおりであることができ、好ましくは、カカオニブ、フレーク、たとえば精製フレークまたは圧搾フレークなど、カカオケーク、カカオパウダー、カカオリカーから選択され、より好ましくは、フレーク、カカオパウダー、およびカカオリカーから選択される。カカオ由来材料は、好ましくは処理後、赤色または紫色である。
【0030】
本明細書で用いられる用語「カカオ由来材料」には、カカオニブ、精製フレーク、圧搾フレーク、カカオケーク、カカオパウダー、カカオリカー、および甘味添加もしくは甘味無添加のチョコレート、ミルクチョコレート、またはホワイトチョコレートが含まれる。これらはすべて当業者に周知の用語である(Chocolate,Cocoa,and Confectionery:Science and Technology、Bernard W.Minifie Springer;第3版(December 15,1988)参照)。用語「ニブ」は、殻のないカカオ豆を指し、乾燥重量ベースで脂肪54%および無脂固形分46%を含むことができる。用語「カカオリカー」は、粉砕カカオニブを指し、カカオバターとカカオ固形分に分けることができる。用語「カカオフレーク」は、固体フレークの形態であるカカオリカーを指し、典型的に脂肪含量54%を有する。用語「圧搾フレーク」は、圧搾プレス機(expeller press)から生成されたフレークを指す。圧搾フレークの脂肪含量は、典型的に20重量%未満である。
【0031】
カカオバターは、チョコレートリカーの脂肪成分であり、チョコレートリカーの残りの部分は、カカオ固形分またはカカオマスである。加圧によってカカオバターを除去した後に残存するのが、たとえば厚さ約5センチメートルを有する円板状物、カカオケークである。これらのケークを破壊し、微細なカカオパウダーに粉砕することができる。用語「カカオケーク」は、加圧によって脂肪を抽出した後に残存するカカオ固形分またはカカオマスを指し、これを粉砕してカカオパウダーを形成することができ、そのためカカオパウダーの圧縮形態と考えることができる。カカオパウダーは、たとえば合計0.5から26重量%の脂肪を含むカカオ固形分を指し、ここで脂肪はカカオバターである。典型的に、カカオパウダーは、脂肪20から22重量%を含む。低減された(脂肪10から12重量%)カカオバターもしくはカカオ脂肪を含む、または実質的に含まない脱脂カカオパウダーを生成できる。
【0032】
チョコレートを製造する方法は、Industrial Chocolate Manufacture and Use、S T Beckett編(第3版、1999、Blackwell Science)に記載されている。チョコレートは一般に、砂糖およびカカオバターをカカオリカーまたはカカオニブと混合し、その後、精製、コンチング、およびテンパリングすることによって得られる。ミルクチョコレートは、類似の方法であるが、ミルクを添加して調製される。ホワイトチョコレートは、ミルクチョコレートと類似の方法であるが、カカオリカーを添加せずに調製される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】粉末としての脱脂カカオリカーに関して、本発明による方法の時間の長さに伴う色パラメータLおよびh°の変化を示す図である。
【図2】粉末としての脱脂カカオリカーに関して、本発明による方法の時間の長さに伴う色パラメータLおよびCの変化を示す図である。
【図3】粉末としての脱脂カカオリカーに関して、本発明による方法の時間の長さに伴う色パラメータおよびポリフェノール含量の変化を示す図である。
【図4】40℃での溶融および液体カカオリカー、ならびに外観色に関して、本発明による方法の時間の長さに伴う色パラメータLおよびh°の変化を示す図である。
【図5】40℃での溶融および液体カカオリカー、ならびに外観色に関して、本発明による方法の時間の長さに伴う色パラメータLおよびCの変化を示す図である。
【図6】カカオリカーに関して、本発明による方法の時間の長さに伴う色パラメータおよびポリフェノール含量の変化を示す図である。
【図7】本発明によるカカオパウダーを用いて生成された着色ヨーグルトを示す図である。
【図8】本発明による調理キャンディに適した型を示す図である。
【図9】比色分析用の調理キャンディ円板状物を示す図である。
【図10】酸性化カカオパウダー(下段3個のキャンディ)および非酸性化カカオパウダー(上段6個のキャンディ)で製造された調理キャンディを示す図である。酸性化カカオパウダーで製造されたキャンディの色は、様々な色合いの赤色である。非酸性化カカオパウダーで製造されたキャンディの色は、黒色から茶色の外観である。
【図11】実施例9の試験によって生成されたパウダーを示す図である。
【図12】実施例10の試験によって生成されたパウダーを示す図である。
【図13】実施例11のスケールアップによって生成されたパウダーを示す図である。
【図14】実施例11のLB02によるカカオリカーを示す図である。
【図15】実施例12に用いた装置を示す図である。
【図16】実施例12で得られたパウダーを示す図である。
【図17】本発明によるパウダーを生成するための好ましい方法を示す図である。
【図18】本発明によるパウダーを生成するための好ましい方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、細菌含量、ポリフェノール含量、および色の適切な組み合わせを有するカカオベース材料を生成できることを認めるものであると考えることができる。
【0035】
本発明は、赤色または紫色のカカオ由来材料は、適切なpKを有する酸を用い、発酵カカオ豆または種子より高いポリフェノール含量を有するカカオ豆または種子から得られたカカオニブから生成できるという発見に少なくとも部分的に関連するものであると考えることができる。さらに、本発明は、赤色または紫色のカカオ由来材料を生成するために用いられる酸性条件が制御される場合、特にpH、水分含量、温度、および反応の長さが制御される場合、カカオ豆または種子に存在するポリフェノールのレベルをカカオ由来材料において特定の程度に維持することができ、特定の色を生成できることを認めるものである。
【0036】
本明細書において実施形態のいずれかに定義されるとおり、本発明に用いられるカカオ豆または種子は、任意の適切な供給源、たとえば、コートジボアール、ブラジル、ナイジェリア、カメルーン、インドネシア、およびガーナなどから得られた、任意の種類のテオブロマ(Theobroma)カカオ、たとえば、Forastero、Criollo、またはTrinitarioであることができる。しかしながら、好ましくは、これらの豆または種子は未発酵であり、好ましくは天日で乾燥されているか、またはブラジル産など、「lavados」豆と称されるカカオ豆である。これらの「lavados」豆は、未発酵であり、洗浄された豆である。
【0037】
カカオパウダーの色は、色座標によって明示することができる。頻繁に用いられる系は、R.S.Hunterによって開発された。この系では、色座標は、記号L、aおよびb、Cおよびh°によって示される。これらの色座標は、Hunter R.S.、The Measurement of Appearance、John Wiley and Sons、New York、1975により詳しく記載されている。色座標の値は、適切な測定システムで求めることができる。
【0038】
座標は、0(黒色)から100(白色)の間の推定値であり得る。Lが0に近づくほど、カカオは暗色となる。a座標の高い値は、カカオパウダーの色における顕著な赤色成分を示し、b座標の高い値は、多くの黄色の存在を示す。赤色に関するかぎり、a:b比が大きいほど、カカオの色はより赤色となる。Cは、色の飽和度を指し、h°=arctgb/aは、標準カカオパウダーからの色相値である。
【0039】
カカオパウダーのL、a、およびb値は、たとえば、Hunterlab Digital Colour Difference Meter、D25D2A型で求めることができる。
【0040】
米国特許第5,009,917号に記載のとおり、色を測定する方法は、カカオパウダーを2.5重量%の量でゼラチン水溶液に懸濁することを含む。この溶液はゼラチン5.0%、および二酸化チタン0.06%を含有し、二酸化チタンは、類似した色のサンプルがより容易に識別されるレベルに懸濁液のL値を上昇させるために増白剤として用いられる。懸濁液をペトリ皿に入れ、急速に60°F(15.6℃)に冷却して、固体ゼラチン円板状物を形成させる。各サンプルを、周知のHunter L、a、bスケールを用い、比色計を使用して皿の底部から4回測定する。
【0041】
本発明によれば、カカオ由来材料の色は、好ましくは以下のとおり測定される。ポリフェノールを含むカカオ由来材料、好ましくはカカオリカーを、好ましくは、たとえば石油エーテルで脱脂し、次いで洗浄し、遠心分離する。「脱脂」によって、本出願人らは、好ましくは、脂肪5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、たとえば脂肪約0重量%が存在することを意味し、好ましくは粉末が形成されている。室温で乾燥した後、各サンプルをペトリ皿に入れ、周知のHunter L、a、bスケールを用い、比色計を使用して皿の底部から4回測定する。用いた比色計は、Minolta CM−2002分光光度計である。色測定の条件は以下のとおりである。CIELAB III:D65、Obs:10°、3フラッシュ、モード:SCEおよび外観色20℃。
【0042】
本明細書で定義される用語「赤色」は、好ましくは、上に定義したカカオ由来材料が、粉末の形態であるとき(場合により脱脂した後)、上記の方法によって測定されたL値が約39から48、好ましくは約40から45、より好ましくは約40から43、もっとも好ましくは約40から42、a対b比が約1.6超、たとえば約1.8超、より好ましくは約2.0超、たとえば約2.2から3.2、もっとも好ましくは約2.4から3.1、C値が約22超、たとえば約25超、好ましくは約25から34、より好ましくは約28から33、たとえば約30から33、およびh°値が約16から32、好ましくは約17から30、より好ましくは約17から25を有することを意味する。
【0043】
あるいは、用語「赤色」は、好ましくは、L値が約40から57、好ましくは約42から52、より好ましくは約44から48、C値が約18から40、好ましくは約25から35、より好ましくは18または30超、h°値が約7から40、好ましくは10から35、より好ましくは7超、および場合によりa対b比が約1から8、好ましくは3から6、より好ましくは4から5を有することを意味する。
【0044】
本明細書で定義される用語「紫色」は、好ましくは、上に定義したカカオ由来材料が、粉末の形態であるとき(場合により脱脂した後)、上記の方法によって測定されたL値46超、好ましくは約47から57、より好ましくは約48から56、もっとも好ましくは約50から56、たとえば52から56、場合によりa対b比が約2.3未満、たとえば約1.8未満、より好ましくは約1から2.1、たとえば1.5から2.1、C値が約18以下、好ましくは約10から約17、たとえば11から15、およびh°値が約20から約50、好ましくは約25から40、または25から30を有することを意味する。
【0045】
用語「赤色」および「紫色」は、実質的に同じ波長であるこれらの色の他の色合い、たとえばピンク色、ふじ色、すみれ色、およびパルム色などを包含するとみなすこともできる。
【0046】
本発明の一実施形態において、粉末の形態である、場合により脱脂されたカカオ由来材料、たとえば脱脂カカオリカーなどは、L値が約40から45、C値が約28から33、h°値が約17から25、および場合によりa対b比が約2.2から3.1を有する。
【0047】
本発明の他の実施形態において、本明細書でいずれかの態様に定義されたとおり、粉末の形態である、場合により脱脂されたカカオ由来材料、たとえば脱脂カカオリカーなどは、上記の方法によって測定されたL値が約41から42、C値が約32から33、h°値が約17から19、および場合によりa対b比が約2.8から3.1を有する。
【0048】
本発明の一実施形態において、本明細書でいずれかの態様に定義されたとおり、用語「紫色」は、好ましくは、上記の方法によって測定されたL値が約48から56、場合によりa対b比が約1から2.1、たとえば1.5から2.1、C値が約10から約17、たとえば11から15、およびh°値が約25から40、または25から30を意味する。
【0049】
カカオニブ、精製フレークまたは圧搾フレーク、カカオリカー、およびカカオケークに関して用語「赤色」または「紫色」は、好ましくは、脱脂されたとき、上記の指定方法によって測定された、定義されたL値、C値、h°値、およびa対b比を有するカカオリカーから得ることのできる材料、またはカカオリカーを生じることのできる材料を指す。
【0050】
あるいは、本明細書で用いられる用語「赤色」または「紫色」は、好ましくは、たとえば本明細書において任意の実施形態で定義された本発明の方法などによって、酸性化されているか、または酸で処理されているカカオ由来材料を指す。この実施形態において、酸は、好ましくは色の変化を生じる。用語「赤色」または「紫色」は、「酸性化」または「酸による処理」と同義であるか、または同義でない可能性がある。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、チョコレートの外観色は、本発明の方法に従って、場合によりテンパリング後に分光比色計によって測定される。
【0052】
本明細書で定義された酸性化カカオ由来材料は、好ましくは、たとえば上で定義された、赤色または紫色である。
【0053】
酸性化された赤色または紫色のカカオニブは、最初は赤色または紫色でなかったが、好ましくは上に定義されたとおり、赤色または紫色になる十分な時間、酸に供されたカカオニブである。これらのニブは、好ましくは乾燥されている。一実施形態において、ニブの湿分または水分含量は、15重量%未満、たとえば10重量%未満、好ましくは5重量%未満、たとえば1から4重量%であることができる。
【0054】
ポリフェノールは、多様な化合物群である(Ferrieraら、「Diversity of Structure and Function in Oligomeric Flavanoids、Tetrahedron、48:10、1743−1803、1992)。ポリフェノールは様々な植物に広範に生じ、その一部は食物連鎖に入る。一部の例では、ポリフェノールはヒトの食餌に重要な化合物種である。
【0055】
「ポリフェノール」によって、本出願人らは、分子当たり2つ以上のフェノール基が存在することを特徴とする、植物に見出される周知の化学物質群を意味する。ポリフェノールは多くの場合、単量体、二量体、三量体、および他のオリゴマーとして存在する。フラボノイドはポリフェノールの部分集合である。カカオは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、プロシアニジン、プロデルフィニジン、およびプロペラルゴニジンなどのポリフェノールを含有する。好ましいポリフェノールには、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンA2、B1からB5、およびC−1が含まれる。分子量3000未満を有するポリフェノールが好ましい。
【0056】
カカオは、フラバノール(フラバン−3−オール)という名称のフラボノイドの特定の下位群に富むと説明されている。フラバノールは、単量体エピカテキンおよびカテキンとして、またはプロシアニジンと称されるエピカテキンおよび/またはカテキンのオリゴマーとして存在する。エピカテキン、カテキン、およびプロシアニジン、たとえば、プロシアニジンB1、B2、およびB3は、カカオにおいて顕著なポリフェノール種であり、本発明の任意の実施形態において、用語「ポリフェノール」は、これらの化合物を含むまたは意味することが意図される。
【0057】
エピカテキン当量として測定されるポリフェノールの量は、フォーリン・チオカルト試薬を用いて求めることができる(Singleton VL、Orthofer R、Lamuela−Raventos RM、Analysis of total phenols and other oxidation substrates and antioxidants by means of Folin−Ciocalteu reagent、Meth Enzymol 1999;99:152−178)。ポリフェノールの量は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて求めることもできる。
【0058】
ポリフェノールの量は、別段の記述のないかぎり、本発明ではエピカテキン当量mg/gとして示される。
【0059】
本発明の一実施形態において、本発明の好ましくは赤色または紫色の酸性化カカオニブは、好ましくは、ポッドから直接得られた未処理、未発酵親カカオ種子またはカカオ豆に天然に存在するポリフェノールを、ニブの総重量に対して少なくとも3重量%、好ましくは約5重量%含む。エピカテキン当量としてフォーリン・チオカルト法で測定されたポリフェノールの量は、0から15重量%、好ましくは2から10重量%であることができる。カカオニブに残存するポリフェノールの量は、酸性化の条件を制御することにより多様であることができ、慣例的な技法を用いて測定できる。
【0060】
本発明の赤色または紫色のカカオニブは、好ましくは、ニブ1g当たりポリフェノール約50mgを含む。
【0061】
カカオニブ以外の酸性化カカオ由来材料は、好ましくは、カカオニブに関して上に記載したポリフェノールの量を含む(重量%または材料のグラム)。
【0062】
本発明の酸性化カカオニブは、好ましくは、発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有するカカオ種子またはカカオ豆由来の酸性化カカオニブである。比較用の発酵カカオ豆は、親カカオ豆または種子であることができる。高いポリフェノール含量を有するカカオニブは、好ましくは、発酵中または未発酵カカオ豆または種子である。未発酵および発酵中カカオ豆または種子は、発酵豆より高いポリフェノール含量を有する。好ましくは、カカオ豆または種子は未発酵である。
【0063】
本発明の一実施形態において、未発酵カカオ豆または種子は、カカオポッドから直接得られ、果肉からの分離以外の加工に供されていない豆または種子である。
【0064】
本発明の他の実施形態において、未発酵カカオ豆または種子は、脱ポッドされており、たとえば水による洗浄、および場合により天日での乾燥以外の加工に供されていないカカオ豆または種子である。
【0065】
発酵されたカカオ豆または種子は、それらの色に基づいて、未発酵カカオ豆と識別できる。たとえば、完全に発酵したカカオ豆は、主として褐色である。未発酵カカオ豆または種子は、主としてスレート色であり、表面に青色、紫色、またはすみれ色部分を有する可能性がある。これらの豆から得られるカカオ材料は着色されない、すなわちこれらの豆から得られる生成物は本発明の方法の不在下で着色されないことが当業者に理解される。
【0066】
発酵中の豆は、3日間まで発酵された豆である。これらの豆は通常、紫色、青色、および/またはすみれ色であり、スレート色の可能性もあるが、主としてではない。これらの豆から得られるカカオ材料は着色されない、すなわちこれらの豆から得られる生成物は本発明の方法の不在下で着色されないことが、当業者に理解される。
【0067】
「発酵豆」によって、3日間超、たとえば3から7日間発酵された豆を意味することが意図される。用語「発酵豆」には、過発酵された豆、すなわち7日間超、たとえば15日間まで発酵された豆も含まれる。
【0068】
本発明によって生成される他のカカオ由来材料は、好ましくは、上記のカカオ豆または種子から得られる。したがって、たとえば、予め酸で処理されていない、未発酵または発酵中のカカオ豆または種子から得られたカカオパウダーまたはカカオリカー(すなわち、未発酵または発酵中のカカオパウダーまたはカカオリカー)を、本明細書に記載のとおり酸で処理することができる。好ましくは、赤色または紫色のカカオリカーが生成される。その後、酸処理カカオリカーを、チョコレート、特に赤色または紫色チョコレートの生成に用いることができる。
【0069】
本発明の酸性化ニブは、好ましくはさらに加工されて、赤色または紫色のカカオ精製フレークまたは圧搾フレークが生成される。精製フレークまたは圧搾フレークは、実質的にフレークのポリフェノール含量に影響を及ぼさない任意の手段を用いて、ニブから生成することができる。たとえばピンミルでみられるような、フレーク生成時の加熱を回避することがたとえば好ましい。本発明のフレークは、たとえば、3ロール精製機、もしくは他の同等の手段、または圧搾機、たとえば当分野で周知の圧搾プレス機などを用いて生成することができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、赤色または紫色のカカオリカーは、好ましくは、本発明の酸性化カカオニブから、または本明細書に定義されたとおりカカオリカーを酸で直接処理することによって得られる。カカオリカーは典型的に、チョコレートの基本成分として用いることのできる粘性のペースト状物質である。好ましくは、赤色または紫色のカカオリカーは、たとえば、トリプルストーンミル、または3、4、もしくは5ロール精製機を用い、低温で酸性化カカオニブを粉砕することによって得られる。精製機またはミルで設定された温度として測定される、ミルまたは精製機の温度は、好ましくは10から60℃、より好ましくは20から40℃である。あるいは、赤色または紫色のカカオリカーは、本発明の精製フレークまたは圧搾フレークを徐々に溶融することによって得ることができる。たとえば、精製フレークまたは圧搾フレークを、温度40から60℃、好ましくは42から50℃で溶融することができる。
【0071】
あるいは、発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有する豆または種子(未発酵または発酵中のカカオ豆または種子)から得られたカカオリカー、またはチョコレートなどのカカオリカーを含む組成物は、本明細書に記載のとおり酸性化するか、または酸で処理することができる。好ましい実施形態において、カカオリカーは、コンチェで直接酸性化することができる。一実施形態において、カカオリカーは、好ましくは本明細書に定義された、赤色または紫色である。
【0072】
赤色または紫色のカカオリカーは、抽出および/または加圧、または圧搾によってさらに加工して、カカオバターおよびカカオパウダーを分離することができる。したがって、赤色または紫色のカカオケークおよびカカオパウダーを、本発明の酸性化カカオニブから得ることができる。好ましくは、加圧は、温度約70から100℃、たとえば約80℃で行われる。加圧または圧搾によって得られた赤色または紫色のカカオケークまたは圧搾フレークを、既知の手段によって粉砕して、カカオパウダーを生成することができる。
【0073】
脱脂カカオパウダーは、超臨界流体による脱脂処理によって調製することができる。超臨界流体は、毒性残留物を残さない任意の溶媒を含むことができる。ヘキサンおよびプロパンなど、CO以外の溶媒で脱脂されたカカオパウダーを用いることができるが、COが好ましい。COは、大気、ならびに体組織および体液に存在する物質である。したがって、食品加工に理想的である。
【0074】
本発明の赤色または紫色精製フレーク、赤色または紫色のカカオリカー、および赤色または紫色のカカオパウダーは酸性化されている、すなわち酸性化カカオニブまたは他の適切なカカオ由来材料から得られるか、または誘導される。
【0075】
本発明の赤色または紫色のカカオパウダーは、好ましくは、2から8の範囲内のpHを有する。より好ましくは、カカオパウダーのpHは、7未満、たとえば2から5などである。したがって、本発明の赤色または紫色のカカオパウダーは、ヨーグルトに見出されるような酸性環境に適合性であることができる。
【0076】
好ましくは赤色または紫色である、本発明によるカカオ精製もしくは圧搾フレーク、および/またはカカオリカー、および/またはカカオケーク、および/またはカカオパウダーは、従来のフレーク、リカー、ケーク、またはパウダーの代わりに、および/またはそれらに加えて、菓子製品、ベーカリー製品、および乳製品などのいずれか1つの食品に混入することができる。食品、菓子製品、ベーカリー製品、または乳製品に混入される本発明によるフレーク、リカー、ケーク、またはカカオパウダーの量は、たとえば、製品の総重量に対して1重量%から50重量%、たとえば5から30重量%、より好ましくは10から20重量%であることができる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態において、用いられるフレーク、リカー、ケーク、またはカカオパウダーの量は、製品に赤色または紫色を付与するのに十分な量である。
【0078】
本発明の一実施形態において、食品は、食材(foodstuff)として用いるために包装されている、またはラベルを付されている液体、たとえば飲料、または固体である。食品は塩味(savoury)であることができ、すなわち肉、および/または魚、および/または野菜、および/または卵、および/または乳製品を含むことができ、および/または甘くてもよく、すなわち砂糖、および/またはバター、および/または果物を含むことができる。
【0079】
本発明の一実施形態において、菓子製品は、調理キャンディ、チョコレート、チョコレート様製品、脂肪連続フィリング、および水性フィリングからなる群から選択される。チョコレートまたはチョコレート様製品は、好ましくは赤色または紫色である。
【0080】
チョコレート様製品は、チョコレート中のカカオバターの少なくとも一部が、他の脂肪、たとえばバター脂、またはカカオバター代用脂(CBE)などの植物性脂肪で置き換えられている材料である。
【0081】
チョコレートまたはチョコレート様製品を生成するための好ましい方法は、
(i)好ましくは赤色または紫色である、本発明による精製フレーク、または本発明によるカカオリカーを、砂糖または砂糖代用物と合わせるステップ、および
(ii)カカオバターまたはカカオバター代替物を添加して、チョコレートまたはチョコレート様製品を生成するステップを含む。
【0082】
カカオバター代替物の例には、カカオバター代用脂、バター脂もしくはその留分、パーム油またはその留分、ココナツまたはその留分、パーム核油またはその留分、液体植物油、上記脂肪またはその留分もしくは硬化成分のエステル交換混合物、またはそれらの混合物が含まれる。
【0083】
チョコレートまたはチョコレート様製品は、好ましくは赤色または紫色である。
【0084】
本方法に精製フレークまたは圧搾フレークが用いられるとき、ペーストを得るために、たとえば温度40から50℃、より好ましくは42から48℃で、精製フレークまたは圧搾フレークを徐々に溶融するのが好ましい。必要であれば、カカオリカーも加熱して、ペーストを生成することができる。ペースト/カカオリカーは、脂肪性または脱脂であることができる。ペースト/カカオリカーを、砂糖または砂糖代用物と合わせる。砂糖代用物の適切な例には、甘味料、フルクトオリゴ糖、およびポリオール、たとえばフルクトース、ラクトース、およびデキストロースなどが含まれる。ペースト/カカオリカーと砂糖または砂糖代用物との重量比は、好ましくは3:1から1:3、より好ましくは2:1から1:2、たとえば約1:1である。
【0085】
ペースト/カカオリカーと砂糖または砂糖代用物との混合物を、好ましくはカカオバターまたは代替物と合わせた後、当分野で知られている任意の技法を用いて精製することができる。精製条件は、任意の赤色または紫色が維持されるように選択するのが好ましい。
【0086】
カカオバターは任意の供給源から得ることができるが、好ましくは本発明による赤色または紫色のカカオリカーから得られたカカオバターであり、それを混合物に添加して、液化し、チョコレートまたはチョコレート様製品の総重量に対して、たとえば60重量%未満、好ましくは30から40重量%の総脂肪含量を得ることができる。
【0087】
場合により香味料をチョコレートまたはチョコレート様製品に添加することができる。適切な香味料には、天然バニラ、または以下に示すものが含まれる。
【0088】
チョコレートを生成する方法は、好ましくは、さらにコンチング、テンパリング、および場合により成形するステップを含む。チョコレートは当分野で周知の方法によって生成することができる。
【0089】
適切な乳製品には、たとえばミルクが含まれる。ミルクは、好ましくは雌ウシから得られる。あるいは、ミルクは豆乳であってもよい。さらに、ミルクは、低脂肪、スキムミルク、または粉ミルクであることができる。他の乳製品には、アイスクリーム、たとえば低脂肪および低糖アイスクリーム、クリーム、ヨーグルト、およびデザートが含まれる。ベーカリー製品には、たとえば、パン、ケーキ、およびビスケットが含まれる。
【0090】
本発明の好ましい実施形態において、菓子製品は、脂肪連続フィリングを含む。このフィリングは典型的に、脂肪相に分散された固体粒子(好ましくは微粒子の形態)を含む。フィリングは、低脂肪および/または低スクロースフィリングであることができる。
【0091】
フィリングは、1種以上のカカオベース材料を含む。カカオベース材料は、本発明に従って生成されたカカオパウダー(好ましくは脱脂カカオパウダー)、チョコレートパウダー、カカオマス、カカオリカー、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。特定の実施形態において、フィリングは、5から40重量%のカカオパウダー(好ましくは脱脂カカオパウダー)、より好ましくは10から30重量%、または12から23重量%、もっとも好ましくは15から20重量%のカカオパウダー(好ましくは脱脂カカオパウダー)を含む。
【0092】
フィリングは、菓子製品の30から85重量%、好ましくは菓子製品の45から80重量%、たとえば55から75重量%を占めることができる。
【0093】
チョコレートなどの菓子製品は、1種以上の香味料を場合により含む。適切な香味料には、これに限定されるものではないが、果実、ナッツ、およびバニラ香味料、果実粉および果実片、ナッツ、バニラ、ハーブ、ハーブ香味料、カラメルおよびカラメル香味料、香辛料、ならびにバラなどの花の抽出物が含まれる。当業者は、本発明に用いるために選択できる多数の香味料に精通している。
【0094】
本発明による赤色または紫色のカカオパウダーはまた、たとえば食品、菓子製品、ベーキング製品、または乳製品などに、天然着色剤または香味剤として用い、それによって人工着色料の必要性を低減することができる。パウダーは、家庭内または工業用キッチンにおいて、着色剤または香味剤として用いることができる。パウダーは、食品、菓子製品、ベーキング製品、もしくは乳製品に振りかけることができ、または飲料中に用いることができる。パウダーは、たとえば、多数回または単回使用のために、小袋に包装することができる。
【0095】
菓子製品は、それぞれ任意の適切な形態をとることができる。たとえば、それぞれ(個別に)ブロックまたはバーとして包装し、販売することができる。
【0096】
菓子製品は、任意の適切な形態をとることができる。好ましい実施形態において、菓子製品はチョコレートである。菓子製品は、好ましくは1口サイズであり、一般に2から40g、たとえば3から20gの重量である。菓子製品は典型的に、一般に複数の菓子製品を含む箱に包装され、販売される。
【0097】
本発明の菓子製品は、ビスケット、ナッツ(全体もしくは小片)、クリスピー、スポンジ、ウエハース、または果実、たとえばチェリー、ショウガ、レーズン、もしくは他の乾燥果実などの1種以上の食品添加物を含むことができる。これらは典型的に製品に埋め込まれる。場合により、菓子製品には、添加物(上記)、またはカカオパウダーおよび/もしくは砂糖などの香味剤が振りかけられる。
【0098】
本発明は、赤色または紫色のカカオ由来材料を生成する方法であって、
(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有するカカオ豆または種子から得られたカカオニブを酸で処理して、赤色または紫色ニブを形成するステップ、
(ii)場合によりニブを圧搾して、フレークを形成するステップ、および/または
(iii)場合によりフレークを押出すステップ、および/または
(iv)場合によりフレークを処理して、赤色または紫色のカカオパウダーを生成するステップを含む方法を提供する。
【0099】
ニブは、ニブの湿分または水分含量が好ましくは15重量%未満、たとえば10重量%未満、好ましくは5重量%未満、たとえば1から4重量%であるように乾燥することができる。処理されたニブは、好ましくは、湿分レベルおよび場合により微生物含量が低減されるように、押出しによって乾燥される。押出し機の温度は、適切には50から200℃、好ましくは70から150℃、たとえば90から130℃であることができる。押出し機内部の温度は、これらの範囲内で変化してもよい。そのような条件によって、着色されており、許容できる微生物数およびポリフェノール含量を有する乾燥フレークを提供できることが見出された。
【0100】
ステップ(i)の処理は、たとえば、ニブを酸/酸性溶液に浸漬(soakingもしくはimmersion)すること、および/またはニブに酸/酸性溶液を噴霧すること、および/またはニブを酸/酸性溶液で洗浄することを含むことができる。これらのニブを酸/酸性溶液に添加することができ、または逆も同様である。
【0101】
上記の方法によって生成された赤色または紫色のカカオニブは、好ましくは、ポッドから直接得られた未処理、未発酵親カカオ種子またはカカオ豆に天然に存在するポリフェノールを、ニブの総重量に対して少なくとも3重量%、好ましくは約5重量%含む。エピカテキン当量としてフォーリン・チオカルト法で測定されるポリフェノールの量は、0から15重量%、好ましくは2から10重量%であることができる。カカオニブに残存するポリフェノールの量は、酸性化の条件を制御することにより多様であることができ、慣例的な技法を用いて測定できる。酸性度は、慣例的な技法を用いて、たとえばpHメータで測定できる。
【0102】
本発明の方法に用いられるか、または本発明の方法によって得ることのできるカカオニブは、発酵カカオ豆からは得られず、それらはすでに赤色または紫色でもない。
【0103】
本発明の方法に用いられるか、または本発明の方法によって得ることのできるカカオニブまたは他のカカオ由来材料は、酸処理の前に焙煎またはアルカリ処理されていない。好ましくは、赤色または紫色のカカオニブを得るために用いられるカカオニブは、酸による処理前、水による洗浄、乾燥、破細、または限定的な発酵以外、未処理である。特に本発明の方法は、すなわち酸性化の前および後に、好ましくはアルカリ化または焙煎のいずれのステップも含まない。
【0104】
カカオニブは、発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有するカカオ豆または種子から得られる。比較用の発酵カカオ豆は、親カカオ豆または種子であることができる。高いポリフェノール含量を有するカカオニブは、好ましくは、発酵中および/または未発酵カカオ豆から得られる。未発酵および発酵中のカカオ豆、およびそれらのニブは、発酵豆およびそれらのニブより高いポリフェノール含量を有し、上に説明したとおり発酵豆と識別できる。
【0105】
一実施形態において、本発明は、赤色または紫色のカカオ由来材料を生成する方法であって、
(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有する豆または種子から得られたカカオ由来材料を酸で処理して、場合により上記のポリフェノール含量を有する、赤色または紫色のカカオ由来材料を形成するステップ、および
(ii)場合により材料を乾燥するステップを含む方法を提供する。
【0106】
生成されるカカオ由来材料は、好ましくは、チョコレートもしくはチョコレート様製品、またはそれらの前駆物質であり、処理材料は、好ましくは、好ましくは未発酵または発酵中であり、場合により他の成分を含むコンチェで場合により直接酸性化されたカカオリカー、またはカカオリカーを含む組成物である。カカオリカーは、acticoa(商標)カカオリカーであることができる。用語「コンチェ(conchまたはconche)」は、好ましくは、カカオリカーを含む組成物を指す。コンチェは、典型的にチョコレートの製造に用いられるものなど、他の成分も含むことができる。好ましくは、コンチェは、すでに酸で処理されたか、処理されているか、または後に処理され、あるいはコンチングの工程に供されたか、供されているか、後に供される。
【0107】
本発明の一実施形態において、コンチング工程、またはコンチングを含む工程は、連続的またはバッチ式であり、好ましくは連続的である。
【0108】
本発明の好ましい実施形態において、カカオリカーまたはコンチェは、コンチング中に酸で処理される。
【0109】
処理カカオ由来材料中のポリフェノールの量は、カカオニブに関して上に記載したとおりであることができる。酸処理は、カカオニブと同じであってよい。
【0110】
用語「カカオ由来材料」は上に定義されており、カカオニブ、精製フレークまたは圧搾フレーク、カカオリカー、カカオケーク、カカオパウダー、およびチョコレートを含む。明らかに、精製フレークまたは圧搾フレーク、カカオリカー、およびチョコレートが生成される場合、特定の製品を得るために、上に定義されたステップ以外の追加ステップが含まれる。
【0111】
本方法の一実施形態において、カカオ由来材料は、精製フレークまたは圧搾フレークであり、この方法は、好ましくはさらに
(iii)好ましくは精製フレークまたは圧搾フレークを得るために上に定義したとおり、ニブを破壊してフレークを形成するステップを含む。
【0112】
本方法の他の実施形態において、カカオ由来材料は、カカオリカーであり、この方法は、好ましくはさらに
(iv)好ましくはカカオリカーを得るために上に定義したとおり、ニブを処理してカカオリカーを形成するステップを含む。
【0113】
本方法の一実施形態において、カカオ由来材料は、赤色または紫色チョコレートまたはチョコレート様材料であり、この方法は、好ましくはさらに
(iv)好ましくはカカオリカーを得るために上に定義したとおり、ニブを処理してカカオリカーを形成するステップ、および
(v)カカオリカーをカカオバターまたは代替脂肪と合わせて、赤色または紫色チョコレート製品またはチョコレート様製品を形成するステップを含む。
【0114】
さらに、赤色または紫色チョコレートを生成する方法は、コンチング、テンパリング、および成形ステップを含むことができる。
【0115】
上記のとおり、一実施形態において、本発明の方法は、好ましくは直接またはコンチェに存在するとき、予め酸で処理されていないカカオリカーを酸性化、または酸で処理することを含む。カカオリカーは、好ましくは未発酵または発酵中である。一実施形態において、カカオリカーは、acticoa(商標)カカオリカーである。
【0116】
好ましい実施形態において、カカオリカー、またはチョコレートもしくはチョコレート様製品などのカカオリカーを含む組成物は、好ましくは精製ステップ後、および好ましくはコンチング工程前、工程中、または工程後、たとえばコンチング中に、酸で処理される。酸は、コンチング工程の任意の段階で添加することができる。酸による処理は、本明細書のいずれかの実施形態に定義されたとおりであることができる。好ましくは、酸はクエン酸であり、場合により粉末または結晶などのクエン酸の形態である。
【0117】
本発明の一実施形態において、コンチング時間は、好ましくは1から5時間、たとえば2から4時間である。コンチングの温度は、40から80℃、たとえば50から70℃で行うことができる。クエン酸などの酸は、処理される組成物の重量に対して0.1から2重量%の量で添加できる。処理される組成物は、カカオリカーに加えて、チョコレートを生成するために典型的に用いられる他の成分を含むことができる。場合により水を、組成物の重量に対して0.1から5重量%、好ましくは1から2重量%の量で添加することができる。
【0118】
本方法は、赤色または紫色チョコレートを生成することができる。脱脂することなく、好ましくは本方法に従って生成されたチョコレートは、好ましくは、L値が約20から25、C値が約10から20、たとえば12から18、h°値が約1未満、好ましくは約0.5から0.8、および場合によりa対b比0.5から2.0、たとえば0.9から1.6を含む。
【0119】
好ましくは本発明の方法に従って生成された赤色または紫色のカカオニブは、エピカテキン当量として測定されたポリフェノール少なくとも20mg/g、好ましくはポリフェノール30mg/g、もっとも好ましくはポリフェノール40から60mg/gを含むことができる。
【0120】
カカオニブ、またはカカオパウダーおよびカカオリカーなどの他のカカオ由来材料の処理に用いるための酸は、赤色または紫色のカカオニブまたは他の処理カカオ由来材料を生成するのに適したpKを有する任意の酸であることができる。酸は、たとえば塩酸、リン酸、もしくは硫酸などの鉱酸であることができ、またはたとえば、1種以上のクエン酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、および酢酸などの有機酸であることができる。本発明の好ましい実施形態において、酸は、食品等級の許容できる酸である。場合により、酸は、例えば粉末などの固体の形態で、カカオニブ、カカオパウダー、またはカカオリカーなどのカカオ由来材料に添加することができる。粉末の適切な例は、たとえばクエン酸または酒石酸であり得る。
【0121】
本方法に用いられる酸は、好ましくは鉱酸、より好ましくは食品等級の鉱酸、たとえばリン酸などである。
【0122】
本発明の一実施形態において、酸は、1種以上のリン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、または酢酸を含む。好ましくは、酸はリン酸である。
【0123】
典型的に本発明の方法において、酸は、たとえば酸と水を合わせることによって得られた酸水溶液の形態であり、これがカカオニブの処理に用いられる。酸/酸溶液は、好ましくはエタノールなどのアルコールを含まない。酸/酸溶液は、好ましくは溶液の重量に対して、酸0.5重量%から20重量%、より好ましくは酸1から10重量%、もっとも好ましくは2から5重量%を含む。
【0124】
本発明の好ましい実施形態において、カカオニブは、酸性溶液に浸漬されるか、または酸性溶液中で処理される。ニブは、好ましくは水溶液中、好ましくはpH6未満、より好ましくはpH約1から4、たとえば2から3で処理される。ニブのすべてが溶液に沈んでいなくてもよいが、実質的にすべてが沈んでいるのが好ましい(たとえば、70重量%、80重量%、または90重量%超など)。ニブは、たとえば磁気攪拌子またはロッドによって、攪拌しながら、酸/酸性溶液で処理することができる。
【0125】
本発明の一実施形態において、カカオニブは、実質的に未発酵である、Lavados豆などのカカオ豆または種子から得られる。これらの豆は、潜在的着色能力を低減させる可能性があるため、好ましくは焙煎されない。酸処理の好ましいpH範囲は2から4であり、特に好ましい酸はクエン酸である。処理されたニブは、好ましくは、湿分レベルおよび微生物含量が低減されるように、押出しによって乾燥する。押出し機の温度は、適切には50から200℃、好ましくは70から150℃、たとえば90から130℃であることができる。そのような条件によって、着色されており、本明細書に定義されたポリフェノールレベルを含有し、許容できる微生物数を有する乾燥フレークを提供できることが見出された。
【0126】
本発明の一実施形態において、赤色カカオ由来材料(好ましくはC値が約18超を含む)の生成は、pH4未満、たとえば2から3.5、より好ましくは2から3を用いて達成することができる。
【0127】
本発明の他の実施形態において、紫色のカカオ由来材料(好ましくはC値が約18未満を含む)の生成は、pH4超、たとえば4.2から6.6、より好ましくは4.5から6.0、具体的には4.5から5.6を用いて達成することができる。
【0128】
水溶液などの水の量は、好ましくは、カカオニブ、カカオパウダー、またはカカオリカーなどのカカオ由来材料の重量に対して約1から1000重量%、より好ましくは約25から500重量%、具体的には約100から300重量%である。
【0129】
本発明の一実施形態において、ニブまたは他のカカオ由来材料は、約24時間まで、好ましくは12時間までの期間、酸で処理される。ニブは、約2から8時間、好ましくは約3から6時間の期間、酸で処理することができる。約4から5時間の期間が特に好ましい。しかしながら、浸漬時間は、数分間、たとえば少なくとも5分であることができる。他の好ましい反応時間は、20から60分である。
【0130】
理論に縛られることを望むものではないが、酸とカカオニブのポリフェノールとの反応によって赤色化または紫色化が生じると考えられる。この反応は即時的であり得るが、反応混合物をより長い時間放置すると、赤色が最終的にあずき色/えんじ色まで濃くなるほど、ニブの色の変化が生じ得る。
【0131】
ニブは、好ましくは、温度約50℃以下、もっとも好ましくは温度5から30℃で処理される。
【0132】
本発明の好ましい実施形態において、カカオニブまたは他のカカオ由来材料は、温度5から30℃で、約3から6時間の期間、好ましくはpH1から3を有する酸性水溶液で処理される。このように反応条件を制御することによって、未発酵または発酵中カカオ豆から得られたニブから赤色カカオニブが生成され、さらにカカオニブに存在するポリフェノールのレベルを実質的に維持するように操作できることが意外にも見出された。
【0133】
本方法の他の実施形態において、(ii)の赤色または紫色ニブの乾燥は、ニブのポリフェノールのレベルが実質的に保持されるような(たとえば、80重量%超、たとえば90重量%超残存)温度で行われる。乾燥は、好ましくは、大気温度約115℃未満、より好ましくは温度40から100℃、たとえば60から80℃で行われる。乾燥は、Micronizing Company、UKから入手可能なものなど赤外線ヒーターを用いて、または乾燥および微生物含量を低減するための押出し装置を用いて行うことができる。
【0134】
場合により、ニブは、好ましくは約105℃で約5分間、トルネード式乾燥器で乾燥することができる。
【0135】
本発明の好ましい実施形態において、カカオニブは焙煎されない。用語「焙煎」は当業者に理解される。
【0136】
本発明の実施形態において、この方法は非酵素的方法であり、すなわちこの方法は、酵素の添加を含まない。
【0137】
本発明の好ましい実施形態において、ニブの酸による処理は、ニブが圧搾プレス機に存在するときに行われる。ニブの温度は、好ましくは40℃未満である。圧搾プレス機は、原材料からの油の抽出に関して周知である。好ましくは、本発明の方法はニブを酸で処理することを含み、ニブは圧搾プレス機に存在する。この工程は、連続またはバッチ工程であることができる。好ましくは、連続工程である。ニブは、好ましくは赤色または紫色である。
【0138】
ニブは、フレークが形成される前など、圧搾装置の任意の場所で、本明細書に定義されたとおり酸で処理することができる。たとえば、ニブは、加圧前、好ましくはワームプレスに挿入する前に、混合ヒーターなどの加熱区画で酸性化することができる。クエン酸などの酸の量は、ニブの重量に対して好ましくは約1から20重量%、より好ましくは1.5から10重量%である。水の量は、ニブの重量に対して好ましくは約1から20重量%、より好ましくは約2から10重量%である。好ましい実施形態において、ニブは、1から10%、たとえば3から7%のクエン酸などの酸の水溶液で処理される。ニブは、24時間まで、より好ましくは1から12時間、たとえば2から4時間、酸と反応させることができる。
【0139】
本発明の好ましい実施形態において、酸は、酸の濃度2から20%の水溶液である。この溶液のpHは、赤色フレークの場合(C値が約18超)、5未満、たとえば4未満、好ましくは3から4、紫色フレークの場合(C値が約18未満)、4超であることができる。
【0140】
一実施形態において、場合により上記のとおり酸で処理されたニブは、ワームプレスなどのプレス機に供給することができる。ヒーター/供給スクリュー流量は、好ましくは30から200kgニブ/時、より好ましくは40から110kgニブ/時である。加圧後、ニブは圧搾フレークおよびカカオバターに分離することができる。圧搾機の圧力は、0から100バール、より好ましくは約20から80バール、たとえば約75バールであることができる。プレス内の温度は、好ましくはフレークの溶融範囲未満であり、好ましくは約40℃以下である。プレスの速度は、好ましくは10から100kgフレーク/時、より好ましくは20から80kgフレーク/時である。
【0141】
場合により赤色または紫色である圧搾フレークは、脂肪含量20重量%未満、好ましくは18重量%未満、たとえば10重量%未満を有することができる。圧搾フレークの湿分含量は、15重量%未満、11重量%未満など、たとえば5から11重量%であることができる。
【0142】
得られたカカオバターは、たとえば濾過および/または遠心分離および/または沈澱によって、さらに加工することができる。
【0143】
他の態様において、本発明は、本方法によって生成された、着色された、好ましくは赤色または紫色のフレークに関する。好ましい実施形態において、フレークは、好ましくは押出され、場合により滅菌されている。「滅菌」によって、本出願人らは、押出し後のフレークの微生物含量が、押出し前の微生物含量より少ないことを意味する。微生物含量は、押出し後、90%超、95%超など、たとえば99.99%まで低減されていてよい。フレークの湿分含量も、押出し後、90%超、95%超など、たとえば99.99%まで低減されていてよい。
【0144】
好ましくは圧搾機から、本発明に従って得られたフレークは、さらに加工することもできる。たとえば、フレークは、好ましくは上に定義されたようなニブリングおよび/または押出しに供される。その後、押出しフレークを、粉砕してパウダーを形成し、場合によりふるい分けすることによって、赤色または紫色のカカオパウダーに形成することができる。パウダーは、包装および/または積上げて(palettize)、包装された赤色または紫色のカカオパウダーを形成することができる。
【0145】
一実施形態において、押出し機の流量は、100から300kgフレーク(場合によりニブリング)/時、より好ましくは150から250kg/時である。押出し機は、水10から20%、たとえば15%を含有することができる。温度は押出し機内で多様であってよい。たとえば、初期段階において、温度は100℃未満など、100℃超であってよい1つ以上の後期段階より低くてもよく、すなわち温度は上昇することができる。
【0146】
本発明の上記実施形態のいずれかに記載されたニブの乾燥は、好ましくは少なくとも2時間の期間、より好ましくは少なくとも4時間、もっとも好ましくは約12時間の期間行われる。押出しの場合、乾燥は数分間、たとえば5から20分間のみを要することができる。
【0147】
好ましくは、本発明の方法に用いられるカカオニブは、ブラジルで加工され、「lavados」豆として知られているものなど、洗浄未発酵カカオ種子から得られる。
【0148】
上記実施形態のいずれかに記載された本発明の方法はさらに、カカオニブを生成するために、酸処理の前に、カカオ豆または種子を予備乾燥および/または加熱するステップを含むことができる。具体的には、天然ポリフェノールの損傷を回避するために、予備乾燥および/または加熱の条件を制御する。加熱および/または予備乾燥は、殻の吹き分け(winnowing)、すなわちカカオ豆からの殻の除去を助ける可能性がある。
【0149】
本発明の一実施形態において、酸または酸性溶液による処理前に、機械的手段によるカカオニブの破細を含む追加ステップが行われる。たとえば、ニブは、反応および/または反応後のニブの乾燥を促進するために、3ロール精製機を用いて粉砕することができる。精製機の冷却ジャケットの温度は、好ましくは10から20℃に設定される。
【0150】
明らかに先に公開された文献の本明細書における列挙または議論は、その文献が最新技術の一部であるか、または共通の一般的知識であることを認めるものとして必ずしも解釈されるべきではない。
【0151】
以下の非限定的な実施例は本発明を例示するものであり、いかなる形でも本発明の範囲を限定しない。実施例および本明細書を通じて、すべてのパーセント、部、および比は、別段の指示のないかぎり重量による。任意の成分を含む、本発明の生成物に存在する種々の成分の様々なパーセント量は、合計100%となることが理解される。
【実施例1】
【0152】
ブラジル産の未発酵カカオ種子を脱ポッド後に洗浄し、乾燥した。その後、脱ポッド豆を予備乾燥/加熱(豆のポリフェノール天然貯留への損傷を回避するような条件)によって処理して、殻の除去を容易にした。
【0153】
殻を吹き分けた後、ニブ100gを3重量%リン酸水溶液(水200gおよびリン酸6ml)に浸漬した。この溶液にエタノールは使用しなかった。
【0154】
ニブは周囲温度で24時間までの期間、酸性溶液に浸漬した。ニブの色は浸漬程度に伴って変化した。24時間まで、ニブはラズベリーレッドに相当する赤味がかった色を有する。反応を続けた場合、色はえんじ色/あずき色/赤紫色となり得る。
【0155】
次いで、ニブをふるい分けによって浸漬溶液から分離し、温度100から110℃で数時間、加熱棚で乾燥した。乾燥ステップ中、ニブの色は赤味がかった色からあずき色に変化した。
【0156】
次いで、ニブを3ロール精製機(ピンミルでみられるような加熱を回避するため)で破壊した。最終結果は、リカーではなく、精製フレークであった。これらの精製フレークは、以下に示すとおり、チョコレートの製造に用いることができる。
【実施例2】
【0157】
実施例1に従って生成した精製フレークを45℃で徐々に溶融して、ほぼ液体のペースト、すなわち赤色カカオリカーを得た。
【0158】
カカオリカーを重量比50:50で砂糖と混合した。この混合物を精製し、カカオバターを添加することによって液化して、総脂肪含量を35%に増大し、赤色チョコレートを生成した。
【0159】
次いで、苦味を隠すために、天然バニラをチョコレートに添加した。
【0160】
味覚試験の結果:非常にフルーティで好ましい。
【実施例3】
【0161】
チョコレートまたはカカオサンプル中の総ポリフェノールをエピカテキン当量として測定
フォーリン・チオカルト試薬は、リンタングステン酸(HPW1340)およびリンモリブデン酸(HPmo1240)の混合物である。ポリフェノールを酸化還元によって還元して、タングステン(W23)およびモリブデン(MoO23)の青色酸化物の混合物を得る。着色の強度を760nmで測定する。
【0162】
装置
フラスコ50mL
遠心分離管
パイレックス管φ18mm
自動ピペット1000μLおよび5000μL
ビーカー50mLおよび100mL
水浴1(50℃)
分光光度計1(760nm)
ふるい200μm
【0163】
試薬
フォーリン・チオカルト(10−1に希釈)
炭酸ナトリウム溶液75g/L
エピカテキン(sigma標準品:E−1753)
【0164】
プロトコル
チョコレートまたはカカオサンプル5gを秤量する。脂肪を石油エーテルで遠心分離によって抽出する。脱脂部分を200μmのふるいでふるい分ける。脱脂抽出物50mgを50mlフラスコに入れ、蒸留水で希釈して、溶液Aを得る。超音波エネルギーを用いて2分間、抽出物を溶解する。
【0165】
溶液A0.5mlをパイレックス管に入れ、蒸留水4.5mlを添加して、溶液Bを得る。溶液B0.5mlをパイレックス管に入れ、フォーリン・チオカルト溶液2.5mlを添加して、溶液Cを得る。3分後、炭酸ナトリウム溶液2mlを溶液Cに添加して、溶液Dを得る。次いで、溶液Dを水浴中、50℃で5分間加熱する。5分後、管を氷浴に入れて、反応を停止する。溶液の吸光度を760nmで測定する。
【0166】
結果
【表1】


:標準線(下記の標準化法参照)
**:エピカテキン当量係数
MG:サンプル中脂肪含量(%)
m:乾燥脱脂サンプルの重量(≒50mg)
【0167】
標準化法
フォーリン・チオカルト法に用いた標準は次のとおりである:100mg/L溶液、および0、5、10、15、および20mg/Lの5種の娘溶液。
【0168】
例を以下の表に示す。
【表2】

この標準線のプロトコルに記載した第1希釈は使用しない。
【0169】
本発明の方法に従って生成したカカオ由来材料のポリフェノール含量を表3に示す。
【0170】
【表3】

【実施例4】
【0171】
ポリフェノール含量のHPLC測定
カカオ豆に含有されるポリフェノールの大部分はフラボノイドファミリー:C6−C3−C6のものである。一般に存在する単量体には、(−)−エピカテキンおよび(+)−カテキンが含まれる。
【0172】
カカオ種子に含有されるポリフェノールは以下を含む。
37%フラバン−3−オール(エピカテキン−カテキン)
4%アントシアン
58%プロアントシアニジン(またはプロシアニジン)またはフラバノールオリゴマー
【0173】
カカオ種子はエピカテキンの貯蔵部である(総ポリフェノール含量の約35%を占める)。
【0174】
原理
エピカテキン、カテキン、およびプロシアニジンB1、B2、B3は、蛍光検出器を用いてHPLCによって分析できる。
【0175】
HPLC分析前に、エピカテキン、カテキン、およびプロシアニジンを、酸性化水/アセトニトリル溶液を用いてカカオから抽出する。
【0176】
材料
超音波浴
HPLC機器
蛍光検出器
カラム:Kromasil C18、5μm、250×4.6mm
使い捨てシリンジ2ml
フィルタシリンジRC(再生セルロース)、0.45μm、径25mm
25mlおよび50mlフラスコ
バイアル2ml
ふるい200μm
【0177】
試薬
アセトニトリルHPLC等級
水HPLC等級
氷酢酸
エピカテキン標準:Sigma標準品E1753−1G
カテキン標準:Sigma標準品C0567
プロシアニジンB1標準:Sigma標準品19542、1mg
プロシアニジンB2標準:Sigma標準品42157、1mg
プロシアニジンB3標準:Sigma標準品P1066−1VL、1mg
【0178】
方法
抽出用溶媒の調製
90%水HPLC等級をpH=2.5に酸性化し(2%氷酢酸)、10%アセトニトリルHPLC等級と合わせた。
【0179】
サンプルの調製
脂肪生成物約5gを秤量した。ヘキサン(MG(サンプル中の脂肪材料のパーセント)を求めるため)をカカオに添加し、続いて遠心分離し、脱相(dephasing)することによって、生成物中の脂肪材料を抽出した。次いで、脱脂抽出物をふるい分けた。ふるい分けた抽出物200mgを50mlフラスコに秤量した。
【0180】
抽出物を超音波浴で約10分間、抽出溶媒に溶解し、抽出溶媒を用いて体積を調整した。この溶液を0.45μmフィルタシリンジで濾過し、バイアルに入れた。
【0181】
標準の調製
エピカテキン5から6mg、カテキン2から3mg、プロシアニジンB1 1.5から2mg、プロシアニジンB2 2mg、およびプロシアニジンB3 1mgを25mlフラスコに秤量する。溶解および体積調整用の抽出溶媒を用いて、超音波浴で数分間溶解する。10−1に希釈を行う。0.45μmフィルタシリンジで濾過し、バイアルに入れる。
【0182】
クロマトグラフィ条件
カラム:Kromasil C18、5μm、250×4.6mm
検出:蛍光による:励起=274nm;発光=322nm
移動相:A:pH2.5に酸性化した水HPLC等級
B:アセトニトリルHPLC等級
移動相の送達:1mL/分
ループ注入10μl
勾配:
【0183】
【表4】

【0184】
結果の表示
エピカテキンの場合の例:
Aetは、エピカテキン標準の面積である。
Aechは、エピカテキンサンプルの面積である。
Aは、標準中のエピカテキン濃度mg/lである。
Bは、サンプル中のエピカテキン濃度mg/lである。
mは、脱脂ふるい分け抽出物の重量である。
MGは、生成物中の脂肪材料のパーセントである。
【0185】
結果の解釈
B=(AAech)/Aet mg/l
抽出物中のエピカテキン濃度mg/g:E=B/(m/1000)
脂肪生成物の場合(カカオ由来材料):生成物中のエピカテキン濃度mg/g:E[(100−MG)/100]
【実施例5】
【0186】
カカオ由来材料の色測定
ポリフェノールを含む、以下に示すとおり本発明に従って得たカカオリカーを、石油エーテルで脱脂し、続いて3ステップで洗浄し、遠心分離した。室温で乾燥した後、各粉末サンプルをペトリ皿に入れ、周知のHunter L、a、bスケールを用い、比色計を使用して皿の底部から4回測定した。用いた比色計は、Minolta CM−2002分光光度計であった。色測定の条件は次のとおりであった。CIELAB III:D65、Obs:10°、3フラッシュ、モード:SCEおよび外観色20℃。
【0187】
本発明に従って実行した工程の進行を、上記の方法に従って測定した粉末形態の完全脱脂カカオリカーの色パラメータおよびポリフェノール含量に関して表5に示す。ニブを酸性化するために、反応はミキサを用いて行い、プロセスミキサ(パイロットプラント、15kg)を除いて、実験室規模(1/2kg)で行った。
【0188】
【表5】

【0189】
比較のため、本発明に従って実行した工程の進行を、溶融および液体カカオリカーの色パラメータ関して表6に示す。
【0190】
【表6】

【実施例6】
【0191】
ヨーグルト
実施例1に記載した条件下で4時間浸漬したニブから得られたカカオパウダー1重量%(ヨーグルトの総重量に対して)を、市販され入手可能なナチュラルヨーグルト(すなわち、着色されていない)に添加することによって、着色ヨーグルト製品を製造した。
【0192】
赤色カカオパウダーをヨーグルトに添加した結果、好ましい赤い色相を有するヨーグルトが得られた(図6参照)。
【実施例7】
【0193】
調理キャンディ
赤色調理キャンディは以下から生成できる。
イソマルト50.00g
8.66%オルトリン酸を用いて酸性化したカカオパウダー1.72g
エタノール−水(70〜30%)溶液5.00g
クエン酸1.13g
【0194】
クエン酸をエタノールと水の混合物に溶解した。生成物の損失を限定するために、好ましくは、クエン酸を含有するビーカーにエタノールと水の混合物を秤量した。次いで、攪拌しながら、酸性化カカオパウダーを、クエン酸、エタノール、および水の混合物に溶解して、均質な溶液を形成した(混合物1)。
【0195】
酸化および色の変化を防ぐために、30秒以内に酸性化カカオパウダー、アルコール、および水の混合物をイソマルトール(以下のとおり生成)と合わせる必要のある可能性がある(混合物2)。
【0196】
イソマルトールは、サーモスタット2で1分30秒間、サーモスタット3で3分間、およびサーモスタット4で4分間、パン(pan)で加熱した。イソマルトは完全に溶融し、この段階では無色であった。この後さらにサーモスタット1で約6分間加熱した。イソマルトは結晶化に近づいた。アルコールの蒸発および容器の周囲にパウダーが飛び散るのを防ぐために、この時点で混合物1を添加した。
【0197】
加熱したイソマルトに混合物1を添加した後、サーモスタット2でさらに50秒間、加熱を続けた。
【0198】
混合物1を加熱したイソマルトと共に攪拌して、均質な混合物を形成した。
【0199】
次いで、芳香剤(aroma)を添加した(パスツールピペットで芳香剤40滴)。芳香剤を含有する混合物を、サーモスタット3でさらに1分間加熱して、できるかぎり均質な混合物を製造した。
【0200】
その後、混合物を適切な型に入れた。分光比色法を用いて正確な色測定値を得るために、円板様生成物を生じる型を用いるのが好ましい(図8および9参照)。
【0201】
図10は種々のカカオパウダーを用いて得ることのできるキャンディの様々な色を示す。以下のパウダーを用い、上記の方法に従って図10の調理キャンディを生成した。
パウダーブラックパール(Black Pearl)(1)
パウダーPZ044(2)
パウダーDRT(sic)(3)
パウダーN102C(SACO)(4)
マダガスカル(Madagascar)のパウダー(5)
ジャワ(Java)のパウダー(6)
パウダー酸性型Roland−Garros(7)
パウダー酸性型ローズボンボン(8)
パウダー酸性型ローズ(9)
【実施例8】
【0202】
以下の条件を用い、実施例1に従って「赤色」カカオパウダーを生成した。これらの条件は「赤色」パウダーの生成に特に好ましい。
5%リン酸
200%水
浸漬4時間
乾燥60℃24時間
【0203】
すべての試験は、lavadosカカオニブ2kgを用いて、小箱(50×60×40)で行った。
【実施例9】
【0204】
色パラメータおよびポリフェノール含量に対する反応パラメータの効果
A:試験のマトリクス
検討した4つのパラメータを2つの値でコード化した(+1高い値、−1低い値)
A=リン酸の濃度
+1=10%
−1=1%
0=5.5%
B=HO%
+1=200%
−1=25%
0=112.5%
C=反応時間(分)
+1=300
−1=20
0=160
D=温度℃
+1=50℃
−1=20℃
0=35℃
0は、この方法の再現性を実証するための中央値である。
乾燥ステップはすべての試験および中央点に関して厳密に同じである(空気乾燥器で19時間)。
【0205】
【表7】

【0206】
B:効果の算出(=H)
1 実施例
【0207】
【表8】

H(ファクター1)=1/4(−A+B−C+D)
H(ファクター2)=1/4(−A−B+C+D)
【0208】
これらの中央点を用い(中央値を有する試験)、本出願人らはこの実験の標準偏差(δ)を算出する。
【0209】
それにより信頼区間(CI)を算出することができる(CIは、効果の値が確率95%を有する区間である)。
H−tδ/n1/2<H<H+tδ/n1/2
n=試験数(中央点は含まない)
t=リスク5%の値であり、自由度はN−1であり、Nは中央試験の数である(下記の表参照)
【0210】
【表9】

【0211】
2 効果の解釈
信頼区間が0を含むとき、効果の値は0とあまり相違しない。そのとき、この効果は無視することができ、そのパラメータは有意な影響を及ぼさないと言うことができる。
【0212】
効果の値が負であるとき、そのパラメータは測定値に負の影響を及ぼす。このパラメータの値を大きくすると、pHおよび色などの測定値は減少する。
【0213】
効果の値が正であるとき、そのパラメータは測定値に正の影響を及ぼす。このパラメータの値を大きくすると、pHおよび色などの測定値は増大する。
【0214】
C:測定結果
【表10】

【0215】
ポリフェノール含量は、フォーリン法(実施例4参照)に従って乾燥脱脂カカオに対するエピカテキンの%で示す。得られたサンプルを図11に示す。C値18未満を有する試験は、好ましくは紫色の非限定的な例と考えられる。C値18超を有する試験は、好ましくは赤色の非限定的な例と考えられる。
【0216】
これらの生成物の以下のすべての色は乾燥脱脂材料で測定される。
【0217】
【表11】

【0218】
D:効果の分析(H)
1 信頼区間および解釈、例:灰分値
【0219】
【表12】

【0220】
この場合、酸の量は灰分含量に正の影響を及ぼす。したがって、より多くの酸を使用するほど、最終生成物により多くの灰分が見出される。
【0221】
対照的に、水の含有量(%)は灰分含量に負の影響を及ぼす。より多くの水を含有させるほど、より少ない灰分が見出される。
【0222】
パラメータ「時間」および「温度」に関しては、0が信頼区間に含まれる。これらのパラメータは灰分含量に有意な影響を及ぼさなかった。
【0223】
下記の表は、信頼区間および効果の有意性の概要を示すものである。
【0224】
【表13】

【0225】
2 効果の概要
【表14】

【0226】
記号2つのパラメータは、記号1つのみのパラメータより大きい影響を有する(正または負)。
【0227】
3 パラメータ間の相互作用
【表15】

【実施例10】
【0228】
弱酸の使用
種々の酸の影響力を検討するために、本出願人らは試験番号9(紫色のカカオパウダーを生じるとみなすことのできる試験の1つ)および中央点のパラメータを用いた。生成されたパウダーを図12に示す。
【0229】
1 パラメータ
原材料:Lavadosブラジルカカオ豆
【0230】
【表16】

【0231】
試験9:
酸:クエン酸または酒石酸
水:25%
時間:20分
温度:50℃
中央
酸:クエン酸または酒石酸
水:112.55%
時間:160分
温度:35℃
【0232】
2 結果
【表17】

色およびポリフェノール含量は、乾燥脱脂カカオに関して示す。ポリフェノールは、フォーリン法でエピカテキンの%で示す。
【0233】
色パラメータに関しては、結果は強酸(リン酸)と弱酸(クエン酸および酒石酸)との間でそれほど相違はない。
【0234】
クエン酸および酒石酸は有機酸であるため、灰分にそれらを「見出す」ことはない。
【0235】
Brunswick labによるポリフェノール含量(Orac値試験およびHPLC縮合タンニン法)
【表18】

【0236】
3 結論
クエン酸は、本発明の酸性化工程で用いるのに適している。灰分の低い供給および容易な操作の点でさらに興味深い。また、リン酸より弱いクエン酸は、ポリフェノール含量の保存に特に有用であると考えられる。
【実施例11】
【0237】
スケールアップ試験
試験9(実施例10)のパラメータを、パイロットラインの半工業的試験に適用した。
原材料:Lavadosブラジルニブ
酸:クエン酸5%
水:25%
反応時間:20−40−60分
反応温度:室温
乾燥:トルネード100℃
粉砕
LB01→Lavadosブラジル反応時間20分
LB02→Lavadosブラジル反応時間40分
LB03→Lavadosブラジル反応時間60分
【0238】
1 試験
蒸気流温度70℃を用いて、パイロットラインの2重ジャケットを調節した。ジャケットが70℃のとき、蒸気流を遮断した。
【0239】
混合時間をわずかに変更した。乾燥前に良好な湿分を有するために、混合ステップ中に温風を注入した(5分混合のみ、残りの時間は混合および空気注入)。
【0240】
これらの変更後、ニブをトルネード(Tornado)(5分間105℃に設定)で乾燥することができた。
【0241】
冷却システムおよびトルネードの扉はステンレス製でないため、これらの部品は酸によってわずかに摩耗した。
【0242】
2 結果
【表19】

ポリフェノールおよび色は乾燥脱脂カカオで測定した。ポリフェノールはエピカテキンの%で示す:フォーリン法(図13および14参照)。
【0243】
3 結論
この方法は反応時間40分で適切な色および許容されるポリフェノール含量を得ることを可能にする。
【0244】
乾燥後のニブの湿分は約2〜3%である。切断粉砕ステップは、「ボールミル粉砕」ステップより困難である。
【0245】
パイロットラインのすべての試験に関して、質感は極めて許容できるものである(ポンプ送出可能(pumpable))。
【実施例12】
【0246】
圧搾工程
A 説明
圧搾プレス
図15に関連して、巻き上げ装置を用い、カカオニブを含有する袋(1)の全長を搬送スクリュー上に持ち上げる。ニブを混合ヒーター(2)に運び、ここでニブを酸性化し、加熱し(50℃)、混合する。その後、赤色/紫色ニブをワームプレス(3)に挿入する。スクリューはケージで拘束されており、バター(4)のみを通過させる。最後に、スクリュープレート(5)によってフレーク(6)が圧搾される。圧搾フレークは袋(7)に収容され、バターは箱(8)に収容される。
【0247】
この装置によってカカオニブから「フレーク」と呼ばれる生成物を得ることが可能になる。最終的にフレークの脂肪含量は約10%である。
【0248】
3種試験およびブランク(酸を用いないニブ)
パラメータ
加熱区画での連続酸性化
酸:クエン酸1.6/5.5/9.5%
原材料:Lavadosブラジルカカオニブ
水:1.6/5.5/9.5%
【0249】
【表20】

【0250】
B 結果
【表21】

色は乾燥脱脂カカオで測定する。
【0251】
本発明に従って生成した押出し生成物の分析を、用いた条件と共に下記の表に示す。
【0252】
【表22】

条件:75バール;プレス供給スクリュー速度50%;クエン酸5%;ヒーター供給スクリュー速度100%;T°=40℃;プレス速度100%
【0253】
【表23】

【0254】
微生物学的結果は、押出し後、湿分レベルを著しく低減でき、同時に微生物レベルも低減されることを示している。したがって、押出し機は、フレークの乾燥および滅菌に好都合な方法を提供する。
【0255】
これらのフレークから得られたパウダーのポリフェノール含量は次のとおりである。
【0256】
【表24】

ORAC分析は、体内に見出されるもっとも一般的な活性酸素種(ROS)の1つである、ペルオキシルラジカルに対する抗酸化物質の捕捉能の測定を提供する。ORAChydroは、水溶性抗酸化能を示す。水溶性ビタミンE類似体であるTroloxを較正標準物質として用い、ORACの結果はグラム当たりマイクロモルTrolox当量(TE)として表わす。
ORACアッセイの許容精度は相対標準偏差15%である。i ii
Ou,B;Hampsch−Woodill,M.;Prior,R.L.;Development and Validation of an Improved Oxygen Radical Absorbance Capacity Assay using Fluorescein as the Fluorescent Probe.Journal of Agricultural and Food Chemistry;2001;49(10);4619−4626
Ou,B;Huang,D.;Hampsch−Woodill,M.;Method for Assaying the Antioxidant Capacity of A Sample、*米国特許第7,132,296 B2号*
【0257】
パウダーのタンニン含量を次の表に示す(赤色深紫色CPに関して)。
【0258】
【表25】

PACアッセイの許容精度は相対標準偏差±15%である。
*本出願人等は、Liwei Gu等:Procyanidin and Catechin Contents and Antioxidant Capacity of Cocoa and Chocolate Products.Gu,L.;House,S.E.;Wu,X.;Ou,B.;Prior,R.L.;J.Agric.Food Chem.;(Article);2006;54(11);4057−4061に公表されているとおり、USDA法を使用する。これは蛍光検出を用いる順相高速液体クロマトグラフィ法である。
【実施例13】
【0259】
コンチェでのカカオリカーの処理
これらの実験に用いた組成物は以下のとおりであった。実験はすべて組成物1kgを用いて行った(以下の表では「コンチェ」と呼ぶ)。
【0260】
用いた組成物:
【表26】

Acticoa(登録商標)は、Barry Callebaut Groupの登録商標である。
【0261】
実験では以下のパラメータを用いた。
コンチング時間:1時間から4時間
コンチング温度:40℃から65℃
クエン酸(CA)の添加:0.2%から1%
水の添加:1%から2%
【0262】
装置
最低混合速度(混合および剥離)で「Stephan」ミキサを用いた。実験は揮発性成分を排気するために、換気装置を用いて行った。
【0263】
これらの実験の結果を以下の表に示す。色測定は、脱脂カカオパウダーではなく、生成されたチョコレートの色に関する。
【0264】
紫色チョコレートのポリフェノールおよび脂肪含量は以下に示すとおりである。
【0265】
【表27】

【0266】
【表28】

【0267】
【表29】

【0268】
【表30】

【0269】
【表31】

【0270】
【表32】

【0271】
【表33】

【0272】
【表34】

【0273】
【表35】

【0274】
【表36】

【0275】
【表37】

【0276】
【表38】

【0277】
【表39】

【0278】
【表40】

【0279】
【表41】

【0280】
【表42】

【0281】
【表43】

【0282】
【表44】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色または紫色のカカオニブが、ポリフェノールを少なくとも20mg/g、好ましくはポリフェノールを30mg/g超、もっとも好ましくはポリフェノールを40から60mg/g含む、酸性化赤色または紫色のカカオニブ。
【請求項2】
請求項1に記載のニブから得られる赤色または紫色のカカオ精製フレークまたは圧搾フレーク。
【請求項3】
請求項1に記載のニブから得られる赤色または紫色のカカオリカー。
【請求項4】
請求項3に記載のカカオリカーから得られる赤色または紫色のカカオケーク。
【請求項5】
請求項2に記載の圧搾フレーク、請求項3に記載のカカオリカー、または請求項4に記載のカカオケークから得られる赤色または紫色のカカオパウダー。
【請求項6】
カカオパウダーのpHが約2から約8である、請求項5に記載の赤色または紫色のカカオパウダー。
【請求項7】
赤色である、請求項1に記載のカカオニブ、請求項2に記載のカカオ精製もしくは圧搾フレーク、請求項3に記載のカカオリカー、請求項4に記載のカカオケーク、または請求項5もしくは請求項6に記載のカカオパウダー。
【請求項8】
値が約40から57、C値が約18から40、h°値が約7から40、および場合によりa対b比が約1から8、好ましくはL値が約40から45、C値が約28から33、h°値が約17から25、および場合によりa対b比が約2.2から3.1である、請求項5または請求項6に記載のパウダーの形態であるカカオ由来材料。
【請求項9】
値が約47から57、C値が約18未満、好ましくは約10から17、h°値が約20から約50、好ましくは約25から40、または25から30、および場合によりa対b比が約2.3未満、好ましくは約1から2.1である、請求項5または請求項6に記載のパウダーの形態であるカカオ由来材料。
【請求項10】
請求項2に記載のカカオ精製もしくは圧搾フレーク、および/または請求項3に記載のカカオリカー、および/または請求項4に記載のカカオケーク、および/または請求項5もしくは請求項6に記載のカカオパウダー、および/または請求項8もしくは請求項9に記載のカカオ由来材料を含む食品。
【請求項11】
請求項2に記載のカカオ精製もしくは圧搾フレーク、および/または請求項3に記載のカカオリカー、および/または請求項4に記載のカカオケーク、および/または請求項5もしくは請求項6に記載のカカオパウダー、および/または請求項8もしくは請求項9に記載のカカオ由来材料を含む菓子製品、乳製品、またはベーカリー製品。
【請求項12】
製品が、調理キャンディ、チョコレート、チョコレート様製品、脂肪連続フィリング、および水性フィリングからなる群から選択される、請求項11に記載の菓子製品。
【請求項13】
赤色または紫色のカカオ由来材料を生成する方法であって、
(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有する豆または種子から得られたカカオニブを酸で処理するステップ、および
(ii)場合によりニブを乾燥するステップを含む方法。
【請求項14】
酸が、鉱酸、好ましくは食品等級の酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸が、1種以上のリン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、または酢酸を含む、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ニブが、好ましくは水溶液中、場合によりpH6未満、より好ましくはpH約1から4で処理される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ニブが、約12時間までの期間、酸で処理される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ニブが、約2から8時間、好ましくは約3から6時間の期間処理される、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ニブが、温度50℃未満、もっとも好ましくは温度5から30℃で処理される、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
乾燥が、温度約115℃未満、より好ましくは温度約40から100℃、たとえば約60から80℃で行われる、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
乾燥が、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間、もっとも好ましくは12時間の期間行われる、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ニブが、洗浄された未発酵カカオ種子から得られる、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法、または請求項1に記載の赤色カカオニブ。
【請求項23】
カカオ豆または種子を予備乾燥および/または加熱して、カカオニブを生成するステップをさらに含む、請求項13から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
酸による処理の前に、機械的手段によってカカオニブを破細するステップをさらに含む、請求項13から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ニブを酸で処理するステップであって、ニブが圧搾プレス機に存在するステップを含む、請求項13から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
(iii)場合によりニブを圧搾して、フレークを形成するステップ、および/または
(iv)場合によりフレークを押出すステップ、および/または
(v)場合によりフレークを処理して、赤色または紫色のカカオパウダーを生成するステップを含む、請求項13から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
赤色または紫色のカカオ由来材料を生成する方法であって、
(i)発酵カカオ豆より高いポリフェノール含量を有する豆または種子から得られたカカオ由来材料を酸で処理するステップ、および
(ii)場合により材料を乾燥するステップを含む方法。
【請求項28】
カカオ由来材料が、好ましくは未発酵または発酵中であり、場合によりコンチェで直接酸性化されたカカオリカーである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項14から26のいずれか一項に定義されたとおりである、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
チョコレートまたはチョコレート様製品を生成する方法であって、
(i)請求項2に記載の精製もしくは圧搾フレーク、または請求項3に記載のカカオリカーを、砂糖または砂糖代用物と合わせるステップ、および
(ii)カカオバターまたはカカオバター代替物を添加して、チョコレートまたはチョコレート様製品を生成するステップを含む方法。
【請求項31】
カカオ由来材料が赤色である、請求項13から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
生成されたカカオ由来材料が赤色である、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
場合により滅菌された、請求項26に記載の方法に従って得られるカカオフレークおよび/またはカカオパウダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−509681(P2011−509681A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543561(P2010−543561)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000177
【国際公開番号】WO2009/093030
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(508157299)バリー カレボー アーゲー (10)
【Fターム(参考)】