説明

結晶性−アモルファス混合物を含む固体インク組成物

【課題】インクジェット印刷において、優れた画像堅牢性を示す新規固体インク組成物を提供する。
【解決手段】アモルファス要素と、結晶性材料と、場合により、着色剤とを含んだインクジェット印刷に適した固体インク組成物。いくつかの実施形態では、固体インク配合物は、コーティングされた紙基材の上に画像を作成するか、または印刷するときに、優れた堅牢性を有する固体インクを与える、アモルファス要素と結晶性要素とのブレンドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、室温では固体であり、高温では溶融し、この温度で、溶融インクを基板に塗布することを特徴とする、固体インク組成物に関する。これらの固体インク組成物は、インクジェット印刷に用いることができる。本実施形態は、アモルファス要素と、結晶性材料と、場合により、着色剤とを含む新規固体インク組成物、ならびにこの組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、転相インク(「ホットメルトインク」と呼ばれることもある)は、周囲温度では固相であるが、インクジェット印刷デバイスを操作する高い温度では液相で存在する。吐出温度で、液体インクの液滴が印刷デバイスから放出され、このインク液滴が、記録媒体の表面と直接的に、または加熱した中間転写ベルトまたはドラムを介して接触すると、インク液滴はすばやく固化し、固化したインク液滴が所定の模様を形成する。
【0003】
カラー印刷用の転相インクは、典型的には、転相インクと適合性の着色剤を組み合わせた転相インクキャリア組成物を含む。特定の実施形態では、一連の着色した転相インクは、インクキャリア組成物と、適合性の減法原色の着色剤を組み合わせることによって作ることができる。減法原色の着色した転相インクは、4成分の染料または顔料、つまり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックを含んでいてもよいが、インクは、これら4色に限定されない。これらの減法原色の着色したインクは、1種類の染料または顔料を用いるか、または染料または顔料の混合物を用いることによって作ることができる。例えば、マゼンタは、Solvent Red Dyeの混合物を用いて得ることができ、または、コンポジットブラックは、数種類の染料を混合することによって得ることができる。着色剤は、顔料を含んでいてもよい。
【0004】
転相インクは、運搬、長期間の保存時などには、室温では固相のままであるため、インクジェットプリンターに望ましい。それに加えて、液体インクジェットインクを用いた場合に、インクが蒸発する結果として起こるノズルの詰まりに関連する問題は、ほとんど排除され、そのため、インクジェット印刷の信頼性が高まる。さらに、インク液滴が最終的な記録媒体(例えば、紙、透明材料など)に直接塗布される転相インクジェットプリンターでは、液滴は、記録媒体と接触するとすぐに固化し、そのため、印刷媒体に沿ってインクが移動してしまうことが防がれ、ドットの品質が向上する。
【0005】
上記の従来の固体インクに関する技術は、一般的に、鮮明な画像を作ること、吐出を使用する際の経済性、多孔性紙に対する基板の自由度は成功しているが、このような技術は、コーティングされた基材の場合は満足いくものではない。したがって、既知の組成物およびプロセスは、その意図した目的には適しているが、コーティングされた紙基材の上に画像を作成するか、または印刷する別の手段が依然として必要である。そのため、あらゆる基材上で優れた画質を顧客に提供するための固体インク組成物および将来的な印刷技術のための代替的な組成物を見つけることが必要である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に示される実施形態によれば、コーティングされた紙基材への印刷を含め、インクジェット印刷の場合に優れた画像堅牢性を示す、結晶性要素およびアモルファス要素の混合物を含む新規固体インク組成物が提供される。
【0007】
特に、本実施形態は、少なくとも、約140℃での粘度が12cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きい結晶性要素と;少なくとも、約140℃での粘度が100cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きいアモルファス要素とを含む転相インクを提供する。
【0008】
さらなる実施形態では、約140℃での粘度が12cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きい結晶性要素と;約140℃での粘度が100cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きいアモルファス要素と;顔料、染料、またはこれらの混合物からなる群から選択される着色剤とを含む転相インクが提供される。
【0009】
さらに他の実施形態では、少なくとも、約140℃での粘度が12cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きい結晶性要素と、少なくとも、約140℃での粘度が100cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きいアモルファス要素とを含む転相インクをインクジェット印刷装置に組み込むことと;インクジェット印刷装置の中で転相インクを溶融させることと;溶融したインクの液滴を基板の上に吐出し、画像を作成することとを含む印刷方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
固体インク技術は、印刷の可能性を広げ、顧客基盤を多くの市場へと広げ、印刷用途の多様性を、印刷ヘッド技術、印刷プロセス、インク材料を有効に組み込むことによって促進するだろう。固体インク組成物は、室温(例えば、20〜27℃)で固体であり、高温では溶融し、この温度で、溶融インクを基板に塗布することを特徴とする。上述のように、現行のインクの選択肢は、多孔性紙基材の場合にはうまくいくが、これらの選択肢は、コーティングされた紙基材では、常に満足がいくとは限らない。
【0011】
固体インク配合物で結晶性要素とアモルファス要素の混合物を使用すると、堅牢性の高いインクが得られ、特に、コーティングされていない紙およびコーティングされた紙の上で堅牢性の高い画像を示す固体インクが得られることが発見された。しかし、結晶性材料またはアモルファス材料の既知の性質を考えると、このアプローチを用いることは、驚くべきことである。結晶性材料の場合、固化させると、低分子は一般的に結晶化する傾向があり、低分子量有機固体は、一般的に、結晶である。結晶性材料は、一般的に、硬度が大きく、耐久性も大きいが、このような材料は、かなり脆い性質もあわせもち、その結果、主に結晶性のインク組成物を用いて製造した印刷物は、かなり損傷しやすい。アモルファス材料の場合、高分子量アモルファス材料(例えば、ポリマー)は、高温では粘度が高く、接着性の液体となるが、高温で十分に低い粘度を示さない。その結果、このポリマーは、望ましい吐出温度(≦140℃)で印刷ヘッドノズルから吐出することができない。しかし、本実施形態では、結晶性要素とアモルファス要素のブレンドによって、堅牢性の高い固体インクを得ることができることを発見した。
【0012】
本実施形態は、(1)結晶性要素と(2)アモルファス要素とを、一般的に、それぞれ約60:40〜約95:5の重量比でブレンドしたものを含む新しい種類のインクジェット固体インク組成物を提供する。もっと特定的な実施形態では、結晶性要素とアモルファス要素との重量比は、約65:35〜約95:5、または約70:30〜約90:10である。一実施形態では、重量比は、結晶性要素およびアモルファス要素について、それぞれ70:30である。別の実施形態では、重量比は、結晶性要素およびアモルファス要素について、それぞれ80:20である。
【0013】
それぞれの要素は、固体インクに特定の特性を付与し、要素のブレンドは、コーティングされていない基材およびコーティングされた基材に対し、優れた堅牢性を示すインクを与える。インク配合物中の結晶性要素は、冷却するとすみやかに結晶化することによって転相をうながす。また、結晶性要素は、最終的なインク膜の構造を決め、アモルファス要素の粘着性を下げることによって、硬度の大きいインクが得られる。結晶性要素は、結晶化し、約140℃では、比較的低粘度であり(≦10センチポイズ(cps)、または約0.5〜約10cps、または約1〜約10cps)、室温では高濃度である(>10cps)。結晶性要素がインクの転相を決定づけているため、必要な場合(すなわち、拡散、デュプレックス印刷など)には、さらに中間印刷処理を行うため、また、コーティングされていない基材に過剰に浸透してしまうのを防ぐために、すばやく結晶化することが必要である。示差走査熱量測定(DSC)(−50から200℃、次いで−50℃へと10℃/分)によれば、望ましい結晶性要素は、鋭い結晶化ピークおよび溶融ピークを示し、このピーク間のΔTは、55℃未満である。融点は、吐出温度の上限である150℃以下でなければならず、または、好ましくは、約145〜約140℃より低くなければならない。融点は、好ましくは、65℃までの温度で放置されたときにブロッキングや印刷物の転写を防ぐために、65℃より高いか、または、もっと好ましくは、約66℃より高いか、または約67℃よりも高い。適切な結晶性材料の例を表1に示す。
【表1】

*Q1000 Differential Scanning Calorimeter(TA Instruments)を用い、−50℃から200℃、次いで−50℃まで、速度10℃/分でサンプルを測定し、中点を引用している。
**Peltier加熱プレートを取り付け、25mmの平行板を用いたRFS3歪み制御レオメーター(TA instruments)でサンプルを測定した。使用した方法は、それぞれの温度間の保持(平衡)時間120秒、1Hzの一定周波数での、5℃間隔の高温から低温への温度スイープ法であった。
【0014】
アモルファス要素は、印刷したインクに粘着性を与え、堅牢性を付与する。本実施形態では、望ましいアモルファス材料は、約140℃で比較的低粘度である(<10cps、または約1〜約100cps、または約5〜約95cps)が、室温ではきわめて高粘度である(>10cps)。140℃で粘度が低いことにより、配合物の自由度が上がり、室温で粘度が高いことによって、堅牢性を付与する。アモルファス材料は、DSC(−50から200℃、次いで−50℃まで10℃/分)によると、T(ガラス転移温度)をもつが、結晶化ピークおよび溶融ピークを示さない。T値は、典型的には、インクに望ましい靭性および可とう性を付与するために、約10〜約50℃、または約10〜約40℃、または約10〜約35℃である。選択されたアモルファス材料は、低分子量であり、例えば、1000g/mol未満、または約100〜約1000g/mol、または約200〜約1000g/mol、または約300〜約1000g/molである。ポリマーのような分子量が高めのアモルファス材料は、高温では粘性かつ接着性の液体であるが、望ましい温度で、圧電式印刷ヘッドで吐出するには粘度が高すぎる。適切なアモルファス材料の例を表2に示す。
【表2】

*Q1000 Differential Scanning Calorimeter(TA Instruments)を用い、−50℃から200℃、次いで−50℃まで、速度10℃/分でサンプルを測定し、中点を引用している。
**Peltier加熱プレートを取り付け、25mmの平行板を用いたRFS3歪み制御レオメーター(TA instruments)でサンプルを測定した。使用した方法は、それぞれの温度間の保持(平衡)時間120秒、1Hzの一定周波数での、5℃間隔の高温から低温への温度スイープ法であった。
【0015】
いくつかの実施形態では、転相インク用のインクキャリアは、例えば、示差走査熱量測定で速度を10℃/分にして決定した場合、融点が約65℃〜約150℃、例えば、約70℃〜約140℃、約75℃〜約135℃、約80℃〜約130℃、または約85℃〜約125℃であってもよい。いくつかの実施形態では、得られたインクは、融点が約65〜約140℃、または約65〜約135℃、または約70〜約130℃である。いくつかの実施形態では、得られたインクは、結晶化温度が約65〜約130℃、または約66〜約125℃、または約66〜約120℃である。さらなる実施形態では、得られたインクは、約140℃での粘度が約1〜約15cps、または約2〜約14cps、または約3〜約13cpsである。室温では、得られたインクは、粘度が約≧10cpsである。
【0016】
本実施形態のインクは、このような従来の添加剤に関連する既知の機能性を利用するために、従来の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、少なくとも1種類の酸化防止剤、消泡剤、すべり剤およびレベリング剤、清澄化剤、粘度調整剤、接着剤、可塑剤などを挙げることができる。
【0017】
インクは、場合により、画像が酸化するのを防ぐために酸化防止剤を含んでいてもよく、また、インク容器中で加熱した溶融物として存在している間にインク要素が酸化しないように保護してもよい。適切な酸化防止剤の例としては、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(IRGANOX 1098、BASFから入手可能);2,2−ビス(4−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル)プロパン(TOPANOL−205、Vertellusから入手可能);トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Aldrich);2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスホナイト(ETHANOX−398、Albermarle Corporationから入手可能);テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト(Aldrich);ペンタエリスリトールテトラステアレート(TCI America);トリブチルアンモニウム次亜リン酸塩(Aldrich);2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Aldrich);2,4−ジ−tert−ブチル−6−(4−メトキシベンジル)フェノール(Aldrich);4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール(Aldrich);4−ブロモ−3,5−ジジメチルフェノール(Aldrich);4−ブロモ−2−ニトロフェノール(Aldrich);4−(ジエチルアミノメチル)−2,5−ジメチルフェノール(Aldrich);3−ジメチルアミノフェノール(Aldrich);2−アミノ−4−tert−アミルフェノール(Aldrich);2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール(Aldrich);2,2’−メチレンジフェノール(Aldrich);5−(ジエチルアミノ)−2−ニトロソフェノール(Aldrich);2,6−ジクロロ−4−フルオロフェノール(Aldrich);2,6−ジブロモフルオロフェノール(Aldrich);α−トリフルオロ−o−クレゾール(Aldrich);2−ブロモ−4−フルオロフェノール(Aldrich);4−フルオロフェノール(Aldrich);4−クロロフェニル−2−クロロ−1,1,2−トリ−フルオロエチルスルホン(Aldrich);3,4−ジフルオロフェニル酢酸(Adrich);3−フルオロフェニル酢酸(Aldrich);3,5−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich);2−フルオロフェニル酢酸(Aldrich);2,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(Aldrich);エチル−2−(4−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェノキシ)プロピオネート(Aldrich);テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト(Aldrich);4−tert−アミルフェノール(Aldrich);3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルアルコール(Aldrich);NAUGARD 76、NAUGARD 445、NAUGARD 512、NAUGARD 524(Chemtura Corporationにより製造)など、およびこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤が存在する場合、インク中に任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、例えば、インクの約0.25重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約5重量%の量で存在していてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の転相インク組成物は、着色剤も含む。本実施形態のインクは、このように、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。固体インクは、場合により、染料または顔料のような着色剤を含有していてもよい。着色剤は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)のセットに由来してもよく、または、カスタムカラー染料または顔料または顔料混合物から得られるスポットカラーに由来してもよい。染料系着色剤は、インク基剤組成物と混和性であり、インク基剤組成物は、結晶性要素と、アモルファス要素と、任意の他の添加剤を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の転相インク組成物は、着色剤も含む。染料、顔料、これらの混合物などを含む任意の望ましい着色剤または有効な着色剤を転相インク組成物中で使用してもよいが、ただし、着色剤は、インクキャリアに溶解可能であるか、または分散可能であるものに限る。任意の染料または顔料を選択してもよいが、ただし、インクキャリアに分散可能であるか、または溶解可能であり、他のインク要素と相溶性のものに限る。転相キャリア組成物を、従来の転相インク着色剤材料、例えば、Color Index(C.I.)Solvent Dye、Disperse Dye、改質したAcid and Direct Dye、Basic Dye、Sulphur Dye、Vat Dyeなどと組み合わせて用いてもよい。適切な染料の例としては、Neozapon Red 492(BASF);Orasol Red G(Pylam Products);Direct Brilliant Pink B(Oriental Giant Dyes);Direct Red 3BL(Classic Dyestuffs);Supranol Brilliant Red 3BW(Bayer AG);Lemon Yellow 6G(United Chemie);Light Fast Yellow 3G(Shaanxi);Aizen Spilon Yellow C−GNH(保土谷化学);Bemachrome Yellow GD Sub(Classic Dyestuffs);Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant);Cibanone Yellow 2G(Classic Dyestuffs);Orasol Black RLI(BASF);Orasol Black CN(Pylam Products);Savinyl Black RLSN(Clariant);Pyrazol Black BG(Clariant);Morfast Black 101(Rohm & Haas);Diaazol Black RN(ICI);Thermoplast Blue 670(BASF);Orasol Blue GN(Pylam Products);Savinyl Blue GLS(Clariant);Luxol Fast Blue MBSN(Pylam Products);Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs);Basacid Blue 750(BASF);Keyplast Blue(Keystone Aniline Corporation);Neozapon Black X51(BASF);Classic Solvent Black 7(Classic Dyestuffs);Sudan Blue 670(C.I.61554)(BASF);Sudan Yellow 146(C.I.12700)(BASF);Sudan Red 462(C.I.26050)(BASF);C.I.Disperse Yellow 238;Neptune Red Base NB543(BASF,C.I.Solvent Red 49);Neopen Blue FF−4012(BASF);Fatsol Black BR(C.I.Solvent Black 35)(Chemische Fabriek Triade BV);Morton Morplas Magenta 36(C.I.Solvent Red 172);金属フタロシアニン着色剤などと組み合わせて使用してもよい。例えば、Milliken & CompanyからMilliken Ink Yellow 869、Milliken Ink Blue 92、Milliken Ink Red 357、Milliken Ink Yellow 1800、Milliken Ink Black 8915−67、uncut Reactint Orange X−38、uncut Reactint Blue X−17、Solvent Yellow 162、Acid Red 52、Solvent Blue 44、uncut Reactint Violet X−80として市販されている高分子染料を使用することもできる。
【0020】
また、顔料は、転相インクに適した着色剤でもある。適切な顔料の例としては、PALIOGEN Violet 5100(BASF);PALIOGEN Violet 5890(BASF);HELIOGEN Green L8730(BASF);LITHOL Scarlet D3700(BASE);SUNFAST Blue 15:4(Sun Chemical);Hostaperm Blue B2G−D(Clariant);Hostaperm Blue B4G(Clariant);Permanent Red P−F7RK;Hostaperm Violet BL(Clariant);LITHOL Scarlet 4440(BASF);Bon Red C(Dominion Color Company);ORACET Pink RF(BASF);PALIOGEN Red 3871 K(BASF);SUNFAST Blue 15:3(Sun Chemical);PALIOGEN Red 3340(BASF);SUNFAST Carbazole Violet 23(Sun Chemical);LITHOL Fast Scarlet L4300(BASF);SUNBRITE Yellow 17(Sun Chemical);HELIOGEN Blue L6900、L7020(BASF);SUNBRITE Yellow 74(Sun Chemical);SPECTRA PAC C Orange 16(Sun Chemical);HELIOGEN Blue K6902、K6910(BASF);SUNFAST Magenta 122(Sun Chemical);HELIOGEN Blue D6840、D7080(BASF);Sudan Blue OS(BASF);NEOPEN Blue FF4012(BASF);PV Fast Blue B2GO1(Clariant);IRGALITE Blue GLO(BASF);PALIOGEN Blue 6470(BASF);Sudan Orange G(Aldrich);Sudan Orange 220(BASF);PALIOGEN Orange 3040(BASF);PALIOGEN Yellow 152、1560(BASF);LITHOL Fast Yellow 0991 K(BASF);PALIOTOL Yellow 1840(BASF);NOVOPERM Yellow FGL(Clariant);Ink Jet Yellow 4G VP2532(Clariant);Toner Yellow HG(Clariant);Lumogen Yellow D0790(BASF);Suco−Yellow L1250(BASF);Suco−Yellow D1355(BASF);Suco Fast Yellow D1355、D1351(BASF);HOSTAPERM Pink E 02(Clariant);Hansa Brilliant Yellow 5GX03(Clariant);Permanent Yellow GRL 02(Clariant);Permanent Rubine L6B 05(Clariant);FANAL Pink D4830(BASF);CINQUASIA Magenta(DU PONT);PALIOGEN Black L0084(BASF);Pigment Black K801(BASF);およびカーボンブラック、例えば、REGAL 330(商標)(Cabot)、Nipex 150(Evonik)Carbon Black 5250、Carbon Black 5750(Columbia Chemical)など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
インクベース中の顔料分散物は、共力剤および分散剤によって安定化されていてもよい。一般的に、適切な顔料は、有機材料または無機物であってもよい。磁気材料に由来する顔料も、例えば、堅牢性が高いMagnetic Ink Character Recognition(MICR)インクの製造に適している。磁気材料としては、磁気ナノ粒子、例えば、強磁性ナノ粒子が挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、溶媒染料を使用する。本明細書で使用するのに適した溶媒染料の一例としては、本明細書に開示したインクキャリアと相溶性であるため、スピリット可溶性染料が挙げられる。適切なスピリット溶媒染料の例としては、Neozapon Red 492(BASF);Orasol Red G(Pylam Products);Direct Brilliant Pink B(Global Colors);Aizen Spilon Red C−BH(保土谷化学);Kayanol Red 3BL(日本化薬);Spirit Fast Yellow 3G;Aizen Spilon Yellow C−GNH(保土谷化学);Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant);Pergasol Yellow 5RA EX(Classic Dyestuffs);Orasol Black RLI(BASF);Orasol Blue GN(Pylam Products);Savinyl Black RLS(Clariant);Morfast Black 101(Rohm and Haas);Thermoplast Blue 670(BASF);Savinyl Blue GLS(Sandoz);Luxol Fast Blue MBSN(Pylam);Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs);Basacid Blue 750(BASF);Keyplast Blue(Keystone Aniline Corporation);Neozapon Black X51(C.I.Solvent Black、C.I.12195)(BASF);Sudan Blue 670(C.I.61554)(BASF);Sudan Yellow 146(C.I.12700)(BASF);Sudan Red 462(C.I.260501)(BASF)、これらの混合物などが挙げられる。
【0023】
着色剤は、転相インク中に、望ましい色または色相を得るための任意の望ましい量または有効な量で存在してもよく、例えば、インクの少なくとも約0.1重量%〜約50重量%、少なくとも約0.2重量%〜約20重量%、少なくとも約0.5重量%〜約10重量%の量で存在していてもよい。
【0024】
インク組成物は、任意の望ましい方法または適切な方法で調製することができる。例えば、インクキャリアのそれぞれの要素を一緒に混合した後、混合物を少なくとも融点まで、例えば、約60℃〜約150℃、約80℃〜約145℃、約85℃〜約140℃まで加熱してもよい。インク成分を加熱する前、またはインク成分を加熱した後に、着色剤を加えてもよい。顔料が、選択された着色剤である場合、溶融した混合物をアトライタまたはメディアミル装置で粉砕し、顔料をインクキャリアに分散させてもよい。次いで、加熱した混合物を約5秒〜約30分以上撹拌し、実質的に均質で均一な溶融物を得た後、インクを周囲温度(典型的には、約20℃〜約25℃)まで冷却する。インクは、周囲温度で固体である。インクを、直接的な印刷インクジェットプロセス用装置で使用してもよく、間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で用いてもよい。本明細書に開示した別の実施形態は、本明細書に開示したインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を記録基板の上に吐出し、画像状の模様を作成することとを含むプロセスに関する。本明細書に開示したさらなる別の実施形態は、本明細書に開示したインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を中間転写体の上に画像状の模様になるように吐出することと、この画像状の模様になったインクを中間転写体から最終的な記録基材に転写することとを含むプロセスに関する。特定の実施形態では、中間転写体を、最終的な記録シートの温度よりも高い温度で、かつ印刷装置中の溶融インクの温度よりも低い温度まで加熱する。別の特定の実施形態では、中間転写体と最終的な記録シートの両方を加熱し、この実施形態では、中間転写体と最終的な記録シートの両方を、印刷装置中の溶融インクの温度よりも低い温度まで加熱し、この実施形態では、中間転写体および最終的な記録シートの相対温度は、(1)中間転写体を、最終的な記録基材の温度よりも高く、かつ印刷装置中の溶融インクの温度よりも低い温度まで加熱するか、(2)最終的な記録基材を、中間転写体の温度よりも高く、かつ印刷装置中の溶融インクの温度よりも低い温度まで加熱するか、(3)中間転写体および最終的な記録シートをほぼ同じ温度まで加熱するような温度であってもよい。ある特定の実施形態では、印刷装置は、インク液滴が圧電振動要素の振幅によって画像状の模様になるように吐出される圧電印刷プロセスを利用する。また、本明細書に開示したインクを、他のホットメルト印刷プロセス(例えば、ホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルト熱インクジェット印刷、ホットメルト連続流式インクジェット印刷または偏向インクジェット印刷など)に利用してもよい。また、本明細書に開示した転相インクを、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに使用してもよい。
【0025】
普通紙、例えば、XEROX 4020紙、XEROX Image Series紙、Courtland 4024 DP紙、罫線付きノート紙、ボンド紙、シリカでコーティングされた紙、例えば、Sharp Companyシリカコーティング紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT紙など、光沢コーティングされた紙、例えば、XEROX Digital Color Elite Gloss、Sappi Warren Papers LUSTROGLOSS、特殊紙、例えば、Xerox DURAPAPERなど、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマー膜、無機記録媒体(例えば、金属および木材)など、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマー膜、無機基板(例えば、金属および木材)を含む、任意の適切な基板または記録シートを使用してもよい。
【0026】
本明細書に記載のインクを、以下の実施例でさらに説明する。他の意味であると示されていない限り、すべての部およびパーセントは、重量基準である。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
(固体インクの調製)
アモルファス材料および結晶性材料を合成するか、または、市販されている場合には購入した。目的の化学構造および性質を表1(結晶性要素)および表2(アモルファス要素)に示す。
【0028】
有効に吐出させるために、インク配合物は、溶融物中で均質でなければならない。したがって、アモルファス材料および結晶性材料は、溶融した要素および結晶性要素が、吐出温度で長時間放置されても相分離しないように混和性でなければならない。実験中、上述の材料を用い、結晶性要素とアモルファス要素との好ましい比率は、それぞれ約65:35〜約95:5(w/w)であったが、結晶性材料の量がこれより多くても、わずかに少なくてもよい。使用する特定の結晶性要素およびアモルファス要素に依存して、結晶性材料とアモルファス材料の比率が、それぞれ約65:35〜約95:5(w/w)の場合に最適性能が予測される。表3に示されるアモルファス要素と結晶性要素を溶融混合することによって数種類のインクを配合した。
【表3】

米国特許出願第13/095,715号(代理人整理番号20101141−390607)に記載されるように合成した
ii同時係属中の米国特許出願第13/095,555号(代理人整理番号20101094−390676)に記載されるように合成した
iii同時係属中の米国特許出願第13/095,784号(代理人整理番号20101140−390605)に記載されるように合成した
iv同時係属中の米国特許出願第13/095,795号(代理人整理番号20100868−388982)に記載されるように合成した
*Q1000 Differential Scanning Calorimeter(TA Instruments)を用い、−50℃から200℃、次いで−50℃まで、速度10℃/分でサンプルを測定し、中点を引用している。
**Peltier加熱プレートを取り付け、25mmの平行板を用いたRFS3歪み制御レオメーター(TA instruments)でサンプルを測定した。使用した方法は、それぞれの温度間の保持(平衡)時間120秒、1Hzの一定周波数での、5℃間隔の高温から低温への温度スイープ法であった。
【0029】
インクAおよびインクBは、融点(Tmelt)が140℃未満であった。さらなる実施形態では、これらのインクは、Tmeltが、約90〜140℃、または約95〜約135℃、または約100〜約130℃であった。インクAおよびインクBは、結晶化温度(Tcrys)が、65℃以上であった。さらなる実施形態では、これらのインクは、Tcrysが、約65〜100℃、または約66〜約90℃、または約66〜約85℃であった。本明細書で使用する場合、Tcrysは、化合物が結晶化するか、または再結晶化する温度を示す。
【0030】
各インクは、鋭敏な結晶化ピーク(Tcrys)および溶融ピーク(Tmelt)を示し、ΔT(Tmelt−Tcrys)は、55℃以下であった。さらなる実施形態では、ΔTは、約25〜約55℃、または約30〜約55℃、または約35〜約55℃であった。約140℃でのインクの粘度(η)は、それぞれ12cps以下であった。さらなる実施形態では、約140℃でのインクの粘度は、約1〜約12cps、または約2〜約11.5cps、または約3〜約11cpsであった。
【0031】
(印刷性能)
インクAに、Solvent Blue 101(2wt%)をさらに加え、インクAAを作成した。インクBに、Orasol Blue GN(3wt%)をさらに加え、インクBBを作成した。これらのインクをそれぞれ、改変したXerox Phaser 8860プリンタを用い、Digital Color Elite Gloss、120gsm(DCEG)およびXerox Business 4200(75gsm)紙に印刷し、堅牢性の高い画像を作成し、この画像は、基板から簡単に除去することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、約140℃での粘度が12cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きい結晶性要素と;
少なくとも、約140℃での粘度が100cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きいアモルファス要素とを含む、転相インク。
【請求項2】
前記結晶性要素およびアモルファス要素を、それぞれ約65:35〜約95:5の重量比でブレンドする、請求項1に記載の転相インク。
【請求項3】
前記結晶性要素が、
【化1】

これらの立体異性体、これらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の転相インク。
【請求項4】
前記アモルファス要素が、
【化2】

これらの立体異性体、これらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の転相インク。
【請求項5】
前記結晶性要素が、示差走査熱量測定によって結晶化ピーク(Tcrys)および溶融(Tmelt)ピークを示し、ピーク間の差(Tmelt−Tcrys)が55℃未満である、請求項1に記載の転相インク。
【請求項6】
前記結晶性要素は、融点が約65℃よりも高い、請求項1に記載の転相インク。
【請求項7】
前記アモルファス要素は、室温での粘度が少なくとも10cpsである、請求項1に記載の転相インク。
【請求項8】
前記アモルファス要素は、分子量が1000g/mol未満である、請求項1に記載の転相インク。
【請求項9】
前記アモルファス要素は、T値が約10〜約50℃である、請求項1に記載の転相インク。
【請求項10】
約140℃での粘度が12cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きい結晶性要素と、約140℃での粘度が100cps未満、室温での粘度が1×10cpsより大きいアモルファス要素とを含む転相インクをインクジェット印刷装置に組み込むことと;
インクジェット印刷装置の中で転相インクを溶融させることと;
溶融したインクの液滴を基板の上に吐出し、画像を作成することとを含む、印刷方法。

【公開番号】特開2012−233154(P2012−233154A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50601(P2012−50601)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】