説明

給湯システム

【課題】給湯待機時に給湯運転が可能な状態で待機する給湯器を2台以上にしても出湯が遅れない給湯システムを提供する。
【解決手段】並列に接続された複数の給湯器1の運転台数をシステムコントローラ2によって制御する給湯システムであって、各給湯器1が流量制御弁11と流量センサ12とを備え、給湯待機時に2台以上の給湯器1が通水可能状態で待機するものにおいて、通水可能とされた給湯器1のうち、少なくとも1台の給湯器の単位時間当たりの通水量が、給湯器の最低作動通水量未満の領域に設定された所定流量以上であり、かつ、その積算通水量Aが所定値X1になると、他の通水可能な給湯器1の通水量を減少させて一つの給湯器に通水を集中させ、当該給湯器が早期に給湯運転を開始するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は給湯システムに関し、より詳細には、複数の給湯器が並列に接続され、給湯能力に応じて給湯運転を行う給湯器の台数を制御する給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯システムでは、給湯待機時には1台の給湯器だけが流量制御弁を開いて通水可能な状態(つまり、給湯運転可能な状態)で待機し、他の給湯器は流量制御弁を閉じており、1台の給湯器では給湯能力が不足する場合に、2台目以降の給湯器の流量制御弁を開くように構成されていた(給湯器の台数制御)。
【0003】
しかし、このように給湯待機時に1台だけが流量制御弁を開いて待機する構成では、たとえば、当該給湯器の流量センサが故障するなどして通水が検知できなくなると、当該給湯器が給湯運転を行えないだけでなく、台数制御が機能しないので、2台目以降の給湯器も給湯運転を行えず、給湯システム全体が給湯不能の状態に陥ってしまうという問題がある。
【0004】
そのため、最近では、給湯待機時に給湯運転可能な状態で待機する給湯器を2台(2台以上)にすることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−40445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、給湯待機時に待機する給湯器を2台以上にする構成では以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0007】
すなわち、給湯待機時に給湯運転可能な状態で待機する給湯器を2台以上にした場合、給湯栓が開かれるなどして通水が発生したときに各給湯器に流れる通水量が分散されてしまうため、待機状態にある各給湯器の通水量が少なくなる。そのため、たとえば、待機する給湯器が2台である場合、これら給湯器の最低作動通水量(給湯器が給湯運転(燃焼運転)を開始する条件として設定されている最低通水量)がそれぞれA[L/分]であるとすると、その2倍の2A[L/分]以上の通水がなければこれら給湯器が給湯運転を開始できないので、出湯が遅れることとなり、使い勝手が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、給湯待機時に給湯運転が可能な状態で待機する給湯器を2台以上にしても出湯が遅れない給湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る給湯システムは、複数の給湯器が並列に接続されるとともに、給湯器の台数制御を行う制御部が備えられた給湯システムであって、各給湯器が通水を制御する手段と通水量を検出する手段とを備え、給湯待機時に上記制御部が2台以上の給湯器を通水可能状態に制御する給湯システムにおいて、給湯待機時に通水可能とされた給湯器のうち、1台の単位時間当たりの通水量が、給湯器の最低作動通水量未満の領域に設定された所定流量以上であり、かつ、その積算通水量が所定値に達することを条件に、上記制御部が他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする。
【0010】
この請求項1に係る給湯システムでは、給湯待機時に給湯運転可能な状態で待機する給湯器(通水可能状態にある給湯器)を2台以上にしたことによって、通水発生時にこれら給湯器に流れる通水量が分散されるので、給湯器に最低作動通水量に満たない通水(最低作動通水量未満の領域に設定された所定流量以上の通水)があるときから、その積算通水量を測定する。そして、この積算値が所定値を超えると、他の通水可能な給湯器の通水量を減少させることによって、通水を一つの給湯器(積算通水量が所定値を超えた給湯器)に集中させて、当該給湯器の通水量が早期に最低作動通水量を超えるように仕向け、当該給湯器による給湯運転が早期に開始されるようにする。これにより、給湯運転可能な状態で待機する給湯器の通水量が少ない場合でも早期に給湯運転が開始されるようになり、使い勝手の良い給湯システムを提供できる。
【0011】
本発明の請求項2に係る給湯システムは、複数の給湯器が並列に接続されるとともに、給湯器の台数制御を行う制御部が備えられた給湯システムであって、各給湯器が通水を制御する手段と通水量を検出する手段とを備え、給湯待機時に上記制御部が2台以上の給湯器を通水可能状態に制御する給湯システムにおいて、給湯待機時に通水可能とされた給湯器のうち、1台の単位時間当たりの通水量が、通水はあるが給湯器の最低作動通水量未満であり、かつ、その状態で所定時間が経過することを条件に、上記制御部が他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする。
【0012】
この請求項2に係る給湯システムでは、給湯待機時に給湯運転可能な状態で待機する給湯器(通水可能状態にある給湯器)のうちの1台に、最低作動通水量に満たない通水があるときは、その状態の経過時間を測定する。そして、この経過時間が所定時間を超えると、他の通水可能な給湯器の通水量を減少させることによって、通水を一つの給湯器(経過時間が所定時間を超えた給湯器)に集中させて、当該給湯器の通水量が早期に最低作動通水量を超えるように仕向け、当該給湯器による給湯運転が早期に開始されるようにする。これにより、給湯運転可能な状態で待機する給湯器の通水量が少ない場合でも早期に給湯運転が開始されるようになり、使い勝手の良い給湯システムを提供できる。
【0013】
本発明の請求項3に係る給湯システムは、請求項1または2に記載の給湯システムにおいて、上記通水制限制御を行う条件が成立するまでの期間に、通水可能な各給湯器における通水量の差が所定流量以上になると、上記制御部が通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする。
【0014】
すなわち、この請求項3に係る給湯システムでは、請求項1または2に係る給湯システムで通水制限制御を行う条件が成立するまでの間において、通水可能な各給湯器における通水量を比較する。そして、その差が所定流量以上になると、通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させることによって、通水量が大きい給湯器に通水を集中させて、当該給湯器の通水量が早期に最低作動通水量を超えるように仕向け、当該給湯器による給湯運転が早期に開始されるようする。これにより、請求項1または2の構成を採用した給湯システムにおいて、給湯運転可能な状態で待機する給湯器のうちの1台がゴミ噛みなどの通水を阻害する要因によって通水量が減少しているような場合に、そのような通水の阻害要因のない給湯器で早期に給湯運転を開始できるようになる。
【0015】
本発明の請求項4に係る給湯システムは、複数の給湯器を並列に接続し、給湯器の台数制御を行う制御部を備えた給湯システムであって、各給湯器が通水を制御する手段と通水量を検出する手段とを備え、給湯待機時に2台以上の給湯器を通水可能状態とする給湯システムにおいて、給湯待機時に通水可能な各給湯器の通水量の差が所定流量以上になると、制御部が通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする。
【0016】
この請求項4に係る給湯システムでは、給湯待機時に給湯運転可能な状態で待機する給湯器(通水可能状態にある給湯器)のそれぞれの通水量を比較し、通水量の差が所定流量以上になると、通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させることによって、通水量が大きい給湯器に通水を集中させて、当該給湯器の通水量が早期に最低作動通水量を超えるように仕向け、当該給湯器による給湯運転が早期に開始されるようする。これにより、たとえば、給湯運転可能な状態で待機する給湯器のうちの1台がゴミ噛みなどの通水を阻害する要因によって通水量が減少しているような場合であっても、通水の阻害要因のない給湯器で給湯運転を開始でき、早期に給湯を確保することができる。
【0017】
本発明の請求項5に係る給湯システムは、請求項1から4のいずれかに記載の給湯システムにおいて、上記通水制限制御は、当該給湯器の通水を停止させる制御であることを特徴とする。そして、この請求項6に係る給湯システムでは、上記通水制限制御による通水の停止は、給湯器に備えられる閉め切り型の流量制御弁によって行われることを特徴とする。
【0018】
この請求項5に係る給湯システムでは、請求項1から4の構成を採用する給湯システムにおいて、通水制限制御が当該給湯器の通水を停止させる制御とされるので、通水制限制御を行わない給湯器に対する通水の集中効果が高められ、当該給湯器の通水量がより早期に最低作動通水量を超えるように仕向けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、給湯待機時に通水可能状態にある給湯器を2台以上にすること(通水発生時に給湯器に流れる通水量が分散されること)による給湯運転開始の遅れを防止するために、一定の条件を満たすことを条件として、通水可能状態にある給湯器のうちの1の給湯器を残して他の通水可能な給湯器の通水量を減少させるので、通水を一つの給湯器に集中させることができ、通水が集中される給湯器は早期に最低作動通水量を超える通水を得ることができる。そのため、通水を集中させた給湯器は早期に給湯運転を開始することになり、使い勝手の良い給湯システムを提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、給湯待機時に通水可能状態にある給湯器を2台以上に設定しているので、通水可能状態にある給湯器の1台の流量センサが故障しても給湯システム全体が給湯不能に陥るのが防止される一方で、通水量が少ないときには一つの給湯器に通水を集中させて当該給湯器で給湯運転を行うので、給湯運転開始当初に運転(燃焼)する給湯器の台数を少なくでき、燃焼の繰り返しによる給湯器の消耗を抑制でき、給湯システム全体としての耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る給湯システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】同給湯システムにおけるメイン給湯器とサブ給湯器の関係を模式的に示した説明図であり、図2(a)は台数制御開始当初におけるメイン給湯器の設定の一例を示しており、図2(b)はメイン給湯器の設定の変更の一例を示しており、さらに、図2(c)はメイン給湯器の設定の変更の他の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1は、本発明に係る給湯システムの一例を示す概略構成図である。この給湯システムは、1台の給湯器では給湯能力が不足するような大量の出湯要求がある場所(たとえば、ホテルなど)に設置される主に業務用の給湯システムであって、図示のとおり、この給湯システムでは、複数(たとえば6台)の給湯器1a〜1fと、これら給湯器1a〜1fの台数制御を行うシステムコントローラ2と、給湯システムの操作装置であるリモコン3とを主要部として構成されている。
【0023】
各給湯器1a〜1fは、いずれも熱交換器10を備えた給湯装置であって、水源と連結された入水管4と、給湯栓に接続された出湯管5を共有するように並列に連結接続されている。すなわち、入水管4からの分岐配管6が各給湯器1a〜1fの熱交換器の入水側にそれぞれ接続されるとともに、熱交換器の出湯側のそれぞれが給湯配管7を介して出湯管5に接続されている。また、各給湯器1a〜1fには、システムコントローラ2からの給湯指示を受けていないときには通水を停止させることができるように閉め切り型の流量制御弁(給湯器の通水を制御する手段)11が設けられている。
【0024】
また、各給湯器1a〜1fには、それぞれ流量センサ(通水量を検出する手段)12が設けられており、各給湯器1a〜1fは、自身の流量センサ12が、給湯器が燃焼運転を開始するための条件として設定された最低流量(最低作動通水量)を超える通水を検出したときは、当該給湯器の制御部(図示せず)が当該給湯器の燃焼部(図示せず)を燃焼させて給湯運転を開始するように構成されている。
【0025】
システムコントローラ2は、給湯システムを構成する給湯器1a〜1fの台数制御を行うための制御装置であって、本実施形態では、このシステムコントローラ2は給湯器1aに内蔵されている。システムコントローラ2と各給湯器1a〜1fの制御部は互いに通信接続されており、システムコントローラ2から各給湯器1a〜1fの制御(具体的には、各給湯器1a〜1fの流量制御弁11の制御)が行えるように構成されている。なお、システムコントローラ2が内蔵される給湯器1aについては給湯器の制御部がシステムコントローラ2を兼用するように構成されてもよい。
【0026】
ここで、給湯器1a〜1fの台数制御の概要について説明する。この種の給湯システムにおける給湯器の台数制御にあたっては、システムコントローラ2は給湯運転の開始当初に最初に運転させる給湯器(メイン給湯器)を設定する。メイン給湯器は、給湯運転開始当初に給湯運転を行えるようにするために、メイン給湯器に設定された給湯器に対してはシステムコントローラ2から当該給湯器の流量制御弁11を開く旨の指令が与えられる。そのため、メイン給湯器に設定された給湯器は通水可能な状態とされ、給湯システムに接続された給湯栓が開栓されることによって通水が生じ、この通水が最低作動通水量を超えると自動的に給湯運転を開始する。
【0027】
これに対して、メイン給湯器以外の給湯器(サブ給湯器)にはシステムコントローラ2から流量制御弁11を開く旨の指令が与えられないので、当該給湯器はその流量制御弁11を全閉に保っている。そのため、サブ給湯器は、給湯栓が開栓されることによってメイン給湯器に通水が生じても燃焼部は燃焼せずに給湯運転は行われない。
【0028】
ところで、システムコントローラ2が設定するメイン給湯器は1台でもよいが、本実施形態では、メイン給湯器として2台以上(たとえば2台)の給湯器を設定するように構成されている。具体的には、図2(a)に示すように、本実施形態では、システムコントローラ2は、給湯運転の開始前に給湯器1a,1bをメイン給湯器に設定し、他の給湯器1c〜1fはサブ給湯器とする。なお、図2において「メイン1」「メイン2」はメイン給湯器を意味し、「待機」はサブ給湯器を意味する。また、その下欄に表示した「開」「全閉」は流量制御弁11の作動状況を示している。
【0029】
なお、システムコントローラ2がメイン給湯器の設定を行うのは、リモコン3の運転スイッチ(給湯システムを動作可能な状態にするスイッチ)がオンにされていることを前提に、本実施形態ではメイン給湯器を2台とするので、少なくとも正常な給湯器が2台以上あり、かつ、メイン給湯器として設定しようとする給湯器が2台とも通水を検出していない(たとえば、当該給湯器の流量<1[L/分]である)ときとされる。
【0030】
このようにして、メイン給湯器とサブ給湯器の設定が行われた状態で、給湯栓が開栓されると、まずメイン給湯器に通水が生じ、メイン給湯器による給湯運転が開始される。そして、メイン給湯器による給湯運転中に給湯流量が増加したり給湯温度が高く設定されるなどして給湯負荷が上昇し、メイン給湯器のみでは給湯負荷に応じられなくなると、システムコントローラ2は、これに応じてサブ給湯器の1台に対して流量制御弁11を開く旨の指令を与える。これにより、当該サブ給湯器にも通水が生じ、当該サブ給湯器も給湯運転を開始する。
【0031】
その後は、給湯負荷の増加に応じてシステムコントローラ2が2台目以降のサブ給湯器に対して順次流量制御弁11を開く旨の指令を与えて給湯負荷の増加に対応する。これに対して、給湯負荷が減少した場合には、これとは反対に、給湯負荷の減少に応じて、システムコントローラ2がサブ給湯器から順に流量制御弁11を閉じる旨の指令を与えて、給湯器の運転台数を順次減らす制御を行なう(給湯器の台数制御)。
【0032】
リモコン3は、給湯システムの操作を行うための操作装置であって、上記システムコントローラ2と通信接続されている。このリモコン3には、上述した運転スイッチのほか、給湯設定温度を設定するためのスイッチなどの各種操作スイッチが設けられるとともに、給湯システムの状態を確認するための表示部などが設けられている。
【0033】
次に、このように構成された給湯システムにおける給湯器の台数制御の詳細(特に、メイン給湯器の変更)について図2(b)に基づいて説明する。
【0034】
なお、以下の説明においては、給湯運転開始当初(より正確には、メイン給湯器が給湯運転を開始する前の給湯待機時)にメイン給湯器として給湯器1a,1bが設定されたものと仮定する。
【0035】
システムコントローラ2は、メイン給湯器1a,1bのいずれもが給湯運転を開始していない給湯待機状態にあるときから、メイン給湯器1a,1bの双方についての単位時間当たりの通水量を監視する。この監視は、各メイン給湯器1a,1bに備えられた流量センサ12の検出値を各給湯器1a,1bの制御部を通じてシステムコントローラ2が取得することにより行う。
【0036】
そして、メイン給湯器1a,1bのうちのいずれか少なくとも1台の給湯器において通水が発生すると、システムコントローラ2は、通水の生じた給湯器の単位時間当たりの通水量を積算し、積算通水量Aを算出する。具体的には、システムコントローラ2は、メイン給湯器1aまたは1bの単位時間当たりの通水量が、給湯器の最低作動通水量未満の領域であらかじめ設定された所定流量B(たとえば、B=1[L/分])以上になれば、給湯器に通水があると判断して積算を開始する。この積算は、メイン給湯器1aまたは1bへの通水が最低作動通水量を超えても継続されるが、積算中に通水が止まれば(たとえば、通水量<1[L/分]となれば)、積算は解除される(つまり、積算値=0にする)。
【0037】
そして、システムコントローラ2は、この積算通水量Aをあらかじめ設定された所定のしきい値(所定値)X1と比較し、積算通水量Aがこのしきい値X1以上になれば(つまり、A≧X1となれば)、この条件を満たした給湯器以外の他のメイン給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行う。たとえば、メイン給湯器1aがこの条件(A≧X1)を満たすと、他のメイン給湯器である給湯器1bに対して通水量を絞る制御(通水制限制御)を行い、条件を満たした給湯器1aに通水を集中させる。
【0038】
これにより、メイン給湯器1aの単位時間当たりの通水量が最低作動通水量に達していない場合には、当該給湯器1aの通水量が最低作動通水量を超えるように仕向けられる。つまり、メイン給湯器が2台あることによって分散されていた通水が1台のメイン給湯器1aに集中することとなり、メイン給湯器1aが速やかに給湯運転を開始できる(最低作動通水量を超える通水が得られる)ようになる。
【0039】
なお、メイン給湯器1a,1bのいずれか一方または双方で最低作動通水量が得られた場合であってもシステムコントローラ2は通水量の積算を継続しており、この場合、いずれか一方の給湯器で上記条件(A≧X1)が満たされた時点で、他のメイン給湯器の通水量を絞る制御(通水制限制御)を行う。つまり、この場合は、メイン給湯器として1台の給湯器のみを給湯運転させ、他の1台の給湯器は台数制御でシステムコントローラからの指示があるまで給湯運転を行わないようにする。たとえば、メイン給湯器1a,1bがともに最低作動通水量を超える通水を得て給湯運転を開始しても、一方のメイン給湯器1aで上記条件(A≧X1)が成立すると、他方のメイン給湯器1bは給湯運転を停止させて1台のメイン給湯器1あのみで給湯運転を行い、他方の給湯器1bはその後のシステムコントローラ2の台数制御に組み込まれ、システムコントローラ2からの指示に基づいて給湯運転を行うようにされる。
【0040】
一方、各メイン給湯器1a,1bの積算通水量Aがいずれも上記しきい値X1に満たない状態(メイン給湯器1a,1bともにA<X1の状態)にあるときは、この期間中、システムコントローラ2は、これらメイン給湯器1a,1bの通水に偏りが生じていないか(換言すれば、一方の給湯器にゴミ噛みなどの通水を阻害する要因が生じていないか)を判断する(メイン給湯器の通水偏り判定)。
【0041】
この通水偏り判定は、メイン給湯器1a,1bの単位時間当たりの通水量(または積算通水量A)を用いて行われる。具体的には、システムコントローラ2は、この判定として、メイン給湯器のうちの一方の給湯器の単位時間当たりの通水量(又はその積算通水量A)が所定のしきい値X2以上であり、かつ、他方の給湯器の単位時間当たりの通水量(又はその積算通水量A)が所定のしきい値X3未満の状態であるか(または、この状態を所定時間C以上継続するか)の判断を行い、これらの条件が満たされると、メイン給湯器の通水に偏りがあると判断して、通水量の少ない給湯器をメイン給湯器の設定から外す処理を行う。
【0042】
すなわち、この場合、システムコントローラ2は、通水量の少ないメイン給湯器(たとえば、給湯器1aとする)の流量制御弁11を閉じて給湯器1aをメイン給湯器から外して、これまでサブ給湯器としていた給湯器(たとえば、給湯器1c)を次回の給湯開始時のメイン給湯器にする。なお、上記しきい値X2,X3はX2>X3とされる(たとえば、X2=3[L/分]、X3=6[L/分]とする)。
【0043】
これにより、ゴミ噛みなどの通水阻害要因がある給湯器がメイン給湯器として設定されたまま放置されることがなくなり、通水阻害要因のある給湯器がメイン給湯器として給湯運転を行うのを回避することができる。なお、この判定に関連して、上述した通水制限制御における上記しきい値X1の値は、給湯運転を早期に開始させるために可及的に小さくすることが好ましいが、しきい値X1をあまりに小さく設定しすぎると、メイン給湯器の通水偏りの判定を行う時間的な余裕がなくなってしまうので、しきい値X1の値はこの判定が行えるように適宜設定される。
【0044】
このように、本実施形態の給湯システムでは、給湯待機時にメイン給湯器を2台以上に設定するので、メイン給湯器の1台の流量センサが故障しても給湯システム全体が給湯不能に陥るのを防止できるとともに、給湯開始当初に給湯運転を行うメイン給湯器を1台に抑制するようにシステムコントローラ2が制御を行うので、給湯運転を行わない方のメイン給湯器は燃焼による消耗が抑制され、給湯システム全体としての耐久性の向上が図られる。
【0045】
なお、本実施形態では、メイン給湯器を2台以上設定しているので、たとえば、台数制御にあたり、システムコントローラ2は、通水開始時にメイン給湯器のうちいずれか1台において最低作動通水量を超える通水が得られたときには、当該給湯器以外の他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる制御(通水制限制御)を行うように構成しておくこともできる。
【0046】
すなわち、通水開始当初に2台以上の給湯器において最低作動通水量を超える通水が得られた(検出された)場合には、少なくともメイン給湯器の流量センサ12は故障していないと判断できるので、1台の給湯器だけでは給湯能力が不足する場合を除き、メイン給湯器として1台の給湯器だけを残して他の給湯器への通水を減少させ、これによって通水を減少させた給湯器については給湯運転(燃焼運転)を行わないようにさせることもできる。この場合も、給湯運転(燃焼運転)が回避された給湯器についてはその燃焼回数(燃焼部等の消耗)が抑制されるので、給湯システム全体の耐久性の向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、各給湯器1a〜1fの流量制御弁11には締め切り型の流量制御弁を用いているので、上記通水制限制御では流量制御弁11を締め切る(全閉とする)制御を行うようにすることもできる。これによってメイン給湯器であった給湯器1bは、メイン給湯器からサブ給湯器に切り替えられる(図2(b)参照)。つまり、システムコントローラ2は、給湯器1bの流量制御弁11を全閉することによって、給湯器1bをサブ給湯器に設定して、その後の給湯器の台数制御を行う(メイン給湯器の変更)。この場合、メイン給湯器1aだけでは給湯能力が不足するときにシステムコントローラ2が給湯器1bの流量制御弁11を開くようになる。
【0048】
なお、通水制限制御で流量制御弁11を全閉とする制御を行ったことによってサブ給湯器となった給湯器1b(上記メイン給湯器の通水偏り判定によってサブ給湯器とされた給湯器も含む)については、その後の台数制御において、サブ給湯器として流量制御弁11を開く順序を他のサブ給湯器1c〜1fよりも後(好ましくは最後尾)に設定するとよい。すなわち、この場合、給湯器1bの積算通水量Aの上昇が給湯器1aよりも遅れた原因として配管内のゴミ噛みなどが考えられるので、当該給湯器1bが給湯運転を行う機会を少なくした方が給湯システム全体としての負担(給湯運転を行う給湯器の台数増加)を軽減することができる。
【0049】
実施形態2
次に、本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態に示す給湯システムは、実施形態1に示す給湯システムにおけるメイン給湯器の通水偏り判定の方法を変更したものであって、その他の点は実施形態1と共通する。したがって、構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
すなわち、この実施形態では、上述した実施形態1において給湯待機時にメイン給湯器のいずれかにおいて積算通水量A≧X1となる条件が成立するまでの期間中に、メイン給湯器として通水可能な状態にある各給湯器1a,1bの通水量の差Dをシステムコントローラ2で監視し、この偏差Dがあらかじめ定めたしきい値(所定流量)Y以上になる(つまり、D≧Yとなる)と、システムコントローラ2が、通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うように構成される。
【0051】
たとえば、メイン給湯器1bに配管のゴミ噛みなど通水を阻害する要因がある場合、この状態で給湯栓が開かれると、上述した実施形態1に示す条件(A≧X1)が成立する前であっても、通水阻害要因のないメイン給湯器1aと通水阻害要因があるメイン給湯器1bとではその通水量に差Dが生じる。本実施形態の給湯システムでは、その差Dがあらかじめ設定した所定流量Y以上になると、通水量の小さい方の給湯器1bの通水量を減少させる通水制限制御が行われるので、実施形態1における通水偏り判定と同様に、通水阻害要因のある給湯器がメイン給湯器となって給湯運転を開始することを回避することができる。
【0052】
なお、本実施形態においても、上述した実施形態1と同様に、システムコントローラ2は、通水開始時にメイン給湯器のうちいずれか1台において最低作動通水量を超える通水が得られた場合には、当該給湯器以外の他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うように構成することができる。また、給湯器1a〜1fの流量制御弁11には締め切り型の流量制御弁が用いられるので、通水制限制御では流量制御弁11を締め切るようにすることもでき、これによって、通水阻害要因のある給湯器をサブ給湯器にすることができる。そして、その際には、サブ給湯器となった給湯器1bは、その後の台数制御における流量制御弁を開く順序を他のサブ給湯器1c〜1fよりも後(好ましくは最後尾)に設定させるのがよい。
【0053】
実施形態3
次に、本発明の他の実施態様について説明する。この実施形態に示す給湯システムは、実施形態1に示す給湯システムにおける通水制限制御の実施条件を変更したものであり、その他の点は実施形態1と共通する。したがって、構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
この実施形態に示す給湯システムにおいてもシステムコントローラ2は、メイン給湯器1a,1bのいずれもが給湯運転を開始していない給湯待機状態にあるときから、メイン給湯器1a,1bの双方についての単位時間当たりの通水量を監視する。この監視も上述した実施形態1と同様に、各メイン給湯器1a,1bに備えられた流量センサ12の検出値を各給湯器1a,1bの制御部を通じてシステムコントローラ2が取得することにより行われる。
【0055】
そして、メイン給湯器1a,1bのうちのいずれか1台の給湯器において通水が発生すると、システムコントローラ2は、通水の生じた給湯器の単位時間当たりの通水量が最低作動通水量未満の状態を継続した時間(つまり、最低作動通水量に満たない通水の経過時間)Eを測定する。なお、この計測中に通水が止まれば(たとえば、通水量<1[L/分]となれば)、経過時間Eの計測は解除される(つまり、経過時間E=0にする)。また、この計測中にいずれか一方のメイン給湯器1a,1bにおいて最低作動通水量を超える通水があったときも同様に計測を解除する。
【0056】
そして、システムコントローラ2は、この経過時間Eをあらかじめ設定された所定のしきい値(所定時間)Zと比較し、経過時間Eがこのしきい値Zを超えれば(つまり、E>Zとなれば)、この条件を満たした給湯器以外の他のメイン給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行う。たとえば、メイン給湯器1bがこの条件(E>Zとの条件)を満たしたとすると、他のメイン給湯器である給湯器1aに対して通水量を絞る制御(通水制限制御)を行い、条件を満たした給湯器1bに通水を集中させて、当該給湯器1bの通水量が最低作動通水量を超えるように仕向ける。これにより、メイン給湯器が2台あることによって分散されていた通水が1台のメイン給湯器1bに集中することとなり、メイン給湯器1bが速やかに給湯運転を開始できる(最低作動通水量を超える通水が得られる)ようになる。
【0057】
なお、上記このしきい値Zは適宜設定可能である。このしきい値Zをあまりに大きく設定すると、メイン給湯器を2台としたことによる通水の分散による給湯運転開始の遅れが長期間にわたって継続することになるので、その設定に当たっては、経験値に基づいて可及的に小さく設定するのが好ましい。
【0058】
このように、本実施形態の給湯システムにおいても、実施形態1と同様に、給湯待機時にメイン給湯器を2台以上に設定するので、メイン給湯器の1台の流量センサが故障しても給湯システム全体が給湯不能に陥るのを防止できるとともに、通水量が少ないときは給湯運転を行う給湯器が1台ですむので、早期に給湯運転が開始されるとともに給湯運転を行わない方のメイン給湯器は燃焼による消耗を抑制でき、給湯システム全体としての耐久性の向上が図られる。
【0059】
そして、本実施形態においても、上述した実施形態1と同様に、システムコントローラ2は、通水開始時にメイン給湯器のうちいずれか1台において最低作動通水量を超える通水がある場合には、当該給湯器以外の他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うように構成することができる。また、給湯器1a〜1fの流量制御弁11には締め切り型の流量制御弁が用いられるので、通水制限制御では流量制御弁11を締め切るのが好ましい。そして、本実施形態でも、実施形態1または2で示したように、通水制限制御の実施条件(E>Z)が成立する前に、メイン給湯器の通水偏り判定を行うように構成することもできる。
【0060】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0061】
たとえば、上述した実施形態では、通水制限制御として流量制御弁11を締め切る(全閉とする)制御を行う場合を示したが、通水制限制御は対象となる給湯器の通水量を減少させる制御であればよく、必ずしも流量制御弁11を全閉にする制御だけに限られるものではない。
【0062】
また、上述した実施形態2では、システムコントローラ2による通水制限制御の実施条件として、実施形態1で示した積算通水量A≧所定値X1の条件に、メイン給湯器同士の通水量の偏差Dが所定流量Y以上になる(つまり、D≧Yとなる)条件を付加した場合を示したが、この(D≧Y)の条件は単独で使用することも可能である。すなわち、システムコントローラ2で、給湯待機時におけるメイン給湯器の通水量の差Dを監視し、この差Dが所定流量Y以上になると、通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うように構成することもできる。なお、この場合も、通水制限制御で流量制御弁11を締め切るようにしてよいのはもちろん、これによってサブ給湯器となった給湯器はその後の台数制御における流量制御弁を開く順序を他のサブ給湯器よりも後(好ましくは最後尾)に設定してよい。
【符号の説明】
【0063】
1a〜1f 給湯器
2 システムコントローラ(台数制御を行う制御部)
3 リモコン
4 入水管
5 出湯管
10 熱交換器
11 流量制御弁(給湯器の通水を制御する手段)
12 流量センサ(通水量を検出する手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給湯器が並列に接続されるとともに、給湯器の台数制御を行う制御部が備えられた給湯システムであって、各給湯器が通水を制御する手段と通水量を検出する手段とを備え、給湯待機時に前記制御部が2台以上の給湯器を通水可能状態に制御する給湯システムにおいて、
給湯待機時に通水可能とされた給湯器のうち、1台の単位時間当たりの通水量が、給湯器の最低作動通水量未満の領域に設定された所定流量以上であり、かつ、その積算通水量が所定値に達することを条件に、前記制御部が他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
複数の給湯器が並列に接続されるとともに、給湯器の台数制御を行う制御部が備えられた給湯システムであって、各給湯器が通水を制御する手段と通水量を検出する手段とを備え、給湯待機時に前記制御部が2台以上の給湯器を通水可能状態に制御する給湯システムにおいて、
給湯待機時に通水可能とされた給湯器のうち、1台の単位時間当たりの通水量が、通水はあるが給湯器の最低作動通水量未満であり、かつ、その状態で所定時間が経過することを条件に、前記制御部が他の通水可能な給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
前記通水制限制御を行う条件が成立するまでの期間に、通水可能な各給湯器における通水量の差が所定流量以上になると、前記制御部が通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯システム。
【請求項4】
複数の給湯器を並列に接続し、給湯器の台数制御を行う制御部を備えた給湯システムであって、各給湯器が通水を制御する手段と通水量を検出する手段とを備え、給湯待機時に2台以上の給湯器を通水可能状態とする給湯システムにおいて、
給湯待機時に通水可能な各給湯器の通水量の差が所定流量以上になると、制御部が通水量の小さい方の給湯器の通水量を減少させる通水制限制御を行うことを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
前記通水制限制御は、当該給湯器の通水を停止させる制御であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の給湯システム。
【請求項6】
前記通水制限制御による通水の停止は、給湯器に備えられる閉め切り型の流量制御弁によって行われることを特徴とする請求項5に記載の給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−158138(P2011−158138A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19105(P2010−19105)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】