説明

組電池の充放電制御装置及び充放電制御方法

【課題】組電池を充電する場合の消費電力量を低減しつつ、安全に組電池を充放電可能とすることを目的とする。
【解決手段】組電池1を制御するコントローラ10であって、組電池1に電力を充電する時には、コントローラ10はヒータ5が設けられた電池モジュール3bを第1の閾値まで昇温した後に、全ての電池モジュール3a及び3bが第2の閾値まで充電されるようリレー6a及び6bを制御する。組電池1から電力を放電する時には、コントローラ10は電池モジュール3a及び3bのうち電圧値が高い電池モジュール3a及び3bから電力が出力されるようリレー6aまたは6bを制御し、他方の電池モジュールの電圧値が放電されている電池の電圧値と等しくなった場合に、他方の電池モジュールが放電されている電池モジュールと並列に接続されるようリレー6aまたは6bを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池を充電する場合に用いられる電力量を低減しつつ、安全に組電池を充放電することが可能な組電池の充放電制御装置及び充電制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの複数の単電池からなるバッテリを動力源として用いたハイブリッド自動車、電気自動車などが知られている。単電池は、温度によって内部抵抗が変動する。図7は、単電池の電池温度と内部抵抗との関係を示した内部抵抗―温度特性図である。図7を参照してわかるように、内部抵抗及び電池温度には相関関係があり、電池温度が低くなると内部抵抗は大きくなる。特に、極低温領域では、単電池の内部抵抗が極めて高くなる。
【0003】
単電池の内部抵抗が高くなると、充放電時の電圧値の変動幅が大きくなる。そのため、単電池の電圧値を所定の範囲内に抑えるためには、単電池の内部抵抗が高くなった場合には入出力の電流値を制限する必要がある。このため、極低温時に単電池を充電する場合に、大電流を単電池に流すことが出来ず、単電池を満足に充電することが出来なくなるおそれがある。
【0004】
特許文献1は、並列接続させた第1の二次電池及び第2の二次電池を充電する場合に、まず第1の二次電池の温度が所定の温度になるまで予備加熱を行い、第1の二次電池の電圧値が所定の電圧値になるまで充電を行った後に、第2の二次電池の温度が所定の温度になるまで予備加熱を行い、その後第2の二次電池の電圧値が所定の電圧値になるまで充電を行う二次電池の充電方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−142095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に開示された二次電池の充電方法のように、二次電池を充電する前に二次電池の予備加熱を行い、二次電池の内部抵抗を低減させることで、入出力の電流値を制限することなく二次電池を充電することが可能となる。
【0007】
しかし、二次電池を充電する場合に全ての二次電池を予備加熱しようとすると、二次電池を充電する場合に用いられる電力量が大きくなり、ユーザへの負担となる。
【0008】
また、充放電を繰り返すと、劣化等が原因で二次電池の満充電容量が低下していくことが知られている。図8(a)は、直列に接続した複数の二次電池32から成る電池モジュール33及び34を並列に接続した組電池を表している。このような組電池は、高出力かつ高容量な電源を必要とするハイブリッド車両及び電気自動車に主に適用される。
【0009】
この組電池の一方の電池モジュール33に、劣化等が原因で満充電容量が低下している二次電池31が存在していると仮定する。この組電池に特許文献1の技術を適用すると、電池モジュール34は昇温と充電とを繰り返せば、それぞれの二次電池32が満充電容量となるまで素早く充電することが可能である。しかし、電池モジュール33は、上記の通り劣化した二次電池31が存在するため、劣化した二次電池31を過充電状態にしないためにも劣化した二次電池31の充電容量が充電完了容量に達した時点で充電を終了する必要がある。よって、電池モジュール33内のその他の二次電池32を満充電容量まで充電することが出来ず、それぞれの二次電池31及び32の充電状態は図8(b)に表されているようになる。電池モジュール33及び34の充電容量を二次電池31及び32の充電容量の和と考えると、電池モジュール34の充電容量が電池モジュール33の充電容量より高い状態となる。電池モジュール33及び34の電圧値も、充電容量と同じように二次電池31及び32の電圧値の和と考えられるため、電池モジュール34の電圧値は、電池モジュール33の電圧値より高くなる。故に、この組電池を負荷等に接続せず、それぞれの電池モジュール33及び34を並列に接続した状態で放置していると、図8(c)に表されているように、電圧差によって電池モジュール34から電池モジュール33へ循環電流が流れてしまう。その結果、電池モジュール33が充電されてしまい、劣化した二次電池31が過充電状態になってしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであって、その目的は、組電池を充電する場合に用いられる電力量を低減することでユーザへの負担を低減しつつ、直列に接続した複数の二次電池から成る電池モジュールを並列接続した組電池内で循環電流を発生させることなく組電池を安全に充放電することが可能な組電池の充放電制御装置及び充電制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る組電池の充放電制御装置は、複数の電池セルを直列に接続した電池モジュールがリレーを介して2組以上並列に接続され、前記電池モジュールのうち、少なくとも1つに前記電池モジュールに前記電池モジュールを昇温する昇温手段が設けられた組電池の充放電制御装置であって、前記組電池に電力を充電する時には、前記昇温手段が設けられた前記電池モジュールを所定温度まで昇温した後に、全ての前記電池モジュールが所定の電圧値となるまで充電されるようリレーを制御し、前記組電池から電力を放電する時には、前記電池モジュールのうち電圧値が最も高い電池モジュールから電力が放電され、残りの電池モジュールは、電圧値が放電されている前記電池モジュールの電圧値と等しくなったものから順に、放電されている前記電池モジュールと並列に接続されるよう前記リレーを制御することを特徴とする。
【0012】
第2の発明に係る組電池の充放電制御装置は、第1の発明の構成に加え、充放電制御装置は、前記組電池を構成する前記電池モジュールのうちいずれか1つに設けられた前記昇温手段を制御することを特徴とする。
【0013】
第3の発明に係る組電池の充放電制御装置は、第2の発明の構成に加え、充放電制御装置は、前記電池モジュールを構成するいずれかの前記電池セルの電圧値が所定の電圧値まで充電された場合に、前記電池モジュールの充電が終了するようリレーを制御することを特徴とする。
【0014】
第4の発明に係る組電池の充放電制御装置は、第3の発明の構成に加え、充放電制御装置は、前記電池モジュールを構成する前記電池セルの電圧値を足し合わせることで前記電池モジュールの電圧値を算出することを特徴とする。
【0015】
第5の発明に係る組電池の充放電制御方法は、複数の電池セルを直列に接続した電池モジュールが、リレーを介して2組以上並列に接続され、前記電池モジュールのうち、いずれか1つに前記電池モジュールに前記電池モジュールを昇温する昇温手段が設けられた組電池の充放電制御装方法であって、前記組電池に電力を充電する時には、前記昇温手段が設けられた前記電池モジュールを所定温度まで昇温するステップと、全ての前記電池モジュールが充電されるようリレーを制御するステップとを有し、前記組電池から電力を放電する時には、前記電池モジュールのうち電圧値が最も高い前記電池モジュールから電力が出力されるようリレーを制御するステップと、残りの電池モジュールのうち、電圧値が放電されている前記電池モジュールの電圧値と等しくなった電池モジュールから順に、放電されている前記電池モジュールに並列に接続されるよう前記リレーを制御するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記発明によれば、組電池を充電する場合に、並列に接続された複数の電池モジュールのうち1つを昇温するので、充電時に消費される電力を低減することが出来る。また、組電池に電力を充電する場合は組電池の充電が完了した電池モジュールから順に並列接続から切り離されるようリレーを制御し、組電池より電力を放電する場合は最も電圧値が高い電池モジュールから電力を放電し、残りの電池モジュールは、電圧値が放電されている電池モジュールの電圧値と等しくなったものから順に放電されている電池モジュールと並列に接続されるようリレーを制御するので、循環電流を流すことなく、安全に組電池を充放電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】組電池及び充放電制御装置のブロック図である。
【図2】電池を昇温する場合にコントローラが実行するフローチャートである。
【図3】組電池を充電する場合にコントローラが実行するフローチャートである。
【図4】組電池より電力を放電する場合にコントローラが実行するフローチャートである。
【図5】組電池に電力を充電する場合のリレーの作動状態を表した図である。
【図6】組電池より電力を放電する場合のリレーの作動状態を表した図である。
【図7】電池温度と内部抵抗の関係を示す内部抵抗―温度特性図である。
【図8】複数の二次電池を直列接続して構成された2つの電池モジュールを並列接続した組電池に従来技術を適用した場合の各二次電池の充電容量を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る組電池とそれを制御する充放電制御装置について説明する。
【0020】
まず組電池1は、並列に接続された電池モジュール3a及び3bと、一方の電池モジュール3bに設けられたヒータ5と、電池モジュール3a及び3bを並列接続から切り離したり並列に接続したりするリレー6a及び6bとを有する。また、電池モジュール3a及び3bは直列接続された複数の電池セル2a及び2bから成る。また、組電池1はそれぞれの電池セル2a及び2bの電圧値を検出するための電圧センサ4を有する。電圧センサは各電池セル2a及び2bに対して1つずつ設けても良いが、本実施例では簡素化のために、切換回路7を介して電池セル2a及び2bに接続されている。また組電池1は、充電される場合は外部電源8に、外部に電力を供給する場合は負荷9に接続される。
【0021】
電池セル2a及び2bは例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等の充放電可能な二次電池である。直列に接続される電池セル2aの個数については特に限定されるものではないが、本実施例では電池モジュール3a及び3bの電圧値がそれぞれ略同一となるよう電池セル2a及び2bの数が設定されている。尚、本実施例の組電池1には、1つの電池に対してn個の電池セルが接続されているので、計2n個の電池セルにより形成されている。
【0022】
ヒータ5は、後述するコントローラ10からの指令を受け、電池モジュール3bを加熱するために作動する。ヒータ5は、セメント型の抵抗体から成る。セメント型の抵抗体は、抵抗体収容ケースと、抵抗体収容ケースの中に収容される抵抗体とを含む。抵抗体収容ケースの内部には、セメント材が充填される。抵抗体は、折り曲げられた金属板であってもよい。金属板は、銅及びニッケルを含む合金であってもよい。抵抗体収容ケースは、セラミックであってもよい。セラミックは、熱伝導性を高めるためにアルミナをふくんでもよい。セメント材は、アルミナ粉末やシリカ粉末を含むペースト状の絶縁封止材であってもよい。ヒータは、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ、或いはペルチェ素子を用いたペルチェヒータであってもよい。
【0023】
電圧センサ4は、それぞれの電池モジュール3a及び3bに設けられ、切換回路7を介してそれぞれの電池セル2a及び2bに接続されている。そして、電圧センサ4はそれぞれの電池セル2a及び2bの電圧値を検出し、後述するコントローラ10へ送信する。切換回路7は、後述するコントローラ10の指令を受け、電圧センサ4を接続する電池セル2a及び2bを切り換える。
【0024】
そしてコントローラ10は、電圧センサ4や、電池モジュール3bの表面温度を検出する図示しない温度センサ等の情報を基にヒータ5やリレー6a及び6bを操作して、組電池1の充電及び放電を制御する。
【0025】
次に、コントローラ10がどのように組電池1の制御を行うかを説明する。
【0026】
(組電池1の昇温制御)
図2のフローチャートは、組電池1を昇温する場合に、コントローラ10が実行する制御作動を表している。
【0027】
前述の通り、電池の内部抵抗は電池温度が低くなる程大きくなり、そのため電池の入出力電流値が制限されてしまうことが知られている。そのため、コントローラ10は組電池1の充電を行う前に、ヒータ5を用いて電池モジュール3bを昇温することで、電池モジュール3bを構成する電池セル2bの内部抵抗値を小さくし、電池モジュール3bの入出力電流値が制限されることを防止している。
【0028】
S1では、まずコントローラ10は電池モジュール3bの昇温が必要か否かを判断するために、図示しない温度センサを用いて電池モジュール3bの電池温度Tbを検出する。その後、S2を実行する。
【0029】
S2では、コントローラ10はS2で検出した電池温度Tbが第1の閾値以下か否かを判断する。電池温度Tbが第1の閾値以下の場合は、コントローラ10は電池モジュール3bの温度が低いため内部抵抗値が低く、電池モジュール3bの昇温が必要と判断し、S3を実行する。電池温度Tbが第1の閾値より大きい場合は、コントローラ10は電池モジュール3bの温度が充分に高く、昇温は必要ないと判断し、本制御ルーチンを終了して次の制御サイクルを実行する。
【0030】
S3では、コントローラ10は電池モジュール3bを昇温するためにヒータ5を作動させる。その後、S4を実行する。
【0031】
S4では、コントローラ10は電池モジュール3bの昇温を継続するか否かを判断するために、再度図示しない温度センサを用いて電池モジュール3bの電池温度Tbを検出する。その後、S5を実行する。
【0032】
S5では、コントローラ10はS4で検出した電池温度Tbが第1の閾値より大きいか否かを判断する。電池温度Tbが第1の閾値より大きい場合は、コントローラ10は電池モジュール3bが充分昇温され、また内部抵抗値も充分に小さくなったと判断し、S6を実行する。電池温度Tbが第1の閾値以下の場合は、コントローラ10は電池モジュール3bがまだ充分に昇温されてなく、また内部抵抗値も高いと判断し、引き続き電池モジュール3bの昇温を行うために再びS4を実行する。
【0033】
S6では、コントローラ10はヒータ5の作動を停止させ、本制御ルーチンを終了して次の制御サイクルを実行する。
【0034】
前述の通り、組電池1にはヒータ5が一方の電池モジュール3bにのみ設けられている。そのため、組電池1の充電時にヒータ5によって消費される電力を低減することが出来る。尚、昇温する電池が一方のみでも、組電池1より充分に電力を供給することが可能である。この点について、具体例を示して詳細に説明する。
【0035】
電池モジュール3aを構成する電池セル2aの数を10セル、電池モジュール3bを構成する電池セル2bの数を10セルとする。また、−10℃における電池セル2a及び2bの出力を0.1kw、20℃における電池セル2a及び2bの出力を5kw、30℃における電池セル2a及び2bの出力を10kwとする。個々の電池セル2a及び2bの温度を1℃上昇させるのに必要な熱量(熱容量)を50J/kとする。電池モジュール3a及び3bの全体を−10℃から20℃に昇温させるためには、50J/k×20セル×30℃=3000Jのエネルギが必要となる。一方の電池、例えば電池モジュール3bを−10℃から30℃に昇温させるためには、50J/k×10セル×40℃=2000Jのエネルギが必要となる。したがって、電池モジュール3bのみを昇温する場合、電池モジュール3a及び3bの双方を昇温する場合と比較して、昇温に必要なエネルギを2/3に削減することが出来る。昇温に用いるエネルギの削減は、ヒータ5によって消費される電力の低減にも繋がる。
【0036】
一方、−10℃から20℃に昇温した電池モジュール3a及び3bの総電池出力は、20セル×5kw=100kwであり、−10℃から30℃に昇温した電池モジュール3bの電池出力は、10セル×10kw=100kwである。従って、昇温に必要なエネルギを2/3に抑えながら、同等の出力を得ることが出来る。尚、これらの数字は例示であり、本発明はこれらに限られるものではない。
【0037】
(組電池1の充電制御)
図3のフローチャートは、組電池1が外部電源8に接続されて充電される場合に、コントローラ10が実行する制御作動を表している。
【0038】
まずS11では、コントローラ10は電池モジュール3a及び3bを充電するために、リレー6a及び6bをON状態にする。その後、S12を実行する。尚、リレー6a及び6bを共にON状態にすると、図5(a)で表されているように電池モジュール3a及び3bが並列接続状態となるので、電池モジュール3a及び3bの双方が充電される。
【0039】
S12では、コントローラ10は電圧センサ4を用いて、まず電池モジュール3bのいずれかの電池セル2bkの電圧値Vbkを検出し、S13を実行する。尚、kは自然数であり、1から電池モジュール3bに接続されているセル数を表す数nの範囲で任意で選ばれる。前述の通り、電圧センサ4は切換回路7を介して電池モジュール3bを形成する電池セル2bに接続されている。コントローラ10は、電池セルの電圧値を検出する度に切換回路を制御し電圧センサ4を接続する電池セルを切り換える。例えば、前回の制御サイクルで電池セル2b1の電圧値を検出した場合、次の制御サイクルでは電池セル2b2の電圧値を検出する。
【0040】
前述の通り、電池温度が上昇すると内部抵抗値も低くなるため、より多くの電流を電池に流すことが可能となる。従って、昇温をしていない電池モジュール3aより、昇温をしている電池モジュール3bの方が早く充電が完了する。よって本実施例では、コントローラ10はまず電池モジュール3bを構成する電池セル2bの電圧値を検出して電池モジュール3bの充電を続けるか否かを判断し、その後電池セル2aの電圧値を検出して電池モジュール3aの充電を続けるか否かを判断している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、電池セル2a及び電池セル2bの電圧値をそれぞれ交互に検出し、充電が完了した電池モジュール3a及び3bから順に充電を終了するようにしてもよい。
【0041】
また、コントローラ10は切換回路7を用いて各電池セル2a及び2bの電圧値を検出し、いずれかの電池セル2a及び2bの電圧値が閾値以上となった場合に電池モジュール3a及び3bの充電を停止する。よって、いずれかの電池セル2a及び2bが過充電状態となることを防止することが出来る。
【0042】
図3のフローチャートの説明に戻る。S13では、コントローラ10はS12で検出した電池セル2bkの電圧値Vbkが、電池セルが満充電状態になったか否かを判断するために設けられた第2の閾値より大きいか否かを判断する。電池セル2bkの電圧値Vbkが第2の閾値より大きい場合は、コントローラ10は電池モジュール3bが満充電状態になったと判断し、電池モジュール3bの充電を終了させるべくS14を実行する。電池セル2bkの電圧値Vbkが第2の閾値未満の場合は、引き続き電池モジュール3bを充電させるべく再びS12を実行する。
【0043】
S14では、コントローラ10は電池モジュール3bのみ充電を終了させるためにリレー6bのみOFF状態にする。その後、S15を実行する。尚、リレー6bをOFF状態にすると、図5(b)で表されているように電池モジュール3bが並列接続より切り離されるので、電池モジュール3aのみが充電されるようになる。
【0044】
S15では、コントローラ10は電圧センサ4を用いて、電池モジュール3aのいずれかの電池セル2akの電圧値Vakを検出し、S16を実行する。尚、kは自然数であり、1から電池モジュール3aに接続されているセル数を表す数nの範囲で任意で選ばれる。前述の通り、電圧センサ4は切換回路7を介して電池モジュール3aを形成する電池セル2aに接続されている。コントローラ10は、電池セルの電圧値を検出する度に切換回路を制御し電圧センサ4を接続する電池セルを切り換える。例えば、前回の制御サイクルで電池セル2a1の電圧値を検出した場合、次の制御サイクルでは電池セル2a2の電圧値を検出する。
【0045】
S16では、コントローラ10はS15で検出した電池セル2akの電圧値Vakが、前述の第2の閾値より大きいか否かを判断する。電池セル2akの電圧値Vakが第2の閾値より大きい場合は、コントローラ10は電池セル2akが満充電状態になったと判断し、電池モジュール3aの充電を終了させるべくS17を実行する。電池セル2akの電圧値Vakが第2の閾値未満の場合は、引き続き電池モジュール3aを充電させるべく再びS15を実行する。
【0046】
S17では、コントローラ10は電池モジュール3aの充電を終了させるためにリレー6aをOFF状態にし、本制御ルーチンを終了して次の制御サイクルを実行する。尚、リレー6aをOFF状態とすると、図5(c)で表されているように電池モジュール3aが充電電流を供給している電源から切り離されるので、電池モジュール3aに充電電流は流れなくなる。
【0047】
図5(c)で表されているように、組電池1の充電が完了したらリレー6a及び6bはOFF状態となり、電池モジュール3aと電池モジュール3bとが切り離される。よって、例え劣化等が原因の電池モジュール3aの満充電電圧値と電池モジュール3bの満充電電圧値との間に差が生じていても、電圧値が高い方から低い方へ循環電流が流れることがない。よって、満充電状態にあるにも係らず、電圧値が低い方の電池が充電されてしまい過充電状態になってしまうおそれがなく、組電池1を安全に充電することが出来る。
【0048】
(充電完了後の組電池1の放電制御)
図4のフローチャートは、充電完了後に組電池1が負荷9に接続されて外部に電力を放電する場合に、コントローラ10が実行する制御作動を表している。
【0049】
まずS21では、コントローラ10は電圧センサ4を用いて電池モジュール3aの電圧値Vat及び電池モジュール3bの電圧値Vbtとを検出し、その後S22を実行する。尚、電池モジュール3aの電圧値Vatは、電池モジュール3aを構成する全ての電池セル2aの電圧Vaを足し合わせた和であり、電池モジュール3bの電圧値Vbtは、電池モジュール3bを構成する全ての電池セル2bの電圧Vbを足し合わせた和である。
【0050】
S22では、コントローラ10はS21で検出した電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しいか否かを判断する。電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しい場合は、コントローラ10はS22の判断を肯定しS23を実行する。電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しくない場合は、コントローラ10はS22の判断を否定しS24を実行する。
【0051】
S23では、S22にて電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しいと判断されたので、コントローラ10は図6(c)に表されているようにリレー6a及びリレー6bとをON状態することで電池モジュール3a及び3bを並列接続状態にして、本制御ルーチンを終了して次の制御サイクルを実行する。尚、電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとは等しいため、リレー6a及び6bがON状態のままで負荷9への電力供給を中断している場合でも、循環電流が流れることはない。従って、組電池1より電力を安全に放電することが出来る。
【0052】
S24では、コントローラ10は電池モジュール3bの電圧値Vbtが電池モジュール3aの電圧値Vatより大きいか否かを判断する。電池モジュール3bの電圧値Vbtが電池モジュール3aの電圧値Vatより大きい場合は、S24の判断を肯定し、電池モジュール3bから負荷9へ電力を供給すべくS25を実行する。電池モジュール3bの電圧値Vbtが電池モジュール3aの電圧値Vatより小さい場合はS24の判断を否定し、電池モジュール3aから負荷9へ電力を供給すべくS29を実行する。
【0053】
S25では、S24にて電池モジュール3bの電圧値Vbtが電池モジュール3aの電圧値Vatより大きいと判断したため、コントローラ10は図6(a)に表されているようにリレー6bをON状態にし、電池モジュール3bの電力を放電する。その後、S26を実行する。
【0054】
S26では、コントローラ10は電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しくなったかを確認するために、電圧センサ4を用いて、電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtを検出する。その後、S27を実行する。
【0055】
S27では、コントローラ10はS26で検出した電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しいか否かを判断する。電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しい場合は、S27の判断を肯定し、電池モジュール3aと電池モジュール3bとを並列接続状態にするべくS28を実行する。電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しくない場合は、再びS26を実行する。
【0056】
S28では、コントローラ10はS27にて電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しいと判断したため、リレー6aをON状態にして図6(c)に表されているように電池モジュール3aと電池モジュール3bとを並列接続状態にする。尚、電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとは等しいため、リレー6a及び6bがON状態のままで負荷9への電力供給を中断している場合でも、循環電流が流れることはない。従って、組電池1より電力を安全に放電することが出来る。
【0057】
S29では、S24にて電池モジュール3bの電圧値Vbtが電池モジュール3aの電圧値Vatより小さいと判断したため、コントローラ10は図6(b)に表されているようにリレー6aをON状態にし、電池モジュール3aの電力を放電する。その後、S30を実行する。
【0058】
S30では、コントローラ10は電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しくなったかを確認するために、電圧センサ4を用いて、電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtを検出する。その後、S31を実行する。
【0059】
S31では、コントローラ10はS30で検出した電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しいか否かを判断する。電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しい場合は、S31の判断を肯定し、電池モジュール3aと電池モジュール3bとを並列接続状態にするべくS32を実行する。電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しくない場合は、再びS30を実行する。
【0060】
S32では、コントローラ10はS31にて電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとが等しいと判断したため、リレー6aをON状態にして図6(c)に表されているように電池モジュール3aと電池モジュール3bとを並列接続状態にする。尚、電池モジュール3aの電圧値Vatと電池モジュール3bの電圧値Vbtとは等しいため、リレー6a及び6bがON状態のままで負荷9への電力供給を中断している場合でも、循環電流が流れることはない。従って、組電池1より電力を安全に放電することが出来る。
【0061】
以上のように、本発明の実施形態に係る組電池の充放電制御装置によれば、コントローラ10は組電池1に電力を充電する時には、ヒータ5が設けられた電池モジュール3bの温度がを第1の閾値となるまで昇温した後に、全ての電池モジュール3a及び3bの電圧が第2の閾値となるまで充電されるようリレー6a及び6bを制御し、組電池1から電力を放電する時には、電池モジュール3a及び3bのうち電圧値が高い電池モジュールから電力が放電されるようリレー6aまたは6bを制御し、他方の電池モジュールが電圧値が放電している電池モジュールの電圧値と等しくなった場合に、放電している電池モジュールと並列に接続されるようリレー6aまたは6bを制御するので、組電池1を充電する場合に用いられる電力量を低減しつつ、安全に組電池1を充放電することが出来る。
【0062】
また、本発明の実施形態に係る組電池の充放電制御装置によれば、組電池1には電池モジュール3bにのみヒータ5が設けられており、コントローラ10はヒータ5を用いて電池モジュール3bのみを昇温するため、組電池1を充電する場合に用いられる電力量を低減することが出来る。
【0063】
また、コントローラ10は電池モジュール3a及び3bを構成するいずれかの電池セル2a及び2bの電圧値Va及びVbが第2の閾値まで充電された場合に、電池モジュール3a及び3bの充電が終了するようリレー6a及び6bを制御するので、循環電流を組電池1内に流すことなく安全に充電することが出来る。
【0064】
また、本発明の実施形態に係る組電池の充放電制御装置によれば、コントローラ10は電池モジュール3a及び3bを構成する電池セル2a及び2bの電圧値Va及びVbを足し合わせることで電池モジュール3a及び3bの電圧値Vat及びVbtを算出するので、循環電流を組電池1内に流すことなく安全に放電することが出来る。
【0065】
尚、本発明の実施形態では2つの電池モジュールを並列に接続した組電池を用いて説明したが、3つや4つの電池モジュールを並列に接続した組電池に適用することも可能である。この場合は、組電池を昇温する場合は並列に接続された電池モジュールのうち1つに昇温手段が設けられ昇温されるので、消費電力を最小限に抑えることが出来る。そして、組電池に電力を充電する時には全ての電池モジュールを並列に接続して充電し、満充電状態になった電池モジュールから順にリレーがOFF状態となり並列接続から切り離され、また組電池より電力を放電する時には最も電圧値が高い電池モジュールから放電が開始され、電圧値が放電している電池モジュールの電圧値と等しくなった電池モジュールから順にリレーがON状態となり並列に接続されていくので、循環電流を流すことなく安全に充放電することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1:組電池 2a、2b:電池セル 3a、3b:電池モジュール 4:電圧センサ 5:ヒータ 6a、6b:リレー 7:切換回路 10:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列に接続した電池モジュールがリレーを介して2組以上並列に接続され、
前記電池モジュールのうち、少なくとも1つに前記電池モジュールに前記電池モジュールを昇温する昇温手段が設けられた組電池の充放電制御装置であって、
前記組電池に電力を充電する時には、
前記昇温手段が設けられた前記電池モジュールを所定温度まで昇温した後に、
全ての前記電池モジュールが所定の電圧値となるまで充電されるようリレーが制御され、
前記組電池から電力を放電する時には、
前記電池モジュールのうち電圧値が最も高い電池モジュールから電力が出力され、
残りの電池モジュールのうち、電圧値が放電されている前記電池モジュールの電圧値と等しくなったものから順に、放電されている前記電池モジュールと並列に接続されるよう前記リレーが制御されることを特徴とする、
組電池の充放電制御装置。
【請求項2】
第1の請求項に記載の組電池の充放電制御装置であって、
前記充放電制御装置は、前記組電池を構成する前記電池モジュールのうちいずれか1つに設けられた前記昇温手段を制御することを特徴とする。
【請求項3】
第2の請求項に記載の組電池の充放電制御装置であって、
前記充放電制御装置は、前記電池モジュールを構成するいずれかの前記電池セルの電圧値が所定の電圧値まで充電された場合に、前記電池モジュールの充電が終了するようリレーを制御することを特徴とする。
【請求項4】
第3の請求項に記載の組電池の充放電制御装置であって、
前記充放電制御装置は、前記電池モジュールを構成する前記電池セルの電圧値を足し合わせることで前記電池モジュールの電圧値を算出することを特徴とする。
【請求項5】
複数の電池セルを直列に接続した電池モジュールが、リレーを介して2組以上並列に接続され、
前記電池モジュールのうち、いずれか1つに前記電池モジュールに前記電池モジュールを昇温する昇温手段が設けられた組電池の充放電制御装方法であって、
前記組電池に電力を充電する時には、
前記昇温手段が設けられた前記電池モジュールを所定温度まで昇温するステップと、
全ての前記電池モジュールが充電されるようリレーを制御するステップとを有し、
前記組電池から電力を放電する時には、
前記電池モジュールのうち電圧値が最も高い前記電池モジュールから電力が出力されるようリレーを制御するステップと、
残りの電池モジュールのうち、電圧値が放電されている前記電池モジュールの電圧値と等しくなった電池モジュールから順に、放電されている前記電池モジュールに並列に接続されるよう前記リレーを制御するステップとを有することを特徴とする、
組電池の充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−37785(P2013−37785A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170490(P2011−170490)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】