説明

組換えALSVによるダイズ内在性遺伝子の発現抑制

【課題】ダイズの育種と安定生産等において重要な子実形成期および発芽期のそれぞれにおいて機能するダイズ内在性遺伝子を、迅速かつ安定的に発現抑制するための新しい手段を提供する。
【解決手段】ダイズ内在遺伝子配列を含む組換えALSVをダイズ子葉に接種することにより、組換えALSVを全身感染させたダイズを作出し、育成して結実させ、次いでこの組換えALSV感染ダイズの種子を生育させ、子実形成期および/または発芽期において当該内在性遺伝子の発現を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、組換えALSVによるダイズ内在性遺伝子の発現抑制に関するものである。さらに詳しくは、ダイズの子実形成期および発芽期にそれぞれ機能するダイズ内在性遺伝子の発現を抑制するための組換えALSV、この組換えALSVを用いたダイズ内在性遺伝子の発現抑制方法、および内在性遺伝子の発現が抑制された組換えALSV感染ダイズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RNAサイレンシングは真核生物に普遍的な配列特異的遺伝子制御システムであり、発生制御やウイルスに対する防御機構である。この現象は、1990年に色素合成遺伝子を形質転換したペチュニアにおいて外来遺伝子と内在性遺伝子の相互作用‘co-supression’として初めて報告された(非特許文献1、2)。続いてファージや線虫においても同様の現象が報告された(非特許文献3、4)。それ以後は、植物、線虫、ショウジョウバエなど多くの生物で広く研究が進められた。RNAサイレンシングはdouble-stranded RNA(dsRNA)の蓄積により引き起こされ、dsRNAはDICER(植物においてはDICER-LIKE:DCL)と呼ばれるRNase III-like nucleaseにより3’末端に2ntの突出を持つ21から25 nucleotide(nt)のsmall ds RNA(ds-sRNA)に切断される。これらのsRNAはRNA-induced silencing complex(RISC)に取り込まれ、この複合体により相補的な塩基配列にたいして干渉し、転写抑制やmRNAの分解を行う。
【0003】
免疫機構をもたない植物では、RNAサイレンシングはウイルスに対する防御機構として重要な役割を持っている(非特許文献5)。ウイルスが植物に感染すると複製時に形成されるdsRNAが引き金となり、DCLにより21nt〜22ntの短いsi(small interferinginterence)RNAと23〜25ntの長いsiRNAに切断される(非特許文献6、7)。siRNAはRISCに取り込まれウイルスRNAの分解により、ウイルス感染を抑制する。またsiRNAは隣接する細胞へと移行し、RNA-dependent RNA polymerase(RdRp)の働きによりsiRNAと相補的なmRNAがdsRNAに変換され、さらにサイレンシングを拡大する(非特許文献8−10)。また長いsiRNAはヒストンやDNAのメチル化にも関係していることが報告されている(非特許文献11、12)。一方、RNAサイレンシングに対して多くの植物ウイルスはサイレンシングサプレッサータンパク質を発現し、ds siRNAと結合するなどしてサイレンシングを阻害する(非特許文献13、14)。
【0004】
1995年、植物の内在性遺伝子を組み込んだTMV感染によりその遺伝子のRNAサイレンシングが誘導されることが報告された(非特許文献15)。これはウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus-induced gene silencing:VIGS)と呼ばれ、優れた逆遺伝学的手法として現在幅広く利用されている。従来、植物遺伝子の機能解析は形質転換体や変異体の作出により行われてきたが、VIGSを利用することで多数の個体固体を短期間に解析することができる。これまでにTabacco rattle virus(TRV)によりナス科植物、シロイヌナズナ、トマト、N.benthamiana(ベンサミアナ)(非特許文献16−19)、Cabbage leaf curl virus(CbLCV) によるりシロイヌナズナ(非特許文献20)、Pea early browning virus(PEBV)によりエンドウ(非特許文献21)、Barley stripe mosaic virus(BSMV)によりオオムギ(非特許文献22)、Tomato yellow leaf curl china virus(TYLCCNV)によりNicotiana属植物(非特許文献23)などでVIGSの利用が報告されていた。また、Cucumber mosaic virus (CMV)を用いたダイズにおけるVIGSの利用も知られている(特許文献1)。
【0005】
VIGSによる遺伝子解析は、致死遺伝子を含む多数の遺伝子を対象にでき、また形質転換体の作出が困難な植物にも利用できるなどの利点がある。一方、これまでに利用できるウイルスが限られていること、ウイルス感染により病徴がでることなど問題点がある。また果樹などの多年生植物でのVIGSベクターの報告例はない。特に、果樹は形質転換が困難であり、もし遺伝子を導入したとしても、その結果現れる形質を評価するまでに長い期間を要するため、短期間で遺伝子発現を抑制できるVIGSベクターは利用価値が高い。
【0006】
リンゴ小球形潜在ウイルス(Apple latent spherical virus:ALSV)は2分節1本鎖RNAゲノム(RNA1とRNA2)と3種類の外被タンパク質(Vp25、Vp20およびVp24)からなる径25nmの小球形ウイルスである(非特許文献24)。リンゴに潜在感染し、キノアに退緑などの病徴を示すが、タバコ、ベンサミアナ、N.occidentalis(オキシデンタリス)、N.glutinosa(グルチノーサ)およびシロイヌナズナなどほとんどの宿主植物に無病徴感染する。これまでにRNA2のMP(movement protein)とVp25の間に外来遺伝子導入部位を組み込んだウイルスベクター(第1図)が構築され、キノア、草本植物、リンゴ等での外来遺伝子の発現に成功している(特許文献2、非特許文献23、25、26)。
【特許文献1】特開2008-211993号公報
【特許文献2】特開2004-65009号公報
【非特許文献1】Merai,Z., Kerenyi,Z., Kertesz,S., Magna,M., Lakatos,L. and Silhavy,D. (2006). Double-Stranded RNA Binding May Be a General Plant RNA Viral Strategy To Suppress RNA Silencing. J.Virol 5747-5756.
【非特許文献2】Krol,AR., Mur,LA., Mol,JNM. and Stuitje,AR. (1990). Flavonoid Genes in Petunia:Addition of a Limited Number of Gene Copies May Lead to a Suppression of Gene Expression. Plant Cell 2:291-299.
【非特許文献3】Cogoni,C., Lrelan,JT., Schumacher,M., Schmidhauser,TJ., Selker,EU. and Macino,G. (1996). Transgene silencing of the al-1 gene in vegetative cell of Neurospora is mediated by a cytoplasmic effector ond does not depend on DNA-DNA interaction or DNA methylation. EMBO J 15:3153-3163.
【非特許文献4】Fire,A., Xu,S., Montgomery,MK., Kostas,SA., Driver,SE. and Mello,CC. (1998). Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in Caenorhabditis elegans. Nature 391:806-807
【非特許文献5】Voinnet,O. (2001). RNA silencing as a plant immune system against viruses. Trends Genet 17:449-459.
【非特許文献6】Gasciolli,V., Mallory,AC., Bartel,DP. and Vaucheret,H. (2005). Partially redundant functions of Arabidopsis DICER-like enzyme and a role for DCL4 in productiong trans-acting siRNAs. Curr.Biol 15:1494-1500.
【非特許文献7】Hamiltom,A., Voinnet,O., Chappell,L. and Baulcom,DC. (2002). Two classes of short interfering RNA in RNA silencing. EMBO 21:4671-4679.
【非特許文献8】Baulcombe,DC.(2004). RNA silencing in plants. Nature 431:356-363.
【非特許文献9】Qi,Y. and Hannon,GJ. (2005). Uncovering RNAi mechanisms in plant:biochemistry enters the fray. FEBS Lett 579:5899-5903.
【非特許文献10】Wang,MB. and Metzlaff,M. (2005). RNA silencing and antiviral defense in plant. Plant Biol 8:216-222.
【非特許文献11】Wassenegger,M. (2005). The role of the RNAi machaniery in hetero -chromatin formation. Cell 122:13-16
【非特許文献12】Zilberman,D., Cao,X. and Jacobsen,SE. (2003). ARGONAUTE4 control of locus-specific siRNA accumulation and DNA and histon methylation. Science 299:716-719
【非特許文献13】Lakatos,L., Csorba,T., Pantaleo,V., Chapman,EJ., Carrington,JC., Liu,Y., Dolja,VV., Calvino,LF., Lopez-Moya,JJ. and Jozsef,B. (2006). Small RNA binding is a common strategy to suppress RNA silencing by several viral suppressors. EMBO J 25:2768-2780.
【非特許文献14】Merai,Z., Kerenyi,Z., Kertesz,S., Magna,M., Lakatos,L. and Silhavy,D. (2006). Double-Stranded RNA Binding May Be a General Plant RNA Viral Strategy To Suppress RNA Silencing. J.Virol 5747-5756.
【非特許文献15】Kumagai,MH., Donson,J., Della-Cioppa,G., Harvey,D., Hanley,K. and Grill,LK. (1995). Cytoplasmic inhibition of carotenoid biosynthesis with virus-derived RNA. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1679-1683.
【非特許文献16】Brigneti,G., Martin-Hernandez,AM., Jin,H., Baulcombe,DC., Baker,B. and Jones,JDG. (2004). Virus-induced gene silencing in Solanum species.Plant J 39:264-272.
【非特許文献17】Burch-smith,T., Schiff,M., Liu,Y. and Dinesh-Kumar,SP. (2006). Efficient Virus-Induced Gene Silencing in Arabidopsis. Plant Physiol 142:22-27.
【非特許文献18】Liu,Y., Schiff,M., Marathe,R. and Dinesh-Kumar,SP. (2002). Virus -induced gene silencing in tomato. Plant J 31:777-786.
【非特許文献19】Hileman,LC., Drea,S., Martino,G., Litt,A. and Irush,VF. (2005). Virus- induced gene silencing is an effective tool for assaying gene function in the basal eudicot species Papaver somnifeum(opium poppy). Plant J 44:334-341.
【非特許文献20】Turnage,MA., Muangsan,N., Peele,CG. and Robertson,D. (2002). Geminivirus-based vectors for gene silencing in Arabidopsis. Plant J 30:107-114.
【非特許文献21】Constantin,GD., Krath,BN., MacFarlane,SA., Nicolaisen,M., Johansen, IE. and Lund,OS. (2004). Virus-induced gene silencing as a tool for functional genomics in a legume species. Plant J 40:622-631.
【非特許文献22】Holzberg,S., Brosio,P., Gross,C. and Pogue,GP. (2002). Barley stripe mosaic virus-induced gene silencing in a monocot plant. Plant J 30:315-327.
【非特許文献23】佐々木伸浩(2003).ALSVベクターによる抗菌性ペプチドの植物体における発現.岩手大学大学院連合農学研究科修士論文.
【非特許文献24】Li,C., Yoshikawa,N., Takahashi,T., Ito,T., Yoshida,K. and Koganezawa,H. Nucleotide sequence and genome organization of Apple latent spherical virus:a new virus classified into the family Comoviridae. (2000). J.Gen.Virol 81:541-547.
【非特許文献25】Li,C., Sasaki,N., Isogai,M. and Yoshikawa,N. (2004). Stable expression of foreign proteins in herbaceous and apple plants using Apple latent spherical virus RNA2 victors. Arch Virol 149:1541-1558.
【非特許文献26】李春江(1999).リンゴ小球形潜在ウイルス構造のゲノムとウイルスベクターへの改変に関する研究.岩手大学大学院連合農学研究科博士論文.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダイズの子実は良質のタンパク質と脂質の供給源であるとともに、様々な機能性成分も含まれていることから、食物としての用途は幅広い。また、近年はバイオエタノールの原料としてダイズの需要は高まりつつある。
【0008】
例えばダイズの生産量を増大させたり、その栄養価をさらに向上させる手段として、遺伝子改変による形質転換ダイズの作出が試みられている。この遺伝子改変には、ダイズが本来持っていない外来性の遺伝子を導入して新たな有用形質を付与する方法と、ダイズが本来持っている内在性遺伝子の発現を抑制することによって不要または不都合な形質を除去または低下させる方法とがある。後者はまた、ダイズの各種内在性遺伝子の機能を個体レベルで正確に理解するためにも有用であり、例えば特定の内在性遺伝子の発現抑制によって低下した機能を解析することは、当該機能を増強するための手段を探索するうえで重要な情報を提供する。
【0009】
内在性遺伝子の発現抑制のためには、前記のジーンサイレンシングは有効な手段であるが、従来の形質転換法(転写後型ジーンサイレンシング:PTGS)の場合には迅速かつ安定的なジーンサイレンシングが困難であった。また、そもそもダイズは安定的な形質転換が困難な植物であるという問題も存在する。さらに、センストランスジーンに由来する形質転換ダイズのPTGSは子実形成期にリセットされるため、子実形成期に機能する遺伝子の発現を抑制することができないと考えられる。
【0010】
また、特許文献1に開示されているCMVベクターを用いたVIGSは、ダイズの子実形成期における遺伝子発現の抑制は可能であるが、CMVベクターはダイズ品種によってVIGS効果が大きく異なり、またCMVベクターは感染個体において均一なVIGSを引き起こさないといった問題点を有している。
【0011】
本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、ダイズの育種と安定生産等において重要な子実形成期および発芽期のそれぞれにおいて機能するダイズ内在性遺伝子を、迅速かつ安定的に発現抑制するための新しい手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願は、前記課題の解決手段として以下の発明を提供する。
【0013】
第1の発明は、ダイズの子実形成期に機能する内在遺伝子配列を含む組換えALSV(以下「子実形成期VIGS用の組換えALSV」と記載することがある)である。
【0014】
第2の発明は、ダイズの発芽期に機能する内在遺伝子配列を含む組換えALSV(以下「発芽期VIGS用の組換えALSV」と記載することがある)である。
【0015】
第3の発明は、ダイズの子実形成期に機能する内在遺伝子の発現を抑制する方法であって、子実形成期VIGS用の組換えALSVをダイズ子葉に接種し全身感染させる工程を含むことを特徴とする子実形成期の遺伝子発現抑制方法である。
【0016】
第4の発明は、ダイズの発芽期に機能する内在遺伝子の発現を抑制する方法であって、発芽期VIGS用の組換えALSVをダイズ子葉に接種し全身感染させる工程と、この組換えALSV感染ダイズの種子を生育させる工程を含むことを特徴とする方法である。
【0017】
第5の発明は、子実形成期VIGS用の組換えALSVをダイズ子葉に接種し全身感染させたダイズであって、その子実形成期に機能する内在性遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする組換えALSV感染ダイズである。
【0018】
第6の発明は、前記第5発明の組換えALSV感染ダイズの種子を生育させたダイズであって、その発芽期に機能する内在性遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする組換えALSV感染ダイズである。
【0019】
第7の発明は、ダイズ内在性遺伝子の機能時期を特定する方法であって、機能時期が不明なダイズ内在遺伝子配列を含む組換えALSVをダイズ子葉に感染させて組換えALSV感染ダイズを作出して育成し、次いでこの組換えALSV感染ダイズの種子を生育させ、子実形成期から発芽期のどの時期で内在性遺伝子の発現が低下するかを特定する方法である。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、ダイズの子実形成期および発芽期のそれぞれにおいて機能するダイズ内在性遺伝子を、迅速かつ安定的に発現抑制することが可能となる。ダイズの子実形成期および発芽期はその育種と安定生産等において重要な時期であり、生殖生長期の子実形成過程や種子貯蔵タンパク質、さらに発芽期を含む初期成育過程に機能する遺伝子の安定的な発現抑制は、例えばダイズの安定生産や栄養価の向上等を目的とする新しいダイズ品種の作出に直接的または間接的に有用な情報を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本願発明における「ダイズ内在性遺伝子」は、ダイズゲノムDNAに存在し、ダイズ子実形成期または発芽期に機能する遺伝子である。また、機能時期が不明の内在性遺伝子を対象とし、その機能時期を特定することもできる。
【0022】
この内在遺伝子は、ダイズ細胞から定法によって単離したゲノムDNAや、ゲノムDNAから転写されたmRNAを鋳型とするcDNAとしてALSVベクターに組込むことができる。
【0023】
組換えALSVの作製は、基本的には特許文献2に開示された方法に従って行うことができる。例えば、ALSV RNA2の感染性cDNAクローンであるpEALSR2L5R5に、内在性遺伝子cDNAをインサートDNAとして組込むことによって、組換えALSVを作製することができる。
【0024】
このようにして作製した組換えALSVを用いたダイズのVIGSは以下の手順で行うことができる。
【0025】
まず、組換えALSVを増殖宿主(例えば、キノア)に接種して増殖させ、全身感染した宿主から全RNAを抽出する。
【0026】
次いで、前記の全RNAを、例えばパーティクルボンバードメント法を用いてダイズ子葉に接種する。これによって、組換えALSVを確実かつ安定にダイズに全身感染させることができる。
【0027】
ダイズに全身感染した組換えALSVは約50%の確率で子実形成期に胚に移行するので、組換えALSVのインサート配列が子実形成期に機能する遺伝子配列である場合は、その子実形成期においてVIGSが引き起こされ、当該遺伝子の発現が抑制される。
【0028】
また、胚に移行した組換えALSVは種子伝染する。このため、組換えALSVのインサート配列が発芽期で機能する遺伝子配列である場合には、種子から個体発生させたダイズの発芽期においてVIGSが引き起こされ、当該遺伝子の発現が抑制される。
【0029】
以下、実施例を示して本願発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本願発明は以下の例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
(1)ダイズ内在性遺伝子のクローニング
ダイズの葉からmRNAを抽出し、カロテノイド合成経路に関与するダイズPDS(phytoene desaturase)遺伝子の公知の配列(GeneBank Accession No.CZ491122)をもとに設計したプライマーを用いて、ダイズ葉から抽出したmRNAからPDS遺伝子の一部をPCRにより増幅しクローニングした。
【0031】
mRNAの抽出はmRNA Isolation Kit(Roche)を用いて以下のようにおこなった。−80℃で凍結させたダイズ葉(0.2g)を乳鉢、乳棒で粉末状にした後、lysis bufferを3ml加えた。10,000rpm、30秒遠心分離し、上清をファルコンチューブに移した。3μlのbiotin-labeled oligo(dt)20probeを加え、300μlのマグネティックパーティクルを新しいファルコンチューブに入れ、磁石でパーティクルを集めてstrage bufferを取り除いた。続いて400μlのlysis bufferを加えて懸濁し、再度磁石でパーティクルを集めbufferを取り除いた。これにmRNAを含む上清を加え再懸濁し、37℃で5分インキュベートした。その後磁石でマグネティックパーティクルを3分程度セパレートし、上清を取り除いた。マグネティックパーティクルを500μlのWashing bufferで懸濁し、磁石でセパレートして、上清を除去した。この操作を3回繰り返した。50μlのWaterをマグネティックパーティクルへ加えて再懸濁し、65℃で2分インキュベートした。磁石でセパレートし上清をマイクロチューブへ移し、吸光度を測定し0.1μg/μlに調整した。
【0032】
逆転写反応は以下のように行った。PCRチューブに1μlのmRNA、4μlの5×RT Buffer(100U/μl TaKaRa)、2μlのdNTP Mixture(各10mM TaKaRa)、1μlのRNase Inhibitor(10U/μl TaKaRa)、1μl のOligo(dT)20 Primer(10pmol/μl)、10μlの滅菌水、そして1μlのRever Tra Ace(TaKaRa)を加えて混合した。チューブをTaKaRa Thermal Cycler Sp(TaKaRa)にセットして30℃で10分間、42℃で20分間、99℃で5分間の逆転写反応を行った。
【0033】
PCRは以下のように行った。10μlのcDNA溶液、各1μlの合成プライマー(10μM)、5μl の10×PCR buffer(TaKaRa)、1μlのEx-Taq(2.5U/μl TaKaRa)、32μlの滅菌水を混合しThermal Cycler Sp(TaKaRa)にセットした。初め94℃で5分間熱変性し、続いて94℃で30秒、アニーリングを55℃で30秒、DNA相補鎖の伸長を72℃で30秒という過程を1サイクルとして、30サイクル行い、その後72℃で10分間処理した。PCR終了後、2μlの反応液と0.5μlの10×loading Buffer(1%SDS,50%グリセロール,0.05%ブロモフェノールブルー)を混合し、1%アガロースゲル(0.1μg/mlの臭化エチジウムを含む)で電気泳動(100V)してPCR産物のサイズを確認した。泳動には1×TAE Buffer(40mM Tris-酢酸,1mM EDTA)を使用し、分子量マーカーにはλファージのHindIII断片を用いた。
【0034】
PCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて次のようにゲルから回収した。1%アガロースゲルで上記のPCR反応液5μlを全量電気泳動し、バンドをカッターで切り出しエッペンチューブに入れた。3倍容のBufferQGを加えて50℃で10分間インキュベートした。ときどき懸濁して完全にゲルが溶けたのち、QIA quick spin columnにcollection tubeを取り付け、これに溶液を移して13,000rpm、室温で1分間遠心した。その後collection tube内の液を捨て、再びQIA quick spin columnにcollection tubeをつけて0.75mlのBuffer PEを加えて13000rpm、室温で1分間遠心した。同様にcollection tube内の液を捨て、再び13,000rpm、室温で1分間遠心した。QIA quick spin columnをエッペンチューブに移した後にcolumnに30μlのBuffer EBを添加し、1分間放置後、13000rpm、室温で1分間遠心した。
【0035】
精製したPCR産物をpGEMR-T Easy Vector Systemsを用いて以下のようにライゲーション反応を行った。マイクロチューブに1.5μlの精製PCR産物、0.5μlのpGEMR-T Easy Vector、2.5μの2×Rapid Ligation Buffer 、そしてl0.5μlのT4 DNA Ligaseを混合して4℃で一晩静置した。続いて5μlのライゲーション産物を以下のように大腸菌(DH5α)にヒートショック法で形質転換した。−80℃で凍結保存しておいたDH5α(100ml)を氷上でゆっくり溶解し、これに5μlのライゲーション産物を加え、軽く攪拌後、氷上に30分間静置した。続いて42℃で45秒インキューベートし、ただちに氷上に2分間静置した。37℃に加温した900μlのSOC(1LのSOCあたりTrypton peptone 20g、Yeast Extract 5g、NaCl 0.58g、KCl 0.19g、1M MgCl・6H2O 10ml、1M MgSO4・7H2O 10ml、グルコース 10ml)を加えて採血管に移し、37℃で1時間振盪培養した。LMAプレートに培養液200μlを塗り広げて風乾後、37℃で14時間培養した。形成されたコロニーを爪楊枝を用いて試験管(2mlのLB培地に4μlのアンピシリンを加えた培地)に移植し、37℃で12−16時間振とう培養した。
【0036】
プラスミドの抽出は煮沸法により以下のように行った。培養液をマイクロチューブに移し、14,000rpm、室温で30秒遠心後、上清を除去した。沈殿に350μlのSTET〔0.1M NaCl,10mM Tris-HCl(pH8.0),1mM EDTA(pH8.0),5%TritonX-100〕を加えて懸濁し、25μlのリゾチーム溶液〔10mg/mlのリゾチーム,10mM Tris-HCl(pH8.0)〕を加えて3秒間攪拌した後40秒間沸騰水につけ、ただちに氷上に置いた。14,000rpm、室温で20分間遠心後、沈殿を爪楊枝で除去し、上清に450μlのイソプロパノールと3M酢酸ナトリウム45μlを加えて攪拌後、5分間静置した。続いて14,000rpm、4℃で5分間遠心した。上清を除去した後、1mlの70%エタノールを加え14,000rpm、4℃で2分間遠心し、沈殿を減圧下で乾燥させた。30μlのTE Buffer〔10mM Tris-HCl(pH8.0),RNaseA(20μg/ml)〕を加えて懸濁し、37℃に30分間静置した。
【0037】
得られたプラスミド2μlを1%アガロースゲルで電気泳動し、インサートが挿入されていると考えられるプラスミドを選抜した。選抜したプラスミドを制限酵素BamHIとSacIで処理し、再び1%アガロースゲルで電気泳動しインサートが挿入されているか確認した。制限酵素処理は2μlのプラスミドに0.2μlの、0.2μlの、1μlの各制限酵素に至適なbuffe、6.6μl滅菌水を加えて混合し、37℃で2時間静置して行った。
【0038】
インサートが挿入されたプラスミドを次のように精製した。50μlのプラスミドDNAに150μlのTEを加え200μlにした。TE飽和フェノール100μl、クロロホルム100μlを加え5分間懸濁し、14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。水層を新しいマイクロチューブに移し、クロロホルム100μl加えて5分懸濁し、14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。水層200μlを新しいマイクロチューブに移し上記と同様の方法でエタノール沈殿をした。30μlのTEに懸濁後、100μlのPRG溶液(13%ポリエチレングリコール6000,1.6M NaCl)を加え、氷上で1時間静置した。14,000rpm、4℃で10分遠心分離後、沈殿に200μlの70%エタノールを加えて14,000rpm、4℃で5分遠心分離した。沈殿を減圧下で乾燥し、20μlの滅菌水で懸濁し、吸光度を測定した。
【0039】
精製したプラスミドは次のようにシークエンス分析した。シークエンス分析に供試する泳動試料の調整はBigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて次のように行った。PCRチューブに2μlのReady reaction Premix、1μlのBigDye Sequencing Buffer、1μlのプライマー[ACUNI6745(+)](1.6μM)、1μlの精製プラスミドDNA(300ng/μl)そして5μlの滅菌水を加えて混合し、Thermal Cycler Sp(TaKaRa)にセットし、95℃,30秒間、50℃,15秒間、60℃,4分間で30サイクル反応させた。反応終了後、10μlの滅菌水、2μlの125 mM EDTA(pH8.0)、2μlの3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)そして60μlの99.5%エタノールを加えて混合し、室温で15分間静置した。14,000rpm、4℃で5分間遠心分離を行い、得られた沈殿に70μlの70%エタノールを加えて再び14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。沈殿を減圧乾燥し、25μlのHi-Di Formamideに懸濁した。これを100℃、2分間熱変性し、泳動試料とした。
【0040】
試料の泳動はABI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems)のマニュアルに従って行った。泳動試料をMicroAmp 96-well Reaction Plateに加え、プレートアセンブリーを組み立て、オートサンプラーにセットした。キャピラリー長は80cm、ポリマーはPOP-4、泳動緩衝液には1×TBEを用いた。次にプレートレコードを作成し、サンプル名、泳動条件および解析条件などを設定した。Mobility FileはDT3100POP4{BDv3}v1.mob、Dye SetはZ、BioLIMS Projectは3100_Project1、Run ModouleはLongSeq80_POP4DefaulymoduleそしてAnalysis moduleはBC-3100APOP_80cm_SeqOffFtOff.sazに設定し泳動した。泳動終了後、BI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzerのマニュアルに従って、泳動データを塩基配列に変換し、得られた塩基配列データを遺伝子情報処理ソフトのDNASIS for windows ver.2.1を用いて解析した。
(2)ALSVベクターへの内在性遺伝子の導入
ALSV RNA2の感染性cDNAクローンであるpEALSR2L5R5に上記でクローニングした各遺伝子DNA断片を以下の方法で組み込んだ。
【0041】
PCR増幅したPDS遺伝子DNA(cDNA)を鋳型に、前記プライマーを用いてPCRを以下のように行った。1μlの鋳型cDNA溶液(10ng/μl)、各1μlの合成プライマー(10μM)、5μl の10×PCR buffer(TaKaRa)、1μlのEx-Taq(2.5U/μl TaKaRa)、39μlの滅菌水を混合し上記と同様の方法で行った。反応後、1μlを1%アガロースゲルで電気泳動し、バンドのサイズを確認した。
【0042】
続いて5μlのPCR産物をBamHI、XhoIで処理し1%アガロース電気泳動後に上記と同様の方法でDNAを回収し、インサートDNAとした。この操作と平行して2μlのpEALSR2L5R5GFP(1μg/μl)をBamHI、XhoIで処理後、ゲル回収したものをベクターDNAと調製した。
【0043】
インサートDNAとベクターDNAをTaKaRa ligation Kit Ver 2.1(TaKaRa)を用いてライゲーション反応を行った。1μlのベクターDNA、4μlのインサートDNAおよび5μlのI液を加えて混合し、16℃で4時間インキュベートした。5μlのライゲーション産物を上記と同様の方法で大腸菌DH5αへ形質転換後、プラスミドを抽出し、抽出したDNAを1%アガロース電気泳動し、pEALSR2L5R5よりも移動度の遅いプラスミドを選抜し、BamHIとXhoIで処理して目的のインサートが含まれているクローンを選抜した。
【0044】
インサートが挿入されているプラスミドをQIAGEN Plasmid Midi(QIAGEN)を用いて精製した。500ml坂口フラスコに100mlのLB培地と200mlのアンピシリン(25mg/μl)を分注し、インサートが含まれていたクローンのコロニーを爪楊枝で移し、37℃、200rpmで12−16時間振とう培養した。培養液をファルコンチューブに移して7,500rpm、4℃で15分間遠心し、上清を除去した。沈殿に4mlのbuffer P1を加えて懸濁し、さらに4mlのbuffer P2を加えて4〜6回全体が混ざるようにゆるやかに回転させた後、室温で5分間静置した。4mlのBuffer P3を加えて同様に回した後、氷上で15分間静置した。溶液を遠心管に移し、13,000rpm、4℃で30分間遠心した。上清を他の遠心管に移し、13,000rpm、4℃で10分間遠心した。4mlのbuffer QBTで平衡化したQIAGEN-Tip100に上清を移し、プラスミドDNAを結合させた。QIAGEN-Tip100に10mlのbuffer QCを加えて洗浄し、さらにこの操作をもう一度繰り返した。QIAGEN-Tip100に5mlのBuffer QFを加え、溶出液を回収し、3.5mlのイソプロパノールを加え攪拌後、11,000rpm、4℃で30分間遠心した。沈殿に2mlの70%エタノールを加え11,000rpm、4℃で10分間遠心し、沈殿を減圧乾燥後80μlのTEに懸濁した。260nm吸光度を計測し、濃度を調べた後、1μg/μlになるように調製した。
【0045】
構築したプラスミドクローンとALSV RNA1の感染性cDNAクローンであるpEALSR1(1μg/μl)をそれぞれ等量ずつ混合し、カーボランダム法によってキノア(8葉期)の第3葉から第6葉に8μlずつ接種した。接種2〜3週間後、病徴の現れた上葉をサンプリングし、組換えALSV(soyPDS-ALSV)とした。
(3)ダイズへのウイルス接種
soyPDS-ALSVが感染したキノア葉から全RNAを抽出した。まず、soyPDS-ALSVが感染したキノア葉1gを完全に凍結し、乳棒と乳鉢を用いてパウダー状になるまで完全に破砕した。破砕後、植物体が解けないうちに、速やかに10mlのTri Reagent (シグマ)を乳鉢に加え、よくすり混ぜて完全に混和・懸濁した。懸濁液をチューブに移し取り、5分間室温で放置した後、2mlのクロロホルムを加え、30秒間激しく振り混ぜて、完全に混和・懸濁した。懸濁液を10分間室温で静置した後、14,000rpm、4℃で15分間遠心分離を行い、懸濁液を水層と有機溶媒層に分画した。水層(約5ml)を新しいチューブに移し取り、等量の2-プロパノールを加えて完全に転倒混和し、10分間室温で静置した後14,000rpm、4℃で10分間遠心分離を行い、全RNAを沈殿させた。上清を捨て、75%エタノールを加えてボルテックスミキサーで激しく攪拌することにより、全RNA沈殿を洗浄した。攪拌後、14,000rpm、4℃で5分間遠心分離を行い、全RNAを再び沈殿させた。上清をピペットマンで取り除いた後全RNAの沈殿を300μlのRNase free H2Oに溶解してFT-ALSV感染葉由来全RNA溶液とした。soyPDS-ALSV感染葉由来全RNA溶液のRNA濃度は吸光光度計(ND-1000、NanoDrop)を用いて測定し、Helios Gene Gun システムのサンプルカートリッジの調製に用いた。
【0046】
Helios Gene Gun システム(BIO-RAD)のサンプルカートリッジの調製は以下のとおり行った。15mgの金粒子(直径0.6μm, 1.0μm, および1.6μmのいずれか;BIO-RAD)を50μlの滅菌蒸留水に懸濁し、超音波洗浄機を用いて超音波処理を行い、金粒子を滅菌蒸留水中に分散させた。続いて、MicroMixer E-36 (TAITEC)で金粒子を撹拌しながら、350μgのsoyPDS-ALSV感染葉由来全RNA溶液、全液量の1/10量の5M 酢酸アンモニウム、全液量の2倍量の2-プロパノールを順に加えて混合した後、-20℃に1時間以上静置することによって、金粒子にsoyPDS-ALSV感染葉由来全RNAをコーティングした。静置後、上清を取り除き、沈殿を1mlの99.5%エタノールで3回洗浄した後、3mlの99.5%エタノールに懸濁し、ゴールドコートチューブの調製に使用した。チュービングプレップステーション(BIO-RAD)にゴールドコートチューブ(BIO-RAD)をセットし、純窒素ガスを20分間通してゴールドコートチューブの内部を完全に乾燥させた。続いてsoyPDS-ALSV感染葉由来全RNAがコーティングされた金粒子を、均一になるようゴールドコートチューブ内に充填し、5分間放置して金粒子をゴールドコートチューブに沈着させた後、上清の99.5%エタノールをゴールドコートチューブ内から取り除いた。続いてチュービングプレップステーションを回転させ、金粒子をゴールドコートチューブ内部に均一に拡散させながらゴールドコートチューブ内に純窒素ガスを通し、金粒子を完全に乾燥させた。続いてゴールドコートチューブを、チューブカッター(BIO-RAD)を用いて50個に裁断し、1個あたり7μgのsoyPDS-ALSV感染葉由来全RNAを含む50個のサンプルカートリッジを作成した。
【0047】
Helios Gene Gun システムを用いたダイズへのsoyPDS-ALSV感染葉由来全RNAの接種は以下のとおり行った。ダイズ(品種: Jack、エンレイ、および丹波黒)は、25℃、16時間明期/8時間暗期に調節した培養室で播種して発根させた。発根後、根が約1cm伸長したもの(播種後約3日)を材料とした。ヘリウムガス圧を200-300psiに設定し、上記のサンプルカートリッジを用いて、子葉1枚につき、2-3shotずつボンバードメントを行い、ダイズ1個体あたり28-42μgのsoyPDS-ALSV感染葉由来全RNAを接種した。ボンバードメント後、植物体に水をスプレーし、水を含ませたキムワイプを敷いた深型のガラスシャーレ内に置いてガラスシャーレのふたをし、ガラスシャーレを紙でくるんで遮光して18℃に設定したグロースチャンバーに静置した。1-2日後、くるんでいた紙を取り除き、25℃、16時間明期/8時間暗期に設定したグロースチャンバーに移して育成した。
(4)組換えALSV感染ダイズに結実した種子の生育
前記(3)でsoyPDS-ALSVを感染させたダイズを育成して結実させ、その種子を播種してダイズ個体を生育発生させた。ダイズは25℃、16時間明期/8時間暗期に設定したグロースチャンバーに移して育成した。
(5)結果
soyPDS-ALSVを接種したダイズにおいて、soyPDS-ALSVの増殖と移行に伴い、PDS遺伝子のVIGSによる組織の白色化が観察された。感染ダイズ組織の白色化は安定して継続し、結莢した莢も白色化した。この白色化した莢のなかの未熟種子を調べたところ、種皮は全て白色化かしていたが、胚については緑色のものとと、白色のものがそれぞれ存在した(図1)。
【0048】
これら未熟種子についてノーザンブロット分析を行った結果、白色胚からはsoyPDS-ALSVの増殖を示すシグナルが検出されると共に、PDSsiRNAが検出されたことから、胚の白色化は親植物体から移行したsoyPDS-ALSVによるPDS遺伝子のVIGSの結果であることが明らかになった。
【0049】
さらに、soyPDS-ALSV感染ダイズから採取した種子を播種したところ、50%の個体が発芽期から完全に白色化した(図2)。白色化した個体についてノーザンブロット分析を行ったところ、子葉、初生葉および根の全ての組織からsoyPDS-ALSVの増殖を示すシグナルとPDSsiRNAが検出された。従って、この個体白色化は、種子伝染によって次世代に移行したsoyPDS-ALSVによって発芽期からPDS遺伝子のVIGSが誘導された結果であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】soyPDS-ALSV感染ダイズの莢断面図である。矢印はPDS遺伝子のVIGSにより白色化した胚を示す。
【図2】soyPDS-ALSVの種子伝染が次世代に及ぼす影響を示す。左は種子伝染個体、右は健全個体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイズの子実形成期に機能する内在遺伝子配列を含む組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)。
【請求項2】
ダイズの発芽期に機能する内在遺伝子配列を含む組換えALSV。
【請求項3】
ダイズの子実形成期に機能する内在遺伝子の発現を抑制する方法であって、請求項1に記載の組換えALSVをダイズ子葉に接種し全身感染させる工程を含むことを特徴とする子実形成期の遺伝子発現抑制方法。
【請求項4】
ダイズの発芽期に機能する内在遺伝子の発現を抑制する方法であって、請求項2に記載の組換えALSVをダイズ子葉に接種し全身感染させる工程と、この組換えALSV感染ダイズの種子を生育させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の組換えALSVをダイズ子葉に接種し全身感染させたダイズであって、その子実形成期に機能する内在性遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする組換えALSV感染ダイズ。
【請求項6】
請求項5に記載の組換えALSV感染ダイズの種子を生育させたダイズであって、その発芽期に機能する内在性遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする組換えALSV感染ダイズ。
【請求項7】
ダイズ内在性遺伝子の機能時期を特定する方法であって、機能時期が不明なダイズ内在遺伝子配列を含む組換えALSVをダイズ子葉に感染させて組換えALSV感染ダイズを作出して育成し、次いでこの組換えALSV感染ダイズの種子を生育させ、子実形成期から発芽期のどの時期で内在性遺伝子の発現が低下するかを特定する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−88401(P2010−88401A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264274(P2008−264274)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】