説明

組電池監視装置及び組電池用配線の断線検出方法

【課題】各単電池の電圧を検出するための配線に断線が発生した場合に、その断線を的確に検出できるようにする。
【解決手段】複数の単電池1a,1b,1c,1dを直列に接続した組電池1から引き出された配線の断線の有無を検出する組電池監視装置において、前記単電池1a,1b,1c,1dの夫々と並列に設定抵抗値を有する補助電流経路6a,6b,6c,6dが接続され、前記補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dを閉じ状態としたときの検出電圧に基づいて、前記配線の断線の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池を直列に接続した組電池における各単電池の正極及び最も低電位側の単電池の負極から引き出された配線を経て各単電池の電圧を電圧測定のための設定動作を行って検出する電圧測定部と、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧に基づいて前記配線の断線の有無を検出する断線検出部とを備えた組電池監視装置、及び、組電池用配線の断線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる組電池監視装置は、組電池を構成する各単電池の電圧を個別に検出するための装置である。
各単電池の電圧を検出する手法としては、例えば、各単電池の正極と負極とに接続された配線の電圧を単純に計測する手法(差動アンプを用いる手法や抵抗分圧法など)の他、下記特許文献1や下記特許文献2に記載のように、各単電池と並列にコンデンサを接続して(図5参照)、各単電池の電圧で一旦コンデンサを充電し、その充電後のコンデンサの電圧を測定するという手法も考えられている。
ちなみに、このコンデンサを介して単電池の電圧を測定する手法では、各単電池の同一時間での電圧値を測定できるものとなっている。
【0003】
このように各単電池の電圧を検出する場合において、この電圧検出のために組電池から引き出されている上記配線の断線が問題となる。
尚、ここでいう断線は、電気的な接続が断たれることを意味し、配線が現実に切断されてしまう場合の他、配線を接続するソケット等の接続不良によって電気的な接続が断たれる場合をも含む。
【0004】
単電池の電圧検出のための配線に上述のような断線が発生すると、例えば、一旦コンデンサを各単電池で充電する手法では、そのコンデンサ同士は直列に接続されているので、例えば、図5において「×」記号で示す位置で配線に断線が生じても、その断線箇所を挟んだ両隣の単電池Va,Vbから直列接続のコンデンサCa,Cbへ充電されてしまうことになり、単電池Va,Vb夫々の電圧を正しく示しているわけではないコンデンサCa,Cbの電圧を検出してしまうことになる。
このような誤検出を回避するために、下記特許文献2では、コンデンサ同士では直列に接続されている各コンデンサの容量を適宜に異ならせて、上述のような断線が発生した場合に、配線が正常に接続されている場合と、断線が発生している場合とで、コンデンサの充電電圧が異なるようにして、その電圧差によって断線の発生を検知する手法をとっている。
【特許文献1】特開2001−56350号公報
【特許文献2】特開2002−204537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2による断線の検出手法では、正常な場合の検出電圧と断線が発生した場合の検出電圧との電圧差が十分ではない場合もあり、改善が求められていた。
更に、以上は、各単電池の電圧をコンデンサを介して検出する場合を例示して、断線が発生した場合の問題点を説明したが、例えば各単電池の電圧を直接に電圧測定部にて測定する場合にも配線の断線によって同様の問題が生じる。
すなわち、上述のコンデンサを、電圧測定部における検出電圧入力端子間で入力インピーダンスに置き換えて考えて、その入力インピーダンスで分圧された電圧を検出してしまう場合がある。又、上記の各単電池から電圧測定部に至る配線間にノイズ吸収用のコンデンサを接続する場合も同様の問題が生じる。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、各単電池の電圧を検出するための配線に断線が発生した場合に、その断線を的確に検出できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の第1の発明は、複数の単電池を直列に接続した組電池における各単電池の正極及び最も低電位側の単電池の負極から引き出された配線を経て各単電池の電圧を電圧測定のための設定動作を行って検出する電圧測定部と、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧に基づいて前記配線の断線の有無を検出する断線検出部とを備えた組電池監視装置において、前記単電池の夫々と並列に設定抵抗値を有する補助電流経路が接続され、前記補助電流経路の夫々における通電を入り切りする補助電流経路用のスイッチ装置が前記補助電流経路の夫々に備えられ、前記断線検出部は、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、電位での並び順において隣り合うものが同時に閉じ状態とならないように開閉操作し、且つ、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧のうちの少なくとも前記補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態としたときの検出電圧に基づいて、前記配線の断線の有無を検出するように構成されている。
【0007】
すなわち、組電池と電圧測定部とを結ぶ配線の何れの箇所にも断線が生じていなければ、各単電池と並列に接続される補助電流経路のスイッチ装置を閉じ状態としてもあるいは開き状態としても、配線上の電圧は基本的には変化がなく、各単電池の電圧が電圧測定部による検出にかかることになる。
一方、断線が発生しているときには、補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態として、補助電流経路に通電させると、電圧測定部の検出にかかる電圧値は十分に低くなる。
【0008】
更に具体的な例によって説明すると、単電池の電圧をコンデンサを介して測定する手法では、図6(a)に概略的に示すように、図6(a)に「×」記号で断線が発生しているときに、単電池Vaに対応する補助電流経路用のスイッチSaを閉じ状態とした状態で、電圧測定のための設定動作を行わせる。
ここでの電圧測定のための設定動作は、スイッチPa,Pb,Pcを閉じ状態にして単電池Va,VbでコンデンサCa,Cbに充電させた後、コンデンサCa,Cbの電圧を測定する。
このとき、スイッチSaを閉じ状態としているので、コンデンサCbには単電池Va,Vbで充電されるものの、コンデンサCaには充電されない(厳密には、コンデンサCaは瞬時的には充電されるが、充電されていない定常状態へ移行する)。
逆に、単電池Vbに対応する補助電流経路用のスイッチSbを閉じ状態とした状態で、同様の電圧測定のための設定動作を行わせると、コンデンサCaには単電池Va,Vbで充電されるものの、コンデンサCbには充電されない(厳密には、コンデンサCbは瞬時的には充電されるが、充電されていない定常状態へ移行する)。
これによって、断線が発生しているときは、補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態として電圧測定を行ったかあるいは開き状態として電圧測定を行ったかによって測定電圧に大きな開きが発生する。
【0009】
更に、各単電池の電圧を直接に電圧測定部にて測定する場合では、図6(b)に概略的に示すように、図6(b)に「×」記号で断線が発生しているときに、単電池Vaに対応する補助電流経路用のスイッチSaを閉じ状態とした状態で、電圧測定のための設定動作を行わせる。
ここでの電圧測定のための設定動作は、単にスイッチPa,Pb,Pcを閉じ状態にして単電池Va,Vbの電圧を測定する。
このとき、スイッチSaを閉じ状態としており、電圧測定部の入力インピーダンス(図6(b)においてRiで示す)は非常に高いので、単電池Vbの電圧を検出するための入力端子にはほぼ単電池Va,Vbの電圧を足し合わせた電圧が検出にかかり、単電池Vaの電圧を検出するための入力端子には非常に小さい電圧が検出にかかるだけとなる。
逆に、単電池Vbに対応する補助電流経路用のスイッチSbを閉じ状態とした状態で、同様の電圧測定のための設定動作を行わせると、単電池Vaの電圧を検出するための入力端子にはほぼ単電池Va,Vbの電圧を足し合わせた電圧が検出にかかり、単電池Vbの電圧を検出するための入力端子には非常に小さい電圧が検出にかかるだけとなる。
これによって、断線が発生しているときは、補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態として電圧測定を行ったかあるいは開き状態として電圧測定を行ったかによって測定電圧に大きな開きが発生する。
【0010】
以上のように、断線が発生した箇所に連なる単電池の電圧測定の結果が非常に小さい電圧値となることで、電圧値が小さいということ自体によっても断線の発生を検知できるのであるが、実際の測定電圧と判別値との関係等によっては断線の有無の判断が不安定となるような場合もあり得る。そのような場合には、補助電流経路用のスイッチ装置を開き状態として電圧検出を行った場合に高い電圧値になることも利用して、補助電流経路用のスイッチ装置を開き状態としたときの検出電圧値と閉じ状態としたときの検出電圧値との差をとって、その差によって断線の有無を判断することで、より精度の高い断線の有無の判定を行うことも可能である。
又、このように、単電池毎の電圧測定動作によって得られる電圧値で断線の有無を判断するので、断線の発生位置が測定対象の単電池からの配線上であることを特定でき、特に、直列に並ぶ2つの単電池についての電圧測定動作の測定結果が得られて、その何れもが断線の発生を示すものであるような場合では、その2つの単電池の接続箇所からの配線上で断線が発生しているものと推定できる。
【0011】
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記単電池から前記電圧測定部に至る前記配線に、前記単電池の夫々に対して並列にコンデンサが接続され、前記単電池の夫々の正極側とそれら各単電池に対応する前記コンデンサとの間の前記配線の途中にその配線の通電を入り切りする正極配線用のスイッチ装置が備えられ、前記電圧測定部は、前記電圧測定のための設定動作として、開き状態の前記正極配線用のスイッチ装置を閉じ状態に切換えて前記コンデンサの夫々に充電した後、前記正極配線用のスイッチ装置を開き状態に切換えて、前記コンデンサ夫々の電圧を測定するように構成され、前記断線検出部は、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、電位の並び順において偶数番目あるいは奇数番目の何れか一方を一括して閉じ状態とし且つ他方を一括して開き状態とする第1スイッチ設定状態として、前記電圧測定部に前記電圧測定のための設定動作を行わせ、次ぎに、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、各スイッチ装置が前記第1スイッチ設定状態と開閉操作が逆の第2スイッチ設定状態として、前記電圧測定部に前記電圧測定のための設定動作を行わせ、前記第1スイッチ設定状態における検出電圧と前記第2スイッチ設定状態における検出電圧とに基づいて断線の有無を判断するように構成されている。
【0012】
すなわち、単電池の電圧をコンデンサを介して測定する場合において、上記配線の断線の有無を検出するための構成である。
断線を検出するための具体的な動作としては、先ず、各補助電流経路に備えられている補助電流経路用のスイッチ装置を第1スイッチ設定状態とする。
各補助電流経路は、夫々、各単電池に並列に接続されているので、各補助電流経路同士でみると直列に接続される関係となっている。この各補助電流経路の電位の並び順で偶数番目あるいは奇数番目の補助電流経路に備えられた補助電流経路用のスイッチ装置を一括して閉じ状態とし、残りの補助電流経路用のスイッチ装置を一括して開き状態とする。
上記第2スイッチ設定状態は、この第1スイッチ設定状態と開閉操作が逆の設定であるので、第1スイッチ設定状態と第2スイッチ設定状態とは、閉じ状態となる補助電流経路用のスイッチ装置が並び順が奇数のものと並び順が偶数のものとで切り替わるということであり、奇数と偶数とでどちらが先に閉じ状態になっても良い。
【0013】
この第1スイッチ設定状態で、正極配線用のスイッチ装置を閉じ状態として、各単電池からそれと並列に接続されているコンデンサへ充電させる。
このとき、各単電池から電圧測定部へ至る配線に断線がなければ、補助電流経路用のスイッチ装置が閉じ状態であっても開き状態であってもほぼ同様にコンデンサへ充電される。
これに対して、上記配線に断線が発生していると、その断線が生じた配線が正極側か負極側かに位置する単電池に対応するコンデンサへは充電されずに、単電池からの電流が補助経路用のスイッチ装置が閉じ状態になっている補助電流経路へと逃げる。
このコンデンサへの充電操作の後、正極配線用のスイッチ装置を開き状態として、各コンデンサの電圧を電圧測定部に検出させる。
更に、上記第2スイッチ設定状態に切換えて、上記の電圧測定のための設定動作を繰り返す。
【0014】
これによって、何れの単電池についても、対応する補助電流経路用のスイッチ装置が閉じ状態のときの電圧検出結果と開き状態のときの電圧検出結果とが得られ、上記のように、断線が発生している場合には、その断線が発生した配線に連なるコンデンサについては補助電流経路用のスイッチ装置が閉じ状態のときの検出電圧が極めて低い値となる。
従って、断線が発生している場合には、大きな検出電圧の変化が現れる。
【0015】
又、本出願の第3の発明は、複数の単電池を直列に接続した組電池における各単電池の正極及び最も低電位側の単電池の負極から引き出された配線を経て各単電池の電圧を電圧測定のための設定動作を行って検出し、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧に基づいて前記配線の断線の有無を検出する組電池用配線の断線検出方法において、前記単電池の夫々と並列に設定抵抗値を有する補助電流経路が接続され、前記補助電流経路の夫々における通電を入り切りする補助電流経路用のスイッチ装置が前記補助電流経路の夫々に備えられ、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、電位での並び順において隣り合うものが同時に閉じ状態とならないように開閉操作し、且つ、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧のうちの少なくとも前記補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態としたときの検出電圧に基づいて、前記配線の断線の有無を検出する。
【0016】
すなわち、上記第1の発明について説明したように、断線が発生しているときは、補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態として電圧測定を行ったかあるいは開き状態として電圧測定を行ったかによって測定電圧に大きな開きが発生し、それによって断線の有無を検知できる。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、断線が発生しているときは、補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態として電圧測定を行ったかあるいは開き状態として電圧測定を行ったかによって測定電圧に大きな開きが発生するので、各単電池の電圧を検出するための配線に断線が発生した場合に、その断線を的確に検出できるものとなった。
又、上記第2の発明によれば、断線が発生している場合には、大きな検出電圧の変化となって現れるので、コンデンサを介して単電池の電圧を検出することで、高精度の電圧検出を可能としながら、各単電池の電圧を検出するための配線に断線が発生した場合に、その断線を的確に検出できるものとなった。
又、上記第3の発明によれば、断線が発生しているときは、補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態として電圧測定を行ったかあるいは開き状態として電圧測定を行ったかによって測定電圧に大きな開きが発生し、それによって断線の有無を検知するので、各単電池の電圧を検出するための配線に断線が発生した場合に、その断線を的確に検出できるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の組電池監視装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、組電池1と組電池監視装置VSとを回路的に接続した状態の回路構成を示している。
〔組電池1の構成〕
組電池1は複数の単電池1a,1b,1c,1dを直列に接続して構成したものであり、本実施の形態では、説明の便宜上、4個の単電池1a,1b,1c,1dを直列に接続した場合を例示して説明する。但し、実際には、もっと多数の単電池を直列に接続して組電池を構成している。単電池1a,1b,1c,1dは二次電池の1例であるリチウムイオン電池であるが、このような二次電池に限らず各種の組電池に本発明を適用できる。
【0019】
〔組電池監視装置VSの構成〕
組電池監視装置VSは、各単電池1a,1b,1c,1dに対してコンデンサ2a,2b,2c,2dを並列に接続して、各単電池1a,1b,1c,1dの電池電圧で夫々に対応するコンデンサ2a,2b,2c,2dを充電し、充電を完了したコンデンサ2a,2b,2c,2dの電圧を順次に検出して行く形態をとる。
各単電池1a,1b,1c,1dの正極側とコンデンサ2a,2b,2c,2dの夫々との配線の途中箇所には、その配線の通電を入り切りして、各単電池1a,1b,1c,1dで対応するコンデンサ2a,2b,2c,2dを充電するか否かを切換える複数(4個)の正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dが配置されている。
この機能を果たすため、正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dは、コンデンサ2a,2b,2c,2dよりも組電池1に近い側(各単電池で見ると高電位側)に配置されている。
本実施の形態では、この正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dはアナログスイッチにて構成されており、後述の各部のスイッチ装置についても同様で、全てをアナログスイッチにて構成する場合を例示している。
【0020】
更に、スイッチ装置4a,4b,4c,4dと抵抗5a,5b,5c,5dとが直列に接続されて構成される補助電流経路6a,6b,6c,6dが、各単電池1a,1b,1c,1dの夫々と並列に接続されている。
この補助電流経路6a,6b,6c,6dは、本来、各単電池1a,1b,1c,1d間で電圧ばらつきが発生したときに、電圧の高い単電池を放電させて各単電池1a,1b,1c,1dの電圧をバランスさせるための回路部分であるが、後述するように、配線に断線が生じているか否かの検出にも用いている。
この補助電流経路6a,6b,6c,6dは、正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dよりも組電池1に近い側において、各単電池1a,1b,1c,1dと並列に接続されている。
尚、補助電流経路6a,6b,6c,6dに備えられて、補助電流経路6a,6b,6c,6dの夫々における通電を入り切りするスイッチ装置4a,4b,4c,4dを、説明の便宜上、補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dと称する。
【0021】
各コンデンサ2a,2b,2c,2dの高電位側は、マイクロプロセッサ10により構成される電圧測定部MUの電圧測定端子に接続されている。
図1においては、コンデンサ2aの電圧を測定するための電圧測定端子を「A/D1」,コンデンサ2bの電圧を測定するための電圧測定端子を「A/D2」,コンデンサ2cの電圧を測定するための電圧測定端子を「A/D3」,コンデンサ2dの電圧を測定するための電圧測定端子を「A/D4」として示している。
更に、電位での並び順において最も低電位側のコンデンサ2aの低電位側(負極側)は、マイクロプロセッサ10のグラウンド端子(「GND」)へ接続されている。
マイクロプロセッサ10の電圧測定端子は、内蔵しているA/Dコンバータの入力端子となっており、マイクロプロセッサ10は、各電圧測定端子と「GND」端子との間の電位差を検出する。
【0022】
各コンデンサ2b,2c,2d(コンデンサ2aを除く)の高電位側からマイクロプロセッサ10の電圧測定端子に至る配線の途中には、測定動作用のスイッチ装置8a,8b,8cが接続されており、「A/D2」,「A/D3」及び「A/D4」の電圧測定端子には、電圧測定動作時にのみ電圧が印加されるようにしている。
各コンデンサ2a,2b,2c(コンデンサ2dを除く)の高電位側からマイクロプロセッサ10の電圧測定端子に至る配線の途中には、更に、各配線をグラウンド(組電池1の最も低電位側)に接続するためのグラウンド接続用のスイッチ装置7a,7b,7cが接続されている。
グラウンド接続用のスイッチ装置7a,7b,7cは、電圧測定時に、上記の電圧測定端子に不要な高電圧が印加されるのを回避するためのものであり、詳しくは後述する。
以上説明した回路構成を有する組電池監視装置VSの回路基板は、ケーブル11を介して組電池1と接続されている。
換言すると、各単電池1a,1b,1c,1dの正極及び最も低電位側の単電池1aの負極から引き出された配線(ケーブル11を含む)を経て電圧測定部MUが各単電池1a,1b,1c,1dの電圧を検出する。
現実問題として、配線の断線は、ケーブル11内、ケーブル11と組電池1との接続用コネクタ、あるいは、ケーブル11と組電池監視装置VSの上記回路基板との接続用コネクタで発生する場合がほとんどである。
【0023】
〔断線の検出動作〕
次ぎに、断線の検出動作について説明する。
断線の検出動作は、マイクロプロセッサ10が図3のフローチャートに示す処理を実行することにより行い、マイクロプロセッサ10は、配線の断線の有無を検出する断線検出部CCとしても機能する。
以下、図3のフローチャートと図2のタイミングチャートによって動作を説明する。
【0024】
マイクロプロセッサ10は、先ず、電位での並び順で低電位側から奇数番目(1番目と3番目)の補助電流経路6a,6cに備えられている補助電流経路用のスイッチ装置4a,4cを予め設定された時間の間だけ閉じ状態(ON状態)とし、電位での並び順で低電位側から偶数番目(2番目と4番目)の補助電流経路6b,6dに備えられている補助電流経路用のスイッチ装置4b,4dは開き状態(OFF状態)を維持させる。
図1に示すように、奇数番目の補助電流経路用のスイッチ装置4a,4cは、マイクロプロセッサ10の制御信号出力端子「SC1」の出力信号によって一括して開閉操作され、偶数番目の補助電流経路用のスイッチ装置4b,4dは、マイクロプロセッサ10の制御信号出力端子「SC2」の出力信号によって一括して開閉操作される。
【0025】
図2における「SC1」,「SC2」のパルス信号は、その記号の制御信号出力端子から出力されるパルス信号を示しており、パルス信号のHレベル側で、各スイッチ装置4a,4b,4c,4dが閉じ状態(ON状態)となり、パルス信号のLレベル側で、各スイッチ装置4a,4b,4c,4dが開き状態(OFF状態)となる。これは、以下で説明する各スイッチ装置の制御のためのパルス信号についても同様である。
従って、図3のステップ#1のために、図2の「SC1」で設定期間のパルス信号が出力され、その期間「SC2」ではLレベルを維持している。説明の便宜上、この補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dの設定状態を第1スイッチ設定状態と称する。
このように、電位での並び順において奇数番目の補助電流経路用のスイッチ装置4a,4cと偶数番目の補助電流経路用のスイッチ装置4b,4dとを、夫々一括して開閉操作し、且つ、後述のように開閉状態が交互となるようにしているのは、電位での並び順において隣合うものが同時に閉じ状態とならないようにするためである。
【0026】
断線検出部CCとして機能するマイクロプロセッサ10は、次ぎに電圧測定部MUに対して各単電池1a,1b,1c,1dの電圧測定のための設定動作の開始を指示する(ステップ#2)。
マイクロプロセッサ10の電圧測定部MUとしての機能は、いわゆるサブルーチンとして実装されており、ステップ#2でそのサブルーチンを呼び出して処理させる。
電圧測定部MUは、電圧測定のための設定動作の開始を指示されると、図2において「第1測定サイクル」として示す範囲の動作を実行する。
【0027】
すなわち、図1に「HC」で示す制御信号出力端子から図2で「HC」として示すパルス信号を送る。
「HC」の制御信号は、正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dの開閉操作を一括して制御するもので、この信号によって正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dが一斉に閉じ状態となり、各単電池1a,1b,1c,1dから夫々が対応する各コンデンサ2a,2b,2c,2dへの充電が開始される。
この後、各コンデンサ2a,2b,2c,2dへの充電が完了し、正極配線用のスイッチ装置3a,3b,3c,3dが開き状態とした後に、図2の「A/D1」〜「A/D4」で示すパルス信号のタイミングで、夫々が示す電圧測定端子に入力されている電圧をA/D変換して読取っていく。
図2に示すパルス信号からわかるように、電位での並び順において低電位側のコンデンサ2aから順次に電圧を検出している。
【0028】
この電圧の読取り動作と並行して、各コンデンサ2a,2b,2c(最も高電位側のコンデンサ2dを除く)について、電圧の読取りが終了したタイミングでそのコンデンサ2a,2b,2cの高電位側の配線に接続されているグラウンド接続用のスイッチ装置7a,7b,7cを閉じ状態として、電圧の読取りが完了したコンデンサ2a,2b,2cの高電位側をグラウンドに落として放電させ、更にそれに引き続いて、次ぎに測定対象となるコンデンサ2b,2c,2dの高電位側の配線に備えられている測定動作用のスイッチ装置8a,8b,8cを閉じ状態として、マイクロプロセッサ10による電圧測定が可能な状態とする。マイクロプロセッサ10の電圧測定端子での電圧読取りのタイミングは、測定動作用のスイッチ装置8a,8b,8cが閉じ状態になってから若干遅れたタイミングに設定してある。
【0029】
グラウンド接続用のスイッチ装置7a,7b,7cは、マイクロプロセッサ10の「GC1」〜「GC3」の制御信号出力端子からの出力パルス信号で開閉操作され、その開閉操作のタイミングを図2でも「GC1」〜「GC3」で示している。
又、測定動作用のスイッチ装置8a,8b,8cは、マイクロプロセッサ10の「MC1」〜「MC3」の制御信号出力端子からの出力パルス信号で開閉操作され、その開閉操作のタイミングを図2でも「MC1」〜「MC3」で示している。
例えば、コンデンサ2aについての電圧検出が完了する(図2の「A/D1」参照)と、信号「GC1」でグラウンド接続用のスイッチ装置7aを閉じ状態とし、それに引き続いて、信号「MC1」で測定動作用のスイッチ装置8aを閉じ状態としている。
図2に示すように、以降の高電位側のコンデンサ2b,2c,2dについても同様の動作である。
【0030】
以上のようにして各単電池1a,1b,1c,1dの電圧が読取られると、断線検出部CCとして機能するマイクロプロセッサ10は、図3のステップ#3で測定結果を受取り、記憶保持する。
この後、図2の「SC1」及び「SC2」で示すように、電位での並び順で低電位側から偶数番目(2番目と4番目)の補助電流経路6b,6dに備えられている補助電流経路用のスイッチ装置4b,4dを予め設定された時間の間だけ閉じ状態(ON状態)とし、電位での並び順で低電位側から奇数番目(1番目と3番目)の補助電流経路6a,6cに備えられている補助電流経路用のスイッチ装置4a,4cは開き状態(OFF状態)を維持させる(ステップ#4)。この補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dの設定状態を、説明の便宜上、第2スイッチ設定状態と称する。
第2スイッチ設定状態は、上記第1スイッチ設定状態と開閉操作が逆になっており、電位での並び順において隣合う補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dが同時に閉じ状態とならないようにしている。
【0031】
次ぎに、ステップ#2の測定処理と同一のサブルーチンを呼び出して、図2において「第2測定サイクル」として示すように、上述の電圧測定のための設定動作と全く同一の測定動作を行わせ(ステップ#5)、各単電池1a,1b,1c,1dについての電圧の読取りデータを受け取る(ステップ#6)。
ステップ#3とステップ#6との2回分の測定データが揃うと、断線の発生の有無を判定する(ステップ#7)。
【0032】
例えば、図1において符号Aで示す位置で断線が発生したとすると、上記第1測定サイクルでは、図4(a)で示す回路で、単電池1a,1bからコンデンサ2a,2bに充電されることになる。
図4(a)の回路では、コンデンサ2aに抵抗5aが並列に接続されることになるので、最終的には、コンデンサ2aには充電されず、コンデンサ2bには、単電池1a,1bの電圧で充電される。
従って、上記第1測定サイクルでは、単電池1aの電圧として検出したコンデンサ2aの電圧はほぼ0Vの非常に低い電圧となり、単電池1bの電圧として検出したコンデンサ2bの電圧は通常の単電池の電圧よりも高い電圧(ほぼ2倍の電圧)となる。
【0033】
次ぎに、上記第2測定サイクルでは、図4(b)で示す回路で、単電池1a,1bからコンデンサ2a,2bに充電されることになる。
図4(b)の回路では、コンデンサ2bに抵抗5bが並列に接続されることになるので、最終的には、コンデンサ2bには充電されず、コンデンサ2aには、単電池1a,1bの電圧で充電される。
従って、上記第2測定サイクルでは、単電池1aの電圧として検出したコンデンサ2aの電圧は通常の単電池の電圧よりも高い電圧(ほぼ2倍の電圧)となり、単電池1bの電圧として検出したコンデンサ2bの電圧はほぼ0Vの非常に低い電圧となる。
【0034】
図3のステップ#7では、各単電池1a,1b,1c,1dの上記第1測定サイクル及び上記第2測定サイクルでの検出電圧(実際には、夫々が対応する各コンデンサ2a,2b,2c,2dの検出電圧)において、対応する補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dが開き状態のときの検出電圧と閉じ状態のときの検出電圧との差をとり、その差電圧が設定値(例えば、0.7V)より大きいときに、断線が発生したものと判断する。
図4に示す例では、単電池1a及び単電池1bについての電圧測定結果から、断線が発生したものと判断すると共に、断線が発生している位置も特定できる。
すなわち、単電池1aの高電位側(すなわち、単電池1bの低電位側)の配線で断線が発生していることを特定できる。
尚、対応する補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dが開き状態のときの検出電圧と閉じ状態のときの検出電圧との差をとるのではなく、対応する補助電流経路用のスイッチ装置4a,4b,4c,4dが閉じ状態のときの検出電圧値が設定値よりも低いことのみによって断線が発生していると判断することも可能である。
【0035】
断線が発生していると判断した場合は(ステップ#8)、図示を省略する上位の管理装置へその旨を報知する(ステップ#9)。
以上、上記第1測定サイクルでは電位の並び順において奇数番目の補助電流経路6a,6cのスイッチ装置4a,4cを閉じ状態とし、上記第2測定サイクルでは電位の並び順において偶数番目の補助電流経路6b,6dのスイッチ装置4b,4dを閉じ状態とする場合を説明したが、この奇数番目と偶数番目とを入れ替えてスイッチ装置を開閉操作しても良い。
【0036】
〔別実施形態〕
上記実施の形態では、補助電流経路6a,6b,6c,6dとして、組電池1を構成する各単電池1a,1b,1c,1dの電圧バランスをとるための回路部分を兼用する場合を例示しているが、別個独立に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態にかかる組電池監視装置の回路構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかるタイミングチャート
【図3】本発明の実施の形態にかかるフローチャート
【図4】本発明の実施の形態にかかる動作説明用の回路図
【図5】断線が発生したときの動作を説明するための図
【図6】断線の検出を説明するための図
【符号の説明】
【0038】
1 組電池
1a,1b,1c,1d 単電池
4a,4b,4c,4d 補助電流経路用のスイッチ装置
6a,6b,6c,6d 補助電流経路
CC 断線検出部
MU 電圧測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池を直列に接続した組電池における各単電池の正極及び最も低電位側の単電池の負極から引き出された配線を経て各単電池の電圧を電圧測定のための設定動作を行って検出する電圧測定部と、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧に基づいて前記配線の断線の有無を検出する断線検出部とを備えた組電池監視装置であって、
前記単電池の夫々と並列に設定抵抗値を有する補助電流経路が接続され、
前記補助電流経路の夫々における通電を入り切りする補助電流経路用のスイッチ装置が前記補助電流経路の夫々に備えられ、
前記断線検出部は、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、電位での並び順において隣り合うものが同時に閉じ状態とならないように開閉操作し、且つ、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧のうちの少なくとも前記補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態としたときの検出電圧に基づいて、前記配線の断線の有無を検出するように構成されている組電池監視装置。
【請求項2】
前記単電池から前記電圧測定部に至る前記配線に、前記単電池の夫々に対して並列にコンデンサが接続され、
前記単電池の夫々の正極側とそれら各単電池に対応する前記コンデンサとの間の前記配線の途中にその配線の通電を入り切りする正極配線用のスイッチ装置が備えられ、
前記電圧測定部は、前記電圧測定のための設定動作として、開き状態の前記正極配線用のスイッチ装置を閉じ状態に切換えて前記コンデンサの夫々に充電した後、前記正極配線用のスイッチ装置を開き状態に切換えて、前記コンデンサ夫々の電圧を測定するように構成され、
前記断線検出部は、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、電位の並び順において偶数番目あるいは奇数番目の何れか一方を一括して閉じ状態とし且つ他方を一括して開き状態とする第1スイッチ設定状態として、前記電圧測定部に前記電圧測定のための設定動作を行わせ、次ぎに、前記補助電流経路用のスイッチ装置を、各スイッチ装置が前記第1スイッチ設定状態と開閉操作が逆の第2スイッチ設定状態として、前記電圧測定部に前記電圧測定のための設定動作を行わせ、前記第1スイッチ設定状態における検出電圧と前記第2スイッチ設定状態における検出電圧とに基づいて断線の有無を判断するように構成されている請求項1記載の組電池監視装置。
【請求項3】
複数の単電池を直列に接続した組電池における各単電池の正極及び最も低電位側の単電池の負極から引き出された配線を経て各単電池の電圧を電圧測定のための設定動作を行って検出し、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧に基づいて前記配線の断線の有無を検出する組電池用配線の断線検出方法であって、
前記単電池の夫々と並列に設定抵抗値を有する補助電流経路が接続され、
前記補助電流経路の夫々における通電を入り切りする補助電流経路用のスイッチ装置が前記補助電流経路の夫々に備えられ、
前記補助電流経路用のスイッチ装置を、電位での並び順において隣り合うものが同時に閉じ状態とならないように開閉操作し、且つ、前記電圧測定のための設定動作によって得られる検出電圧のうちの少なくとも前記補助電流経路用のスイッチ装置を閉じ状態としたときの検出電圧に基づいて、前記配線の断線の有無を検出する組電池用配線の断線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−288034(P2009−288034A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140197(P2008−140197)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】