説明

給湯器の遠隔操作装置

【課題】ガス、水道水などの消費量の目標値を前年同月におけるこれらの実績値に基づいて設定する給湯器のリモコンにおいて、前年同月の実績値が記憶されていない場合においても妥当性のある目標値を設定できるようにする。
【解決手段】水道光熱費算出の基礎となるあらかじめ設定された項目ごとにその消費量を記憶する記憶部7と、記憶部7に記憶された各項目について、前年同月の実績値をもとに各項目の当月の目標値を設定する制御部5と、制御部5によって設定される各項目の当月の目標値を表示する表示部6とを備えた給湯器のリモコン2において、記憶部7に前年同月の実績値が記憶されていない場合には、制御部5は、記憶部7に記憶している直近の実績値の移動平均をもとに項目ごとの当月の目標値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は給湯器の遠隔操作装置に関し、より詳細には、水道光熱費に関する情報を表示する機能を有する給湯器の遠隔操作装置において、水道光熱費算出の基礎となる電気、ガス、水道などの各項目について、当月の消費量の目標値を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、給湯器のリモコン(遠隔操作装置)には、当該給湯器における燃料(たとえば、ガス)の消費量や当該給湯器を介して使用される水の消費量(水道水使用量)、さらには、家庭で消費される電気の消費量(買電の電力量)などを表示する機能を備えたものが提案されている。
【0003】
そして最近では、燃料・水などの消費量を単に表示するだけでなく、燃料・水などの消費量の月単位の積算値を記憶・保持しておき、これら過去の消費量のデータ(実績値)をもとに、たとえば、燃料・水などの消費量を表示する際に、前年同月の消費量を当月の目標値として自動的に設定し、これを表示するようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1の段落0040〜0042参照)。つまり、燃料・水などの当月の消費量とともに前年同月のこれらの消費量を表示することによって、ユーザ(使用者)が前年との比較において水道光熱費の増減を把握できるようにし、省エネ意識の喚起を図るものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように前年同月の消費量を当月の目標値として設定する構成には以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0006】
すなわち、前年同月の消費量を目標値として設定する構成を採用すると、たとえば、リモコンの施工時から1年に満たない場合など、前年同月の消費量のデータの蓄積がない場合、当月の目標値には、リモコンの出荷時にあらかじめリモコンに初期値として設定された値を用いるか、あるいは、当該初期値をユーザが修正して用いなければならない。
【0007】
しかし、燃料・水などの消費量は、給湯器を利用する家庭の家族構成(人数、年齢、男女の別など)や給湯器の設置環境(温水が使用される給湯栓の数や種類、寒冷地か否かなど)に左右されることに加え、その使用時期(冬季、夏季の別など)にも大きく影響されることから、これらすべての状況に対応できる目標値を初期値として設定するのは困難であり、仮に初期値を設定しても実際の消費量との間に相当のズレが出てしまうおそれがある。
【0008】
また、ユーザに初期値の修正を委ねる場合、その修正操作はリモコンのスイッチ操作で行わねばならないので面倒である一方、ユーザが設定する目標値には客観性がないためその妥当性に問題があり、目標値の設定によるユーザへの省エネ意識の喚起効果が十分に得られないおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、前年同月における電気、ガス、水道などの消費量の実績値に基づいて、これらについての当月の目標値を設定表示する機能を有する給湯器の遠隔操作装置において、前年同月の実績値が記憶されていない場合においても妥当性のある目標値を設定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る給湯器の遠隔操作装置は、水道光熱費算出の基礎となるあらかじめ設定された項目ごとにその消費量をそれぞれ記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された各項目について、前年同月の実績値をもとに各項目の当月の目標値を設定する制御手段と、上記制御手段によって設定される各項目の当月の目標値を表示する表示手段とを備えてなる給湯器の遠隔操作装置において、上記制御手段は、上記記憶手段に前年同月の実績値が記憶されていない場合には、上記項目ごとに上記記憶手段に記憶している直近の実績値の移動平均をもとに項目ごとに当月の目標値をそれぞれ自動設定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、水道光熱費の算出の基礎としてあらかじめ設定される項目としては、たとえば、電気の消費量(電力使用量)、ガスの消費量(ガス使用量)、水道水の消費量(水道水使用量)などが例示され、本発明に係る給湯器の遠隔操作装置では、これらのうちの少なくとも一以上の項目についての消費量を上記記憶手段に記憶するように構成される。たとえば、当該項目として、給湯器における燃料ガスの消費量と、給湯器を介して使用される水道水の消費量とが設定されたり、あるいは、電力測定機能が備えられている場合には、これら燃料ガスの消費量と水道水の消費量に加えて、電力の消費量(より詳細には、発電システムで発電した電力の余剰分を電力会社に売電するシステムの場合には、電力会社から買電した電力量と電力会社に売電した電力量の双方)を水道光熱費算出の基礎となる項目として記憶手段に記憶するように構成される。
【0012】
本発明に係る給湯器の遠隔操作装置は、このような構成を備えることから、制御手段は、水道光熱費算出の基礎としてあらかじめ設定された各項目について、それぞれ記憶手段に前年同月の実績値が記憶されている場合には、当該記憶されている各実績値を各項目の当月の目標値として表示手段に表示する一方、記憶手段に前年同月の実績値が記憶されていない場合には、上記記憶手段に記憶している各項目の直近の実績値の移動平均をもとに項目ごとの当月の目標値を自動で設定して表示手段に表示する。
【0013】
つまり、本発明に係る給湯器の遠隔操作装置では、記憶手段に前年同月の実績値が記憶されていない場合には、各項目について直近の実績値の移動平均を算出することによって直近の使用状況に合わせて目標値を設定するので、ここで設定される目標値は、当該給湯器を利用する家庭の家族構成や給湯器の設置環境、さらには、給湯器の使用時期などの様々な要因に対応した客観的な目標値となる。
【0014】
なお、記憶手段に前年同月の実績値が記憶されていない場合に目標値の設定に用いる「直近の実績値の移動平均」とは、たとえば、目標値を設定する直前の一定期間(たとえば、直前一ヶ月や直前一週間)における日ごとの実績値の移動平均であって、この移動平均の求め方としては、日ごとの実績値に重みづけを付けずに単純に平均する単純移動平均や、目標値を設定するときに近い日の実績値を重く評価する重みづけを行う加重移動平均、指数移動平均などの手法が採用され得る。
【0015】
そして、本発明に係る給湯器の遠隔操作装置は、その好適な実施態様として、上記制御手段は、上記項目ごとの当月の目標値を自動設定するにあたり、所定の条件に従って項目ごとに所定の補正係数を乗じて目標値を補正するように構成されていることを特徴とする。そして好ましくは、上記補正係数は上記制御手段が有する日付情報に基づいて設定されることを特徴とする。
【0016】
すなわち、この実施態様では、上記制御手段が上記項目ごとの当月の目標値を自動設定するにあたり所定の補正係数を乗じて目標値を補正するよう構成されるので、たとえば、日付情報に基づいて季節に応じた補正係数を用意することによって、季節に応じた目標値の補正ができる。そのため、たとえば、温水の使用量が減少する夏季における燃料ガスの目標値は小さくなるように補正し、温水の使用量が上昇する冬季における燃料ガスの目標値は大きくなるように補正するなど、給湯器の使用時期に応じてより適切な目標値を設定できる。
【0017】
また、本発明に係る給湯器の遠隔操作装置は、他の好適な実施態様として、上記制御手段において当月の目標値を設定するにあたり、各項目の目標値に基づいて算出される項目ごとの水道光熱費を加算して当月の全体としての水道光熱費の目標値も自動設定することを特徴とする。
【0018】
すなわち、この実施態様では、制御手段が各項目の目標値に基づいて算出される各項目についての水道光熱費から当月の全体としての水道光熱費の目標値(目標金額)を設定するので、ユーザはより直感的に水道光熱費の増減を認識でき、省エネ意識を喚起する効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水道光熱費算出の基礎としてあらかじめ設定された各項目について、前年同月の実績値が記憶されている場合には、当該記憶されている各実績値を各項目の当月の目標値として表示する一方、前年同月の実績値が記憶されていない場合には、各項目の直近の実績値の移動平均をもとに項目ごとの当月の目標値が自動で設定されるので、目標値とすべき前年同月の実績値がない場合においても、実際の状況に近い客観的な目標値を自動で設定することができる。そのため、ユーザが目標値を手動で設定する手間を省くことができ、利便性の高い給湯器の遠隔操作装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る給湯器の遠隔操作装置を備えた給湯システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】同遠隔操作装置の制御部において各項目の目標値を設定する手順を示すフローチャートである。
【図3】同遠隔操作装置の制御部において目標値の補正に用いる補正係数の一例を示す説明図である。
【図4】同遠隔操作装置における光熱費情報の表示例を示しており、図4(a)は現在の消費量およびその目標値などを数字で表示した場合を、また、図4(b)はこれらを折れ線グラフで表示した場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る給湯器の遠隔操作装置を備えた給湯システムの概略構成を示している。図に示すように、この給湯システムは、給湯器本体1と当該給湯器本体1のリモコン(遠隔操作装置)2とを主要部として構成されている。3は給湯器本体1とリモコン2とを電気的に接続する通信線を示しており、この通信線3を介して給湯器本体1の制御部4とリモコン2の制御部5とが通信可能に接続されている。
【0022】
給湯器本体1は、図示しない水道管から供給される水(水道水)を所定の給湯設定温度の温水に加熱・昇温して屋内の給湯栓に給湯する給湯装置で構成されている。この給湯器本体1を構成する給湯装置としては、水を加熱する燃焼部の燃料にガスを使用するガス給湯装置や、燃焼部の燃料に石油を使用する石油給湯装置、電気ヒータやヒートポンプで水を加熱する電気式給湯装置、太陽熱を集熱して水を加熱する太陽熱式給湯装置、ガスエンジンなどの排熱を利用して水を加熱する排熱式給湯装置などの各種給湯装置のほか、たとえば、太陽熱式給湯装置とガス給湯装置を併用する給湯システムのように2種以上の給湯装置を組み合わせて使用するハイブリッド式の給湯装置などが用いられる。
【0023】
以下、本実施形態では、給湯器本体1としてガス給湯装置が用いられる場合を示す。なお、この給湯器本体1には、後述するように太陽光発電システム10が併設されており、この太陽光発電システム10の制御装置11が給湯器本体1の制御部4と通信できるように接続されている。なお、給湯システム自体に、図示しないカレントトランスや電圧検出手段が備えられており、当該給湯システムに電力測定機能が付与されている場合は、給湯器本体1の制御部4と太陽光発電システム10の制御装置11とを通信接続しなくてもよい。
【0024】
給湯器本体1は、上述したようにガス給湯装置で構成される。ガス給湯装置の基本的な構成は公知であるのでここではその詳細な説明は省略し、以下では本発明に関連する範囲で給湯器本体1について説明する。
【0025】
給湯器本体1には、給湯器本体1の各部を制御するための制御部4が備えられている。この制御部4は、図示しないマイコンを制御中枢として備えており、給湯器本体1の各部に設けられるセンサ類から情報を取得できるように構成されている。たとえば、給湯器本体1の燃焼部(図示せず)に供給される燃料ガスの供給量(ガスの消費量)や、水道管から給湯器本体1に供給される通水量(給湯器本体1での水道水の消費量)などの情報を取得できるように構成されている。
【0026】
また、この制御部4には、図示しない通信インターフェースが備えられており、このインターフェースを介してリモコン2の制御部5や、給湯器本体1に接続される各種機器(たとえば、上記太陽光発電システム10の制御装置11や、水道メータやガスメータの情報などを制御部4に取り込むための通信機器(図示せず)など)と通信接続できるように構成されている。
【0027】
リモコン2は、給湯器本体1を遠隔操作するための操作装置であって、本実施形態では、このリモコン2に本発明に係る情報表示機能が備えられている。このリモコン2の構成は、公知の給湯器用のリモコンと同様であり、図1に示すように、制御部5と、表示部6と、記憶部7と、操作部8とを主要部として備えている。
【0028】
すなわち、制御部5は、リモコン2各部の制御並びに給湯器本体1に対する遠隔制御を行うための制御装置であって、制御中枢を構成するマイコンと給湯器本体1との通信用のインターフェースを主要部として備えている。表示部6は、給湯器本体1の動作状況や操作部8での操作状況などの各種情報を視認可能に表示するための表示装置(たとえば、液晶表示装置や蛍光管ドットマトリクス表示装置など、文字や図形の表示ができる表示装置など)で構成されている。また、記憶部7は、制御部5による各種制御のためのプログラムやデータを記憶する記憶装置で構成されている。さらに、操作部8は、給湯器本体1に対する遠隔操作やリモコン2に対する各種設定操作などを行うための操作装置であって、複数のスイッチ類(図示せず)によって構成されている。
【0029】
そして、本実施形態では、このリモコン2の表示部6が、電気、ガス、水道など、水道光熱費を算出する基礎になる項目の消費量等を表示する表示手段に兼用されている。すなわち、このリモコン2には、当該リモコン2を含む給湯システムが設置される場所(具体的には、当該給湯システムが設置される家屋)における電気、ガス、水道などの各項目についての消費量と、これら項目ごとにその消費量の目標値(目標消費量)とを表示する機能(以下、「光熱費情報表示機能」と称する)が付与されている。
【0030】
この光熱費情報表示機能は、リモコン2の表示部6に電気、ガス、水道などの各消費量と、これら各項目についての消費量の目標値とを表示することによって、ユーザに省エネ意識の喚起を促す機能であり、この機能には、電気、ガスなどの消費量とその目標値を単に表示するだけでなく、電気、ガス、水道などの各消費量から算出される項目ごとの水道光熱費(項目別光熱費)とその目標値(項目別目標光熱費)を表示したり、これら項目ごとの水道光熱費を合算(加算)した全体の水道光熱費(全体光熱費)とその目標値(全体目標光熱費)を表示する機能が含まれる。
【0031】
リモコン2の表示部6にこのような光熱費情報表示機能を付与するにあたり、本実施形態に示すリモコン2では、リモコン2の制御部5が光熱費情報表示機能を実行するための制御手段の役割を果たすとともに、記憶部7が制御部5において光熱費情報表示機能を実行するためのデータを記憶する記憶手段としての役割を果たすように構成されている。
【0032】
すなわち、この光熱費情報表示機能に関して、上記制御部5には、(1)表示部6に表示する項目に関するデータを給湯器本体1の制御部4などから取得するステップと、(2)取得したデータを項目ごとに上記記憶部7に記憶させるステップと、(3)表示部6に各項目の消費量とその目標値を表示させるステップと、を実行するための制御プログラムが備えられている。
【0033】
具体的には、上記(1)のステップに関して、制御部5が取得するデータの項目は予め制御プログラムなどによって設定されている。本実施形態では、この項目として、給湯器本体1でのガスおよび水道水の消費量と家庭での電気の消費量とが設定されており、制御部5は、この設定に基づいて、給湯器本体1の制御部4からこれらのデータを取得する。すなわち、給湯器本体1でのガスおよび水道水の消費量は、給湯器本体1に備えられたセンサ類(ガスの消費量については入水温度センサ、入水流量センサのほか給湯設定温度のデータ、水道水の消費量については入水流量センサなど)の情報から制御部4が算出したデータを、また、家庭内での電気の消費量については、太陽光発電システム10の制御装置11から制御部4に与えられる電気の消費量(具体的には、電力会社から買電した電力量と電力会社に売電した電力量の双方)のデータを制御部4との通信によって取得する。なお、給湯システム自体に電力測定機能が備えられている場合には、同機能によって給湯器本体1の制御部4が取得するデータ(買電した電力量と売電した電力量のデータ)を取得する。そして、これらのデータは、項目ごとに日単位で積算され、制御部5にはその日について項目ごとの消費量の積算値が保持される。
【0034】
たとえば、給湯器本体1でのガスの消費量の場合、朝の洗面で温水が使用されガスが消費されると、その消費分に応じて制御部5に保持されるガスの消費量の数値が増加する。また、その後、夕刻に入浴などでガスが消費されると、その消費分に応じて制御部5に保持されるガスの消費量の数値が増加する。そして、深夜、日付が変わることによって制御部5に保持されるガスの消費量のデータがクリア(積算値が「0」に)され、翌日については改めてガスの消費量の積算が行われて、そのデータが制御部5に保持される。このようなデータの積算は、給湯器本体1の制御部4またはリモコン2の制御部5のいずれで行うように構成してもよい。なお、電気の消費量については、買電した電力量と売電した電力量はそれぞれ別項目として加算され、全体光熱費の算出時には買電金額から売電金額を減算する。つまり、全体光熱費の算出にあたっては、売電金額は負の値として項目別光熱費を加算する。
【0035】
このようにして制御部5が取得した各項目のデータは、上記(2)のステップによって、日単位で日付データを付して項目ごとにそれぞれ記憶部7に記憶される。つまり、制御部5は、日付が変更される際に項目ごとに1日分のデータ(積算値)を記憶部7に記憶させる。この日付データの付与は、制御部5のマイコンに備えられる内部時計を利用した日付設定機能によって行われる。このようにして記憶部7に記憶させたデータは、少なくとも1年間は保持するように構成され、制御部5が前年同月のデータを参照できるようにされる。なお、制御部5のマイコンに日付設定機能がない場合、あるいは、日付設定機能はあっても日付設定が未だ行われていない場合には、上記制御部5は日付データを付与せずに1月分に相当する少なくとも30日分の積算値を記憶部7に記憶させるように構成される。
【0036】
このように、リモコン2には、各項目について、それぞれ当日の消費量の積算値が制御部5に保持されるとともに、過去分の積算値(実績値)がそれぞれ記憶部7に記憶されているので、制御部5は、これらのデータに基づいて、各項目について現在の消費量とその目標値とを表示部6に表示させる。
【0037】
ここで、上記目標値は、制御部5が各項目についてそれぞれ月単位で設定する消費量の目標を示す値であって、この目標値は、記憶部7に記憶された過去の実績値のデータに基づいて設定される。本実施形態では、この目標値は、項目ごとに前年同月の実績値をもとにして設定される。より詳細には、項目ごとに前年同月の実績値を加算した値(つまり、記憶部7に日単位で記憶されている日ごとの積算値を一月分加算した値)を当月の目標値として自動的に設定する。
【0038】
そして、この目標値の設定にあたり、前年同月の実績値がない場合(前年同月の実績値が一月分に満たない場合も含む)には、制御部5は、項目ごとに記憶部7に記憶されている直近の実績値の移動平均をそれぞれ算出し、この移動平均の値に当月分の日数を乗じて項目ごとに当月の目標値をそれぞれ自動設定する。
【0039】
図2は、制御部5における目標値設定の手順を具体的に示すフローチャートである。この図2に示すように、各項目の目標値の設定にあたり、制御部5は、まず、制御部5のマイコンに日付設定機能があるか否かを判断する(図2ステップS1参照)。ここで、マイコンに日付設定機能がない場合(図2ステップS1でNoの場合)には、日付データが付与されずに記憶部7に記憶されている一定期間(図示例では過去30日分)の実績値の移動平均を項目ごとに算出し、この移動平均の値に当月分の日数を乗じて当月分の目標値を設定する(図2ステップS6参照)。
【0040】
ここで目標値の設定に使用する移動平均は、過去の実績値の値を単純に平均する単純移動平均を用いられるが、このほかにも目標値の算出時に近い日の実績値を重く評価する重みづけを行う加重移動平均や指数移動平均など、他の手法による移動平均を用いて目標値を算出するように構成してもよい。
【0041】
これに対し、制御部5のマイコンに日付設定機能がある場合(図2ステップS1でYesの場合)には、制御部5は、日付設定機能に日付設定が行われているか否かを判断する(図2ステップS2参照)。ここで、日付設定が未だ行われていない場合(図2ステップS2でNoの場合)には、上述した場合と同様に、図2ステップS6に移行して、日付データが付与されずに記憶部7に記憶されている一定期間(図示例では過去30日分)の実績値の移動平均をもとに項目ごとに当月分の目標値に設定する(図2ステップS6参照)。
【0042】
これに対して、日付設定機能に日付設定が行われている場合(図2ステップS2でYesの場合)には、制御部5は、日付設定が行われてから1年が経過しているか否かを判断する(図2ステップS3参照)。ここで、日付設定が行われてから1年が経過している場合(図2ステップS3でYesの場合)には、制御部5は記憶部7に記憶されている前年同月の実績値を項目ごとに加算して得た値を項目ごとの当月の目標値として設定する。
【0043】
その際、本実施形態では、この前年同月の実績値を加算することにより得られる目標値を項目ごとにユーザが変更できるようにされている。たとえば、ユーザが前年同月の実績に基づいて自動設定されるこの目標値に対して増減を希望する場合には、リモコン2の操作部8の所定操作によってこの目標値を補正する補正係数(使用者設定係数)を入力できるように構成されており、その場合、前年同月の実績値を加算して得られた目標値に上記使用者設定係数を乗じた値が目標値として設定される(図2ステップS4参照)。なお、このユーザによる補正係数(使用者設定係数)の設定はユーザの任意に委ねられており、ユーザによって使用者設定係数が設定されない場合には、前年同月の実績値を加算して得られた値がそのまま目標値として用いられる。
【0044】
これに対して、日付設定が行われてから1年が経過していない場合(図2ステップS3でNoの場合)には、制御部5は、記憶部7に記憶されている直近(図示例では過去30日分)の実績値の移動平均を項目ごとにそれぞれ算出して、その値に当月分の日数を乗じて各項目の当月の目標値として設定する(図2ステップS5参照)。なお、ここで用いられる移動平均も上記図2ステップS6と同様に単純移動平均が用いられるが、単純移動平均に代えて目標値算出時に近い日の実績値を重く評価する重みづけを行う加重移動平均や指数移動平均など、他の手法による移動平均を用いて目標値を算出するように構成してもよい。
【0045】
そして、本実施形態では、この直近の実績値の移動平均によって得られる目標値に対して、日付設定機能による日付情報に基づいて特定される季節による電気、ガスなどの消費量の増減を考慮した補正係数(季節係数)を乗じて補正するように構成されている。図3はこの季節係数の一例を示しており、この図3に示す例では、給湯器の使用頻度が低下する夏季においては、目標値上で水道とガスの消費量が少なくなるように補正係数が設定(図示例では、「0.8」に設定)され、反対に給湯器の使用頻度が上昇する冬季には、目標値上でガスの消費量が増えるように補正係数が設定(図示例では、「1.2」に設定)されている。
【0046】
なお、この季節係数の設定は、上記日付情報に基づいて設定されるものであれば、図示例のように春、夏、秋、冬の4期に分けて設定する場合だけでなく、たとえば各月ごとの12期に分けて補正係数を設けたり、あるいは、2月単位で6期に分けて補正係数を設定するなど適宜変更可能である。また、この季節係数を乗じて得られる目標値に対して、さらにユーザによる補正係数(使用者設定係数)を乗じるように構成することも可能であり、この場合、季節係数を乗じて得られた目標値にさらに使用者設定係数を乗じて得た値が目標値とされる。
【0047】
このように、本実施形態に示すリモコン2では、光熱費情報を表示するにあたり、前年同月の実績値が記憶部7に記憶されていない場合には、各項目について直近の実績値の移動平均をもとに各項目の目標値を設定するので、ここで設定される目標値は、給湯器を利用する家庭の家族構成や給湯器の設置環境、さらには、給湯器の使用時期などの様々な要因に対応した客観的な目標値となり、ユーザの手を煩わせることなく妥当な目標値を自動的に設定することができる。
【0048】
そして、このように各項目の目標値が月単位で設定されることから、制御部5は、各項目について現在の消費量を表示する際には、目標値との対比が容易となるように現在の消費量についても月単位で加算した消費量(つまり、当月の消費量)を表示できるようにされている。
【0049】
図4は、このような光熱費情報の表示例を示しており、図4(a)は現在の消費量およびその目標値などを数字で表示した場合を、また、図4(b)はこれらを折れ線グラフで表示した場合をそれぞれ示している。
【0050】
すなわち、図示例はいずれも2010年6月を当月(現在)として、全体光熱費の金額を表示した場合が示されており、図4(a)では、前年同月である2009年6月の全体光熱費(24,500円)と、当月である2010年6月における現在の全体光熱費(15,000円)と、全体目標光熱費(20,000円)とがそれぞれ数値として表示されている。また、図4(b)では、当月(2010年6月)における全体光熱費の日ごとの推移がわかるように折れ線グラフ化して表示した場合が示されており、横軸に当月の各日付けが、縦軸に金額が示されるとともに、前年同月の全体光熱費の推移が鎖線で表示され、当月の全体光熱費の推移が実線で表示され、さらに、当日までの目標値が星印(○に十字の印)で表示されている。
【0051】
なお、いずれの図に示す場合においても、全体光熱費以外の他の項目、たとえばガスの消費量を見たい場合には、リモコン2の操作部8の所定操作によって、当該他の項目を呼び出すことによってガスの消費量を表示するページが開かれるようにされている。また、いずれの場合も、目標値を表示させるか否かはユーザが設定できるように構成される。
【0052】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0053】
たとえば、上述した実施形態では、給湯器本体1としてガス給湯装置を用いた場合を示したが、給湯器本体1としてはガス給湯装置以外の給湯装置を用いることもできる。ガス給湯装置以外の燃料を使用する給湯装置が用いられる場合には、当然のことながら水道光熱費を算出する基礎となる項目も変わるので、その場合には、制御部5は、ガスに代えて水道光熱費の算出に必要な項目(たとえば、石油給湯装置の場合は石油の消費量)についてのデータを取得して表示するように構成される。
【0054】
また、上述した実施形態では、リモコン2の制御部5に日付設定機能がない場合、日付設定が行われていない場合、および、日付設定が行われてから1年が経過していない場合には、過去30日分の実績値の移動平均をもとに目標値の設定を行うように構成した場合を示したが、たとえば、この過去分の実績値のなかにユーザが不在であると判断できる程に各項目の消費量が少ない日が含まれる場合には、そのように判断された日の実績値を除外して移動平均を算出するように構成することもできる。これにより、たとえば、1日、2日の旅行などでユーザが不在となる日があっても客観的な目標値の設定が可能になる。
【0055】
また、上述した実施形態では、制御部5が記憶部7に各項目の実績値を記憶させる場合に、項目ごとのデータを日単位で積算して記憶させる構成を示したが、その際、積算される時間が1日に対して相当程度短くなるような場合(たとえば、給湯器本体1の施工が夕方に行われるなどして、積算開始から日付が変わるまでの時間が数時間となるような場合)には、当該1日の積算値は実績値として記憶しないように構成しておくことができる。つまり、このように積算時間が短いものまで実績値として記憶部7に記憶すると、目標値を設定する際に目標値が不当に低くなってしまうおそれがあるので、そのようなデータを実績値から除外することで、客観的な目標値の設定が可能になる。
【0056】
さらに、上述した実施形態では、光熱費情報表示機能において表示されるガスの消費量や水道水の消費量は、いずれも給湯器本体1で消費されるガスや水道水の消費量に限定されていたが、たとえば、水道メータやガスメータの検出値を制御部4に取り込ませる通信機器を給湯器本体1に接続するなどしておき、給湯器システムが設置される家屋全体でのガスの消費量や水道水の消費量を水道光熱費算出のための項目として制御部5に取り込んで、これらについての消費量やその目標値を表示するように構成することもできる。
【0057】
また、上述した実施形態では、目標値のユーザによる補正(使用者設定係数による補正)は、図2ステップS4およびS5の場合にできるようにした場合をしめしたが、図2ステップS6で設定する目標値に対しても使用者設定係数を乗じて目標値の補正ができるように構成しておくことも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 給湯器本体
2 リモコン(遠隔操作装置)
3 通信線
4 給湯器本体の制御部
5 リモコンの制御部(制御手段)
6 リモコンの表示部(表示手段)
7 リモコンの記憶部(記憶手段)
8 リモコンの操作部
10 太陽光発電システム
11 太陽光発電システムの制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道光熱費算出の基礎となるあらかじめ設定された項目ごとにその消費量をそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された各項目について、前年同月の実績値をもとに各項目の当月の目標値を設定する制御手段と、
前記制御手段によって設定される各項目の当月の目標値を表示する表示手段とを備えてなる給湯器の遠隔操作装置において、
前記制御手段は、前記記憶手段に前年同月の実績値が記憶されていない場合には、前記項目ごとに前記記憶手段に記憶している直近の実績値の移動平均をもとに項目ごとに当月の目標値をそれぞれ自動設定するように構成されている
ことを特徴とする給湯器の遠隔操作装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記項目ごとの当月の目標値を自動設定するにあたり、所定の条件に従って項目ごとに所定の補正係数を乗じて目標値を補正するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の給湯器の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記補正係数は、前記制御手段が有する日付情報に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載の給湯器の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記制御手段は、当月の目標値を設定するにあたり、各項目の目標値に基づいて算出される項目ごとの水道光熱費を加算して当月の全体としての水道光熱費の目標値も自動設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の給湯器の遠隔操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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