説明

給湯機

【課題】タンクの上部に存在する気体をタンクの外部に排出する際の熱の損失を低減することができる給湯機を提供する。
【解決手段】大気開放されたタンク102を備える給湯機101において、タンク102の上部に存在する気体をタンク102の外部へ排出する気体排出機構104を備え、気体排出機構104は、タンク102内の気体が外部へ噴出する際に、液体の排出を阻止する一方、気体を外部へ排出する液体流出阻止部142を有する。また、液体流出阻止部142は、気体排出機構104の気体排出経路に設けられ、タンク102に形成された前記気体を排出する孔102hの開口面積より大きい流路断面積を有する拡大部142である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機に関し、特に、タンク上部に存在する気体をタンクの外部へ排出する気体排出機構を備える給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯機は、夜間の割引電気料金を利用してヒートポンプを運転し、低温の液体(給水)を加熱し、高温の液体(高温の湯)としてタンクに貯え、昼間の湯水使用時に蛇口を開いたとき、タンク内の高温の液体(高温の湯)を取り出し、低温の液体(給水)と混ぜて適温の液体として給湯端末に給湯する貯湯式ヒートポンプ給湯機が一般的である。
タンクに高温の液体を貯留する給湯機では、タンクの上部に気体が溜まることがある。例えばタンク内の液体を沸き上げる方式の給湯機においては、低温の液体が高温の液体となる際に液体に溶け込んでいた気体(空気)が分離し、タンクの上部に溜まっていくことが原因の一つとして考えられる。
【0003】
このように、タンク内に気体が存在すると給湯機を運転する上で好ましくない。
例えばタンクから高温の湯を給湯端末に給湯する給湯機の場合、タンク上部に気体が存在すると、給湯端末へ給湯する際に、タンクの出湯配管からこの気体を吸い込んで、給湯端末に気体混じりの湯が出てしまうといったことが発生し得る。
また、タンクの出湯配管から取り出した高温の湯と給水を混ぜて所定の温度に温調する機構を有している給湯機の場合、気体が混ざることにより温度調節が上手くいかないなどの不具合が生じ得る。
そのため、一般的な給湯機には、タンクの上部に存在する気体をタンクから排出する気体排出機構が設けられている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−35410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の気体排出機構は、気体を排出する勢いで、タンク上部の高温の液体も外部へ排出してしまう場合があり、いわば加熱して高温にした液体をタンクから捨てている状態であり、熱の損失となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、タンクの上部に存在する気体をタンクの外部に排出する際の熱の損失を低減することができる給湯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、請求項1に係る発明は、大気開放されたタンクを備える給湯機において、前記タンクの上部に存在する気体をタンクの外部へ排出する気体排出機構を備え、前記気体排出機構は、タンク内の気体が外部へ噴出する際に、液体の排出を阻止する一方、気体を外部へ排出する液体流出阻止部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンクの上部に存在する気体をタンクの外部に排出する際の熱の損失を低減することができる給湯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る給湯のシステム図を示す。
【図2】第1実施形態に係る空気抜き用配管の部分拡大図を示す。
【図3】第1実施形態に係る空気抜き用配管の部分拡大図を示す。
【図4】第2実施形態における空気抜き用配管の部分拡大図を示す。
【図5】第2実施形態における空気抜き用配管の部分拡大図を示す。
【図6】第3実施形態に係る給湯機の構成図である。
【図7】第3実施形態に係る給湯機の気体排出用配管の内部拡大図である。
【図8】第3実施形態に係る給湯機の気体排出用配管の動作図である。
【図9】第4実施形態に係る給湯機の気体排出用配管の内部拡大図である。
【図10】第4実施形態に係る給湯機の気体排出用配管の動作図である。
【図11】第5実施形態に係る給湯機の気体排出用配管の内部拡大図である。
【図12】第5実施形態に係る給湯機の気体排出用配管の動作図である。
【図13】比較例に係る給湯機の気体排出用配管の内部拡大図である。
【図14】比較例に係る給湯機の気体排出用配管の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0011】
≪第1実施形態≫
本実施形態に係る給湯機は、大気開放されたタンクを備え、前記タンクの上部に存在する気体をタンクの外部へ排出する気体排出機構を備え、前記気体排出機構は、タンク内の気体が外部へ噴出する際に、液体の排出を阻止する一方、気体を外部へ排出する。
【0012】
これにより、気体及び液体が噴出しようとした際に気体だけを外部へ排出することができる。従って、タンクの上部に存在する気体を外部に排出する際の熱の損失を低減することができる。
【0013】
また、前記気体排出機構は、液体流出阻止体と、該液体流出阻止体を収容する阻止体収容部とを備えて構成され、前記気体排出機構は、液体流出阻止体と阻止体収容部との隙間を通って気体を排出させる一方、液体流出阻止体が噴出に伴って持ち上げられることで阻止体収容部との隙間を閉塞して液体の流出を阻止する。
【0014】
前記気体排出機構によれば、液体と気体とが同時に噴出しようとした場合であっても、液体若しくは気体、又は、それらの混合流体の噴出に伴って液体流出阻止体が持ち上げられ、隙間が閉塞されることによって外部への排出経路が遮断される。その後、液体流出阻止体及び噴出のエネルギーを失った液体は、重力に従って落下する。その後、気体は液体流出阻止体と阻止体収容部との隙間を通って好適に排出される。
【0015】
なお、液体流出阻止体が阻止体収容部との隙間を閉塞する場合には、隙間が完全になくなるように閉塞する場合だけでなく、圧損によって液体がスムーズに流通できなくなる程度の小ささの隙間ができるように覆う場合も含まれる。
【0016】
また、前記阻止体収容部には、前記液体流出阻止体の可動範囲を規制するストッパーが上下に設けられ、上方のストッパーは、前記液体流出阻止体と隙間なく接触し、下方のストッパーは、前記液体流出阻止体と隙間を有して接触する。
【0017】
このようにすると、液体流出阻止体が持ち上げられて上方のストッパーと接触した際には液体の排出を阻止することができ、且つ、噴出が起こっておらず液体流出阻止体が下方のストッパーと接触している間は気体を流通させることができる。
【0018】
次に、第1実施形態に係る給湯機について説明する。第1実施形態に係る給湯機は、貯湯タンク1上部に配設した空気抜き用配管8の構造について、湯が流れにくく、空気は抜けやすい構造とすることで、貯湯タンク1上部に空気がたまることを防止すると共に、膨張水を外部に流出せず、貯湯タンク内に貯めておくものである。
【0019】
ここで、空気は、天井部に沿って貯湯タンク1の上部に溜まり、何らかのきっかけ(例えば、温度変化による貯湯タンク1の変形)によって一度に纏まって排出され得ると考えられる。前記貯湯タンク1は、図1に示すように、水平な天井部を有するものであるため、特に空気が溜まりやすい構造となっている。ただし、貯湯タンク1の天井部が水平でなく、傾斜を有するものであった場合でも(例えば、湾曲した鏡板を有する貯湯タンク)、空気がスムーズに排出されることなくタンクの上部に溜まり、何らかのきっかけによって一度に纏まって排出され得る現象が確認されているため、第1実施形態に係る気体排出機構(及び、その他の本発明に係る気体排出機構)は、タンクの形状に関わらず有効である。
【0020】
本給湯機は、貯湯タンク1へ給水するための給水管2、貯湯タンク1の上部には給湯用蛇口4へ送る出湯管3を備える。また、貯湯タンク1下部からは、加熱熱源であるヒートポンプユニット5へ導入するヒートポンプ往き配管6が、貯湯タンク1上部には、ヒートポンプユニット5で加熱された湯を戻すためのヒートポンプ戻り管7が配設されており、貯湯タンク1下部の水をヒートポンプユニット5で加熱し、貯湯タンク1の上部へ返送し、貯湯タンク全体がお湯になるように沸き上げを行う。
【0021】
また、本システムは貯湯タンク1の上部にシスターンタンク9を設け、そのシスターンタンク9に給水管2を、このシスターンタンク9下部のタンク給水管10から貯湯タンク1の下部へ、また、貯湯タンク1の上部からシスターンタンク9上部に気体排出用配管としての空気抜き用配管8を配設している。
【0022】
貯湯タンク1への給水は、給水管2からの水を一度シスターンタンク9へ貯留し、タンク給水管10を通り、貯湯タンク1へ自然落下して貯湯タンク1に給水される。シスターンタンク9内にはシスターンタンク9内の水位管理するためのレベルスイッチ(図示なし)を設け、シスターンタンク9内の水位が所定の水位となると給水を停止する。シスターンタンク9と貯湯タンク1はタンク給水管10にて連結しているため、貯湯タンク1満水時の空気抜き用配管8内の水位とシスターンタンク9内の水位は一致する。
【0023】
ここで、図2に示すように、貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ空気抜き用の配管8の中に、配管の内径よりも直径が少し小さい球体11を内蔵し、空気抜き用の配管8の途中にその球体11が所定の範囲内で上下するようにするためのストッパーを設けている。
【0024】
なお、前記球体11は、液体流出阻止体として機能するものであるが、液体流出阻止体を阻止する部材であれば、形状は球体に限定されるものではない。また、空気抜き用の配管8は、阻止体収容部として機能するものであるが、液体流出阻止体を収容可能な構造を有するものであれば、配管に限定されるものではない。
【0025】
また、この上部のストッパーは、配管の周方向全体に亘って径方向内方に突出する突出部によって構成される。具体的には、球体11の表面に沿うように空気抜き用の配管8を全周絞っている。これに対して、下部のストッパーは、空気抜き用の配管8全周ではなく、前記周方向の一部において径方向内方に突出する突出部によって構成される。具体的には、局部的に、例えば円周方向で3箇所突起形状を設けて、球体11が下部ストッパー位置より下に落下しなければ良い構造としている。ストッパー下部の形状をそのようにすることで、空気抜き用の配管8と球体11は完全に接触しておらず、貯湯タンク1上部に貯まった空気はこの隙間からシスターンタンク9へ逃すことができる。
【0026】
なお、排出される空気は、水分を含んだ高温の蒸気であり得るが、このように貯湯タンク1上部に貯まった空気をシスターンタンク9へ逃すことにより、蒸気が意図しない部分に噴き出されることを防止することができる。
【0027】
図2に示すように、沸き上げ前、空気抜き用の配管8内水位上面は、下部ストッパーよりも下の位置になっている。また、球体11は下部ストッパーで引っかかり、空気抜き用配管8の水位より上に位置している。本構造にて、沸き上げを行うと貯湯タンク1内の温度は上昇し、上昇すると高温部分は水の時に比べて比容積が大きくなるため膨張し、貯湯タンク1内の圧力が上昇する。ある一定圧力まで上昇すると圧力を逃すために、貯湯タンク1上部から空気抜き用配管8を通してシスターンタンク9へ吹き出して圧力を逃す。このとき、吹き出す勢いで、図3に示すように、空気抜き用配管8内にある球体11が上に押し上げられ、上のストッパーに当たる。
【0028】
上のストッパーは空気抜き用の配管8全周球体に沿うような形状としているため、貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ行く通路を塞ぐことができる。その結果、吹き出すことで貯湯タンク1内の圧力を逃すことができるのと同時に、通路を塞ぐことで貯湯タンク1上部の高温の湯がシスターンタンク9へ流出することを防止することができる。吹き出す動きが終わると、球体11は自重で下のストッパーに落下するため、貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ行く空気抜き用の通路は確保される。
【0029】
貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ膨張水が流出しなくなったため、膨張分による水は、貯湯タンク1の上方に配設されたシスターンタンク9とこのシスターンタンク9から貯湯タンクの下部に給水するためのタンク給水管を通って、タンク下部から逆流してシスターンタンク9へ流出する。沸き上げ運転は、貯湯タンク下部の水をヒートポンプユニットへ導入し、貯湯タンク1上部へ高温の湯を貯湯していくため、貯湯タンク1下部から給水管を逆流してシスターンタンクへ流出するのは水となる。よって、沸き上げ時に発生する膨張水を湯としてシスターンタンク9へ流出するのではなく、水の状態で流出するため、膨張水のシスターンタンク9への排水による熱ロスを低減することができる。
【0030】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る給湯機について説明する。第2実施形態に係る給湯機は、第1実施形態で説明した空気抜き用配管8内に内蔵した球体11の材質を水に浮く比重が軽いものを使用するものである。これにより、シスターンタンク9内の水位と空気抜き用配管8の水位は同じため、通常時空気抜き用配管8内の球体11はどのような水位の位置でも、水面上に球体11を配置することが可能となる(図4)。これにより、第1実施形態では存在した空気抜き用配管8の下部ストッパーを廃止することができ、コスト低減を図ることができる。
【0031】
第2実施形態の球体11の動作について説明する。図4に示すように、沸き上げ前、球体11は水よりも軽いため、空気抜き用の配管8内水位上部に位置している。本構造にて、沸き上げを行うと貯湯タンク1内の温度は上昇し、上昇すると高温部分は水の時に比べて比容積が大きくなるため膨張し、貯湯タンク1内の圧力が上昇する。ある一定圧力まで上昇すると圧力を逃すために、貯湯タンク1上部から空気抜き用配管8を通してシスターンタンク9へ吹き出して圧力を逃す。
【0032】
このとき、図5に示すように、吹き出す勢いで、空気抜き用配管8内にある球体11が上に押し上げられ、上のストッパーに当たる。上のストッパーは空気抜き用の配管8全周球体に沿うような形状としているため、貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ行く通路を塞ぐことができる。その結果、吹き出すことで貯湯タンク1内の圧力を逃すことができるのと同時に、通路を塞ぐことで貯湯タンク1上部の高温の湯がシスターンタンク9へ流出することを防止することができる。
【0033】
吹き出す動きが終わると、球体11は自重で落下するが、水よりも軽いため、空気抜き用配管8の水位面で再び位置する。球体11の直径は、空気抜き用配管8の内径よりも小さいため、貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ行く空気抜き用の通路は確保される。貯湯タンク1上部からシスターンタンク9へ膨張水が流出しなくなったため、膨張分による水は、貯湯タンク1の上方に配設されたシスターンタンク9とこのシスターンタンク9から貯湯タンクの下部に給水するためのタンク給水管を通って、タンク下部から逆流してシスターンタンク9へ流出する。
【0034】
沸き上げ運転は、貯湯タンク下部の水をヒートポンプユニットへ導入し、貯湯タンク1上部へ高温の湯を貯湯していくため、貯湯タンク1下部から給水管を逆流してシスターンタンクへ流出するのは水となる。よって、沸き上げ時に発生する膨張水を湯としてシスターンタンク9へ流出するのではなく、水の状態で流出するため、膨張水のシスターンタンク9への排水による熱ロスを低減することができる。
【0035】
≪第3実施形態≫
図6は、第3実施形態に係る給湯機101の構成図である。
給湯機101は、タンク102と、シスターンタンク103と、気体排出用配管104と、ヒートポンプユニット105と、を備えている。
【0036】
シスターン給水配管103aは、一端が水道管(図示せず)と接続され、他端がシスターンタンク103の上部と接続されている。また、シスターン給水配管103aは、開閉弁(図示せず)を備えている。
シスターンタンク103は、タンク102の上部に設けられ、シスターンタンク103の下部からタンク102の下部へタンク給水配管102aが配設されている。また、タンク102の上部からシスターンタンク103の上部へ気体排出用配管104が配設されている。
【0037】
シスターンタンク103は、オーバーフロー配管103bを有しており、タンク102およびシスターンタンク103は大気開放されている。
また、シスターンタンク103は、シスターンタンク103に貯留された水の水位を検出する水位センサ(図示せず)を備えている。
【0038】
シスターンタンク103に設けられた水位センサ(図示せず)の検出値が所定の水位未満となると、給湯機101の制御装置(図示せず)により、シスターン給水配管103aに設けられた開閉弁(図示せず)が開放され、シスターン給水配管103aから供給された水がシスターンタンク103に貯留される。そして、シスターンタンク103に貯留された水は、シスターンタンク103からタンク給水配管102aを自然落下して、タンク102に給水される。
そして、シスターンタンク103に設けられた水位センサ(図示せず)の検出値が所定の水位以上となると、給湯機101の制御装置(図示せず)により、シスターン給水配管103aに設けられた開閉弁(図示せず)が閉じられ、給水が停止される。このため、タンク102の水位が出湯配管102bの高さ位置よりも下がることはない。
【0039】
ここで、タンク102とシスターンタンク103とが、タンク給水配管102aおよび気体排出用配管104で連結されているため、図6に示すように、タンク102の満水時において、シスターンタンク103の水位(液面の高さ)と、気体排出用配管104の水位(液面の高さ)とは、一致する。
【0040】
タンク102の下部からヒートポンプユニット105の入口側へヒートポンプ往き配管105aが配設されている。また、ヒートポンプユニット105の出口側からタンク102の上部へヒートポンプ戻り配管105bが配設されている。
ヒートポンプユニット105は、タンク102内の液体を加熱する沸き上げ運転を行う。具体的には、ヒートポンプユニット105が備えるポンプ(図示せず)を駆動させることにより、タンク102の下側に貯留された低温の水が、ヒートポンプ往き配管105aを介してヒートポンプユニット105の入口側に吸込される。吸込された低温の水は、ヒートポンプユニット105の熱交換器(図示せず)により加熱され、高温の湯となる。そして、高温の湯は、ヒートポンプユニット105の出口側からヒートポンプ戻り配管105bを介して、タンク102の上側から貯留される。
【0041】
タンク102の上部には出湯配管102bが接続されている。
出湯配管102bは、一端がタンク102の上部と接続され、他端がポンプ(図示せず)を介して給湯端末(図示せず)と接続されている。ポンプ(図示せず)を駆動させることにより、タンク102の上部から高温の湯を給湯端末(図示せず)に供給する。
【0042】
<気体排出用配管104>
図7を用いて、気体排出用配管104について更に説明する。図7は、第3実施形態に係る給湯機101の気体排出用配管104の内部拡大図である。
気体排出用配管104は、タンク102内の気体をシスターンタンク103に排出する配管であり、タンク102に接続される配管141と、拡大部142と、シスターンタンク103に接続される配管143とを備えている。
【0043】
図7に示すように、気体排出用配管104は、タンク102の頂部の孔102hと接続される配管141の内径(流路断面積)よりも大きな内径(流路断面積)を有する拡大部142が形成されている。なお、拡大部142は、後述するように、気体排出用配管104内の高温の湯(タンク102の上側に貯留された高温の湯)がシスターンタンク103へ流出することを阻止する液体流出阻止部として機能する構造であるが、液体流出を阻止する目的であれば、流路断面形状は円に限定されるものではない。
そして、拡大部142の上端は、拡大部142の内径(流路断面積)よりも小さい内径(流路断面積)を有する配管143を介して、シスターンタンク103と接続されている。
【0044】
また、図7に示すように、気体排出用配管104の水位(液面の高さ)は、拡大部142内に位置するようになっている。即ち、シスターンタンク103への給水・止水を制御する所定の水位と対応する高さに拡大部142が形成されている。
【0045】
ヒートポンプユニット105を駆動して沸き上げ運転を行うことにより、タンク102の下側の低温の水がヒートポンプ往き配管105aを介してヒートポンプユニット105に吸込され、高温の湯となり、ヒートポンプ戻り配管105bを介して、タンク102の上側から貯留される。
低温の水が、高温の湯となると、比容積が大きくなるため膨張し、タンク102内の圧力は上昇する。上昇した圧力は、タンク102の上部から気体排出用配管104を介してシスターンタンク103へ圧力を逃がす。
【0046】
また、低温の水が高温の湯となる際に、低温の水に溶け込んでいた気体成分が分離し、タンク102の上部に溜まり、タンク102の上部に設けられた孔102hから気体排出用配管104を介してシスターンタンク103に排出される。
このとき、タンク102内の気体が吹き出す勢いは、気体排出用配管104の内径(流路断面積)で決まり、内径(流路断面積)が小さいほど気体排出用配管104を通過する速度、即ち、吹き出す勢いが強くなり、気体排出用配管104内の高温の湯をシスターンタンク103の方向へ押し出していく。
【0047】
ここで、気体排出用配管104に拡大部142を設けることにより、拡大部142において気体が吹き出す勢いは、内径(流路断面積)が大きくなることにより低下する。また、図8に示すように、押し上げられた高温の湯も拡大部142にて周囲に逃がすことができる。
【0048】
ここで、図13および図14を用いて比較例に係る給湯機の備える気体排出用配管6について説明する。
比較例の気体排出用配管6は、タンク102とシスターンタンク103とを接続する配管であるが、図13に示すように、拡大部が形成されていない。なお、気体排出用配管6の内径は、配管141(図7参照)と同じものとする。
そして、図14に示すように、タンク102から気体Gが排出される際、気体排出用配管6内の高温の湯の一部が持ち上げられ、シスターンタンク103内へ流出してしまう。これは、タンク102の上側に貯留された高温の湯の一部をタンク102の外部に排出している状態であり、熱の損失となっていた。
【0049】
このように、第3実施形態に係る給湯機101の気体排出用配管104は、図8に示すように、拡大部142を有することにより、気体Gのみをタンク102からシスターンタンク103に排出し、気体排出用配管104内の高温の湯がシスターンタンク103に流出することを阻止する。これにより、タンク102の上部に存在する気体Gを外部に排出する際の熱の損失を低減することができる。
また、配管141を拡大部142に対して縮小することにより、タンク102から気体排出用配管104へ放出される熱の損失を低減することができる。
そして、配管143を拡大部142に対して縮小することにより、拡大部142で気体Gが液面に達した際に、高温の液体が飛散しても拡大部142の上部が絞られているために、飛散した高温の液体は拡大部142に戻される。
【0050】
また、タンク102から排出される空気G(図8参照)は、水分を含んだ高温の蒸気であるが、気体排出用配管104がシスターンタンク103の上部と接続されていることにより、タンク1の上部に貯まった空気Gをシスターンタンク103へ逃がす。そして、高温の蒸気はシスターンタンク103で冷却され、オーバーフロー配管103b(図6参照)から排出される。このように、高温の蒸気が意図しない部分に吹き出されることを防止することができる。
【0051】
なお、タンク102(気体排出用配管104)内の膨張水(高温の湯)がシスターンタンク103へ流出しなくなったため、膨張分に相当する水は、タンク102の下部に接続されたタンク給水配管102aからタンク102の上方に配設されたシスターンタンク103へと流出する。
前述のように、ヒートポンプユニット105の沸き上げ運転時において、タンク102の下側の低温の水をヒートポンプ往き配管105aで吸込し、ヒートポンプ戻り配管105bを介して高温の湯をタンク102の上側から貯留しているため、タンク102の下部に接続されたタンク給水配管102aからシスターンタンク103へと流出する液体は、低温の水となる。
このため、沸き上げ時に発生する膨張水を高温の湯としてシスターンタンク103に流出させるのではなく、低温の水の状態でシスターンタンク103に流出させるため、膨張水のシスターンタンク103への排水による熱ロスを低減させることができる。
【0052】
なお、気体排出用配管104の拡大部142は、シスターンタンク103の水面が位置する高さに設けられているものとして説明したが、シスターンタンク103の水面より高い位置に拡大部142を設ける場合でも同様の効果が得られる。このため、拡大部142の位置は、シスターンタンク103の水面より高い位置に設けてもよい。
【0053】
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係る給湯機について説明する。第4実施形態に係る給湯機は、第3実施形態の気体排出用配管104(図7参照)に代えて、気体排出用配管104’(図9参照)を備えている。その他の構成は、第3実施形態に係る給湯機101(図6参照)と同様であり説明を省略する。
【0054】
<気体排出用配管104’>
図9を用いて、気体排出用配管104’について更に説明する。図9は、第4実施形態に係る給湯機の気体排出用配管104’の内部拡大図である。
気体排出用配管104’は、タンク102内の気体をシスターンタンク103に排出する配管であり、タンク102に接続される配管144と、拡大部142と、シスターンタンク103に接続される配管143とを備えている。
【0055】
図9に示すように、配管144は、一方がタンク102の孔102hと接続され、他方の先端が閉塞された閉塞部144eとなっている。そして、配管144の閉塞部144e側は、拡大部142の内部に突入するように配置されている。また、閉塞部144e側の配管144の側面に、配管144と拡大部142とが連通する連通部144hが形成されている。また、連通部144hは、気体排出用配管104の液面より低い位置となるように配置されている。なお、配管144の側面から空気を逃すという機能を果たせれば、連通部144hの数や位置は図9に限らない。
【0056】
図9および図10を用いて、気体排出用配管104’の動作について説明する。
図9に示すように、沸き上げ前、気体排出用配管104’内の水面は、拡大部142内の位置し、また拡大部142内に突入された配管144の閉塞部144e側の先端は水面に満たされている。
沸き上げ運転を行い低温の水が高温の湯となると、比容積が大きくなるため膨張し、タンク102内の圧力は上昇する。上昇した圧力は、タンク102の上部から気体排出用配管104’を介してシスターンタンク103へ圧力を逃がす。
【0057】
また、低温の水が高温の湯となる際に、低温の水に溶け込んでいた気体成分が分離し、タンク102の上部に溜まり、タンク102の上部に設けられた孔102hから気体排出用配管104’を介してシスターンタンク103に排出される。
このとき、タンク102内の気体Gが吹き出す勢いは、内径(流路断面積)が小さいほど配管を通過する速度、即ち、吹き出す勢いが強くなるが、気体排出用配管104’の配管144に閉塞部144eがあるため、吹き出された気体Gと気体Gに押し上げられた高温の湯とは、閉塞部144eに当り上方向へ噴出されない。そして、配管144の側面に形成された連通部144hは閉塞部144eより少し下に形成されるため、気体Gは閉塞部144eと側面に形成された連通部144hとの間に溜まり、気体Gと押し出された高温の湯は側面の連通部144hから拡大部142へ逃げていく。
【0058】
その後、気体Gの噴出が繰り返されても、閉塞部144eと連通部144hとの間に既に溜まっている気体が緩衝材となり、気体Gによって押し出された高温の湯は、側面の連通部144hから拡大部142へ逃げていく。加えて、拡大部142にて、押し出された高温の湯が逃げる空間が確保されているため、気体Gと共に高温の湯がシスターンタンク103に流出することを阻止する。これにより、タンク102の上部に存在する気体Gを外部に排出する際の熱の損失を低減することができる。
【0059】
また、タンク102内の気体Gがシスターンタンク103へ吹き出す勢いは、気体排出用配管104’の閉塞部144eで低減できるため、拡大部142の内径(流路断面積)を第3実施形態の気体排出用配管104の拡大部142(図7参照)と比較して小さくすることも可能となり、コンパクト化を図ることができる。
【0060】
また、第3実施形態と同様に、沸き上げ時に発生する膨張水を高温の湯としてシスターンタンク103に流出させるのではなく、低温の水の状態でシスターンタンク103に流出させるため、膨張水のシスターンタンク103への排水による熱ロスを低減させることができる。
【0061】
≪第5実施形態≫
次に、第5実施形態に係る給湯機について説明する。第5実施形態に係る給湯機は、第3実施形態の気体排出用配管104(図7参照)に代えて、気体排出用配管104’’(図11参照)を備えている。その他の構成は、第3実施形態に係る給湯機101(図6参照)と同様であり説明を省略する。
【0062】
図11を用いて、気体排出用配管104’’について更に説明する。図11は、第5実施形態に係る給湯機の気体排出用配管104’’の内部拡大図である。
気体排出用配管104’’は、タンク102内の気体をシスターンタンク103に排出する配管であり、タンク102に接続される配管141と、拡大部142と、シスターンタンク103に接続される配管145とを備えている。
【0063】
図11に示すように、配管145は、一方がシスターンタンク103の上部と接続され、他方の先端が閉塞された閉塞部145eとなっている。そして、配管144の閉塞部145e側は、拡大部142の内部に突入するように配置されている。また、閉塞部145e側の配管145の側面に、配管145と拡大部142とが連通する連通部145hが形成されている。そして、配管141と、配管145の閉塞部145eの中心が同じ直線状となるように配置されている。
【0064】
図12用いて、気体排出用配管104’の動作について説明する。
配管145の先端を塞ぎ閉塞部145eとすることにより、気体Gにより押し上げられた高温の湯は閉塞部145eに当り、拡大部142内の周囲に逃げた後、拡大部142内に落下する。これにより、シスターンタンク103へ高温の湯が流出することを阻止することができる。また、気体Gは、連通部145hを通りシスターンタンク103へ排出することができる。
また、気体排出用配管104’’は、タンク102を排水した際、拡大部142内の水も排水することができる。
【0065】
また、第3実施形態と同様に、沸き上げ時に発生する膨張水を高温の湯としてシスターンタンク103に流出させるのではなく、低温の水の状態でシスターンタンク103に流出させるため、膨張水のシスターンタンク103への排水による熱ロスを低減させることができる。
【0066】
なお、本実施形態に係る給湯機は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、液体が流出することを阻止する液体流出阻止部として、拡大部を形成する構成として説明したが、これに限定されるものではなく、真上に伸びる気体排出用配管をクランク形状にする構成としてもよい。また、気体排出用配管に多孔質部材を設けて、気体は多孔質部材を通気して排出され、液体は多孔質部材に当って外部に排出されないようにしてもよい。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、シスターンタンク内に気体を排出するものを例に説明したが、気体を外部に排出するものであればこれに限定されるものではなく、周囲の空間に排出するものであっても良い。また、タンクは大気開放されるものであればよく、シスターンタンクは必須の構成要素ではない。
【0069】
また、上記実施形態においては、ヒートポンプを用いて液体を加熱するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、タンクの内部に備えられるヒータによって液体を加熱するものであっても良い。
【0070】
また、上記実施形態においては、タンクには温水が貯留されるものとして説明したが、タンクに貯留される対象はこれに限定されるものではなく、液体であれば任意のものが考えられる。例えば、液体を直接的に給湯に用いることなく給水を間接的に加熱する熱媒体として用いるタイプの給湯機であれば、該液体が水以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 出湯管
4 蛇口
5 ヒートポンプユニット
6 ヒートポンプ往き配管
7 ヒートポンプ戻り配管
8 空気抜き用配管(液体流出阻止部、阻止体収容部、気体排出用配管)
9 シスターンタンク
10 タンク給水管
11 球体(液体流出阻止部、液体流出阻止体)
12 上部ストッパー
13 下部ストッパー
101 給湯機
102 タンク
102a タンク給水配管
102b 出湯配管
102h 孔
103 シスターンタンク
103a シスターン給水配管
103b オーバーフロー配管
104 気体排出用配管(気体排出機構)
141,144 配管(気体排出経路)
142 拡大部(気体排出経路、液体流出阻止部)
143,145 配管(気体排出経路、縮小部)
144e 閉塞部(突入部の先端)
144h,145h 連通部
145e 閉塞部(突入部の下端)
105 ヒートポンプユニット
105a ヒートポンプ往き配管
105b ヒートポンプ戻り配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気開放されたタンクを備える給湯機において、
前記タンクの上部に存在する気体をタンクの外部へ排出する気体排出機構を備え、
前記気体排出機構は、タンク内の気体が外部へ噴出する際に、液体の排出を阻止する一方、気体を外部へ排出する液体流出阻止部を有することを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記液体流出阻止部は、
前記気体排出機構の気体排出経路に設けられ、前記タンクに形成された前記気体を排出する孔の開口面積より大きい流路断面積を有する拡大部である
ことを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
前記拡大部と前記タンクに形成された前記孔とは、配管で接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項4】
前記気体排出経路において、該気体排出経路の前記拡大部より後方側には、該拡大部の流路断面積より小さい流路断面積を有する縮小部が設けられている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の給湯機。
【請求項5】
前記気体排出経路において、前記タンクに形成された前記孔から前記拡大部の内部空間に向かって伸びる突入部が設けられ、該突入部の先端は閉塞され、該突入部の側面には連通部が形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項6】
前記気体排出経路において、前記拡大部の後方への通路から前記拡大部の内部空間に向かって伸びる突入部が設けられ、該突入部の下端は閉塞され、該突入部の側面には連通部が形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項7】
前記液体流出阻止部は、液体流出阻止体と、該液体流出阻止体を収容する阻止体収容部とを備えて構成され、
前記液体流出阻止部は、液体流出阻止体と阻止体収容部との隙間を通って気体を排出させる一方、液体流出阻止体が噴出に伴って持ち上げられることで阻止体収容部との隙間を閉塞して液体の流出を阻止することを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項8】
前記阻止体収容部には、前記液体流出阻止体の可動範囲を規制するストッパーが上下に設けられ、
上方のストッパーは、前記液体流出阻止体と隙間なく接触し、
下方のストッパーは、前記液体流出阻止体と隙間を有して接触することを特徴とする請求項7に記載の給湯機。
【請求項9】
前記阻止体収容部は、前記気体排出用配管に設けられ、
前記液体流出阻止体は、前記気体排出用配管の径より小さい球体によって構成されることを特徴とする請求項7に記載の給湯機。
【請求項10】
前記上方のストッパーは、前記配管の周方向全体に亘って径方向内方に突出する突出部によって構成され、
前記下方のストッパーは、前記周方向の一部において径方向内方に突出する突出部によって構成されることを特徴とする請求項9に記載の給湯機。
【請求項11】
前記液体流出阻止体は、水よりも比重が小さいことを特徴とする請求項7に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−242116(P2011−242116A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258749(P2010−258749)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】