説明

給気付塗装ブース

【課題】小型で簡単な構成でありながら、効率良く給気を行い、スプレー塗装時の塗料の飛散を抑えて塗装室内の汚れの発生を防ぐことができるとともに、被塗装物の塗装品質を向上させることができる給気付塗装ブースを提供する。
【解決手段】被塗装物Wの塗装を行う塗装室11と、塗装室の側方に設けられた排気ダクト12と、塗装室及び排気ダクトの下方に設けられ循環水を貯蔵する循環水槽13と、塗装室内に空気を供給する給気ファン14と、排気ダクト12内の空気を排出する排気ファン15とを備え、被塗装物Wの前面に設けられ、給気ファンの稼動に伴い塗装室内に供給された空気を、ガイド部材14bを介して被塗装物Wの配置位置付近を経て隙間部12aへと流下させる案内板16とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブースに関し、特に、スプレー塗装時に発生した余剰塗料を気液捕集するベンチュリー式の塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から環境汚染防止などを目的に、スプレー塗装時に発生した霧状の余剰塗料(塗料ミスト)を捕集する方法として、排気ファン等を用いて、塗装室の上方から外気を供給し、塗料ミストを含む空気流を、ブースの水面部に設けた隙間部に強制的に通過させることにより、水滴化した循環水に塗料ミストを取り込む、ベンチュリー式の給気付塗装ブースが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このベンチュリー式の塗装ブースは、塗料ミストの捕集効率が良い点と、メンテナンスが楽な点から多く採用されている。
【特許文献1】特開2000−225361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような塗装ブースの塗装室内で、塗装のためスプレーガン等の塗装機により霧化した塗料を被塗装物に向けて噴出すると、塗料が塗装機から遠ざかるにつれて外方に広がり、塗料が被塗装物のない領域を含む広範囲に飛散して、塗装室の内壁面などに付着して汚してしまったり、前記内壁面に当たってはね返り作業者や被塗装物などに付着して汚してしまうことがあった。このような事態を防ぐため、作業者や被塗装物の位置から内壁面までの距離を長く設定すると、塗装ブースの大型化を招いてしまうという問題があった。また、塗料ミストを捕集する空気流の量を増加させために排気ファンの排気量を多くすると、エネルギー消費が大となってしまう問題があった。さらに、塗料が被塗装物の表面に付着する効率(塗着効率)が低くなり、被塗装物を塗り上げるのに必要な塗料の使用量が多くなるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、小型で簡単な構成でありながら、効率良く給気を行い、スプレー塗装時の塗料の飛散を抑えて塗装室内の汚れの発生を防ぐことができるとともに、被塗装物の塗装品質を向上させることができる給気付塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するため、本発明は、被塗装物の塗装を行う塗装室と、前記塗装室の側方に設けられた排気ダクトと、前記塗装室及び前記排気ダクトの下方に設けられ、循環水を貯蔵する循環水槽と、前記塗装室内に空気を供給する給気ファンと、前記排気ダクト内の空気を排出する排気ファンとを備え、前記塗装室と前記排気ダクトは、前記排気ダクトの下端に形成された前記循環水槽の水面との間の隙間部により連通しており、前記給気ファン及び前記排気ファンの稼動に伴い、塗装時に発生する余剰塗料を含んだ空気を、前記隙間部を通過する際に前記循環水槽の循環水とともに前記排気ダクト側に吸い上げ、前記循環水と接触させて前記余剰塗料を捕集する給気付塗装ブースにおいて、前記被塗装物の前面に設けられ、前記給気ファンの稼動に伴い前記塗装室内に供給された空気を、前記被塗装物の配置位置付近を経て前記隙間部へと流下させる案内板とを備えて構成される。
【0006】
なお、本発明では、前記給気ファンの稼動に伴い前記塗装室内に供給された空気を前記案内板へ誘導するため、前記給気ファンの吐出口から前記案内板の上部に向かって張り出したガイド部材を備えていることが望ましい。
【0007】
また、本発明では、前記排気ファンの吐出通路内に設けられ、前記排気ファンの稼動に伴い排出された前記排気ダクト内の空気を受けて回転する風力ファンと、前記風力ファンの回転力を電力に変換する発電機とを備え、前記発電機により発電された電力を、前記給気ファンを駆動する電力として利用することが望ましい。
【0008】
また、本発明では、前記塗装室は、一定の温湿度に調整された空調空気を供給する空調装置を備えた作業室と繋がっており、前記給気ファンは、前記作業室及び前記塗装室の外から、前記塗装室内に供給する空気を得ることが望ましい。
【0009】
また、本発明では、前記給気ファンは、前記塗装室内に供給する空気の風速を調整するダンパを備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、本発明の給気付塗装ブースでは、スプレー塗装時に発生した余剰塗料は広く飛散していくが、この余剰塗料の広がりは、案内板を設けて発生させた被塗装物の配置位置付近を経て隙間部へと流下させる空気流により抑えることができる。このように、本発明は小型で簡単な構成の装置でありながら、飛散した余剰塗料が被塗装物以外のものに付着して汚れることを防ぐことができる。また、被塗装物に対する塗料の塗着効率が高くなって塗装品質を向上させることができ、被塗装物を塗り上げるのに必要な塗料の使用量を抑えることができる。
【0011】
なお、本発明では、前記給気ファンの稼動に伴い前記塗装室内に供給された空気を前記案内板へ誘導するため、前記給気ファンの吐出口から前記案内板の上部に向かって張り出したガイド部材を備えていることが望ましい。
【0012】
このような構成により、本発明の給気付塗装ブースでは、ガイド部材により、給気ファンから塗装室内に供給される空気を案内板の上部に誘導して、該案内板に沿って流下する空気流を確実に生み出すことができる。その結果、この空気流によって、スプレー塗装時に飛散した余剰塗料が案内板で跳ね返りを防ぐことができるため、被塗装物の配置位置から案内板までの距離を短く設定して本ブースの小型化を図ることができる。また、余剰塗料を捕集するための空気流の量を低減することができるため、排気ファンの排気量を抑制して省エネルギー化に貢献できる。
【0013】
また、本発明では、前記排気ファンの吐出通路内に設けられ、前記排気ファンの稼動に伴い排出された前記排気ダクト内の空気を受けて回転する風力ファンと、前記風力ファンの回転力を電力に変換する発電機とを備え、前記発電機により発電された電力を、前記給気ファンを駆動する電力として利用することが望ましい。
【0014】
このような構成により、本発明の給気付塗装ブースでは、排気ファンから排出された空気を利用して発電して、本ブースに係る発電コストを抑えることができる。
【0015】
また、本発明において、前記塗装室は、一定の温湿度に調整された空調空気を供給する空調装置を備えた作業室と繋がっており、前記給気ファンは、前記作業室及び前記塗装室の外から、前記塗装室内に供給する空気を得ることが望ましい。
【0016】
このような構成により、本発明の給気付塗装ブースでは、給気ファンによる給気を室内の空調空気ではなく外部から行うため、作業室内や塗装室内への余剰塗料の戻りを防ぎ、空調空気が塗料により汚染されることを防ぐことができる。その結果、空調空気の再利用が可能となりブース外への排出量を抑え、空調効率の向上を図ることができるとともに、空調空気の供給量も抑え、省エネルギーに貢献できる。さらには、作業環境を良好に保つこともできる。
【0017】
また、本発明において、前記給気ファンは、前記塗装室内に供給する空気の風速を調整するダンパを備えていることが望ましい。
【0018】
このような構成により、本発明の給気付塗装ブースでは、塗装室内への給気風速を最適に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明に係る給気付塗装ブース1を示す断面構成図である。なお、図中の実線の矢印は、後述の給気ファン14及び排気ファン15の稼動による、本ブース1内の空気の主な流れを示している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における給気付塗装ブース1は、被塗装物Wのスプレー塗装を行う塗装室11と、塗装室11の側方に設けられた排気ダクト12と、塗装室11及び排気ダクト12の下方に設けられて循環水を貯蔵する循環水槽13と、塗装室11内に空気を供給する給気ファン14と、排気ダクト12内の空気を排出する排気ファン15と、案内板16とを備えて構成される。
【0021】
塗装室11と排気ダクト12は、排気ダクト12の下端に形成された循環水槽13の水面との間の隙間部12aにより連通している。
【0022】
給気ファン14は、塗装室11及びこの塗装室11と繋がって一定の温湿度に調整した空調空気を供給する空調装置20を備えた作業室21の外から、塗装室11内に供給する空気を得ている。
【0023】
なお、給気ファン14には、ダンパ14aが設けられており、この開度を調整することによって、塗装室11内への給気風速の調整を行うことができるようになっている。
【0024】
また、給気ファン14の吐出口には、該吐出口から案内板16の上部に向かって張り出したガイド部材14bが取り付けられており、給気ファン14の稼動に伴い塗装室11内に供給された空気を案内板16へ誘導している。
【0025】
これにより、給気ファン14から塗装室11内に供給される空気を、案内板16の上部に誘導して該案内板16に沿って流下する空気流を確実に生み出し、スプレー塗装時に飛散した余剰塗料がこの案内板16で跳ね返ることを防ぐことができる。よって、被塗装物Wの配置位置から案内板16までの距離Lを短く設定することができ、ひいては塗装ブース1の小型化・簡素化を図ることができる。また、塗料ミストを捕集する空気流の量を抑えることができるため、排気ファン15の排気量を抑制し、省エネルギー化に貢献できる。
【0026】
案内板16は、被塗装物Wの前面に設けられ、給気ファン14の稼動に伴い塗装室11内に供給された空気を、被塗装物Wの配置位置付近を経て隙間部12aへと流下させるように構成されている。なお、本実施形態では、案内板16は、給気ファン14の吐出口と被塗装物Wの配置位置付近とを円弧状に結んだ形状を有している。但し、案内板16の形状は、これに限定されるものではない。
【0027】
なお、排気ファン15の吐出通路内には排気ファン15の稼動に伴い排出された排気ダクト12内の空気を受けて回転する風力ファン30と、風力ファン30の回転力を電力に変換してその電力を給気ファン14に供給する発電機31とが設けられている。さらに、本実施形態では、給気ファン14に交流で駆動するタイプのものを使用しているため、発電機31により発電された電力を直流から交流に変換するインバータ装置32と、インバータ装置32により交流に変換された電力が所定値となるように制御する制御装置33とが設けられ、制御装置33により所定値になるように制御された電力が、給気ファン14を駆動する電力として利用できるようになっている。
【0028】
上記構成の給気付塗装ブース1では、給気ファン14及び排気ファン15の稼動に伴い、被塗装物Wの塗装時に発生する余剰塗料を含んだ空気を、ガイド部材を介して、案内板16上部から被塗装物Wの配置位置付近を経て隙間部12aへと流下させ、この隙間部12aを通過する際に、循環水槽13の循環水とともに排気ダクト12側に吸い上げ、このとき循環水と接触・混合させる。そして、排気ダクト12内に設けられたエリミネータ17で余剰塗料を含んだ循環水だけが捕集され、空気だけが排気ファン15から排出される。エリミネータ17により捕集された余剰塗料を含んだ循環水は、循環水槽13に滴下して捕集され、循環水系から除去される。
【0029】
なお、余剰塗料が除去された循環水は、再利用処理を経た後に、循環水槽13にて再利用される。また、循環水槽13から除去された余剰塗料も、必要な処理を経た後に、再利用することが可能である。
【0030】
また、排気ファン15から排出された(循環水が捕集された)空気は、排気ファン15の吐出通路内に設けられた風力ファン30を回転し、この風力ファン30の回転力は発電機31により電力に変換され、(インバータ装置32及び制御装置33を経て)この発電機31で発電された電力は給気ファン14を駆動するための電力として利用することができ、発電コストを抑えることが可能である。
【0031】
以上のように、本発明の給気付塗装ブース1について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る給気付塗装ブースの断面構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 給気付塗装ブース
11 塗装室
12 排気ダクト
12a 隙間部
13 循環水槽
14 給気ファン
14a ダンパ
14b ガイド部材
15 排気ファン
16 案内板
17 エリミネータ
20 空調装置
21 作業室
30 風力ファン
31 発電機
32 インバータ装置
33 制御装置
W 被塗装物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物の塗装を行う塗装室と、
前記塗装室の側方に設けられた排気ダクトと、
前記塗装室及び前記排気ダクトの下方に設けられ、循環水を貯蔵する循環水槽と、
前記塗装室内に空気を供給する給気ファンと、
前記排気ダクト内の空気を排出する排気ファンとを備え、
前記塗装室と前記排気ダクトは、前記排気ダクトの下端に形成された前記循環水槽の水面との間の隙間部により連通しており、
前記給気ファン及び前記排気ファンの稼動に伴い、塗装時に発生する余剰塗料を含んだ空気を、前記隙間部を通過する際に前記循環水槽の循環水とともに前記排気ダクト側に吸い上げ、前記循環水と接触させて前記余剰塗料を捕集する給気付塗装ブースにおいて、
前記被塗装物の前面に設けられ、前記給気ファンの稼動に伴い前記塗装室内に供給された空気を、前記被塗装物の配置位置付近を経て前記隙間部へと流下させる案内板とを備えることを特徴とする給気付塗装ブース。
【請求項2】
前記給気ファンの稼動に伴い前記塗装室内に供給された空気を前記案内板へ誘導するため、前記給気ファンの吐出口から前記案内板の上部に向かって張り出したガイド部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の給気付き塗装ブース。
【請求項3】
前記排気ファンの吐出通路内に設けられ、前記排気ファンの稼動に伴い排出された前記排気ダクト内の空気を受けて回転する風力ファンと、
前記風力ファンの回転力を電力に変換する発電機とを備え、
前記発電機により発電された電力を、前記給気ファンを駆動する電力として利用することを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の給気付きブース。
【請求項4】
前記塗装室は、一定の温湿度に調整された空調空気を供給する空調装置を備えた作業室と繋がっており、
前記給気ファンは、前記作業室及び前記塗装室の外から、前記塗装室内に供給する空気を得ていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の給気付塗装ブース。
【請求項5】
前記給気ファンは、前記塗装室内に供給する空気の風速を調整するダンパを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の給気付塗装ブース。

【図1】
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【公開番号】特開2007−38094(P2007−38094A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223849(P2005−223849)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000116161)ワールド技研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】