説明

結合手段

本発明は、2つの物体(1,2)を結合するための結合手段であって、ワンコート式の好気性の接着剤(3)を有するものに関する。接着剤(3)によって前記2つの物体(1,2)が結合される前に、前記接着剤(3)に、調量された湿気が供給される。前記2つの物体(1,2)が互いに接着される際に湿気が混入された接着剤(3)が硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に2つの物体を固定するためのワンコート式(1回塗るだけ)の接着剤によって形成された結合手段に関する。接着剤は2つの物体の接触面間にもたらされるようになっている。
【0002】
このような形式のワンコート式、つまり1回塗るだけの接着剤は、特にポリマーをベースとした接着剤によって形成されている。このような接着剤の一般的な問題は、この接着剤が、拡散防止された(diffusionsdicht)2つの面間にもたらされ、それによってもはや周囲空気と十分に接触しないようになった時に、接着剤が硬化しなくなるか又は不十分な硬化しか得られなくなる、という点にある。
【0003】
したがって従来では、このようなワンコート式の接着剤においては、物体の少なくとも一方の接触面、つまり接着剤が塗布される方の接触面が拡散防止処理されていて、それによってこの接触面を介して接着剤と周囲空気との接触が得られるようにすることによってのみ、十分な接着作用が得られる。
【0004】
このような形式の、空気と接触することにより硬化が促進される好気性(aerober)の接着剤を、組立システムを構成するために使用することは、国際公開第03/03616号明細書により公知である。
【0005】
この組立システムは、タオル掛け、棚、照明器具等の物体を、特にタイル、大理石板等の壁の化粧仕上げを備えたスペースの壁、天井等の面に定置に取り付けるために用いられる。この組立システムは、種々異なる形式の結合手段より成っていて、好気性の接着剤としての接着及び接続手段を備えている。
【0006】
結合手段は、物体を保持するための部材を支持するために使用され、ベース体を有していて、該ベース体は、壁に向いた裏側に、切欠と、該切欠内に開口する充填開口とを有しており、この充填開口を介して、好気性の接着剤が結合部材と壁との間にもたらされるようになっている。
【0007】
結合手段は、切欠内にもたらされる接着剤によって押し退けられる空気を押し出すために、少なくとも1つの液体及び気体を通すための開口を有しており、この開口は、切欠からさらに結合手段の表面まで達していて、過剰な接着剤を収容するようになっている。
【0008】
ベース体の、壁に向いた裏側は、少なくとも部分的に液体及び気体を通すようになっていて、切欠内に存在する接着剤が硬化する際に発生するガスを漏れ出させるか、若しくは抜け出した触媒を発散させると同時に、周囲空気を接着剤に到達させ、それによって接着剤を硬化させ、結合手段を壁に、負荷に耐えられるように頑丈に固定するように配慮する。
【0009】
しかしながらこの公知の構成においては、ベース体の構造のために非常に高価な追加費用を必要とし、特に結合手段の自由な構成の妨げになる。
【0010】
本発明の課題は、2つの物体のための、頑丈でフレキシブルに使用することができ、しかも物体に対する構造的な干渉を必要としない結合手段を提供することである。
【0011】
この課題は、請求項1に記載した特徴によって解決された。有利な実施態様及び変化実施例は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明の結合手段は、2つの物体を固定するために用いられ、ワンコート式の好気性の接着剤を有していて、この接着剤によって2つの物体が結合される前に、この接着剤に、調量された湿気が供給されるようになっている。湿気が混入された接着剤は、物体が互いに接着される際に硬化される。
【0013】
この場合、結合手段という概念は、一般的に、シール機能としての接着剤の機能も含んでいる。
【0014】
液体特に水を、接着剤に調量して提供することによって、特に簡単に、2つの物体間の同品質の堅固な結合が得られる。何故ならば、接着剤は、液体を添加することによって完全に硬化するからである。水の代わりに、接着剤に、特にエマルジョン(乳濁液)状の親水性の液体を供給してもよい。
【0015】
液体が全接着剤に供給されるか又は接着剤の一部の領域にだけ供給されるかに応じて、液体添加によって生ぜしめられる接着剤の硬化が、特に表面領域で、接着剤の体積全体において行われるか又は接着剤の部分領域だけにおいて行われる。
【0016】
重要なことは、本発明による結合手段は、調量された湿気つまり液体特に水が、接着剤によって2つの物体の接触面が結合される前に、供給されるということである。湿気が多すぎると、接着剤の接着作用は機能しなくなり、これに対して湿気がすくなすぎると、接着剤の硬化は不十分になる。
【0017】
本発明の主要な利点は、湿気を添加することによって、接着剤は、物体の接触面間で、周囲の影響を受けることなしに、また物体の構造とは無関係に、同品質で繰り返し可能に硬化され、それによって物体間の堅固な結合が得られる、という点にある。
【0018】
特に、本発明による結合手段によって、拡散防止された接触面を有する物体も結合される。何故ならば、湿気を添加することによって、接着剤は内部から硬化するからである。従って周囲から湿気を供給する必要はない。
【0019】
2つの物体の少なくとも一方が拡散可能な接触面を有する2つの物体を結合する場合においても、本発明による結合手段は多くの利点を提供する。
【0020】
この場合、湿気は周囲空気から拡散可能な接触面を介して接着剤に達し、それによって硬化が開始される。周囲条件、特に温度及び空気湿度に基づいて、周囲からの湿気は、接着剤を硬化させるためには不十分なことがあるが、接着過程の直前に接着剤に供給された湿気は、繰り返し可能な高品質の硬化を保証する。しかも、接着剤が硬化するのに必要な反応時間は、本発明に従って湿気を添加することによって短縮される。
【0021】
本発明の結合手段によれば、湿気を含有する接着剤の体積反応によって、従来技術において公知のシステムにおけるように、薄い接着剤塗布による接着を実施することができるだけではなく、むしろ緊密な接着層を実現することができる。従って、接着剤を挿入することなし、接着剤を中空室、中間室、アンダカット領域等にもたらすだけで、種々異なる形状及び材料の物体を互いに結合することができる。
【0022】
本発明の特に有利な実施例によれば、湿気を供給するために、液体をしみ込ませたへらが設けられており、この場合、へらは有利には木製である。
【0023】
この場合、主要な利点は、このような木製のへらが、液体特に水を吸い込むことによって、限定的であるが繰り返し得られる同品質の湿気量を吸収することができる、という点にある。このような湿気量は、接着剤に湿気を供給するための非常に良好な調量を提供する。従って、へらによって接着剤を撹拌することによって、不慣れな作業員でも迅速、かつ簡単に接着剤に適当に調量された量の湿気を供給することができる。
【0024】
湿気の調量をコントロールして供給するためのその他の可能性は、接着剤に、液体が収容された複数のカプセルが混入されており、これらのカプセルが機械的な接触により破壊されることによって、カプセル内に収容された液体が接着剤と接触するようになっている、という点にある。
【0025】
有利な形式で、カプセルは、接着剤を撹拌するための手段によって破壊されるようになっている。
【0026】
従ってこの場合、調量された液体供給は、不慣れな作業員でも実施することができる。この場合、有利には、カプセルが、接着剤の外装又は補強部を形成している。つまり接着層の形状安定性が高められる。
【0027】
選択的に、接着剤が、湿気貯蔵手段として貯蔵粒を有しているので、この貯蔵粒を介して、調量された湿気を接着剤に供給することができる。
【0028】
また、接着剤に、1つの調量手段によって共通に湿気が供給されるようになっている。
【0029】
本発明による結合手段を形成するための、ワンコート式の好気性の接着剤として、特にポリマーをベースとした接着剤が適しており、特に有利にはシランのMSポリマーが使用される。選択的に、シラン系ポリマー又はハイブリッドポリマーをベースとした接着剤を使用してもよい。
【0030】
以下に図面を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】好気性接着剤と調量された湿気とから成る本発明による結合部材によって、2つの物体を結合する状態を示す概略的な断面図である。
【図2】接着剤に湿気を添加するための装置の概略的な斜視図である。
【図3】図3aは、湿気を添加することによって完全に硬化した接着剤層として構成された本発明による結合手段の断面した概略的な斜視図、図3bは、従来技術による、不完全に硬化された接着剤層の例を示す断面した概略的な斜視図である。
【0032】
図1は、接着剤3より成る層として構成された結合手段によって互いに堅固に結合された2つの物体を概略的に示す。
【0033】
物体1,2は、図示の実施例では接着剤層を完全に包囲しており、この場合、物体1,2の接触面は拡散防止(diffusinsdicht)されている。第1の物体1は、例えば浴室等の壁部のタイルとして使用される。第1の物体2は、中空円筒形の固定部材によって形成され、この固定部材は、結合手段によってタイルと結合され、次いで混合水栓、タオル掛け又はその他の装備品に固定することができる。
【0034】
本発明による固定手段は、ワンコート(1回塗るだけ)の好気性の接着剤3より成っており、この接着剤3が物体1,2間の中間室内に挿入される前に、この接着剤3に、調量された湿気、図示の実施例では水が調量供給されている。
【0035】
ワンコート式の好気性の接着剤3は、図示の実施例ではシランのMSポリマーより成る接着剤より形成されている。選択的に、接着剤3は、ポリマー例えばシラン系ポリマー又はハイブリッドポリマーベースとしたその他の接着剤より成っていてよい。
【0036】
図2は、ワンコート式の好気性の接着剤3に湿気を調量するための装置4の実施例を示す。この装置4は、中空円筒形の容器5を有しており、該容器5内に接着剤3が貯蔵されている。容器5は、その下側が底部によって密閉されている。容器5の開放した上側は蓋6によって閉じられており、この蓋6は容器5の開口内に回転可能に支承されている。蓋6にはスリット7が設けられている。このスリット7を通じて、図2に示されているように、木製のへら8の前端部を容器5内に挿入することができる。へら8の後端部は容器5から突き出している。
【0037】
へら8は水を含んでいる。これによってへら8内に含まれる水は、へら8を回転、上昇及び下降させることによって均一に、容器5内に配置された接着剤3に分配される。これによって、接着剤3の体積全体に亘って調量された湿気が供給される。次いで、接着剤3は、物体1,2間の中間室内にもたらされる。
【0038】
容器5からへら8を引き抜く際に、スリット7を有する蓋6は、へら8に付着した接着剤3を掻き取ることができる掻き取り器として働く。つまり、図2に示した装置4は、準備された接着剤3を接着箇所にもたらすことができる注入器としても使用することができる。
【0039】
接着剤3に隣接する、物体1,2の接触面が拡散防止されていて、外部からの湿気の供給は不可能であるにも拘わらず、接着剤3内に含まれる湿気によって、接着剤3は、物体1,2間の中間室内において完全に硬化することができる。
【0040】
図3aは、物体1,2間において体積全体が硬化した接着剤層の概略的な断面図を示す。これに対して、図3bは、物体1,2間に挿入される前に接着剤3に湿気が供給されていない、ワンコート式の好気性の接着剤3より成る、従来技術による、完全に硬化していない接着剤層を示す。図3bの従来技術においては、物体1,2によって接着剤3が包囲されているので、さらなる硬化は阻止される。
【0041】
図2に示した装置4の代わりに、接着剤3に、液体が収容された複数のカプセルを混合してもよい。この場合、複数のカプセルは機械的な接触によって破壊されるので、カプセル内に収容された液体が接着剤3と接触することになる。
【0042】
選択的に、接着剤3は、湿気貯蔵手段としての貯蔵粒を有していてもよい。
【0043】
いずれの選択的な実施例においても、有利には、接着剤層の体積全体に湿気が混入される。
【0044】
接着剤層の領域、特に接着剤層の表面領域だけに湿気を混合したい場合、最も簡単には、湿ったスポンジが調量ユニットとして使用され、この調量ユニットによって、接着剤層の表面領域だけに湿気が調量されるようになっている。
【符号の説明】
【0045】
1,2 物体、 3 好気性の接着剤、 4 接着剤3に湿気を調量するための装置、 5 容器、 6 蓋、 7 スリット、 8 へら

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの物体(1,2)を結合するための結合手段において、ワンコート式の好気性の接着剤(3)を有しており、該接着剤(3)によって前記2つの物体(1,2)が結合される前に、前記接着剤(3)に、調量された湿気が供給され、それによって前記2つの物体(1,2)が互いに接着される際に前記湿気が混入された接着剤(3)が硬化することを特徴とする、結合手段。
【請求項2】
前記接着剤(3)によって接続される前記2つの物体(1,2)の接触面が、拡散防止されている、請求項1記載の結合手段。
【請求項3】
前記接着剤(3)の体積全体に湿気が混合されている、請求項2記載の結合手段。
【請求項4】
前記接着剤(3)の体積領域及び/又は表面領域に湿気が混合されている、請求項2記載の結合手段。
【請求項5】
湿気を供給するために、液体をしみ込ませたへら(8)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の結合手段。
【請求項6】
前記へら(8)が木製である、請求項5記載の結合手段。
【請求項7】
前記接着剤(3)に、液体が収容された複数のカプセルが混入されており、これらのカプセルが機械的な接触により破壊されることによって、カプセル内に収容された液体が接着剤(3)と接触するようになっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の結合手段。
【請求項8】
前記カプセルが、前記接着剤(3)を撹拌するための手段によって破壊可能である、請求項7記載の結合手段。
【請求項9】
前記カプセルが、前記接着剤(3)の外装又は補強部を形成している、請求項7又は8記載の結合手段。
【請求項10】
前記接着剤(3)が、湿気貯蔵手段として貯蔵粒を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の結合手段。
【請求項11】
前記接着剤(3)に、1つの調量手段によって湿気が供給される、請求項1から4までのいずれか1項記載の結合手段。
【請求項12】
ワンコート式の好気性の前記接着剤(3)が、ポリマーをベースとした接着剤である、請求項1から11までのいずれか1項記載の結合手段。
【請求項13】
ワンコート式の好気性の前記接着剤(3)が、シランのMSポリマーより成る接着剤、又はシラン系ポリマーをベースとした接着剤、又はハイブリッドポリマーをベースとした接着剤より形成されている、請求項12記載の結合手段。
【請求項14】
ワンコート式の好気性の前記接着剤(3)に供給された湿気が水である、請求項1から13までのいずれか1項記載の結合手段。
【請求項15】
ワンコート式の好気性の前記接着剤(3)に供給された湿気が親水性の液体より形成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の結合手段。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2012−519763(P2012−519763A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553298(P2011−553298)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000359
【国際公開番号】WO2010/102691
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511000153)グラベーテ アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】GLABETE AG
【住所又は居所原語表記】Schweizerhofstrasse 14, CH−8750 Glarus, Switzerland
【Fターム(参考)】