説明

給紙装置および画像形成装置

【課題】カールを生じた記録紙などの記録媒体の給送を適正化することにより、繰り出し不良を未然に防止できる構成を備えた給紙装置を提供する。
【解決手段】積載された複数の記録紙の繰り出し方向先端部を上昇させる上昇部103を供えた載置部材101と、上昇部103に対向する回転可能な繰り出し部材104とを備え、上昇部103が上昇した際に繰り出し部材104と記録紙とが接触することにより記録紙の挟持位置Nを構成可能な給紙装置100において、繰り出し部材104の外周部近傍には、記録紙の繰り出し方向先端上面に対向して配置されるとともに、挟持位置Nに向け繰り出される記録紙の繰り出し方向先端を繰り出し部材104の回転方向下流側に向け指向させて挟持位置Nに誘導する誘導部材120を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置および画像形成装置に関し、特に、給紙部におけるカール紙を対象とした給紙が可能な機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの機能を複合させて備えた画像形成装置には、インクなどの液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを備えた液体吐出装置を用いる構成や、電子写真方式により、静電潜像を現像剤の供給により可視像処理する構成などが知られている。
【0003】
前者の液体吐出装置では、記録紙等の記録媒体を搬送しながら記録ヘッドから吐出される液滴を付着あるいは浸透させることで画像を形成するようになっている。
【0004】
なお、記録媒体の対象となるものとして、上述した記録紙だけでなく、糸などの繊維、皮革や金属さらには樹脂やガラス、木材そしてセラミックスなどの液体の付着あるいは浸透が可能な材質がある。
【0005】
液体吐出装置を備えた画像形成装置においては、液体吐出ヘッドからのインク吐出動作を安定化させるために、液体吐出ヘッド内のインクを所定の負圧に維持する(液体吐出ヘッド内のインクに作用する圧力を所定の負圧に保つ)ことが重要である。このため、一般には、液体吐出ヘッドにインクを供給するインク供給系中に負圧発生手段を備え、その負圧発生手段によって負圧を付与したインクを液体吐出ヘッドに供給している。
【0006】
後者の電子写真プロセスを用いた画像形成装置では、潜像担持体として用いられる感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。
潜像担持体に形成された静電潜像は現像装置により可視像処理された後、記録紙などの記録媒体に可視像として転写される。
【0007】
液滴吐出装置を用いる構成および電子写真方式を用いる構成のいずれにおいても、記録媒体への画像形成により複写出力を得るようになっているが、記録媒体の一つである記録紙は、給紙カセットから搬送される場合や給紙カセットとは別に設けられている手差しトレイなどから転写部に向けて給紙される。
【0008】
給紙カセットには、複数枚の記録紙を積載した状態で一枚ずつ繰り出しを行う構成が知られており、その構成としては、カセット本体において記録紙先端を繰り出しローラに向け変位させる載置板を備え、載置板に積載されている記録紙の内で最上位のものが繰り出しローラに当接すると繰り出しローラの回転力により繰り出される構成が知られている。
【0009】
ところで、載置板上に積載されている記録紙は、先端にカール癖が付いている場合がある。カール癖は、記録紙が置かれている雰囲気温度や湿度の影響あるいは両面への画像形成時において一面が加熱定着された際などのように繊維の伸縮率が他の面と異なることが原因して発生する。
【0010】
カール癖は、記録紙の長手方向と直角な方向に相当する幅方向に発生する場合の他に、記録紙の長手方向に繊維方向が平行するY目(以下、縦目ともいう)と称される記録紙の繊維方向が搬送方向に平行した場合のように、搬送方向に平行して発生する場合がある。
【0011】
搬送方向に平行したカール癖は、搬送方向に沿って下向き凹状に発生する場合の他に、上向き凹状に発生する場合がある。
【0012】
一方、給紙方式には、上述した給紙カセットを水平方向に設定し、内部に位置する載置板を押し上げて繰り出しローラに記録紙を接触させる方式(例えば、特許文献1)に加えて、斜め給紙方式、つまり、給紙台を斜めに配置し、重力を利用して載置板に積載された記録紙を繰り出しローラに向け繰り出す方式(例えば、特許文献2)がある。
【0013】
いずれの給紙方式においても、積載された記録紙のうちから一枚のみを繰り出す必要があり、このための記録紙分離構成の一つとして、記録紙先端を上昇方向に移動させるように傾斜させた摩擦パッドを用いた構成が知られている(特許文献1,2)。
【0014】
この構成は、繰り出しローラに接触する重送状態の記録紙を、繰り出しローラと最上位の記録紙との間での摩擦力、重送状態にある記録紙間での摩擦力および摩擦パッドとこれに接触する記録紙との間の摩擦力とを異ならせることにより、繰り出しローラに接触している最上位の記録紙のみを、その下位にある記録紙から捌くことにより一枚に分離させることができる構成である。
【0015】
摩擦パッドを用いた分離構成により記録紙を分離しようとした場合、記録紙にカール癖が付いていると分離位置に向けて適正な繰り出しができないという問題がある。
そこで、従来では、このような不具合を解消する構成として、幅方向のカール癖を矯正するためにサイドフェンスの上部にカールを抑える方向に湾曲した規制部材を設ける構成(特許文献1)、記録紙上面を押圧可能なコロやリブを設けた構成(特許文献2)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記各特許文献に開示されているカール癖矯正機構に関し、特許文献1では記録紙の幅方向両端が上方に反り返るカールを対象としており、特許文献2では搬送方向両端が下側に向け反り返ってその中間部が上側に膨らむ下向き凹状のカールを対象としている。
【0017】
一方、カール癖には、特許文献2に開示されている形態とは逆に、搬送方向先端が上向きに反り返る状態、つまり、搬送方向に沿って上向き凹状に発生する場合がある。
【0018】
この場合には、記録紙の繰り出し方向先端は繰り出しローラの周面に突き当たりやすくなる。
例えば、記録紙の繰り出し方向先端を持ち上げて繰り出しローラとで挟持することにより記録紙を分離位置に向け繰り出すようにした構成を用いた場合に上述した現象が発生すると、記録紙の繰り出しが適正に行われなくなり、結果として繰り出し不良や分離不能状態を招く虞がある。
【0019】
特許文献1,2に開示されている従来の機構においては、このように上向き凹状に発生するカール癖を持つ記録紙の繰り出しに関する対策が採られていない。
【0020】
カール癖が生じていない場合には、繰り出しのための挟持位置に向けた記録紙の繰り出し方向と挟持位置での記録紙通過方向とが一致するので、挟持位置への誘導が容易となる。
しかし、例えば、繰り出しローラが反時計方向に回転して、記録紙の挟持位置が下周面に設定されている場合に記録紙の搬送方向先端が繰り出しローラの回転方向と反対側となる上向きに反り返っていると、先端が捲れ上がっていることが原因して繰り出しローラの回転を利用した挟持位置への誘導が困難になりやすい。
【0021】
このような不具合を避けるには、載置板に積載された最上位の記録紙先端を予め繰り出しローラに接触させることでカールが生じている先端をローラの周面で押さえるようにすることも考えられる。しかし、このような方法では、常時記録紙先端を繰り出しローラに突き当てるように記録紙先端を持ち上げておく必要があるので、例えば、記録紙が積載される載置板の先端を上方に持ち上げておくことになる。この結果、持ち上げたままの載置板には、下降することができる載置板とした場合よりも積載される記録紙の量が少なくなるので、記録紙の消費による補充作業の頻度が高まる虞がある。このように、上向き凹状のカール癖が生じている記録紙を繰り出す場合には、作業性が悪くなる虞がある。
【0022】
本発明の目的は、上記従来の給紙部における問題に鑑み、カールを生じた記録紙などの記録媒体の給送を適正化することにより、繰り出し不良を未然に防止できる構成を備えた給紙装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)積載された複数の記録紙の繰り出し方向先端部を上昇させる上昇部を供えた載置部材と、該上昇部に対向する回転可能な繰り出し部材とを備え、前記上昇部が上昇した際に前記繰り出し部材と記録紙とが接触することにより記録紙の挟持位置を構成可能な給紙装置において、
前記繰り出し部材の外周部近傍には、前記記録紙の繰り出し方向先端上面に対向して配置されるとともに、前記挟持位置に向け繰り出される記録紙の繰り出し方向先端を前記繰り出し部材の回転方向下流側に向け指向させて前記挟持位置に誘導する誘導部材を備えていることを特徴とする給紙装置。
(2)前記挟持位置は前記繰り出し部材の略法線上に設定され、該挟持位置を基準として、前記繰り出し部材の回転方向上流側で繰り出し部材の回転中心を通る水平線よりも挟持位置側に偏倚した位置に前記誘導部材の繰り出し方向先端が配置されていること特徴とする(1)に記載の給紙装置。
(3)前記誘導部材の繰り出し方向先端の位置は、前記繰り出し部材の回転方向において前記挟持位置の上流側で、前記繰り出し部材の回転中心を基準とした座標面の第3象限における水平線よりも垂直線側に偏らせた位置に設定されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の給紙装置。
(4)前記誘導部材は、前記繰り出し部材の軸方向両側に配置されているサイドフェンスにおける記録紙の繰り出し方向先端上部側に設けられ、該サイドフェンスにおける記録紙の繰り出し方向先端側から前記繰り出し部材の外周近傍に先端が延長され、該先端は、前記繰り出し部材の回転方向において、前記挟持位置の上流側で、前記繰り出し部材の回転中心を基準とした座標面の第3象限における水平線よりも垂直線側でかつ前記挟持位置側に偏らせて配置されていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の給紙装置。
(5)前記載置部材および前記繰り出し部材は、前記記録紙を重力により前記挟持位置に向け移動させる構成を対象としていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の給紙装置。
(6)(1)乃至(6)のいずれかに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、挟持位置に向け繰り出される記録紙の繰り出し方向先端を前記繰り出し部材の回転方向下流側に向け指向させて記録紙の繰り出し方向先端を挟持位置に誘導する誘導部材を備えているので、記録紙にその搬送方向に沿って上向きの凹状カールが生じていた場合に、その繰り出し方向先端が誘導部材により挟持位置近傍までガイドされて適正に挟持されることができる。
【0025】
特に、誘導部材は、記録紙の繰り出し方向に沿った先端位置として、繰り出し部材の回転により記録紙の繰り出し方向先端を挟持位置に向け指向させ易い位置、換言すれば、反り返っている記録紙の先端が繰り出しローラの回転力を利用して反り返る方向と反対側に引き動かされて誘導されやすい位置としているので、繰り出しローラの回転方向と逆方向に反り返っている記録紙先端を確実に挟持位置に向けてガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による給紙装置を備えた画像形成装置の一部を示す外観図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の内部構成を説明するための図である。
【図3】図2に示した内部構成の要部を示す平面図である
【図4】本発明による給紙装置の外観図である。
【図5】図4に示した給紙装置の側部断面図である。
【図6】図4に示した給紙装置での特徴部である誘導部材の原理構造を説明するための模式図である。
【図7】誘導部材を設けない場合の記録紙の繰り出し状態を説明するための図である。
【図8】図6に示した原理構造の誘導部材を設けた場合の給紙装置の要部構成を示す図である。
【図9】図6に示した原理構造を用いる誘導部材の要部変形例を説明するための図である。
【図10】誘導部材の一部変形例を説明するための図である。
【図11】誘導部材の設置構造に関する変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1に示されている画像形成装置は、画像情報に応じた位置にインクの液滴を吐出することにより画像形成が可能なインクジェットプリンタであり、画像形成装置本体1の一部に給紙装置100が装備されている。本形態において給紙装置100は、画像形成装置本体1の内部に設けられている給紙部とは別に設けられる装置であり、重力を利用して繰り出し位置に記録紙先端が移動しやすい用に、記録紙の積載部を斜めに形成した斜め給紙方式が採用されている。なお、本実施の形態が適用される画像形成装置として、上述した液滴を吐出する構成を備えたものに限らず、電子写真方式を利用する装置を含むこと勿論である。
【0028】
以下に、インクジェットプリンタの機構部を説明する。
図2は、画像形成装置本体1の内部構成を示す模式図であり、図3は、図2に示した内部構成の要部を示す平面図である。
図3において、左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主ガイドロッド31と従ガイドロッド32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0029】
キャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッド34を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0030】
図2において、液体吐出ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、液体吐出ヘッド34の一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、液体吐出ヘッド34の一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出することが可能であるし、2つのノズルから同色のインク滴を吐出することもできる。
【0031】
液体吐出ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0032】
また、キャリッジ33には、液体吐出ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための本発明に係る液体容器で構成した液体収容容器としてのヘッドタンク35を搭載している。このヘッドタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられている。
【0033】
一方、図2に示すように、給紙トレイ2の記録紙積載部(圧板)41上に積載した記録紙42を給紙するための給紙部として、記録紙積載部41から記録紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0034】
給紙部から給紙された記録紙42を液体吐出ヘッド34の下方側に送り込むために、記録紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された記録紙42を静電吸着して液体吐出ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0035】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0036】
一方、本形態においては、図2において符号2により示した給紙トレイが用いられる給紙部とは別に、手差し給紙部として用いられる給紙装置100が設けられている。
給紙装置100は、詳細を図示しないが、画像形成装置本体1に準備されている取り付け部に対して後付けあるいは予め組み込むことが可能な装置である。
給紙装置100には、図2および図5に示すように、給紙カセット101A内に配置されて記録紙42を積載可能な載置部材101と、載置部材101に積載される記録紙42の繰り出し方向と直角な方向が相当する幅方向両端縁を揃えるサイドフェンス102と、載置部材101に近接して記録紙42の繰り出し方向先端部を上昇させるための上昇機構部103と、分離機構を構成する繰り出しローラに相当するバックアップローラ104および摩擦部材が用いられる分離パッド105とが記録紙の繰り出し部として備えられている。なお、図4において符号106は、載置部材101から繰り出されて分離機構により一枚に分離された記録紙の給送コロを示している。
【0037】
以上のような構成の給紙装置100を対象として本発明の特徴を説明する。
本発明の特徴は、上昇機構103により繰り出し方向先端が押し上げられて繰り出しローラとして用いられるバックアップローラ104と上昇機構103とで挟持される挟持位置に向けて繰り出される記録紙において、繰り出し方向先端側が上方向に反り返ったカール癖が生じている場合でも、繰り出し方向先端を挟持位置に向け誘導できる構成を備えた点にある。以下、その構成について説明する。
【0038】
本形態では、少なくともバックアップローラ103の外周部近傍に、上向きに反り返った記録紙先端を捕捉してその先端の移動方向を挟持位置に向ける誘導部材120が設けられている。
【0039】
図1、図4および図5には、バックアップローラ104の外周部近傍で、軸方向両側に対応する位置に設けてあるサイドフェンス102に誘導部材120が設けられている状態を示している。
【0040】
誘導部材120は、上昇機構103において記録紙の繰り出し方向先端上面に対向して位置し、いわゆる、サイドフェンス102の前端縁の上部に位置している。
【0041】
誘導部材120は、サイドフェンス102の同じ位置に設けられて一枚分離を行うために用いられるコーナーセパレータと称される爪部材と違って、サイドフェンス102の前端縁から前方に張り出すように先端が延長されている。
図6は、誘導部材120に関する原理構造を説明するための模式図であり、同図において、誘導部材120は、斜め給紙方式により傾いた状態に配置されているサイドフェンス102の上縁で前端縁102Aからバックアップローラ104の近傍に先端を位置させている。
【0042】
誘導部材120の先端位置は、バックアップローラ104と上昇機構103とが対向して記録紙の挟持搬送を行う挟持位置、いわゆるニップ位置Nがピックアップローラ104の法線L上に設定されていることを前提とし、ニップ位置Nを基準に、バックアップローラ104の回転方向上流側で、回転中心を通る水平線よりもニップ部N側に偏倚した位置に設定されている。
【0043】
つまり、誘導部材120の先端位置(図6(A)中、符号Sで示す延長量に相当)は、バックアップローラ104の回転方向において、バックアップローラ104の回転中心を基準とする座標面において第3象限(図6(A)中、括弧書きの数字は象限番号を示している)における水平線よりも垂直線側に偏らせた(角度θで示す状態)位置(符号P0で示す状態)に設定されている。
【0044】
また、上昇機構103上面と誘導部材120の先端下面との間の間隙(図6(A)中、符号Hで示す)は、一枚の記録紙を通過させることができる寸法に設定されており、厚さ分としないようにして記録紙の通過に抵抗とならないようにされている。
【0045】
上述した先端位置を規定されている誘導部材120を設けることにより、その作用を説明すると次の通りである。
図6(B)において、二点鎖線は、搬送方向に沿って上向き凹状のカール癖が生じている記録紙を、誘導部材120がない状態で繰り出す場合を示している。
この場合には、カールを生じている記録紙の先端がバックアップローラ104の回転中心を通る水平線よりも垂直方向上方の周面に突き当たると、カールの向きがバックアップローラ104の回転方向とは逆の方向になっている。このため、記録紙先端の反り返りの角度から得られるバックアップローラ104の回転方向に沿った方向の分力がきわめて小さいといえ、これによって、記録紙の先端を挟持位置に向け誘導することが困難となる。なお、図7は、図5に示した給紙装置100の構成のうちで、記録紙の繰り出しに関する部分のみを抽出して示した図であり、同図において、符号S1で示す記録紙は、先端が反り返る状態のカールが生じたものであり、符号S2で示す記録紙は、符号S1で示す記録紙よりもカールの発生が顕著でないものを示している。
【0046】
一方、図6(B)において実線は、誘導部材120を設けた状態で記録紙を繰り出す場合を示しており、誘導部材120に記録紙の先端が突き当たると、重力に従って誘導部材120の先端に向けて移動する。
【0047】
誘導部材120の先端から突出した記録紙の先端は、誘導部材120の先端位置の設定によって、バックアップローラ104の回転方向においてバックアップローラ104の回転中心を通る水平線よりも下方の周面に突き当たりやすくなる。この状態では、バックアップローラ104の回転力を受けてカール癖の付いている方向、つまり、反り返る方向とは逆の方向に引き摺られやすくなり、結果として挟持位置に向けて誘導されやすくなる。換言すれば、記録紙先端がバックアップローラ104の回転に順じてなびきやすくなることで、回転方向に従いニップ位置Nに向けて移動しやすくなる。
【0048】
図6(C)は、誘導部材120を設けた場合の記録紙の移動状態を示しており、搬送方向に沿って上向き凹状にカールを生じている記録紙は、その先端が誘導部材120に突き当たると(図中、符号P1で示す状態)、重力を利用して誘導部材120に沿って先端が滑動する。
【0049】
記録紙の先端が誘導部材120の先端に達する時には、バックアップローラの回転方向上流側でバックアップローラ104の回転中心を通る水平線よりも下方側の周面、換言すれば、水平線よりもニップ位置Nに偏った周面の位置に突き当たるようになる(図中、符号P2で示す状態)。
【0050】
バックアップローラ104の周面において、回転中心を通る水平線よりも下方でニップ位置N側に偏った位置に記録紙の先端が突き当たると、バックアップローラ104の回転方向によるトルクを利用して記録紙の先端がカールを生じている向きと逆方向に引き摺られることになるので、ニップ位置Nに向けてほぼ自動的に誘導されることになる(図中、符号P3で示す状態)。
【0051】
図8は、図5に示した給紙装置100の構成のうちで、記録紙の繰り出しに関する部分のみを抽出して示した図であり、同図に示す状態は、図6(C)に示す状態に相当している。
【0052】
なお、図6(A)において符号S示した誘導部材120の先端位置の張り出し量、つまり、サイドフェンス前端縁からの延長量は、誘導部材120の表面に接触しながら移動する記録紙の摺動抵抗とならない量にすることが望ましく、その量は、記録紙の腰の強さに影響する記録紙の厚さを考慮して設定することで可能となる。
【0053】
本形態は以上のような構成であるから、斜め給紙方式により重力を利用してニップ位置Nに向けて移動しようとする記録紙に搬送方向先端が跳ね上がって反り返るようなカールが生じている場合には、誘導部材120により記録紙先端がバックアップローラ104の回転方向に順じた向きになりやすい状態とされることにより、ニップ位置Nへのほぼ自動的な誘導が行われることになる。
【0054】
この結果、上記特許文献にはない形態のカール、つまり搬送方向に沿って上向き凹状で繰り出し方向先端が上方に反り返っているカールを生じている記録紙の最適繰り出しが可能となる。しかも、最適繰り出しのための構成としては、特別な構造部材を用いるのではなく、既存構成部材であるサイドフェンスを利用するだけで済むので、コスト上昇などを招くことがない。また、カールが生じている記録紙の先端を予めバックアップローラ104の回転方向でニップ位置N付近に指向するように、上昇機構103とバックアップローラ104との対向間隔を大きくする必要もないので、図8において符号M1で示す積載枚数の低下を防ぐことができる。
【0055】
次に本形態に示した構成の要部変形例について説明する。
図9は、誘導部材の変形例を示す図であり、図9(A)に示す構成は、誘導部材(便宜上、符号121で示す)は、前述した先端位置近傍に記録紙と接触可能なローラ121Aを備えている。この構成においては、記録紙の滑動抵抗を少なくすることができる。
【0056】
一方、図9(B)に示す構成は、誘導部材(便宜上、符号122で示す)の一部がヒンジ結合されて先端側を揺動可能にしている。このような構成は、記録紙の厚さに応じて揺動部分が記録紙によって押し動かされると揺動し、いわゆる、記録紙に接触しながら当接圧力を軽減するので、記録紙の滑動抵抗を軽減することができる。
【0057】
図10は、記録紙の滑動抵抗を軽減するための別の例を示す図であり、同図は、記録紙の繰り出し方向前端側から見た図である。
【0058】
同図において誘導部材124は、記録紙との接触面、つまり、誘導部材124の下面が勾配面に形成されている。
【0059】
勾配面とすることにより、記録紙の先端縁の上縁一部が接触するだけで済むので、記録紙の上面前面が接触する場合に比べて滑動抵抗を軽減することができる。
【0060】
以上のような例においては、記録紙先端をニップ位置に誘導する機能に加えて、誘導部材に記録紙が接触しながら移動する際の摺動抵抗を軽減することにより、繰り出しタイミングを阻害しないようにできる。
【0061】
図11は、誘導部材をサイドフェンスではなく、バックアップローラ104側に設けた例を示している。
図11において、誘導部材120Aは、バックアップローラ104の軸端に軸方向両端の壁面が支持され、周方向でバックアップローラ104が分離パッド105と接触する周面を露呈するように開放された割型筒体で構成されており、筒体における周方向で上昇機構103と対向する位置には、図6において説明した原理構造を踏襲する誘導片部120A1が設けられている。この誘導片部120A1は、繰り出し部材に相当するバックアップローラの外周部近傍であれば、上述した軸方向両側だけではなく、バックアップローラ104の配置位置に対応させて軸方向中央部あるいは両端部と中央部とを含む軸方向全域を対象として設けることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
100 給紙装置
101 載置部材
102 サイドフェンス
103 上昇機構
104 バックアップローラ
105 分離パッド
120 誘導部材
L 法線
N ニップ位置
θ 座標面で第3象限内において水平線から垂直線側に偏った位置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特許第3521039号公報
【特許文献2】特許第3731849号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載された複数の記録紙の繰り出し方向先端部を上昇させる上昇部を供えた載置部材と、該上昇部に対向する回転可能な繰り出し部材とを備え、前記上昇部が上昇した際に前記繰り出し部材と記録紙とが接触することにより記録紙の挟持位置を構成可能な給紙装置において、
前記繰り出し部材の外周部近傍には、前記記録紙の繰り出し方向先端上面に対向して配置されるとともに、前記挟持位置に向け繰り出される記録紙の繰り出し方向先端を前記繰り出し部材の回転方向下流側に向け指向させて前記挟持位置に誘導する誘導部材を備えていることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記挟持位置は前記繰り出し部材の略法線上に設定され、該挟持位置を基準として、前記繰り出し部材の回転方向上流側で繰り出し部材の回転中心を通る水平線よりも挟持位置側に偏倚した位置に前記誘導部材の繰り出し方向先端が配置されていること特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記誘導部材の繰り出し方向先端の位置は、前記繰り出し部材の回転方向において前記挟持位置の上流側で、前記繰り出し部材の回転中心を基準とした座標面の第3象限における水平線よりも垂直線側に偏らせた位置に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記誘導部材は、前記繰り出し部材の軸方向両側に配置されているサイドフェンスにおける記録紙の繰り出し方向先端上部側に設けられ、該サイドフェンスにおける記録紙の繰り出し方向先端側から前記繰り出し部材の外周近傍に先端が延長され、該先端は、前記繰り出し部材の回転方向において、前記挟持位置の上流側で、前記繰り出し部材の回転中心を基準とした座標面の第3象限における水平線よりも垂直線側でかつ前記挟持位置側に偏らせて配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記載置部材および前記繰り出し部材は、前記記録紙を重力により前記挟持位置に向け移動させる構成を対象としていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−98827(P2011−98827A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256219(P2009−256219)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】