説明

給湯器のリモコン

【課題】床暖房パネルの試運転を容易かつ正確に行うことができ、試運転終了後にはサーミスタ接続用の端子を他の目的に利用可能にした付加価値の高い給湯器のリモコンを提供する。
【解決手段】床暖房パネルの試運転に使用するサーミスタ103を接続するための接続端子8と、この接続端子8に接続されるサーミスタ103の抵抗値をリモコンの制御部6で読み取り可能な電気信号に変換するセンサ情報検出回路10とを備えさせ、さらに、この接続端子8にインターホン回路7を接続し、当該接続端子8に接続される音楽プレーヤからのオーディオ信号を他のリモコンに送信できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は給湯器のリモコンに関し、より詳細には、給湯設定温度などの各種設定操作を行う給湯器のリモコンに対する外部機器の接続に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床暖房パネルに暖房用の温水を供給する機能を備えた暖房機能付きの給湯器においては、床暖房パネルの設定操作は床暖房用に設けられた専用のリモコン(床暖房リモコン)によって行うように構成されている。
【0003】
このような床暖房リモコンには、床暖房パネルの設置・施工完了時に行う試運転の際に、床暖房パネルが施工された床面に載置するサーミスタの温度を読み取るための回路(サーミスタ回路)が備えられるとともに、このサーミスタ回路とサーミスタとを接続するための接続端子(接続ジャック)が設けられており、試運転を行う場合、点検者がこの接続端子にサーミスタを接続するとともに、給湯器本体に備えられた試運転開始用のスイッチ(試運転スイッチ)を操作することによって、給湯器本体が床暖房パネルに暖房用の温水供給を開始する一方、床暖房リモコンは一定時間経過後にサーミスタ回路の検出値を制御マイコンで読み込み、サーミスタでの検出温度が所定温度以上である場合に床暖房パネルは正常に施工されていると判定するように構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、このように床暖房用に専用のリモコンを設ける構成では、たとえば、台所などのように、給湯器の給湯機能の設定操作を行うリモコン(給湯器リモコン)が備えられている場所に床暖房パネルを施工する場合、当該台所の壁には床暖房リモコンと給湯器リモコンが併設されることとなり場所を取る一方で、同じ1台の給湯器から2種類(床暖房リモコン用と給湯器リモコン用)の配線を施工しなければならなくなり施工の手間が二重になるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−98008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、最近では、給湯器リモコンに床暖房パネルの設定操作機能を付加したものが提案されているが、給湯器リモコンにはサーミスタ回路やサーミスタを接続する接続端子が備えられていないため、このような給湯器リモコンを施工した場合、床暖房パネルの試運転は、給湯器本体の試運転スイッチ操作後に、点検者が、床暖房パネルが施工された床面に触れて、当該床面の温度が上昇しているか否かを体感して判断するよりほかなく、正確な判定が困難であるとともに、その手間も多大であった。特に、床暖房パネルが複数系統(たとえば、台所と居間など複数の個所に)ある場合には、その確認作業は一層困難なものとなっていた。
【0007】
出願人は、このような問題を解消するために、給湯器リモコンに、床暖房パネルの試運転のためのサーミスタ回路と当該サーミスタを接続するための接続端子を備えさせることを考えるに至ったが、かかる構成を採用することは、給湯器リモコンの製造コストの上昇を招く一方で、床暖房パネルの試運転終了後には利用されない不要な部品の追加になってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、床暖房パネルの試運転を容易かつ正確に行うことができ、かつ、試運転終了後にはサーミスタ接続用の端子を他の目的に利用可能にすることで付加価値の高い給湯器のリモコンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る給湯器のリモコンは、給湯器本体と通信接続される給湯器のリモコンにおいて、温度センサで得られる情報をリモコンの制御部で読み取り可能な信号に変換するセンサ情報検出回路と、上記センサ情報検出回路と上記温度センサとを接続するための接続端子とを備えてなり、上記接続端子に、上記制御部からの信号によって電気的な接続が通電または遮断されるオーディオ信号の入力または出力回路が接続されることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明に係る給湯器のリモコンは、給湯器の設定操作用のリモコンに、温度センサで得られる情報をリモコンの制御部で読み取り可能な信号に変換するセンサ情報検出回路と、当該センサ情報検出回路と温度センサとを接続するための接続端子とを備えているから、この接続端子に床暖房パネルの試運転に使用する温度センサを接続し、温度センサで得られる情報をセンサ情報検出回路を用いて制御部に読み込ませることにより、給湯器のリモコンで床暖房パネルの試運転の判定を行うことができる。
【0011】
また、この温度センサ接続用に設けた接続端子には、リモコンの制御部からの信号によって電気的な接続が通電または遮断されるオーディオ信号の入力または出力回路が接続されるので、たとえば、当該リモコンが給湯器本体との通信接続を利用したインターホン機能(インターホン回路)を備えている場合には、このインターホン回路をオーディオ信号の入力回路として上記接続端子に接続しておけば、当該接続端子にオーディオ機器(たとえば、ポータブルオーディオプレーヤ)を接続し再生することによって、インターホンの接続先でオーディオ機器から出力されるオーディオ信号を聴取することができるようになる。また、オーディオ信号の出力回路として、たとえば、リモコンに備えられた音声メッセージの出力回路(音声ICと音声アンプからなる回路)を接続しておけば、上記接続端子に外部スピーカ(音声アンプを含む)を接続することによって、音声メッセージを大音量で出力させることができるようになる。
【0012】
そのため、本発明に係る給湯器のリモコンでは、当該リモコンに設けた温度センサ接続用の接続端子を床暖房パネルの試運転以外の用途にも利用することができ、付加価値の高い給湯器のリモコンを提供することができる。
【0013】
そして、本発明は、その好適な実施態様として、上記制御部は、上記給湯器本体から所定の信号を受信したときには、上記オーディオ信号の入力回路および出力回路と上記接続端子との電気的な接続を遮断する制御構成を備えていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、この実施態様では、制御部が給湯器本体から所定の信号(たとえば、床暖房パネルの試運転の開始を示す信号)を受信した場合には、上記オーディオ信号の入力回路および出力回路と上記接続端子との電気的な接続が遮断されるので、接続端子にはセンサ情報検出回路だけが接続されることになるので、制御部において温度センサで得られる情報を正確に読み取ることができ、床暖房パネルの試運転の判定を的確に行うことができる。
【0015】
また、本発明は、他の好適な実施態様として、上記制御部が、上記接続端子への端子接続を検出する接続検知手段を備えていることを特徴とする。この実施態様では、制御部は、接続検知手段によって接続端子に外部機器が接続されたことを確認したうえで、センサ情報検出回路、オーディオ信号の入力回路またはオーディオ信号の出力回路のいずれかを有効にするかを選択することができるようになる。
【0016】
さらに、他の好適な実施態様として、上記センサ情報検出回路は、上記接続端子に接続されるサーミスタの抵抗値を検出する回路で構成されていることを特徴とする。そして、この場合、上記接続端子はステレオジャックで構成され、上記センサ情報検出手段は、上記ステレオジャックの右チャンネルと左チャンネルとに対応して2系統でのサーミスタ抵抗値の読み取りを行うように構成することができる。
【0017】
さらに、他の好適な実施態様として、上記オーディオ信号の入力回路は、上記給湯器本体との通信接続を利用して当該給湯器本体と通信接続された他のリモコンにオーディオ信号を送信する回路で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、給湯器のリモコンに温度センサで得られる情報をリモコンの制御部で読み取り可能な信号に変換するセンサ情報検出回路と、上記センサ情報検出回路と上記温度センサとを接続するための接続端子とが備えられるので、当該給湯器のリモコンを用いて床暖房パネルの試運転の判定を行うことができる。そのため、このリモコンに床暖房パネルの設定操作機能を備えさせることによって、施工上の手間が少なく、しかも、床暖房パネルの試運転を容易かつ正確に行える給湯器のリモコンを提供できる。
【0019】
また、上記接続端子には、リモコンの制御部からの信号によって電気的な接続が通電または遮断されるオーディオ信号の入力または出力回路が接続されるので、これらオーディオ信号の入力回路や出力回路として、インターホン回路や音声メッセージの出力回路を接続することにより、付加価値の高い給湯器のリモコンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る給湯器のリモコンを用いた給湯器システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】同給湯器のリモコンに設けられる温度センサ接続用の接続端子と、この接続端子に接続される信号の入力回路の構成の一例を示す回路図である。
【図3】同給湯器のリモコンを用いて床暖房パネルの試運転を行う場合の様子を模式的に示した説明図であり、図3(a)は床暖房パネルが1系統のときの試運転の状態を、図3(b)は床暖房パネルが2系統あるときの試運転の状態をそれぞれ示している。
【図4】同給湯器のリモコンに設けられる温度センサ接続用の接続端子に信号の出力回路を接続した構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る給湯器のリモコンは、床暖房パネルに暖房用の温水を供給する機能を備えた、いわゆる暖房機能付きの給湯器本体の遠隔操作を行うために設けられるリモコン(給湯器の各種設定操作を行うための給湯器のリモコン)に、床暖房パネルの設定操作機能を付与するとともに、床暖房パネルの設置・施工後に行う床暖房パネルの試運転において当該床暖房パネルが正常に動作しているか否かを判定するための温度センサを接続するための接続端子と、当該接続端子から入力される温度センサの情報をリモコンの制御部で読み取り可能な信号に変換する回路(センサ情報検出回路)を備えさせたものであって、床暖房パネルの試運転終了後には、上記接続端子は温度センサの接続以外の用途に利用できるようにされている。
【0022】
実施形態1
図1は、本発明に係る給湯器のリモコンを用いた給湯器システムの概略構成を示している。この図1に示す給湯器システムは、給湯器本体1に接続される複数のリモコン(図示例ではリモコン2,3の2台)のうち、一のリモコン(図示例ではリモコン2)に本発明を適用した場合を示している。
【0023】
具体的には、本発明が適用されるリモコン2は、上述したとおり、床暖房パネルの操作設定機能が付加されることから、床暖房パネルの近傍(たとえば、床暖房パネルが配設される台所や居間などの壁面)に配設される。一方、本発明が適用されない他方のリモコン3は、床暖房パネルの位置による制約は受けずに適所(たとえば、浴室など)に配設される。図1では、本発明が適用されるリモコン2に設けられる温度センサ接続用の接続端子8を利用して、この接続端子8に音楽プレーヤAを接続し、この音楽プレーヤAで再生されるオーディオ信号を、リモコン2,3同士のインターホン機能を使って他方のリモコン3の内部スピーカから外部に出力するようにしたときの構成例が示されている。
【0024】
なお、本発明に係る給湯器のリモコン2は、上述したごとく、床暖房パネルの設定操作機能と、床暖房パネルの試運転に使用する温度センサを接続するための接続端子と、当該接続端子から入力される温度センサの情報をリモコンの制御部で読み取り可能な信号に変換する回路とを付加してなる点を除けば、暖房機能付きの給湯器に用いられる公知のリモコンと構成がほぼ共通するので、公知のリモコンと構成が共通する部分の説明は本発明に関連する範囲にとどめ、以下では本発明に特徴的な部分を中心に説明する。また、給湯器本体1についても、公知の暖房機能付き給湯器と構成が共通するので、構成が共通する部分は説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に示す給湯器システムでは、給湯器本体1と各リモコン2,3はそれぞれ2芯の通信線4を介して接続される。給湯器本体1の制御部(給湯器本体の制御マイコン)5と各リモコン2,3にそれぞれ設けられるリモコンの制御部(リモコンの制御マイコン)6,6は、この通信線4を介して互いに通信接続され、給湯器本体1とリモコン2,3との間で制御情報のやり取りができるように構成されており、これによってリモコン2,3による給湯器本体1の遠隔操作ができるようにされている。
【0026】
また、これに関連して、本実施形態では、上記リモコン2の制御部6には、給湯器本体1との間で床暖房パネルの設定操作を遠隔操作するための制御プログラムと、後述する床暖房パネルの試運転を行うための制御プログラムとが記憶されるとともに、リモコン2の操作部(図示せず)には、床暖房パネルの設定操作に必要な各種操作スイッチが設けられ、リモコン2によって給湯器本体1の暖房機能(具体的には、床暖房パネル)の遠隔操作も行えるようにされている。
【0027】
また、この図1に示す給湯器システムでは、各リモコン2,3にはそれぞれインターホン回路7,7が設けられており、これらインターホン回路7,7によって上記通信線4を利用したリモコン間での通話ができるように構成されている。なお、このような給湯器のリモコン同士の通話機能(インターホン機能)は公知であるので、ここではその詳細な説明は省略するが、本実施形態では、このリモコン2,3が備えるインターホン機能を利用して、上述した音楽プレーヤAなどからのオーディオ信号の送信が行われるようになっている(詳細は後述する)。
【0028】
図2は、本発明に係る給湯器のリモコン2に設けられる温度センサ接続用の接続端子8と、この接続端子8に接続される信号の入力回路の構成例を示す回路図である。なお、この図2において、符号(a),(b)で示すのは、後述する図3(a),(b)に示す床暖房パネルPの各試運転の際に、接続端子8に対するサーミスタ103の接続状態を、図3の(a),(b)に対応させて示したものである。
【0029】
この図2に示す回路では、リモコン2に設けられる接続端子8には、温度センサ(サーミスタ)で得られる情報をリモコン2の制御部6で読み取り可能な信号に変換するセンサ情報検出回路10と、接続端子8に入力されるオーディオ信号(BGM信号)をリモコン2のインターホン回路7に入力するためのBGM回路(オーディオ信号の入力回路)11とが接続されている。
【0030】
上記接続端子8は、音楽プレーヤ(たとえば、ポータブルオーディオプレーヤ)など、オーディオ信号を出力する外部機器の信号出力用の端子(フォンプラグ)との接続が容易な形態のジャックで構成されており、本実施形態では、この接続端子8にはステレオジャック(具体的には、ステレオミニジャック)が採用されている。そして、このステレオジャックにおいて、ステレオ信号の右チャンネルと左チャンネルが入力される各端子(図において4番の端子と3番の端子)に上記センサ情報検出回路10が接続されている。
【0031】
なお、この接続端子8は、プラグ挿入口がリモコン2の筐体外部に露出するように配設される(好適には、筐体の底面にプラグ挿入口が設けられる)が、開閉蓋などでプラグ挿入口を覆うような構成を採用してもよい。
【0032】
センサ情報検出回路10は、本実施形態ではサーミスタの抵抗値を制御部6で読み取り可能な電気信号に変換する回路(サーミスタ回路)で構成されている。具体的には、このセンサ情報検出回路10は、回路電源(たとえば、DC5V)12と、トランジスタ13と、プルアップ抵抗14,15とで構成されており、上記4番の端子に接続されるサーミスタの抵抗値は、プルアップ抵抗14との分圧によって得られる電圧信号として制御部6に入力される(図中の「暖房サーミスタNo.1」参照)。同様に、上記3番の端子に接続されるサーミスタの抵抗値は、プルアップ抵抗15との分圧によって得られる電圧信号として制御部6の別の端子に入力される(図中の「暖房サーミスタNo.2」参照)。つまり、このセンサ情報検出回路10は、接続端子8の4番の端子と3番の端子に接続される2系統のサーミスタの抵抗値を、それぞれ制御部6で読み込み可能な電気信号に変換できるように構成されている。
【0033】
上記トランジスタ13は、上記プルアップ抵抗14,15に対する回路電源12の電圧印加を入り(通電)/切り(遮断)するために設けられており、このトランジスタ13の制御端子には制御部6が接続されている。すなわち、このトランジスタ13は、制御部6から与えられる信号(図中の「サーミスタ回路 ON」参照)によってオン/オフされるように構成されており、トランジスタ13をオンさせることによって接続端子8に接続されるサーミスタの抵抗値に応じた電圧信号が制御部6に与えられるようになっている。
【0034】
BGM回路11は、上記接続端子8から入力されるオーディオ信号をインターホン回路7に入力するための回路であって、このBGM回路11には、上記接続端子8とインターホン回路7との電気的な接続を入り(通電)/切り(遮断)するためのFET16が備えられている。このFET16は、その制御端子が制御部6に接続されており、制御部6から与えられる信号(図中の「BGM用FET ON」参照)によってオン/オフするように構成されており、FET16がオンすることによって接続端子8からの入力されるオーディオ信号がインターホン回路7に与えられるようになっている。
【0035】
なお、上記インターホン回路7は、音声情報をモノラル信号でやり取りするように構成されていることから、このBGM回路11は、上記接続端子8にモノラルのプラグが接続された場合には4番の端子に入力される信号をそのままインターホン回路7に入力するが、ステレオのプラグが接続された場合には4番の端子と3番の端子から入力されるステレオの信号をモノラル信号に変換して(右チャンネルの信号と左チャンネルの信号を接続点17で合成して)インターホン回路7に入力するように構成されている。
【0036】
また、上記接続端子8の2番の端子には、当該接続端子8への端子接続を検出する接続検知手段18が接続されている。すなわち、この接続検出手段18は、回路電源(たとえば、DC5V)19とプルアップ抵抗20とで構成されており、上記接続端子8にプラグが接続されると、2番の端子が1番の端子(グランド)と同じグランドレベルに落ちるので、それを制御部6で検知することによって接続端子8へのプラグの挿入を検知するように構成されている(図中の「ジャック挿入検知」参照)。
【0037】
しかして、このように構成されたリモコン2の動作について、このリモコン2を用いて床暖房パネルの試運転を行う場合と、このリモコン2に音楽プレーヤAを接続する場合とに分けてそれぞれ説明する。
【0038】
A:床暖房パネルの試運転
図3は、リモコン2を用いて床暖房パネルの試運転を行う場合の様子を模式的に示した説明図である。図3(a)は、試運転を行う床暖房パネルが1系統のときの様子を示しており、この図に示すように、床暖房パネルPの試運転には専用の試験器具100が用いられる。
【0039】
試験器具100は、床暖房パネルPが施工された床面の温度を検出するための温度センサを備えた器具であって、器具本体101と、器具本体101をリモコン2に接続するための接続コード102を主要部として構成されている。
【0040】
器具本体101の底部には温度センサとなるサーミスタ103(図2参照)が配されており、このサーミスタ103を床暖房パネルPが施工された床面に載置することで、床暖房パネルPによって加熱される床面の温度が検出できるようになっている。なお、本実施形態では、このサーミスタ103には温度の上昇に対して抵抗が減少する負特性のサーミスタが好適に使用される。また、図示のように器具本体101が箱状を呈しているのは、この器具本体101が上記サーミスタ103が床面から浮き上がるのを防止する重りの役割を果たすように構成しているからである。
【0041】
接続コード102は、サーミスタ103を上記リモコン2に接続するためのコードであって、その先端にはリモコン2の接続端子8に接続可能なプラグ104が取り付けられている。本実施形態では、上記接続端子8としてステレオミニジャックが使用されているので、このプラグ104にはモノラルまたはステレオのミニプラグが用いられる。なお、このプラグ104とサーミスタ103は、図2の(a)に示すように、サーミスタ103が接続端子8の4番端子に接続されるように結線されている。
【0042】
そして、床暖房パネルPの試運転にあたっては、まず、床暖房パネルPが施工された床面に上記試験器具100を載置した状態で、リモコン2の接続端子8に上記試験器具100のプラグ104を接続する。
【0043】
次に、給湯器本体1に電源を投入し、給湯器本体1の内部にある試運転開始用のスイッチ(試運転スイッチ)を操作する。これにより、給湯器本体1が床暖房パネルPに対して暖房用の温水供給を開始するとともに、給湯器本体1の制御部5からリモコン2に対して床暖房パネルPの試運転を開始した旨の信号(所定の信号)が送信される。
【0044】
一方、リモコン2の制御部6は、給湯器本体1の制御部5から試運転を開始した旨の信号を受信すると、床暖房パネルの試運転を行うための制御プログラムを実行するとともに、上記接続検知手段18によって接続端子8への端子接続があるか否かを判断して、端子接続がある場合には、トランジスタ13をオンさせる信号を出力し、センサ情報検出回路10を介してサーミスタ103の抵抗値の読み込みを開始する。なお、このトランジスタ13をオンさせた状態は、制御部6が試運転を終了するまで継続される。
【0045】
また、これと並行して、上記制御部6では上記試運転の制御プログラムに従って、制御部6に読み込まれるサーミスタ103の抵抗値が、あらかじめ設定された所定値(所定温度を示す抵抗値)以下になったかを判断し、抵抗値が所定値以下になれば、制御部6は床暖房パネルPが正常に動作している(施工OK)と判定して、試運転の結果が正常である旨を給湯器本体1の制御部5に対して送信し、上記試運転の制御プログラム(リモコン2側の試運転の処理)を終了する。
【0046】
これに対して、一定時間が経過してもサーミスタ103の抵抗値が所定値を超えている場合には、制御部6は床暖房パネルPが正常に動作していない(施工NG)と判定して、その旨を給湯器本体1に送信する。その際、制御部6は、上記試運転の制御プログラムに従って、試運転が正常に行われていないことを表示部(図示せず)に表示するなどの所定の処理を行う。
【0047】
給湯器本体1の制御部5は、リモコン2の制御部6から試運転の結果が正常である旨の信号を受信すると、その結果を、制御部5に設けられる所定の記憶部(たとえば、EEPROMなどの不揮発性メモリ)に記憶させるとともに、床暖房パネルPに対する温水供給を停止して、床暖房パネルPの試運転を終了する。なお、リモコン2の制御部6から試運転の結果が正常でない旨の信号を受信した場合も、給湯器本体1の制御部5は、床暖房パネルPに対する温水供給を停止し、給湯器本体1側での試運転動作を終了する。
【0048】
次に、試運転を行う床暖房パネルPが2系統ある場合を図3(b)に基づいて説明する。試運転を行う床暖房パネルPが2系統あるときは、図3(b)に示すように、各床暖房パネルP1,P2ごとにそれぞれ上記試験器具100を用いる。
【0049】
この場合、各試験器具100,100からの接続コード102,102は、1つのステレオプラグ105に統合する変換電装106を用いてリモコン2の接続端子8に接続する。この変換電装106は、図2の(b)に示すように、各試験器具100,100のサーミスタ103,103をステレオプラグ105の右チャンネルと左チャンネルとに接続させるための電装部品であって、この変換電装106を用いることにより、一方の試験器具100のサーミスタ103が接続端子8の4番端子に接続され、他方の試験器具100のサーミスタ103が接続端子8の3番端子に接続されるようになる。
【0050】
ここで、接続端子8に接続されるセンサ情報検出回路10は、上述したように、ステレオジャック4番の端子と3番の端子に接続される2系統のサーミスタの抵抗値を変換できるように構成されているので、この変換電装106を使用することによって、2系統の床暖房パネルP1,P2について、試験器具100,100の各サーミスタ103,103の抵抗値を制御部6に読み込ませることができる。
【0051】
なお、このように変換電装106を用いてリモコン2と各試験器具100,100とを接続すること以外は、上述した1系統の床暖房パネルの試運転と同じ手順で2系統の床暖房パネルP1、P2についての試運転も行われる。
【0052】
B:音楽プレーヤを使用する場合
次に、接続端子8に音楽プレーヤAを接続する場合について説明する。
リモコン2の接続端子8に音楽プレーヤAからオーディオ信号を出力するフォンプラグ(具体的には、モノラル又はステレオのミニプラグ)が接続されると、リモコン2の制御部6は、その接続を接続検知手段18で検出する。
【0053】
この接続を検出したときに、上述した床暖房パネルの試運転が行われている場合(制御部6が給湯器本体1から試運転を開始する旨の信号を受信した時点から試運転の制御プログラムを終了するまでの間の場合)には当該試運転を優先するが、試運転を行っていない場合には、上記制御部6は、接続端子8へのプラグの接続は音楽プレーヤAの接続であると判断して、接続端子8から入力される信号がインターホン回路7に入力されるように、上記FET16をオンさせる信号を出力する。その際、上記トランジスタ13をオンさせる信号を出力していれば、当該信号の出力を停止してトランジスタ13をオフにしてセンサ情報検出回路10の動作を停止させる。
【0054】
上記FET16がオンすると、上述したように、上記接続端子8とインターホン回路7とが電気的に接続されることとなるので、音楽プレーヤAから出力されるオーディオ信号がインターホン回路7を介してリモコン3に送信され、リモコン3の内部スピーカ(図示せず)を介して外部に出力される。
【0055】
そのため、たとえば、リモコン2が台所に設置されており、リモコン3が浴室に設置されているような場合には、入浴前に台所のリモコン2に音楽プレーヤAを接続してプレーヤを再生状態にすれば、浴室において当該音楽プレーヤAで再生される音楽を聴取することができるようになる。
【0056】
なお、上述した実施形態では、接続検知手段18でプラグの接続を検知したときにリモコン2が試運転を行っていなければFET16をオンさせるようにした場合を示したが、たとえば、接続検知手段18でプラグの接続を検知したときに、リモコン2の制御部6が給湯器本体1との通信によって試運転が正常に終了している記録があるか否かを確認し、正常に試運転が終了した記録があればFET16をオンにしてインターホン回路7と接続するように構成することもできる。
【0057】
実施形態2
次に、本発明の第2の実施形態について図4に基づいて説明する。
この第2の実施形態は、上述した実施形態1に示すリモコン2の接続端子8に、オーディオ信号の出力回路を接続し、接続端子8を介してオーディオ信号を外部に出力できるようにしたものであり、オーディオ信号の出力回路が付加される点以外は構成が実施形態1に示すリモコン2と共通するので、構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施形態に示すリモコン2は、当該リモコン2において、音声メッセージや警報音などを出力するために設けられている音声メッセージ出力回路30で生成されるオーディオ信号を上記接続端子8を介して外部に出力できるようにしたものである。
【0059】
音声メッセージ等の出力ができるリモコンにおいては、音声メッセージなどのオーディオ信号の音源となる音声IC31が備えられており、この音声ICで生成されるオーディオ信号を音声アンプ32で増幅してリモコンに内蔵される内部スピーカ33から音声メッセージとして出力するように構成されている。そして、この回路には制御端子がリモコン2の制御部6に接続されたFET34が備えられており、制御部6がこのFET34をオンさせることによって内部スピーカ33が出力可能な状態となるように構成されている(図中の「内部スピーカ ON」参照)。
【0060】
本実施形態では、このように構成される音声メッセージ出力回路30において、音声アンプ32で増幅されたオーディオ信号を上述した接続端子8(具体的には、4番の端子)に出力できるように結線するようにしており、この結線の間に、制御部6からの信号によって、上記接続端子8と音声アンプ32との電気的な接続の入り(通電)/切り(遮断)を行えるFET35を備えさせている。すなわち、このFET35は、その制御端子が制御部6に接続されており、制御部6からの信号によってオン/オフできるように構成されている(図中の「外部スピーカ ON」参照)。
【0061】
本実施形態では、このようにリモコン2の接続端子8にオーディオ信号の出力回路(具体的には、音声IC31と音声アンプ32)が接続されているので、たとえば、リモコン2の内部スピーカ33では出力音量が足りないような場合には、接続端子8に外部スピーカ(アンプつき)を接続することにより、内部スピーカ33では得られない音量で音声メッセージを出力できるようになる。
【0062】
なお、このように接続端子8をオーディオ信号の出力端子として用いられるように構成した場合、リモコン2の各種設定を行う操作モードに、「接続端子の設定」の項目を設け、そこで接続端子8の使用用途を「オーディオ信号の入力」とするか「オーディオ信号の出力」とするかの選択・設定が行えるようにしておくのが望ましい。
【0063】
このように、本発明に係る給湯器のリモコン2によれば、該リモコン2にはセンサ情報検出回路10と、このセンサ情報検出回路10と床暖房パネルPの試運転時に使用するサーミスタ103を接続するための接続端子8が備えられるので、当該給湯器のリモコンを用いて床暖房パネルの試運転の判定を行うことができる。そのため、このリモコン2に床暖房パネルPの設定操作機能を備えさせることによって、施工上の手間が少なく、しかも、床暖房パネルPの試運転を容易かつ正確に行える給湯器のリモコンを提供することができる。
【0064】
また、上記接続端子8には、リモコン2の制御部6からの信号によって電気的な接続が通電または遮断されるインターホン回路7や音声メッセージ出力回路30を接続することにより、付加価値の高い給湯器のリモコンが提供される。
【0065】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0066】
たとえば、上述した実施形態1では、本発明に係るリモコン2にオーディオ信号を発生させる音楽プレーヤ(ポータブルオーディオプレーヤ)を接続した場合を示したが、オーディオ信号の出力が可能な機器であれば、ポータブルオーディオプレーヤに限らず、他の形態の音楽プレーヤ(たとえば、CDプレーヤやMDプレーヤ)や、ラジオ受信機など外部機器を接続して利用することもできる。
【0067】
また、上述した実施形態では、外部機器から接続端子8に入力されるオーディオ信号として映像信号を含まない信号を用いた場合を示したが、このオーディオ信号には、たとえば、動画や静止画などの映像信号が含まれていてもよく、台所のリモコン2に接続する外部機器から入力される映像信号を浴室のリモコン3の表示部で表示するように構成することもできる。
【0068】
また、上述した実施形態1では、給湯器本体1に接続されるリモコンが2台の場合を示したが、3台以上のリモコンを接続することができるのはもちろん、本発明が適用されるリモコンを2台以上接続して給湯器システムを構成することもできる。
【0069】
さらに、上述した実施形態では、本発明が適用されるリモコンが床暖房パネルPの設定操作機能を備えている場合を示したが、本発明が適用されるリモコンは必ずしも床暖房パネルPの設定操作機能を備えている必要はない。つまり、床暖房パネルPが設置されない場所に、給湯機能の操作だけを行うリモコンとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 給湯器本体
2 給湯器のリモコン(本発明に係るリモコン)
3 給湯器のリモコン
4 通信線
5 給湯器本体の制御部
6 リモコンの制御部
7 インターホン回路
8 接続端子
10 センサ情報検出回路
11 BGM回路(オーディオ信号の入力回路)
18 接続検知手段
30 音声メッセージ出力回路(オーディオ信号の出力回路)
31 音声IC
32 音声アンプ
33 内部スピーカ
103 サーミスタ(温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器本体と通信接続される給湯器のリモコンにおいて、
温度センサで得られる情報をリモコンの制御部で読み取り可能な信号に変換するセンサ情報検出回路と、前記センサ情報検出回路と前記温度センサとを接続するための接続端子とを備えてなり、
前記接続端子に、前記制御部からの信号によって電気的な接続が通電または遮断されるオーディオ信号の入力または出力回路が接続される
ことを特徴とする給湯器のリモコン。
【請求項2】
前記制御部は、前記給湯器本体から所定の信号を受信したときには、前記オーディオ信号の入力回路および出力回路と前記接続端子との電気的な接続を遮断する制御構成を備えていることを特徴とする請求項1に記載の給湯器のリモコン。
【請求項3】
前記制御部は、前記接続端子への端子接続を検出する接続検知手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の給湯器のリモコン。
【請求項4】
前記センサ情報検出回路は、前記接続端子に接続されるサーミスタの抵抗値を検出する回路で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の給湯器のリモコン。
【請求項5】
前記接続端子はステレオジャックで構成され、
前記センサ情報検出手段は、前記ステレオジャックの右チャンネルと左チャンネルとに対応して2系統でのサーミスタ抵抗値の読み取りが可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の給湯器のリモコン。
【請求項6】
前記オーディオ信号の入力回路は、前記給湯器本体との通信接続を利用して当該給湯器本体と通信接続された他のリモコンにオーディオ信号を送信する回路で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の給湯器のリモコン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−52678(P2012−52678A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193129(P2010−193129)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】