説明

経年劣化補償を備えたOLEDディスプレイ

有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、それぞれのOLEDが二つの端子を有するOLEDのアレイ;OLED一面の電圧を感知しOLED一面の電圧を表すフィードバック信号を生じるために対応するOLEDの端子の一つに接続された個々の回路にトランジスタを含む個々のOLEDについての電圧感知回路;ならびに個々のOLEDについて補正信号を計算し、個々のOLEDを駆動するために用いられるデータに該補正信号を適用し、個々のOLEDの出力変化を補償するために該フィードバック信号に応答する制御器を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体OLED平面ディスプレイに関し、より具体的には有機発光ディスプレイの経年劣化を補償する手段を有するようなディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
固体有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは優れた平面ディスプレイ技術として大変興味深い。これらのディスプレイは発光するために有機物質の薄膜を通過する電流を利用する。発光色および電流から光へのエネルギー変換効率は有機薄膜物質の組成物により決定する。異なる有機物質は異なる光の色を放つ。しかしながら、該ディスプレイが使用されるにつれて、ディスプレイの有機物質は経年劣化し、発光時に効率が悪くなる。これはディスプレイの耐用年数を縮める。異なる有機物質は異なる速度で経年劣化し、示差的な色の経年劣化、および該ディスプレイが使用されるにつれ白色点が変動するディスプレイをもたらし得る。その上、それぞれの画素は他の画素と異なる速度で経年劣化し、ディスプレイの不均一性を生じ得る。
【0003】
該物質が経年劣化する速度は、該ディスプレイを通過する電流の量、故に該ディスプレイから放出された光の量に関連する。ポリマー発光ダイオードのこの経年劣化作用を補償する一つの技術が、2002年9月24日に発行されたSundahl et al.の米国特許第6,456,016号に記載されている。この取り組みは、用いる初期段階で供給される電流の制御減少に依存し、続く第二段階でディスプレイ出力が次第に減少する。この解決法は、該ディスプレイの動作時間が制御器内のタイマーにより追跡され、次いで該制御器が電流の補償量を供給することを要する。さらに、一度ディスプレイが使用されると、該制御器はディスプレイの動作時間の誤差を回避するために該ディスプレイに依然提携しなければならない。
【0004】
この技術は小分子有機発光ダイオード・ディスプレイの性能をうまく表さないという不利点を有する。さらに、該ディスプレイが使用された時間は蓄積されなければならず、制御器のタイミング、計算、および保存回路を要する。また、この技術は、輝度および温度の変動レベルでの該ディスプレイ動作の差異を調整せず、異なる有機物質の示差的な経年劣化速度を調整できない。
【0005】
2002年7月2日に発行されたShen et al.の米国特許第6,414,661 B1号は、画素に適用される蓄積駆動電流に基づく各画素の光出力効率の衰退を計算し予測することにより、OLEDディスプレイにおける個々の有機発光ダイオード(OLED)の発光効率の長期変動を補償し且つ各画素の次の駆動電流に適用される補正係数を導く方法および関連システムを記載している。この技術は、それぞれの画素に適用される駆動電流の測定および蓄積を必要とし、該ディスプレイが使用される際に連続的に更新されなければならない保存メモリーを要し、複雑で広範な回路を要する。
【0006】
2002年11月14日に公開されたEverittによる米国特許出願第2002/0167474 A1号はOLEDディスプレイ用のパルス幅変調ドライバーを記載している。ビデオ・ディスプレイの一実施形態は、ビデオ・ディスプレイの有機発光ダイオードを駆動するために選択電圧を供給する電圧分配器を含む。該電圧分配器は、経年劣化、縦列抵抗、横列抵抗、および他のダイオードの特徴を担う補正表から電圧情報を受信し得る。本発明の一実施形態において、該補正表は正常な回路動作の前および/または最中に計算される。OLED出力光のレベルはOLED電流に対して直線性であると想定されるため、補正案は、過渡電流を安定させることが可能な十分に長い間OLEDダイオードを介して既知電流を送電した後、カラム・ドライバーに備わるアナログ・デジタル変換器(A/D)を用いて対応する電圧を測定することに基づいている。較正電流源およびA/Dは開閉基盤により任意のカラムに切り替えられ得る。この設計は、一体化され調整された電流源およびA/D変換器の使用を必要とし、回路設計の複雑性を非常に増大させる。
【0007】
2003年1月7日に発行されたNarita et al.の米国特許第6,504,565 B1号は、複数の発光要素を配置することにより形成される発光要素配置、発光要素のそれぞれから発光させるために発光要素配置を駆動させる駆動ユニット、発光要素配置のそれぞれの発光要素について発光数を記憶するためのメモリ・ユニット、並びにそれぞれの発光要素から放出される光の量が一定を保つようにメモリ・ユニットに保存された情報に基づいて駆動ユニットを制御する制御ユニットを含む発光ディスプレイを記載している。発光ディスプレイを利用する露光ディスプレイ、および該露光ディスプレイを利用する画像形成装置も開示されている。この設計は、使用を記録するために、それぞれの画素に送信される個々の信号に応答する計算ユニットの使用を必要とし、回路設計の複雑性を非常に増大させる。
【0008】
2002年9月27日に発行されたNumeo Kojiによる特開2002−278514号公報は、所定の電圧が電流測定回路により有機EL要素に適用され電流が測定される方法を記載しており、温度測定回路は有機EL要素の温度を予測する。該要素に適用される電圧値、電流値および予測温度、予め測定された同様な構成要素の経年劣化による変化、電流−輝度特性の経年劣化による変化、および該要素の電流−輝度特性を予測するための特性測定時の温度で比較が為される。次いで、ディスプレイ・データが表示される間に該要素に供給される電流量の累計は、電流−輝度特性の予測値、該要素に流れる電流値、およびディスプレイ・データに基づいて、本来表示されるべき輝度を得るように変化する。
【0009】
この設計は、画素の予測可能な相対的使用を推定し、画素群または個々の画素の実際の使用の差異に対応しない。従って、色または空間の群についての正確な補正は時間とともに不正確になりやすい。さらに、該ディスプレイ内の温度と複数の電流検出回路の統合が必要とされる。この統合は複雑であり、製造収率を低下させ、ディスプレイ内に空間を取る。
【0010】
2003年7月3日に刊行されたIshizuki et al.による「パネル・ディスプレイ駆動ディスプレイおよび駆動方法」と表題された米国特許出願第2003/0122813 A1号は、ディスプレイ・パネル駆動装置ならびに長期使用後でさえ変則的な輝度なく高品質の画像を提供する駆動方法を開示する。発光駆動電流の値は個々の画素を生じる個々の発光要素を独立的に連続して発光させる際に測定された後、入力画素データに対応する画素と連動して、上記の発光駆動電流値に基づく個々の入力画素データについて輝度が補正される。他の態様に従って、駆動電圧の電圧値は、測定された個々の発光駆動電流値の中の一つの値が所定の基準電流値に等しくなるような様式で調整される。さらなる態様に従って、ディスプレイ・パネルの漏洩電流に対応するオフ・セット電流構成要素が駆動電圧発生器回路から出力される電流に加えられ、得られる電流が画素部分のそれぞれに供給される一方、電流値が測定される。
【0011】
この設計は、単独の画素の用力によりディスプレイの相対流の変化を検出できるほど感度のよい外部電流検出回路を利用する。このような回路は設計し難く、構築するのに費用がかかる。さらに、測定技術は、反復性であり、故に遅く、電圧源ドライブに依存する一方、OLEDディスプレイは定電流源を用いて制御されることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、有機発光ダイオード・ディスプレイのための改善された経年劣化補償法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
該必要性は、本発明に従って、OLEDの配置を含む有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを提供することにより、満たされる。それぞれのOLEDは、二つの端子; OLED一面の電圧を感知するために対応するOLEDの端子の一つに接続された個々の回路にトランジスタを含み、OLED一面の電圧を表すフィードバック信号を生成する、個々のOLEDについての電圧感知回路;ならびに各OLEDについて補正信号を計算し、各OLEDを駆動するために用いるデータに該補正信号を適用するために該フィードバック信号に応答し、各OLEDの出力変化を補償する制御器を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の利点は、ディスプレイ発光要素の使用または動作時間の連続測定を累算するための高価または複雑な回路を必要とせずにディスプレイの有機物質の経年劣化を補償し、定電流画素駆動回路を提供し、ならびに単純な電圧測定回路を使用する、OLEDディスプレイである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1aを参照すると、本発明の一実施形態に従う有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、OLED発光要素10(その内の一つだけが示される)の配置;一つ以上のOLEDディスプレイ一面の電圧を表すフィードバック信号14を生じるためにOLED一面の電圧を感知するトランジスタ12を含む電圧感知器;ならびに一つ以上のOLEDディスプレイについて補正制御信号24を計算し、一つ以上のOLEDディスプレイ10の出力変化を補償する該補正制御信号24をOLEDディスプレイに適用するために入力信号26およびフィードバック信号14に応答して有機発光ダイオード・ディスプレイを制御する制御器16を含む。トランジスタ12と接地との間で接続される負荷抵抗器15はOLED10一面の電圧に比例した電圧を生成する。図1bは電圧感知器の代替機器構成を説明する。この実施形態において、負荷抵抗器15は該接地よりむしろ電源Vdd線(power Vdd line)に接続される。該負荷抵抗器は制御器を含む種々の配置で提供され得る。図1aおよび図1bに示される実施形態において、個々のフィードバック信号14は測定されるべき各OLEDまたはOLED群に提供され得る。
【0016】
図2を参照すると、ディスプレイは、基板20で形成され、制御器16により生じる補正制御信号24に応答するOLED発光要素10のアレイ22を含む。制御器16は入力信号26およびフィードバック信号14に応答する。発光体10を駆動するための基板20上の制御手段、例えばトランジスタおよびコンデンサが提供されてもよく、適切な制御器16がそうであるように、当分野で周知である。フィードバック信号14はOLED発光体10の端子の一つから受け取り;他の端子は基板20上で得られる既知電圧に接続される又は制御器16、例えば接地または他の既定電圧により提供される。
【0017】
本発明の一実施形態に従って、制御器16は、アレイ22に発光体10の全てを選択的に活性化する手段を含み、選択的に活性化された発光要素10について補正信号を計算するためにフィードバック信号に応答する。制御器16は、補正信号を入力信号26に適用し、選択的に活性化された発光体の出力変化を補償する補正信号24を生じる。
【0018】
一実施形態において、本発明は画素の配置を含むカラー画像ディスプレイに適用されてもよく、個々の画素はカラー画像を表示するために制御器16によりそれぞれ制御される複数の異なる有色発光要素10(例えば、赤、緑および青)を含む。有色発光要素10は異なる色の光放出する異なる有機発光物質により形成され得る。または、該10は異なる色を生じるために各要素上にカラー・フィルターをもつ同一の有機白色発光物質により全て形成され得る。他の実施形態において、発光要素10は、ディスプレイ内の個々の図形要素であり、規則的配置で体系化されないかもしれない(図示せず)。どちらの実施形態においても、発光要素は、受動的マトリクスまたはアクティブ・マトリクスのいずれかの制御を有し、底面発光型または上面発光型のいずれの基本設計概念をも有し得る。
【0019】
図3aに示されるように、該制御器へのフィードバック信号14の出力を制御する代替手段は、例えばセレクト信号30およびセレクト・トランジスタ32とともに用いられ得る。セレクト信号は発光体10の活性化を制御するために用いられる同一の信号であり得る。または、該信号は別個の信号であり得る。この実施形態において、各OLEDへの別個の線は必要ない。図3bを参照すると、発光体10(図示せず)を有する画素40のアレイ22は、単線上に組み合わされたフィードバック信号出力14を有する群(例えば横列または縦列)に配置されることにより、この実施形態を多数のOLEDを有するディスプレイについて実用的にさせる。この配置において、画素40の発光体10の横列は同時に電圧印加され選択され得る。各縦列のフィードバック信号14は、アナログ・シフト・レジスタ42に蓄積され、当分野で周知の手段を用いてディスプレイから制御器へ記録される。他の回路配置も可能であり、例えばマルチプレクサである。共通のフィードバック信号線14を有する画素40の発光体10を電圧印加し選択することも可能である。この場合、フィードバック信号14は、単一のフィードバック信号と組み合わされ、制御器16に直接出力される又はシフト・レジスタ42などの回路を経て出力される。
【0020】
図4を参照すると、電流としてOLEDディスプレイの通常の光出力がOLEDを通過することを説明するグラフが示される。三つの曲線は、時間の経過に伴う輝度の出力または累積電流により表されるように、異なる有色光(例えば、赤、緑および青の発光体をそれぞれ表すR、G、B)を放出する異なる発光体の通常の性能を表す。該曲線により見られるように、異なる有色発光体間の輝度の減衰は異なり得る。その差位は、異なる有色発光体で用いられる物質の異なる経年劣化特性により得る又は異なる有色発光体の異なる使用により得る。従って、従来の使用において、経年劣化の補正がないと、ディスプレイは輝きが少なくなり、ディスプレイの色、特に白色点は移行するであろう。
【0021】
OLEDの経年劣化はOLEDを通過する累積電流に関係し、性能の低下をもたらし、また、OLED物質の経年劣化はOLEDの見かけ抵抗の増加をもたらし、既定電圧でOLEDを通過する電流の減少を惹起する。電流の減少は既定電圧でOLEDの輝度の低下に直接関係する。使用に伴うOLED抵抗の変化に加えて、有機物質の発光効率が低下する。
【0022】
輝度の低下、ならびに所与のフィードバック信号14とOLED一面の電流の減少とのその関係を測定することにより、OLED発光要素10が所与の入力信号26について公称輝度を出力するのに必要な補正信号24の変化が測定され得る。これらの変化は所望の公称輝度値に光出力を補正するために制御器16により適用され得る。OLED発光体に適用される信号を制御することにより、一定の輝度出力を備え並びに既定の輝度で耐用年数が増加するOLED発光体が達成される。
【0023】
図5を参照すると、本発明は下記の通りに作動する。ディスプレイが使用される前に、所与の入力信号が一つ以上の発光要素10に適用50され、発光要素10からの輝度の測定52、ならびに対応するフィードバック信号14が生じる。フィードバック信号14は感知され制御器16に保存54される。該工程は所望する輝度レベルの範囲にわたって各発光体10により生じる個々の出力レベルについて反復56される。データは個々の発光体10について及び所望する個々の輝度出力レベルについて制御器16に一度保存54されると、個々の入力信号26、補正信号24、および所望の輝度レベルに関する換算表が創られる58。これらの補正は個々の発光体10または全ての発光体10に適用される平均補正にそれぞれ適用され得る。補正は当分野で周知の技術を用いてルックアップテーブルを使用して適用され得る。次にディスプレイは使用に入り得る。
【0024】
使用時に、入力信号は制御器16に適用60される。制御器16は個々の発光体についての入力信号を補正し、該ディスプレイに適用64される補正信号62を形成し、該工程は反復する。定期的に、該ディスプレイは生じた可能性のある経年劣化の増大を補償するために再較正され得る。該ディスプレイは一時的に使用から排除され、図5で説明される較正工程が再実施される。次いで、該ディスプレイは、個々の新規な入力信号が適用60されるため、制御器が新規な補正信号を形成62し、該補正信号をディスプレイに適用64するように、使用に戻る。再較正は、例えば所定の使用時間後に、起動時、または終了時に、該システム設計により測定される間隔で実施され得る。本発明を用いると、ディスプレイの連続モニタリングが不要となる。
【0025】
時間の経過と共にOLED物質は経年劣化し、OLEDの抵抗は増大し、任意の所与の入力信号に用いられる電流は減少し、フィードバック信号は増大するであろう。ある時点で、制御器16はもはや十分に大きな補正信号を提供できず、発光体は耐用年数の終末に到達し、もはや輝度または表色を満たせないであろう。しかしながら、発光体は、性能が低落しながら、機能し続けるため、正常な劣化を供するであろう。さらに、発光体がもはや規格を満たせない時点は、最大補正が計算される際に、ディスプレイのユーザーに信号が送られ、ディスプレイの性能に有用なフィードバックが提供され得る。制御器は、任意の異なる色ずれを最小にしながら、ディスプレイの輝度を徐々に低下させることができる。または、制御器は、使用とともに該輝度を徐々に低落させながら、画素間変動を減少させ得る。これらの技術を組み合わせて、カラーシフト差を最小にし、輝度を時間の経過とともに徐々に低落させながら、ディスプレイを徐々に劣化させ得る。経年劣化に伴う輝度喪失の速度は予測使用量に基づいて選択され得る。
【0026】
OLED発光体には駆動回路が組み合わされる。本発明は、(図1に示されるような)電圧制御または電流制御(図示せず)を含む広範囲の発光体回路に適用され得る。電流制御技術は、より均一な発光体の性能を提供するが、実行または補正するにはより複雑である。
【0027】
本発明は単純に構築され、(従来のディスプレイ制御器に加えて)電圧測定回路、個々のOLEDまたはOLEDの縦列への追加線、信号補正を実施するために該モデルについての変換手段(例えば、ルックアップテーブルまたは増幅器)、所与の入力信号について補正を決定するための計算回路のみを必要とし得る。電流の蓄積または時間の情報は必要ない。発光体は補正を実施するために定期的に使用から排除されなければならないが、補正間の周期は非常に大きく、例えば数日または数十時間の使用であり得る。
【0028】
本発明は有色発光体ディスプレイの色の変化を補正するために用いられ得る。図4に関して言及されたように、電流が画素の種々の発光要素を通過する際に、個々の発色体の物質は異なって経年劣化するであろう。所与の色の発光要素全てを含む群を創出し、該群のディスプレイにより用いられる平均電圧を測定することにより、所与色の発光要素についての補正が計算され得る。別個のモデルがそれぞれの色について適用され得るため、ディスプレイに一貫した色を保持する。この技術は、異なる色の放出体、または有色発光要素を供するために配置された有色フィルター配置とともに単独の白色放出体に依存する両ディスプレイについて機能するであろう。後者の場合、各色の効率損失を表す補正曲線は同一である。しかしながら、色の使用は同じでないかもしれないため、各色の個別補正は、依然として、一定の輝度を保持し、ディスプレイの白色点を表示することが必要である。
【0029】
本発明は、補正画像信号、測定電圧、および物質の経年劣化の複雑な関係を含むことにも及び得る。複数の入力信号は種々のディスプレイ輝度出力に対応して使用され得る。例えば、異なる入力信号は個々のディスプレイ出力輝度のレベルに対応し得る。補正信号を定期的に計算する場合、個別補正は、異なる所与の入力信号を用いることにより、個々のディスプレイ出力輝度レベルについて得られ得る。次いで、個別補正信号は、必要な個々のディスプレイ出力輝度レベルについて用いられる。従来どおり、これは、個々の発光体集団、例えば異なる発光体色群について為され得る。従って、補正信号は、個々の物質が経年劣化するにつれ、各色の個々のディスプレイ出力輝度レベルについて補正し得る。
【0030】
個々の発光体および入力信号は、ディスプレイの補正信号を計算するために用いられ、空間的に特異的な補正を提供し得る。このようにして、発光体の一部がより急速に経年劣化する場合、例えば、より頻繁に用いられる場合(グラフィック・ユーザー・インターフェースのアイコンのように)、他の発光体と異なって補正され得るように、補正信号は特異的な発光体に適用され得る。従って、本発明は、特異的な発光体または空間的に識別される発光体の群および/または有色発光体の群の経年劣化について補正し得る。補正モデルが個々の発光体または発光体の群の経年劣化について実験的に導かれること、ならびに定期的な補正信号計算が補正されるべき発光体を駆動することにより実施されることが必要なだけである。
【0031】
補正計算工程は、使用中定期的に、起動時、または終了時に、実施され得る。補正計算工程は、任意のユーザーに及ぼす影響が制限されるように、僅か数ミリ秒かかり得る。または、補正計算工程は制御器に供給されるユーザーの信号に応答して実施され得る。
【0032】
OLEDディスプレイは、長時間にわたって使用される場合、有意な量の熱を放散し、非常に熱くなる。出願人による更なる実験により、温度とディスプレイが使用する電流との間に強い関係があることが解明された。従って、ディスプレイがしばらくの間使用された場合、ディスプレイの温度は補正信号を計算する際に考慮に入れる必要があるかもしれない。ディスプレイが使用されていないことを想定する場合、またはディスプレイが冷却される場合、ディスプレイは、所定の大気温度、例えば室温にあることが想定され得る。補正信号モデルがその温度で測定された場合、温度関係は無視され得る。ディスプレイが起動時に較正され、補正信号モデルは大気温度で測定された場合、これは、大半の場合、妥当な推測である。例えば、比較的頻度の高い短い使用プロファイルの可動性ディスプレイは温度補正を必要としないかもしれない。ディスプレイがより長期間連続的に作動するディスプレイの利用、例えば、モニター、テレビ、またはランプは、温度調整を要しないかもしれない、またはディスプレイの温度問題を回避するために作動時に補正され得る。
【0033】
ディスプレイが終了時に較正される場合、ディスプレイは大気温度より著しく熱いかもしれず、温度影響を含むことにより較正を調整することが好ましい。これは、例えば、基板またはディスプレイのカバーに設置された熱電対23(図2を参照)、またはディスプレイの電子機器に統合されるサーミスタなどの温度感知要素を用いて、ディスプレイの温度を測定することにより為され得る。常に使用されるディスプレイについては、該ディスプレイは大気温度を著しく上回って機能する可能性が高い。ディスプレイの作動温度は、ディスプレイの較正で考慮に入れられ得る、ならびに画素の見込み経年劣化速度を測定するためにも使用され得る。画素の経年劣化速度の推定はディスプレイ装置の適切な補正因子を選択するために用いられ得る。
【0034】
不正確な電流の読み込み又は不適切に補償されたディスプレイ温度に起因する複雑化の可能性をさらに減らすために、入力信号に適用される補正信号への変更は制御により制限され得る。あらゆる補正変更は、例えば5%の変更まで、規模で制限され得る。経年劣化の過程は逆戻りしないため、計算された補正信号も単調増加であるよう制限され得る。補正変更はまた時間とともに平均化され得る。例えば、表示される補正変更は可変性を減らすために前値で平均化され得る。または、実際の補正は、数回読み込みした後でのみ為され得る。例えば、ディスプレイが稼動するたびに、補正計算が実施され、計算された補正信号の数(例えば10)は平均化され、ディスプレイに適用される実際の補正信号を生じる。
【0035】
補正画像信号はOLEDディスプレイに応じて種々の形態を採り得る。例えば、アナログ電圧のレベルが信号を指定するために用いられる場合、補正は信号の電圧を変更することになる。これは当分野で知られているような増幅器を用いて為され得る。第二の例において、例えばアクティブ−マトリクス発光体要素の配置で堆積する電荷に応じて、デジタル値が用いられる場合、ルックアップテーブルはデジタル値を当分野で周知の他のデジタル値に変換するために用いられ得る。典型的なOLEDディスプレイにおいて、デジタルまたはアナログのいずれかのビデオ信号はディスプレイを駆動するために用いられる。実際のOLEDは、電流がOLEDを通過するために用いられる回路に応じて、電圧駆動性または電流駆動性のいずれであってもよい。また、これらの技術は当分野で周知である。
【0036】
入力画像信号を変更し、補正画像信号を形成するために用いられる補正信号は、広範囲のディスプレイ性能特性を長期間実行するために用いられ得る。例えば、補正信号を入力画像信号に供給するために用いられるモデルは平均輝度またはディスプレイの白色点を一定に保ち得る。または、補正画像信号を創出するために用いられる補正信号は、平均輝度を経年劣化による他よりも遅く劣化させ得る。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明は、1988年9月6日に刊行されたTang et al.の米国特許第4,769,292号、および1991年10月29日に刊行されたVanSlyke et al.の米国特許第5,061,569号に開示されるような(しかし、これらに限定されない)低分子または重合体OLEDから構成される有機発光ダイオード(OLED)を含むディスプレイで使用される。有機発光ディスプレイの多数の組み合わせおよび変形は、このようなディスプレイを製造するために用いられ得る。
【0038】
一般的なディスプレイの基本設計概念
本発明は大半のOLEDディスプレイ機器構成で使用され得る。これらは、発光要素を形成するために陽極および陰極の直交配列から成るパッシブ・マトリクス・ディスプレイ、ならびに個々の発光要素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いて独立的に制御されるアクティブ−マトリクス・ディスプレイなど、より複雑なディスプレイに一つの陽極および陰極を含む非常に単純な構造を含む。
【0039】
本発明が首尾よく実行できる多数の有機層の機器構成が存在する。典型的な先行技術の構造は、図6に示され、基板101、陽極103、正孔注入層105、正孔輸送層107、発光層109、電子輸送層111、および陰極113から構成される。これらの層は以下詳細に記載される。基板は代替的に陰極に近接して配置され得ること、または基板は実際に陽極もしくは陰極を構成し得ることに留意せよ。陽極と陰極の間の有機層は便宜上有機EL要素と称される。有機層の合わせた全厚みは500nm未満が好ましい。
【0040】
OLEDの陽極および陰極は導電体260を介して電圧/電流源250に接続される。OLEDは陽極が陰極より陽電位であるように陽極と陰極の間に電位をかけることにより作動する。正孔は陽極から有機EL要素内に注入され、電子は陰極で有機EL要素内に注入される。ディスプレイ安定性の強化は、ACモードにおいて当該サイクルの一定期間電位デバイスを逆にして電流を流さないことで、時折達成され得る。AC駆動OLEDの例は米国特許第5,552,678号に記載されている。
【0041】
基板
本発明のOLEDディスプレイは通常支持基板上に提供され、陰極または陽極のいずれかが該基板と接触し得る。該基板と接触する電極は便宜上底電極と呼ばれる。従来、底電極は陽極であるが、本発明はその機器構成に限定されない。該基板は透明または不透明であり得る。基板が透明である場合、反射層または吸光層は該被覆を介して光を反射するために又は該光を吸収するために用いられることにより、ディスプレイのコントラストを改善する。基板は、ガラス、プラスチック、半導体物質、シリコン、セラミック、および回路基板材料を含み得るが、これらに限定されない。無論、光透過性の最上部電極を提供することが必要である。
【0042】
陽極
EL放出は陽極103を通じて見られる場合、陽極は目的の放出に透過性または実質的に透過性であるべきである。本発明で使用される共通の透明陽極物質は、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)および酸化スズであるが、アルミニウムまたはインジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウム−インジウム酸化物、およびニッケル−タングステン酸化物を含むが、これらに限定されない他の酸化金属が機能し得る。これらの酸化物に加えて、窒化ガリウムなどの窒化金属、セレン化亜鉛などのセレン化金属、硫化亜鉛などの硫化金属が陽極として使用できる。EL放出が陰極電極を通じてのみ見られる適用では、陽極の透明特性は重要でなく、透明、不透明または反射性の任意の導電材料が使用できる。本出願の例の導体は、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、および白金を含むが、これらに限定されない。通常の陽極物質は、透過性または4.1 eV以上の仕事関数を有する。望ましい陽極物質は、通常、蒸発、スパッタリング、化学蒸着、または電気化学手段などの任意の適切な手段により蒸着される。陽極は周知の写真平版工程を用いてパターン化され得る。随意で、陽極は、ショートを最小にするように又は反射性を増強するように表面粗度を低減するために、他層の適用前に研磨され得る。
【0043】
正孔注入層(HIL)
必ずしも必要ではないが、陽極103と正孔輸送層107との間に正孔注入層105を提供することはしばしば有用である。正孔注入物質は、後の有機層の膜形成性質を改善し正孔輸送層への正孔の注入を促進するのに役立ち得る。正孔注入層での使用に適した物質は、米国特許第4,720,432号に記載されるポルフィリン化合物、米国特許第6,208,075号に記載される過フッ化炭化水素重合体、および幾つかの芳香族アミン、例えばm−MTDATA(4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン)を含むが、これらに限定されない。有機ELディスプレイに有用であると報告されている代替の正孔注入物質は欧州特許第0 891 121 A1号および欧州特許第1 029 909 A1号に記載されている。
【0044】
正孔輸送層(HTL)
正孔輸送層107は芳香族第三級アミンなどの少なくとも一つの正孔輸送化合物を含み、後者は炭素原子にのみ結合する少なくとも一つの三価窒素原子を含み、且つ該炭素原子の少なくとも一つは芳香族環の一員である化合物と理解されている。一つの形態において、芳香族第三級アミンは、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、または重合体アリールアミンなどのアリールアミンであり得る。典型的な単量体トリアリールアミンは米国特許第3,180,730号でKlupfel et al.により説明されている。一つ以上のビニル基で置換された及び/または少なくとも一つの活性水素含有基を含む、他の適切なトリアリールアミンは米国特許第3,567,450号および第3,658,520号でBrantley et al.により開示される。
【0045】
芳香族第三級アミンのより好ましい部類は、米国特許第4,720,432号および第5,061,569号に記載されている少なくとも二つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。正孔輸送層は単一又は混合の芳香族第三級アミン化合物で形成され得る。役立つ芳香族第三級アミンの実例は下記の通りである。
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン
4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)4(quadri)フェニル
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン
N,N,N−トリ(p−トリル)アミン
4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4(ジ−p−トリルアミノ)−スチリル]スチルベン
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル
N−フェニルカルバゾール
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4’’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4’−ビス[N−フェニル−N−(2−ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミン]フルオレン
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン
【0046】
有用な正孔輸送物質の他の部類は、欧州特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物を含む。オリゴマー物質を含む二つより多いアミン基をもつ第三級芳香族アミンが用いられ得る。更に、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびPEDOT/PSSとも呼ばれるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)等の共重合体など、重合体正孔輸送物質が用いられ得る。
【0047】
発光層(LEL)
米国特許第4,769,292号および第5,935,721号でより詳しく記載されているように、有機EL要素の発光層(LEL)109は発光物質または蛍光物質を含み、電界発光はこの領域における電子正孔対の組み合わせの結果として生じる。発光層は単独の物質を含み得るが、より一般的には、単数または複数のゲスト化合物をドープされたホスト物質から成り、発光は、主としてドーパントによってもたらされ、任意の色であり得る。発光層のホスト物質は、以下に定義する電子輸送物質、上記に定義した正孔輸送物質、または他の物質もしくは正孔−電子の再結合を支持する物質の組み合わせであり得る。ドーパントは、通常、強い蛍光を発する色素から選択されるが、リン光を発する化合物、例えばWO98/55561、WO00/18851、WO00/57676、およびWO00/70655に記載される遷移金属錯体も有用である。ドーパントは通常ホスト物質に0.01から10重量%として被覆される。ポリフルオレンおよびポリビニルアリーレン(例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)、PPV)などの重合体物質はホスト物質としても使用され得る。この場合、小分子ドーパントは重合体ホストに分子拡散され得る。または該ドーパントは微量成分をホスト重合体に共重合させることにより添加され得る。
【0048】
ドーパントとして色素を選択するための重要な関係はバンドギャップ電位の比較であり、該電位は最高被占分子軌道と分子の最低非占有分子軌道のエネルギー差異として定義される。ホストからドーパント分子への効率的なエネルギー転移については、必要条件はドーパントのバンドギャップがホスト物質のそれより小さいことである。リン光放出体では、ホストのホスト三重項エネルギー・レベルがホストからドーパントへエネルギー転移できる十分な高さであることも重要である。
【0049】
使用が知られているホストおよび放出分子は、米国特許第4,768,292号;第5,141,671号;第5,150,006号;第5,151,629号;第5,405,709号;第5,484,922号;第5,593,788号;第5,645,948号;第5,683,823号;第5,755,999号;第5,928,802号;第5,935,720号;第5,935,721号;および第6,020,078号を含むが、これらに限定されない。
【0050】
8−ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体および類似誘導体は電界発光を支持できる有用なホスト化合物の一つの部類を構成する。有用なキレート・オキシノイド化合物の実例は下記の通りである。
CO−1:アルミニウム・トリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−2:マグネシウム・ビスオキシン(bisoxine)[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト]亜鉛(II)
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−□−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)
CO−5:インジウム・トリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム]
CO−6:アルミニウム・トリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−7:リチウム・オキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]
CO−8:ガリウム・オキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]
CO−9:ジルコニウム・オキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0051】
有用なホスト物質の他の部類は、アントラセンの誘導体、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンなど、米国特許第5,935,721号に記載されているそれらの誘導体、米国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、およびベンザゾール誘導体、例えば2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール]を含むが、これらに限定されない。カルバゾール誘導体はリン光放出体の特に有用なホストである。
【0052】
有用な蛍光ドーパントは、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、およびキナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウムおよびチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミン・ホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、およびカルボスチリル化合物を含むが、これらに限定されない。
【0053】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機EL要素の電子輸送層111を形成する際に用いる好ましい薄膜形成物質は、オキシン自体(一般に8−キノリノールまたは8−ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートを含む金属キレート・オキシノイド化合物である。電子の注入および輸送に役立つ該化合物は、高レベルの性能を示し、薄膜の形態で容易に製造される。実例のオキシノイド化合物は先に列挙した。
【0054】
他の電子輸送物質は、米国特許第4,356,429号に開示される種々のブタジエン誘導体および米国特許第4,539,507号に記載される種々の複素環蛍光増白剤を含む。ベンザゾールおよびトリアジンも有用な電子輸送物質である。
【0055】
陰極
発光が陽極を通してのみ見られる場合、本発明で用いられる陰極113はほぼ任意の導電材料から構成され得る。所望の材料は、優れた膜形成性質を有し、基底の有機層と良好な接触を保証し、低電圧で電子注入を促進し、ならびに良好な安定性を有する。有用な陰極物質はしばしば低仕事関数の金属(<4.0 eV)または合金を含む。一つの好ましい陰極物質はMg:Ag合金から構成され、銀の割合は、米国特許第4,885,221号に記載されるように、1から20%の範囲である。陰極物質の他の適切な部類は、より厚い導電金属層でキャップされた有機層(例えば、ETL)と接触する薄い電子注入層(EIL)を含む二層を含む。ここで、EILは低仕事関数の金属または金属塩を含むことが好ましく、その場合、より厚いキャップ層は低仕事関数を有する必要はない。このような一つの陰極は、LiFの薄層、続いて米国特許第5,677,572号に記載されるALの厚層から構成される。他の有用な陰極物質一式は、米国特許第5,059,861号、第5,059,862号、および第6,140,763号を含むが、これらに限定されない。
【0056】
発光が陰極を通して見られる場合、陰極は透明またはほぼ透明でなければならない。このような適用では、金属は薄くなければならないか、または、透明な導電酸化物もしくはこれらの物質の組み合わせを使用しなければならない。光学的に透明な陰極は、米国特許第4,885,211号、米国特許第5,247,190号、日本特許3,234,963号、米国特許第5,703,436号、米国特許第5,608,287号、米国特許第5,837,391号、米国特許第5,677,572号、米国特許第5,776,622号、米国特許第5,776,623号、米国特許第5,714,838号、米国特許第5,969,474号、米国特許第5,739,545号、米国特許第5,981,306号、米国特許第6,137,223号、米国特許第6,140,763号、米国特許第6,172,459号、欧州特許第1 076 368号、米国特許第6,278,236号、および米国特許第6,284,393号に、より詳細に記載されている。陰極物質は、通常、蒸発、スパッタリング、または化学蒸着により蒸着される。必要な場合、スルー・マスク蒸着、インテグラル・シャドー・マスキング、例えば米国特許第5,276,380号および欧州特許第0 732 868号に記載されるように、レーザー切断、および選択的化学蒸着を含むが、これらに限定されない多数の周知方法により、パターニングが実施され得る。
【0057】
他の一般的な有機層およびディスプレイ機器構成
幾つかの事例において、レーザーの109および111は、任意で、発光と電子輸送の両方を支持する機能を果たす単一層に崩壊され得る。放出ドーパントがホストとして役立ち得る正孔輸送層に添加され得ることも当分野で知られている。複数のドーパントは、例えば青色および黄色を放つ物質、シアン色および赤色を放つ物質、または赤色、緑色、および青色を放つ物質を組み合わせることにより、白色を発つOLEDを創出するために一つ以上の層に添加され得る。白色を放つディスプレイは、例えば、欧州特許第号1 187 235、米国特許第20020025419号、欧州特許第1 182 244号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,503,910号、米国特許第5,405,709号、および米国特許第5,283,182号に記載されている。
【0058】
当分野で教示される電子または正孔を遮断する層などの追加層が本発明のディスプレイで使用され得る。正孔遮断層は、一般に、例えば米国特許出願公開第20020015859号のように、リン光を発するディスプレイの効率を改善するために用いられる。
【0059】
本発明は、例えば米国特許第5,703,436号および米国特許第6,337,492号で教示されるように、いわゆる積層ディスプレイ機器構成で使用され得る。
【0060】
有機層の蒸着
上記の有機物質は、昇華などの気相方法により適切に蒸着されるが、随意の結合剤を用いて、流体から、例えば溶媒から蒸着され膜形成を改善し得る。該物質が重合体である場合、溶媒蒸着は有用であるが、スパッタリングまたはドナー・シートからの熱転写などの他の方法が用いられ得る。昇華により蒸着される物質は、例えば米国特許第6,237,529号に記載されるように、しばしばタンタル物質を含む昇華剤(sublimator)「ボート」から蒸発し得る。または、まずドナー・シート上に被覆された後、該基板に密接して昇華し得る。物質の混合物を含む層は個別の昇華剤ボートを利用し得る。または該物質は予め混合され、単独のボートまたはドナー・シートから被覆され得る。パターン化された蒸着は、シャドー・マスク、一体シャドー・マスク(米国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に定義された熱色素転写(米国特許第5,688,551号、第5,851,709号、および第6,066,357号)およびインクジェット法(米国特許第6,066,357号)を用いて達成され得る。
【0061】
被包
大半のOLEDディスプレイは湿気もしくは酸素または両者に敏感であるため、一般に、酸化アルミニウム、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、酸化アルカリ金属、酸化アルカリ土類金属、硫酸塩、またはハロゲン化金属および過塩素酸塩などの乾燥剤とともに、窒素またはアルゴンなどの不活性大気で密封される。被包および乾燥の方法は米国特許第6,226,890号に記載される方法を含むが、これに限定されない。更に、SiOx、テフロン(登録商標)、などの障壁層および交互無機/重合体層は被包用に当分野で知られている。
【0062】
光学的最適化
本発明のOLEDディスプレイは、所望ならば、その性質を強化するために様々な周知の光学的効果を利用し得る。これは最大の光透過率を得るために層の厚さの最適化を含み、誘電性鏡構造を提供し、反射電極を吸光電極と交換し、ディスプレイ上にグレア防止もしくは反射防止の被覆を提供し、ディスプレイ上に偏光媒体を提供し、またはディスプレイ上に有色の減光フィルターもしくは色温度変換フィルターを提供する。フィルター、偏光子、およびグレア防止または反射防止の被覆は具体的には該カバー上に又は該カバー下の電極保護層上に提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1a】本発明の一実施形態に従うフィードバック回路および制御回路を備えたOLED画素の回路図である。
【図1b】本発明に従う代替フィードバック回路の回路図である。
【図2】本発明に従うOLEDディスプレイの回路図である。
【図3a】本発明に従うOLEDディスプレイ用の代替フィードバック回路および制御回路の回路図である。
【図3b】本発明に従うOLEDディスプレイ用の代替フィードバック回路および制御回路の回路図である。
【図4】OLEDディスプレイの経年劣化を説明する図である。
【図5】本発明の使用法を説明するフローチャートである。
【図6】本発明で有用な先行技術のOLEDの構造を表す回路図である。
【符号の説明】
【0064】
10 OLED発光要素
12 トランジスタ
14 フィードバック信号
15 負荷抵抗器
16 制御器
20 基板
22 アレイ
23 熱電対
24 補正制御信号
26 入力信号
30 選択信号
32 選択トランジスタ
40 画素
42 シフト・レジスタ
50 入力信号段階を適用
52 測定段階
54 保存段階
56 反復段階
58 表作成段階
60 入力信号段階を適用
62 補正信号段階を形成
64 補正信号段階を適用
101 基板
103 陽極
105 正孔注入層
107 正孔輸送層
109 発光層
111 電子輸送層
113 陰極
250 電圧/電流源
260 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
a)個々のOLEDが二つの端子を有するOLEDのアレイ;
b)OLED一面の電圧を感知しOLED一面の電圧を表すフィードバック信号を生じるために対応するOLEDの端子の一つに接続された個々の回路にトランジスタを含む個々のOLEDについての電圧感知回路;ならびに
c)個々のOLEDについて補正信号を計算し、個々のOLEDを駆動するために用いられるデータに該補正信号を適用し、個々のOLEDの出力変化を補償するために該フィードバック信号に応答する制御器を含む、OLEDディスプレイ。
【請求項2】
OLEDの出力が温度で変化し、温度信号を生成するために温度感知器を更に含み、ならびに該制御器が該温度信号にも応答して該補正信号を計算する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項3】
該制御器がOLEDのそれぞれについて補正信号を有するルックアップテーブルをさらに含む、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項4】
該制御器が個々のOLED要素に関連する電圧を測定するために各OLEDを連続的に活性化する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項5】
該制御器が該補正信号を計算するために複数の異なる輝度レベルで一つ以上のOLED要素を活性化する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−514966(P2007−514966A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541611(P2006−541611)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/039168
【国際公開番号】WO2005/055186
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】