説明

給紙装置、画像形成装置

【課題】単純な構成を付加することで、用紙設定時のエラーを防止する機能を追加した画像形成装置の給紙装置を提供する。
【解決手段】本発明の給紙装置は、給紙ローラ43よりも給紙方向の上流側におけるフラッパ41の上方位置に形成された用紙進入阻止部材50を備える。フラッパ70は、給紙方向の下流側に係る一部上面が給紙ローラ43と接触する高さ位置となる第1状態と、前記一部上面が給紙ローラ43よりも下方の高さ位置となる第2状態の間で、高さ位置を上下方向に揺動可能に構成されている。用紙進入阻止部材50は、フラッパ70が前記第1状態にある場合には、下端がフラッパ70の上面と接触し、フラッパ70が前記第2状態にある場合には、下端とフラッパ70の上面の間に上下方向の空間が形成されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に取り付けられた給紙トレイ上に配置された用紙を用紙搬送機構へと送り出すための給紙装置に関する。また、本発明はこのような給紙装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、並びにこれらの機能を複合した複合機などの画像形成装置においては、筐体の側面に手差し給紙トレイが取り付けられているのが一般的である。この手差し給紙トレイ上には、上下方向に揺動可能なフラッパ、フラッパの本体側端部に近接して配置された給紙ローラ、給紙ローラに弾接状態で配設されるゴム等の弾性体からなる分離パッド(分離部材)、フラッパを給紙ローラに向かって常時上向きに弾力付勢するバネ(スプリング)、フラッパを押し下げ又はこの押し下げを解除するためのレバーが設けられている。
【0003】
上記給紙装置は、フラッパ上に載置された用紙を給紙ローラに圧接させた状態で給紙ローラを回転させると、この用紙が用紙搬送機構へと送り出されるように構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−8907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置のいくつかの機種は、ユーザに対して、手差し給紙トレイ上への用紙のセット時にフラッパの押し下げ操作を要求する。特に安価に構成されたいわゆる低級機において、ユーザに対して前記の操作を要求するものが存在する。ユーザがフラッパを押し下げることで、筐体とフラッパの間に上下方向の空間が形成されるため、この状態でユーザが用紙をフラッパ上に載置させることで、用紙の先端を給紙方向にフラッパの奥まで進入させることができる。そして、その後にフラッパの押し下げを解除し、バネの付勢によってフラッパを上方向に押し上げることで、用紙を給紙ローラと分離パッドのニップ部に正しくセットすることが可能となる。給紙ローラと分離パッドの間で正しくニップされた用紙は、給紙ローラの回転により1枚ずつ用紙搬送機構へと搬送される。
【0006】
ところで、前記のような低級機においては、手差し給紙トレイを上向きに開いた状態において、フラッパを押し下げる前であっても筐体とフラッパの間に上下方向の狭い隙間が形成されているのが通常である。このため、ユーザによって、フラッパを押し下げることなく用紙をフラッパ上に載置させ、前記の隙間に沿って用紙の先端を無理やり奥まで進入させるという誤った方法で用紙設定が行なわれてしまう場合がある。
【0007】
フラッパを押し下げることなくフラッパ上に用紙を載置した場合、フラッパと筐体の上下方向の隙間はそれほど広くないため、用紙の先端が給紙ローラと分離パッドのニップ部にセットされず、その位置よりも給紙方向の上流側の位置で用紙の挿入が止まってしまう。
【0008】
給紙ローラの手前側(給紙方向の上流側)には、用紙がセットされているか否かを判定するためのセンサが設けられている機種が多い。このセンサによって用紙がセットされていることが判定された状態で、印刷指示が与えられると、画像形成装置に備えられている制御部の制御によって給紙ローラの回転が開始される。
【0009】
フラッパを押し下げることなくフラッパ上に用紙を載置した場合においても、筐体の壁付近までは用紙が届いているので、センサによって用紙の存在が検出される。このため、印刷指示が与えられると、給紙ローラは回転を開始する。しかし、給紙ローラと分離パッドの間に用紙が正しくニップされていないため、給紙ローラは用紙を正しく捕まえることができず、用紙搬送機構側へ用紙の送り出しが行えない。これにより、制御部は、用紙のセットに関する何らかのエラーが生じていることを認識し、表示部に対してその旨のエラー表示を行わせる。
【0010】
このとき、ユーザは、用紙をセットしたにも関わらず、用紙のセットに関するエラー表示がされていることに対して当惑し、その結果、エラーの原因を突き止めるのに多くの時間を費やしてしまう可能性がある。また、会社等で複数のユーザが同一の機器を利用している場合においては、同じようなエラーが幾度となく表示されるおそれもある。
【0011】
比較的高価の機種においては、手差し給紙トレイの引き出しに起因して自動的にフラッパが押し下がるように構成されているものが存在する。このような構成であれば、上記のような問題点が顕在化するおそれはほとんどない。しかし、このような機能を付加するためには、低級機に対して多くの部品や制御機構を追加する必要があるため、低級機と同等の価格帯でユーザに提供することが難しい。また、既に低級機を導入しているユーザにとってみれば、上記のエラーの発現頻度を低下させるためだけに、画像形成装置の買い替えを行うことはなかなか容易なことではない。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑み、単純な構成を付加することで、用紙設定時のエラーを防止する機能を追加した画像形成装置の給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、本発明に係る給紙装置は、用紙が上面に載置されるフラッパと、前記フラッパ上に載置された用紙を給紙方向の下流側に搬送するための給紙ローラと、前記給紙ローラよりも前記給紙方向の上流側における前記フラッパの上方位置に形成された用紙進入阻止部材と、を備えている。
【0014】
前記フラッパは、前記給紙方向の下流側に係る一部上面が前記給紙ローラと接触する高さ位置となる第1状態と、前記一部上面が前記給紙ローラよりも下方の高さ位置となる第2状態の間で、高さ位置を上下方向に揺動可能に構成されている。
【0015】
前記用紙進入阻止部材は、前記フラッパが前記第1状態にある場合には、下端が前記フラッパの上面と接触し、前記フラッパが前記第2状態にある場合には、下端と前記フラッパの上面の間に上下方向の空間が形成されるように構成されている。
【0016】
このように構成されるとき、フラッパを下向きに押し下げる前の時点、すなわち第1状態にある場合には、用紙進入阻止部材の下端とフラッパの上面が接触している。このとき、ユーザがフラッパ上に用紙を載置しても、用紙進入阻止部材が壁となって、それよりも給紙方向の下流側に用紙を進入させることができない。よって、ユーザは用紙を奥まで進入させることができないことに気づき、用紙設定方法に誤りがあることを事前に認識することが可能となる。
【0017】
そして、ユーザによってフラッパが下向きに押し下げられて第2状態になると、フラッパの上面と用紙進入阻止部材の下端の間に空間が形成されるため、この状態でフラッパ上に用紙を載置させることで、用紙の先端を奥まで進入させることができる。その後、再びフラッパの押し下げを解除して第1状態に戻すことで、用紙の先端を給紙ローラに接触させることができ、正しく用紙がニップされる。
【0018】
なお、前記用紙進入阻止部材は、樹脂、フィルム、ゴム等の各種材料によって構成することが可能である。
【0019】
また、本発明に係る給紙装置は、上記構成に加えて、前記フラッパ上に用紙が載置されているか否かを検出するセンサを備えることができる。このセンサは、前記フラッパ上に載置された用紙の先端が、前記用紙進入阻止部材よりも前記給紙方向の上流側に位置している場合には、用紙の載置を検出せず、前記フラッパ上に載置された用紙の先端が、前記用紙進入阻止部材よりも前記給紙方向の下流側の所定位置より下流側に位置している場合には、用紙の載置を検出する。
【0020】
このように構成されるとき、仮にユーザがフラッパを押し下げることなくフラッパ上に用紙を載置させた場合には、センサによって用紙の載置が検出されない。よって、センサによって用紙の載置が検出された場合にのみ給紙ローラの回転制御がなされる構成であれば、上記のように誤った方法で用紙が載置された状態で印刷指示が行われても、給紙ローラの回転制御がなされない。これにより、ユーザは用紙載置に誤りがあることを容易に認識することが可能である。なお、フラッパを押し下げた状態(第2状態)で用紙をフラッパ上に載置させた場合には、用紙の先端を用紙進入阻止部材よりも下流側に進入させることができるため、センサによって用紙の載置が検出される。従って、その後に印刷指示がなされると給紙ローラの回転制御が行われる。
【0021】
また、本発明に係る給紙装置においては、前記用紙進入阻止部材を上下方向に移動可能に構成するのが好適である。更にこのとき、前記フラッパの前記第2状態から前記第1状態への遷移途中に、前記フラッパの上面と前記用紙進入阻止部材の下端が接触すると、前記フラッパの上面の上方向への移動に連れて前記用紙進入阻止部材の下端が前記フラッパの上面と接触状態を維持しながら上方向に移動する構成とするのが好適である。
【0022】
このように構成することで、装置製造時における寸法誤差が生じても、用紙進入阻止部材の機能を確保することが可能となる。すなわち、仮に用紙進入阻止部材が上下方向に移動不可能な構成であって、用紙進入阻止部材が上下方向に長く製造されてしまった場合、フラッパの押し下げが解除されて第2状態から第1状態に遷移しようとすると、フラッパの上面が用紙進入阻止部材の下端に接触した時点でフラッパ上面の高さ位置の上昇が停止される。この時、フラッパの上面が給紙ローラと接触する高さ位置に達することなくフラッパの上面の上昇が停止してしまうおそれがある。この場合、フラッパ上に載置された用紙を給紙ローラによって正しくニップすることができない。
【0023】
これに対し、用紙進入阻止部材を上下方向に移動可能に構成することで、仮に用紙進入阻止部材が上下方向に長く製造されてしまった場合を想定する。このとき、フラッパの押し下げが解除されて第2状態から第1状態に遷移しようとして、フラッパの上面が用紙進入阻止部材の下端に接触したとしても、それ以後フラッパの上昇に連れて用紙進入阻止部材の下端の高さ位置も上昇させることができる。つまり、用紙進入阻止部材がフラッパの上面の高さ位置の上昇を遮るということがない。これにより、給紙ローラと接触する高さ位置に達するまで、フラッパの上面の高さ位置を上昇させることができる。従って、製造時に寸法誤差が生じても、フラッパ上に載置された用紙を正しく給紙ローラにニップすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の構成によれば、用紙進入阻止部材を追加するのみで、ユーザが誤ってフラッパを押し下げることなくフラッパ上に用紙を載置させることを防ぐ効果が得られる。これにより、従来機種に対して少ない部品の追加のみによって印刷時のエラー頻度を低下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の給紙装置を備えた画像形成装置の概略斜視図である。
【図2】手差し給紙トレイを開いた状態を示す概略斜視図である。
【図3】手差し給紙トレイを開いた状態を示す詳細な概略斜視図である。
【図4】手差し給紙トレイにおけるシャッター部分の拡大図である。
【図5A】フラッパを押し下げる前における、給紙ローラの周辺部を給紙方向にほぼ直交する方向から見たときの概念図である。
【図5B】フラッパを押し下げた後における、給紙ローラの周辺部を給紙方向にほぼ直交する方向から見たときの概念図である。
【図5C】フラッパを押し下げる前における、従来の画像形成装置における給紙ローラの周辺部を給紙方向にほぼ直交する方向から見たときの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明に係る給紙装置を備えた一実施形態である画像形成装置の概略斜視図である。なお、画像形成装置としては、複写機、プリンタ、ファクシミリ又はこれらのうちの複数の機能を兼ね備えたいわゆる複合機のいずれであってもよい。
【0027】
画像形成装置1は、用紙を搬送する用紙搬送機構や、用紙に画像を形成する画像形成機構(いずれも不図示)を内部に備えた本体部3の下側に、用紙を収納する給紙カセット5を有し、また、本体部3の上側に、原稿トレイ7上に載置された原稿を搬送する自動原稿搬送装置(ADF)9を有している。本体部3は、カバー11により覆われており、カバー11の一方の側面12には、手差しで用紙をセットするための手差し給紙トレイ21が配置されている。
【0028】
図2は、手差しト給紙トレイを開いた状態における概略斜視図である。また、図3は手差し給紙トレイを開いた状態の本体部の内部構造を詳細に示した図面である。
【0029】
図2に示すように、本実施形態における手差し給紙トレイ21は、3段スライド伸縮可能な構成としている(21a,21b,21c)。使用時には、ユーザによって手差し給紙トレイに設けられた把持部31を開き、給紙のために載置する用紙のサイズに応じて適宜その伸張を行うことができる構成である。図3では、手差し給紙トレイ21bのみを伸ばした状態の図面を図示している。なお、本発明において、スライド段数は3に限られるものではなく、またスライド式でない構成としてもよい。
【0030】
手差し給紙トレイ21の本体部3側(給紙方向の下流側)の前端部には、載置される用紙を上向きに付勢するためのフラッパ41と、このフラッパ41の前端部に近接して配置される給紙ローラ43と、給紙ローラ43に接触して配置されたゴムなどの弾性体からなる分離パッド45(後述する図5A参照)が備えられる。また、給紙ローラ43の両外側には、給紙方向に対する幅方向に形成された給紙ガイド47が備えられる。給紙ガイド47は、給紙ローラ43と分離パッド45の間にニップされ、給紙ローラ43の回転によって繰り出された用紙を、本体部3内部の用紙搬送機構へと導くための部材である。なお、用紙を載置した後、用紙が給紙方向に対する幅方向へのズレを防止するための幅寄せガイド42が備えられている。
【0031】
フラッパ41は、その下方に配置されたバネ61によって上向きに付勢されている(後述する図5A参照)。
【0032】
また、フラッパ41の上方において、前記幅方向の一方の端部付近には、操作レバー49が設置されている。この操作レバー49は、ユーザによって上方向に引き上げられることで、フラッパ41及びその下方に形成されているバネ61を下向きに押し下げる。操作レバー49は、所定の位置まで引き上げられた時点で、それ以上引き上げられないように固定される。逆に、引き上げられていた操作レバー49を下向きに引き下げる(引き上げを解除する)と、フラッパ41の押し下げる力が弱められ、下方に配置されたバネ61の付勢により、フラッパ41の位置が上方へと移動する。
【0033】
なお、操作レバー49は上記の態様に限定されるものではない。すなわち、操作レバー49が操作されることで、フラッパ41及びその下方に形成されているバネ61を下向きに押し下げる状態と、その押し下げを解除してフラッパ41の上面の一部が給紙ローラ43に接触するまでの高さに押し上げる状態の間で切り替え可能に構成されていればよい。後者が「第1状態」に対応し、前者が「第2状態」に対応する。
【0034】
更に、この手差し給紙トレイ21は、フラッパ41の上方において、給紙ローラ43よりも手前側(給紙方向とは反対側)の位置に、用紙進入阻止部材としてのシャッター50を備えている。このシャッター50の詳細な構造を図4に示す。
【0035】
図4は、シャッター50を本体部3側から見たときの概略構造図である。本体部3内に固定されたシャッター取付部材51の長穴部53にシャッター50の爪部55を嵌め込むことで、シャッター取付部材51にシャッター50をスナップフィットによって容易に取り付けることができる。なお、シャッター取付部材51を、本体部3内のカバーの一部が兼用してもよい。
【0036】
シャッター50の爪部55は、長穴部53内をd1方向に容易に移動することができる。フラッパ41の上面が、シャッター50の下端よりも低い位置に存在する場合には、シャッター50の自重により爪部55が長穴部53の下端に位置するところで停止する。また、フラッパ41の上面がシャッター50の下端に接触する場合には、フラッパ41がその下方のバネ61の付勢により上方に押し上げられると、フラッパ41の上方への移動に連れて爪部55が長穴部53内を上方に移動することで、シャッター50の下端はフラッパ41の上面との接触を維持しながら上方に移動する。
【0037】
図5A及び図5Bは、図3における給紙ローラ43の周辺部を給紙方向にほぼ直交する方向から見たときの概念図である。図5Aはフラッパ41を押し下げる前の状況、図5Bはフラッパ41を押し下げた後の状況をそれぞれ示している。
【0038】
図5Aに示すように、フラッパ41を押し下げる前の状況においては、フラッパ41はバネ61によって手差し給紙トレイの底部65の上方に付勢されている。そして、シャッター50の下端がフラッパ41の上面に接触しており、この位置において上下方向の隙間は形成されていない。よって、この状況下で用紙70をフラッパ41の上面に載置した場合、ユーザが用紙をどれだけ給紙ローラ43側(給紙方向の下流側)に進入させようとしても、シャッター50が壁になってそれよりも奥に用紙を進入させることができない。
【0039】
従って、給紙ローラ43に近接して用紙有無を検知するためのセンサ63が形成されている場合、図5Aのようにシャッター50よりも手前側(給紙の上流側)で用紙の進入がストップしている状況では、このセンサ63によって用紙の存在が検出されない。つまり、センサ63は、用紙が検出できない旨の信号を装置1の制御部(不図示)に出力する。よって、この状況で印刷指示が与えられた場合、制御部は用紙が検出できていない旨のエラーを表示させ、給紙ローラ43の回転制御を行わない。ユーザは、このエラー表示を確認することで、用紙が正しくセットできていないことを知ることができる。
【0040】
一方、ユーザが操作レバー49を操作して、フラッパ41を底部65の近接位置まで押し下げた場合、図5Bのように、シャッター50の下端とフラッパ41の上面の間には上下方向の空間71が確保される。よって、この状況下で用紙70をフラッパ41の上面に載置した場合、フラッパ41の下流側の奥まで用紙70の先端部を進入させることができる。これにより、その後に再び操作レバー49を操作してフラッパ41を上昇させると、給紙ローラ43と分離パッド45のニップ位置72に用紙をセットすることが可能となる。よって、この状況で印刷指示が与えられた場合、制御部によって給紙ローラ43の回転制御が行われて、ニップされた用紙70を用紙搬送機構側へ送り出すことができる。
【0041】
図5Cに示すように、シャッター50を備えない従来構成の画像形成装置の場合には、フラッパ41が押し下げられていない状態であっても、フラッパ41の上面の上方に隙間73が形成されているため、給紙ローラ43の近傍まで用紙を進入させることが可能である。このとき、センサ63は用紙70の存在を検出することができるため、印刷指示が与えられると、制御部は給紙ローラ43の回転制御を開始する。しかし、用紙70の先端がニップ位置72には届いていないため、給紙ローラ43は用紙70を正しく捕まえることができず、用紙搬送機構側へ用紙の送り出しが行えない。
【0042】
以上説明したように、本装置1によれば、フラッパ41を押し下げずに用紙70をフラッパ41上に載置させた場合においては、センサ63によって用紙の存在を検出できないため、印刷指示が与えられても給紙ローラ43の回転が行われる前に用紙の載置が正しくされていない旨のエラー表示を発することができる。これにより、ユーザは、エラーの原因及びその解決策を容易に突き止めることができる。
【0043】
そして、本装置1は、フラッパ41を押し下げることなく用紙70がセットされた場合に用紙の進入を阻止する部材としてのシャッター50を取り付けるだけで実現できる。つまり、従来構成の画像形成装置に対して少ない部品を追加するのみで実現できるため、ユーザに対して高価な機種の買い替えを要求することなく、上記の効果を実現することができる点で極めて有益な技術である。
【0044】
なお、本実施形態では、爪部55が長穴部53内を上下方向に移動自在にすることで、シャッター50の下端の高さ位置を爪部55の移動位置に応じて変更可能な構成とした。これは、製造時における寸法誤差を考慮したものである。すなわち、設計誤差の存在により、仮にシャッター50の下端がニップ位置72よりも下方に位置するように製造されてしまった場合、シャッター50が上下方向に移動できない場合には、フラッパ41の押し下げを解除すると、フラッパ41の上面がシャッター50の下端に接触した時点で押し上げが停止してしまう。つまり、フラッパ41の上面を給紙ローラ43に接触させることができず、この結果フラッパ41の上面に載置された用紙70をニップすることができなくなるおそれがある。
【0045】
他方、シャッター50の下端がニップ位置72よりもはるか上方に位置するように製造されてしまった場合には、フラッパ41の押し下げ前の状況で、フラッパ41とシャッター50の下端の間に隙間ができてしまう。このとき、シャッター50が、フラッパ41の押し下げ前における用紙70の給紙方向への進入阻止部材としての機能を果たさなくなってしまう。
【0046】
これに対し、シャッター50を上下方向に移動自在な構成とすることで、前述と同様に、仮にシャッター50の下端がニップ位置72よりも下方に位置するように製造されてしまったとしても、フラッパ41の押し下げの解除時に、フラッパ41の上面がシャッター50の下端に接触した後、更に爪部55を長穴部53内に上方向に移動させながら、シャッター50と共にフラッパ41を上方向に移動させることができる。よって、このような場合においても、フラッパ41の上面に載置された用紙70を正しくニップさせることができる。
【0047】
つまり、製造時における寸法誤差のおそれがない場合であれば、シャッター50の高さ位置を固定にしても問題はない。
【0048】
また、シャッター50は、フラッパ41と給紙ローラ43が接触している(ニップされている)状態においては、シャッター50の下端がフラッパ41の上面と接触している必要がある。なぜなら、もしフラッパ41と給紙ローラ43が接触している状態において、シャッター50の下端がフラッパ41の上面よりも上方に存在していれば、フラッパ41を押し下げる前の時点で、フラッパ41の上方に空間が形成されることとなり、従来と同様の問題が顕在化してしまうためである。
【0049】
他方、フラッパ41を下方に押し切った状況において、フラッパ41の上面とシャッター50の下端の間には、手差し給紙トレイ21の設置可能枚数として想定されている枚数の用紙70を積み重ねたときの厚み以上の空間が上下方向に形成されることが望ましいが、この要件は必須の要件ではない。すなわち、用紙70をセットする際に用紙70によって爪部55が長穴部53内を上向きに移動させられる結果、シャッター60の下端の位置が上方に移動し、セット可能な用紙70の枚数を増加できる構成である場合には、フラッパ41の押し下げ時に、必ずしも設置可能枚数の用紙70の厚み以上の空間を要求されるわけではない。ただしこの場合は、上記実施形態で説明した構成のようにシャッター50の下端位置が上下方向に移動自在であることが前提となる。
【0050】
なお、シャッター50の材質としては、プラスチック、ゴム、フィルム素材等、種々の材料を利用することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、シャッター50を手差し給紙トレイに設ける構成を想定して説明したが、同様のシャッター50を給紙カセット5内の給紙トレイに設ける構成としても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1: 画像形成装置
3: 本体部
5: 給紙カセット
9: 自動原稿搬送装置(ADF)
11: カバー
12: カバーの一方の側面
21: 手差し給紙トレイ(21a,21b,21c)
31: 把持部
41: フラッパ
42: 幅寄せガイド
43: 給紙ローラ
45: 分離パッド
47: 給紙ガイド
49: 操作レバー
50: シャッター
51: シャッター取付部材
53: 長穴部
55: 爪部
61: バネ
63: 用紙検出センサ
65: 手差し給紙トレイの底部
70: 用紙
71: 空間
72: ニップ位置
73: 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙が上面に載置されるフラッパと、
前記フラッパ上に載置された用紙を給紙方向の下流側に搬送するための給紙ローラと、
前記給紙ローラよりも前記給紙方向の上流側における前記フラッパの上方位置に形成された用紙進入阻止部材と、を備え、
前記フラッパは、
前記給紙方向の下流側に係る一部上面が前記給紙ローラと接触する高さ位置となる第1状態と、前記一部上面が前記給紙ローラよりも下方の高さ位置となる第2状態の間で、高さ位置を上下方向に揺動可能に構成されており、
前記用紙進入阻止部材は、
前記フラッパが前記第1状態にある場合には、下端が前記フラッパの上面と接触し、
前記フラッパが前記第2状態にある場合には、下端と前記フラッパの上面の間に上下方向の空間が形成されるように構成されていることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記フラッパ上に用紙が載置されているか否かを検出するセンサを備え、
前記センサは、
前記フラッパ上に載置された用紙の先端が、前記用紙進入阻止部材よりも前記給紙方向の上流側に位置している場合には、用紙の載置を検出せず、
前記フラッパ上に載置された用紙の先端が、前記用紙進入阻止部材よりも前記給紙方向の下流側の所定位置より下流側に位置している場合には、用紙の載置を検出することを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記用紙進入阻止部材が上下方向に移動可能に構成されており、
前記フラッパの前記第2状態から前記第1状態への遷移途中に、前記フラッパの上面と前記用紙進入阻止部材の下端が接触すると、前記フラッパの上面の上方向への移動に連れて前記用紙進入阻止部材の下端が前記フラッパの上面と接触状態を維持しながら上方向に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記フラッパが前記第2状態にある場合に、前記用紙進入阻止部材の自重によって当該用紙進入阻止部材の下端の高さ位置が最も低くなることを特徴とする請求項3に記載の給紙装置。
【請求項5】
装置筐体と連結して設置された取付部材を有し、
前記用紙進入阻止部材に設けられた爪部が、前記取付部材上に前記フラッパの上面に対して遠ざかる方向に設けられた長穴部に嵌め込まれることで、前記用紙進入阻止部材がスナップフィットによって前記取付部材に連結して取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記フラッパの前記第2状態から前記第1状態への遷移途中に、前記フラッパの上面と前記用紙進入阻止部材の下端が接触すると、前記フラッパの上面の上方向への移動に連れて、前記爪部が前記長穴部内を上方向に移動することを特徴とする請求項5に記載の給紙装置。
【請求項7】
手差し給紙トレイを有する手差し給紙装置を備えた画像形成装置であって、
前記手差し給紙装置が請求項1〜6の何れか1項に記載の給紙装置で構成され、
前記フラッパが前記手差し給紙トレイ上に支持されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2013−49536(P2013−49536A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189146(P2011−189146)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】