説明

経口薬物を送達するためのトレイ様構造を有する組成物および装置ならびにそのような組成物および装置を製造および使用する方法

薬物組成物(10)は、デンタルトレイまたはトレイ様構造の形状をしており(12、14、16)、場合により保護バリア層(18)と一緒に治療装置を形成する。成形薬物組成物(10)は、唾液または水で濡れた場合に歯牙および/または歯肉に対し増大する接着性を有する実質的に固体の薬物組成物を含む。薬物組成物および/または治療装置の形状は、初めから平らなストリップの使用に比べ、実質的に少ない操作により、ヒトの歯牙および/または歯肉上への装置の組成物の設置を容易にする。実質的に固体の薬物組成物(10)は、唾液または水で濡れた場合、より接着性になり、耐湿性バリア(18)と併用された場合は、特に、薬物組成物がヒトの歯牙および/または歯肉上に設置された後も無傷かつ粘着性のままである。その結果、濡れた薬物組成物(10)は、治療手順中に使用者の歯牙および/または歯肉に対して確実に接着することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの歯牙および/または歯肉に薬物を送達するために使用される組成物および装置の分野に属する。より詳細には、本発明は、デンタルトレイの形状をした薬物組成物、および濡れた(例えば、使用者の口内の唾液により)場合に接着性になる、バリア層および薬物層が含まれるトレイ様治療装置、ならびにそれらの製造および使用のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染または他の口腔組織刺激は、多くの歯科患者に共通する問題である。このような感染および/または刺激は、炎症、出血、プラーク蓄積、結石(歯石)蓄積、口臭、歯肉炎、歯周病、窩洞、膿瘍、口内炎、口辺単純疱疹、膿疱などから引き起こされるか、それらに伴うことがある。このような細菌感染/刺激は、患者が、特定の食品を食べまたは飲み、社交的に交際し、または良い口腔衛生習慣を維持するのを妨げるほど不快になることがある。
【0003】
現在、細菌感染および/または口腔組織刺激を軽減および治療するために利用可能な多くの非永久的治療選択肢が存在する。最も一般的な選択肢には、薬物入りの練り歯磨き、バーニッシュ剤、ゲル剤、およびリンス剤を使用することが含まれる。これらの製品には、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、フェノール、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、およびトリクロサン(tricolsan)などの薬物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0004】
歯牙過敏も、多くの歯科患者に共通する問題である。過敏は、窩洞、歯牙もしくは歯根破折、歯肉退縮、露出象牙質、歯ブラシ摩耗、漂白、摩滅、腐食、研磨、または歯周病による外傷の存在から生じるか、それらの存在に伴うことがある。歯牙過敏は、患者が、特定の食品を食べまたは飲む、寒空に戸外で過ごす、または良い口腔衛生習慣を維持するのを妨げるほど不快になることがある。歯牙過敏は、歯科漂白措置中に共通する不満である。歯科漂白組成物は、過酸化物漂白剤を通常含み、歯牙過敏を引き起こし、無治療で放置した場合には、使用者に漂白プロセスを早めに中止させることがある疼痛を引き起こすことがある。
【0005】
現在、歯牙過敏を軽減するために利用可能な多くの非永久的治療選択肢が存在する。最も一般的な選択肢には、減感性の練り歯磨き、バーニッシュ剤、ゲル剤、およびリンス剤を使用することが含まれる。これらの製品には、硝酸カリウム、他のカリウム塩、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム、フッ化スズ、およびフッ化ナトリウムなどの減感剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0006】
薬物入り歯磨剤は、細菌感染、口腔刺激、および/または歯牙過敏を治療する際の一般向きの治療選択肢である。通常、薬物入り歯磨剤を使用するため、患者は、1日2回歯磨剤を使用することが推奨される。しかしながら、すぐに結果は出ない。通常、薬物入り歯磨剤から何らかの結果が出るには長期間(約1〜4週間)かかる。その主な理由は、人々は通常、約60秒間以下歯を磨くに過ぎず、その結果、薬物とヒトの歯牙および/または歯肉との間の極めて限定された接触時間を生み出すことになる。
【0007】
別の一般的治療選択肢は、薬物入りリンス剤を使用するものである。通常、薬物入りリンス剤を使用するため、患者は、1日に数回、彼または彼女の口の中でリンス剤を「グチュグチュ(swishe)」する。しかしながら、リンス剤は、口腔面上へ一時的に残るに過ぎず、患者の口、下顎、および舌の通常の運動により、薬物への瞬間的暴露を提供できるに過ぎない。
【0008】
薬物入りゲル剤も、細菌感染、口腔刺激および/または歯牙過敏を治療するために使用されることがあり、カスタムフィット(custom−fitted)トレイを用いて塗布することができる。通常、カスタムフィットトレイを製造するプロセスは、(1)患者の歯牙のアルギン酸塩印象を作製すること、(2)印象のストーンキャスト(stone cast)またはモデルを作製すること、(3)モデル、通常、薄いエチレン−酢酸ビニル(EVA)材料の加熱シートからデンタルトレイを真空成形すること、および(4)望ましい量の歯肉被覆率を可能にするためにトリミングすることを含む。この方法は、柔らかくて柔軟性であり、患者の歯牙および歯肉の上に極めて正確に適合するようにカスタマイズされ、したがって、装着するのが極めて快適なトレイをもたらす。要するに、カスタマイズされたトレイを作製するためのプロセスは時間がかかり、カスタマイズされたトレイが患者に利用可能になるまでに何日も又は何週間もかかることが多く、得られるトレイは高価なことがある。
【0009】
カスタマイズされたトレイに伴う時間とコストのため、余り時間がかからずコストのかかる代替案が開発されている。カスタマイズされたデンタルトレイの1つの代替案は、様々な使用者の歯列弓の形状およびサイズに近いカスタマイズされていないトレイである。カスタマイズされていないデンタルトレイは、歯科医師による専門的なカスタマイズ手順を必要とせずに使用することができるが、そのようなトレイは、カスタムフィットトレイに比べてよりかさばり、余り快適でない傾向がある。自分でカスタマイズすることができるデンタルトレイ(すなわち、いわゆる「ボイルアンドバイト(boil and bite)」トレイ)は、非カスタムトレイに比べていくぶんか快適であり、かつより良く適合するが、歯科医師によってカスタマイズされたトレイに比べて余り快適ではない。
【0010】
デンタルトレイの使用の代替案は、使用者の歯牙および/または歯肉表面上に、通常は漂白のために、柔軟性の歯科用治療ストリップを設置するものである。通常、歯科用ストリップは、使用者の歯牙および歯肉に面するストリップの側に濡れた歯科用ゲルでコーティングされた柔軟性の可塑性ストリップを含む。ストリップを取り付けるためには、まず、ストリップの一部を使用者の歯牙および/または歯肉の前面にかぶせ、続いて歯牙の咬合縁の周囲ならびに歯牙および歯肉の舌側面の一部に対してストリップの残りを巻き付ける。ペイントオンの漂白組成物と同様、歯科用ストリップの使用には、使用者がカスタマイズされたトレイまたはカスタマイズされていないトレイを使用する必要がない。ペイントオン組成物を上回る歯科用ストリップの利点は、ストリップには、少なくとも理論的には、濡れたゲル組成物が使用者の口中に拡散するのを防ぐバリアが含まれることである。
【0011】
実際には、歯科用ストリップの使用者の歯牙および歯肉への一般的に不十分な接着に加え、それらの一般的に脆弱な性質のため、使用者がストリップを適切な位置に維持することが困難であることが多い。歯科用ストリップは、使用者の口、下顎または舌のわずかな運動によってさえ歯牙および/または歯肉から滑り落ちる傾向がある。実際に、使用者は、歯科用ストリップを装着中に、食べない、飲まない、喫煙しない、かつ眠らないことが推奨されている。
【0012】
たとえ、使用者が、全治療時間中、ストリップをその適切な位置に維持することに成功した場合でも、治療用ゲルは、ヒトの唾液中に拡散することがあり、使用者の口内に悪い味覚と、恐らく、柔らかい口腔および咽頭組織に対する不快感を引き起こす可能性がある。治療用ゲルが使用者の口中に拡散する傾向は、使用者の歯牙/歯肉上の歯科用ストリップのわずかな移動によってさえ加速されることがあり、各々の移動は、使用者の歯牙/歯肉の新たな露出表面に接着したままでいるゲルの新たな部分を露出させる可能性がある。場合によっては、歯科用ストリップは、使用者によって取り外され、推奨される治療を完結するために新たなストリップと置き換えられなければならないほど外れたり押しつぶされたりすることがある。このことは、歯科用ストリップ法のコストおよび問題を増加させる。
【0013】
実際の問題として、歯科用ストリップの使用は、話すこと、咳をすること、あくびをすること、微笑むこと、他の表情を作ること、または、飲みこむこと(それらは、通常、一日中、無意識のうちに起こる)などの使用者の口または舌の運動を含む最も簡単な活動をさえ著しく阻害することがある。実際、ヒトの口および舌が動く傾向が最も少ない時間は、ヒトが眠っている夜である。残念なことに、歯科用ストリップは、恐らく、気付かずに外れたストリップによる偶発的な窒息を防ぐため、就寝中は使用しないことが推奨されている。このことは、従来の歯科用ストリップが、使用者の歯牙および/または歯肉から容易に外れる傾向を裏付けている。
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第10/637,237号
【特許文献2】米国特許出願第10/446,235号
【特許文献3】米国特許出願第10/446,741号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のことがらに鑑み、使用するのが簡単かつ容易であり、使用者の歯牙および/または歯肉上の位置により確実に留まり、使用者の口腔中への薬物組成物の拡散が少ない改良された薬物組成物および機器、ならびにそれらの製造および使用のための方法が継続して必要である。そのような改良は、使用者によるコンプライアンスを改善または奨励することが期待されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、一般的に、ヒトの歯牙および/または歯肉に薬物を送達するのに使用される成形薬物組成物および治療装置、ならびにそのような組成物および装置を製造および使用するための方法に関する。手短かに要約すると、本発明の薬物組成物は、実質的に固体形態であり、デンタルトレイの様な、またはトレイ様構造の形状をしている。実質的に固体の薬物組成物は、濡れた(例えば、唾液または水により)場合に、歯牙および/または歯肉に対してより接着性になる。ヒトの歯牙および/または歯肉上に設置した場合、薬物組成物は、歯牙および/または歯肉に確実に接着し、治療される歯牙および/または歯肉と薬物組成物内の薬物との間の接触を維持する。
【0017】
一実施形態において、成形薬物組成物は、ヒトの口内に見いだされる周囲の唾液または水分から薬物組成物を保護するバリア層と併用される。バリア層が引き続き成形薬物組成物に付着または接着している限りにおいて、成形薬物組成物は、薬物組成物およびバリア層を含む完成薬物治療装置への中間体と見なすことができる。
【0018】
任意選択のバリア層は、耐湿性ポリマー材料から作製される薄くて柔軟性の膜を含むことが有利である。しかしながら、任意の望ましい厚さまたは剛性を有するバリア層を提供することは、本発明の範囲内にある。好ましい実施形態において、バリア層は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタンまたは類似の耐湿性材料の薄い層を含む。バリア層は、従来のデンタルトレイを含み、その例には、カスタマイズされたデンタルトレイとカスタマイズされていないデンタルトレイの双方が含まれる。バリア層は、実質的に固体の薬物組成物を含む既存の薬物治療層(例えば、デンタルトレイの形態であるか、さもなければ望ましい形状を有する層)の上に噴霧もしくは塗装される、浸漬により付着される、さもなければ付着される耐湿性バリア形成材料の層のように単純であってよい。
【0019】
薬物組成物は、液体、ゲル、ペースト、または乾燥粒子もしくは粉状薬物組成物とは対照的に、実質的に固体で粘着性である。そのようなものとして、薬物組成物は、容易には動きも流れもしない薬物組成物の1つまたは複数の粘着性領域または集塊を含む。実質的に固体の粘着性薬物組成物を提供することは、ヒトの歯牙および/または歯肉に良好に接着し、それ自身の周囲の口腔中に容易に拡散せず、ヒトの口内の唾液または水分によって希釈されることがない。このことは、任意選択のバリア層と治療されている歯牙および/または歯肉との間に薬物組成物を維持するのに役立ち、周囲の口腔中への拡散を防ぐのに役立つ。このことは、標的口腔組織のより良い治療および患者コンプライアンスの改善を促進し、使用にあたって使用者が薬物組成物の味を知る傾向を軽減する。
【0020】
本発明による実質的に固体の薬物組成物には、少なくとも1種の薬物および少なくとも1種の組織接着剤が含まれる。薬物の例には、減感剤、抗菌剤、鉱物成分補填剤、抗歯石剤、および抗結石または抗プラーク剤が含まれる。歯牙過敏を治療するのに使用することができる例示的減感剤には、硝酸カリウム、他のカリウム塩、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム、フッ化ナトリウム、およびフッ化スズが含まれるが、これらに限定されるものではない。歯肉炎、歯周病、プラークもしくは他の口腔細菌感染または病気を治療するのに使用することができる例示的抗菌剤には、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、フェノール、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、およびトリクロサンが含まれるが、これらに限定されるものではない。齲蝕を予防することができる例示的鉱物成分補填剤には、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、およびリン酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。例示的抗歯石剤には、ピロリン酸塩、ポリピロリン酸塩、ポリビニルメチルエーテルリンゴ酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アルカリ金属リン酸塩、乳酸カルシウム、およびトリクロサンが含まれるが、これらに限定されるものではない。例示的抗結石または抗プラーク剤には、硫酸8−ヒドロキシキノリン、二クエン酸環状エステル、およびクエン酸亜鉛が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
一実施形態において、組織接着剤は、薬物組成物が乾燥または実質的に固体状態にある場合、口腔組織に実質的に非接着性のままであるが、薬物組成物が、例えば、水または唾液で濡れた場合、歯牙および/または歯肉に接着性となることが有利である。適当な組織接着剤の非限定的例はポリビニルピロリドン(PVP)であるが、当技術分野において知られている他の組織接着剤を使用することは、本発明の範囲内にある。
【0022】
薬物組成物には、歯牙または周囲の歯肉を治療するための薬物の他に、要望に応じて、望ましい特性を有する最終組成物を得るための他の成分が含まれてもよい。他の成分の例には、可塑剤および湿潤剤(例えば、グリセリン、ソルビトール、およびポリエチレングリコール)、揮発性溶媒(例えば、水およびアルコール)、安定化剤(例えば、EDTA)、中和剤、粘稠剤(例えば、ヒュームドシリカ)、漂白剤(例えば、過酸化水素および過酸化カルバミド)、矯味剤、甘味剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
一実施形態によれば、薬物組成物は、その後に乾燥して実質的に固体の薬物組成物または薬物層を形成する流動性の液体またはゲル組成物をまず生成することによって製造される。これは、加熱するか、さもなければ1種または複数の揮発性溶媒を蒸発によって追い出し、実質的に固体の薬物組成物または薬物層を残すことによって行うことができる。乾燥プロセスは、薬物組成物をバリア層と接触するように置く前または後に行うことができる。
【0024】
一実施形態によれば、本発明による成形薬物組成物は、大きいか、あるいは連続したポリマーシートの表面上に流動性の薬物組成物を広げることによって製造することができる。次いで、薬物組成物の実質的に固体の層を得るため、ポリマーシートおよび薬物組成物を、強制空気オーブンなどにおいて加熱し、流動性の薬物組成物を生成するのに使用した水または他の溶媒の実質的部分を追い出す。その後、個々のトレイ様治療装置を、薬物組成物の実質的に固体の層でコーティングされた大きいか、あるいは連続したポリマーシートから型成形、またはスタンプ成形し、次いで、ヒトの歯牙および/または歯肉上への設置に適している個々の治療装置として分離する。このような治療装置には、本発明による成形薬物組成物を含む薬物層が含まれる。あるいは、薬物組成物の固体シートをポリマーシートから分離し、型成形、スタンプ成形するか、さもなければ望ましい形状に成形することができる。
【0025】
あるいは、流動性、または実質的に固体の薬物組成物を、型成形するか、あるいは薬物層を含む望ましいトレイ様構造の形にすることができる。あるいは、流動性の組成物を、成形平面上にキャストして乾燥し、その後に型成形、スタンプ成形するか、さもなければ望ましい形状に成形する薬物組成物の実質的に固体のシートを形成することができる。その後、バリア層を、薬物層の外面に接着または付着することができる。さらに別の実施形態において、デンタルトレイを、塗装するか広げることなどにより、流動性の薬物組成物でコーティングし、次いで、薬物組成物が実質的に固体となるように加熱するか、あるいは室温で乾燥させることができる。
【0026】
本発明による薬物組成物およびそのような組成物を内蔵する治療装置のサイズおよび形状は、ヒトの上部または下部歯列弓により容易に適合するように調整することができる。サイズおよび形状は、異なったサイズまたは形状の歯列弓を有するヒトに適合するように調整することができる。薬物組成物および治療装置は、歯牙の前面および舌側面、場合により、薬物治療される周囲の歯肉を実質的に覆うように設計されることが有利である。両面を治療することは、一面だけではなく、全歯牙/歯肉のより完全な薬物治療を提供する。薬物治療装置は、多種多様のサイズが異なる歯牙、歯肉、および歯列弓に容易に適合するように、柔軟性かつ接着性であることが有利である。
【0027】
本発明による薬物組成物は、前側壁、後側壁、および前側壁と後側壁の間のトラフを有するデンタルトレイの形状をしていることが好ましい。デンタルトレイの形状を有することは、組成物または装置とヒトの歯牙および/または歯肉との間の良好な嵌合を得るのに必要な操作の量を最小限に抑えることによって、ヒトの歯牙および/または歯肉上への薬物組成物または治療装置の設置を容易にする。デンタルトレイの形状をしており、水または唾液で濡れた場合により接着性になる実質的に固体の薬物層を有する薬物治療装置は、平らな歯科用ストリップに比べ、ヒトの歯牙および/または歯肉上に取り付けることがより容易である。さらに、本発明の治療装置は、従来の歯科用治療ストリップに比べ、ヒトの歯牙および/または歯肉上により確実に留まるように設計される。その結果は、ヒトの歯牙および/または歯肉のより効果的な薬物治療および良好な患者コンプライアンスである。
【0028】
一実施形態によれば、薬物組成物または治療装置は、従来のトレイと同様に馬蹄形およびU字形トラフを有する。別の実施形態において、薬物組成物または治療装置は、L字形プロファイルまたは「トラフ」を有する。しかし、当然のことながら、本発明による薬物組成物および治療装置は、任意の縦断プロファイルまたは形状を有することができる(例えば、直線状であるか、あるいは装置の一方の端から他方の端まで、任意の望ましい角度の縦断曲率を有することができる)。トラフは、任意の望ましい断面形状を有することができる(例えば、トラフは、V字形、台形、長方形、または他の幾何学的形状であってよい)。
【0029】
薬物組成物または治療装置が歯列弓の中の様々な形状およびサイズに適合する能力を容易にするため、組成物または装置には、前側壁内、好ましくは前側壁の中央に近い縁部内のノッチ、および/または後部壁内、好ましくは後部壁の中央に近い縁部内のノッチなどの機械的特徴が含まれる。ノッチは、トレイ様薬物組成物または治療装置を、サイズが異なる歯列弓により容易に適合することを可能にする。このようにして、薬物組成物または治療装置を、「フリーサイズ(one−size fits all)」であるように設計することができる。
【0030】
薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置は、任意の望ましい期間装着されるように設計することができる。通常、薬物の濃度を高めることは、望ましい薬物治療手順を行うのにかかる時間を軽減する。しかしながら、本発明の薬物組成物および治療装置とヒトの歯牙および/または歯肉との間の極めて快適な嵌合および確実な接着により、このような組成物または装置を長期間装着し、薬物の均等かつ完全な送達を保証することが可能である。本発明による薬物組成物および治療装置は、例えば、会話する、眠る、食べる、飲む、微笑む、眉をひそめる、顔をしかめる、あくびをする、咳をする、喫煙する、または事実上すべての表情をする、もしくは口をゆがめる間も装着されるように設計することができる。このことは、歯牙および/または歯肉に確実には接着しない従来の歯科用治療ストリップ、または大きくてかさばった歯科装置などの侵害的治療装置に比べ、毎日の活動への侵害を大きく減少させる。
【0031】
薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置は、数分という短い時間、または数時間という長い時間、装着されるように設計することができる。例えば、そのような組成物および装置は通常、有効であるための所要時間が少なく、通常、必要に応じて短時間(10〜30分)、中時間(30分〜2時間)、または長時間(2〜12時間)装着することができるが、これらに限定されるものではない。また、治療セッションは、歯牙および/または歯肉の望ましい程度の薬物治療を得るのに必要な回数繰り返すことができる。
【0032】
使用の都合上、複数の薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置は、単独か、あるいは他の経口治療(例えば、歯科用漂白組成物またはそのような組成物を内蔵する漂白装置)と組み合わせて一緒に包装し、キットとして販売することができる。一実施形態において、各キットにより提供される薬物組成物および/または治療装置の数は、処方された治療措置に相当するセッション数に等しくすることができる。キット包装内の空間を効率的に利用するため、複数の薬物組成物および/または治療装置を一緒に積み重ねて封入することができる。薬物組成物および/または治療装置は、望ましくは、まとめるか、個々に密封することができる。それらは、内面上に、薬物組成物または薬物層を汚染または水分から保護するための取り外し可能な保護層を含むことができる。初めは別々で、最終使用者によって一緒にされるバリア層および薬物組成物を提供することは、本発明の範囲内にある。薬物組成物は、乾燥した、または実質的に固体の封入物であってよく、またはバリアに付着されるか、あるいはヒトの歯牙および/または歯肉上への完成治療装置の設置前に乾燥される液体またはゲルであってよい。
【0033】
本発明のこれらおよび他の利点および特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、あるいは本明細書で後に記載される本発明を実施しながら学ぶことができる。
【0034】
本発明の上記および他の利点および特徴をさらに明らかにするため、本発明のより具体的説明を、添付の図面に図示されている本発明の具体的実施形態の参照によって提供する。当然のことながら、これらの図面は、本発明の典型的実施形態を示しているに過ぎず、その範囲を限定していると見なされるべきでない。本発明を、添付の図面の使用によりさらに具体的かつ詳細に記述し説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
I.緒言および定義
本発明は、一般的に、ヒトの歯牙および/または歯肉に1種または複数の薬物を提供する際に使用するための改良された薬物組成物およびにそのような組成物が含まれる治療装置、ならびにそのような組成物および装置を製造および使用するための方法に関する。成形薬物組成物は、実質的に固体形態であり、水または唾液で濡れた場合、歯牙および/または歯肉に対してより接着性になる。ヒトの歯牙および/または歯肉上に設置された場合、薬物組成物は、歯牙および/または歯肉に確実に接着し、治療される歯牙および/または歯肉と薬物組成物内の薬物との間の接触を維持する。ヒトの口内に見いだされる周囲の唾液または水分によりヒトの歯牙および/または歯肉から薬物組成物が拡散するのを防ぐバリア層を提供することができる。
【0036】
成形薬物組成物は、従来の歯科用治療ストリップに比べ、歯牙および/または歯肉に対してより接着性である。また、そのような組成物を内蔵する治療装置は、かさばった、市販の非カスタムまたはボイルアンドバイトデンタルトレイよりも侵害的でない。いくつかの点で、それらの治療装置は、ヒトの歯牙および/または歯肉に対して薬物組成物を維持する際に、カスタムフィットデンタルトレイと同様に信頼性があるか、あるいははるかに信頼性がある。場合によっては、カスタムフィットトレイと同様に快適であるか、あるいははるかに快適である。
【0037】
本明細書で使用する用語「バリア層」は、薬物組成物がヒトの歯牙および/または歯肉上に設置された場合に、ヒトの口内に見いだされる周囲の水分および唾液から薬物層を保護する耐湿性材料の1つまたは複数の層を指す。また、バリア層は、保存中および使用前の水分または他の汚染物質から薬物組成物を保護する働きをすることができる。バリア層は、薬物層の表面にかぶせられたシート、前もって成形された薬物層に塗布されるコーティング、または歯科用治療トレイを含むが、これらに限定されない任意の望ましい形態であってよい。
【0038】
本明細書で使用する用語「成形薬物組成物」は、実質的に固体の、粘着性かつ非流動性であるように製剤化または加工されている薬物組成物を指す。本明細書で使用する用語「薬物層」は、実質的に固体の、粘着性かつ非流動性であるように製剤化または加工されている薬物組成物の1つまたは複数の層を指す。薬物層は、バリア層に隣接する単一の連続した領域または層を含むか、あるいはランダムな、または所定の間隔によって隔てられている複数の不連続な領域または層を含むことができる。
【0039】
本明細書で使用する用語「実質的に固体の」は、ヒトの歯牙に対してデンタルトレイとそっくりに取り扱いかつ設置することができるように固体また半固体状態にある薬物組成物または薬物層を指す。一態様において、「実質的に固体の」薬物組成物または薬物層は、重力をかけられた場合に容易には流れも分離もせず、シリンジの出口または他の類似したサイズの開口もしくは開口部を通して容易に絞り出すことができない連続した、または粘着性の集塊として特徴付けることができる。したがって、用語「実質的に固体の」は、重力をかけられた場合に流れることができ、かつ/またはシリンジの出口または他の類似したサイズの開口もしくは開口部を通して容易に絞り出すことができる流れやすい薬物液剤、粘稠な薬物液剤、さらには薬物ゲル剤を除外する。用語「実質的に固体の」が、薬物組成物または薬物層の文脈で使用される場合、乾燥粒子組成物または散剤を除外するのは、乾燥粒子および散剤が、重力をかけられた場合に容易に流れ、かつ/または容易に分離する(すなわち、粒子は、総じて内部粘着力をほとんど、またはまったく有しない)からである。さらに、散剤または粒子剤は、全体として見ると、「成形」されておらず、粘着性でなく、かつ固体でない。
【0040】
本発明による「実質的に固体の」薬物組成物または薬物層の1つの特徴は、それらの露出面が、例えば、唾液または水で濡れた場合に、それらがより接着性になることである。濡れた場合、薬物組成物または薬物層の表面は、濡れたことのない実質的に固体の薬物組成物または薬物層に比べ、歯牙および/または歯肉に対してより強く接着することができる粘着性材料に変わる。表面の薬物組成物は、「実質的に固体の」薬物組成物または薬物層の表面に付着する水分量に応じて、少なくとも一時的に粘稠な液体、ペーストまたはゲルになることがある。しかしながら、濡れた表面の粘度は、初期給湿の程度に応じて「実質に固体の」ままであるか、あるいは、初期の表面水分量が、時間とともに「実質的に固体の」薬物組成物または薬物層の残りの部分に拡散するにつれて(例えば、薬物層または薬物組成物が、耐水性バリア層によってヒトの口内における唾液および周囲の水分から保護される薬物治療手順の間に)硬化し、「実質的に固体の」状態に戻ることさえある。
【0041】
本明細書で使用する用語「デンタルトレイ」は、ヒトの歯列弓の少なくとも一部の上への装置の設置を容易にするように、トレイ様形状を有する任意の製品または装置を指す。「デンタルトレイ」または「トレイ様」装置には、使用にあたってヒトの歯牙の前面とかみあうように形状が決められた前側壁、1種または複数の異なる角度によって急激に、または曲線状の移行によって緩やかに前側壁から横方向に延び、ヒトの歯牙の舌側面とかみあうように形状が決められた後側壁、および前記前側壁と後側壁の間のトラフが含まれる。「デンタルトレイ」は、使用にあたって、前側壁、後側壁、またはそれらの移行部分が、ヒトの歯牙の切縁または咬合縁とかみあうように形状を決めることができる。デンタルトレイは、縦断的側面において曲線状または直線状であってよい。
【0042】
本明細書で使用する用語「トラフ」は、前側壁、後側壁、および前側壁の上縁および後側壁の上縁から延びる平面または仮想的曲線状ドームによって少なくとも部分的に結合している領域を指す。したがって、「トラフ」は、理論的に、前側壁および後側壁が、それらの間に空間を有し、180°未満の角度によって横方向にオフセットされていればいつでも存在する。実際、前側壁および後側壁は、好ましくは約150°未満、より好ましくは約120°未満、最も好ましくは約90°未満である角度によってオフセットされているであろう。
【0043】
U字形または長方形断面を有するトラフの場合、前側壁および後側壁の少なくとも一部は、実質的に平行であってよい(すなわち、約0°の角度によってオフセットされている)。V字形または台形断面を有するトラフの場合、前側壁および後側壁の少なくとも一部は、鋭角によって(すなわち、0〜90°の角度によって)オフセットされていてもよい。L字形断面を有するトラフの場合、前側壁および後側壁の少なくとも一部は、約90°近辺に集中する角度によって(例えば、約70°から約110°の範囲の角度によって)オフセットされているであろう。したがって、L字形断面を有するトラフは、V字形断面を有するトラフのサブセットまたはわずかな変形形態であってよい。
【0044】
本明細書で使用する用語「縦断の」、「縦断的側面」および「縦断プロファイル」は、デンタルトレイまたは歯科用治療装置を指すのに使用される場合、トレイまたは装置の長さ方向の側面を指す。トレイまたは装置は、「縦断的側面」において直線状であるか、あるいは、ヒトの歯列弓の曲率に近づけるか、あるいは歯列弓上へのトレイまたは装置の設置を少なくとも容易にするように馬蹄形であるか、さもなければ縦断的側面において「縦断的に曲線状」であってよい。
【0045】
本明細書で使用する用語「分子量」は、特別の定めのない限り、ダルトンで表される数平均分子を指す。
【0046】
II.薬物組成物および装置
成形薬物組成物は、単独か、あるいは治療装置の一部としてのバリア層と組み合わせて存在することができる。通常、このような治療装置には、例えば、唾液または水によって濡れた場合に歯牙および/または歯肉に対してより粘着性になる成形薬物組成物または薬物層および使用中にヒトの口内の周囲水分から薬物層を保護する耐湿性バリア層が含まれる。以下は、本発明によるバリア層および薬物組成物または薬物層の材料および特性の好ましい例である。
【0047】
A.バリア層
本発明の一実施形態によれば、バリア層は、耐湿性ポリマー材料から成形される薄い柔軟性の膜を含む。好ましい実施形態において、バリア層は、ワックス、金属箔、パラフィン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVAL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステルアミドなどのポリオレフィンまたは類似の耐湿性材料の薄い柔軟性の層を備える。このような材料は、大きくて平らな柔軟性のシートの形態で提供され、これに薬物組成物または薬物層を付着することができる。あるいは、このようなシートを、実質的に固体の薬物組成物を含む既存の薬物層に付着または接着することができる。
【0048】
上述のことがらにもかかわらず、バリア層が成形薬物層に対して少なくともいくらかの耐湿性を提供する限りは、任意の望ましい材料、厚さまたは剛性を有するバリア層を提供することは、本発明の範囲内にある。バリア層は、従来のデンタルトレイを含むことがあり、その例には、カスタマイズされたデンタルトレイとカスタマイズされていないデンタルトレイの双方が含まれる。バリア層は、既存の薬物組成物(例えば、デンタルトレイの形態であるか、さもなければ望ましい形状を有する組成物)の上に噴霧もしくは塗装される、浸漬により付着されるか、さもなければ付着される耐湿性材料の層のように単純であってよい。
【0049】
バリア層を作製する際に使用するのに適しているポリオレフィンの例には、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、ポリプロピレン、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、TEFLON)が含まれるが、これらに限定されるものではない。バリア層を製造する際に使用するのに適しているポリエステルの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)が含まれるが、これらに限定されるものではなく、その例は、MYLARであり、DuPontによって販売されている。適当なポリウレタンバリア材料の例は、Greenfield、MassachusettsにあるArgoTech製のポリウレタンフィルムである。バリア層を形成するのに使用される上記ポリマーのいずれかの特性を改良したい場合には、当技術分野において知られている可塑剤、流動添加剤、および充填剤を使用することができる。
【0050】
以下で議論するように、使用される接着剤に左右されることが多いが、一部の薬物組成物は、他よりもバリア層を含むポリマー材料に対してより接着性である。ポリエチレン、パラフィンとポリエチレンテレフタレートのうちどれかといえば、実質的に固体の薬物組成物は、ポリエチレンテレフタレート、特にMYLARに対してより強く接着する傾向であることが判明した。
【0051】
薬物組成物(この場合、「薬物層」と見なすことができる)にシートまたはトレイ様バリア層を接着させることなどにより、前もって形成された薬物組成物の表面上に形成されるバリア層を利用することも本発明の範囲内にある。あるいは、後で除去される1種または複数の溶媒に溶かされたバリア材料(例えば、セルロースエーテル、酢酸セルロース、ワックス、プラスチック、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、またはシェラック)を含有するラッカー、化学重合型もしくは光重合型材料(例えば、メタクリル酸またはアクリル酸樹脂)、または熱可塑性融液(例えば、任意の熱可塑性樹脂)などのバリア層自体が、初めは流動性であり、後で硬化されてもよい。バリア層を形成するのに使用することができる有用なセルロースエーテルの例には、エチルセルロース、プロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、t−ブチルセルロースなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
B.実質的に固体の薬物組成物および薬物層
本発明による実質的に固体の薬物組成物は、バリア層の有無にかかわらず、デンタルトレイの形状であってよい。バリア層が存在する場合、固体の薬物組成物は、薬物層と見なすことができる。調製中または使用中に濡れる前に、本発明による薬物組成物または薬物層は、液体、流動性のゲル、または乾燥粉末もしくは粒子の薬物組成物とは対照的に、実質的に固体の粘着性薬物組成物を含むことが好ましい。薬物装置の場合、薬物層は、単一の粘着性集塊または領域を含むか、あるいはバリア層に接着される実質的に固体の薬物組成物の複数の粘着性集塊または領域を含むことができる。実質的に固体の粘着性薬物層を提供することは、カスタマイズされたデンタルトレイまたはカスタマイズされていないデンタルトレイ中にロードされる従来の薬物ゲルに比べ、周囲の口腔中に拡散するのではなく、バリア層と薬物治療されている歯牙および/または歯肉との間に薬物組成物をより良く維持する。このことは、薬物のより良い送達および患者コンプライアンスを促進する。
【0053】
本発明による実質的に固体の薬物組成物および薬物層には、少なくとも1種の薬物および少なくとも1種の組織接着剤が含まれる。好ましい実施形態において、薬物は、組織接着剤を含む実質的に固体のマトリクス内に分散される。薬物組成物には、歯科用漂白剤および/または歯科用減感剤などの他の活性試剤が含まれてもよい。以下は、含まれていてもよい好ましい薬物、組織接着剤、および他の成分である。
【0054】
1.薬物
用語「薬物」は、広く、ヒトの歯牙および/または周囲の歯肉組織に対して望ましい薬物治療または治療作用を提供することができる任意の活性成分に関する。有用な薬物の例には、慢性あるいは急性の(例えば、歯科漂白に起因する)過敏な歯牙を治療するのに使用される減感剤、例えば、歯肉炎、歯周病、プラーク、または他の口腔細菌感染もしくは病気を治療するのに使用される抗菌剤、齲蝕を予防するために歯のエナメル質を強化することができる鉱物成分補填剤、ヒトの歯牙上の歯石の蓄積を除去し、かつ/または予防する抗歯石剤、および抗結石または抗プラーク剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
例示的減感剤には、硝酸カリウム、他のカリウム塩、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム、フッ化スズ、およびフッ化ナトリウムなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。使用する場合、歯科用減感剤は、薬物組成物または薬物層の約0.01重量%から約50重量%の範囲の量で含まれることが好ましく、薬物組成物または薬物層の約0.05重量%から約25重量%の範囲であることがより好ましく、薬物組成物または薬物層の約0.1重量%から約10重量%の範囲であることが最も好ましい。2003年8月8日に出願した優先権書類である特許文献1には、トレイまたはトレイ様構造の形態である実質的に固体の減感組成物の例が開示されている。
【0056】
例示的抗菌剤には、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、フェノール、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、およびトリクロサンが含まれるが、これらに限定されるものではない。経口使用に安全であることが判明している一般的抗菌剤は、グルコン酸クロルヘキシジンである。
【0057】
齲蝕を予防することができる例示的鉱物成分補填剤には、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、他のフッ化塩およびリン酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
例示的抗歯石剤には、ピロリン酸塩、ポリピロリン酸塩、ポリビニルメチルエーテルリンゴ酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アルカリ金属リン酸塩、乳酸カルシウム、およびトリクロサンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
例示的抗結石または抗プラーク剤には、硫酸8−ヒドロキシキノリン、二クエン酸環状エステル、およびクエン酸亜鉛が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明による実質的に固体の薬物組成物内の薬物は、任意の望ましい濃度、例えば、実質的に固体の薬物組成物の0.01〜75重量%を有することができる。薬物の濃度は、所与の治療または手順を目的とする治療時間に応じて調整することができる。通常、治療時間が短ければ短いほど、より短い時間内に望ましい結果が得られるように薬物治療効果を加速するためにより多くの薬物を加えることができる。
【0061】
歯周病を治療するためには、グルコン酸クロロヘキシジンが好ましい薬物であり、実質的に固体の薬物組成物の約0.01重量%から約50重量%の範囲の量で含まれることが好ましく、実質的に固体の薬物組成物の約0.05重量%から約25重量%の範囲であることがより好ましく、実質的に固体の薬物組成物の約0.1重量%から約10重量%の範囲であることが最も好ましい。同一濃度範囲で他の抗菌剤または薬物が含まれていてもよい。
【0062】
2.組織接着剤
組織接着剤は、薬物組成物が、実質的に固体である場合、実質的に非接着性であるか、あるいは余り接着性ではないが、例えば、水または唾液で濡れた場合に歯牙および/または歯肉に対してより接着性になる任意の知られている粘着付与剤を含むことができる。現時点で好ましい組織接着剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。PVPポリマーは、PE、PETおよびパラフィンでできているポリマーバリア層に優れた接着性を提供し、薬物組成物が指触乾燥状態である場合には実質的に非接着性であり、実質的に固体の薬物組成物の表面が唾液または水で濡れた場合には歯牙および/または歯肉に対して優れた接着性を有することが判明した。
【0063】
本発明による薬物組成物および薬物層を製剤化する際に有用であるポリビニルピロリドンポリマーの非限定的例には、50,000の分子量を有するBASFにより販売されているポリビニルピロリドンポリマーのKollidon 30、60,000の分子量を有するポリビニルピロリドンポリマーのKollidon VA 60、1,300,000の分子量を有するポリビニルピロリドンポリマーのKollidon 90Fが含まれる。広く変化する分子量を有するPVPポリマーは、同じような接着性および湿潤特性を提供することが判明しているため、任意の分子量のPVPポリマー、少なくとも50,000と1,300,000の間の分子量を有するPVPポリマーは、本発明による実質的に固体の薬物組成物または薬物層を製剤化する際に有用であろう。
【0064】
本発明の範囲内で、PVPの他に、またはPVPの代わりに使用することができる他の組織接着剤には、カルボキシポリメチレン(例えば、Novean,Inc.により販売されているCARBOPOL)、ポリエチレンオキシド(例えば、Union Carbide製のPOLYOX)、ポリアクリル酸ポリマーまたはコポリマー(例えば、Novean,Inc.により販売されているPEMULEN)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸とポリアクリルアミドのコポリマー、PVP−酢酸ビニルコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、多糖ゴム、タンパク質などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
ポリエチレンオキシドポリマーは、余り好ましくない組織接着剤を含むが、1,000,000の分子量を有するポリエチレンオキシドポリマーは、100,000の分子量を有するポリエチレンオキシドポリマーに比べ、MYLARなどのバリア層に対するより良い接着性を提供することが判明している。
【0066】
1種または複数の組織接着剤は、実質的に固体の薬物組成物(すべての結合している水または他の溶媒を除いて)の約10重量%から約90重量%の範囲の量で含まれることが好ましく、実質的に固体の薬物組成物の約20重量%から約80重量%の範囲であることがより好ましく、実質的に固体の薬物組成物の約40重量%から約75重量%の範囲であることが最も好ましい。
【0067】
3.他の成分
薬物組成物および薬物層は、望ましい特性を有する最終組成物または層を得たい場合に、他の成分を含むことができる。他の成分の例には、可塑剤および湿潤剤(例えば、グリセリン、ソルビトール、およびポリエチレングリコール)、揮発性溶媒(例えば、水およびエタノールなどのアルコール)、安定化剤(例えば、EDTA)、中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)、粘稠剤(例えば、ヒュームドシリカ)、漂白剤(例えば、過酸化カルバミドおよび過ホウ酸ナトリウム)、矯味剤、甘味剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本発明による薬物組成物または薬物層を製造する場合の溶媒として水を使用し、次いで、蒸発によって追い出して実質的に固体の薬物組成物を得る場合、有意な量の水が、歯牙接着剤および湿潤剤として添加される任意のポリオールを含む薬物組成物内の親水性成分と結合または会合したままであることが想定される。残留水の量を測定したことはないが、初めは流動性の薬物組成物を十分に乾燥して実質的に固体の薬物組成物を得た後には、初めに添加された水の約10%が残っていると考えられる。
【0069】
任意選択の漂白剤には、過酸化水素、金属過炭酸塩、錯体型過酸化水素(例えば、過酸化カルバミドまたは過ホウ酸ナトリウム)、亜塩素酸塩、および次亜塩素酸塩、ペルオキシ酸、およびペルオキシ酸塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。含まれる場合、歯科用漂白剤は、薬物組成物または薬物層の約5重量%から約80重量%の範囲の量で含まれることが好ましく、薬物組成物または薬物層の約10重量%から約60重量%の範囲であることがより好ましく、薬物組成物または薬物層の約20重量%から約50重量%の範囲であることが最も好ましい。
C.薬物組成物およびそのような組成物を内蔵する治療装置の特徴
本発明による薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置は、前側壁、後側壁、および前記前側壁と後側壁の間のトラフを有するデンタルトレイの形状であることが好ましい。デンタルトレイの形状を有することは、装置とヒトの歯牙/歯肉の間に良好な嵌合を得るために必要な操作の量を軽減することにより、ヒトの歯牙および/または歯肉上への薬物組成物または治療装置の設置を容易にする。
【0070】
水または唾液で濡れた場合に、より接着性になる実質的に固体の成形薬物組成物を含むデンタルトレイの形状をした薬物組成物および治療装置は、初めは平らであり、前面および舌側歯牙表面を覆うために歯牙の咬合縁または切縁の周りに、初めは平らなストリップまたはパッチを巻き付けるために操作しなければならない歯科治療用ストリップまたはパッチに比べ、ヒトの歯牙および/または歯肉上により取り付けやすい。さらに本発明の薬物組成物および装置は、治療されるヒトの歯牙上にストリップを設置する前にすでに流動性である歯科用ゲルを用いる従来の歯科用ストリップに比べ、ヒトの歯牙および/または歯肉上により確実に接着しその場所に留まるように設計される。その結果は、ヒトの歯牙および/または歯肉のより効果的な治療およびより良い患者コンプライアンスである。ヒトが食べ、飲み、喫煙しまたは眠っている間の使用が推奨されない従来の漂白ストリップとは対照的に、本発明による薬物組成物および治療装置は、会話する、眠る、食べる、飲む、微笑む、眉をひそめる、顔をしかめる、あくびをする、咳をする、喫煙する、または事実上すべての表情をする、もしくは口をゆがめる間も装着されるように設計することができる。
【0071】
現時点で好ましい一実施形態によれば、薬物組成物および治療装置は、従来のデンタルトレイとそっくりの馬蹄形の縦断プロファイルおよびU字形断面のトラフを有する。例示的治療装置を図1および2Aに示す。図1は、一緒になって縦断的側面において通常は馬蹄形状を有し、通常はU字形の断面を有するトラフ16を規定する前側壁12および後側壁14を有する治療装置10の斜視図である。トラフのU字形断面は、図2Aでより明確に見られる。
【0072】
さらに、治療装置10には、耐湿性材料を含むことが好ましいバリア層18、および実質的に固体の薬物組成物を含むことが好ましい粘着性の薬物層20が含まれる。図2Aで最も良く見られるように、薬物層20には、治療装置10が使用中である場合に、バリア層18の内面24に隣接して位置する外面22およびヒトの歯牙および/または歯肉に直接接触するように設計されている内部薬物面26が含まれる。バリア層18の上縁28は、使用にあたってヒトの歯列弓の歯肉縁で終了するか、あるいは不足するように設計することができる。
【0073】
別法として、図2Bは、前側壁12’および後側壁14’を有するが、バリア層のないようなデンタルトレイの形状をした薬物組成物20’を示す。薬物組成物20’には、組成物20’が使用中である場合にヒトの歯牙および/または歯肉に直接接触するように設計されている内部薬物面26’および唾液から薬物組成物20’を保護するために、望ましい場合、耐水性バリア層または材料でコーティングされていてもよい外面22’が含まれる(図2A参照)。薬物組成物20’は、単独で、あるいはバリア層または材料と一緒に販売することができる。
【0074】
保存中および使用前に本発明による薬物組成物および治療装置を汚染物質から守るため、薬物組成物および治療装置を密封容器または包装内に包装することができる。図3に示すように、治療装置10は、硬い支持層32および剥離可能なカバー34が含まれる保護包装30内に密封することができる。治療装置10を使用したい場合には、剥離可能なカバー34を取り除き、治療装置10を、支持層32から外すか離す。保護包装30の他に、または保護包装30の代わりに、治療装置10には、別法として、薬物層20の内部薬物層26に隣接して一時的に設置される取り外し可能な保護層(図示せず)が含まれてもよい。治療装置10を使用したい場合には、内部薬物層20を露出するために取り外し可能な保護層を取り除く。
【0075】
また、保護包装30または他の保護手段を用い、図2Bに示す薬物組成物20’などのバリア層が含まれていない成形薬物組成物を保護することができる。
【0076】
図4は、図1および2AのU字形治療装置10または図2Bに示す薬物組成物20’の変形例である薬物組成物または治療装置40を図示している。主な差は、薬物組成物または治療装置40が使用中の場合、ヒトの歯列弓の各側上の最後の歯牙を少なくとも部分的に取り囲むように薬物組成物または治療装置40の各縦断末端42が高くなっていることである。
【0077】
図5は、L字形である本発明による薬物組成物または治療装置50の代替実施形態を図示している。より具体的に、薬物組成物または治療装置50には、ほぼL字形の断面を有するトラフ56を形成するように前側壁52および前側壁52から横方向に延びる後側壁54が含まれる。図5のL字形薬物組成物または治療装置50は、図1〜4のU字形薬物組成物または治療装置に比べ、ヒトの歯列弓上に最初に設置することがいくらか容易である。これは、薬物組成物または治療装置50の前側壁52がヒトの歯牙および/または歯肉の前面に最初に設置され接着される場合のヒトの歯牙の咬合縁または切縁に対する後側壁54のほぼ平面の方向性による。一方、前側壁52と後側壁54の間のより大きな初期オフセット角度の結果として、ヒトの歯牙および/または歯肉の舌側面に対して後側壁54を形成および接着するために、L字形治療装置のより多くの操作が通常必要とされる。しかしながら、本発明による薬物組成物および治療装置が、濡れたほぼ直後、または数秒以内に歯牙および/または歯肉表面に接着する能力は、ヒトの歯牙および/または歯肉表面に前側壁52および後側壁54を適合させるプロセスを容易にする。
【0078】
L字形断面を有する薬物組成物または治療装置50の場合、前側壁52から横方向に延びる後側壁54は、実際に後側壁よりむしろ底壁であるというのがより正確かもしれない。しかしながら、L字形薬物組成物または治療装置のこの「底壁」は、使用中に舌側歯牙および/または歯肉面に対して折り曲げられるため、L字形トラフを有する薬物組成物または治療装置は、単にV字形トラフを有する薬物組成物または治療装置の変形例であることが容易に分かる。したがって、本開示および添付の特許請求の範囲の目的上、側壁54は、「後側壁」を構成し、「後側壁」の定義の範囲にある。
【0079】
薬物組成物または治療装置が歯列弓の中の様々な形状およびサイズに適合する能力を促進するため、組成物または装置には、前側壁または後側壁内に1個または複数のノッチなどの機械的特徴が含まれてもよい。図5に示すように、薬物組成物または治療装置50には、前側壁52の中央に近い外縁内のノッチ58および後側壁54の中央に近い外縁内のノッチ59が含まれる。ノッチ58および59は、サイズが異なる歯列弓に適合させようとする場合、トレイ様薬物組成物または治療装置をより容易に広げるか、あるいは縮めることを可能にする。このようにして、薬物組成物または治療装置50を、より容易に「フリーサイズ」装置とすることができる。
【0080】
図6は、U字形トラフ66を規定する前側壁62および後側壁64が含まれる本発明の薬物組成物または治療装置60の代替実施形態を図示している。図1〜5の薬物組成物および治療装置のような馬蹄形であるか、さもなければ曲線状縦断プロファイルを有する代わりに、図6の薬物組成物または治療装置60は、実質的に直線状または線形の縦断プロファイルを有する。
【0081】
図7は、本発明による薬物組成物または治療装置70のさらに別の代替実施形態を示している。薬物組成物または治療装置70には、V字形トラフ76および曲線状縦断プロファイルを規定する前側壁72および後側壁74が含まれる。図7のV字形薬物組成物または治療装置70と図5のL字形薬物組成物または治療装置50の間の主な差は、前側壁および後側壁がお互いから横方向にオフセットしている角度である。
【0082】
上記実施例にかかわらず、当然のことながら、本発明による薬物組成物および治療装置は、任意の縦断形状を有することができる(例えば、一方の端から他方の端まで直線状または曲線状の縦断プロファイルを有することができる)。前側壁および後側壁は、任意の望ましい断面形状のトラフを規定することができる(例えば、トラフは、台形、長方形、または任意の望ましい幾何学的形状であってよい)。
【0083】
本発明による薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置のサイズおよび形状は、ヒトの上部歯列弓または下部歯列弓により容易に適合するように調整することができる。それらは、ヒトの歯牙および/または歯肉のすべてまたは単にサブセットを治療するような大きさにすることができる。薬物組成物または治療装置は、多種多様のサイズが異なる歯牙、歯肉領域、および歯列弓に容易に適合するように、十分に接着性かつ柔軟性であってよい。薬物組成物または治療装置は、治療される歯牙および/または歯肉の前面および舌側面を実質的に覆うように設計されることが有利である。両表面を治療することにより、より均質な治療が得られるが、1つまたは複数の表面を治療することは、本発明の範囲内にあることは確かである。
【0084】
通常、治療装置内のバリア層および/または薬物組成物もしくは薬物層の厚さは、望ましい強度および柔軟性を有する歯科用治療装置が得られるように調整することができる。ヒトの歯牙および/または歯肉に適合するようにバリア層を柔軟性にしておくため、バリア層は、約0.025mmから約1.5mmまでの厚さを有することが好ましく、約0.5mmから約1.25mmの範囲であることがより好ましく、約0.1mmから約1mmの範囲であることが最も好ましい。
【0085】
通常、成形薬物組成物または薬物層は、約0.1mmから約3mmの厚さを有する。また、薬物組成物または薬物層の厚さは、各治療セッションの意図した期間に応じて選択することができる。通常、薬物組成物または薬物層の厚さを増やすことは、1種または複数の活性薬物のより長いまたはより持続性の放出を提供するであろう。例えば、短い装着時間の場合、薬物組成物または薬物層は、約0.1mmから約0.5mmまでの厚さを有することが好ましい。中間装着時間の場合、薬物組成物または薬物層は、約0.5mmから約2mmまでの厚さを有することが好ましい。終夜治療の場合、薬物組成物または薬物層は、約2mmから約3mmまでの厚さを有することが好ましい。
【0086】
III.実質的に固体の薬物組成物およびそのような組成物を内蔵する治療装置を製造する方法
一実施形態によれば、薬物組成物または薬物層は、後で乾燥して実質的に固体の薬物組成物または薬物層を形成する流動性薬物組成物をまず生成することによって製造される。これは、加熱するか、さもなければ1種または複数の揮発性溶媒を蒸発によって追い出し、実質的に固体の薬物組成物または薬物層を残すことによって行うことができる。乾燥プロセスは、薬物組成物または薬物層をバリア層と接触するように設置する前または後に行うことができる。
【0087】
一実施形態によれば、実質的に固化した薬物組成物および薬物層は、大きいか、あるいは連続したポリマーシートの表面上に流動性薬物組成物を広げる(例えば、ならし(screeding)装置を用い)ことによって製造することができる。次いで、ポリマーシートおよび薬物組成物を、強制空気オーブンまたは他の適切な乾燥装置中に置き、流動性薬物組成物を生成するのに使用した水または他の溶媒の実質的部分を加熱して追い出す。揮発性溶媒の除去により、実質的に固体の薬物組成物を含む薬物層が得られる。その後、個々のトレイ様治療装置を、コーティングされたポリマーシートからの真空成形、加圧成形またはスタンプ成形などにより型成形し、次いで、ヒトの歯牙および/または歯肉上への設置に適している個々の治療装置に分離する。
【0088】
あるいは、実質的に固体の薬物組成物を、ポリマーシートから分離し、次いで、型成形、スタンプ成形するか、さもなければ、望ましい形状の薬物組成物に成形することができる。
【0089】
あるいは、流動性の、あるいは実質的に固体の薬物組成物を、型成形するか、あるいは薬物組成物または薬物層を含む望ましいトレイ様構造に成形することができる。その後、バリア層を、成形薬物組成物または薬物層の外面に接着または付着してもよい。この実施形態において、バリア層は、固体ポリマーシートまたは他のバリア材料を含むか、あるいは、蒸発によって溶媒を除去すること、化学または光重合、または熱可塑性融液を冷却することなどにより、後で重合または硬化される流動性バリア材料または前駆体を最初に含むことができる。
【0090】
本発明のさらに別の実施形態において、デンタルトレイまたはトレイ様装置(例えば、カスタマイズされたトレイまたは非カスタムトレイ)の形態であるバリア層を、流動性薬物組成物でコーティングすることができる。次いで、実質的に固体の薬物組成物を含む成形薬物層を形成するため、薬物組成物をデンタルトレイと一緒に加熱するか、さもなければ乾燥させる。このプロセスは、治療装置の商業製造中または最終使用者によって行うことができる。
【0091】
IV.薬物組成物およびそのような組成物を内蔵する治療装置を使用する方法
本発明による薬物組成物ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置は、任意の望ましい時間装着されるように設計することができる。通常、薬物の濃度を増やすことは、望ましい薬物治療効果を提供するのに必要な治療時間を軽減する。しかしながら、本発明の薬物組成物または治療装置とヒトの歯牙および/または歯肉との間の極めて快適な嵌合および確実な接着により、より均一な治療を保証するため、長期間このような組成物または装置を装着することが可能である。本発明による薬物組成物および治療装置は、会話すること、食べること、飲むこと、喫煙すること、咳をすること、微笑むこと、眉をひそめること、顔をしかめることなどの普通の日常活動を行う間、または眠っている間に装着されるように設計することができる。このことは、例えば、歯牙および/または歯肉に確実には接着しない従来の歯科用ストリップ、または大きくてかさばった歯科装置などの侵害的治療装置に比べ、日々の活動への侵害を著しく減少させる。
【0092】
本発明による薬物組成物または治療装置は、ヒトの上部歯列弓、下部歯列弓、または両方同時に装着させることができる。上部および下部歯列弓上に同時に薬物組成物または治療装置を確実かつ快適に装着する能力は、同時に上部および下部歯列弓において使用することが推奨されない歯科用ストリップからの別の脱却である。
【0093】
図8は、ヒトの上部歯列弓上に薬物組成物または治療装置82を設置しているヒト80を図示している。図9は、上部歯列弓上に薬物組成物または治療装置82を設置した後に、ヒトの下部歯列弓上に薬物組成物または治療装置92を設置しているヒト80を図示している。しかし、当然のことながら、薬物組成物または治療装置は、任意の順序でヒトの上部歯列弓および下部歯列弓上に設置することができる。
【0094】
薬物組成物または治療装置を取り外すため、使用者は、指の爪または剛性の道具を用いてバリア層または薬物組成物の隅をこじ開け、次いで残りを取り去ることができる。ヒトの歯牙および/または歯肉に接着したままの残留した薬物組成物または薬物層は、洗浄すること、水を流すことによるか、あるいはヒトの歯牙および/または歯肉にブラシをかけることにより除去することができる。過剰な水分から守られている場合、薬物組成物は、歯牙および/または歯肉に対して極めて接着性であるが、過剰の水と共に流される場合、および/または緩やかな機械的作用(例えば、ブラシをかけること)により速やかに破壊されて溶出されるように製剤化することができる。
【0095】
薬物組成物または治療装置は、数分という短い時間、または数時間という長い時間、装着することができる。例えば、その限りではないが、短時間の典型的治療セッションを、約10分から約30分まで続けることができる。中時間の治療セッションを約30分から約2時間続けることができる。ヒトが眠っている間の終夜治療を含む長時間の治療セッションを約2時間から約12時間続けることができる。
【0096】
治療セッションは、望ましい程度の薬物治療を得るために必要な回数繰り返すことができる。場合によっては、たった1〜3回の治療セッション後に臨床効果が観察されている。典型的な薬物措置には、1〜20回の治療セッションが含まれることが好ましく、2〜15回の治療セッションがより好ましく、3〜10回の治療セッションが最も好ましい。
【0097】
本発明による薬物組成物または治療装置は、歯科用漂白措置と併せて使用することができる。歯科用漂白組成物は、ゲル(例えば、カスタムトレイまたは非カスタムトレイ中に入った)、漂白ストリップ(例えば、漂白ゲルでコーティングされた)、またはトレイもしくはトレイ様装置の形状をした実質的に固体の漂白組成物の形態であってよい。2003年5月27日に出願した優先権書類である特許文献2および3には、トレイまたはトレイ様形状の形態である適当な漂白組成物の例が開示されている。
【0098】
また、本発明による薬物組成物または治療装置は、減感性ゲル(例えば、カスタムトレイまたは非カスタムトレイ中に入った)または減感性ストリップ(例えば、減感性ゲルでコーティングされた)の使用と併せて使用することができる。
【0099】
V.薬物治療キット
使用の都合上、複数の薬物組成物または治療装置は、一緒に包装し、キットとして販売することができる。一実施形態において、各キットにより提供される薬物組成物または治療装置の数は、処方された薬物治療措置に相当する治療セッション数に等しくなるであろう。ヒトの歯牙および/または歯肉上に本発明の薬物組成物または治療装置を設置する容易さと、それらが歯牙および/または歯肉に接着する確実性が相まって、特定の薬物組成物または治療装置が目的どおりに働かないか、あるいは機能しなくなる可能性は、例えば、従来の漂白ストリップと比べて大きく減少する。
【0100】
キット包装内の空間を効率的に利用するため、複数の薬物組成物または治療装置を一緒に積み重ねるか、あるいは封入することができる。薬物組成物または治療装置は、望ましい場合、まとめるか、個々に密封することができる。保護包装30を図3に示す。薬物組成物または薬物層は、内面上に、薬物組成物または薬物層を汚染または水分から保護するための取り外し可能な保護層を含むことができる。
【0101】
初めは別々で、最終使用者によって一緒にされるバリア層および成形薬物組成物を提供することは、本発明の範囲内にある。例えば、成形薬物組成物は、カスタマイズされているトレイまたは非カスタムトレイ中に入れられ、初めは流動性のバリア材料でコーティングされるか、あるいは柔軟性のバリアシートで覆われる実質的に固体の封入物であってよい。あるいは、流動性薬物組成物を、トレイ様バリア層のトラフ内に入れ、成形薬物組成物または薬物層が得られるように固化させることができる。
【0102】
本発明による薬物組成物または治療装置は、歯科用漂白措置と併せて使用することができる。このような場合、1個または複数の薬物組成物または治療装置および1個または複数の歯科用漂白組成物または漂白装置が含まれるキットを提供することが望ましいことがある。歯科用漂白組成物は、ゲル(例えば、カスタムトレイまたは非カスタムトレイ中に入った)、漂白ストリップ(例えば、漂白ゲルでコーティングされた)、またはトレイもしくはトレイ様装置の形状をした実質的に固体の漂白組成物の形態であってよい。
【0103】
VI.好ましい実施形態の実施例
以下は、本発明に従って製剤化および製造された薬物組成物および治療装置のいくつかの実施例である。このような例示的製剤化および製造条件は、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療するのに有用であることが判明した薬物組成物および治療装置を説明するために、限定によるのではなく、一例として示すものである。他に指示がない限り、すべてのパーセンテージは、重量による。
【実施例1】
【0104】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0105】
グルコン酸クロロヘキシジン 2%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 30%
エタノール 33%
水 35%
【0106】
得られた薬物組成物は、3つのタイプの柔軟性ポリマーシート、すなわち約0.15から0.18mmの厚さを有するポリエチレンシート、約0.05から0.08mmの厚さを有するパラフィンでできているシート、および約0.38mmの厚さを有するMYLARシートの表面に広げた。ならす装置を用いて薬物組成物を広げた。コーティングされたシートは、50〜70℃の温度まで約1時間加熱した強制空気オーブン中で加熱した。コーティングされたシートをオーブンから取り出し、検査した。薬物組成物を十分に乾燥し、ポリマーシートの表面上に固体の粘着性薬物層を形成した。乾燥した薬物組成物は、各々のポリマーシートによく接着した。
【0107】
コーティングされたシートを2度目にオーブンから取り出し、より小さなサイズの切片に切り離し、ヒトの歯牙および/または歯肉上への設置に適しているトレイ様薬物組成物に成形した。トレイ様治療装置には、ほぼU字形またはV字形断面を有するトラフを規定する前側壁および後側壁が含まれ、歯列弓の曲率にほぼ近づけるために縦断的側面で曲線状であった。
【0108】
ヒトの歯牙および/または歯肉上に設置することにより、トレイ様治療装置を試験した。歯牙および/または歯肉表面上に存在する残留唾液は、乾燥薬物組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙および/または歯肉に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙および/または歯肉に対して薬物装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙および/または歯肉表面に対して強く接着させた。
【0109】
トレイ様歯科用薬物治療装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。このような装置は、グルコン酸クロロヘキシジンなどの抗菌組成物の局所塗布の影響を受ける歯周病または口腔組織の他の感染を治療する際に使用するのに適している。
【実施例2】
【0110】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0111】
塩化セチルピリジニウム 2%
エタノール 28%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 35%
水 35%
【0112】
実施例1に記載の方法に従い、得られた薬物組成物から実質的に固体の薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置を製造した。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0113】
ヒトの歯牙および/または歯肉上に設置することにより、トレイ様薬物装置を試験した。歯牙および/または歯肉表面上に存在する残留唾液は、乾燥薬物組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙および/または歯肉に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙および/または歯肉に対して薬物装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙および/または歯肉に対して強く接着させた。
【0114】
トレイ様歯科用薬物治療装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。このような装置は、塩化セチルピリジニウムなどの抗菌組成物の局所塗布の影響を受ける歯周病および口腔組織の他の感染を治療する際に使用するのに適している。
【実施例3】
【0115】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0116】
フェノール 3%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 35%
エタノール 62%
【0117】
実施例1に記載の方法に従い、得られた薬物組成物から実質的に固体の薬物組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する治療装置を製造した。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0118】
ヒトの歯牙および/または歯肉上に設置することにより、トレイ様薬物装置を試験した。歯牙および/または歯肉表面上に存在する残留唾液は、乾燥薬物組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙および/または歯肉に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙および/または歯肉に対して薬物装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙および/または歯肉に対して強く接着させた。
【0119】
トレイ様薬物治療装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。このような装置は、フェノールの影響を受ける歯肉感染および炎症を治療する際に使用するのに適している。
【実施例4】
【0120】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の歯科用再石灰化および減感組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の再石灰化および減感組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0121】
硝酸カリウム 0.5%
フッ化ナトリウム 0.25%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 32%
エタノール 30%
水 37.25%
【0122】
実施例1に記載の方法に従い、得られた再石灰化および減感組成物から実質的に固体の再石灰化および減感組成物、ならびにそのような組成物を内蔵する再石灰化および減感装置を製造した。乾燥した再石灰化および減感組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0123】
ヒトの歯牙および/または歯肉上に設置することにより、トレイ様再石灰化および減感装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、固体再石灰化および減感組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して再石灰化および減感装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0124】
トレイ様歯科用再石灰化および減感装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。このような装置は、フッ化ナトリウムの再石灰化効果の結果として齲蝕を予防すること、ならびに硝酸カリウムおよびフッ化ナトリウムの結果として過敏な歯牙を減感することに適している。
【実施例5】
【0125】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の歯牙再石灰化/減感/漂白組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の歯牙再石灰化/減感/漂白組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0126】
硝酸カリウム 0.5%
フッ化ナトリウム 0.25%
過酸化カルバミド 15%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 33%
水 51.25%
【0127】
実施例1に記載の方法に従い、得られた組成物から歯牙再石灰化、減感および漂白組成物および装置を製造した。乾燥した組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0128】
ヒトの歯牙上に設置することにより、トレイ様治療装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、固体再石灰化/減感/漂白組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して再石灰化/減感/漂白装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0129】
トレイ様装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。
【実施例6】
【0130】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の歯科用減感組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の歯科用減感組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0131】
フッ化ナトリウム 0.25%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 30%
水 69.75%
【0132】
得られた減感組成物は、3つのタイプの柔軟性ポリマーシート、すなわち約0.15から0.18mmの厚さを有するポリエチレンシート、約0.05から0.08mmの厚さを有するパラフィンでできているシート、および約0.38mmの厚さを有するMYLARシートの表面に広げた。ならす装置を用いて減感組成物を広げた。コーティングされたシートは、50〜70℃の温度まで約1時間加熱した強制空気オーブン中で加熱した。コーティングされたシートをオーブンから取り出し、検査した。減感組成物を十分に乾燥し、ポリマーシートの表面上に減感層の固体粘着性層を形成した。乾燥した減感組成物は、各々のポリマーシートによく接着した。
【0133】
コーティングされたシートを2度目にオーブンから取り出し、より小さなサイズの切片に切り離し、ヒトの歯牙上への設置に適しているトレイ様歯科用減感装置に成形した。トレイ様減感装置には、ほぼU字形またはV字形の断面を有するトラフを規定する前側壁および後側壁が含まれ、歯列弓の曲率にほぼ近づけるために縦断的側面で曲線状であった。
【0134】
ヒトの歯牙上に設置することにより、トレイ様歯科用減感装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、乾燥歯科用減感組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して減感装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0135】
トレイ様歯科用減感装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。場合によっては、たった1回の減感セッション(例えば、2時間の減感セッション)後に著しい減感効果が検出された。すべての場合において、1〜3回の減感セッション後に著しい減感が検出された。
【実施例7】
【0136】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の歯科用減感組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の歯科用減感組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0137】
クエン酸ナトリウム 5%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 20%
水 75%
【0138】
実施例6に記載の方法に従い、得られた減感組成物から減感装置を製造した。乾燥した減感組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0139】
ヒトの歯牙上に設置することにより、トレイ様歯科用減感装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、乾燥歯科用減感組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して減感装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0140】
トレイ様歯科用減感装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。場合によっては、たった1回の減感セッション(例えば、2時間の減感セッション)後に著しい減感効果が検出された。すべての場合において、1〜3回の減感セッション後に著しい減感が検出された。
【実施例8】
【0141】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の歯科用減感組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の歯科用減感組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0142】
硝酸カリウム 3%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 15%
エタノール 30%
水 52%
【0143】
実施例6に記載の方法に従い、得られた減感組成物から減感装置を製造した。乾燥した減感組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0144】
ヒトの歯牙上に設置することにより、トレイ様歯科用減感装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、乾燥歯科用減感組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して減感装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0145】
トレイ様歯科用減感装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。場合によっては、たった1回の減感セッション(例えば、2時間の減感セッション)後に著しい減感効果が検出された。すべての場合において、1〜3回の減感セッション後に著しい減感が検出された。
【実施例9】
【0146】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の歯科用減感組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の歯科用減感組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0147】
硝酸カリウム 0.5%
フッ化ナトリウム 0.25%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 32%
エタノール 30%
水 37.25%
【0148】
実施例6に記載の方法に従い、得られた減感組成物から減感装置を製造した。乾燥した減感組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0149】
ヒトの歯牙上に設置することにより、トレイ様歯科用減感装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、乾燥歯科用減感組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して減感装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0150】
トレイ様歯科用減感装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。場合によっては、たった1回の減感セッション(例えば、2時間の減感セッション)後に著しい減感効果が検出された。すべての場合において、1〜3回の減感セッション後に著しい減感が検出された。
【実施例10】
【0151】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の減感漂白組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の減感漂白組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより生成した。
【0152】
硝酸カリウム 0.5%
フッ化ナトリウム 0.25%
過酸化カルバミド 15%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 33%
水 51.25%
【0153】
実施例6に記載の方法に従い、得られた減感組成物から減感装置を製造した。乾燥した減感組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着した。
【0154】
ヒトの歯牙上に設置することにより、トレイ様減感漂白装置を試験した。歯牙表面上に存在する残留唾液は、乾燥歯科用減感組成物の露出表面を濡らし、ほぼ直ちに歯牙に対して粘着性かつ極めて接着性にした。歯牙に対して減感漂白装置を押しつけ、歯列弓の自然な不規則性に適合させ、歯牙に対して強く接着させた。
【0155】
トレイ様歯科用減感装置は、数分から数時間までの様々な時間、ずれることなく装着された。場合によっては、たった1回の減感セッション(例えば、2時間の減感セッション)後に著しい減感効果が検出された。すべての場合において、1〜3回の減感セッション後に著しい漂白が検出された。
【0156】
以下の仮説的実施例を示し、本発明をより完全に規定する。これらの実施例は、事実上仮説的であるが、それらは、製造および試験された実際の配合設計に基づいている。
【実施例11】
【0157】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0158】
薬物 16%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 38%
水 46%
【0159】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例12】
【0160】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0161】
薬物 16%
PolyOx WSR 101(M.W.=1,000,000) 7%
水 77%
【0162】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートに強く接着しないが、シートから容易に分離される。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例13】
【0163】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0164】
薬物 16%
Carbopol 974P 5%
水性NaOH(50%) 6%
水 73%
【0165】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。この薬物組成物は、十分に乾燥して固体を生成することはできるが、Carbopolにゲルを生成させるのに必要な大量の水により縮まる傾向がある。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができるが、PVPまたはポリエチレンオキシドを用いる組成物に比べ、ヒトの歯牙および/または歯肉に容易に接着しない。
【実施例14】
【0166】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0167】
ポリエチレンオキシド(M.W.=100,000) 20%
グリセリン 2.5%
薬物 2.4%
水 75.1%
【0168】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートに強く接着しないが、シートから容易に分離される。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。したがって、ポリエチレンオキシドは、満足できる接着剤であるが、乾燥した薬物組成物とポリマーシートの間の接着を促進する際には余り満足できない。
【実施例15】
【0169】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0170】
薬物 10%
水 25%
エタノール 25%
ポリビニルピロリドン(M.W.=1,300,000) 38%
グリセリン 73%
【0171】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。溶媒として水とエタノールの混合物を使用することは、唯一の溶媒として水を使用する組成物に比べ、薬物組成物をより短時間で乾燥させる。グリセリンを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例16】
【0172】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0173】
薬物 10%
水 21%
エタノール 21%
Kollidon VA 64(M.W.=60,000) 40%
カルボキシメチルセルロース 3%
PEG 600 5%
【0174】
Kollidon VA 64は、BASFにより販売されているポリビニルピロリドンポリマーである。薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。溶媒として水とエタノールの混合物を使用することは、唯一の溶媒として水を使用する組成物に比べ、薬物組成物を短時間で乾燥させる。PEGを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例17】
【0175】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0176】
薬物 11.6%
エタノール 55.8%
Kollidon VA 90F(M.W.=1,300,000)24.4%
カルボキシメチルセルロース 2.3%
PEG 600 5.8%
【0177】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。唯一の溶媒としてエタノールを使用することは、唯一の溶媒として水とエタノールの混合物を使用する組成物に比べ、薬物組成物を短時間で乾燥させる。PEGを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例18】
【0178】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0179】
薬物 10%
エタノール 65%
Kollidon VA 90F(M.W.=1,300,000)20%
PEG 600 5%
【0180】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。唯一の溶媒としてエタノールを使用することは、唯一の溶媒として水とエタノールの混合物を使用する組成物に比べ、薬物組成物をさらに短時間で乾燥させる。PEGを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例19】
【0181】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0182】
薬物 10%
エタノール 64%
Kollidon VA 90F(M.W.=1,300,000)25%
PEG 600 1%
【0183】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。唯一の溶媒としてエタノールを使用することは、唯一の溶媒として水とエタノールの混合物を使用する組成物に比べ、薬物組成物をさらに短時間で乾燥させる。PEGを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例20】
【0184】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0185】
薬物 10%
エタノール 64%
Kollidon VA 90F(M.W.=1,300,000)23%
PEG 600 1%
Aerosil 200 2%
【0186】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。唯一の溶媒としてエタノールを使用することは、唯一の溶媒として水とエタノールの混合物を使用する組成物に比べ、薬物組成物をさらに短時間で乾燥させる。PEGを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。Aerosil 200は、濡れた薬物組成物のポリマーシートへの接着を促進するための粘着付与剤として添加される。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例21】
【0187】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0188】
薬物 10%
エタノール 66.9%
Kollidon VA 90F(M.W.=1,300,000)20%
PEG 600 0.1%
Aerosil 200 3%
【0189】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。唯一の溶媒としてエタノールを使用することは、唯一の溶媒として水とエタノールの混合物を使用する組成物よりもさらに短時間で薬物組成物を乾燥させる。Aerosil 200は、濡れた薬物組成物のポリマーシートへの接着を促進するための粘着付与剤として添加される。乾燥した薬物組成物は、ポリマーシートを含むバリア層によく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例22】
【0190】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0191】
薬物 10%
PolyOx(M.W.=1,000,000) 7.5%
水 75.5%
グリセリン 5%
Aerosil 200 2%
【0192】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。グリセリンを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。この薬物組成物は、MYLARシートによく接着しない。また、長時間の乾燥後にいくらか縮む。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例23】
【0193】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0194】
薬物 10%
Kollidon 90F(M.W.=1,300,000) 10%
Kollidon 30(M.W.=50,000) 20%
水 53%
グリセリン 5%
Aerosil 200 2%
【0195】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。グリセリンを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。Aerosil 200は、濡れた薬物組成物のポリマーシートへの接着を促進するための粘着付与剤として添加される。乾燥した薬物組成物は、各々のポリマーシートによく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例24】
【0196】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0197】
薬物 10%
Kollidon 90F(M.W.=1,300,000) 27%
水 50%
グリセリン 7%
Aerosil 200 6%
【0198】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。グリセリンを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。Aerosil 200は、濡れた薬物組成物のポリマーシートへの接着を促進するための粘着付与剤として添加される。乾燥した薬物組成物は、各々のポリマーシートによく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【実施例25】
【0199】
実質的に固体の粘着性かつ非流動性の薬物組成物を製造する際に使用するのに適している初めは流動性の薬物組成物は、以下の成分を混ぜ合わすことにより作成する。
【0200】
薬物 10%
Kollidon 90F(M.W.=1,300,000) 28%
水 50%
グリセリン 7%
Aerosil 200 5%
【0201】
薬物は、本明細書に開示されている薬物を含む、任意の知られている薬物であってよい。実施例1に記載の方法に従い、得られる薬物組成物から薬物装置を製造する。グリセリンを含めることは、乾燥後に薬物組成物をより柔軟でかつ脆弱でなく保つことに役立つ。Aerosil 200は、濡れた薬物組成物のポリマーシートへの接着を促進するための粘着付与剤として添加される。乾燥した薬物組成物は、各々のポリマーシートによく接着する。この薬物装置を用い、ヒトの歯牙および/または歯肉を治療することができる。
【0202】
本発明は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的形態で具体化することができる。記載されている実施形態は、すべての点で制限的ではなく例示的と見なされるはずである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の等価体の意味および範囲に入るすべての変更は、それらの範囲に包含されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】バリア層および実質的に固体の薬物組成物を含むデンタルトレイの形状をした本発明による例示的治療装置の斜視図である。
【図2A】図1に示した治療装置の断面図である。
【図2B】バリア層のないデンタルトレイの形状をした本発明による例示的治療装置の断面図である。
【図3】剥離可能なカバーを有する密封保護包装内に入れられた薬物組成物または治療装置を図示している。
【図4】図1に示す治療装置に類似した例示的薬物組成物もしくは治療装置、または図2Bの薬物組成物の斜視図であるが、各縦断末端上に末端側壁が含まれる。
【図5】L字形トラフおよび曲線状の縦断プロファイルを有する例示的薬物組成物または治療装置の斜視図である。
【図6】U字形トラフおよび実質的に直線状の縦断プロファイルを有する例示的薬物組成物または治療装置の斜視図である。
【図7】V字形トラフおよび曲線状の縦断プロファイルを有する例示的薬物組成物または治療装置の斜視図である。
【図8】上部歯列弓上に本発明による薬物組成物または治療装置を設置するヒトを図示している。
【図9】上部歯列弓上にすでに薬物組成物または治療装置が設置され、下部歯列弓上に本発明による薬物組成物または治療装置を設置するヒトを図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの歯牙および/または歯肉を治療する際に使用するための製品であって、
前側壁、後側壁、および前記前側壁と後側壁の間のトラフを含むトレイ様構造を有する実質的に固体の粘着性薬物組成物を含み、
前記薬物組成物は、唾液または水によって濡れた場合、歯牙および/または歯肉に対する増大する接着性を有し、
前記薬物組成物は、
少なくとも1種の薬物、および
前記薬物が分散される実質的に固体のマトリクスを形成し、前記薬物組成物が唾液または水によって濡れた場合、歯牙および/または歯肉に対する前記増大する接着性に少なくとも部分的に寄与する少なくとも1種の組織接着剤を含むことを特徴とする製品。
【請求項2】
前記薬物組成物は、前記薬物組成物がわずかな縦断的成形でヒトの歯列弓に少なくともほとんど適合するように、使用前に初めから馬蹄形であることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記薬物組成物は、前記薬物組成物がヒトの歯牙および/または歯肉上に設置される場合に前記薬物組成物の縦断的曲げが必要となるように、使用前に実質的に直線状の縦断プロファイルを初めから有していることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記トラフの少なくとも一部は、ほぼU字形、V字形、L字形、長方形、または台形である断面を有していることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記薬物は、少なくとも1種の歯科用減感剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記歯科用減感剤は、硝酸カリウム、他のカリウム塩、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム、フッ化ナトリウム、またはフッ化スズのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記薬物は、少なくとも1種の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記抗菌剤は、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、フェノール、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、またはトリクロサンのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7に記載の製品。
【請求項9】
前記薬物は、少なくとも1種の鉱物成分補填剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項10】
前記鉱物成分補填剤は、フッ化塩、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、およびリン酸カルシウムのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記薬物は、少なくとも1種の抗歯石剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記抗歯石剤は、ピロリン酸塩、ポリピロリン酸塩、ポリビニルメチルエーテルリンゴ酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アルカリ金属リン酸塩、乳酸カルシウム、およびトリクロサンのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項11に記載の製品。
【請求項13】
前記薬物は、少なくとも1種の抗結石または抗プラーク剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項14】
前記抗結石または抗プラーク剤は、硫酸8−ヒドロキシキノリン、二クエン酸環状エステル、およびクエン酸亜鉛のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記薬物は、前記薬物組成物の約0.01重量%から約50重量%の範囲の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項16】
前記組織接着剤は、ポリビニルピロリドンを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項17】
前記組織接着剤は、カルボキシポリメチレン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のコポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸とポリアクリルアミドのコポリマー、PVP−酢酸ビニルコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、多糖ゴム、またはタンパク質のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項18】
前記組織接着剤は、前記薬物組成物の約20重量%から約80重量%の範囲の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項19】
前記薬物組成物は、少なくとも1種の湿潤剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項20】
前記薬物組成物は、ヒトの上部または下部歯列弓の少なくとも一部に適合するようにサイズおよび構造が決められることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項21】
前記薬物組成物は、約0.1mmから約3mmの範囲の断面の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項22】
前記薬物組成物は、使用前に密封包装内に入れられることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項23】
使用にあたって薬物組成物を唾液または水分から保護する、前記薬物組成物の外面に隣接する耐湿性材料を含むバリア層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項24】
前記薬物組成物は、少なくとも1種の歯科用漂白剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項25】
前記歯科用漂白剤は、前記薬物組成物の約10重量%から約60重量%の範囲の濃度を有することを特徴とする請求項24に記載の製品。
【請求項26】
ヒトの歯牙を治療する際に使用するための治療装置を含む製品であって、前記治療装置は、
前側壁、後側壁、および前記前側壁と後側壁の間のトラフを含むデンタルトレイの形状をした耐湿性材料を含むバリア層、ならびに
前記バリア層に隣接する第一の表面および唾液または水によって濡れた場合、歯牙および/または歯肉に対し増大する接着性を有する第二の表面を有する実質的に固体の薬物組成物を含む前記トラフ内の薬物層を含み、前記薬物組成物は、
少なくとも1種の薬物、および
前記薬物が分散される実質的に固体のマトリクスを形成し、前記薬物組成物が唾液または水によって濡れた場合、歯牙および/または歯肉に対する前記増大する接着性に少なくとも部分的に寄与する少なくとも1種の組織接着剤を含むことを特徴とする製品。
【請求項27】
前記トラフの少なくとも一部は、ほぼU字形、V字形、L字形、長方形、または台形である断面を有していることを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項28】
前記バリア層は、使用にあたってヒトの歯牙および/または歯肉の形状と容易に適合するように柔軟性であることを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項29】
前記バリア層は、ポリオレフィン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ワックス、金属箔、パラフィン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、またはポリエステルアミドのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項30】
前記バリア層は、ヒトの歯牙および/または歯肉上に前記薬物装置を設置する前に、前記薬物装置をデンタルトレイの形状に維持するのに少なくとも部分的に寄与するように剛性を有することを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項31】
前記バリア層は、前記薬物装置が、わずかな縦断的成形でヒトの歯列弓に少なくともほとんど適合するように、使用前に初めから馬蹄形であることを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項32】
前記バリア層は、前記薬物装置がヒトの歯牙および/または歯肉上に設置される場合に前記薬物装置の縦断的曲げが必要となるように、使用前に初めから実質的に直線状の縦断プロファイルを有していることを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項33】
前記バリア層は、カスタマイズされたデンタルトレイを含むことを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項34】
前記薬物層は、前側壁、後側壁、および前記前側壁と後側壁の間のトラフを含むデンタルトレイの形状をした単一の粘着性集塊を含むことを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項35】
前記薬物層は、ヒトの歯牙および/または歯肉上に前記薬物装置を設置する前に、前記薬物装置をデンタルトレイの形状に維持するのに少なくとも部分的に寄与するように剛性を有していることを特徴とする請求項34に記載の製品。
【請求項36】
前記薬物は、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、フェノール、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、トリクロサン、減感剤、鉱物成分補填剤、抗歯石剤、および抗プラーク剤から選択される少なくとも1種のメンバーを含むことを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項37】
前記組織接着剤の少なくとも一部は、ポリビニルピロリドンを含むことを特徴とする請求項26に記載の製品。
【請求項38】
ヒトの歯牙を治療する際に使用するためのキットであって、請求項1から37のいずれかに記載の複数の製品を含むことを特徴とするキット。
【請求項39】
ヒトの歯牙を治療する際に使用するための方法であって、請求項1から37のいずれかに記載の製品を入手すること、次いで望ましい時間ヒトの歯牙および/または歯肉の少なくとも一部の上に前記製品を設置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
実質的に固体の粘着性薬物組成物を含む製品を製造する方法であって、
薬物、組織接着剤および溶媒を一緒に混ぜ合わせて中間体の流動性組成物を生成すること、および
前記中間体の流動性組成物から前記溶媒の少なくとも一部を除去して、前記実質的に固体の粘着性薬物組成物を生成することを含み、
前記薬物組成物は、前側壁、後側壁、および前記前側壁と後側壁の間のトラフを含むトレイ様構造を有することを特徴とする方法。
【請求項41】
前記薬物組成物に隣接してバリア層を形成または設置することをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の製品を製造する方法。
【請求項42】
前記バリア層は、デンタルトレイを含むことを特徴とする請求項41に記載の製品を製造する方法。
【請求項43】
先立って前記デンタルトレイに隣接して前記中間体の流動性組成物をまず設置し、次いで、前記中間体の流動性組成物から前記溶媒の少なくとも一部を除去して前記実質的に固体の粘着性薬物組成物を生成することを特徴とする請求項42に記載の製品を製造する方法。
【請求項44】
トレイ様構造を有する前記薬物組成物をまず生成し、次いで前記デンタルトレイ内のトラフの内側にそれを設置することを含むことを特徴とする請求項42に記載の製品を製造する方法。
【請求項45】
前記薬物組成物に隣接して初めは流動性の材料を塗布し、初めは流動性の材料を固体のバリア層中に固化させることを含むことを特徴とする請求項41に記載の製品を製造する方法。
【請求項46】
前記バリア層を含むポリマーシートに隣接して前記中間体の流動性組成物をまず設置し、前記中間体の流動性組成物から前記溶媒の少なくとも一部を除去して実質的に固体の粘着性薬物組成物を生成し、薬物組成物およびバリアをトレイ様構造に成形することを含むことを特徴とする請求項41に記載の製品を製造する方法。
【請求項47】
前記薬物は、減感剤、鉱物成分補填剤、抗菌剤、抗歯石剤、抗プラーク剤、および歯科用漂白剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項40に記載の製品を製造する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−501671(P2007−501671A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523178(P2006−523178)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/014335
【国際公開番号】WO2005/016167
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(399128493)ウルトラデント プロダクツ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】