説明

絞り弁

【課題】一方向と他方向とのいずれの方向に作動流体が流れる場合にも、同一の流量特性となる絞り弁を提供する。
【解決手段】作動油を給排可能な第一ポート2及び第二ポート3と、第一ポート2と第二ポート3との間を連通する連通流路5とを備え、連通流路5における作動油の流量を絞る絞り弁100であって、連通流路5は、互いに並列に接続される第一流路6及び第二流路7を備え、第一流路6に配設されて作動油の流量を絞る第一絞り部10と、第一絞り部10と同一の流量特性を有し、第一絞り部10と互い違いの向きとなるように第二流路7に配設されて作動油の流量を絞る第二絞り部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の流量を調整する絞り弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体圧機器に供給される作動流体の流量を調整するために、絞り弁が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ステッピングモータにおける出力軸の先端に形成された弁体と、流体が通過可能な弁座とを備えるネジ式電動絞り弁が開示されている。このネジ式電動絞り弁は、ステッピングモータの回転で出力軸を進退させ、弁体と弁座との間の間隔を調整することによって所望の流量特性に調整されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−22047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような弁体と弁座とを備える絞り弁では、作動流体が一方向に流れる場合の流量特性を所望の特性に調整したときに、作動流体が一方向に流れる場合と他方向に流れる場合とで、作動流体の流量特性が相違することがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、一方向と他方向とのいずれの方向に作動流体が流れる場合にも、同一の流量特性となる絞り弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作動流体を給排可能な第一ポート及び第二ポートと、前記第一ポートと前記第二ポートとの間を連通する連通流路と、を備え、前記連通流路における作動流体の流量を絞る絞り弁であって、前記連通流路は、互いに並列に接続される第一流路及び第二流路を備え、前記第一流路に配設されて作動流体の流量を絞る第一絞り部と、前記第一絞り部と同一の流量特性を有し、前記第一絞り部と互い違いの向きとなるように前記第二流路に配設されて作動流体の流量を絞る第二絞り部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、並列に接続される第一流路と第二流路とに各々設けられる第一絞り部と第二絞り部とは、互い違いの向きとなるように配設される。よって、作動流体は、一方向と他方向とのいずれの方向に流れる場合であっても、第一絞り部と第二絞り部との一方を順方向に流れ、他方を逆方向に流れることとなる。したがって、一方向と他方向とのいずれの方向に作動流体を流す場合にも、同一の流量特性とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る絞り弁の油圧回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る絞り弁の正面図である。
【図3】(a)は、図2における左側面図であり、(b)は、図2における右側面図である。
【図4】図2における底面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る絞り弁における第一絞り部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、絞り弁100の油圧回路について説明する。絞り弁100では、作動流体として作動油が用いられるが、これに限られるものではない。
【0012】
絞り弁100は、バルブボディ1と、作動油を給排可能な第一ポート2及び第二ポート3と、バルブボディ1に形成されて第一ポート2と第二ポート3との間を連通する連通流路5と、連通流路5における作動油の流量を絞る第一絞り部10と第二絞り部20とを備える。絞り弁100は、連通流路5における作動油の流量を、第一絞り部10と第二絞り部20とによって調整するものである。
【0013】
第一ポート2及び第二ポート3は、バルブボディ1に開口して形成される。第一ポート2及び第二ポート3は、配管(図示省略)を介して他の油圧機器等に接続される。これにより、第一ポート2及び第二ポート3からは、作動油が流出入可能となる。
【0014】
連通流路5は、第一ポート2と第二ポート3との間で双方向に作動油が流れる流路である。連通流路5は、互いに並列に接続される第一流路6及び第二流路7を有する。第一ポート2と第二ポート3との一方から流入した作動油は、第一流路6と第二流路7とに分岐し、再び合流して第一ポート2と第二ポート3との他方から流出する。
【0015】
第一絞り部10は、第一流路6に配設されて作動油の流量を絞るものである。第一絞り部10は、作動油の流量を調整可能な可変式の絞りである。
【0016】
第一絞り部10は、作動油が流出入するポート11aとポート11bとを有する。ポート11aは、第一ポート2と連通し、ポート11bは、第二ポート3と連通する。これにより、第一絞り部10は、第一流路6の一部を構成することとなる。
【0017】
第一絞り部10は、作動油がポート11aから流入してポート11bから流出する方向の流れ(以下、「順方向」と称する。)と、作動油がポート11bから流入してポート11aから流出する方向の流れ(以下、「逆方向」と称する。)とで、作動油の流量特性が相違するものである。
【0018】
第二絞り部20は、第二流路7に配設されて作動油の流量を絞るものである。第二絞り部20は、作動油の流量を調整可能な可変式の絞りである。
【0019】
第二絞り部20は、第一絞り部10と同一の構成であり、第一絞り部10と同一の流量特性となるように調整される。第二絞り部20は、第一絞り部10と互い違いの向きとなるように配設される。
【0020】
第二絞り部20は、作動油が流出入するポート21aとポート21bとを有する。第二絞り部20は、第一絞り部10と互い違いの向きとなるように配設されるため、ポート21bが第一ポート2と連通し、ポート21aが第二ポート3と連通する。これにより、第二絞り部20は、第二流路7の一部を構成することとなる。
【0021】
第二絞り部20は、第一絞り部10と同様に、作動油がポート21aから流入してポート21bから流出する方向の流れ(以下、「順方向」と称する。)と、作動油がポート21bから流入してポート21aから流出する方向の流れ(以下、「逆方向」と称する。)とで、作動油の流量特性が相違するものである。
【0022】
第二絞り部20は、第一絞り部10と同一の構成であるため、第二絞り部20を作動油が順方向に流れるときと、第一絞り部10を作動油が順方向に流れるときとの流量特性は同一である。同様に、第二絞り部20を作動油が逆方向に流れるときと、第一絞り部10を作動油が逆方向に流れるときとの流量特性は同一である。
【0023】
次に、図2から図4を参照して、絞り弁100の構成について説明する。
【0024】
バルブボディ1は、直方体状に形成される。バルブボディ1には、第一ポート2と第二ポート3とが開口し、第一絞り部10と第二絞り部20が内蔵される。
【0025】
第一ポート2と第二ポート3とは、バルブボディ1における左右の対向する面に各々形成される。第一ポート2と第二ポート3とは、バルブボディ1の面における位置が相違する。具体的には、図3(a)及び図3(b)に示すように、第一ポート2は面の中央寄りに形成されるのに対して、第二ポート3は第一ポート2と比較して面の端部寄りに形成される。これにより、作業者が第一ポート2と第二ポート3とに配管を接続するときに、誤って異なるポートに接続することが防止される。
【0026】
第一絞り部10及び第二絞り部20は、後述する調整部13がバルブボディ1から突出するようにバルブボディ1に埋め込まれる。
【0027】
第一絞り部10と第二絞り部20とは、第一ポート2と第二ポート3とが形成される左右の面の間における隣り合う二つの面に各々設けられる。第一絞り部10と第二絞り部20とは、バルブボディ1内に形成された流路(図示省略)によって並列に接続される。
【0028】
次に、図5を参照して、第一絞り部10及び第二絞り部20の構成について説明する。第二絞り部20は、第一絞り部10と同一の構成であるため、ここでは第一絞り部10のみについて説明する。
【0029】
第一絞り部10は、本体部11と、本体部11に対して進退可能に設けられるシャフト12と、シャフト12の先端に形成される弁体14と、弁体14との間に作動油の流路が形成されて当該流路がシャフト12の進退に応じて拡縮する弁座部15とを備える。
【0030】
本体部11は、直方体状に形成される。本体部11は、バルブボディ1に内蔵され、バルブボディ1と一体に形成される。本体部11は、作動油が出入りするポート11a,11bと、シャフト12が挿通する雌ねじ11cとを備える。
【0031】
ポート11a及びポート11bは、立方体状の本体部11における同一の面に並んで開口する。これにより、ポート11aとポート11bとを連通する作動油の流路は、本体部11の内部で方向が180度転換するように形成される。
【0032】
シャフト12の外周には、雌ねじ11cと螺合する雄ねじ12cが形成される。シャフト12は、雄ねじ12cと雌ねじ11cとの螺合によって、本体部11に対して進退可能である。シャフト12は、本体部11に対する軸方向の位置を調整するための調整部13を備える。
【0033】
調整部13は、本体部11から外部に突出して設けられ、作業者が第一絞り部10の流量特性を調整するために設けられる。なお、調整部13は、図3に示すように、バルブボディ1から外部に突出して設けられる。
【0034】
調整部13は、シャフト12の端部に形成される六角ねじ13aと、締め付けられた状態でシャフト12の回転をロックするストッパナット13bとを備える。
【0035】
弁体14は、シャフト12の先端に、先端に向かって徐々に外径が小さくなるニードル状に形成される。
【0036】
弁座部15は、シャフト12と同軸に形成されシャフト12と比較して小径に形成される孔15aを有する。この孔15aに弁体14が挿入されてゆくと、ニードル状の弁体14の外径が孔15aの内径に対して徐々に大きくなって、孔15aとの間の間隔が徐々に狭くなる。よって、弁体14と孔15aとの間の間隔は、シャフト12の挿入量に応じて狭くなる。
【0037】
そして、そのまま弁体14が挿入されると、シャフト12が孔15aに当接し、弁体14は弁座部15に着座することとなる。シャフト12の外径は孔15aの内径と比較して大径であるため、シャフト12が孔15aに当接すると流路が完全に閉じられることとなる。即ち、弁体14が弁座部15に着座した状態では、作動油の流れを完全に止めることができる。よって、絞り弁100をストップ弁として用いることも可能である。
【0038】
弁体14と弁座部15とによって形成される流路では、作動油が順方向に流れる場合には、ポート11aから流入した作動油は、ニードル状の弁体14の先端から外周に向かって拡がるように流れ、ポート11bへと導かれる。一方、作動油が逆方向に流れる場合には、ポート11bから流入した作動油は、ニードル状の弁体14の外周から先端に向かって集まるように流れ、ポート11aへと導かれる。つまり、作動油が順方向に流れる場合と作動油が逆方向に流れる場合とで、作動油が流れる流路の形状が相違する。よって、第一絞り部10では、作動油が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで、作動油の流れやすさが相違し、流量特性が相違することとなる。
【0039】
以下、調整部13による流量特性の調整手順について説明する。
【0040】
まず、作業者は、スパナを用いてストッパナット13bを回転させ、ストッパナット13bを緩める。ストッパナット13bが緩んだ状態では、六角ねじ13aが回転可能である。
【0041】
次に、作業者が六角レンチを用いて六角ねじ13aを回転させると、シャフト12が進退することとなる。これにより、弁体14と弁座部15との間の間隔を調整して、流量特性を調整することが可能である。
【0042】
流量特性の調整が完了したら、作業者は、スパナを用いてストッパナット13bを再び回転させ、ストッパナット13bを締め付ける。これにより、シャフト12が進退不能となり、調整した流量特性のまま固定されることとなる。
【0043】
このように、ストッパナット13bが設けられることによって、シャフト12を所望の位置で固定することができる。よって、振動等によってシャフト12の位置がずれて絞りの開度が変化することが防止される。
【0044】
なお、第一絞り部10及び第二絞り部20は、上述した構成に限られるものではなく、作動油が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とにおける流量特性が相違する構成であればよい。例えば、第一絞り部10と第二絞り部20とに、薄刃オリフィス構造の絞りを用いてもよい。
【0045】
以下、主に図1を参照して、絞り弁100の作用について説明する。
【0046】
まず、第一ポート2から流入した作動油が連通流路5を通って第二ポート3から流出する場合について説明する。
【0047】
第一ポート2から流入した作動油は、第一流路6と第二流路7とに分岐し、第一絞り部10と第二絞り部20とに流入する。
【0048】
第一流路6を流れる作動油は、ポート11aから第一絞り部10に流入してポート11bから流出する。即ち、第一流路6を流れる作動油は、第一絞り部10を順方向に流れる。
【0049】
一方、第二流路7を流れる作動油は、ポート21bから第二絞り部20に流入してポート21aから流出する。即ち、第二流路7を流れる作動油は、第二絞り部20を逆方向に流れる。
【0050】
したがって、第一ポート2から絞り弁100に流入した作動油は、同一の特性に調整される第一絞り部10と第二絞り部20とのうち、第一絞り部10を順方向に流れ、第二絞り部20を逆方向に流れることとなる。
【0051】
次に、第二ポート3から流入した作動油が連通流路5を通って第一ポート2から流出する場合について説明する。
【0052】
第二ポート3から流入した作動油は、第一流路6と第二流路7とに分岐し、第一絞り部10と第二絞り部20とに流入する。
【0053】
第一流路6を流れる作動油は、ポート11bから第一絞り部10に流入してポート11aから流出する。即ち、第一流路6を流れる作動油は、第一絞り部10を逆方向に流れる。
【0054】
一方、第二流路7を流れる作動油は、ポート21aから第二絞り部20に流入してポート21bから流出する。即ち、第二流路7を流れる作動油は、第二絞り部20を順方向に流れる。
【0055】
したがって、第二ポート3から絞り弁100に流入した作動油は、同一の特性に調整される第一絞り部10と第二絞り部20とのうち、第二絞り部20を順方向に流れ、第一絞り部10を逆方向に流れることとなる。
【0056】
以上より、作動油は、連通流路5を一方向と多方向とのいずれの方向に流れる場合であっても、第一絞り部10と第二絞り部20とのうち一方を順方向に流れ、他方を逆方向に流れることとなる。
【0057】
ここで、上述したように、第一絞り部10と第二絞り部20とは同一の構成である。そのため、第一絞り部10を作動油が順方向に流れるときと、第二絞り部20を作動油が順方向に流れるときとの流量特性は同一である。同様に、第一絞り部10を作動油が逆方向に流れるときと、第二絞り部20を作動油が逆方向に流れるときとの流量特性は同一である。
【0058】
したがって、一方向と他方向とのいずれの方向に作動油が流れる場合にも、順方向の流量特性と逆方向の流量特性とを合わせた流量特性となるため、同一の流量特性とすることができる。
【0059】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0060】
並列に接続される第一流路6と第二流路7とに各々設けられる第一絞り部10と第二絞り部20とは、互い違いの向きとなるように配設される。よって、作動油は、連通流路5を一方向と多方向とのいずれの方向に流れる場合であっても、第一絞り部10と第二絞り部20との一方を順方向に流れ、他方を逆方向に流れることとなる。したがって、一方向と他方向とのいずれの方向に作動油を流す場合にも、同一の流量特性とすることができる。
【0061】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、流体圧回路において作動流体の流れを調整する流量制御弁として利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 絞り弁
1 バルブボディ
2 第一ポート
3 第二ポート
5 連通流路
6 第一流路
7 第二流路
10 第一絞り部
11 本体部
12 シャフト
13 調整部
14 弁体
15 弁座部
20 第二絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を給排可能な第一ポート及び第二ポートと、
前記第一ポートと前記第二ポートとの間を連通する連通流路と、を備え、
前記連通流路における作動流体の流量を絞る絞り弁であって、
前記連通流路は、互いに並列に接続される第一流路及び第二流路を備え、
前記第一流路に配設されて作動流体の流量を絞る第一絞り部と、
前記第一絞り部と同一の流量特性を有し、前記第一絞り部と互い違いの向きとなるように前記第二流路に配設されて作動流体の流量を絞る第二絞り部と、を備えることを特徴とする絞り弁。
【請求項2】
前記第一絞り部と前記第二絞り部とは、作動流体の流量を調整可能な可変式であることを特徴とする請求項1に記載の絞り弁。
【請求項3】
前記連通流路が形成されるバルブボディを備え、
前記第一絞り部と前記第二絞り部とは、
前記バルブボディに対して進退可能に設けられるシャフトと、
前記シャフトの先端に形成される弁体と、
前記弁体との間に作動流体の流路を形成する弁座部と、を各々備え、
前記弁体と前記弁座部との間の流路は、前記シャフトの進退に応じて拡縮することを特徴とする請求項2に記載の絞り弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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