説明

組換え植物における目的遺伝子産物の高生産方法

【課題】組換え植物において目的のタンパク質を高生産させる方法の提供。
【解決手段】以下の(a)〜(c)のいずれかのDNAからなるターミネーター、及びそれを用いた遺伝子産物の組換え生産方法。(a)特定の塩基配列からなるDNA。(b)上記配列とは異なる塩基配列からなるDNAの塩基番号1から、塩基番号450〜550のいずれかまでの塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターと比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA。(c)前記(a)又は(b)のDNAの塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターと比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターミネーターを利用した目的の遺伝子産物の植物における高生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子の高発現化及びタンパク質の高蓄積化に関わる技術の開発が行われている。例えば、改変プロモーターの開発や新規プロモーターの単離に基づき、目的の遺伝子を高発現化し、さらに安定的発現や組織特異的発現を図る技術が報告されている(例えば、特許文献1〜3)。また、単離されたプロモーターの5'上流配列を外来遺伝子と連結して組換え導入することにより、その導入遺伝子の発現を安定化する技術についても報告されている(非特許文献1、特許文献4)。一方、単離されたターミネーター配列やその改変配列が遺伝子発現量やタンパク質生産量に及ぼす影響についてはほとんど報告がない。
【0003】
一般に、遺伝子組換え作物の作製には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTiプラスミド由来のノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列(nosターミネーター)が使われる場合が多い。しかし不都合なことに、このnosターミネーターの遺伝子転写における終止機能は不完全であり、nosターミネーターより下流の塩基配列も転写してしまうリードスルー現象が知られている(非特許文献2、非特許文献3)。また食品・医薬品等の製造のためには、バクテリア由来のターミネーターよりも、植物体での組換え生産により適した植物由来のターミネーターを利用することが好ましいと考えられる。
【0004】
一方、ミラクルフルーツ(Richadella dulcifica)は、その果実中にミラクリンと呼ばれる食味修飾タンパク質を含んでいることで知られる植物である。ミラクリンは、1968年にミラクルフルーツの機能性成分であることが同定された(非特許文献4)。その後、ミラクリンタンパク質の全アミノ酸配列が決定され(非特許文献5)、その遺伝子の完全長cDNA配列も報告されている(非特許文献6;GenBankアクセッション番号D38598)。しかしその遺伝子発現制御機構についてはほとんど知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−65096
【特許文献2】特開2008−154496
【特許文献3】特開2000−41688
【特許文献4】特開2001−145491
【非特許文献1】Satoh et al., J. Biosci. Bioeng. (2004) 98(1),p.1-8
【非特許文献2】Windels et al., Eur. Food Res. Technol. (2001) 213, p.107-112
【非特許文献3】Rang et al., Eur. Food Res. Technol. (2005) 220, p.438-443
【非特許文献4】Kurihara and Beidler, Science (1968) 161(847),p.1241-1243
【非特許文献5】Theerasilp et al., J Biol Chem. (1989) 264(12), p.6655-6659
【非特許文献6】Masuda et al., Gene (1995) 161, p.175-177
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、組換え植物において目的のタンパク質を高生産させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、遺伝子産物の組換え生産において、ミラクリン遺伝子ターミネーター領域内の配列を目的遺伝子下流に配置して用いることによりその目的遺伝子の遺伝子産物を高生産させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]以下の(a)〜(c)のいずれかのDNAからなる、ターミネーター。
(a)配列番号3で示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号2の塩基番号1から、塩基番号450〜550のいずれかまでの塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターと比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA
(c)前記(a)又は(b)のDNAの塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターと比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA
[2]プロモーター及び遺伝子挿入部位の下流に連結された上記[1]に記載のターミネーターを含む、発現ベクター。
[3]プロモーターが植物プロモーターである、上記[2]に記載の発現ベクター。
[4]プロモーターがカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターである、上記[2]に記載の発現ベクター。
[5]遺伝子挿入部位に挿入された遺伝子をさらに含む、上記[2]〜[4]に記載の発現ベクター。
[6]遺伝子の下流に連結された上記[1]に記載のターミネーターを含む、DNA構築物。
[7]前記ターミネーターが、プロモーター及びその制御下に配置された遺伝子の下流に連結されている、上記[6]に記載のDNA構築物。
[8]プロモーターが植物プロモーターである、上記[7]に記載のDNA構築物。
[9]プロモーターがカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターである、上記[7]に記載のDNA構築物。
[10]上記[2]〜[5]に記載の発現ベクター又は上記[7]〜[9]に記載のDNA構築物を含む、形質転換体。
[11]形質転換植物である、上記[10]に記載の形質転換体。
[12]上記[5]に記載の発現ベクター、又は上記[7]〜[9]に記載のDNA構築物を植物細胞に導入することを特徴とする、植物において前記遺伝子の遺伝子産物を組換え生産させる方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組換え植物において導入遺伝子の遺伝子産物の生産量を効果的に増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターとその取得
本発明は、ミラクリンタンパク質をコードする遺伝子(ミラクリン遺伝子)のターミネーター領域内の配列を含むDNA断片が、ターミネーター機能として、転写終結機能と共に、その制御下にある遺伝子から発現される遺伝子産物の生産量を効果的に向上させる発現量調節的な機能を有するという驚くべき知見に基づくものである。
【0011】
本発明において「ターミネーター」とは、その上流に連結された遺伝子の転写(mRNAの合成)を終結させる機能(転写終結機能)を少なくとも有する核酸を意味する。この転写終結機能は、当業者であれば、例えば、慣用されるプロモーター、構造遺伝子、及び当該ターミネーターの順に連結した核酸構築物を含むベクターを用いて容易に確認することができる。
【0012】
本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターは、具体的には、ミラクルフルーツ(Richadella dulcifica)由来のミラクリン遺伝子のORF(オープンリーディングフレーム)の下流領域の一部の塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)と比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNAである。
【0013】
好適な1つの実施形態では、この本発明のミラクリン遺伝子ターミネーターは、より具体的には、以下の(a)〜(c)のDNAを含むものである。
(a)配列番号3で示される塩基配列からなるDNA。この配列番号3で示される塩基配列は、ミラクルフルーツ(Richadella dulcifica)からミラクリン遺伝子のターミネーター領域として単離されたDNA断片の塩基配列(配列番号2)中の、塩基番号1から塩基番号507までの塩基配列に相当する。
(b)配列番号2の塩基番号1から始まり、塩基番号450〜550のいずれかまで(より好ましくは、塩基番号480〜530のいずれかまで、さらに好ましくは塩基番号500〜510のいずれかまで)の塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)と比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA。
(c)前記(a)又は(b)のDNAの塩基配列において1若しくは複数個(2〜40個、好ましくは数個(2〜9個))の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)と比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA。
【0014】
本発明において、本発明に係るDNA(ターミネーター)についての「ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)と比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能」とは、当該DNA(ターミネーター)による転写終結作用を受けるように当該ターミネーターの上流に連結された目的の遺伝子をさらにその上流にプロモーターを連結して発現誘導させた場合に、その目的の遺伝子から発現される遺伝子産物(mRNA、rRNA等のRNA又はタンパク質、より好ましくはタンパク質)の量を、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)を同条件で使用した場合と比較して増加させるように転写翻訳機構を調節する機能を意味する。本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターは、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)を同条件で使用した場合と比較して、例えば1.2倍〜50倍、典型的には2倍〜10倍、より一般的には5倍〜7倍の発現産物(遺伝子産物)が目的の遺伝子から生産(又は蓄積)されるように、遺伝子の転写翻訳機構を制御することができる。この本発明に係るターミネーターによる目的の遺伝子の発現産物量を増加させる効果は、例えば、目的の遺伝子として、当業者に公知のレポーター遺伝子(例えば、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子)を使用し、後述の実施例に記載の手順に従って、そのレポーター活性を測定する手法を用いて好適に調べることができる。
【0015】
このような本発明に係るターミネーターによる遺伝子の発現産物量の増加は、遺伝子から転写されるmRNAの安定性をそのターミネーターが調節して分解を抑制することにより、もたらされると考えられた。本発明に係るターミネーターが有する、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させる機能は、好ましくは、植物(より好ましくは、被子植物、さらに好ましくはナス科植物、特に好ましくはトマト)の細胞においてより顕著に発揮される。
【0016】
本発明のミラクリン遺伝子ターミネーターは、上記のミラクリン遺伝子ターミネーターの塩基配列(例えば、配列番号3の塩基配列)に基づいて、常法により単離することができる。例えば、ミラクルフルーツの葉から常法により抽出されたゲノムDNA等の核酸を鋳型とし、本発明のミラクリン遺伝子ターミネーターの塩基配列に基づいて設計されるプライマーセットを用いたPCR法によってDNA増幅断片として取得することができる。得られたDNA増幅断片は、常法により抽出・精製することが好ましい。あるいは、本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターであるDNA又はその一部を用いてプローブを作製し、それをミラクルフルーツから抽出されたゲノムDNA断片等に対してハイブリダイズさせることにより、本発明に係るターミネーターを取得することもできる。本発明のミラクリン遺伝子ターミネーターはまた、化学合成法を利用して合成してもよい。
【0017】
本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターは、具体的には、実施例に記載のようにしてミラクルフルーツ(Richadella dulcifica)から単離することもできる。例えば、ミラクルフルーツから抽出したゲノムDNAを鋳型とし、3'側プライマー(5'-TTT GAA TTC CTA CAA CGT TAC GAA ACG-3'(配列番号19))と、5'側プライマー(5'-TTT GAG CTC TTG GGT TTG GGG GTG GTT TTT CCA-3'(配列番号20))を用いたPCR増幅により、本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを含むDNA断片を取得することができる。
【0018】
また本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターは、天然源から単離されたミラクリン遺伝子ターミネーターの塩基配列を、部位特異的突然変異誘発法等の変異導入法を用いて改変することにより作製してもよい。変異導入には、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。これらの変異導入は、例えば市販の部位特異的突然変異誘発キット(例えばMutan(R)-K、Mutan(R)-Super Express Km、PrimeSTAR(R) Mutagenesis Basal Kit(いずれもTAKARA BIO INC.社製))などを用いて当業者であれば容易に行うことができる。
【0019】
なお、得られたミラクリン遺伝子ターミネーターについては、塩基配列決定によりその配列を確認することが好ましい。塩基配列決定はマキサム-ギルバートの化学修飾法、ジデオキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、通常は自動塩基配列決定装置(例えばABI社製DNAシークエンサー)を用いて行えばよい。
【0020】
2.本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを含むベクター、DNA構築物及びそれらを含む形質転換体
本発明は、本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを組み込んだベクターも提供する。本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターは、任意の組換えベクター中にクローニングすることにより容易に複製可能な形態とすることができる。
【0021】
このために使用可能なベクターとしては、宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。例えばプラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript、pET100/D-TOPO等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YCp50、pPICZαA等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP、λZAPII等)などが挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。ベクター中に本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを組み込むには、例えば、そのターミネーターを含むDNA断片の末端を適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入し連結すればよい。
【0022】
本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターは、各種プロモーター(限定するものではないが、植物プロモーターがより好ましい)と組み合わせて用いることにより、任意の遺伝子の発現をもたらすことができる。
【0023】
特に、本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを、プロモーター及びその制御下にある遺伝子挿入部位の下流に連結して含む発現ベクターは、目的の遺伝子にコードされる遺伝子産物を宿主細胞(好ましくは、植物細胞)で効率良く生産させるために当該遺伝子を宿主細胞に導入し組換え法により発現させるために用いる、導入遺伝子発現用ツールとして好適である。本発明に係るこれらの発現ベクターは、その遺伝子挿入部位(例えば、制限酵素切断部位)に挿入された目的の遺伝子をさらに含んでもよい。目的の遺伝子は特に限定されず、タンパク質をコードする遺伝子であっても、RNAをコードする遺伝子であってもよいし、2種以上のタンパク質の融合タンパク質をコードする遺伝子でもよい。
【0024】
本発明に係る発現ベクターは、さらに、ベクターが細胞内に保持されていることを示す選択マーカーやベクター内に簡単に正しい向きで遺伝子を挿入するためのポリリンカー、エンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、分泌シグナル配列、精製用のヒスチジンタグ配列等の有用な配列を必要に応じて含んでいてもよい。選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子(CAT遺伝子)等が挙げられる。
【0025】
植物に遺伝子導入するためにアグロバクテリウム法を用いる場合には、アグロバクテリウム由来のバイナリーベクターなどのアグロバクテリウム法に適した発現ベクター又はその改変ベクター(例えば、pBI121、pBIN19、pSMAB704、pCAMBIA、pGreenなど)中のターミネーター(例えば、ノパリン合成酵素遺伝子(nos)ターミネーター)を、本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターで置換することによって、本発明に係る発現ベクターを作製してもよい。このような発現ベクターも、プロモーター及びその制御下にある遺伝子挿入部位の下流に連結された本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを含む限り、本発明の好ましい態様である。
【0026】
本発明は、目的の遺伝子の下流に連結された本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを含むDNA構築物も提供する。このようなDNA構築物を、任意の発現ベクター(好ましくは、植物用の発現ベクター)中のプロモーターの制御下(下流)に組み込むことにより、目的の遺伝子の遺伝子産物をより効率よく生産できる発現ベクターを製造することができる。本発明はまた、プロモーター及び目的の遺伝子の下流に連結された本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターを含むDNA構築物にも関する。
【0027】
本発明において「DNA構築物」とは、2以上の機能単位(遺伝子、プロモーター、ターミネーターなど)のDNAを連結して作製される自律複製能を有しないDNA断片(例えば、遺伝子発現カセット)をいう。
【0028】
本発明でミラクリン遺伝子ターミネーターと組み合わせて用いるプロモーターは、任意のプロモーターであってよいが、植物プロモーターであることがより好ましい。本発明において「植物プロモーター」とは、植物細胞においてプロモーター活性(転写誘導活性)を発揮できるプロモーターをいい、例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ユビキチンプロモーター、トマト果実特異的発現プロモーターE8などが挙げられる。本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーターと組み合わせて用いるプロモーターは、構成性プロモーターであっても誘導性プロモーターであってもよいし、組織特異的プロモーター又は時期特異的プロモーターなどの特異的プロモーターであってもよい。遺伝子産物の生産量向上の点では、CaMV 35Sプロモーターとの組み合わせが特に好適である。
【0029】
本発明では、上記発現ベクター又は上記DNA構築物を宿主に導入することにより形質転換体(形質転換細胞、形質転換植物など)を作製することができる。具体的には、例えば、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を作製することができる。なお本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を宿主細胞(好ましくは、植物細胞)へ導入することにより、発現ベクター中のDNA構築物(プロモーター及びその制御下にある目的の遺伝子の下流に連結されたミラクリン遺伝子ターミネーターを含むDNA断片)又は単離されたDNA構築物は、宿主細胞のゲノム中に組み込まれうる。あるいは、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を宿主細胞へ導入した形質転換体では、その発現ベクター又はDNA構築物が染色体外(細胞質など)で維持されることにより、目的の遺伝子が染色体外で一過性発現されるものでもよい。
【0030】
宿主細胞には、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、植物細胞等、いずれを使用してもよい。本発明においては、目的の遺伝子産物をより高効率に生産する目的では、植物細胞、特に被子植物細胞、より好ましくはナス科植物細胞、さらに好ましくはトマトの細胞を宿主細胞として使用することがより好ましい。
【0031】
本発明では、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を植物細胞に導入することにより形質転換植物を作製することも好ましい。
【0032】
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入する植物としては、特に限定されないが、例えば、ナス科[ナス(Solanum melongena L.)、トマト(Solanum lycopersicum)、ピーマン(Capsicum annuum L. var. angulosum Mill.)、トウガラシ(Capsicum annuum L.)、タバコ(Nicotiana tabacum L.)等]、イネ科[イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum aestivum L.)、オオムギ(Hordeum vulgare L.)、ペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)、メドウフェスク(Festuca pratensis Huds.)、トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)、チモシー(Phleum pratense L.)等]、アブラナ科[シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica campestris L.)、ハクサイ(Brassica pekinensis Rupr.)、キャベツ(Brassica oleracea L. var. capitata L.)、ダイコン(Raphanus sativus L.)、ナタネ(Brassica campestris L., B. napus L.)等]、マメ科[ダイズ(Glycine max)、アズキ(Vigna angularis Willd.)、インゲン(Phaseolus vulgaris L.)、ソラマメ(Vicia faba L.)等]、ウリ科[キュウリ(Cucumis sativus L.)、メロン(Cucumis melo L.)、スイカ(Citrullus vulgaris Schrad.)、カボチャ(C. moschata Duch., C. maxima Duch.)等]、ヒルガオ科[サツマイモ(Ipomoea batatas)等]、ユリ科[ネギ(Allium fistulosum L.)、タマネギ(Allium cepa L.)、ニラ(Allium tuberosum Rottl.)、ニンニク(Allium sativum L.)、アスパラガス(Asparagus officinalis L.)等]、シソ科[シソ(Perilla frutescens Britt. var. crispa)等]、キク科[キク(Chrysanthemum morifolium)、シュンギク(Chrysanthemum coronarium L.)、レタス(Lactuca sativa L. var. capitata L.)等]、バラ科[バラ(Rose hybrida Hort.)、イチゴ(Fragaria x ananassa Duch.)等]、ミカン科[ミカン(Citras unshiu)、サンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)等]、フトモモ科[ユーカリ(Eucalyptus globulus Labill)等]、ヤナギ科[ポプラ(Populas nigra L. var. italica Koehne)等]、アカザ科[ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.)、テンサイ(Beta vulgaris L.)等]、リンドウ科[リンドウ(Gentiana scabra Bunge var. buergeri Maxim.)等]、ナデシコ科[カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)等]の植物が挙げられる。とりわけナス科植物、中でもトマトがより好ましい。
【0033】
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を植物に導入する方法としては、植物の形質転換に一般的に用いられる方法、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール(PEG)法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法などを用いることができる。これらの植物形質転換法の詳細は、『島本功、岡田清孝 監修 「新版 モデル植物の実験プロトコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで」(2001) 秀潤社』などの一般的な教科書の記載や、Hiei Y. et al., "Efficient transformation of rice (Oryza sativa L.) mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T-DNA." Plant J. (1994) 6, 271-282; Hayashimoto, A. et al., "A polyethylene glycol-mediated protoplast transformation system for production of fertile transgenic rice plants." Plant Physiol. (1990) 93, 857-863等の文献を参照すればよい。
【0034】
アグロバクテリウム法を用いる場合は、アグロバクテリウム法に適したベクターを用いて作製した本発明に係る発現ベクターを、適当なアグロバクテリウム、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)にエレクトロポレーション法などにより導入し、この菌株を植物細胞又はカルスに接種して感染させることにより、形質転換細胞を含むカルスを得ることができる。好適なアグロバクテリウムとしては、限定するものではないが、C58、C58C1RifR、EHA101、EHA105、AGL1、LBA4404等の株を利用することができ、例えばトマトへ導入する場合には、アグロバクテリウムC58C1RifR株を好適に用いることができる。
【0035】
パーティクルガン法やエレクトロポレーション法には、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物のいずれを使用してもよい。導入対象の宿主試料としては、植物の切片を使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい(Christou P, et al., Bio/technology (1991) 9: 957-962)。例えばパーティクルガン法では、遺伝子導入装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を製造業者の説明書に従って使用して、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物をまぶした金属粒子をこのような試料に打ち込むことにより、植物細胞内に導入させ、形質転換植物細胞を得ることができる。操作条件は、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行う。
【0036】
次いで、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入した形質転換植物細胞を、例えば従来知られている植物組織培養法に従って選択培地で培養し、生存したカルスを再分化培地(適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライド等)を含む)で培養することにより、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物により形質転換された植物体を再生することができる。
【0037】
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物が植物中に確実に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロット法等を利用して行うことができる。例えば、形質転換植物の葉から抽出したゲノムDNAについて、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物中のプロモーター/ターミネーターや組み込んだ目的遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR増幅を行えばよい。その増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を明瞭なバンドとして検出することにより、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物の導入を確認することができる。マイクロプレート等の固相にPCR増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認することもできる。作製した形質転換植物において、導入した本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物中の目的の遺伝子の遺伝子産物活性を確認することも好ましい。
【0038】
3.本発明に係る形質転換体を用いた目的遺伝子の遺伝子産物の生産
以上のようにして得られる本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入した形質転換細胞又は形質転換植物は、目的の遺伝子の遺伝子産物(mRNA、rRNA等のRNA、又はタンパク質)を効率よく生産し、好ましくは蓄積することができる。本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入した形質転換細胞又は形質転換植物は、特に、プロモーターとその制御下にある目的の遺伝子の下流にノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターを連結させたDNA構築物又はそれを含む発現ベクターを導入した形質転換植物における遺伝子発現と比較して、目的の遺伝子の遺伝子産物をより高生産することができる。この形質転換細胞又は形質転換植物においては、例えば目的の遺伝子から発現される遺伝子産物が酵素である場合には、その酵素活性を測定することによって当該遺伝子の発現産物量を測定することができる。
【0039】
このような形質転換細胞又は形質転換植物からは、目的の遺伝子から合成され蓄積された遺伝子産物を抽出することもできる。従って本発明は、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を植物細胞に導入し、目的の遺伝子を発現させることにより、その植物において目的遺伝子の遺伝子産物をより高レベルに生産させる方法も提供する。
【0040】
限定するものではないが、導入した発現ベクター又はDNA構築物中の目的の遺伝子を発現させるためには、通常は、形質転換体である細胞(形質転換細胞)を培養することが好ましい。形質転換細胞の培養は、宿主生物の培養に用いられる通常の方法に従って行えばよい。例えば、大腸菌や酵母細胞等の微生物を宿主細胞として得られた形質転換細胞を、宿主微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有する培地中に接種して培養すればよい。培地は、形質転換細胞の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。培地には、必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を添加してもよい。
【0041】
誘導性プロモーターを含む発現ベクター又はDNA構築物で形質転換した宿主細胞を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加するのが一般的である。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養するときにはイソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクター又はDNA構築物で形質転換した宿主細胞を培養するときにはインドール酢酸(IAA)等を培地に添加することができる。培養条件は特に限定されないが、好ましくは形質転換に用いる宿主細胞に適した条件下で行われる。
【0042】
培養後、発現された遺伝子産物(典型的には、タンパク質)が細胞内に蓄積される場合にはその細胞を破砕して採取することができる。一方、その遺伝子産物が細胞外に分泌される場合には、それを培養物から直接採取することができるし、培養物から遠心分離等により細胞を除去することにより培養上清として採取することもできる。
【0043】
本発明では、形質転換を行う代わりに、無細胞翻訳系を使用して本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物中に組み込んだ遺伝子由来の遺伝子産物を製造することもできる。「無細胞翻訳系」とは、大腸菌や酵母細胞等の宿主生物の細胞構造を機械的に破壊して得た懸濁液に、翻訳に必要なアミノ酸などの試薬を加え、試験管中などのin vitro転写翻訳系又はin vitro翻訳系を構成したものである。無細胞翻訳系としては、有利に使用可能なキットが各種市販されている。
【0044】
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物において、組織特異的プロモーター又は時期特異的プロモーターなどの特異的プロモーター(トマト果実特異的発現プロモーターE8など)や構成性プロモーター(CaMV 35Sプロモーターなど)を用いた場合には、その本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入した形質転換植物を成長させ又は栽培することにより、目的の遺伝子の遺伝子産物を植物内で高生産させることができる。例えば、構成性プロモーターを使用する場合には、本発明に係る形質転換植物(植物個体、その種子、器官、組織、カルス等を含む)を成長させて、その葉や果実等の様々な植物組織で目的の遺伝子の遺伝子産物を高生産させることができる。また特異的プロモーターを使用する場合には、そのプロモーターの発現誘導が起こる特異的条件に合致した植物組織で目的の遺伝子の遺伝子産物を高生産させることができる。
【0045】
生産された遺伝子産物がタンパク質であれば、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより培養液、培養細胞又は発現産物が蓄積した組織(例えば、葉、果実等の植物組織)等から単離精製することができる。遺伝子産物がmRNAなどのRNAであれば、一般的なRNA抽出法を用いて単離精製することができる。しかしながら、場合により、遠心分離や限外濾過型フィルター等を用いて採取又は濃縮した培養上清や溶菌液上清、あるいはそれらの上清をさらに硫安分画後に透析にかけるなどして得た溶液をそのまま使用してもよい。
【0046】
本発明において用いるDNAの調製、PCR、ベクター中へのライゲーション、細胞の形質転換、DNA塩基配列決定、プライマーの合成、突然変異誘発、タンパク質の抽出などの分子生物学的・生化学的実験操作は、基本的には通常の実験書の記載に従って行うことができる。そのような実験書としては、例えば、SambrookらのMolecular Cloning, A laboratory manual, 2001, Eds., Sambrook, J. & Russell, DW. Cold Spring Harbor Laboratory Pressを挙げることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]ミラクリン遺伝子の転写調節領域(プロモーター領域及びターミネーター領域)の単離
(1)DNAの抽出
ミラクルフルーツ(Richadella dulcifica)の葉からCTAB法にてゲノムDNAの抽出を行った。乳鉢に5gのミラクルフルーツの葉を入れ、液体窒素を加えて完全にすりつぶし、50mLのチューブに移した。これに10mLの3% CTAB 溶液(100mM Tris-HCl pH8.0、20mM EDTA、1.4M NaCl、3%[w/v] CTAB)を加え混和した後、65℃で30分間保温した。10mLのクロロフォルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え、5分間穏やかに攪拌して、遠心分離(10,000回転、20分、室温)を行った。上層の水層を新しいチューブに回収し、同様にクロロフォルム/イソアミルアルコール(24:1)抽出を行い、水層を回収した。次に10mLの冷イソプロピルアルコールを加え、穏やかに転倒混和し、糸状に析出したゲノムDNAを滅菌したガラス棒で巻き取り、5mLの70%冷エタノールを入れたチューブに移して5分間洗浄した。ゲノムDNAが巻きついたガラス棒を引き上げ、ゲノムDNAを乾燥させ、1mLのRNaseA (10μg/mL)に入れ37℃で2時間処理した。1mLのフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、5分間穏やかに撹拌して遠心分離(10,000回転、20分、室温)し、上層の水層を新しいチューブに移した。1mLのイソプロピルアルコールを加え、穏やかに転倒混和し、糸状に析出してきたゲノムDNAをガラス棒で巻き取った。これを5mLの70%エタノールを入れたチューブに移して5分間洗浄後、ガラス棒ごとゲノムDNAを引き上げて乾燥し、0.4mLの滅菌水に溶解した。単離したゲノムDNAは50倍希釈して、分光光度計で濃度を測定した(O.D.260=50μg/mL)。
【0048】
(2)アダプター付きDNAライブラリーの作成
次に、上記(1)で単離したミラクルフルーツ由来ゲノムDNAを用いて、アダプター付きDNAライブラリーを作製した。
このため、まずアダプターの作製を行った。アダプターはADL(48mer:5'-GTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG CAC GCG TGG TCG ACG GCC CGG GCT GGT-3'(配列番号4))とADS(8mer:5'-ACC AGC CC-NH2-3')とを6:1の比率(112.7μg:18.6μg)で混合し、65℃で5分、37℃で10分アニールさせることにより作製した(75.9μl;100 pmol/μl)。
【0049】
一方、ゲノムDNAを消化するため、平滑末端を生じるEcoRV、PvuII、ScaIの制限酵素を、上記(1)で単離したミラクルフルーツ由来ゲノムDNA 各4μgにそれぞれ添加し、37℃で一晩(約15時間)反応させた。次いで、消化したゲノムDNAをフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、さらにイソプロピルアルコール沈殿を行った。沈殿を乾燥し、20μlの滅菌水に溶解した。
【0050】
この消化したゲノムDNA断片とアダプターを結合させるため、T4 DNA Ligase(Promega)を利用した。反応液(DNA断片 10μl、アダプター 1μl、5×緩衝液 4μl、T4 DNA Ligase 2μl、蒸留水 3μl)をよく混合し、16℃で一晩(約15時間)反応させた後、65℃で10分間処理し、酵素を失活させた。この産物を10倍希釈した液をゲノムウォーキングに用いるDNAライブラリーとして−20℃に保存した。
【0051】
(3)プロモーター領域及びターミネーター領域のクローニング
ミラクリン遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域のクローニングは、ゲノムウォーキングのための改良型PCR法(Siebert et al., Nucl Acids Res (1995) 23, p.1087-1088)により行った。このPCRには、アダプター特異的プライマーAP1:5'-CCA TCC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGC-3'(配列番号5)、AP2:5'-CTA TAG GGC ACG CGT GGT-3'(配列番号6)およびミラクリン遺伝子特異的プライマーF1/458:5'-ACC CAG GTC CCG AAA CCA TTA GTA GCT-3'(配列番号7)、F2/551:5'-GTT CCT GCA AAG TAA AAT GCG GAG ATG-3'(配列番号8)、R1/248:5'-ACA ACT CTG GGT GGA CAA ACG AAG CTG CCG TT-3'(配列番号9)、R1/139:5'-GGA GTT TCT CTC CGT CTA TGT CAA GAA CCG GAT TG-3'(配列番号10)、R2/101:5'-GCC GAA TCC GCT GCA CTA AGC AGT GGT TT-3'(配列番号11)の7つのプライマーを下記の通りに組み合わせて用いた。なおミラクリン遺伝子の上流領域(5'側)の単離にはプライマーR1又はR2を、下流領域(3'側)の単離にはプライマーF1又はF2を用いた。ミラクリン遺伝子特異的プライマーは、既知のミラクリン遺伝子の塩基配列(非特許文献6)に基づいて設計した。
【0052】
まず、1st PCRとして、上記(2)で作成したアダプター付きライブラリー(EcoRV、PvuII、ScaIでそれぞれ消化したゲノムDNAから作成)を鋳型として、(i) AP1とF1/458、(ii) AP1とR1/248、(iii) AP1とR1/139の3種類のプライマー・セットを用いてPCR反応を行った。1st PCRのサイクル条件では、94℃で30秒(変性)、続いて68℃で5分(アニーリング及び伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクル行った。こうして得られた1st PCR産物を滅菌水で100倍希釈し、それを次の2nd PCRの鋳型として用いた。その鋳型DNAと、(i) AP2とF2/551、(ii) AP2とR2/101、(iii) AP2とR2/101の各プライマー・セットを用いて、2nd PCR反応を行った。2nd PCRのサイクル条件では、94℃で30秒(変性)、続いて68℃で5分(アニーリング及び伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクル行った。
【0053】
2nd PCRの終了後、反応液の5μLを1%アガロースゲルでの電気泳動にかけて、増幅断片を確認した。増幅断片のうち特異的増幅と判断された断片をWizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製した。これをpGEM(R)-T Easy Vector System I (Promega)のプロトコルに従ってクローニングし、塩基配列を決定した。さらに、得られた増幅断片の塩基配列が、アダプター配列と使用した遺伝子特異的プライマー配列を両末端に含むこと、及び遺伝子特異的プライマーに続く配列がミラクリン構造遺伝子の既知配列と一致することも確認した。
【0054】
このようにして配列決定された、ミラクリン構造遺伝子(ORF)の開始コドンの1塩基上流からアダプター配列の1塩基下流までの上流領域(本明細書ではプロモーター領域と呼ぶ)の塩基配列を、配列番号1に示す。同様に配列決定された、ミラクリン構造遺伝子(ORF)の終止コドンの1塩基下流からアダプター配列の1塩基上流までの下流領域(本明細書ではターミネーター領域と呼ぶ)の塩基配列を、配列番号2に示す。
【0055】
[実施例2]導入遺伝子発現用の核酸構築物の構築
(1)ベクターの改変
単離したミラクリン遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域をそれぞれ植物発現用に慣用されているバイナリーベクターpBI121中にクローニングするため、まず、pBI121のプロモーター配列中のクローニングサイトにXhoIとKpnI部位を付加する改変を行った。HindIII、XhoI、及びKpnI認識配列(大文字の配列部分)を付加したプライマーpBI121-F-HXK:5'-TTT AAG CTT CTC GAG GGT ACC gca tgc ctg cag gtc-3'(配列番号12)と、XbaI認識部位(大文字の配列部分)を付加したプライマーpBI121-R-X:5'-TTT TCT AGA gtc ccc cgt gtt ctc tcc-3'(配列番号13)を用いて、pBI121(TOYOBO;Chen et al.,Mol Breed (2003) 11, p.287-293;GenBankアクセッション番号AF485783)を鋳型としてPCRを行い、増幅断片をpGEM(R)-T Easy Vector System I (Promega) のプロトコルに従いクローニングし、塩基配列の決定を行った。次いで、得られた増幅断片とベクターpBI121をそれぞれHindIIIとXbaIで処理し、pBI121中の35Sプロモーター配列を増幅断片で置換することにより、XhoIとKpnI部位が付加された35Sプロモーター配列を有するように改変された植物発現ベクターを作製した。この改変ベクターをpBI121HXKと名付けた。
【0056】
(2)改変ベクターへのミラクリン遺伝子プロモーターのクローニング
上記でクローニングしたプロモーター領域由来の異なるサイズのプロモーター配列を導入したベクターを作製した。まず、実施例1でクローニングしたプロモーター領域のDNA断片を鋳型とし、3'側プライマーとしてXbaI-T-MIR(5'-TTT TCT AGA TGT TGT AGA GAC TAT AGG GCT-3';配列番号14)を、5'側プライマーとして以下の各プライマーを組み合わせてPCRを行った。PCRのサイクル条件は、2224bpのミラクリン遺伝子プロモーター配列増幅のために94℃で30秒(変性)、50℃で25秒(アニーリング)、続いて68℃で150秒(伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクルで実施した。また、1512bpおよび1012bpのミラクリン遺伝子プロモーター配列増幅のためには、PCRのサイクル条件は、94℃で30秒(変性)、55℃で25秒、続いて68℃で90秒(伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクルで実施した。さらに、PCRのサイクル条件は、510bpのミラクリン遺伝子プロモーター配列増幅のためには、94℃で30秒(変性)、55℃で25秒、続いて68℃で40秒(伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクルで実施した。なお各プライマー名に付記した増幅サイズは、プライマーXbaI-T-MIRと組み合わせたPCRで増幅することができる本願のプロモーター領域内の配列(プロモーター配列)のサイズであり、これはXbaI-T-MIR中のXbaI部位の配列を含まない。
1) プライマーP-1/F(増幅サイズ:2224bp):
5'-TTT CTC GAG GAT ATC ATT ATA ATA GTG TGT-3'(配列番号15)
2) プライマーP-4/F(増幅サイズ:1512bp):
5'-TTT CTC GAG TTA CCA AAC GCT CAA AAA TAA CAG-3'(配列番号16)
3) プライマーP-7/F(増幅サイズ:1012bp):
5'-TTT CTC GAG TGA CTT AGG ACT TTA ATT TCA CTA-3'(配列番号17)
4) プライマーP-10/F(増幅サイズ:510bp):
5'-TTT CTC GAG ACT TGG GTT AGT TTG GGT-3'(配列番号18)。
それぞれの増幅サイズ(2224bp、1512bp、1012bp、510bp)のPCR産物を、pGEM(R)-T Easy Vector System I(Promega)のプロトコルに従ってクローニングし、塩基配列を確認した。
【0057】
(3)ミラクリン遺伝子の転写調節領域(プロモーター配列及びターミネーター配列)を組み込んだ、導入遺伝子発現用の核酸構築物の作製
507bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列の増幅のために、プライマーEcoRI-T-2:5'-TTT GAA TTC CTA CAA CGT TAC GAA ACG-3'(配列番号19)と、プライマーSacI-P-MIR:5'-TTT GAG CTC TTG GGT TTG GGG GTG GTT TTT CCA-3'(配列番号20)を、一方、1085bpのターミネーター配列の増幅のためにプライマーEcoRI-T-5:5'-TTT GAA TTC GTC GCT GAA TAA AGG-3'(配列番号21)と、プライマーSacI-P-MIR:5'-TTT GAG CTC TTG GGT TTG GGG GTG GTT TTT CCA-3'(配列番号20)を、それぞれ組み合わせて、実施例1でクローニングしたターミネーター領域のDNA断片を鋳型としてPCRを行った。PCRのサイクル条件は、507bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列増幅のために94℃で30秒(変性)、55℃で25秒(アニーリング)、続いて68℃で40秒(伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクルで実施した。また1085bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列増幅のためには、PCRのサイクル条件は、94℃で30秒(変性)、50℃で25秒、続いて68℃で80秒(伸長反応)を1サイクルとして、計35サイクルで実施した。得られたPCR産物は、GEMR-T Easy Vector System I(Promega)のプロトコルに従ってクローニングし、塩基配列の確認を行った。クローニングした507bpと1085bpのターミネーター配列のDNA断片を、上記で作製したベクターpBI121HXKのSacIとEcoRIの間に導入し(すなわちノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター配列(Tnos)を置換し)、それぞれ、pBI121HXK/T0.5、pBI121HXK/T1.1と名付けた。この2つのベクターpBI121HXK/T0.5、pBI121HXK/T1.1及びpBI121HXKベクター(対照)のXhoIとXbaI部位に、さらに、上記(2)でクローニングした異なるサイズのミラクリン遺伝子プロモーター配列をそれぞれ導入し、植物発現ベクターを作製した。
【0058】
以下に、このようにしてベクターpBI121HXKをベースに作製した発現ベクター中の、ミラクリン遺伝子のプロモーター配列及びターミネーター配列を含むGUS遺伝子発現誘導性の核酸構築物について記載する(図1も参照されたい)。
1) P2.2/T1.1:
ミラクリン遺伝子プロモーター配列(2224bp;P2.2と称する;配列番号1の塩基番号1〜2224)の下流に、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(1085bp;T1.1と称する;配列番号2の塩基番号1〜1085)が連結されている。
【0059】
2) P2.2/Tnos
ミラクリン遺伝子プロモーター配列(2224bp;P2.2と称する;配列番号1の塩基番号1〜2224)の下流に、GUS遺伝子、次いでノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)が連結されている。
【0060】
3) P2.2/T0.5:
ミラクリン遺伝子プロモーター配列(2224bp;P2.2と称する;配列番号1の塩基番号1〜2224)の下流に、GUS遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(507bp;T0.5と称する;配列番号2の塩基番号1〜507)が連結されている。
【0061】
4) P1.5/T1.1:
ミラクリン遺伝子プロモーター配列(1512bp;P1.5と称する;配列番号1の塩基番号713〜2224)の下流に、GUS遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(1085bp;T1.1と称する;配列番号2の塩基番号1〜1085)が連結されている。
【0062】
5) P1.0/T1.1:
ミラクリン遺伝子プロモーター配列(1012bp;P1.0と称する;配列番号1の塩基番号1213〜2224)の下流に、GUS遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(1085bp;T1.1と称する;配列番号2の塩基番号1〜1085)が連結されている。
【0063】
6) P0.5/T1.1:
ミラクリン遺伝子プロモーター配列(510bp;P0.5と称する;配列番号1の塩基番号1715〜2224)の下流に、GUS遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(1085bp;T1.1と称する;配列番号2の塩基番号1〜1085)が連結されている。
【0064】
7) P35S/T1.1:
カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に、GUS遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(1085bp;T1.1と称する;配列番号2の塩基番号1〜1085)が連結されている。
【0065】
8) P35S/T0.5:
カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に、GUS遺伝子、次いでミラクリン遺伝子ターミネーター配列(507bp;T0.5と称する;配列番号3;配列番号2の塩基番号1〜507に相当する)が連結されている。
【0066】
9) P35S/Tnos
ベクターpBI121HXK中に含まれる核酸構築物(対照用)。カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター(以下、35Sプロモーターと称する)の下流に、GUS遺伝子、次いでノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター(Tnos)が連結されている。
【0067】
次に、これらの発現ベクターをアグロバクテリウムC58C1RifR株(Deblaere et al., Nucl Acids Res (1985) 13, p.4777-4788)にエレクトロポレーション法により導入し、次の実施例においてトマトの形質転換に用いた。
【0068】
[実施例3]形質転換トマトの作製と導入遺伝子発現の測定
トマト(Solanum lycopersicum)の形質転換は、実施例2で作製した植物発現ベクターを各々導入したアグロバクテリウムC58C1RifR株を用いて、Sun et al.(Plant Cell Physiol., (2006) 47, p.426-431)の方法に従って以下の手順で行った。まず、無菌播種したトマト子葉を、葉脈に垂直に切断し一枚の子葉から2切片を作った。葉切片をアグロバクテリウム懸濁液(MS培地に100μMのアセトシリンゴンと、40μMのメルカプトルエタノールを加えたものを使用)に浸し、10分間感染させた後、懸濁液を除き、共存培地(MS培地、3%ショ糖、0.3%ゲルライト、1.5mg/lゼアチン、pH 5.8)に葉の表が下になるように並べた。シャーレをアルミホイルで完全に包み、25℃の培養室で3〜4日共存培養を行った。その後、選抜培地(MS培地、3%ショ糖、0.3%ゲルライト、1.5mg/lゼアチン、100mg/l カナマイシン、pH5.8)に葉の表が上になるように移し替え、2〜3週間毎に新しい選抜培地に移しながら、25℃、16時間日長で培養した。子葉片からカルスが形成されたら、シュートの生長を速めるためゼアチンの濃度を1mg/Lに下げた。カルスから葉が出てきたら、子葉切片部分から切り落とし、それを新しい培地に移した。伸長したシュートの葉は、根元で切り取り、発根培地(1/2 MS培地、1.5%ショ糖、0.3%ゲルライト、50mg/l カナマイシン)に移した。発根培地で2週間以内に発根した個体を形質転換体の候補として選抜し、順化した。
【0069】
発根順化した個体についてゲノムPCR法による導入遺伝子の確認およびフローサイトメーター(PA-II)により倍数性の確認を行った。2倍体で、かつ導入遺伝子が確認できた個体について、導入遺伝子がコードするGUSの活性測定を蛍光法(Kosugi et al., Plant Sci (1990)70, p.133-140)にて行った。まず、発根順化した個体に由来する、粉砕したトマト果実0.2gを1.5mlチューブに入れ、250μLの抽出緩衝液(50mM リン酸緩衝液(pH 7.0)、 10mM EDTA、0.1% Triton X-100、0.1% ラウロイルサルコシンナトリウム、10mM β-メルカプトエタノール)を加え攪拌し、遠心分離(12,000回転、5分、4℃)した。上清50μLを新しいチューブに移し、50μL 4-メチルウンベリフェリルグルクロニド(MUG)溶液(3.5mg MUG/10ml抽出緩衝液)を加え、よく攪拌し、37℃で60分静置した。反応液100μLに1mLの0.2M 炭酸ナトリウムを加えて反応を終了させた後、F4010型分光蛍光光度計(HITACHI)により、励起波長を365nmとし、455nmの蛍光波長を測定した。抽出液の全可溶性タンパク質定量はProtein Assay Reagent Kit(PIERCE)を用いて行った。GUS活性は4-MU pmol mg-1 protein min-1として算出した。
【0070】
このGUS活性測定の結果を表1及び図2に示す。有意差検定にはFisherのPSLD法を用いた。
【0071】
【表1】

【0072】
表1及び図2に示される通り、507bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列(T0.5)は、ミラクリン遺伝子プロモーター配列と35Sプロモーターのいずれを使用した場合でも、1085bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列(T1.1)やnosターミネーター(Tnos)と比較して、かなり高いGUS活性値をもたらした。
【0073】
特に、35Sプロモーター(P35S)と507bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列(T0.5)の組み合わせを含む核酸構築物(No.8)をトマトに導入した場合には、既存の35Sプロモーターとnosターミネーターの組み合わせを含む核酸構築物(No.9)と比べて、有意に高いGUS活性を示した(表1及び図2)。例えば、No.8とNo.9の核酸構築物についてそれぞれ得られたGUS活性の最大値を比較すると、No.8の方が約2倍高かった。一方、35Sプロモーター(P35S)と1085bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列(T1.1)の組み合わせを含む核酸構築物No.7を導入した場合は、核酸構築物No.9と比較して有意に高いGUS活性を示さなかった(表1及び図2)。
【0074】
これらの結果は、ミラクリン遺伝子の507bpのターミネーター配列(T0.5)が、nosターミネーター(Tnos)や1085bpのミラクリン遺伝子ターミネーター配列(T1.1)と比べて、導入遺伝子由来の遺伝子産物の生産量を大きく増加させることを示している。
【0075】
このミラクリン遺伝子ターミネーター配列(T0.5)とは対照的に、ミラクリン遺伝子プロモーター配列を連結した核酸構築物(No.1〜6)を導入した場合には、組み合わせるターミネーター配列の種類にかかわらず、既存の35Sプロモーター/nosターミネーターの組み合わせを含む核酸構築物(No.9)よりも有意に高いGUS活性を示すことはなかった(図2中、核酸構築物No.1〜6、9)。このことから、ミラクリン遺伝子のプロモーター領域の発現誘導能は比較的弱いと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のミラクリン遺伝子ターミネーター配列は、植物でのタンパク質等の組換え生産において遺伝子産物の生産量を増加させるために使用することができる。本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーター配列は、限定するものではないが、35Sプロモーターを用いた核酸構築物の遺伝子発現をとりわけ強化したことから、特に植物において、35Sプロモーターを使用した遺伝子発現系でより効率的な組換え生産を行う上で有用である。例えば、本発明に係るミラクリン遺伝子ターミネーター配列を用いて形質転換トマトを作製することにより、トマト果実で目的タンパク質を従来よりも高蓄積させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ミラクリン遺伝子の転写調節領域(プロモーター配列及びターミネーター配列)がその制御下にあるGUS遺伝子の発現産物の量に及ぼす効果を調べるために用いた、9種類の核酸構築物の模式図である。
【図2】図1に示したそれぞれの核酸構築物を導入した形質転換トマトの果実におけるGUS活性を示すグラフである。グラフ中、対照の核酸構築物P35S/Tnosについての活性との比較において有意差がない活性レベルが「a」、有意差がある活性レベル(核酸構築物No.8のみ)が「b」として表されている。
【配列表フリーテキスト】
【0078】
配列番号1:ミラクリン遺伝子のプロモーター領域
配列番号2:ミラクリン遺伝子のターミネーター領域
配列番号3:ミラクリン遺伝子のターミネーターT0.5
配列番号4:アダプターADL
配列番号5:プライマーAP1
配列番号6:プライマーAP2
配列番号7:プライマーF1/458
配列番号8:プライマーF2/551
配列番号9:プライマーR1/248
配列番号10:プライマーR1/139
配列番号11:プライマーR2/101
配列番号12:プライマーpBI121-F-HXK、塩基番号1〜21はHindIII、XhoI及びKpnI部位
配列番号13:プライマーpBI121-R-HXK、塩基番号1〜9はXbaI部位
配列番号14:プロモーター・プライマーXbaI-T-MIR
配列番号15:プライマーP-1/F
配列番号16:プライマーP-4/F
配列番号17:プライマーP-7/F
配列番号18:プライマーP-10/F
配列番号19:プライマー EcoRI-T-2
配列番号20:ターミネーター・プライマーSacI-P-MIR
配列番号21:プライマー EcoRI-T-5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)のいずれかのDNAからなる、ターミネーター。
(a)配列番号3で示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号2の塩基番号1から、塩基番号450〜550のいずれかまでの塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターと比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA
(c)前記(a)又は(b)のDNAの塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターと比較して、その上流に連結された遺伝子の発現産物量を増加させるターミネーター機能を有するDNA
【請求項2】
プロモーター及び遺伝子挿入部位の下流に連結された請求項1に記載のターミネーターを含む、発現ベクター。
【請求項3】
プロモーターが植物プロモーターである、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
プロモーターがカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターである、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項5】
遺伝子挿入部位に挿入された遺伝子をさらに含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項6】
遺伝子の下流に連結された請求項1に記載のターミネーターを含む、DNA構築物。
【請求項7】
前記ターミネーターが、プロモーター及びその制御下に配置された遺伝子の下流に連結されている、請求項6に記載のDNA構築物。
【請求項8】
プロモーターが植物プロモーターである、請求項7に記載のDNA構築物。
【請求項9】
プロモーターがカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターである、請求項7に記載のDNA構築物。
【請求項10】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の発現ベクター又は請求項7〜9のいずれか1項に記載のDNA構築物を含む、形質転換体。
【請求項11】
形質転換植物である、請求項10に記載の形質転換体。
【請求項12】
請求項5に記載の発現ベクター、又は請求項7〜9のいずれか1項に記載のDNA構築物を植物細胞に導入することを特徴とする、植物において前記遺伝子の遺伝子産物を組換え生産させる方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−104339(P2010−104339A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282252(P2008−282252)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度〜平成20年度、経済産業省、「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】