説明

経鼻内視鏡用ノーズピース

【課題】鼻漏、鼻汁等の液体の発生や、鼻出血等に容易に対応できるノーズピースを提供する。
【解決手段】経鼻内視鏡用ノーズピース1は、外鼻孔から鼻道に挿入される円筒状部材2と、一対の係止部材3a,3bと、頭部に固縛されて円筒状部材2を外鼻孔に挿入された状態で固定するベルト4とを備える。係止部材3a,3bの外鼻孔に対向する面に吸湿部材7を備える。円筒状部材2は透明でもよく、不透明でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経鼻的に挿入される経鼻内視鏡を鼻腔に挿入する際に用いられる経鼻内視鏡用ノーズピースに関する。
【背景技術】
【0002】
食道、胃、十二指腸等の上部消化器官の検査、治療に、経口内視鏡を用いることが知られている。しかし、経口内視鏡は直径が9mm前後と太いため、経口的に挿入する際に咽頭反射(嘔吐反射)を生じやすく、人によっては耐え難い苦痛を感ずることがある。
【0003】
そこで、近年、前記経口内視鏡より細径かつ柔軟に形成された経鼻内視鏡を用いることが提案されている。前記経鼻内視鏡は、被検者の鼻腔を介して上部消化器官に挿入されるので、咽喉反射が殆ど起こらず、苦痛を軽減することができる。
【0004】
前記経鼻内視鏡を挿入する経路は、2つの外鼻孔のいずれか一方から、鼻前庭を介して中鼻道または下鼻道に至り、さらに食道に達する。ここで、鼻前庭は、鼻翼と鼻中隔とに囲まれた領域であり、鼻翼は軟骨等が存在せず任意の方向に変形自在である。
【0005】
一方、前記経鼻内視鏡による検査では、該経鼻内視鏡を挿入するときに挿入方向を変えたり、検査中に施術者の姿勢を変えたりすることがある。このような場合には、前記経鼻内視鏡が鼻翼または鼻中隔を押圧したり、無理な変形を強いることにより、被検者に苦痛を与える虞がある。また、前記苦痛は、前記経鼻内視鏡の直径が細くなるほど鋭いものになる。
【0006】
そこで、前記苦痛を軽減するために、外鼻孔から鼻前庭に挿入されて、前記経鼻内視鏡から鼻翼または鼻中隔を保護するノーズピースが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
前記ノーズピースは、外鼻孔から鼻前庭の内部に至る長さの円筒状部材と、該円筒状部材の基端部から左右の側方に突出して設けられ外鼻孔の端部に係止される一対の係止部材と、左右の係止部材を接続するベルトとを備えている。前記ノーズピースは、前記ベルトを被検者の頭部に固縛することにより、前記円筒状部材が外鼻孔に挿入され、前記係止部材により外鼻孔の端部に係止された状態で固定される。そして、前記状態で、前記円筒状部材に前記経鼻内視鏡が挿通される。
【0008】
この結果、前記ノーズピースによれば、前記経鼻内視鏡が鼻翼または鼻中隔を押圧したり、無理な変形を強いることを防止して、被検者の苦痛を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−326063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、経鼻内視鏡を鼻腔内に挿入することにより、鼻腔内の粘膜が刺激されて鼻漏、鼻汁等の液体が発生したり、鼻腔内の粘膜が損傷を受けて鼻出血が起きたりしたときに、前記ノーズピースでは対応することが難しいという不都合がある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、経鼻内視鏡を鼻腔内に挿入したときに、鼻漏、鼻汁等の液体の発生や、鼻出血等に容易に対応することができる経鼻内視鏡用ノーズピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースは、外鼻孔から鼻道に挿入される円筒状部材と、該円筒状部材の基端部から側方に突出して設けられ外鼻孔の端部に係止される一対の係止部材と、両係止部材を接続すると共に頭部に固縛されて該円筒状部材を外鼻孔に挿入された状態で固定するベルトとを備える経鼻内視鏡において、該係止部材の外鼻孔に対向する面に吸湿部材を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースは、前記円筒状部材を外鼻孔から鼻道に挿入し、前記係止部材を外鼻孔の端部に係止して、前記ベルトを被検者の頭部に固縛する。この結果、前記経鼻内視鏡用ノーズピースは、前記円筒状部材が外鼻孔から鼻道に挿入され、前記係止部材により外鼻孔の端部に係止された状態で固定される。そして、前記状態で、前記経鼻内視鏡が前記円筒状部材に挿通される。
【0014】
このようにすると、鼻腔内の粘膜が刺激されて鼻漏、鼻汁等の液体が発生したり、鼻腔内の粘膜が損傷を受けて鼻出血が起きたりする。このとき、前記経鼻内視鏡用ノーズピースは、前記係止部材の外鼻孔に対向する面に備えられている吸湿部材が、該係止部材と外鼻孔の端部との間に挟持されている。
【0015】
従って、前記経鼻内視鏡用ノーズピースによれば、前記鼻漏、鼻汁等の液体や前記鼻出血による血液を、前記吸湿部材により吸収することができる。
【0016】
本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースは、鼻腔内の粘膜に対する刺激や損傷を低減するために、軟質プラスチック等の柔軟な材料から形成されることが望ましいが、この場合には鼻腔内に挿入することが難しくなることがある。そこで、本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースにおいて、前記円筒状部材は、内周側に着脱自在に装着される内筒部材を備えることが好ましい。前記経鼻内視鏡用ノーズピースは、前記円筒状部材の内周側に前記内筒部材を備えることにより、前記円筒状部材に適度の硬さを付与することができ、鼻腔内に容易に挿入することができる。
【0017】
前記内筒部材は、前記円筒状部材が外鼻孔から鼻道に挿入された後、該円筒状部材から抜去される。そして、前記内筒部材に代えて、前記経鼻内視鏡が前記円筒状部材に挿通される。
【0018】
このとき、本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースにおいて、前記円筒状部材は、透明であることが好ましい。前記円筒状部材が透明であることにより、前記経鼻内視鏡を該円筒状部材に挿通するときに、どこまで挿入されているかを映像により確認することができる。
【0019】
一方、前記円筒状部材が透明であると、前記経鼻内視鏡が該円筒状部材に挿通される際に、鼻腔内の鼻毛が映示され、被検者が不快に感じることがある。そこで、本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースにおいて、前記円筒状部材は、不透明であってもよい。前記経鼻内視鏡用ノーズピースは、前記円筒状部材が不透明であることにより、前記経鼻内視鏡が該円筒状部材に挿通される際に、鼻腔内の鼻毛が映示されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の経鼻内視鏡用ノーズピースの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の経鼻内視鏡用ノーズピース1は、円筒状部材2と、円筒状部材2の基端部から左右の側方に突出して設けられた係止部材3a,3bと、係止部材3a,3bを接続するベルト4とを備えている。
【0023】
円筒状部材2は、ポリ塩化ビニル等の軟質プラスチックからなり、外鼻孔から挿入されて鼻道に達するために十分な長さを備えている。円筒状部材2は透明であってもよく、不透明であってもよい。円筒状部材2は、例えば、外周面にシボ加工が施されることにより不透明にすることができる。また、円筒状部材2は、内周側に着脱自在に装着される内筒部材5を備え、内筒部材5により適度の硬さを付与されることにより、鼻腔内への挿入が容易になるようにされている。内筒部材5は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル等により形成されている。
【0024】
また、円筒状部材2は、先端部に先細のテーパー部6を備えており、鼻腔内への挿入がさらに容易になるようにされている。
【0025】
係止部材3a,3bは、円筒状部材2と同一の材料により円筒状部材2と一体的に形成されている。係止部材3a,3bの外鼻孔に対向する面、すなわち円筒状部材2を備える側の面には、吸湿部材としてのスポンジ7が配設されている。スポンジ7は、少なくとも円筒状部材2が挿入される方の外鼻孔を閉塞できる大きさの直方体状であり、中央部に形成された貫通孔8に円筒状部材2が挿通されている。
【0026】
ベルト4は、ポリウレタン等の軟質材料からなり、被検者の頭部に固縛される。ベルト4は、一方の端部に突起部を設けると共に他方の端部に長さ方向に沿って複数の孔部を設け、該突起部を該孔部の1つに嵌合する等それ自体公知の手段を用いて、長さを調節して固定することにより、被検者の頭部に固縛することができる。経鼻内視鏡用ノーズピース1は、ベルト4が被検者の頭部に固縛されることにより、円筒状部材2が外鼻孔から鼻道に挿入され、係止部材3a,3bにより外鼻孔の端部に係止された状態で固定される。
【0027】
次に、図1に示す経鼻内視鏡用ノーズピース1の使用方法について説明する。
【0028】
経鼻内視鏡用ノーズピース1を使用するときは、まず、円筒状部材2の内周側に内筒部材5が装着され、係止部材3a,3bの外鼻孔に対向する面にスポンジ7が配設された状態で、被検者の左右いずれかの外鼻孔から鼻腔内に円筒状部材2を挿入する。このとき、円筒状部材2は内周側に内筒部材5が装着されているので、挿入に適した硬さとなっており、また先端部には先細のテーパー部6が設けられているので、容易に鼻腔内に挿入し、その先端部を鼻道に到達させることができる。また、円筒状部材2自体は前述のようにポリ塩化ビニル等の軟質プラスチックからなるので、鼻腔内の粘膜に接触しても被検者に苦痛を与えることはない。
【0029】
次に、円筒状部材2の先端部が鼻道に到達したならば、係止部材3a,3bをスポンジ7を介して外鼻孔に押圧した状態で、ベルト4を被検者の頭部に回す。そして、経鼻内視鏡用ノーズピース1が鼻腔内に固定されるように、ベルト4の長さを調節して固定することにより、ベルト4を被検者の頭部に固縛する。
【0030】
そして、円筒状部材2から内筒部材5を抜去し、代わりに図示しない経鼻内視鏡を円筒状部材2を介して挿入し、検査または治療を開始する。
【0031】
ここで、円筒状部材2が透明であるときには、前記経鼻内視鏡を円筒状部材2に挿入するときに、どこまで挿入されているかを施術者が映像により確認することができる。
【0032】
また、経鼻内視鏡の場合は、経口内視鏡と異なって被検者は口部が自由であり、施術者と会話しながら検査または治療を受けることができ、経鼻内視鏡を円筒状部材2を介して食道等の消化器官に挿入されていく映像も見ることができる。このとき、円筒状部材2が透明であると、被検者は自己の鼻腔内の映像を見ることとなり、鼻毛等が映示された場合に不快に感じることがある。
【0033】
しかし、図1に示す経鼻内視鏡用ノーズピース1では、円筒状部材2を不透明とすることにより、被検者は鼻毛等の自己の鼻腔内の映像を見ることが無い。従って、被検者は心理的にも不快感を持つことなく、検査または治療を受けることができる。
【0034】
また、経鼻内視鏡による検査または治療では、その途中で、鼻漏、鼻汁等の液体が発生したり、鼻出血が起きたりすることがある。しかし、図1に示す経鼻内視鏡用ノーズピース1では、係止部材3a,3bと外鼻孔との間にスポンジ7が挟持されているので、前記鼻漏、鼻汁等の液体や鼻出血による血液はスポンジ7により吸収されることとなる。従って、図1に示す経鼻内視鏡用ノーズピース1によれば、前記液体や血液に対して特段の処理を要することなく、検査または治療を続けることができる。
【0035】
尚、本実施形態では、吸湿部材としてスポンジ7を用いるようにしているが、該吸湿部材は前記液体や血液を吸収できるものであればよく、スポンジ7に限定されることはない。スポンジ7以外の前記吸湿部材として、例えば、織布、不織布、紙等を挙げることができる。
【0036】
また、本実施形態では、ベルト4の長さの調節及び固定をベルト4の一方の端部に突起部を設けると共に他方の端部に長さ方向に沿って複数の孔部を設け、該突起部を該孔部の1つに嵌合するようにしているが、前記長さの調節及び固定は他の手段によるものであってもよい。前記長さの調節及び固定を行う手段として、例えば、面ファスナーにより行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…経鼻内視鏡用ノーズピース、 2…円筒状部材、 3a,3b…係止部材、 4…ベルト、 7…スポンジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外鼻孔から鼻道に挿入される円筒状部材と、該円筒状部材の基端部から側方に突出して設けられ外鼻孔の端部に係止される一対の係止部材と、両係止部材を接続すると共に頭部に固縛されて該円筒状部材を外鼻孔に挿入された状態で固定するベルトとを備える経鼻内視鏡において、該係止部材の外鼻孔に対向する面に吸湿部材を備えることを特徴とする経鼻内視鏡用ノーズピース。
【請求項2】
前記円筒状部材は、内周側に着脱自在に装着される内筒部材を備えることを特徴とする請求項1記載の経鼻内視鏡用ノーズピース。
【請求項3】
前記円筒状部材は、透明であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の経鼻内視鏡用ノーズピース。
【請求項4】
前記円筒状部材は、不透明であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の経鼻内視鏡用ノーズピース。

【図1】
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【公開番号】特開2011−142949(P2011−142949A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4110(P2010−4110)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(500557048)学校法人日本医科大学 (20)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】