説明

組織内での動作のための超広帯域アンテナ

超短電気パルスを用いる細胞機能の細胞の操作及び細胞内の操作のための、及び電気パルスの細胞培養、患者及び組織の中への標的を定めた送達のための方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
超短電気パルスを生じさせるシステムが、癌ならびに他の細胞及び組織の疾患の治療のために使用される。
【背景技術】
【0002】
癌は病気の主な原因の1つであり、米国内では毎年526,000人の死亡の原因となっている。例えば、乳がんは西欧諸国の女性たちの間で最も一般的な形の悪性疾患であり、米国内では、40歳から55歳の間の女性の間の最も一般的な死亡原因となっている(1990年、フォレスト(Forrest))。乳がんの発生率は特に年齢が上の女性で上昇しているが、この増加の原因は分かっていない。悪性黒色腫は、その発生率が恐ろしいスピードで、米国では1945年以来少なくとも6倍、上昇している別の形の癌であり、すべての皮膚病の中で単独で最も命に関わる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
癌の最も破壊的な態様の1つは、その原発部位から遠隔臓器に広まり、転移癌になる悪性腫瘍の細胞の傾向である。原発腫瘍の外科治療及び積極的な治療の進展にも関わらず、大部分の癌患者は転移性疾患の結果として死亡する。動物実験は、固形腫瘍からの循環する癌細胞の約0.01%が転移性の群体の確立に成功することを示している。
【0004】
複数の異なる種類の癌治療で電場が利用されてきた。これらのいくつかは、温熱療法を介して腫瘍を43℃以上に加熱し、細胞を殺す高周波装置またはマイクロ波装置を必要とする。他は、癌細胞を透過化し、毒性のある薬またはDNAの導入を可能にするためにパルス電場を使用する。
【0005】
技術には、侵襲性の治療及び化学療法剤を使用することなく、動物全体にほとんどまたはまったく影響を及ぼさずに癌及び他の疾患を治療する緊急な必要性がある。発明者らは、超短電気パルスが、温熱療法または薬物を使用せずに腫瘍及び異常な細胞を殺す純粋に電気的な癌治療として使用できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、異常な細胞を治療する装置及び方法を目的としている。装置はパルス、つまり10ピコ秒から1マイクロ秒(超短パルス)を生じさせる。パルス電場の細胞構造との相互作用の新しい領域、及び機能は、膜の充電がごくわずかになるような値にパルス持続時間が削減されるときに可能性を開く。哺乳類細胞の場合、これは1ナノ秒以下のパルス持続時間の間持続する。エレクトロポレーションにつながる膜充電の代わりに、複素誘電率によって決定される強度での、細胞の多様な部分との直接的な電場相互作用が、細胞質に比較して低い誘電率のために膜と行われるであろう。
【0007】
好適実施形態では、ナノ秒パルス、nsPEFとして細胞と組織に適用される広帯域の強烈な非電離放射線は、測定される熱変化はわずかな状態でパルス持続時間(1から300ns)及び電場(≦1MV/cm)を有する。パルス持続時間が細胞質、核質、及び周囲媒質の誘電緩和時間より短いときには、膜を充電する代わりに、電場が直接的に分子に作用する新しい時間的領域が細胞反応のために開かれる。電場が十分に強いときには、電場はイオンチャネルをゲート制御し、細胞シグナル伝達を模倣する構造変化を引き起こすことができる。
【0008】
一般的には、ほぼ数十マイクロ秒またはミリ秒である従来のエレクトロポレーションパルスの場合、細胞に対する影響は、サブマイクロ秒の範囲へのパルス持続時間と、強化された電場の積に対応する。nPEFはパルス持続時間と電場の積に対応する。しかしながら、それらはエネルギー密度とは関係がない。従来のエレクトロポレーションとnsPEFの影響の両方とも膜充電に起因しているが、生物学的な細胞の結果は明らかに異なる。パルスがサブナノ秒の範囲に減少すると、パルスが非常に短いので膜が完全に充電する時間がないために、膜の充電は可能ではなくなる。これらの条件では、おそらくサブナノ秒パルスの成果は、分子に対する直接的な影響に起因する。
【0009】
方法は、細胞の誘電特性を活用することにより細胞の構造と機能を改良するための手段を含む。影響を及ぼされる細胞構造は、イオンチャネルを含む、ミトコンドリア、小胞体、細胞核、核小体、ゴルジ体、DNA、RNA、メッセンジャーRNA、蛋白質、DNA−蛋白質相互作用、RNA−蛋白質相互作用、蛋白質間相互作用、アミノ酸、脂質、脂質ラフト、及び膜受容体を含むが、これらに限定されない。細胞機能は、新陳代謝、転写、翻訳、遺伝子発現、分泌、神経伝達物質放出、イオンチャネル開閉、アポトーシス、細胞周期の調節、二次メッセージャー生成、酵素活性、活性酸素種産生、酸化反応/還元反応を含むが、これらに限定されない。これらの作用は、治療への応用または診断的適用を有する広範囲の細胞構造、機能、及び反応に影響を及ぼす場合がある。
【0010】
好適な実施形態では、システム/装置は10kVから1MVの振幅の単極性パルス、両極性パルス、及び発振高電圧パルス、及び約10ピコ秒(ps)から50ナノ秒(ns)の範囲のパルス持続時間(半期)を生じさせる。好適な実施形態では、装置は約50ピコ秒(ps)から5ナノ秒(ns)の範囲のパルス持続時間(半期)を生じさせる。
【0011】
別の好適な実施形態では、システムまたは装置は、例えば楕円アンテナを使用して電気パルスのエネルギーを細胞培養、組織及び器官の中の明確な量の中に集中させる。
別の好適な実施形態では、システムまたは装置は、例えばパラボラアンテナを使用して遠い距離でエネルギーを放出する。
【0012】
別の好適な実施形態では、装置またはシステムは、単一または複数の同軸ケーブルまたは他の導波管を通して組織内のターゲットに電気エネルギーを送達する。
好適な実施形態では、パルス持続時間は1ナノ秒未満である。電場は1.5MV/cmほど高い場合がある。
【0013】
別の好適な実施形態では、装置は細胞と組織内でアポトーシスを引き起こす電気パルスを発生させる。細胞は、例えば、腫瘍、病気に犯された細胞またはウィルスのような有機体を生じさせる腫瘍等の異常な細胞である。有機体を生じさせる他の病気は、バクテリア、糸状菌、寄生生物等を含む。
【0014】
別の好適な実施形態では、装置は細胞内でカルシウムまたは神経伝達物質放出を引き起こす電気パルスを発生させる。装置が重要である例は、神経伝達物質が正常な生理的濃度から逸脱するうつ病または神経障害の治療にある。
【0015】
他の応用例は、ホルモンを擬態すること、遺伝子発現を強化すること、及び腫瘍と組織内でアポトーシスを生じさせることを含むが、これらに限定されない。細胞構造と機能とのパルス電場相互作用は、膜の充電がわずかになるような値まで削減されるパルス持続時間を可能にする。哺乳類の細胞の場合、これは1ナノ秒以下のパルス持続時間にわたって持続する。エレクトロポレーションにつながる膜の充電の代わりに、複素誘電率により決定される強度での細胞の多様な部分との直接的な電場の相互作用が支配する。
【0016】
この手法は、最終的には、侵襲性の電極の送達のない、代わりにアンテナを使用するパルス電場の適用を可能にする。集束アンテナを使用して非常に高い電場を発生できるようにすると考えられる構成は以下に説明されている。ほぼ閉じられた楕円アンテナ及び0.4nsパルスを用いて、100kV/cmを超える電場が、100kVのアンテナ電圧が印加された状態で、ターゲット領域内で達成可能である。さらに高い電圧パルスを適用することにより、結果的に焦点領域内で数100 kV/cmの電場を発生可能である。これは、複数のパルスを使用することによりアポトーシスを引き起こすには十分である。複数のパルスを使用して、発明者らは単一パルス動作に必要とされるよりもはるかに低い電場でアポトーシスを示した。
【0017】
アポトーシスを引き起こすことの他に、例えば細胞下構造(Beebe SJ、White J、Blackmore PF、Deng Y、Somers K、Schoenbach KH。ナノ秒パルス電場の細胞及び組織に対する多様な影響(Diverse effects of nanosecond pulsed electric fields on cells and tissues)、DNA細胞生物学(DNA Cell Biol.)、2003年12月、22(12):785から96。White JA、Blackmore PF、Schoenbach KH、Beebe SJ。ナノ秒パルス電場によるHL−60細胞における容量性カルシウム流入の刺激(Stimulation of capacitative calcium entry in HL−60 cells by nanosecond pulsed electric fields。生物化学ジャーナル(J Biol Chem)、2004年5月28日、279(22):22964から72。Beebe SJ、Blackmore PF、White J、Joshi RP、Schoenbach KH。ナノ秒パルス電場が細胞内シグナル変換メカニズムを通して細胞機能を変調する(Nanosecond pulsed electric fields modulate cell function through intracellular signal transduction mechanisms)、Physiol Meas、2004年8月25日(4):1077から93。Buescher ES及びSchoenbach KH。サブマイクロ秒の高強度パルス電場の生きている細胞−細胞内電子操作に対する影響(Effects of submicrosecond,high intensity pulsed electric fields on living cells−intracellular electromanipulation)。誘電体及び電気絶縁性に関するIEEE会議記録(IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation)2003年、10、788から794。E.S.Buescher、R.R.Smith、K.H.Schoenbach、「サブマイクロ秒の強烈なパルス電場の、細胞内遊離型カルシウムに対する影響:機構及び影響(Submicrosecond,intense pulsed electric field effects on intracellular free calcium:mechanism and effects)」、プラズマ科学に関するIEEE会議記録、32、1563から1572(2004)年)からのカルシウム放出あるいは神経伝達物質放出等の非致命的な影響を生じさせることは、この新しい方法の魅力的な応用例である場合がある。カルシウムは多数の細胞機能の主要調節因子であり、細胞シグナリングにも影響する((Beebe SJら、DNA細胞生物学(DNA Cell Biol.)2003年12月、22(12):785から96。White JAら、生物化学ジャーナル(J Biol Chem.)2004年5月28日、279(22):22964から72。Beebe SJら、Physiol Meas。2004年8月25日(4):1077から93。Buescher ES、及びSchoenbach KH。誘電体及び電気絶縁性に関するIEEE会議記録(IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation)2003年、10、788から794。E.S.Buescherら、プラズマ科学に関するIEEE会議記録、32、1563から1572(2004)年)。これは例えば電気刺激に影響をもたらすであろう。カルシウムの放出はアポトーシス誘発よりもはるかに低い電場を必要とすると見られているため、パルス発生器に対する制約ははるかに緩和できる。これは、楕円リフレクタよりむしろ、パラボラリフレクタを使用するさらに長距離での刺激的なカルシウム関連機能を可能にする。一般的には、サブナノ秒パルスを使用すると、電場−細胞相互作用の新しい分野に入ることが可能になるだけではなく、針のような固体電極が容易に接近できない組織の中への電磁エネルギーの送達を必要とする一連の治療応用例に対しての門戸も開放される可能性がある。
【0018】
別の好適な実施形態では、装置またはシステムは、細胞の誘電特性を活用することにより細胞構造及び機能を改良する。用途は、代謝異常の治療、調節ホルモン、神経伝達物質等を含む。影響を受ける細胞構造は、イオンチャネルを含む、ミトコンドリア、小胞体、細胞核、核小体、ゴルジ体、DNA、RNA、メッセンジャーRNA、蛋白質、DNA−蛋白質相互作用、RNA−蛋白質相互作用、蛋白質間相互作用、アミノ酸、脂質、脂質ラフと、及び膜受容体を含むが、これらに限定されない。細胞機能は、新陳代謝、転写、翻訳、遺伝子発現、分泌、神経伝達物質放出、イオンチャネル開閉、アポトーシス、細胞周期の調節、二次メッセンジャー生成、酵素活性、活性酸素種産生、酸化反応及び/または還元反応を含むが、これらに限定されない。これらの作用は、幅広い範囲の細胞構造、機能、及び治療への応用または診断的適用を有する反応に影響を及ぼす場合がある。
【0019】
本発明は、添付請求項の中で詳細に指摘される。本発明の前記の及び追加の優位点は、添付図面と関連して解釈される以下の説明を参照することによりさらによく理解されてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
アンテナパラメータ。1.近接場アンテナ(電磁波源に非常に近いターゲット)。(a)妥当なサイズ及び電力のアンテナによりこの振幅の電場を生じさせるために、細胞、組織はアンテナの近接場に設置された。近接場は、半径が2πで除算される波長未満である球体によって境界される領域として定義される。(b)このような近接場「アンテナ」の空間分解能は電極寸法により決定される。カテーテルとして使用される同軸ケーブルでは、これは、中心導体の直径及び周囲の同軸導体に対する距離となるであろう。内側の同軸ケーブルが1パルスを送達し、(2つの外側の同軸導体により決定される)外側の同軸ケーブルが第2の位相シフトパルスを送達する、中心導体が2つの同軸シリンダによって取り囲まれている二重同軸「アンテナ」では、重畳の原則が(非近接場の応用例の場合、この原則はフェーズドアレイアンテナシステムで使用される)限られた空間領域内でこれらの場に「集束させる」ために使用される。(c)二重同軸システムでは、cmの空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることが必要になる。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0021】
アンテナパラメータ2。集束アンテナ(レンズまたはリフレクタのどちらかである場合がある焦点調整装置によって決定されるターゲットのソースまでの距離。a)妥当なサイズと電力のアンテナによってこの振幅の電場を発生させるために、細胞、組織はアンテナの焦点体積に置かれた。焦点体積は、ほぼ波長の半径の球体によって境界される領域として定義され、焦点に中心がある。(b)限られた空間領域内でこれらの場に焦点を当てるために、集束リフレクタまたはレンズが使用される。(c)cmという空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることを必要とする。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
(定義)
本発明に従って、及び本願で使用されているように、以下の用語は、明示的に別段の定めをした場合を除き以下の意味で定義される。
【0022】
本願に使用されているように、「癌」は白血病、リンパ腫、黒色腫、上皮性悪性腫瘍及び非上皮性悪性腫瘍を含むが、これらに限定されない、哺乳動物で検出されるすべての種類の癌または腫瘍または悪性腫瘍を指す。癌の例は、脳、胸、膵臓、頸部、結腸、頭部と首、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、非上皮性悪性腫瘍、胃、子宮、及び髄芽細胞腫の癌である。用語「癌」は、種々の化学的、物理的、感染性微生物の発癌物質から生じる任意の癌を含む。例えば、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、ヒトパピローマウィルス、日光、鉛と鉛化合物、X線、焼いた肉に見られる化合物、及び織物染料、ペンキ及びインクで使用される多数の物質。発癌物質の詳細は、発がん性物質に関する報告書(The Report on Carcinogens)、第11版に示されている。連邦法は、保健社会福祉省長官が隔年に報告書を公表することを要求している。
【0023】
本発明による開示されている組成物により治療可能な追加の癌は、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵臓インスリーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌皮膚病変、睾丸癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖路癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、及び前立腺癌を含むが、これらに限定されない。
【0024】
用語「非上皮性悪性腫瘍」は一般的に、胎生結合組織のような物質から構成され、一般的には線維状物質または均質物質の中に埋め込まれているぎっしりと詰まっている細胞から構成される腫瘍を指す。組成物、及び要すれば増強剤及び/または化学療法剤で治療可能な非上皮性悪性腫瘍の例は、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバーネシー肉腫、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、繊維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、突発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、ジェンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫症、悪性間葉腫、傍骨性骨肉腫、網赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢腫、滑膜肉腫、及び毛細管拡張性肉腫を含むが、これらに限定されない。
【0025】
用語「黒色腫」は、皮膚及び他の器官の色素細胞性システムから発生する腫瘍を意味すると解釈される。組成物、及び要すれば増強剤及び/または化学療法剤で治療可能な黒色腫は、例えば末端性黒子性黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、Cloudman’s黒色腫、S91黒色腫、ハーディング−パッセイ黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、subungal黒色腫及び表在拡大型黒色腫を含むが、これらに限定されない。
【0026】
用語「上皮性悪性腫瘍」は、周囲の組織に浸潤し、転移を生じさせる傾向がある上皮細胞の悪性の新しい成長を示す。組成物、及び要すれば増強剤及び/または化学療法剤で治療可能な上皮性悪性腫瘍は、例えば、腺房性上皮性悪性腫瘍、細葉状上皮性悪性腫瘍、腺嚢腫上皮性悪性腫瘍、腺様嚢胞癌、腺腫、副腎皮質の上皮性悪性腫瘍、細気管支肺胞上皮癌、肺胞上皮癌、基底細胞上皮性悪性腫瘍(基底細胞癌)、基底細胞癌、類基底細胞癌、基底有棘細胞癌、上皮性悪性腫瘍(細気管支癌)、細気管支癌、気管支癌、脳状の上皮性悪性腫瘍、胆管細胞癌、絨毛癌、膠葉癌、面胞癌、内体上皮性悪性腫瘍、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円柱上皮性悪性腫瘍、円柱細胞癌、腺管癌、硬癌、胎生期癌、脳様癌、類表皮癌、上皮腺様癌、外方増殖性癌、潰瘍性癌、腺維癌、ゼラチン状の上皮性悪性腫瘍、膠状の上皮性悪性腫瘍、巨細胞癌、上皮性悪性腫瘍(巨細胞癌)、腺癌、顆粒細胞癌、毛母体上皮性悪性腫瘍、血液性癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、ヒアリン上皮性悪性腫瘍、副腎癌、小児胎生期癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、Krompecherの上皮性悪性腫瘍、Kulchitzky−細胞癌、大細胞癌、レンズ状の上皮性悪性腫瘍、レンズ形癌、脂肪腫性癌、リンパ上皮癌、髄様癌、髄様癌、黒色癌、軟性上皮性悪性腫瘍、粘液癌、粘液分泌性上皮性悪性腫瘍、涙嚢癌、粘液性類表皮癌、粘膜癌、粘膜癌、粘液腫癌、鼻咽腔癌、燕麦細胞癌、骨化癌、類骨骨腫瘍、乳頭癌、門脈周囲の上皮性悪性腫瘍、前浸潤癌、有棘細胞癌、髄質上皮性悪性腫瘍、腎臓の腎細胞癌、予備細胞の上皮性悪性腫瘍、癌肉、シュナイダー癌、スキルス癌、上皮性悪性腫瘍scroti、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、馬鈴著状癌、球状細胞癌、紡錘細胞癌、海綿状癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、絞把型癌、上皮性悪性腫瘍(毛細血管拡張症様上皮性悪性腫瘍)、毛細血管拡張症様上皮性悪性腫瘍、移行上皮癌、上皮性悪性腫瘍(結節状上皮性悪性腫瘍)、結節状上皮性悪性腫瘍、疣状癌、絨毛性癌を含むが、これらに限定されない。
【0027】
「診断の」または「診断された」は、病態の存在または性質、あるいは病気にかかりやすい患者を特定することを意味する。診断方法は、その感度及び特異度で異なる。診断分析の「感度」は、陽性反応を示す病気に罹患している個人のパーセンテージである(「真陽性」のパーセント)。分析によって検出されない病気に罹患している個人は「偽陰性」である。病気に罹患しておらず、分析で陰性を示す被験者が「真陰性」と呼ばれる。診断分析の「特異度」は、偽陽性率が差し引かれた1であり、「偽陽性」率は、陽性を示す、病気に罹患していない人の割合として定義される。ある特定の診断方法が条件の明確な診断を提供しない可能性があるが、方法が診断で役立つ陽性の表示を示すならばそれは十分である。
【0028】
用語「患者」または「個人」は本願で交互に用いられ、治療対象の哺乳類の被験者を指し、ヒトの患者が好ましい。いくつかのケースでは、本発明の方法は実験動物に、獣医の応用例に、及びハツカネズミ、ネズミ、及びハムスター、及び霊長類を含むゲッシ類を含むが、これに限定されない、病気用の動物モデルの開発に用途を見出す。
【0029】
「治療」は、疾患の病状または兆候の進行を妨げる、あるいは改変する意図をもっても実行される介入である。したがって、「治療」は治療上の処置と、予防対策または再発防止策との両方を指す。「治療」は緩和ケアとして指定されてもよい。治療を必要とする人は、疾患が防止されなければならない人だけではなく、すでに疾患のある人も含む。腫瘍(例えば、癌)治療では、パルス電場は腫瘍細胞の病状を直接的に減少させる、または腫瘍細胞を、放射線及び/または化学療法等の他の治療薬による治療の影響をさらに受けやすくすることができる。
【0030】
腫瘍性疾患、癌、または腫瘍細胞の治療は、本願全体に、及び続く例に説明される、以下の効果の内の1つまたは複数を引き起こすことができる装置またはシステムにより送達される電磁エネルギーまたはパルスエネルギーの量を指す。つまり、(1)(i)鈍化させる、及び(ii)完全な成長停止を含む、ある程度までの腫瘍の成長の抑制、(2)腫瘍細胞の数の削減、(3)腫瘍の大きさの維持、(4)腫瘍の大きさの縮小、(5)(i)周辺器官への腫瘍細胞の浸潤の(i)削減、(ii)鈍化、または(iii)完全な防止を含む抑制、(6)(i)転移の削減、(ii)鈍化、または(iii)完全な防止を含む抑制、(7)(i)腫瘍の大きさの維持、(ii)腫瘍の大きさの縮小、(iii)腫瘍の成長の鈍化、(iv)侵襲の削減、鈍化または防止、あるいは(v)転移の削減、鈍化または防止を生じさせることのある抗腫瘍免疫反応の強化、及び/または(8)ある程度までの、疾患に関わる1つまたは複数の兆候の緩和である。
【0031】
本願に使用されるような用語「投薬」及び「治療」は、被験者、特にヒトが、被験者の状態を直接的または間接的のどちらかで改善する目的で医療扶助を与えられる任意のプロセス、作用、適用、療法等を指す。
【0032】
本発明の装置を用いた患者の治療は、1つまたは複数の療法と結合可能である。例えば癌を治療するケースでは、患者は電気パルス場と化学療法剤の投薬計画の組み合わせで治療されてよい。「化学療法剤」とは、癌の治療で有効な化合物である。化学療法剤の例は、チオテパとシクロフォスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル、ベニゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ等のアジリジン、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファオラミド及びトリミチロロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロルエタミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラミルマスタード等のナイトロジェンマスタード、カラムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソ尿素、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアミシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質、メソトレキサート、5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗物質、テツプテリン、メソトレキサート、プテロプテイン、トリメソトレキサート等の葉酸類似体、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルウリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FU等のピリミジン類似体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤、フロリン酸等の葉酸補充薬、アセグラトン、アルドフォスフォミド配糖体、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキセート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジコン、エルフォルミチン、酢酸エリプチニウム、ジアジコン、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメト、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラシド、プロカルバジン、PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(「アラ−C」)、シクロフォスファミド、チオテパ、パクリテキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル−マイヤーズスクウィブオンコロジー(Bristol−Myers Squibb Oncology)、ニュージャージー州プリンストン(Princeton,N.J.)及びドセタキセル(タキソテール(TAXOTERE)(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer、フランス、アントニー(Antony,France))等のタクサン、クロラムブシル、ゲムシタビン、6−チオグアニン、メルカプトプリン、メソトレキサート、シスプラチンとカルボプラチン等のプラチナ類似体、ビンブラスチン、プラチナ、エトポシド(VP−16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT−11、トポイソメラーゼ阻害薬、RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイン酸、esperamicin、カベシタビン、及び調剤学的に許容できる塩、酸、または前記のどれかの誘導体を含む。また、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、4(5)−イミダゾールを阻害するアロマターゼ、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェンを含む抗エストロゲン剤、及びフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイブロリド、及びゴセレリン等の抗アンドロゲン、及び調剤学的に許容できる塩、酸、または前記のどれかの誘導体等の、腫瘍に対するホルモン作用を調節するまたは抑制するために作用する抗ホルモン剤がこの定義に含まれる。
【0033】
感染性の病原体に苦しむ個人の治療は、個人からの病原体の減少及び排除を指す。例えば、プラーク形成単位またはELISA等の他の自動化された診断方法によって測定されるようなウィルス粒子の減少。
【0034】
本願で使用されているような「神経系(ニューロン)の異常、疾患または病気」は、神経変性障害(パーキンソン病の、アルツハイマーの)または中枢神経系の自己免疫疾患(多発性硬化症)、記憶喪失、長期及び短期の記憶障害、学習障害、自閉症、うつ病、良性健忘症、幼児期学習障害、閉鎖性頭部外傷、注意力欠陥障害、脳の自己免疫疾患、ウィルス感染に対するニューロンの反応、脳損傷、うつ病、双極性障害、統合失調症等の精神疾患、ナルコレプシー/睡眠障害(概日リズム障害、不眠症及びナルコレプシーを含む)、神経の切断または神経損傷、脳脊髄神経索(CNS)の切断及び脳細胞または神経細胞に対する損傷、AIDに関連する神経学的欠損、チック(例えば、ジル・ド・ラ・ツレット症候群)、ハンチントン舞踏病、統合失調症、外傷性脳損傷、耳鳴り、神経痛、特に三叉神経痛、神経因性疼痛、糖尿病、MS及び運動ニューロン疾患、運動失調、筋固縮(痙直)、及び顎関節機能不全等の病気で神経異常知覚を生じさせる不適切なニューロン活動、被験者における報酬不全症候群(RDS)挙動、アルコールまたは薬物乱用(例えば、エクスタシー、ヒロポン等)によって引き起こされる神経毒性を含む任意の神経障害を指すが、これらに限定されない。本願で使用されているように、用語「感染体」または「感染性の病原体」または「病原体」は、成長/増殖がヒトまたは動物内において病原性の事象を引き起こす有機体を指す。そのような作用物の例は、細菌、菌類、原生動物及びウィルスである。
(装置/システム)
細胞内電子操作は、10nsのパルスがシングルショット操作とマルチショット操作に適用されるときに、ほぼ10kV/cmから300kV/cmの電場を必要とする。電場強度の範囲が、影響の範囲を反映する。つまり、低電場の場合、カルシウム放出に基づく非致命的な影響を観測し、高電場の場合は、アポトーシスが達成された。これはシングルショット操作のケースである。10nsでのマルチショット操作の場合、アポトーシスが依然として観察される状態で、電場は100kV/cm未満の値まで削減できるであろう。電場に加えて、パルス持続時間も重要な役割を果たす。実験結果に基づき、細胞内影響はパルス持続時間と電場強度の積に対応すると考えられる。つまり、パルス持続時間の減少は、電場の増強によって補償される必要がある。1nsのパルスの場合、マルチショット状態を仮定すると、アポトーシスは1MV/cmに近い電場を必要とするであろう。例えば、(同様に血小板活性化、神経性刺激等の多くの副次的硬化を有するであろう)カルシウム放出のような非致命的な影響の場合、必要とされる電場はさらに低くなるであろうが、おそらく依然として数百kV/cmの範囲内にあるであろう。これらの推定値は、生物学的効果が原形質膜とオルガネラ膜の電気的な充電によって決定されるという仮定に基づいている。しかしながら、細胞構造及び機能とのパルス電場相互作用の新しい領域は、膜充電がわずかになるような値までパルス持続時間が、削減されるときに開ける。哺乳類の細胞の場合、これは1ナノ秒以下のパルス持続時間、持続する。エレクトロポレーションにつながる膜充電の代わりに、またはナノポレーションまでの超短パルスのケースでは、細胞の多様な部分との複素誘電率により決定される強度での直接的な電場相互作用が支配する。電場−細胞の相互作用という新しい領域に入ることに加えて、この新しい手法は、最終的には侵襲性の電極送達のない、代わりにアンテナを使用するパルス電場の適用を可能にする。
【0035】
アンテナパラメータ:1。近接場アンテナ(電磁波源に非常に近いターゲット)。(a)妥当なサイズ及び電力のアンテナによりこの振幅の電場を生じさせるために、細胞、組織はアンテナの近接場に設置された。近接場は、半径が2πで除算される波長未満である球体によって境界される領域として定義される。(b)このような近接場「アンテナ」の空間分解能は電極寸法により決定される。カテーテルとして使用される同軸ケーブルでは、これは、中心導体の直径及び周囲の同軸導体に対する距離となるであろう。内側の同軸ケーブルが1パルスを送達し、(2つの外側の同軸導体により決定される)外側の同軸ケーブルが第2の位相シフトパルスを送達する、中心導体が2つの同軸シリンダによって取り囲まれている二重同軸「アンテナ」では、重畳の原則が(非近接場の応用例の場合、この原則はフェーズドアレイアンテナシステムで使用される)限られた空間領域内でこれらの場に「集束させる」ために使用される。(c)二重同軸システムでは、cmの空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることが必要になる。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0036】
アンテナパラメータ2。集束アンテナ(レンズまたはリフレクタのどちらかである場合がある焦点調整装置によって決定されるターゲットのソースまでの距離。a)妥当なサイズと電力のアンテナによってこの振幅の電場を発生させるために、細胞、組織はアンテナの焦点体積に置かれた。焦点体積は、ほぼ波長の半径の球体によって境界される領域として定義され、焦点に中心がある。(b)限られた空間領域内でこれらの場に焦点を当てるために、集束リフレクタまたはレンズが使用される。(c)cmという空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることを必要とする。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0037】
好適な実施形態では、必要とされる場合に最高の場を達成するために2つの電波が位相シフトできる、二重同軸アンテナが使用可能である。既存のコード「MAGIC(登録商標)」を使用するモデル化の結果は、この手法が成功したことを示す。
【0038】
組織の電気特性に似た水中での電場分布の測定はカー効果によって実行される。マッハツェンダー干渉計が利用可能であり、排水を評価する際に試験されてきた。
好適な実施形態では、本発明は、高圧(最高2MV)nsパルス発生器と、二重同軸アンテナを設計し、構築することと、2つの同軸電波の間の位相シフトに応じて組織内での電場の分布をモデル化することと、カー効果を使用して水中での電場の分布を測定することとを備える。
【0039】
好適な実施形態では、電場パルス発生器及び/または電気パルスラジエータ(エミッタ)が、電極、アンテナ、ケーブル、同軸ケーブル、プレート、および放熱フィンを備える。
【0040】
別の好適な実施形態では、例えば集束アンテナ等のアンテナ(複数の場合がある)が、楕円リフレクタと、パラボラリフレクタとを備える。特に好ましいことに、アンテナは、電気パルスを集束することを可能にするために集束レンズを備える。発明者らは、場の空間分解能が素晴らしく、例えば約0.1mmからの制限された所望される面積に集束可能であることを示した。これは特に、例えば周囲の正常な細胞に影響を及ぼさずに腫瘍に焦点を合わせるときに有効である。場は、所望される場合、周囲の細胞及び組織を含むために拡大可能である。レンズは任意の反射材料または金属、プラスチック、ガラス、水晶等のパルスを集束する材料で作ることができる。
【0041】
高周波では、レンズアンテナは、リフレクタアンテナに類似した機能を実行するために使用可能である。レンズとパラボラリフレクタとの両方とも、大きな開口を励磁するために給電ネットワークとして自由空間を使用する。レンズの送りは開口の外に残り、開口の閉塞及びその結果生じる高いサイドローブレベルを排除する。誘電体レンズアンテナは光学レンズに類似しており、アンテナの開口はリム形状の突起に等しい。レンズは2つのカテゴリ、片面と両面とに分けられる。片面レンズの場合、一方の表面は付帯的なまたは出現する電波の等相表面であり、光線は屈折することなくこの表面と直角に通過する。
【0042】
二重表面レンズでは、屈折は両方のレンズ面で発生する。単一表面レンズは円筒波または球面波のどちらかを平面波に変換する。円筒波は線光源と円筒レンズ面とを必要とし、球面波は点光源と球面レンズ面とを必要とする。非近接場のパターンは、開口からの回折によって決定される。二重表面レンズは、パターン特性のさらなる制御を可能にする。両方の面とも集束に使用され、第2の表面は開口平面内での分布を制御するために使用可能である。
【0043】
これらの簡略なレンズは何波長分も厚く、それらの焦点距離と開口がこのケースでの波長に比較して大きい場合には、レンズの表面は、厚さから波長の倍数を削除することによって区分可能である。区分は、屈折面または非屈折面のどちらかで行うことができる。区分されたレンズは周波数に敏感であり、遷移領域で陰影損失を生じさせることがある。
【0044】
金属球体、片、円板またはロッド等の粒子を誘電体の中に導入できる人工的な誘電体レンズ。粒子の大きさは、波長に比べて小さくなくてはならない。離間された導電プレートを使用する金属プレートレンズは、マイクロ波周波数で使用される。金属プレート媒体の屈折率は、波長対プレート間の間隔の比率に依存するので、これらのレンズは周波数に敏感である。ルネバーグレンズは、半径の関数として変化する屈折率の球面対称レンズである。レンズに入射する平面波は、反対側で焦点が合うようにされる。これらのレンズは、それぞれが誘電率を有する一連の同心球面シェルを使用して作ることができる。
【0045】
集束楕円リフレクタ付きの超広帯域アンテナ用の例が図14に示されている。発明者らのケースでは、図5に示されているようなシステムによって発生する高圧パルス。電圧は、別のパルス電力システムによりパルシング電力技術の分野の当業者に公知の発生器を使用して発生可能である。高圧パルスは高圧同軸ケーブルを通してワイヤ−アンテナ(ダイポールアンテナ)に送り込まれる。双極子は、楕円リフレクタの焦点の1つに位置する。その結果、反射された波形は、楕円の第2の焦点(焦点体積)の中に反映されるこのような構成にある。治療への応用では、ターゲット(例えば、体内の腫瘍)はまさに第2の焦点に置かれるであろう。そこでの電気エネルギー密度はさらに小さくなるであろうから、前部の(例えば、皮膚の)、及び腫瘍の背部の組織に対する影響はあまり侵襲性ではないであろう。特に、望ましい影響(例えば、腫瘍細胞を殺すこと)が非線形である場合、つまり電場強度の特定の閾値を超える電場で直線的以上に強まる場合、影響をむしろ所望される治療体積に十分に制限できるであろう。
【0046】
他の好適な実施形態では、10ピコ秒から1マイクロ秒のパルス(nsPEF)を使用することは、1ナノ秒未満であるパルス(超短パルス)を含む。パルシングされた電場の細胞構造及び機能との相互作用の新しい領域は、パルス持続時間が、膜充電がわずかになるような値まで削減されるときに開ける。哺乳類の細胞の場合、これは1ナノ秒未満のパルス持続時間、持続する。エレクトロポレーションにつながる膜充電の代わりに、複素誘電率で決定される強度での細胞の多様な部分との直接的な電場の相互作用が支配する。依然として、相互作用の多くは、細胞質と比較して低い誘電率のために膜とになるであろう。
【0047】
電場−細胞の相互作用という新しい領域に入ることに加えて、この新しい手法は、最終的には、侵襲性の電極送達のない、代わりにアンテナを使用するパルス電場の適用を可能にする。集束アンテナを使用して非常に高い電場を発生できるようにする、考えられる構成が導入された。リフレクタタイプの集束アンテナの代わりに、電磁エネルギーを組織の中に集束するためにレンズを使用することも可能である。
【0048】
本発明の優位点は多数である。以前、発明者らは、ナノ秒パルス電場(nsPEF)として細胞と組織に適用された広帯域の強烈な非電離放射線を使用した。従来のエレクトロポレーションパルスと比較すると、nsPEFはより短いパルス持続時間(1から300ns)と、非常に短いので測定された熱変化がわずかである、より高い電場(≦1MV/cm)とを有する。パルス持続時間が細胞質、核質、及び周囲媒質の誘電緩和時間より短いときには、膜を充電する代わりに、電場が直接的に分子に作用する新しい時間的領域が細胞反応のために開かれる。電場が十分に強いときには、電場はイオンチャネルをゲート制御し、細胞シグナル伝達を模倣する構造変化を引き起こすことができる。
【0049】
一般的には、ほぼ数十マイクロ秒またはミリ秒である従来のエレクトロポレーションパルスの場合、細胞に対する影響は、パルス持続時間、電場及びエネルギー密度の積に対応する。以前、発明者らは、パルス持続時間をサブマイクロ秒範囲に減少し、電場を強化した。nsPEFはパルス持続時間と電場の積に対応する。しかしながら、それらはエネルギー密度とは無関係である。従来のエレクトロポレーションとnsPEFの影響の両方とも、膜の充電に起因しているが、生体細胞の結果ははっきりと異なる。パルスがサブマイクロ秒範囲に減少されると、パルスは非常に短いので、幕が完全に充電する時間はないため、膜充電はもはや可能ではない。これらの条件では、サブナノ秒パルスの影響はおそらく分子に対する直接的な影響のためである。これが、物理学が生物学に正面から遭遇し、仕組みと影響の新しいパラダイムが分子構造及び機能で発生するところである。この方法は、細胞の誘電特性を活用することによって細胞構造と機能を修正するための手段を含む。影響を受ける細胞の構造は、イオンチャネルを含め、ミトコンドリア、小胞体、細胞核、核小体、ゴルジ体、DNA、RNA、メッセンジャーRNA、蛋白質、DNA−蛋白質相互作用、RNA−蛋白質相互作用、蛋白質間相互作用、アミノ酸、脂質、脂質ラフト、及び膜受容体を含むが、これらに限定されない。細胞機能は、新陳代謝、転写、翻訳、遺伝子発現、分泌、神経伝達物質放出、イオンチャネル開閉、アポトーシス、細胞周期の調節、二次メッセージャー生成、酵素活性、活性酸素種産生、酸化反応/還元反応を含むが、これらに限定されない。これらの作用は、治療への応用または診断的適用を有する広範囲の細胞構造、機能、及び反応に影響を及ぼす場合がある。
【0050】
条件は、パルス持続時間が1ナノ秒未満であることを含む。電場は1.5または2MV/cmほど高いことがある。実験データは、細胞死のないカスパーゼ活性化を含む。カスパーゼは、アポトーシス細胞死におけるそれらの十分に特徴付けられた役割に加えて、負傷及び創傷の治癒の間に血液の損失を制限するために重要である血小板活性化、T細胞機能と増殖、及び筋細胞分化等の細胞生存機能で必要とされることが知られている。
【0051】
本発明は、電流パルス発生器における電場の破壊に伴い見られる問題を克服する。これは、電場強度を制限することによって制限できる。現在のパルス発生器を用いると、破壊範囲は1.5MV/cmより大きい。したがって、適用できる電場に対する上限がある。パルス持続時間を減少することでこれを拡張できる。他のエンジニアリングの改良を、特にインビトロ研究とインビボ研究で行うことができる。
【0052】
生体電気で新しい型を探求するために、電気パルスの特徴的なパラメータが、ほぼ細胞質、核質及び浮遊物の緩和時間である必要、あるいは細胞質、核質及び浮遊物の緩和時間未満である必要がある。これは1ナノ秒未満の値である。生物学的な負荷にサブナノ秒パルスを与えることができるパルシング電力システムが設計されて構築されてきた。この火花ギャップ切り替え式パルシング電力装置の優位点は、高圧、低インピーダンス、及び相対的に低いコストである。不利な点は制限されている反復率である。半導体開口部スイッチをベースにしたパルシング電力発生器はバーストモードで最高50kHzの反復率で動作できるが、火花ギャップスイッチをベースにしたシステムは、一般的には約100Hzに制限される。
【0053】
暴露システムの断面を含む実験システムのブロック図が図5に示されている。システムの例示的な例は図5に示されている。システムは電場パルス発生器を備える。発生器は、パルスを発生する手段を備える。これらはアンテナと、電極等とを含むが、これに限定されないことがある。電極101は、ステンレス鋼、炭素、炭素平板電極、銅、アルミニウムを染み込ませた活性炭素、チタニウム、タンタル、ニッケル等の導電材料を備える。活性炭は、例えばアセチレンブラック、及びケッチェンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン等を備える。電極は、例えば導電性寒天等のコーティング材でコーティング可能である。好ましくは、約0.001mmから約2mmの層のある導電性寒天でコーティング可能である。好ましくは、導電性寒天のコーティングは1mmである。
【0054】
超短パルス発生器は、細胞が超短パルスにさらされるための1つまたは複数のレセプタクル102と、絶縁体103と、同軸ケーブル104と、超広帯域バンド露光セル105と、電流プローブ106と、コンデンサ型分圧器107と、オシロスコープ109とトリガ110を備えるスクリーンルーム108と、加圧格納容器内で約20から30段があるマルクスバンク111、パルス形成回路網またはパルス先鋭化ネットワーク112、及びテールカットスイッチ113とをさらに備える。システムは、概略説明図であり、どのようにも本発明を制限するまたは解釈することを意図していない、図5に示されるシステムに制限されていない。絶縁体は、例えばテフロン(TEFLON)(商標)等の当業者に既知の任意の絶縁材料から構成されることがある。Marx−Bankの例は、本願にその全体として参照することにより組み込まれている、Carey,W.J.及びMayes J.R.(2003年)「Marx発生器の設計及び性能(Marx Generator Design and Performance)」、会議記録変調器会議(Proc.Modulator Conf.)2003年、625ページに説明されている。
【0055】
システムは、350kVの振幅の0.8ns電圧パルスを50Ω負荷の中に発生できる。高インピーダンス負荷で測定される電圧は700kVという値に達する。4.25mmという隙間距離では、これは1.5MV/cmという電場に相当する。電圧及び電流パルスの形状は図6に示されている。このきわめて大きな場にも関わらず、電気的破壊は観測されなかった。これは、水用の破壊電界がピン−プレート電極構成でこれらの値に達した、200nsと400nsのパルスで得られた結果に一致している。パルス持続時間が、水の破壊実験で使用されたものと比較して2桁、削減された状態では、サブナノ秒範囲内の複数MV/cm場でさえ破壊につながらない。
【0056】
別の好適な実施形態では、パルス発生器はアンテナを備える。アンテナパラメータ:1。近接場アンテナ(電磁波源に非常に近いターゲット)。(a)妥当なサイズ及び電力のアンテナによりこの振幅の電場を生じさせるために、細胞、組織はアンテナの近接場に設置された。近接場は、半径が2πで除算される波長未満である球体によって境界される領域として定義される。(b)このような近接場「アンテナ」の空間分解能は電極寸法により決定される。カテーテルとして使用される同軸ケーブルでは、これは、中心導体の直径及び周囲の同軸導体に対する距離となるであろう。内側の同軸ケーブルが1パルスを送達し、(2つの外側の同軸導体により決定される)外側の同軸ケーブルが第2の位相シフトパルスを送達する、中心導体が2つの同軸シリンダによって取り囲まれている二重同軸「アンテナ」では、重畳の原則が(非近接場の応用例の場合、この原則はフェーズドアレイアンテナシステムで使用される)限られた空間領域内でこれらの場に「集束させる」ために使用される。(c)二重同軸システムでは、cmの空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることが必要になる。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0057】
アンテナパラメータ2。集束アンテナ(レンズまたはリフレクタのどちらかである場合がある焦点調整装置によって決定されるターゲットのソースまでの距離。a)妥当なサイズと電力のアンテナによってこの振幅の電場を発生させるために、細胞、組織はアンテナの焦点体積に置かれた。焦点体積は、ほぼ波長の半径の球体によって境界される領域として定義され、焦点に中心がある。(b)限られた空間領域内でこれらの場に焦点を当てるために、集束リフレクタまたはレンズが使用される。(c)cmという空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることを必要とする。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0058】
別の好適な実施形態では、システムの装置は携帯計器である。このような計器の用途は多い。例えば、痛みを緩和するために事故の場面で患者を治療すること、戦場での負傷兵の治療等。
(用途)
好適な実施形態では、癌を患っている患者は本発明の装置を用いて治療される。装置は電場パルス発生器を備え、及び/または電気パルスラジエータ(エミッタ)は電極、アンテナ、ケーブル、同軸ケーブル、プレート、及び放射フィンを備える。全身治療のため、患者はMRI等に類似したシリンダの中で電場にさらされる。場は、リフレクタ及び/または集束レンズを使用して患者が充実性腫瘍を有する特定の領域で集中できるまたは焦点を合わせることができる。電気パルスの広い視野の分散は、要すれば集束レンズと組み合わされる、パラボラリフレクタ及びまたはパラボラリフレクタと楕円リフレクタの組み合わせを使用して達成される。
【0059】
電場パルスは、例えば1ナノ秒等の超短パルスを含むためにnsPEFを変える等、それぞれの個々の患者のニーズに適応でき、場の強度が変化する場合がある。治療は1ピコ秒から数秒、及び必要になった場合、さらに長くまでの範囲で超短nsPEFを周期的に繰り返す。電場の強度も、ほぼV/cmの値から最高MV/cmまで変化することがある。
【0060】
別の好適な実施形態では、例えば黒色腫、良性腫瘍、早期癌等の局所腫瘍、病的組織等を患っている患者が、腫瘍の領域に電場パルスを集中させることによって治療される。腫瘍が内部である場合、装置は、例えばケーブル、電極等を使用して電気パルスの特定の細胞及び/または組織への送達に備える。
【0061】
別の好適な実施形態では、細胞培養、組織及び器官は、これらの細胞を含む領域に電場パルスを集中させることによって治療される。例えば、装置は細胞または組織格納領域を備える。
【0062】
別の好適な実施形態では、病原体に感染している、生理学的に不均衡な、前癌状態等の異常な、例えば細胞、つまりがん細胞が、細胞を電場パルスにさらすことによってアポトーシスを受けるように誘導される。場は、例えば楕円アンテナを使用して細胞で集束可能である。制限されている体積の中で非常に高い電場の発生を可能にする装置は、幾何学的な概念に基づいている。つまり楕円リフレクタのある焦点に位置する点光源から放射される電力は、第2の焦点で集束される。この概念、及び電磁エネルギーを組織内の小さな体積の中で集束させることに対するその適用は図8に描かれている。ソースは左側の楕円リフレクタの焦点に位置する。リフレクタから反射される電磁波は、組織内に位置する第2の焦点(右側)で集束される。組織表面での反射を削減するために、組織の外部の空間を充填する媒質の複素誘電率は、組織の複素誘電率とほぼ同じ値になる。組織の値の例は図9A及び図9Bに示されている。表1はまた、時間領域誘電分光法を使用して測定される生体細胞の電気的なパラメータを示す。1nsの範囲(基本周波数約100MHzから1GHz)の誘電率は10と100の間である。導電率は0.02から1S/mの間で変わる。
【0063】
サブナノ秒時間範囲内での単一パルスの観測されたアポトーシス効果は、アポトーシス誘導が望ましくない細胞と組織、特に腫瘍のすべての種類の切除で重要である療法に、このようなパルスを使用する可能性を開く。このような効果の研究は、現在、細胞懸濁液または組織へのパルス送達システムとして電極を使用して実行されている[10]。しかしながら、治療への応用の場合、例えばニードルまたはプレート等の電極の使用は、パルス電場法を体表面に近い組織の治療に制限する。他方、アンテナを使用すると、このような電場を、ニードルでは容易に接近できない組織(腫瘍)に適用することが可能になるであろう。また、電気エネルギーをターゲット上で集中させることは、ターゲットを囲む皮膚及び正常な組織層に対する損傷を削減するであろう。
【0064】
この点において、サブナノ秒パルスを使用すると、以下に説明されるように、生体細胞とのパルス場相互作用を新しい種類の時間領域に拡張できるだけではなく、体内のターゲットにこれらのパルスを送達するために超広帯域アンテナを使用することも可能になるであろう。このようなパルスに対して考えられる空間分解能を定義する超短パルス持続時間を、体の特定の部分の標的化を可能にする範囲内にすることができる。0.8ns幅のパルスの場合、カットオフ周波数は約0.75GHzである。したがって、誘電率が80の組織内のカットオフ周波数に対応する波長は約5cm、つまりこのようなパルスのための組織内での空間分解能を決定する値である。
【0065】
別の好適な実施形態では、アンテナは楕円リフレクタ及び/またはパラボラリフレクタを備える。パルスは、集束レンズを含むアンテナを使用して、例えば異常細胞つまり腫瘍細胞、組織等の関心のある領域の上に集束可能である。
【0066】
別の好適な実施形態では、装置は過剰な脂肪を「溶解させる」ために脂肪組織上で使用される。
別の好適な実施形態では、装置は、ホルモンの不均衡を調整するため、代謝性障害の治療、神経伝達物質の放出、痛みの治療等のために電場を発生させる。電場パルスは、例えば、多くの細胞機能を調整することが知られているカルシウム放出に影響を及ぼすと見られてきた。
【0067】
一態様では、甲状腺疾患を患う患者は、本願に説明されるようにパルス場を使用して治療できる。ターゲット器官は甲状腺である場合がある。
以下の例は制限としてではなく、例として提供されている。特定の例が示されてきたが、前記説明は例示的であり、制限的ではない。前述された実施形態の特長の任意の1つまたは複数は、本発明の任意の他の実施形態の1つまたは複数の特長と何らかの方法で結合可能である。さらに、本発明の多くの変形は明細書を検討すると当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、前記説明に関してではなく決定されるべきであるが、代わりに同等物のその完全な範囲とともに添付請求項を参照して決定されるべきである。(前記説明に関してではなく、代わりに同等物のその完全な範囲とともに添付請求項を参照して決定されるべきである)。
【0068】
本願に引用されるすべての出版物及び特許文書は、あたかもそれぞれの個々の出版物または特許文書がこのように個別に示されているかのように同じ範囲まですべての目的のために関連性のある部分で参照することによって組み込まれる。本願における多様な参考資料のその引用により、出願人は、特定の参考資料が彼らの発明にとって「従来の技術」であることを認めない。
【実施例】
【0069】
実施例1:超短電気パルスを用いる細胞機能の細胞の及び細胞内の操作のための、及び電気パルスの細胞培養と組織内への標的が定められた送達のための方法及び装置。高い強度のナノ秒電気パルスの、生体細胞と組織に対する影響は、特に過去5年の間に科学界にかなり注目され、新しい研究分野、つまり生体電気[1]の確立につながった。この領域では、パルスの立ち上がり時間は原形質膜の充電時間よりも速く、場が膜を通って細胞質の中に入ることを意味する。この影響は、細胞を電気回路と見なし、それらのキャパシタンスによって多様な細胞膜を、そしてその抵抗によってそれらが中に入れる細胞質を説明することによって定性的に理解できる。図1Aは哺乳類の細胞の断面を示しており、膜で境界された唯一の基礎構造が細胞核である。細胞の多くを満たす細胞質は、溶解された蛋白質と、電解質と、グルコースとを含み、核質と細胞質とは他の細胞小器官内でそうであるように適度に導電性である。他方、細胞と細胞下構造とを取り囲む膜は低い導電率を有している。したがって、発明者らは、細胞を、理想的に絶縁するエンベロープに囲まれ、類似する特性の基礎構造を含んだ導体と見なすことができる。1つの基礎構造のある(モデル化のために球形と見なされている)このような細胞の同等な回路、つまり細胞核が図1Bに示されている。
【0070】
(外側膜によって形成されるコンデンサの充電時間に比較して)直接的な電流電場または長い持続時間のパルスが最終的に適用される場合、外側膜だけが充電される。つまり充電中に細胞内の膜全体で発生する電場は、理想的な完全に絶縁する外側膜に対してゼロとなる。しかしながら、外側膜の充電時間中、発明者らは細胞内の膜全体で電位差が生じることも予想し、その影響は、パルス立ち上がり時間が短いほど強力になる。このような充電時間はヒトの細胞の場合サブマイクロ秒範囲内にある。
【0071】
場が十分に大きい場合には、それは細胞内の細胞小器官に強力な影響を及ぼす場合がある。数ナノ秒から数百ナノ秒の長さの高圧パルスが、細胞内の細胞小器官を透過化するために生きている細胞の中に貫通し[2,3]、小胞体からCa2+を放出すると見られていた[4,5,6]。それらは、アポトーシスの正確な制御[7,8]、及び遺伝子導入効率の強化[8,9]を含む、多くの応用例に、細胞内の細胞小器官を物理的に標的にするための新しい手法を与える。発明者らは、このようなパルス電場により黒色腫腫瘍の収縮と完全な排除が生じることも示す[実施例3を参照すること]。
【0072】
サブマイクロ秒パルスからサブナノ秒パルス:場−細胞相互作用の新しい領域に入る。図1Bに示されている同等な回路では、膜のコンダクタンスはゼロであると仮定され、細胞質と核質の容量分は無視される。時間的な範囲は、それぞれ膜と細胞質と核質の誘電緩和時間によって決定される。簡単にするために、以下の説明では、生体細胞の単一胴式モデルに焦点を当てる。つまり、内部膜境界構造に対する影響は検討されない。(このケースの同等な回路は図2に示されている。)しかしながら、単一胴式モデルの説明から引き出すことのできる同じ結論が、内側細胞構造に対する電気的な影響を予測するために容易に拡張できることが分かる。
【0073】
細胞内の電子操作だけではなく、膜充電及びエレクトロポレーションのための大部分のモデルで使用されている仮定は、膜が完全な絶縁体であり、細胞内及び細胞外の液体の誘電率はつねに無視できるという点である。この仮定は単一胴式細胞のための一般的な同等な回路を図3に示されているものに削減する。この同等な回路は、細胞膜でのporationプロセスを説明するために適しており、膜(複数の場合がある)の誘電緩和時間(抵抗率と誘電率の積)を基準にして短い時間、及び細胞質と核質の誘電緩和時間を基準にして長い時間を示す。哺乳類の細胞の電気特性についてのデータに基づき[11]、この同等な回路(図5)は、細胞の種類に応じて、約1ナノ秒から数マイクロ秒のパルス持続時間範囲に適用可能である。
【0074】
表1。時間領域誘電分光法を使用して測定されるような生体細胞の電気的なパラメータ
【0075】
【表1】

εcm:原形質膜の誘電率、C:原形質膜のキャパシタンス、σ:原形質膜の導電率、εnc:核包膜の誘電率、Cne:核包膜のキャパシタンス、σne:核胞膜の導電率、σcp:細胞質の導電率、σnp:核質の導電率、εcp:細胞質の誘電率、εne:核質の誘電率、d:原形質膜の厚さ、d:核膜の厚さ、R/R:核直径対細胞直径の比率
非常に短いパルスの場合、媒質の抵抗特性よりむしろ誘電特性が電場の分布を決定する。その結果、単一胴式の細胞のための同等な回路は誘電特性だけで決定される。細胞質インピーダンスにおける抵抗期間が容量性期間に比較して無視できるという条件は、パルス持続時間が細胞質の誘電緩和時間に比較して(εcp/σcp)短いことを必要とする。表1に示されているデータに基づいて、これは、パルス持続時間がほぼ1ナノ秒である、あるいは1ナノ秒未満である場合にだけ当てはまる。その結果、細胞の多様な部分の電場は、電束密度の連続性によって定められる。相対的な誘電率が8である膜の場合、膜の電場は、80という誘電率を有する隣接する細胞質内の電場よりも10倍高い。次に電場は、膜の充電を引き起こすよりむしろ、直接的に分子に作用し、十分に強力な場合、電圧ゲート制御等の直接的且つ瞬時の構造変化を引き起こすことがある。
【0076】
パルス持続時間が細胞質、核質、及び細胞を取り囲む媒質の誘電緩和時間定数より短いという条件により定められるこの範囲の動作は、パルス電場に対する細胞の反応のための新しい時間的な領域を開く。分子力学刺激[12]を使用するR.Joshiによる第1のモデル化結果は、このような構造変化が、きわめて短いパルスが適用されるときに予想できることを示した。
【0077】
サブナノ秒の生体電気研究のためのパルシング電力システム。生体電気で新しい型を探求するために、電気パルスの特徴的なパラメータは、細胞質、核質及び浮遊物の緩和時間よりほぼ短くなる必要がある。これは1ナノ秒未満の値である。生体負荷にサブナノ秒パルスを与えることができるパルシング電力システムが設計されて構築された。この火花ギャップ−切り替え式パルシング電力装置の優位点は高圧、低インピーダンス、及び相対的に低いコストである。不利な点は、制限されている反復率である。半導体開口スイッチをベースにしたパルシングパワー発生器はバーストモードで最高50kHzの反復率で動作できるのに対し、火花ギャップスイッチをベースにしたシステムは一般的には約100Hzに制限される。
【0078】
暴露システムの断面を含む、実験システムのブロック図が図5に示されている。
システムは350kVの振幅の0.8nsの電圧パルスを50Ωの負荷の中に発生できる。高インピーダンス負荷で測定される電圧は700kVという値に達する。4.25mmという隙間距離の場合、これは1.5MV/cmという電場に相当する。電圧と電流のパルス形状は図6に示されている。この極端に大きな場にも関わらず、電気的破壊は観測されなかった。これは、水用の破壊電界がピン−プレート電極構成でこれらの値に達した、200nsと400nsのパルスで得られた結果に一致している。パルス持続時間が、水の破壊実験で使用されたものと比較して2桁、削減された状態では、サブナノ秒範囲内の複数MV/cm場でさえ破壊につながらない。
【0079】
サブナノ秒パルスの生体細胞に対する影響:実験結果:生体細胞に対する致命的なサブナノ秒パルスの影響を決定するために、発明者らは生理的溶液の中でB16黒色腫細胞をターゲット細胞として使用した。トリパンブルーが懸濁水に添加された。トリパンブルーは、細胞に進入した後にDNAに結合し、青のスペクトル範囲で自己蛍光する重要な染料である。トリパンブルーは、膜が分解した場合にだけ細胞に進入するので、それは一般的には細胞死を示すために使用される。細胞は暴露後顕微鏡で数えられ、生きている細胞の死んだ細胞に対する比率(トライパンブルー摂取により示された)が記録された。
【0080】
懸濁液中のB16細胞が0.7MV/cm振幅という単一パルスに暴露された実験は、細胞の生存能力に対する小さな影響だけを示した。しかしながら、アポトーシスの指標であるカスパーゼ活性の測定値は、細胞が0.8nsパルスに暴露されてから2時間後に相当の増加を示した。(図7)したがって、複数回適用されるときに、超短パルスにより、懸濁液中だけではなく組織中の細胞もアポトーシスを通して死ぬことが予想できる。
【0081】
しかしながら、細胞の生存能力が暴露から数時間後に測定されたときには、生存能力の強力な減少が観測された(図8)。対照細胞の生存能力は95%でほぼ一定のままであったのに対して、1パルス暴露後にすぎないパルシングB16細胞の生存能力は8時間という時間で50%の値まで減少した。これは毎時5%という平均死亡率に相当する。値は24時間後(示される)に横ばい状態になった。生存能力のこの遅延した変化は、プログラミングされた細胞死、つまりアポトーシスが発生している([16]で検討される)ことを示している。細胞の大多数は、このおびただしい電場パルスに当てられた後に非常に損傷を受けるので、初期の回復試行後に、プログラミングされた細胞の死が始まることは明らかである。このような死は物理的なまたは化学的な損傷の原因の数時間後というタイムスケールで開始することが知られ、発明者らの結果と一致している。
【0082】
侵襲性送達システムからアンテナへ:サブナノ秒時間範囲における単一パルスの観測されたアポトーシスの効果は、アポトーシス誘導が望ましくない細胞と組織、特に腫瘍のすべての種類の除去で重要である療法のためにこのようなパルスを使用する可能性を開く。このような影響の研究は、現在、細胞懸濁液または組織へのパルス送達システムとして電極を使用して実行されている[10]。しかしながら、治療への応用の場合、ニードルまたはプレートのような電極の使用は、パルス電場法を体表面に近い組織の治療に制限する。他方、アンテナを使用すると、このような電場を、ニードルでは容易に接近できない組織(腫瘍)に適用することが可能になるであろう。また、電気エネルギーをターゲット上で集中させることは、ターゲットを囲む皮膚及び正常な組織層に対する損傷を削減するであろう。
【0083】
この点において、サブナノ秒パルスを使用すると、以下に説明されるように、生体細胞とのパルス場相互作用を新しい種類の時間領域に拡張できるだけではなく、体内のターゲットにこれらのパルスを送達するために超広帯域アンテナを使用することも可能になるであろう。このようなパルスに対して考えられる空間分解能を定義する超短パルス持続時間を、体の特定の部分の標的化を可能にする範囲内にすることができる。0.8ns幅のパルスの場合、カットオフ周波数は約0.75GHzである。したがって、誘電率が80の組織内のカットオフ周波数に対応する波長は約5cm、つまりこのようなパルスのための組織内での空間分解能を決定する値である。それがパルス持続時間を絶対最小値に削減することの重要性を示している。
【0084】
一般的には、広帯域アンテナ設計は、非近接場における大きな電磁場の発生を対象にしている。アンテナから100mの距離で600V/cmの電場を発生させたこのようなアンテナの例。しかしながら、生体電気の応用例の場合、さらに小さな体積でさらに大きな電場も発生させることが重要である。制限された体積内で非常に高い電場を発生できるようにする設計は、幾何学的な概念に基づいている。楕円リフレクタの1つの焦点に位置する点光源から放射される電力は、第2の焦点で集束される。この概念、及び電磁エネルギーを組織内の小さな体積の中で集束させることに対するその適用は図8に描かれている。ソースは左側の楕円リフレクタの焦点に位置する。リフレクタから反射される電磁波は、組織内に位置する第2の焦点(右側)で集束される。組織表面での反射を削減するために、組織の外部の空間を充填する媒質の複素誘電率は、組織の複素誘電率とほぼ同じ値になる。組織の値の例は図9A及び図9Bに示されている。1nsの範囲(基本周波数約100MHzから1GHz)の誘電率は10と100の間である。導電率は0.02から1S/mの間で変わる。このような値は、水と低誘電率の液体の混合物で得ることができる。しかしながら、このような液体の相対的に大きな導電率のために、ソースからターゲットに移動する電波の減衰がターゲットにおける取得可能な電場を大幅に制限することがある。妥協案は、低い伝導率(蒸留され、脱イオン化された)水または他の極性液体を、あるいは油などの無極性液体も使用することであろう。
【0085】
全体的なシミュレーション領域のための「完全に吸収する境界状態」のマックスウェル(Maxwell)解法に基づいた時間領域の計算は、1/4波長の双極子による刺激で楕円アンテナの焦点での電場の進展をモデル化するために使用されてきた。シミュレーションツール(MAGIC)の既存の数値ソフトウェアパッケージが使用されてきた。ターゲットでの振幅の時間的な進行だけではなく、アンテナとソースの幾何学形状、最大場のときの第2の焦点での電場強度の空間分布が図10、図11、図12、及び図13に描かれている。ターゲット、つまり人体の一部はまさに最高の電場の集中がある――第2の焦点に置かれるであろう。計算は明らかに、パルス持続時間だけではなくアンテナの影響も示している。つまり、最適な結果はほぼ閉じられたアンテナ(図10及び図12)及び短いパルス(図12及び図13)で得られている。すべてのケースで印加された電圧は100kVであった。
【0086】
実施例2:組織内の近接場動作のための超広帯域アンテナ
細胞内の電子操作は、10nsのパルスがシングルショット操作に適用されるときにほぼ10kV/cmから300kV/cmの電場を必要とする。電場強度の範囲は、効果の範囲を反映する。つまり低電場の場合、発明者らはカルシウム放出に基づいた非致命的な影響を観測し、高電場の場合、アポトーシスが達成された。これはシングルショット操作のケースである。10nsでのマルチショットの動作では、アポトーシスが依然として観測される状態で、電場は100kV/cm未満の値に削減できるであろう。電場に加えて、パルス持続時間が重要な役割を果たす。実験の結果に基づき、細胞内の影響はパルス持続時間と電場強度の積に対応すると考えられる。つまり、パルス持続時間の減少は電場の増強で補償される必要がある。1nsパルスの場合、マルチショット状態を仮定すると、アポトーシスは1MV/cmに近い電場を必要とするであろう。例えば(同様に血小板活性化、神経性刺激等の多くの副次的効果を有するであろう)カルシウム放出のような非致命的な影響の場合、必要とされる電場はさらに低くなるであろうが、おそらく依然として数百kV/cmの範囲内にあるであろう。
【0087】
アンテナパラメータ:妥当なサイズと電力のアンテナによってこの振幅の電場を発生させるために、細胞、組織、あるいは患者はアンテナの近接場にさらされた。近接場は2πで除算される波長未満である球体によって境界される領域として定義される。
【0088】
これらの場を限られた空間領域内に集束させるために、重畳の原則が使用される(非近接場の応用例の場合、この原則はフェーズドアレイアンテナシステムで使用される)。cmという空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることを必要とする。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0089】
広帯域アンテナの使用、パルス発生器の構築は以下の特長を備える。つまり、パルス持続時間:<1ns、電圧<1MV、インピーダンス:ほぼkΩ。
200kVの1nsのパルサがすでに入手可能である。同じMarx−bank概念は、さらに高電圧のシステムを構築するために使用される。重畳原則を使用するために、必要とされる場合に最高の場を達成するために2つの電波が位相シフトできる、二重同軸アンテナが使用できる。既存のコード「MAGIC(登録商標)」を使用するモデル化の結果は、この手法が成功したことを示す。組織の電気特性に似た水中での電場分布の測定はカー効果によって実行される。マッハツェンダー干渉計が利用可能であり、排水を評価する際に試験されてきた。
【0090】
本発明は、高圧(MVまで)nsパルス発生器と、二重同軸アンテナと、2つの同軸電波の間の位相シフトに応じて組織内での電場分布をモデル化することと、カー効果を使用して水中での電場分布を測定することとを備える。
【0091】
アンテナパラメータ:1。近接場アンテナ(電磁波源に非常に近いターゲット)。(a)妥当なサイズ及び電力のアンテナによりこの振幅の電場を生じさせるために、細胞、組織はアンテナの近接場に設置された。近接場は、半径が2πで除算される波長未満である球体によって境界される領域として定義される。(b)このような近接場「アンテナ」の空間分解能は電極寸法により決定される。カテーテルとして使用される同軸ケーブルでは、これは、中心導体の直径及び周囲の同軸導体に対する距離となるであろう。内側の同軸ケーブルが1パルスを送達し、(2つの外側の同軸導体により決定される)外側の同軸ケーブルが第2の位相シフトパルスを送達する、中心導体が2つの同軸シリンダによって取り囲まれている二重同軸「アンテナ」では、重畳の原則が(非近接場の応用例の場合、この原則はフェーズドアレイアンテナシステムで使用される)限られた空間領域内でこれらの場に「集束させる」ために使用される。(c)二重同軸システムでは、cmの空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることが必要になる。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
【0092】
アンテナパラメータ2。集束アンテナ(レンズまたはリフレクタのどちらかである場合がある焦点調整装置によって決定されるターゲットのソースまでの距離。a)妥当なサイズと電力のアンテナによってこの振幅の電場を発生させるために、細胞、組織はアンテナの焦点体積に置かれた。焦点体積は、ほぼ波長の半径の球体によって境界される領域として定義され、焦点に中心がある。(b)限られた空間領域内でこれらの場に焦点を当てるために、集束リフレクタまたはレンズが使用される。(c)cmという空間分解能で集束するには、広帯域パルス発生器の基本波長がほぼ同じであることを必要とする。空気の場合、これは総持続時間が30psの両極性パルスを必要とするであろう。水の場合、誘電率が81では、これは270psつまり0.27nsに増加される。1ns持続時間のパルスは3cmという空間分解能を示すであろう。
実施例3:ナノ秒パルス電場により黒色腫が自滅する
複数の異なる種類の癌治療で電場が利用されてきた。これらのいくつかは、温熱療法を介して腫瘍を43℃以上に加熱し、細胞を殺す高周波装置またはマイクロ波装置を必要とする。他は、腫瘍細胞を透過化し、毒性のある薬またはDNAの導入を可能にするためにパルス電場を使用する。発明者らは、超短波電気パルスが温熱療法または薬物を使用せずに腫瘍を殺す純粋に電気的な癌治療として使用できることを発見した。この実験室の以前の研究から、10個の300nsのパルスで、インビボで治療された線維肉腫の腫瘍が同じ動物内の対照腫瘍に比較して削減された成長率を示したことがわかっている(S.J.Beebeら、プラズマ科学に関するIEEE会議記録(2002年)286から292)。ここで、発明者らは、黒色腫腫瘍が4百個のこれらのパルスで治療されると、腫瘍が2週間以内に90%縮小し、その後の治療が完全な寛解を生じさせることがあることを報告する。
【0093】
これらのナノ秒パルス電場(nsPEF)の主要な特徴は、ほとんど発熱につながらないその低いエネルギーと、細胞の中に浸透し、細胞内の細胞小器官を透過化するそれらの能力(K.H.Schoenbachら、生体電磁気学(Bioelectromagnetics)22(2001年)440から448、E.S.Buescherら、IEEE会議記録(Dielect.El.In)、10(2003年)788−794)、ならびに小胞体からの放出カルシウム(J.A.Whiteら、生物化学ジャーナル(J Biol. Chem.)279(2004年)22964から22972)である。それらは、培養されている細胞と腫瘍の中でのアポトーシスの開始、遺伝子導入効率の強化を含む多くの応用例で物理的に細胞内の細胞小器官を標的にし、腫瘍成長を抑制するための新しい手法を提供する。昨年中に、発明者らは120匹のマウスの300を超えるネズミの黒色腫を、持続時間300nsの40kV/cmの電場パルスで治療し、劇的な結果を示した。400個のこのようなパルスにさらされたあらゆる腫瘍は急速な核濃縮及び血流の削減を示し、2週間以内に平均90%縮小する。300個のパルスの第2の治療は、黒色腫を完全に排除する。210μsにすぎないこの非常に短い総場暴露時間は、薬物または重大な副作用なしに自滅するように黒色腫を刺激する。これらのナノ秒パルス電場はどのようにして細胞の中に浸透し、このような劇的な効果を上げるのであろうか。
【0094】
このnsPEF治療の効能は、2つの別々の電場パラメータ、つまりパルス持続時間と振幅に依存している。パルス持続時間の効果は、細胞が電場に置かれているときの膜充電のプロセスを検討することにより理解できる。細胞内部のイオンは、場の方向で移動し、高抵抗性の膜を、それらが追加の力を経験しなくなるまで充電することにより電場に反応する。定義から、これは、細胞内部の正味電場がゼロとなるように、それらの再分布が等しい対向する場を確立するときにだけ発生する。しかしながら、この再分布は、通常は0.1から1μsの範囲における原形質膜の充電時間定数で特徴付けられる特定量の時間を要する。nsPEFがこの充電時間より短い場合、内部充電には印加された場を中和するために再分布するほど十分な時間はなく、それは細胞小器官膜の充電時間定数だけではなく、細胞の原形質膜の充電時間定数にも依存する持続時間の間、細胞に浸透し、あらゆる細胞小器官膜を充電する。
【0095】
第2の重大なnsPEFパラメータはパルスの振幅である。電荷にかけられる力と脂質膜のエレクトロポレーションの両方とも、電場の強度に依存する。細胞膜全体の電場が約1V(直径10μmの細胞の場合2kV/cm)を超える場合、水で充填された孔隙が膜の脂質二重層で形成し、これらの孔隙の大きさと寿命は電場パルスの強度と持続時間に依存している。2kV/cmを超える振幅及びミリ秒範囲でのパルス持続時間の場合、大きな孔隙が形成し、通常は非透過性の抗癌剤を標的とされる組織の中に導入するために使用される膜のエレクトロポレーションを生じさせる(J.Teissieら、生物化学、生物物理学公式記録(Biochim.Biophys.Acta)1724(2005年)270から280)。これらの長いパルスの場合、パルス振幅は熱の影響を回避するために約2kV/cmに制限される。加熱はパルス持続時間及び場強度の二乗に比例するので、ナノ秒範囲内でのはるかに短いパルスが、同じ低レベルの熱エネルギーを組織に送達する一方で、さらに高い場強度を有することがある。ここで、発明者らは40kV/cmの20倍高い場強度を使用し、これが、パルスの持続時間の間、細胞の細胞小器官全体でさらに高圧の勾配だけではなくさらに小さな電気障壁を生じさせる原形質膜での構造変化を生じさせる。直径が10μmと測定される典型的な腫瘍細胞の細胞核は、各パルスの間にその直径全体でほぼ40Vの電圧勾配を経験する。この電場は電子変形(electrodeformation)を引き起こすほど十分に大きい(R.P.Joshiら、Phys.Rev.E Stat.Nonlin.Soft.Matter Phys.65(2002年)021913)。
【0096】
細胞組織培養。ネズミ黒色腫B16からF10の細胞がATCC(マナッサス、バージニア州(Manassas,VA)から取得され、必要とされるまで液体窒素の中で凍結されて保管された。それらは37℃の水浴で解凍されてから、10%のウシ胎仔血清(FBS、アトランタバイロジカルズ(Atlanta Biologicals)、4mM Lのグルタミン(Cellgro)、及び2%のペニシリン−ストレプトマイシイン溶液(Cellgro)で補足されたDMEM(ダルベッコ(Dulbecco)の改良されたイーグルの(Eagle’s)媒質)が入った培養フラスコに移された。細胞は、5%CO2/95%空気/100%加湿インキュベータ内で37℃で培養した。
【0097】
黒色腫誘導。2個から4個の腫瘍が、10のB16−F10ネズミ黒色腫細胞を含んだ2から10μlを緩んだ疎性結合組織の中の皮膚下に注射することによって、120匹のメスのSKH−1マウス(免疫応答性、無毛、アルビノ菌種、Charles River、ウィルミントン、マサチューセッツ州(Wilmington,MA))で誘導された。黒色腫腫瘍は数日間注射部位で見ることができる。5日以内では、腫瘍は通常幅3mmであり、血管形成を示す。治療されていない腫瘍は、数週間以内に、通常は幅10mm以上に成長する。すべての動物実験で、マウスは、酸素中1.6%のイソフランを使用して吸入麻酔下で飼われた。動物4番から63番の腫瘍は、5ニードル電極アレイで治療され、64番から120番は平行平板電極で治療された。典型的な実験では、2つの腫瘍が対照として使用され、同じマウスの他の2つがnsPEFで治療された。
【0098】
インビボイメージング。黒色腫は、透光テストと1.2xの倍率での表面写真の両方で毎日撮像され、超音波画像もマウス50で始めて撮影された。Visualsonics Vevo770(ビジュアルソニックス社(Visualsonics Inc.)、トロント、カナダ(Tronto,Canada))がインビボで腫瘍を撮像するために使用された。発明者らは、30μmの空間分解能を提供するステッピングモータスキャナ付きの、それらのモデル708走査ヘッドを55MHzで使用した。パワードップラーモードが、腫瘍ごとの血流画像を提供した。
【0099】
組織学。リン酸塩で緩衝されたホルマリン(10%)が、マウスを安楽死させた直後、及び腫瘍解剖の15分前に、腫瘍部位のある皮膚下の緩んだ疎性層の中に注射された。腫瘍はホルマリン固定液(最低20X腫瘍体積)の中に、室温で24時間から48時間置かれた。腫瘍及び周囲の皮膚は切り取られ、外面と内面の両方とも写真撮影された。固定された腫瘍は、標準的な30%、50%、70%、80%、90%、95%及び100%のX3エタノールシリーズを通して脱水され、100%のX2キシレンできれいにされ、60℃で溶融パラフィン浴X2に浸潤され(すべて各1時間)てから、パラフィンブロックの中に埋め込まれた。厚さ7マイクロメートルの部分が切り取られ、ヘマトキシリンとエオシンで染色された。
【0100】
パルス発生器。発明者らはインピーダンスが75Ωのパルス形成回路網を使用した。それは30組の高圧コンデンサと、ブルームレイン構成で配置される30個のインジケータとから成り、長さ300nsの高圧パルスを発生させる(J.F.Kolb、S.Kono、K.H.Schoenbach、細胞内の影響の研究のためのナノ秒パルス電場発生器(Nanosecond pulsed electric field generators for the study of subcellular effects)、生体電磁気学(Bioelectromagnetics)(2006年)印刷中)(図16A及び図16B)。パルスは最初、後にマイクロコントローラによって制御される水銀置換リレーに代わられた火花ギャップによってトリガされた。対象全体での電圧は、高圧プローブ(P6015A、テクトロニクス(Tektronix)、カリフォルニア州、ビーバートン(Beaverton,CA))を使用して監視され、電流はピアソン(Pearson)コイル(2877型、ピアソンエレクトロニクス社(Pearson Electronics Inc.)カリフォルニア州、パロアルト(Palo Alto,CA))によって測定された。電流及び電圧は、デジタル化オシロスコープ(TDS3052、テクトロニクス(Tektronix)、オレゴン州、ビーバートン(Beaverton,OR))を使用して同時に記録された。
【0101】
電場適用のための電極。発明者らは、2種類の電極、つまり5−ニードルアレイと平行平板とを使用した。ニードルアレイ(図17A及び図17B)は、テフロンの基部から2mm伸張する、内径30の皮下注射針(直径300lm)を使用して作られた。中心の針が陽極であり、中心電極から4mm離間された4本の取り囲む針が連結され、ともに電極を形成する。皮膚は、皮膚に沿った破壊電界強度を高め、パルス場の適用中に針の間のフラッシュオーバの尤度を削減するために、針の挿入前に植物油でコーティングされた。平行平板電極(図21A)は、治療される腫瘍の大きさに応じて直径3mmから5mmで、ステンレス鋼から作られていた。発明者らは、皮膚を電極から分離するためにこれらの電極を、導電性寒天(2%の寒天中の1M NaCl)の厚さ0.5mmの層でコーティングした。治療のために、各腫瘍は、100個のパルスが持続時間300ns、及び振幅4kVから8kV、立ち上がり時間約30nsで、0.5Hzの周波数で適用される間、2枚のプレートの間に0.5mmから1mm分離して配置された。
【0102】
インビトロでのカスパーゼ活性の決定。カスパーゼ活性は、nsPEFに暴露後の黒色腫腫瘍抽出物からインビトロで決定された。黒色腫はマウスの中から切開され、液体窒素で凍結された。抽出物は解凍された組織ホモジネートから調製され、前述されたように(L.K.Parvathenaniら、生物化学ジャーナル(J.Biol.Chem.)273(1998年)6736から6743)蛍光発生基質Ac−DEVD−AFC(アレキスバイオケミカルズ(Alexis Boichemicals、カリフォルニア州、サンディエゴ(San Diego,CA))を使用してカスパーゼ活性について化学分析された。このペプチド配列は、切断時に蛍光の強化を示すカスパーゼ1、3、4及び7について、PARP切断部位、Asp216に基づいている。簡略には、抽出物は501M DEVD−AFC(Asp−Glu−Val−Asp−AFC)で培養され、蛍光性(励起400nm及び発射505nm)が決定された。カスパーゼユニットは、1ミリグラムの抽出蛋白質あたり毎分切断された基質のピコモルとして定義された。
【0103】
結果及び説明。電場は2つの異なる電極構成を使用して適用された。第1は、針がマウスの皮膚の中に約2mm貫通した5ニードル電極アレイ(図17A)であった。59匹のマウスでは、中央の針が治療対象の黒色腫の中心に置かれ、外側の4本の針が黒色腫の境界端縁の外部にあった。この電極アレイは、場の線が皮膚の表面に平行であり、中心電極近くで最も強くなる(図17B)急激な非一様な場を示す。ニードルアレイが数分間黒色腫の中に差し込まれ、取り除かれると、黒色腫は通常どおりに成長を続ける(図18H〜M)。しかしながら、100個のパルス(8kV、300ns、0.5Hz)が除去の前にニードルアレイに投与されると、黒色腫は2日以内に縮小し始める(図18O〜T)。腫瘍への血流は、赤血球が腫瘍を取り囲む毛細管から漏れるに伴いパルシングした後に崩壊する(図18P)。局所的な血流は通常約2週間回復しない。パルシングから2日後、角質層が壊死、及び付随する表皮の表在性糜爛に伴う出血の兆候を示し、腫瘍は濃くなる(図18Q)。これは、腫瘍細胞に加えて、角質層に分化する電極の間の皮膚の表皮細胞が300nsのパルス電場(nsPEF)によって損傷を受けることを示唆している。発明者らは、黒色腫がなかった皮膚の部位を試験し、同じ期間での同様な表在性糜爛を観測することによってこれを確認した(図18A〜F)。表皮と接触することになる針の上部軸を絶縁すると、この損傷が削減される可能性がある。
【0104】
この腫瘍の反応は、電場強度とパルス数の両方に依存している。電場強度が、4kVのパルス(10kV/cmの平均場)を使用することにより半分に削減される場合、治療済みの腫瘍と対照腫瘍の成長率の間に大きな差異はない(図19A)。これは、10個のパルスと100個のパルスの両方の適用に当てはまる(図19B)。パルス数の依存性は、それが10個(図19C及び図19D)の場合よりも、反応が100個のパルスの場合にさらに強い8kVのパルス(20kV/cm場)についてより明らかであり、100個のパルスの2回の治療が与えられるときにさらに強い(図19E)。この後者の条件下では、腫瘍は8日間以内に約75%縮小する。
【0105】
使用された第2の電極構成は、2枚の平行平板の間に腫瘍を置くことを必要とした(図21A)。2枚の平行平板の間の電場は、端縁においてを除き一様であり、その結果プレートの間のすべての細胞は同じ電場強度にさらされる。これらの電極は、黒色腫を含む皮膚のしわをマウスから持ち上げ、それを、腫瘍全体がプレート間に配置されるように電極の間におくことによって48匹のマウスを治療するときに使用された。このようにして、電場は、ニードル電極の場合のように皮膚表面に平行によりむしろ皮膚表面に垂直に向けられた。プレート間の距離は、腫瘍の厚さに応じて、典型的には0.5mmから1mmであった。発明者らのニードル電極を用いた以前に結果に基づき、発明者らは40kV/cmという電場強度を使用し、この電極構成を用いるナノ秒パルスに対する典型的な反応は図20Aから図20Dに描かれている。2つの電極種類間の1つの相違点は、治療2日の地に始まる皮膚の外観である。パルシング領域の角質上に黒いかさぶたが現れ、それは角質が再生されるにつれて約2週間留まる(図20B)。このかさぶたの組織学的検査は、それが凝血した赤血球から構成されていることを示す。腫瘍は、平板電極を使用する(0日に3回、4日に1回)4回の100個のパルスの治療後2週間以内に、典型的には90%縮小する(図21B)。しかしながら、緩解の約2週間後、すべての腫瘍は再び成長を開始し、発明者らは、組織学のために腫瘍を固定し、隔離できるようにその時点でマウスを犠牲にした。
【0106】
複数の治療が完全な腫瘍の寛解を生じさせる。発明者らは、腫瘍が初期治療の2週間から3週間後に縮小を止めるときに、2回目の3日間の連続の100個のパルスで腫瘍の治療を開始した。現在、3つの完了したケースで、発明者らは腫瘍の完全な寛解を観察し、一例が図22に示されている。初期治療から2ヶ月以内で、黒色腫は透光テスト、超音波または連続切片組織学調査によって検出不能であった。発明者らは、nsPEFパラメータの追加の最適化が、高い効能率でこれらの皮膚腫瘍を日常的に排除することを可能にするはずであると考えている。
【0107】
nsPEFは3℃だけ腫瘍温度を上昇させる。5mmのプレートの間の組織に送達されるエネルギーは、プレートの分離が1mmである場合には0.2Jである。水の比熱を考慮すると、これは組織温度を2度から3度上昇させるに過ぎないはずである。発明者らは、この温度上昇を、非常に小型の熱電対を腫瘍の中に差し込むことによって直接的に測定し、100個のパルスの後の最大温度が33℃に達したことを確認した(図23Aから図23B)。これは、温熱療法効果に必要とされる最小温度よりも10度低いため、nsPEFの腫瘍の成長に対する影響が温熱療法に起因する可能性はきわめて低い。
【0108】
nsPEF効果のためのターゲット及び潜在的な機構。発明者らは、腫瘍の緩解の原因である可能性がある電場パルスの適用に続く腫瘍の2回の即座の変化を特定した。つまり、(1)腫瘍細胞の細胞核は急速に濃縮し、(2)血液は腫瘍に流れるのをやめる。治療されていない腫瘍細胞は、薄く染まった多形性の細胞核と、自由に分散されたメラニン顆粒を含んだ豊富な細胞質を示した(図24Aから図24E)。治療された腫瘍は濃く染まった縮小した細胞核、及び広げられた間質腔の中の細胞外の集められたメラニン顆粒だけではなく、粗い細胞内のメラニン顆粒のある個々の細胞の離開を示した。腫瘍細胞の細胞核は、パルシング後の数分間以内に54%縮小し、3時間以内に68%縮小する。腫瘍の大きさが90%減少するにつれ、以後2週間の間に追加の核の縮小は発生しなかった(図24E)。腫瘍細胞核のいくつかは電場軸に沿って長くなるが、これはつねに観測されるわけではない。細胞密度は治療後1時間までに、及び3時間までにさらに高くなるため、腫瘍細胞自体もこの期間に縮小する。パルス適用に続く核濃縮は、以前に観測された濃縮反応より速く発生し(S.M.Albarenque、K.Doi、Exp.Mol.Pathol.78(2005年)、144から149)、電子変形、または核の伸張と縮小を生じさせるための細胞の核ラミナと関連する細胞骨格要素との直接電場相互作用のどちらかから生じることがある(P.K.Wongら、生体力学ジャーナル(J.Biomech.)38(2005年)529から535.Y.Gruenbaumら、Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.6(2005年)21から31)。
【0109】
すぐに明らかである第2の主要な変化は、腫瘍への血流の減少である。透光テストとパワードップラー超音波再構築の両方とも、血流がパルシングの約15分後以内に止まったことを示している(図25Aから図25D)。組織学は、赤血球が、黒色腫腫瘍の中に、及び回りに散乱して発見されることを確認する。これは、局所的な血管が漏れやすくなり、赤血球が周囲の組織の中に漏れ出ていることを暗示している。腫瘍への血流は通常約2週間回復しない。血流が戻ると、腫瘍は通常再び成長を開始する。この黒色腫への血流の欠如は、その緩解に確実に寄与している。
【0110】
発明者らは、旧アポトーシスマーカでの変化、つまりカスパーゼ活性も探した。発明者らは、3回の実験で100個のパルスを用いた治療の0時間後、3時間後、6時間後、及び9時間後に、蛍光発生基質Ac−DEVD−AFCを使用してカスパーゼの活性を測定した。カスパーゼ活性が増加したと考えられた唯一のときは、平均活性の2.6倍の増加があった3時間後であった。しかしながら、この小さな変化は正常性t検定及びMann−Whitney順位和検定に不合格となり、それが統計的に重要な差異(p=0.1)ではなかったことを示した。アポトーシスプログラムが起動されることが考えられるが、アポトーシスはエネルギーを要するプロセスであるため、血液の腫瘍への供給の中断がアポトーシスの機構の完了を妨げる可能性がある。
【0111】
発明者らのデータは、nsPEFがDNA損傷を生じさせることがあるという仮説を裏付ける。この損傷が引き起こされる正確な仕組みは明らかではない。2つの考えられる仕組みは、アポトーシス経路でのDNasesの活性化、あるいは機械的に誘発されるDNA切断を含む。直径10lmと測定される典型的な腫瘍細胞の細胞核は、各パルスの間にそれ自体全体で約40Vの電圧勾配を経験する。この電場は、核包膜に付けられたDNAに対する、DNAに損傷を与えるであろう機械的な衝撃を生じさせる細胞核の高速の電気機械的な変形を引き起こすほど大きい。これらのnsPEFは、急速な核濃縮をトリガし、カスパーゼ活性を大幅に増加せずに血流を削減することによって、自滅するようにネズミ黒色腫を刺激する。腫瘍への血流の減少は電気化学療法の後にも観測されるが、ブレオマイシンの進入が内皮細胞を破壊した治療の24時間後まで発生しない。対称的に、nsPEFは腫瘍血流のこの劇的な減少を達成するために薬物を必要としない。パルス電場適用の新しいナノ秒時間領域に対するこの細胞の反応は新規であるだけではなく、致死的でもある。これは、真皮を通る切開が、多くの場合治療後の皮膚に傷を残すため、皮膚病変の外科的な除去に優る優位点を有する可能性がある。nsPEFは、瘢痕化の可能性が低くなるように真皮を分離しないで腫瘍に影響を及ぼす。nsPEFは、カテーテル電極が腫瘍に誘導される場合に、体内のさらに奥深く位置する他の主要種類にも効果的であるはずである。この極めて局所化され、薬物を使用しない物理的な技法は、腫瘍治療に有望な新しい療法を提供する。
(他の実施形態)
本発明がその詳細な説明とともに説明されてきたが、前記説明は、添付請求項の範囲により明示される本発明の範囲を示すことを目的とし、本発明の範囲を制限することを目的としていないことが理解されるべきである。他の態様、優位点及び変型は、以下の請求項の範囲内にある。
【0112】
前記明細書は多くの詳細を含んでいるが、これらは本発明の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろその好適実施形態の例として解釈されるべきである。多くの他の変形が可能である。したがって、本発明の範囲は、描かれている実施形態によってではなく、添付請求項及びそれらの法律上の同等物によって決定されなければならない。
【0113】
本願で引用した全ての文献が、参照として本願に取り込まれる。
参照
[1] Schoenbaoh, K.H., Joshi, R.P., KoIb, J.F., Chen, N., Stacey, M., Blackmore, P.F., Buescher, E.S., and Beebe, SJ., (2004) "Ultrashort Electrical Pulses Open a New Gateway into Biological Cells, Proc. IEEE5 92, 1122.
[2] Schoenbach, K.H., Beebe, SJ., and Buescher, E.S. (2001). "Intracellular effect of ultrashort electrical pulses." Bioelectromagnetics 22, 440-448.
[3] Buescher, E.S. and Schoenbach, K.H. (2003). "Effects of submicrosecond, high intensity pulsed electric fields on living cells-intracellular electromanipulation." IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation 10, 788-794.
[4] Vernier, P.T., Sun, Y.H., Marcu, L., Craft, CM., and Gundersen, M.A. (2004). "Nanosecond pulsed electric fields perturb membrane phospholipids in T lymphoblasts." FEBS Lett. 572, 103-108.
[5] White, J.A., Blackmore, P.F., Schoenbach, K.H., and Beebe, SJ. (2004). "Stimulation of capacitative calcium entry in HL-60 cells by nanosecond pulsed electric fields." J. Biol. Chem 279, 22964-22972.
[6] Buescher, E.S., Smith, R.R., and Schoenbach, K.H. (2004). "Submicrosecond intense pulsed electric field effects on intracellular free calcium: Mechanisms and effects." IEEE Transactions on Plasma Science 32, 1563-1572.
[7] Beebe, S.J., Fox, P.M., Rec, LJ., Willis, EX., and Schoenbach, K.H. (2003a). "Nanosecond, high-intensity pulsed electric fields induce apoptosis in human cells." FASEB 1. 77, 1493-1495.
[8] Beebe, SJ., Blackmore, P.F., White, L, Joshi, R.P., and Schoenbach, K.H. (2004b). "Nanosecond pulsed electric fields modulate cell function through intracellular signal transduction mechanisms." Physiol Meas. 25, 1077-1093.
[9] Beebe, SJ., White, J., Blackmore, P.F., Deng, Y., Somers, K., and Schoenbach, K.H. (2003b). "Diverse effects of nanosecond pulsed electric fields on cells and tissues." DNA Cell Biol. 22, 785-796.
[10] Nuccitelli, R., Pliquett, U., Chen, X., Ford, W., Swanson, J., Beebe, SJ., KoIb, J.F., and Schoenbach, K.H. "Nanosecond pulsed electric fields cause melanomas to self-destruct." BBRC 343, 351 (2006).
[11] Feldman, Yu., Ermolina, L, and Hayashi, Y., (2003) "Time domain dielectric spectroscopy study of biological systems." IEEE Trans. Dielectrics and Electrical Insulation 10, pp. 728-753.
[12] Hu, Q., Joshi, R.P., and Schoenbach, K.H. (2005) "Simulations of nanopore formation and phosphatidylserine externalization in lipid membranes subjected to a high-intensity, ultrashort electric pulse." Phys. Rev. E. 72, 031902-1.
[13] Carey, W.J., and Mayes, J.R. (2003), "Marx Generator Design and Performance." Proc. Modulator Conf 2003, p. 625.
[14] Shu Xiao, Juergen KoIb, Muhammad A. Malik, Xinpei Lu, Moimir Laroussi, Ravindra P. Joshi, EdI Schamiloglu, Karl H. Schoenbach, "Electrical Breakdown and Dielectric Recovery of Polar Liquids", to appear in Trans. Plasma Science.
[15] S. KaI sulci, H. Akiyama, A. Abou-Ghazala, and K.H. Schoenbach, "Parallel Streamer Discharges Between Wire and Plane Electrodes in Water," IEEE Trans. Dielectrics and Electrical Insulation 9, 498-506 (2002).
[16] S. Afford, and S. Randhawa, -'Apoplosis," MoI. Path. 53, 55 (2000)
[17] Mayes, J.R. and Carey, WJ., "The Generation of High Electric Field Strength RF Eneigy Using Marx Generators, Proc. Modulator Conference." 2003, p. 236.
[18] Baum. CE. , (2005) "Producing Large Transient Electromagnetic Fields in a Small Region: An Electromagnetic Implosion, Sensor and Simulation Notes." Note 501, August 2005.
[19] Foster, K.R., (2000) "Thermal and Nonthermal Mechanisms of Interaction of Radio- Frequency Energy with Biological Systems." IEEE Trans. Plasma Science 28, 15.
[20] Andrei G. Pakhomov, Amy Phinney, John Ashmore, Kerfoot Walker III, juergen KoIb, Susumu Kono, Karl H. Schoenbach, and Michael R. Murphy, "Characterization of the Cytotoxic Effect of High-Intensity, 10-ns Duration Electrical Pulses," IEEE Trans. Plasma Science [Lambda]?. 1579-1586 (2004).
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】(光学顕微鏡を用いて分かるであろう)生体細胞の構造を示す概略表示である。
【図1B】生体細胞の二重胴式モデル、及び細胞の重ね合わせた同等の回路を示す概略表示である。
【図2】生体細胞の(単一胴近似)の同等な回路を示す概略表示である。
【図3】エレクトロポレーションプロセスを説明するために使用される同等の回路を示す概略表示である。
【図4】きわめて短いパルス、通常は1ns未満の間の生体細胞(単一胴式モデル)の同等の回路を示す該略図である。
【図5】装置の一実施形態を示す概略表示である。図は、露光システム(右上)の断面と超短パルス発生器のブロック図を示す。
【図6】負荷時に測定される電圧(上部)と電流(下部)、つまり生体細胞を含有する懸濁液を示すグラフである。
【図7】750kV/cmと0.8ns持続時間の単一パルスがB16細胞を含有する懸濁液に適用された後にカスパーゼ活性を示すグラフである。
【図8】電磁エネルギーを組織内の焦点(右側)に送達する集束アンテナ(左側)の概略図を示す概略説明である。
【図9】多様な組織対周波数の導電率(図9A)及び誘電率(図9B)を示すグラフである。
【図10】アンテナ構成、つまりターゲット体積の中の電場の空間分布及び電場の時間分布を示すグラフである。左側の図は、アンテナ構成及びターゲット体積内での電場の空間分布を示す。右側の図は、ターゲット点の中の電場の時間分布を示す。パラメータはアンテナ設計(半楕円形)である。
【図11】アンテナ構成、つまりターゲット体積の中の電場の空間分布及び電場の時間分布を示すグラフである。左側の図は、アンテナ構成及びターゲット体積内での電場の空間分布を示す。右側の図は、ターゲット点の中の電場の時間分布を示す。パラメータはアンテナ設計(完全楕円形)、及びパルス持続時間(0.8ns)である。
【図12】アンテナ構成、つまりターゲット体積の中の電場の空間分布及び電場の時間分布を示すグラフである。左側の図は、アンテナ構成及びターゲット体積内での電場の空間分布を示す。右側の図は、ターゲット点の中の電場の時間分布を示す。パラメータはアンテナ設計(半楕円形)、及びパルス持続時間(0.8ns、0.4ns)である。
【図13】アンテナ構成、つまりターゲット体積の中の電場の空間分布及び電場の時間分布を示すグラフである。左側の図は、アンテナ構成及びターゲット体積内での電場の空間分布を示す。右側の図は、ターゲット点の中の電場の時間分布を示す。パラメータはアンテナ設計(完全楕円形)、及びパルス持続時間(0.4ns)である。
【図14】反射面のある楕円アンテナの説明図である。
【図15】800ピコ秒のパルスが黒色腫細胞を殺すのを示すグラフである。
【図16】これらの実験で使用されるパルス発生器を示す図である。図16Aはブルームライン(Blumlein)構成での三百ナノ秒のパルス形成回路網の例である。各セラミックコンデンサの幅は3cmである。図16Bは、腫瘍全体で発生する典型的な電圧パルス(赤つまり実線のトレース)と電流パルス(青つまり破線のトレース)を示すグラフである。
【図17】ニードルアレイ電極及び電場パターンを示す。図17Aは、第1の実験に使用された5ニードルアレイを示す写真の走査である。図17Bは、8kVが中心電極にかけられ、外側の4個の電極が接地で保持されるときに発生する電場を示す三次元プロットである。
【図18】マウス56番に付けられた5ニードルアレイ電極を使用して100パルスの1回または2回の適用に対する皮膚及び黒色腫の典型的な反応を示す写真の走査である。写真のそれぞれの一致した組は、左側が皮膚のインビボの透光テスト、右側が表面ビューに相当する。一番左側の数は、右側のすべての3つの一致した組が写真撮影されたパルシングの後の日数を示している。図18Aから図18Bは、0日に発射された100パルス(長さ300ns、20kV/cm、0.5Hz)に対する正常な皮膚の典型的な反応を示している。図18Bに示される小さな表在性糜爛は、(図18Cから図18E)で成長し、いくつかのまたはすべての表皮の損失を示している。(図18Hから図18M)電極アレイは0日にこの腫瘍の中に挿入されたが、パルスは発射されなかった。(図18Oから図18T)0日と1日に0.5Hzで100パルス(長さ300ns、20kV/cm)が発射された。2日に明らかな壊死は経時的にさらに激しくなる。目盛バー(図18Aから図18T)1mm及び既定の行のすべての写真は同じ倍率である。
【図19】5ニードルアレイを使用する示された治療後の、合計23個の黒色腫の大きさの変化の要約を示すグラフである。毎日、腫瘍面積が、透光テスト画像から測定され、正規化された面積を示すためにゼロ日に測定されたもので除算された。異なる動物からの2個または3個の腫瘍の平均的な反応が対数目盛に描かれ、エラーバーはSEMに相当する。パルスが0.5Hzという周波数で適用された。(図19A、図19B)10kV/cmという平均的な場を与えるために、4kVが中心のニードルと、4mm離間された外側のニードルの間に適用された。(図19Cから図19E)8キロボルトが、20kV/cmという平均的な場を与えるために中心のニードルと外側のニードルの間に適用された。
【図20】マウス102番に付けた直径5mmの平行平板電極を使用した4日のただ1回の適用が後に続く、0日の30分、離した100パルス(300ns、40kV/cm、0.5Hz)の3回の適用に対する黒色腫の典型的な反応を示す写真の走査である。すべて当日に撮影された同じ腫瘍の画像の7つの一致したセットの集合体が、透光テスト画像の左下角に示されている。(図20A、(A列))は、透光テスト画像を示している。(図20B、(B列))表面ビュー。(図20C、(C列))腫瘍の中心での超音波スライス。(図20D、(D列))腫瘍を通る100の連続超音波スライスから作られる三次元再構築。倍率は各列で一定であり、各列の一番上にある目盛バーは1mmに相当する。
【図21A】イソフルラン吸入麻酔を受け、平行平板電極で治療されているSKH−1の毛のないマウスを示す写真の走査である。(差し込み図)それがその上に導電性の寒天ゲルを置くための空間を可能にするために、0.5mm、凹んでいることを示す、平行平板電極の平板の1枚の接写。
【図21B】同じ4x100パルス(0日に3x100、及び4日に1x100)、40−80kV/cm、0.5Hzでの300nsパルスの適用を使用する平行平板電極で治療されている3匹のマウスの6個の腫瘍の透光テスト画像の正規化された面積の平均変化を示すグラフである。エラーバーはSEMを示す。
【図22】最初の治療後65日までに明らかな黒色腫の完全な退縮を示す写真の走査である。300nsと40kV/cmの100パルスが0日、1日、2日、及び21日、22日、23日に適用された。写真の各組は左側に示された日に撮影された。左側が透光テスト、右側が表面ビューである。左上の目盛バーは1mmに相当し、すべての画像で同じである。
【図23】nsPEF適用中の黒色腫の中での温度の測定を示す。図23Aは、コンスタンタンから作られるもので銅線を溶融することによって作られる熱電対の顕微鏡写真の走査である。図23Bは、パルス適用中に黒色腫の内部に配置された熱電対から記録された温度を示すプロットである。低い方の点は、各パルスが適用された時刻を示している。
【図24】nsPEF影響のターゲットと仕組みを示す。図24Aから図24Dは、ヘマトキシリンとエオシンで染色された、100パルス(300ns、40kV/cm、0.5Hz)での治療後の、表示された時に固定されたコントロール(control)黒色腫と治療済みの黒色腫の厚さ7マイクロメートルのパラフィン部分を示す写真の走査である。最も明確な細胞核が大きさの比較を助けるためにコピーされ、各部分の右側に置かれた。(図24A)コントロール腫瘍部分。(図24B)治療後10分。(図24C)治療後1時間。(図24D)治療後3時間。目盛バー:10μm。図24Eは、100パルスから200パルスが適用された後の平均核領域対時間を示すグラフである。時点ごとに少なくとも2匹のマウスから測定された細胞核の数が各欄の隣に示され、バーはSEMに相当する。間断(Breakintime)は330時間である。1時間と3時間の間(p<0.001)だけではなく、0時間のプレパルス制御と他の時点(p<0.001)のすべての間に大きな差異がある。0.1時間と1時間の間に大きな差異はない。(A)から(D)の目盛バー:10μm。
【図25】nsPEFの適用前と適用後の黒色腫の中の血液の流れを示す。図25Aは、黒色腫の体積の三次元再構築を示す。図25Bは、場適用前の血液の流れのパワードップラー再構築を示す。図3Cは、100パルス(300ns、40kV/cm、0.5Hz)の約15分後に発生された、図25Aに示されている同じ黒色腫の体積の三次元再構築を示す。図25Dは、100パルス(300ns、40kV/cm、0.5Hz)の約15分後に発生された、図25Bに示されている同じ腫瘍の中の血液流のパワードップラー再構築を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電場パルス発生器と、
電気パルスラジエータと、
電磁波のための集束リフレクタまたは集束レンズとを備える装置。
【請求項2】
前記電場パルス発生器及び電気パルスラジエータ(エミッタ)の少なくとも一方が、電極、アンテナ、ケーブル、同軸ケーブル、プレート、及び放熱フィンを備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アンテナが楕円リフレクタを備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アンテナがパラボラリフレクタを備える請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記アンテナが集束レンズを備える請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記電気パルス発生器が、約0.1ピコ秒の電圧パルスの間で、最高900ナノ秒(ns)の電圧パルスを発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電場発生器が最高5MV/cmの電場を発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電場発生器が最高10MV/cmの電場を発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電場発生器が10kV/cmから800kV/cmの電場を発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電気パルス発生器が、1ナノ秒(ns)未満または1ナノ秒(ns)に等しいパルス持続時間、つまり1MV未満または1MVに等しい電圧を生じさせる請求項1に記載の装置。
【請求項11】
振幅が約10kVから1MV、及びパルス持続時間(半期)が約10psから5nsの単極性パルス、両極性パルス、及び発振高電圧パルスが発生する請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記電気パルスのエネルギーが細胞培養、組織及び器官(楕円アンテナ)の中の明確な体積の中に、あるいは大きな距離(パラボラアンテナ)に集束される請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記電気エネルギーが、単一同軸ケーブルまたは複数同軸ケーブル、あるいは他の導波管を通して組織内のターゲットに送達される請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記超短パルスにさらされる細胞を備える1つまたは複数のレセプタクル、
絶縁体、
同軸ケーブル、
超広帯域暴露細胞、
電流プローブ、
コンデンサ型分圧器、
オシロスコープとトリガとを備えるスクリーンルーム、
加圧された格納容器の中に約20から30段のあるMarx−Bank、
パルス形成回路網、および
テールカットスイッチをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項15】
細胞及び組織の中でアポトーシスを引き起こす方法であって、
前記細胞または組織を電場にさらす工程と、
前記電場を、治療を必要とする細胞または組織に集束させる工程と、
細胞及び組織内でアポトーシスを引き起こす工程とを備える方法。
【請求項16】
前記電場が異常細胞または組織の上に集束され、正常な細胞に影響を及ぼさない請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電場がアンテナ、電極、ケーブル、同軸ケーブル、プレート、平行平板、針、及び放熱フィンによって集束される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電場がアンテナ及びリフレクタまたはレンズで集束される請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が少なくとも約10個のパルスから約10000個のパルスに、少なくとも1日に1度さらされる請求項15に記載の方法。
【請求項20】
癌を患う患者を治療する方法であって、
前記患者を電場にさらす工程と、
前記電場を、癌細胞または癌細胞を備える組織の上に集束させる工程と、
癌を患う患者を治療する工程とを備える方法。
【請求項21】
前記電場が異常細胞または異常細胞を備える組織の上に集束され、正常な細胞に影響を及ぼさない請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記電場がアンテナ、電極、ケーブル、同軸ケーブル、プレート、平行平板、針及び放熱フィンによって集束される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記電場がアンテナ及びリフレクタまたはレンズで集束される請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記癌細胞または癌を備える組織が、少なくとも約10個から約10000個のパルスに、少なくとも1日に1度さらされる請求項20に記載の方法。
【請求項25】
感染性の病原体に感染している細胞及び組織を治療する方法であって、
前記細胞または組織を電場にさらす工程と、
治療を必要とする細胞または組織の上に該電場を集束させる工程と、
感染性の病原体に感染している細胞及び組織を治療する工程とを備える方法。
【請求項26】
前記電場が異常細胞または組織の上に集束され、正常な細胞に影響を及ぼさない請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電場が、アンテナ、電極、ケーブル、同軸ケーブル、プレート、平行平板、針及び放熱フィンによって集束される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記電場がアンテナ及びリフレクタによって集束される請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が少なくとも約50個から約1000個のパルスに、少なくとも1日に1度さらされる請求項25に記載の方法。
【請求項30】
細胞内でカルシウム放出を引き起こす方法であって、
前記細胞または組織を電場にさらす工程と、
前記電場を、治療を必要とする細胞または組織に集束させる工程と、
細胞内でカルシウム放出を引き起こす工程とを備える方法。
【請求項31】
細胞の構造及び機能を改良する方法であって、
前記細胞または組織を電場にさらす工程と、
前記電場を、治療を必要とする細胞または組織に集束させる工程と、
細胞構造及び機能を改良する工程とを備える方法。
【請求項32】
前記細胞構造が細胞内及び細胞外である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞構造が、ミトコンドリア、小胞体、細胞核、核小体、ゴルジ体、DNA、RNA、メッセンジャーRNA、蛋白質、DNA−蛋白質相互作用、RNA−蛋白質相互作用、蛋白質間相互作用、アミノ酸、脂質、脂質ラフト、膜受容体及びイオンチャネルを備える請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞の機能が、新陳代謝、転写、翻訳、遺伝子発現、分泌、神経伝達物質放出、イオンチャネル開閉、アポトーシス、細胞周期の調節、二次メッセージャー生成、酵素活性、活性酸素種産生、酸化反応/還元反応を備える請求項31に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20A−D】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A−D】
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【公表番号】特表2009−504346(P2009−504346A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527186(P2008−527186)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/032440
【国際公開番号】WO2007/024734
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508045066)オールド ドミニオン リサーチ ファウンデーション (2)
【氏名又は名称原語表記】OLD DOMINION RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】