給紙装置
【課題】カセット本体3に堆積収容された用紙を給紙ローラ6bと傾斜分離板8における分離体11との協働で分離給送する場合、用紙の重送現象を無くする。
【解決手段】金属板製の分離体11は、扁平な本体部分39から延びるアーム部40と、該アーム部40から立て起こして自由端側が用紙と接触可能な分離爪片36と、本体部分39から延びる弾性足41とを備え、用紙の給送方向に沿う分離爪片36の列は、傾斜分離板8における用紙の給送方向の上流側で2列に形成され、下流側で1列に形成されている。
【解決手段】金属板製の分離体11は、扁平な本体部分39から延びるアーム部40と、該アーム部40から立て起こして自由端側が用紙と接触可能な分離爪片36と、本体部分39から延びる弾性足41とを備え、用紙の給送方向に沿う分離爪片36の列は、傾斜分離板8における用紙の給送方向の上流側で2列に形成され、下流側で1列に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙カセット本体に堆積された被記録媒体(シート)を給紙ローラと、弾性を有する複数の分離爪片とにより1枚ずつ分離して画像記録部に給送する給紙装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像記録装置には、その画像記録部に対してカットされたシート(被記録媒体)を1枚ずつに分離して給送するための給紙装置が備えられている。
【0003】
特許文献1の給紙装置は、複数枚のシート(用紙)を積層状にて堆積(積載)する給紙カセットと、この給紙カセットの上方に配置されている上下揺動可能なアームの下端の設けられた給紙ローラと、給紙カセットの給送方向下流側端部に設けられた傾斜分離板と、この傾斜分離板の左右方向(シートの幅方向)の中央部に設けられた給紙分離部材とが備えられている。そして、給紙分離部材は、金属板製のベース部に、爪状の突起部と、この突起部を両側から支持するアーム部と、ベース部と一体的に形成されて傾斜分離板の裏面の所定個所に支持するための板バネ部とがシートの給送方向に沿って一定間隔でプレス加工により形成されたものであり、爪状の突起部は傾斜分離板に給送方向に沿って穿設された長い長孔から所定量突出するように設定されている。そして、積層されたシートの最上層の面に押圧しながら回転駆動する給紙ローラで給送するとき、積層されている複数枚のシートを先端縁が突起部に係合して、重なっているシートをほぐし、最上層のシート(用紙)のみが分離されて給送できるというものである。
【0004】
特許文献2では、上面開放状の給紙カセット本体に対してカットされたシートを略水平状に堆積して収容し、給紙カセット本体における給送下流側端部の傾斜面に、用紙分離ガイドが設けられ、この用紙分離ガイドの表面には、複数の突起が形成されており、この突起は、用紙分離ガイドの最下部で最も高く、上側に行くに従って突起の高さが一定の間隔で徐々に低くなるようにして摩擦係数が下から上に行くに従って徐々に小さくなるように設定されている。また、突起は、シートの幅方向に複数列にて形成されているものである。
【特許文献1】特開2005−247550号公報(図3〜図9参照)
【特許文献2】特開2004−067389号公報(図4〜図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、所定長さの給紙用のアームの下端に給紙ローラが設けられ、アームの基端を中心にして上下方向に揺動するタイプでは、給紙カセットに積載された最上層のシートに給紙ローラが押圧しながら回転することにより、上記突起(突起部)との協働作用にて、最上層のシートのみ分離して給送する。その場合、給紙ローラによる搬送力、即ちピッキング力(シートの表面と平行方向の力)は、給紙ローラによる最上層のシートへの押圧力(シートの表面に垂直な力)に最上層のシートに対する摩擦係数を乗じた値から、最上層のシートとそれに隣接する下層のシートとの摩擦力を引いた値となる。上記押圧力は、アームと最上層のシートとの夾角が大きい程大きい。換言すると、シートの積載量が多いとき(堆積高さが高い時)には押圧力は小さく、シートの積載量が少ないとき(堆積高さが低い時)には押圧力は大きくなる。最上層のシートと隣接する下層シートとの間の摩擦力は、シートの堆積高さが変化してもさほど変動しない。
【0006】
従って、給紙ローラによる搬送力、即ちピッキング力(シートの表面と平行方向の力)は、シートの積載量が多いとき(堆積高さが高い時)には小さく、シートの積載量が少ないとき(堆積高さが低い時)には大きくなる。給紙ローラによる搬送力が、傾斜分離板(用紙分離ガイド)の表面の突起(部)による分離作用時の抵抗力より大きすぎると、複数枚のシートが一度に給送されるという、いわゆる重送現象が発生する。従って、この現象は、シートの積載量が少ない状態のとき(堆積高さが低い状態のとき)に発生し易くなる。逆に、給紙ローラによる搬送力よりも、上記突起(部)による分離作用時の抵抗力が大きすぎると、シート搬送が不能(いわゆる空送り状態)となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、傾斜分離板の表面に突出する爪状の突起部は一列であり、且つその突出量についても考慮されていなかった。
【0008】
他方、前記特許文献2では、突起の突出高さを、上側に行くに従って一定の間隔で徐々に低くなるようにして、摩擦係数を下から上に行くに従って徐々に小さくする(即ち、分離作用時の抵抗力を上に行くに従って徐々に小さくすること)を提案している。
【0009】
しかしながら、特許文献2では、平板(材質は不明)な用紙分離ガイドの表面に複数の突起を一体的に形成したもので、各突起に弾力性が無いため、長期の使用により、各突起の摩耗が激しく、分離性能を長期間一定に保持できない問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであり、画像記録部への被記録媒体の送りを確実に行えるようにし、且つ空送りも発生しないようにした給紙装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における給紙装置は、シート状の被記録媒体を堆積状態で収容可能な上面開放状のカセット本体と、前記堆積された最上層の被記録媒体を給送する給紙ローラ手段と、前記カセット本体における前記被記録媒体の給送方向の下流端にてその給送方向と直交して延びるように設けられ、且つ前記収容可能な被記録媒体の最大高さ位置より高い位置まで設けられている傾斜分離板と、この傾斜分離板に取り付けられ、前記被記録媒体の給送方向に沿って適宜間隔にて配列される複数の分離爪片を備え、前記給紙ローラ手段と前記分離爪片との協働により被記録媒体を1枚ずつ分離して給送する給紙装置であって、前記傾斜分離板には、前記各分離爪片を前記傾斜分離板の被記録媒体当接面側に突出させる窓穴が設けられ、前記分離爪片の列の数は、前記給送方向の下流側よりも前記給送方向の上流側に多く配置されているものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙装置において、前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されているものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の給紙装置において、前記分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられているものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置において、前記給紙ローラ手段は左右一対のローラを有しており、前記分離爪片の列は、当該左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されているものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の給紙装置において、前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなるものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の給紙装置において、前記傾斜分離板の裏面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されているものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、給送ローラ手段と、カセット本体の被記録媒体(用紙)の給送方向下流側の傾斜分離板から先端部が突出する分離爪片とが協働して用紙を給送する場合に、分離爪片の列の数を、給送方向の上流側、従って、カセット本体への用紙の堆積量が少ない状態の時に対応させて多くすることにより、基端(上端)を中心にして上下揺動する給紙アームの下端に装着された給紙ローラにより用紙を傾斜分離板における分離爪片の個所での給送抵抗力を大きくして、複数枚の用紙の先端部の捌き(ほぐし)作用を確実にならしめて、用紙の重送現象をなくすることができる。他方、給送方向の下流側、従って、カセット本体の底板から遠い側、即ちカセット本体への用紙の堆積量が多い状態のときの分離爪片の列の数を少なくすることにより、傾斜分離板における分離爪片の個所での給送抵抗力を大き過ぎないように制限し、用紙の空送り現象が発生しない効果を奏する。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されているものであるので、請求項1に記載の発明による作用・効果に加えて、給送される複数枚の用紙の先端縁が、カセット本体の底板からの異なる高さの複数の分離爪片に衝突する機会が増大するので、用紙の重送現象をなくすることが一層確実になるという効果を奏する。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられているものである。このように1つの分離体に複数列の分離爪片を一体的に形成すると、各分離爪片の配置関係がバラつきなく設定でき、用紙の分離給送作用が確実にできる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、分離爪片の列は、前記給紙ローラ手段が有する左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されているものであるので、給送される用紙の幅方向の中央部に分離爪片による給送抵抗力が集中し、用紙が斜行することを効果的に防止できる。また、給紙ローラと分離爪片との間で、用紙に座屈現象が発生し難くなるので、重送現象も発生し難くなるという効果を奏する。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなるものである。
【0022】
従って、アーム部、分離爪片及び弾性付与片を金属板から打ち抜いて後所定の屈曲工程を経ることにより、簡単に分離体を形成することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、傾斜分離板の裏面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されているものであるので、分離体の組立作業が至極簡単に行えるという効果を奏する。また、分離体における分離爪片の突出量を所定値にするように組み込むことが簡単にできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明のインクジェット式の記録ヘッドが備えられた画像記録装置の斜視図、図2は概略側断面図、図3はカセット本体と給紙ローラ手段の斜視図、図4は傾斜分離板と給紙ローラ手段の斜視図、図5は分離爪片の第1実施形態の正面図、図6(a)は図4のVIa −VIa 線矢視断面図、図6(b)は図4の VIb−VIb 線矢視断面図、図7(a)は図5のVIIa−VIIa線矢視断面図、図7(b)は図7(a)の要部平面図、図8は分離爪片の第2実施形態の正面図、図9は第1及び第2実施形態における分離爪片と給紙ローラの配置関係を示す説明図、図10は分離爪片の第3実施形態の正面図、図11は第3実施形態における分離爪片と給紙ローラの配置関係を示す説明図である。
【0025】
本実施形態の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものであり、図1及び図2に示すように、画像記録装置1における記録装置本体の1例としての合成樹脂製の射出成形品からなるハウジング2を備えている。
【0026】
ハウジング2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における画像読取装置12が配置され、この画像読取装置12は、図示しない枢軸部を介してハウジング2の一側端に対して上下開閉回動可能に構成され、さらに、画像読取装置12の上面を覆う原稿カバー体13の後端は画像読取装置12の後端に対して枢軸を中心に上下回動可能に装着されている。
【0027】
ハウジング2の上側には、画像読取装置12の前方に各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部14が設けられている。そして、画像読取装置12の上面には、原稿カバー体13を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板(図示せず)が設けられ、その下側に原稿読取り用の密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)(図示せず)が図2の紙面と直交する方向(主走査方向、図1におけるX軸方向)に延びるガイドシャフトに沿って往復移動可能に設けられている。
【0028】
図示していないインク貯蔵部には、個別の色毎のカートリッジとして、この実施形態では、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のインクカートリッジが収納されており、各インクカートリッジと記録部7(請求項の画像記録部に相当)における記録ヘッド4とを、可撓性を有するインク供給管で常時連結している。
【0029】
このハウジング2の下部(底部)には、その前側(図2において左側)の開口部2aから差し込み可能なカセット本体3が配置されている。本実施形態では、カセット本体3は、被記録媒体(カットシート)としての、例えば、A4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺が用紙搬送方向(副走査方向、Y軸方向)と直交する方向(図2において、紙面と直交する方向、主走査方向、X軸方向)に延びるようにして、複数枚積層(堆積)されて収容できる形態とする。
【0030】
給紙装置におけるカセット本体3には、図3及び図4に示すように、用紙Pを載置する底板31が備えられ、この底板31における給送方向(矢印A方向、図2、図5、図7など参照)に沿う両側部に側板32、32が立設されている。そして、排紙トレイ33が、底板31に載置された用紙Pの給送方向(矢印A方向)の上流側の一部を覆うように、両側板32、32に跨って着脱可能及び前後摺動可能に取り付けられている。
【0031】
また、底板31における給送方向(矢印A方向)下流側には、用紙Pをカセット本体3の幅方向の中心に対して左右対称にセットするための用紙幅ガイド(図示せず)が左右方向(用紙Pの幅方向)に伸縮するように移動可能に配置されている。
【0032】
カセット本体3の奥側(図2において右側、図3において左側)には、用紙Pの先端縁を1枚ずつに分離するための分離体11を備えた分離傾斜板8が着脱可能に固定されている。また、ハウジング2側には、後述するように、給紙ローラ手段6における給紙アーム6aの基端部が駆動軸34の回りに上下方向に回動可能に装着され、この給紙アーム6aの先端部に設けられた左右一対の給紙ローラ6bには、給紙アーム6a内に設けられた歯車伝達機構により、図示しない駆動源からの回転が伝えられる(図3、図4参照)。
【0033】
給紙ローラ手段6は、上述したように、合成樹脂製の枠状の給紙アーム6aの自由端部(下端)の左右両側には外周部にゴムなどの高摩擦係数部材を巻回した左右一対の給紙ローラ6bが回転可能に軸支され、給紙アーム6aの基端部には、同じく合成樹脂製の駆動軸34の先端部が回動可能に支持されている。そして、駆動軸34の回転駆動により、給紙アーム6a内に設けられた複数の歯車列からなる歯車伝動機構を介して給紙ローラ6bが一定方向に回転するよう構成されている。なお、歯車伝動機構は、駆動軸34と一体的に回転する歯車と、駆動軸34に対して回転自在に被嵌した遊星アームの先端に枢支され、且つ上述の歯車に噛合う遊星歯車と、この遊星歯車から給紙ローラ6bの側部に形成さている歯車に動力伝達する複数の中間歯車により構成されている。
【0034】
そして、給紙ローラ6bと分離傾斜板8における分離体11(後に詳述する)との協働により、カセット本体3に堆積収容された被記録媒体である用紙Pを最上層から一枚ずつ分離給送することができる。分離された用紙Pは横向きのUターンパスを含む搬送路9を介して、カセット本体3より後方の上側(高い位置)に設けられた記録部7に搬送される。搬送路9は、そのUターン形状の外周側を構成する第1搬送路体と、内周側を構成するガイド部材である第2搬送路体との間隙に形成されている。この搬送路9では、搬送方向に直交する幅方向(以下、単に幅方向と記載する)の中心線(図示せず)に、用紙Pの幅方向の中心線が位置合わせされるセンター合わせにより、用紙Pが搬送されるように構成されている。
【0035】
記録部7は、箱型のメインフレーム21とその左右一対の側板にて支持され、X軸方向(主走査方向)に延びる横長の板状の第1および第2ガイド部材(図示せず)との間に形成される。記録部7におけるインクジェット式の記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5は、用紙搬送方向の上流側の第1ガイド部材及び下流側の第2ガイド部材に跨って摺動自在に支持(搭載)されて往復移動可能になっている。
【0036】
キャリッジ5を往復移動させるために、用紙搬送方向(矢印A方向)の下流側に配置された第2ガイド部材の上面には、主走査方向(X軸方向)に延びるようにタイミングベルト(図示せず)が配置され、このタイミングベルトを駆動するCR(キャリッジ)モータ(図示せず)は第2ガイド部材の下面に固定されている。
【0037】
キャリッジ5における記録ヘッド4の下面と対峙するようにX軸方向に延びる扁平状のプラテン26は、前記第1及び第2ガイド部材の間にて、メインフレーム21に固定されている。
【0038】
プラテン26の搬送方向上流側には、用紙Pを記録ヘッド4の下面に搬送するための搬送(レジスト)ローラとして、駆動ローラ27aと、この駆動ローラ27aに対向する下方に従動ローラとが配置されている。また、プラテン26の搬送下流側には、記録済みの用紙Pを排紙トレイ33に搬送(排送)するように駆動される排紙ローラ28aと、これに対向して排紙ローラ28a側に付勢された拍車ローラとが配置されている(図2参照)。
【0039】
次に、傾斜分離板8及び分離体11の構成について説明する。図3〜図7に示すように、用紙分離用の傾斜分離板8はカセット本体3の奥側(図3において左側端)端部に対して着脱可能に配置されるものであり、傾斜分離板8及びカセット本体3は合成樹脂材の射出成形品である。傾斜分離板8は1枚の連続な板状である。この傾斜分離板8は、用紙Pの幅方向(X軸方向)の中央側で突出し、用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退するように平面視で凸湾曲状に形成されており、且つ用紙Pの幅方向の中央部には、用紙Pの先端縁に当接して分離を促進するための爪状の弾性を有する分離爪片36が複数列にて一体的に形成された分離体11が背面から取り付けられるようになっている。
【0040】
カセット本体3における奥側板37の前側には、図3に示すような一の板状部材からなる傾斜分離板8の背面を支持するための側面視台形状(または三角状)の背面支持部38がX軸方向に沿って適宜間隔にて複数設けられている。各背面支持部38にはその上端から下向きに延びる係止溝(図示せず)がそれぞれ設けられている。他方、傾斜分離板8の裏面には、各背面支持部38の係止溝に上方から係止できる係止爪(図示せず)が一体的に形成されている。そして、上記複数の背面支持部38の前面(傾斜分離板8の背面と対峙する面)は、その包絡面が、用紙Pの幅方向の中央部で突出し、且つ用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退する(用紙Pの先端縁から離れる)ように凸湾曲状に形成されている。従って、各係止爪を各背面支持部38の係止溝に係止することにより、背面支持部38の表面の傾斜面にて傾斜分離板8の背面を支持し、且つこの傾斜分離板8がそのX軸方向の中央側で突出する湾曲面に形成されることになる。
【0041】
さらに、傾斜分離板8の長手方向(X軸方向、用紙Pの幅方向)中央部には、後述する分離体11における各分離爪片36を背面側から臨ませるための窓穴44が用紙Pの給送方向(矢印A方向、図4、図5、図7など参照)に沿って列状で且つ適宜の所定間隔(分離爪片36の配置間隔に略等しい間隔)を開けて分割されて開口している(図4、図7(a)及び図7(b)参照)。これらの窓穴44から各分離爪片36が傾斜分離板8の用紙Pの当接面(表面)側に突出するのである。従って、隣接する小さい窓穴44の間の部位(ブリッジ部)50は、傾斜分離板8と一体である。また、傾斜分離板8の背面側には、分離体11を支持するための支持体としての合成樹脂製の箱状の支持部材45を収容するための取付けケース46が全ての窓穴44を囲むように一体的に形成されている(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0042】
なお、取り付けケース46よりも、用紙Pの幅方向の外側には、用紙Pの給送作用を円滑にするための、一対の回転自在なコロ47の軸受部48が傾斜分離板8の背面側に設けられ、各コロ47の円周面の一部が傾斜分離板8の表面に臨むような穴49が穿設されている(図4及び図6(a)参照)。
【0043】
本発明においては、分離爪片36の列の数は、給送方向の上流側(カセット本体3の底板31に近い側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が少ない場合に相当)で多く、給送方向の下流側(カセット本体3の底板31から遠い側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が多い場合に相当)で少なく配置されている。要するに、分離爪片36の列の数は給送方向の下流側よりも給送方向の上流側に多く配置されている。
【0044】
第1実施形態(図5参照)、第2実施形態(図8参照)、第3実施形態(図10参照)では、分離爪片36の列の数は、給送方向の上流側で2列であり、給送方向の下流側で1列とする。しかしながら、分離爪片36の列の数はこれに限ったものではなく、給送方向の下流側よりも給送方向の上流側に多く配置されていれば良い。
【0045】
このように、分離爪片36の列の数を、給送方向の上流側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が少ない状態の時に対応させて多くすることにより、基端(上端)を中心にして上下揺動する給紙アーム6aの下端に装着された給紙ローラ6bにより用紙Pを傾斜分離板8における分離爪片36の個所での給送抵抗力を大きくして、複数枚の用紙Pの先端部の捌き(ほぐし)作用を確実にならしめて、用紙Pの重送現象をなくすることができる。他方、給送方向の下流側、従って、カセット本体3の底板31から遠い側、即ちカセット本体3への用紙Pの堆積量が多い状態のときの分離爪片36の列の数を少なくすることにより、傾斜分離板8における分離爪片36の個所での給送抵抗力を大き過ぎないように制限し、用紙Pの空送り現象が発生しない効果を奏する。
【0046】
分離爪片36は1つまたは複数の分離体11に形成されており、各分離体11が傾斜分離板8の裏面側に対して着脱可能に設けられている。即ち前述したように、裏面開放形の取り付けケース46(請求項における収容部に相当)に収容し、これに対して背面側から挿入可能で且つ着脱可能な箱状の支持部材45(請求項における支持体に相当)にて脱落不能に支持される(図6(a)及び図6(b)参照)。分離体11が複数ある場合は、各分離体11毎に、傾斜分離板8の裏面側に取り付けケース46が別々に形成され、各取り付けケース46毎に支持部材45が配置されるものとする。
【0047】
次に、第1実施形態の分離体11の構成について詳述する。図5〜図7に示すように、分離体11はステンレスなどの弾性体としての金属板製である。分離体11は、扁平な本体部(ベース部)39から延びる山形(逆V字状)のアーム部40と、このアーム部40の中央部から起立し(切り起こし)て自由端側が用紙Pと接触可能な爪状の分離爪片36と、本体部分39から延びる外向きに延びる弾性付与片(板バネ部)41とを備えている。
【0048】
第1実施形態では、下側の本体部分(ベース部)39の幅寸法が大きい。この本体部分(ベース部)39に左右2列状で且つ上下方向に一定間隔で左右平行状にて、アーム部40及び分離爪片36が形成され、本体部分39の左右両側端から弾性付与片41が斜め上向きに突出されている。上側の本体部分39の左右幅寸法は小さく、その幅中央部位には、給送方向に沿って一定間隔で1列にてアーム部40及び分離爪片36が形成されている。上側の本体部分39の左右両側端にも同様に弾性付与片41が斜め上向きに突出されている。
【0049】
各分離爪片36はアーム部40から直角に起立する基部36aと、用紙Pの給送方向下流側に向かって倒れ傾斜する(傾斜分離板8の表面に対して斜め上方向に傾斜する)ように屈曲された先端部(自由端側ともいう)36bとを有する。このように構成すると、金属板から打ち抜いて後所定の屈曲工程を経ることにより、簡単に分離体を形成することができる。
【0050】
基部36aと先端部36bとの屈曲部分は傾斜分離板8の板厚内にあるように設定されている。これにより、給送される用紙Pの先端縁が基部36a及び屈曲部分に衝突せず(この部分に衝突すると、抵抗力が大きくなりすぎて、給送できない)、先端部36b側に斜めの角度の角度で摺接する。このときの用紙Pの先端縁に対する抵抗力にて、給送される複数枚の用紙Pがほぐされ、最上層の用紙Pのみが分離給送されるのである。
【0051】
なお、左右両側の弾性付与片41の自由端側は、箱状の支持部材45の内面に突出形成された上下長手のリブ部45a、45b、45cの端面にそれぞれ支持されることにより(図5、図6(a)及び図6(b)参照)、本体部分39の全体(全長)が傾斜分離板8の裏面に隙間無く当接した状態で、弾力付勢できることになる。
【0052】
上述のように、複数列の分離爪片36を1つの分離体11に一体的に形成すると、1つの分離体11に1列の分離爪片36のみを形成する場合に比べて、部品点数を少なくすることができる。また、複数列の分離爪片36を1つの分離体11の本体部分(ベース部)39の幅の中央寄りにまとめて(近接させて)形成することができて、分離体11の形状をコンパクトにできる。複数列の分離爪片36を1つの分離体11に一体的に形成すると、分離体11の板厚さや、材質(バネ常数)などについての各分離爪片36の品質のばらつきが少なくなり、上記の用紙Pの重送現象、空送り現象を一層無くすることができる。
【0053】
分離爪片36の列のうち、給送方向の上流側に位置する複数列における分離爪片36は、第1実施形態(図5参照)及び第3実施形態(図10参照)では、給送方向と直交する方向に対して平行に配列されており、第2実施形態(図8参照)では、千鳥状に配列されている。このように、カセット本体3の底板31に近い側における左右複数列の分離爪片36の配列を並列または千鳥状にすることにより、給送される複数枚の用紙Pの先端縁が、底板31からの異なる高さの複数の分離爪片36に衝突する機会が増大するので、用紙Pの重送現象をなくすることが一層確実になるという効果を奏する。
【0054】
なお、第2実施形態(図8参照)では、分離体11の下側(給送方向の上流側に)位置する2列の分離爪片36が千鳥状に配列されている他は、第1実施形態の形態(構成)と全く同じであるので、同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0055】
第3実施形態(図10参照)では、分離体11の下側(給送方向の上流側に)位置する2列の分離爪片36が本体部分39の広い幅方向に左右対称状に形成されている一方、分離体11の上側(給送方向の下流側に)位置する1列の分離爪片36は本体部分39の幅方向の中央部に形成され、且つ下側の2列の分離爪片36の間に位置している。この構成により、上下両方の分離爪片36の列や、本体部分39、アーム部40、弾性付与片41などが左右対称状に形成されているので、この1つの分離体11を、傾斜分離板8の左右中央部に配置することで、左右センター配置の用紙Pに対する分離給送作用が左右バランスの取れた状態にできる。
【0056】
また、分離爪片36の列は、給紙ローラ手段6における左右一対の給紙ローラ6bの配置間隔L1の間に対応する(図9及び図11参照)か、または各給紙ローラ6bによる給送作用部と対向する位置に配置されるように設定する。このように構成することにより、給送される用紙Pの幅方向の中央部に分離爪片36による給送抵抗力が集中し、用紙Pが斜行することを効果的に防止できる。また、給紙ローラ6bと分離爪片36との間で、用紙Pに座屈現象が発生し難くなるので、重送現象も発生し難くなるという効果を奏する。
【0057】
なお、上記の構成において、傾斜分離板8の背面側から取り付けケース46内に分離体11を挿入し、各アーム部40を各窓穴44に嵌め、支持部材45を固定すると、この支持部材45にて分離体11の全ての弾性付与辺(弾性足)41が支持される。その結果、本体部分39は傾斜分離板8の背面側にぴったりと当接し、各分離爪片36は傾斜分離板8の表面側に所定量だけ突出し、その突出量にバラツキが生じない(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0058】
傾斜分離板8をカセット本体3の奥側板37における各背面支持部38の係止溝に上方から係止する一方、傾斜分離板8の背面を各背面支持部38の傾斜面に当接させて配置すると、その傾斜分離板8の表面(用紙Pの先端縁と対峙する面)も、その長手方向(X軸方向、用紙Pの幅方向)の中央部で突出し、且つ用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退する(用紙Pの先端縁から離れる)ように平面視で凸湾曲状(弓形)に形成されることになる。その場合、傾斜分離板8の長手方向の中央部位(窓穴44を有する箇所)が最も曲げ応力及び撓み変形が大きくなるが、複数の分離爪片36を囲むような上下に細長い一連の窓穴を穿設する構成に比べて、本発明のように、隣接する小さい窓穴44の間の複数箇所のブリッジ部50は、傾斜分離板8の長手方向の中央部位の曲げ剛性を補強する(高める)ことに寄与できるものである。従って、傾斜分離板8の長手方向の中央部位(窓穴44に対応するブリッジ部50)は表面側に向かって急激に突出するような反りが発生しないので、設計とおりの所定の突出量だけ、分離爪片36を突出させることができ、給送される用紙Pを1枚ずつに分離し捌く作用を確実にならしめることができる。
【0059】
上記各実施形態(発明)は、カセット本体3が上下多段に配置された画像記録装置にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のインクジェット式の記録ヘッドが備えられた画像記録装置の斜視図である。
【図2】画像記録装置の概略側断面図である。
【図3】カセット本体及び給紙ローラ手段の斜視図である。
【図4】傾斜分離板及び給紙ローラ手段の斜視図である。
【図5】分離体の正面図である。
【図6】(a)は図4の VIa−VIa 線矢視断面図、(b)は図4の VIb−VIb 線矢視断面図である。
【図7】(a)は図5のVIIa−VIIa線矢視断面図、(b)は図7(a)の一部切欠き正面図である。
【図8】分離体の第2実施形態の正面図である。
【図9】第1実施形態及び第2実施形態における分離体と給紙ローラとの配置関係を示す説明図である。
【図10】分離体の第3実施形態の正面図である。
【図11】第3実施形態における分離体と給紙ローラとの配置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 画像記録装置
3 カセット本体
6 給紙ローラ手段
6a 給紙アーム
6b 給紙ローラ
8 傾斜分離板
11 分離体
36 分離爪片
39 本体部分
40 アーム部
41 弾性付与片としての弾性足
44 窓穴
47 コロ
50 ブリッジ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙カセット本体に堆積された被記録媒体(シート)を給紙ローラと、弾性を有する複数の分離爪片とにより1枚ずつ分離して画像記録部に給送する給紙装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像記録装置には、その画像記録部に対してカットされたシート(被記録媒体)を1枚ずつに分離して給送するための給紙装置が備えられている。
【0003】
特許文献1の給紙装置は、複数枚のシート(用紙)を積層状にて堆積(積載)する給紙カセットと、この給紙カセットの上方に配置されている上下揺動可能なアームの下端の設けられた給紙ローラと、給紙カセットの給送方向下流側端部に設けられた傾斜分離板と、この傾斜分離板の左右方向(シートの幅方向)の中央部に設けられた給紙分離部材とが備えられている。そして、給紙分離部材は、金属板製のベース部に、爪状の突起部と、この突起部を両側から支持するアーム部と、ベース部と一体的に形成されて傾斜分離板の裏面の所定個所に支持するための板バネ部とがシートの給送方向に沿って一定間隔でプレス加工により形成されたものであり、爪状の突起部は傾斜分離板に給送方向に沿って穿設された長い長孔から所定量突出するように設定されている。そして、積層されたシートの最上層の面に押圧しながら回転駆動する給紙ローラで給送するとき、積層されている複数枚のシートを先端縁が突起部に係合して、重なっているシートをほぐし、最上層のシート(用紙)のみが分離されて給送できるというものである。
【0004】
特許文献2では、上面開放状の給紙カセット本体に対してカットされたシートを略水平状に堆積して収容し、給紙カセット本体における給送下流側端部の傾斜面に、用紙分離ガイドが設けられ、この用紙分離ガイドの表面には、複数の突起が形成されており、この突起は、用紙分離ガイドの最下部で最も高く、上側に行くに従って突起の高さが一定の間隔で徐々に低くなるようにして摩擦係数が下から上に行くに従って徐々に小さくなるように設定されている。また、突起は、シートの幅方向に複数列にて形成されているものである。
【特許文献1】特開2005−247550号公報(図3〜図9参照)
【特許文献2】特開2004−067389号公報(図4〜図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、所定長さの給紙用のアームの下端に給紙ローラが設けられ、アームの基端を中心にして上下方向に揺動するタイプでは、給紙カセットに積載された最上層のシートに給紙ローラが押圧しながら回転することにより、上記突起(突起部)との協働作用にて、最上層のシートのみ分離して給送する。その場合、給紙ローラによる搬送力、即ちピッキング力(シートの表面と平行方向の力)は、給紙ローラによる最上層のシートへの押圧力(シートの表面に垂直な力)に最上層のシートに対する摩擦係数を乗じた値から、最上層のシートとそれに隣接する下層のシートとの摩擦力を引いた値となる。上記押圧力は、アームと最上層のシートとの夾角が大きい程大きい。換言すると、シートの積載量が多いとき(堆積高さが高い時)には押圧力は小さく、シートの積載量が少ないとき(堆積高さが低い時)には押圧力は大きくなる。最上層のシートと隣接する下層シートとの間の摩擦力は、シートの堆積高さが変化してもさほど変動しない。
【0006】
従って、給紙ローラによる搬送力、即ちピッキング力(シートの表面と平行方向の力)は、シートの積載量が多いとき(堆積高さが高い時)には小さく、シートの積載量が少ないとき(堆積高さが低い時)には大きくなる。給紙ローラによる搬送力が、傾斜分離板(用紙分離ガイド)の表面の突起(部)による分離作用時の抵抗力より大きすぎると、複数枚のシートが一度に給送されるという、いわゆる重送現象が発生する。従って、この現象は、シートの積載量が少ない状態のとき(堆積高さが低い状態のとき)に発生し易くなる。逆に、給紙ローラによる搬送力よりも、上記突起(部)による分離作用時の抵抗力が大きすぎると、シート搬送が不能(いわゆる空送り状態)となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、傾斜分離板の表面に突出する爪状の突起部は一列であり、且つその突出量についても考慮されていなかった。
【0008】
他方、前記特許文献2では、突起の突出高さを、上側に行くに従って一定の間隔で徐々に低くなるようにして、摩擦係数を下から上に行くに従って徐々に小さくする(即ち、分離作用時の抵抗力を上に行くに従って徐々に小さくすること)を提案している。
【0009】
しかしながら、特許文献2では、平板(材質は不明)な用紙分離ガイドの表面に複数の突起を一体的に形成したもので、各突起に弾力性が無いため、長期の使用により、各突起の摩耗が激しく、分離性能を長期間一定に保持できない問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであり、画像記録部への被記録媒体の送りを確実に行えるようにし、且つ空送りも発生しないようにした給紙装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における給紙装置は、シート状の被記録媒体を堆積状態で収容可能な上面開放状のカセット本体と、前記堆積された最上層の被記録媒体を給送する給紙ローラ手段と、前記カセット本体における前記被記録媒体の給送方向の下流端にてその給送方向と直交して延びるように設けられ、且つ前記収容可能な被記録媒体の最大高さ位置より高い位置まで設けられている傾斜分離板と、この傾斜分離板に取り付けられ、前記被記録媒体の給送方向に沿って適宜間隔にて配列される複数の分離爪片を備え、前記給紙ローラ手段と前記分離爪片との協働により被記録媒体を1枚ずつ分離して給送する給紙装置であって、前記傾斜分離板には、前記各分離爪片を前記傾斜分離板の被記録媒体当接面側に突出させる窓穴が設けられ、前記分離爪片の列の数は、前記給送方向の下流側よりも前記給送方向の上流側に多く配置されているものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙装置において、前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されているものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の給紙装置において、前記分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられているものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置において、前記給紙ローラ手段は左右一対のローラを有しており、前記分離爪片の列は、当該左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されているものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の給紙装置において、前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなるものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の給紙装置において、前記傾斜分離板の裏面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されているものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、給送ローラ手段と、カセット本体の被記録媒体(用紙)の給送方向下流側の傾斜分離板から先端部が突出する分離爪片とが協働して用紙を給送する場合に、分離爪片の列の数を、給送方向の上流側、従って、カセット本体への用紙の堆積量が少ない状態の時に対応させて多くすることにより、基端(上端)を中心にして上下揺動する給紙アームの下端に装着された給紙ローラにより用紙を傾斜分離板における分離爪片の個所での給送抵抗力を大きくして、複数枚の用紙の先端部の捌き(ほぐし)作用を確実にならしめて、用紙の重送現象をなくすることができる。他方、給送方向の下流側、従って、カセット本体の底板から遠い側、即ちカセット本体への用紙の堆積量が多い状態のときの分離爪片の列の数を少なくすることにより、傾斜分離板における分離爪片の個所での給送抵抗力を大き過ぎないように制限し、用紙の空送り現象が発生しない効果を奏する。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されているものであるので、請求項1に記載の発明による作用・効果に加えて、給送される複数枚の用紙の先端縁が、カセット本体の底板からの異なる高さの複数の分離爪片に衝突する機会が増大するので、用紙の重送現象をなくすることが一層確実になるという効果を奏する。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられているものである。このように1つの分離体に複数列の分離爪片を一体的に形成すると、各分離爪片の配置関係がバラつきなく設定でき、用紙の分離給送作用が確実にできる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、分離爪片の列は、前記給紙ローラ手段が有する左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されているものであるので、給送される用紙の幅方向の中央部に分離爪片による給送抵抗力が集中し、用紙が斜行することを効果的に防止できる。また、給紙ローラと分離爪片との間で、用紙に座屈現象が発生し難くなるので、重送現象も発生し難くなるという効果を奏する。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなるものである。
【0022】
従って、アーム部、分離爪片及び弾性付与片を金属板から打ち抜いて後所定の屈曲工程を経ることにより、簡単に分離体を形成することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、傾斜分離板の裏面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されているものであるので、分離体の組立作業が至極簡単に行えるという効果を奏する。また、分離体における分離爪片の突出量を所定値にするように組み込むことが簡単にできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明のインクジェット式の記録ヘッドが備えられた画像記録装置の斜視図、図2は概略側断面図、図3はカセット本体と給紙ローラ手段の斜視図、図4は傾斜分離板と給紙ローラ手段の斜視図、図5は分離爪片の第1実施形態の正面図、図6(a)は図4のVIa −VIa 線矢視断面図、図6(b)は図4の VIb−VIb 線矢視断面図、図7(a)は図5のVIIa−VIIa線矢視断面図、図7(b)は図7(a)の要部平面図、図8は分離爪片の第2実施形態の正面図、図9は第1及び第2実施形態における分離爪片と給紙ローラの配置関係を示す説明図、図10は分離爪片の第3実施形態の正面図、図11は第3実施形態における分離爪片と給紙ローラの配置関係を示す説明図である。
【0025】
本実施形態の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものであり、図1及び図2に示すように、画像記録装置1における記録装置本体の1例としての合成樹脂製の射出成形品からなるハウジング2を備えている。
【0026】
ハウジング2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における画像読取装置12が配置され、この画像読取装置12は、図示しない枢軸部を介してハウジング2の一側端に対して上下開閉回動可能に構成され、さらに、画像読取装置12の上面を覆う原稿カバー体13の後端は画像読取装置12の後端に対して枢軸を中心に上下回動可能に装着されている。
【0027】
ハウジング2の上側には、画像読取装置12の前方に各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部14が設けられている。そして、画像読取装置12の上面には、原稿カバー体13を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板(図示せず)が設けられ、その下側に原稿読取り用の密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)(図示せず)が図2の紙面と直交する方向(主走査方向、図1におけるX軸方向)に延びるガイドシャフトに沿って往復移動可能に設けられている。
【0028】
図示していないインク貯蔵部には、個別の色毎のカートリッジとして、この実施形態では、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のインクカートリッジが収納されており、各インクカートリッジと記録部7(請求項の画像記録部に相当)における記録ヘッド4とを、可撓性を有するインク供給管で常時連結している。
【0029】
このハウジング2の下部(底部)には、その前側(図2において左側)の開口部2aから差し込み可能なカセット本体3が配置されている。本実施形態では、カセット本体3は、被記録媒体(カットシート)としての、例えば、A4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺が用紙搬送方向(副走査方向、Y軸方向)と直交する方向(図2において、紙面と直交する方向、主走査方向、X軸方向)に延びるようにして、複数枚積層(堆積)されて収容できる形態とする。
【0030】
給紙装置におけるカセット本体3には、図3及び図4に示すように、用紙Pを載置する底板31が備えられ、この底板31における給送方向(矢印A方向、図2、図5、図7など参照)に沿う両側部に側板32、32が立設されている。そして、排紙トレイ33が、底板31に載置された用紙Pの給送方向(矢印A方向)の上流側の一部を覆うように、両側板32、32に跨って着脱可能及び前後摺動可能に取り付けられている。
【0031】
また、底板31における給送方向(矢印A方向)下流側には、用紙Pをカセット本体3の幅方向の中心に対して左右対称にセットするための用紙幅ガイド(図示せず)が左右方向(用紙Pの幅方向)に伸縮するように移動可能に配置されている。
【0032】
カセット本体3の奥側(図2において右側、図3において左側)には、用紙Pの先端縁を1枚ずつに分離するための分離体11を備えた分離傾斜板8が着脱可能に固定されている。また、ハウジング2側には、後述するように、給紙ローラ手段6における給紙アーム6aの基端部が駆動軸34の回りに上下方向に回動可能に装着され、この給紙アーム6aの先端部に設けられた左右一対の給紙ローラ6bには、給紙アーム6a内に設けられた歯車伝達機構により、図示しない駆動源からの回転が伝えられる(図3、図4参照)。
【0033】
給紙ローラ手段6は、上述したように、合成樹脂製の枠状の給紙アーム6aの自由端部(下端)の左右両側には外周部にゴムなどの高摩擦係数部材を巻回した左右一対の給紙ローラ6bが回転可能に軸支され、給紙アーム6aの基端部には、同じく合成樹脂製の駆動軸34の先端部が回動可能に支持されている。そして、駆動軸34の回転駆動により、給紙アーム6a内に設けられた複数の歯車列からなる歯車伝動機構を介して給紙ローラ6bが一定方向に回転するよう構成されている。なお、歯車伝動機構は、駆動軸34と一体的に回転する歯車と、駆動軸34に対して回転自在に被嵌した遊星アームの先端に枢支され、且つ上述の歯車に噛合う遊星歯車と、この遊星歯車から給紙ローラ6bの側部に形成さている歯車に動力伝達する複数の中間歯車により構成されている。
【0034】
そして、給紙ローラ6bと分離傾斜板8における分離体11(後に詳述する)との協働により、カセット本体3に堆積収容された被記録媒体である用紙Pを最上層から一枚ずつ分離給送することができる。分離された用紙Pは横向きのUターンパスを含む搬送路9を介して、カセット本体3より後方の上側(高い位置)に設けられた記録部7に搬送される。搬送路9は、そのUターン形状の外周側を構成する第1搬送路体と、内周側を構成するガイド部材である第2搬送路体との間隙に形成されている。この搬送路9では、搬送方向に直交する幅方向(以下、単に幅方向と記載する)の中心線(図示せず)に、用紙Pの幅方向の中心線が位置合わせされるセンター合わせにより、用紙Pが搬送されるように構成されている。
【0035】
記録部7は、箱型のメインフレーム21とその左右一対の側板にて支持され、X軸方向(主走査方向)に延びる横長の板状の第1および第2ガイド部材(図示せず)との間に形成される。記録部7におけるインクジェット式の記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5は、用紙搬送方向の上流側の第1ガイド部材及び下流側の第2ガイド部材に跨って摺動自在に支持(搭載)されて往復移動可能になっている。
【0036】
キャリッジ5を往復移動させるために、用紙搬送方向(矢印A方向)の下流側に配置された第2ガイド部材の上面には、主走査方向(X軸方向)に延びるようにタイミングベルト(図示せず)が配置され、このタイミングベルトを駆動するCR(キャリッジ)モータ(図示せず)は第2ガイド部材の下面に固定されている。
【0037】
キャリッジ5における記録ヘッド4の下面と対峙するようにX軸方向に延びる扁平状のプラテン26は、前記第1及び第2ガイド部材の間にて、メインフレーム21に固定されている。
【0038】
プラテン26の搬送方向上流側には、用紙Pを記録ヘッド4の下面に搬送するための搬送(レジスト)ローラとして、駆動ローラ27aと、この駆動ローラ27aに対向する下方に従動ローラとが配置されている。また、プラテン26の搬送下流側には、記録済みの用紙Pを排紙トレイ33に搬送(排送)するように駆動される排紙ローラ28aと、これに対向して排紙ローラ28a側に付勢された拍車ローラとが配置されている(図2参照)。
【0039】
次に、傾斜分離板8及び分離体11の構成について説明する。図3〜図7に示すように、用紙分離用の傾斜分離板8はカセット本体3の奥側(図3において左側端)端部に対して着脱可能に配置されるものであり、傾斜分離板8及びカセット本体3は合成樹脂材の射出成形品である。傾斜分離板8は1枚の連続な板状である。この傾斜分離板8は、用紙Pの幅方向(X軸方向)の中央側で突出し、用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退するように平面視で凸湾曲状に形成されており、且つ用紙Pの幅方向の中央部には、用紙Pの先端縁に当接して分離を促進するための爪状の弾性を有する分離爪片36が複数列にて一体的に形成された分離体11が背面から取り付けられるようになっている。
【0040】
カセット本体3における奥側板37の前側には、図3に示すような一の板状部材からなる傾斜分離板8の背面を支持するための側面視台形状(または三角状)の背面支持部38がX軸方向に沿って適宜間隔にて複数設けられている。各背面支持部38にはその上端から下向きに延びる係止溝(図示せず)がそれぞれ設けられている。他方、傾斜分離板8の裏面には、各背面支持部38の係止溝に上方から係止できる係止爪(図示せず)が一体的に形成されている。そして、上記複数の背面支持部38の前面(傾斜分離板8の背面と対峙する面)は、その包絡面が、用紙Pの幅方向の中央部で突出し、且つ用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退する(用紙Pの先端縁から離れる)ように凸湾曲状に形成されている。従って、各係止爪を各背面支持部38の係止溝に係止することにより、背面支持部38の表面の傾斜面にて傾斜分離板8の背面を支持し、且つこの傾斜分離板8がそのX軸方向の中央側で突出する湾曲面に形成されることになる。
【0041】
さらに、傾斜分離板8の長手方向(X軸方向、用紙Pの幅方向)中央部には、後述する分離体11における各分離爪片36を背面側から臨ませるための窓穴44が用紙Pの給送方向(矢印A方向、図4、図5、図7など参照)に沿って列状で且つ適宜の所定間隔(分離爪片36の配置間隔に略等しい間隔)を開けて分割されて開口している(図4、図7(a)及び図7(b)参照)。これらの窓穴44から各分離爪片36が傾斜分離板8の用紙Pの当接面(表面)側に突出するのである。従って、隣接する小さい窓穴44の間の部位(ブリッジ部)50は、傾斜分離板8と一体である。また、傾斜分離板8の背面側には、分離体11を支持するための支持体としての合成樹脂製の箱状の支持部材45を収容するための取付けケース46が全ての窓穴44を囲むように一体的に形成されている(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0042】
なお、取り付けケース46よりも、用紙Pの幅方向の外側には、用紙Pの給送作用を円滑にするための、一対の回転自在なコロ47の軸受部48が傾斜分離板8の背面側に設けられ、各コロ47の円周面の一部が傾斜分離板8の表面に臨むような穴49が穿設されている(図4及び図6(a)参照)。
【0043】
本発明においては、分離爪片36の列の数は、給送方向の上流側(カセット本体3の底板31に近い側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が少ない場合に相当)で多く、給送方向の下流側(カセット本体3の底板31から遠い側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が多い場合に相当)で少なく配置されている。要するに、分離爪片36の列の数は給送方向の下流側よりも給送方向の上流側に多く配置されている。
【0044】
第1実施形態(図5参照)、第2実施形態(図8参照)、第3実施形態(図10参照)では、分離爪片36の列の数は、給送方向の上流側で2列であり、給送方向の下流側で1列とする。しかしながら、分離爪片36の列の数はこれに限ったものではなく、給送方向の下流側よりも給送方向の上流側に多く配置されていれば良い。
【0045】
このように、分離爪片36の列の数を、給送方向の上流側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が少ない状態の時に対応させて多くすることにより、基端(上端)を中心にして上下揺動する給紙アーム6aの下端に装着された給紙ローラ6bにより用紙Pを傾斜分離板8における分離爪片36の個所での給送抵抗力を大きくして、複数枚の用紙Pの先端部の捌き(ほぐし)作用を確実にならしめて、用紙Pの重送現象をなくすることができる。他方、給送方向の下流側、従って、カセット本体3の底板31から遠い側、即ちカセット本体3への用紙Pの堆積量が多い状態のときの分離爪片36の列の数を少なくすることにより、傾斜分離板8における分離爪片36の個所での給送抵抗力を大き過ぎないように制限し、用紙Pの空送り現象が発生しない効果を奏する。
【0046】
分離爪片36は1つまたは複数の分離体11に形成されており、各分離体11が傾斜分離板8の裏面側に対して着脱可能に設けられている。即ち前述したように、裏面開放形の取り付けケース46(請求項における収容部に相当)に収容し、これに対して背面側から挿入可能で且つ着脱可能な箱状の支持部材45(請求項における支持体に相当)にて脱落不能に支持される(図6(a)及び図6(b)参照)。分離体11が複数ある場合は、各分離体11毎に、傾斜分離板8の裏面側に取り付けケース46が別々に形成され、各取り付けケース46毎に支持部材45が配置されるものとする。
【0047】
次に、第1実施形態の分離体11の構成について詳述する。図5〜図7に示すように、分離体11はステンレスなどの弾性体としての金属板製である。分離体11は、扁平な本体部(ベース部)39から延びる山形(逆V字状)のアーム部40と、このアーム部40の中央部から起立し(切り起こし)て自由端側が用紙Pと接触可能な爪状の分離爪片36と、本体部分39から延びる外向きに延びる弾性付与片(板バネ部)41とを備えている。
【0048】
第1実施形態では、下側の本体部分(ベース部)39の幅寸法が大きい。この本体部分(ベース部)39に左右2列状で且つ上下方向に一定間隔で左右平行状にて、アーム部40及び分離爪片36が形成され、本体部分39の左右両側端から弾性付与片41が斜め上向きに突出されている。上側の本体部分39の左右幅寸法は小さく、その幅中央部位には、給送方向に沿って一定間隔で1列にてアーム部40及び分離爪片36が形成されている。上側の本体部分39の左右両側端にも同様に弾性付与片41が斜め上向きに突出されている。
【0049】
各分離爪片36はアーム部40から直角に起立する基部36aと、用紙Pの給送方向下流側に向かって倒れ傾斜する(傾斜分離板8の表面に対して斜め上方向に傾斜する)ように屈曲された先端部(自由端側ともいう)36bとを有する。このように構成すると、金属板から打ち抜いて後所定の屈曲工程を経ることにより、簡単に分離体を形成することができる。
【0050】
基部36aと先端部36bとの屈曲部分は傾斜分離板8の板厚内にあるように設定されている。これにより、給送される用紙Pの先端縁が基部36a及び屈曲部分に衝突せず(この部分に衝突すると、抵抗力が大きくなりすぎて、給送できない)、先端部36b側に斜めの角度の角度で摺接する。このときの用紙Pの先端縁に対する抵抗力にて、給送される複数枚の用紙Pがほぐされ、最上層の用紙Pのみが分離給送されるのである。
【0051】
なお、左右両側の弾性付与片41の自由端側は、箱状の支持部材45の内面に突出形成された上下長手のリブ部45a、45b、45cの端面にそれぞれ支持されることにより(図5、図6(a)及び図6(b)参照)、本体部分39の全体(全長)が傾斜分離板8の裏面に隙間無く当接した状態で、弾力付勢できることになる。
【0052】
上述のように、複数列の分離爪片36を1つの分離体11に一体的に形成すると、1つの分離体11に1列の分離爪片36のみを形成する場合に比べて、部品点数を少なくすることができる。また、複数列の分離爪片36を1つの分離体11の本体部分(ベース部)39の幅の中央寄りにまとめて(近接させて)形成することができて、分離体11の形状をコンパクトにできる。複数列の分離爪片36を1つの分離体11に一体的に形成すると、分離体11の板厚さや、材質(バネ常数)などについての各分離爪片36の品質のばらつきが少なくなり、上記の用紙Pの重送現象、空送り現象を一層無くすることができる。
【0053】
分離爪片36の列のうち、給送方向の上流側に位置する複数列における分離爪片36は、第1実施形態(図5参照)及び第3実施形態(図10参照)では、給送方向と直交する方向に対して平行に配列されており、第2実施形態(図8参照)では、千鳥状に配列されている。このように、カセット本体3の底板31に近い側における左右複数列の分離爪片36の配列を並列または千鳥状にすることにより、給送される複数枚の用紙Pの先端縁が、底板31からの異なる高さの複数の分離爪片36に衝突する機会が増大するので、用紙Pの重送現象をなくすることが一層確実になるという効果を奏する。
【0054】
なお、第2実施形態(図8参照)では、分離体11の下側(給送方向の上流側に)位置する2列の分離爪片36が千鳥状に配列されている他は、第1実施形態の形態(構成)と全く同じであるので、同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0055】
第3実施形態(図10参照)では、分離体11の下側(給送方向の上流側に)位置する2列の分離爪片36が本体部分39の広い幅方向に左右対称状に形成されている一方、分離体11の上側(給送方向の下流側に)位置する1列の分離爪片36は本体部分39の幅方向の中央部に形成され、且つ下側の2列の分離爪片36の間に位置している。この構成により、上下両方の分離爪片36の列や、本体部分39、アーム部40、弾性付与片41などが左右対称状に形成されているので、この1つの分離体11を、傾斜分離板8の左右中央部に配置することで、左右センター配置の用紙Pに対する分離給送作用が左右バランスの取れた状態にできる。
【0056】
また、分離爪片36の列は、給紙ローラ手段6における左右一対の給紙ローラ6bの配置間隔L1の間に対応する(図9及び図11参照)か、または各給紙ローラ6bによる給送作用部と対向する位置に配置されるように設定する。このように構成することにより、給送される用紙Pの幅方向の中央部に分離爪片36による給送抵抗力が集中し、用紙Pが斜行することを効果的に防止できる。また、給紙ローラ6bと分離爪片36との間で、用紙Pに座屈現象が発生し難くなるので、重送現象も発生し難くなるという効果を奏する。
【0057】
なお、上記の構成において、傾斜分離板8の背面側から取り付けケース46内に分離体11を挿入し、各アーム部40を各窓穴44に嵌め、支持部材45を固定すると、この支持部材45にて分離体11の全ての弾性付与辺(弾性足)41が支持される。その結果、本体部分39は傾斜分離板8の背面側にぴったりと当接し、各分離爪片36は傾斜分離板8の表面側に所定量だけ突出し、その突出量にバラツキが生じない(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0058】
傾斜分離板8をカセット本体3の奥側板37における各背面支持部38の係止溝に上方から係止する一方、傾斜分離板8の背面を各背面支持部38の傾斜面に当接させて配置すると、その傾斜分離板8の表面(用紙Pの先端縁と対峙する面)も、その長手方向(X軸方向、用紙Pの幅方向)の中央部で突出し、且つ用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退する(用紙Pの先端縁から離れる)ように平面視で凸湾曲状(弓形)に形成されることになる。その場合、傾斜分離板8の長手方向の中央部位(窓穴44を有する箇所)が最も曲げ応力及び撓み変形が大きくなるが、複数の分離爪片36を囲むような上下に細長い一連の窓穴を穿設する構成に比べて、本発明のように、隣接する小さい窓穴44の間の複数箇所のブリッジ部50は、傾斜分離板8の長手方向の中央部位の曲げ剛性を補強する(高める)ことに寄与できるものである。従って、傾斜分離板8の長手方向の中央部位(窓穴44に対応するブリッジ部50)は表面側に向かって急激に突出するような反りが発生しないので、設計とおりの所定の突出量だけ、分離爪片36を突出させることができ、給送される用紙Pを1枚ずつに分離し捌く作用を確実にならしめることができる。
【0059】
上記各実施形態(発明)は、カセット本体3が上下多段に配置された画像記録装置にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のインクジェット式の記録ヘッドが備えられた画像記録装置の斜視図である。
【図2】画像記録装置の概略側断面図である。
【図3】カセット本体及び給紙ローラ手段の斜視図である。
【図4】傾斜分離板及び給紙ローラ手段の斜視図である。
【図5】分離体の正面図である。
【図6】(a)は図4の VIa−VIa 線矢視断面図、(b)は図4の VIb−VIb 線矢視断面図である。
【図7】(a)は図5のVIIa−VIIa線矢視断面図、(b)は図7(a)の一部切欠き正面図である。
【図8】分離体の第2実施形態の正面図である。
【図9】第1実施形態及び第2実施形態における分離体と給紙ローラとの配置関係を示す説明図である。
【図10】分離体の第3実施形態の正面図である。
【図11】第3実施形態における分離体と給紙ローラとの配置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 画像記録装置
3 カセット本体
6 給紙ローラ手段
6a 給紙アーム
6b 給紙ローラ
8 傾斜分離板
11 分離体
36 分離爪片
39 本体部分
40 アーム部
41 弾性付与片としての弾性足
44 窓穴
47 コロ
50 ブリッジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被記録媒体を堆積状態で収容可能な上面開放状のカセット本体と、前記堆積された最上層の被記録媒体を給送する給紙ローラ手段と、前記カセット本体における前記被記録媒体の給送方向の下流端にてその給送方向と直交して延びるように設けられ、且つ前記収容可能な被記録媒体の最大高さ位置より高い位置まで設けられている傾斜分離板と、この傾斜分離板に取り付けられ、前記被記録媒体の給送方向に沿って適宜間隔にて配列される複数の分離爪片を備え、前記給紙ローラ手段と前記分離爪片との協働により被記録媒体を1枚ずつ分離して給送する給紙装置であって、
前記傾斜分離板には、前記各分離爪片を前記傾斜分離板の被記録媒体当接面側に突出させる窓穴が設けられ、
前記分離爪片の列の数は、前記給送方向の下流側よりも前記給送方向の上流側に多く配置されていることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記給紙ローラ手段は左右一対のローラを有しており、前記分離爪片の列は、当該左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなることを特徴とする請求項3または4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記傾斜分離板の裏面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項1】
シート状の被記録媒体を堆積状態で収容可能な上面開放状のカセット本体と、前記堆積された最上層の被記録媒体を給送する給紙ローラ手段と、前記カセット本体における前記被記録媒体の給送方向の下流端にてその給送方向と直交して延びるように設けられ、且つ前記収容可能な被記録媒体の最大高さ位置より高い位置まで設けられている傾斜分離板と、この傾斜分離板に取り付けられ、前記被記録媒体の給送方向に沿って適宜間隔にて配列される複数の分離爪片を備え、前記給紙ローラ手段と前記分離爪片との協働により被記録媒体を1枚ずつ分離して給送する給紙装置であって、
前記傾斜分離板には、前記各分離爪片を前記傾斜分離板の被記録媒体当接面側に突出させる窓穴が設けられ、
前記分離爪片の列の数は、前記給送方向の下流側よりも前記給送方向の上流側に多く配置されていることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記給紙ローラ手段は左右一対のローラを有しており、前記分離爪片の列は、当該左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなることを特徴とする請求項3または4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記傾斜分離板の裏面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の給紙装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−230845(P2008−230845A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77213(P2007−77213)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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