説明

給紙装置

【課題】捌き圧を大きくしないで、用紙同士の摩擦が大きい用紙であっても、重送や連鎖が生じない給紙装置の実現。
【解決手段】捌き板6の上流側に上流側に向って下り傾斜となる傾斜部10を設け、この捌き板6を搬送方向前後に移動でき選択した位置で固定できるようにする。この捌き板6に、ガイド板回動軸13によって回動可能なガイド板8を被せるように設ける。捌き板6を搬送方向前方へ移動させると、捌き板6に接しているガイド板8の先端が下がって行き、このガイド板8にガイドされて進入して来た用紙の先端が捌き板6の傾斜部10となす角が大きくなって行き、それにつれて捌き板6の用紙に対するブレーキ効果が大となる。従って用紙同士の摩擦が大きい用紙の場合でも最上層の用紙が搬送される際に重送を起さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給紙板上に積載された用紙束から1枚ずつ引き出して給紙する給紙装置の技術分野の発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の給紙装置は図9に示すように、補助給紙ローラ4と、給紙ローラ2と、給紙ローラ2の外周面に圧接する捌き板30とを有し、補助給紙ローラ4によって給紙ローラ2と捌き板30との間に用紙15を送り込み、複数枚の用紙のうち最上層の1枚のみを送り出す給紙装置である。
この給紙装置は、給紙ローラ2の外周面と用紙15、用紙15と捌き板30、用紙同士の間にそれぞれ発生する摩擦力の差を利用して1枚ずつに分離する。給紙ローラ2と捌き板30との間に2枚用紙が送り込まれると、下方の用紙が捌き板30と摺接してブレーキがかかり、このブレーキ力が用紙同士の摩擦力を上回るので、下方の用紙が共に送られることが阻止される。捌き板30にはウレタンやシリコンゴム等が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182517号公報(段落[0029]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コート紙等のように互いに密着し易い用紙の場合は、用紙同士の摩擦力が大きくなりこれに打ち勝って用紙を分離するために、捌き板を給紙ローラに圧接する力(捌き圧)を強くしなければならない。そうすると、強く密着する給紙ローラと捌き板の間に用紙を送り込むために強い搬送力が必要になるから、補助給紙ローラが用紙に当接する圧(給紙圧)をも強くしなければならない。
そうすると給紙ローラ、補助給紙ローラの駆動負荷が大きくなり、駆動源が大型化する。また、筐体に対する負荷も大きくなるので、筐体も頑丈にしなければならず、大型化、高コスト化するという問題があった。更に給紙圧を大きくすると、紙に跡がつくという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、捌き圧を大きくしなくとも、コート紙のような用紙同士が密着し易い用紙であっても1枚ずつの給紙で安定して行える給紙装置を実現することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の各手段構成を有する。
本発明の第1の構成は、給紙ローラと、捌き台の上部に設けられ前記給紙ローラの外周面に圧接される捌き板とを有し、該給紙ローラと該捌き板の狭間を目指して送り込まれた複数枚の用紙のうち給紙ローラに接している1枚のみを送り出す給紙装置であって、前記捌き板は、前記給紙ローラに対向する面の用紙搬送方向上流側に、上流側に向って下方に傾斜する傾斜部を有し、前記上流側から前記捌き板に回動可能に被さりその先端が前記捌き板に接するガイド板と、前記捌き台を用紙搬送方向前後に移動ができる捌き板移動機構とを有することを特徴とする給紙装置である。
【0007】
本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、前記捌き台の捌き板下流側位置に、回転周面が搬送方向で捌き板の先端と揃う搬送ローラと捌き台を給紙ローラから離したり近付けたりする移動手段とを有することを特徴とする給紙装置である。
【0008】
本発明の第3の構成は、前記第1の構成において、前記捌き台上で捌き板の下流側位置に捌き板と面を揃えて、捌き板よりも用紙に対する摩擦が小さい滑り板を設けるとともに、捌き台を給紙ローラから離したり近付けたりする移動手段を設けたことを特徴とする給紙装置である。
【0009】
本発明の第4の構成は、前記第1ないし第3の構成のいずれか1つの構成において、前記捌き板が、幅方向に複数分割されて形成されており、1列又は複数列の高摩擦捌き板の両側にそれぞれ1列又は複数列の低摩擦捌き板が設けられ、低摩擦捌き板の幅の合計が高摩擦捌き板の幅合計よりも大なることを特徴とする給紙装置である。
【0010】
本発明の第5の構成は、給紙すべき用紙の束を積載する給紙板と、給紙ローラと、捌き台の上部に設けられ前記給紙ローラの外周面に圧接される捌き板と、給紙板から出た用紙の流れを導くガイド板と、このガイド板の上下位置を調節する上下位置調節機構とを有し、前記給紙ローラと前記捌き板の狭間に向けて送り込まれた複数枚の用紙のうち給紙ローラに接している1枚のみを送り出す給紙装置であって、前記捌き板は、前記給紙ローラに対向する側の面の用紙搬送方向上流側部分が上流側に向って下方に傾斜する傾斜部を有し、前記ガイド板は、上面から見て捌き板の存在する部分では、捌き板と抵触しないようにする穴を有しており、側面から見たガイド板と捌き板の上下位置関係は、捌き板の上流端側ではガイド板が上であり、下流端側では捌き板が上となっていることを特徴とする給紙装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成においては、捌き板が上流側に向って下方に傾斜する傾斜部を有しており、且つ捌き板移動機構により用紙搬送方向前後に移動調節できるようになっており、上流側から捌き板の傾斜部に被さるようにして先端が傾斜部に接しているガイド板があり、このガイド板は先端が上下に動くように回動可能に保持されており先端が捌き板に自重で当接しているので、捌き板が前方へ移動するとガイド板の先端が下がり給紙板の方から送り出されて来た複数枚の用紙はガイド板に沿って進みその先端は、捌き板の傾斜部との間に角度をもって当接することになる。
【0012】
このように用紙が捌き板と或る角度をもって当接するので、前進に対するブレーキとなる。このブレーキ効果は角度が大きくなる程大きくなる。即ち、捌き板が前に出る程大きくなる。このブレーキ力が給紙ローラによって前進する用紙との摩擦力より大きくなると下層の用紙は引き摺られて行くことなく、重送を防止できるので、用紙間の摩擦が大きい場合でも、捌き圧を大きくしなくとも、捌き板を前方へ移動させるだけで重送を防止できるという効果がある。
用紙の種類によって用紙同士の摩擦力や撓み具合に違いがあるので、捌き板移動機構により捌き板の前後位置調整を行うことになる。
【0013】
本発明の第2の構成は、第1の構成に加えて、捌き台の捌き板の下流位置に、回転周面が搬送方向で捌き板の先端と揃う搬送ローラと、捌き台を給紙ローラから離したり近付けたりする移動手段を有しているので、給紙ローラと捌き板および搬送ローラと給紙ローラとの間に間隙を設け調節することができ、複数枚の用紙を2つ折りの親紙で挟んだ用紙束の多数の部数と給紙板上に積載したものから1部ずつ送給できるという効果がある。
【0014】
本発明の第3の構成は、前記第1の構成において、捌き台上で捌き板の下流側位置に捌き板と面を揃えて、捌き板よりも用紙に対する摩擦が小さい滑り板を設けるとともに捌き台を給紙ローラから離したり近付けたりする移動手段を設けたものであるから、第2の構成と同様に、複数枚の用紙を2つ折りの親紙で挟んだ用紙束を多数の部数を給紙板上に積載したものから1部ずつ送給できるという効果がある。
【0015】
本発明の第4の構成は、捌き板を幅方向に複数分割して形成し、複数の捌き板は、高摩擦捌き板と、少なくともこの高摩擦捌き板の両側に設けられ、幅方向寸法の合計が、高摩擦捌き板の幅方向寸法の合計よりも大なる低摩擦捌き板を有するものである。
捌き板の摩擦係数が高い方が、低い捌き圧で高い摩擦力が得られる。しかし、摩擦が高い分、用紙が圧接部に入ったときに、用紙先端の、捌き板に当接している部分が座屈しやすくなる。
したがって、高摩擦捌き板の幅を狭くして座屈の可能性を減じておいて、その両側で、低摩擦捌き板と給紙ローラの協働で用紙を前進させることにより、分離給送させる。高摩擦捌き板の効果により、捌き圧を低く抑えることができる。
したがって、この形態により、第1の構成の効果をさらに高めることができる。
【0016】
本発明の第5の構成は、捌き板の搬送方向上流側の方に上流側に向って下方に傾斜する傾斜部を有し、ガイド板は上面から見て捌き板の存在する部分では、捌き板と抵触しないようにする穴を有しており、側面から見たガイド板と捌き板の上下位置関係は、捌き板の上流側ではガイド板が上であり、下流側では捌き板が上となり、上下関係がクロスするようになっている。従って、上下が逆になるクロスポイントが存在する。
【0017】
給紙板から出た用紙は、クロスポイントまではガイド板上を進み、クロスポイントを越えると先端が捌き板との間に角度をもって捌き板に当接することになる。ガイド板は、ガイド板の上下位置調節機構によって上下位置を変えることができ、上下位置を上げるとクロスポイントは前方(搬送下流方向)へ移動し、用紙先端が捌き板に当接する角度が小さくなり、捌き板の用紙に対するブレーキ効果が小さくなり、下げるとクロスポイントは後方(搬送上流方向)へ移動し、給紙板を出た用紙の先端が下がり、ガイド板に沿って移動しクロスポイントを越えて捌き板に当接したときの捌き板との角度は大きくなり、捌き板の用紙に対するブレーキ効果は大きくなる。このブレーキ効果は用紙が複数枚重なっている場合には下の用紙ほど大きくなる。
【0018】
このように、上下位置調整機構によってガイド板の上下位置を変えることにより、給紙板から出た複数枚の用紙のうち下層紙に対するブレーキ効果を大小調節ができるので、コート紙などのように用紙同士の摩擦が大きい場合には、ガイド板を下げることにより捌き板の下層紙に対するブレーキ効果を大きくできるので、捌き圧を大きくしなくとも重送や連鎖を生じないようにすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明給紙装置の第1の構成の実施例の側面図である。(実施例1)
【図2】図1の給紙板の前端紙部分、給紙ブラケットおよびガイド支持枠部分の拡大図である。(実施例1)
【図3】図1、図2におけるガイド支持枠部分を下から見た下面図および搬送ガイド部分を上から見た上面図である。(実施例1)
【図4】本発明給紙装置の第2の構成の実施例の要部側面図およびガイド支持枠下面図である。(実施例2)
【図5】本発明給紙装置の第3の構成の実施例の要部側面図である。(実施例3)
【図6】本発明給紙装置の第4の構成の実施例の搬送ガイド部分を上から見た上面図である。(実施例4)
【図7】本発明給紙装置の第5の構成の実施例の側面図である。(実施例5)
【図8】図7の要部拡大図2態である。(実施例5)
【図9】従来の給紙装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態は、用紙同士の摩擦の大きい用紙の給紙においても捌き圧を大きくしないで、用紙の重送、連鎖を生じないようにするための形態として、第1の構成として捌き板に傾斜部を設け、捌き板の搬送方向における位置を調整できそれにつれてガイド板の傾斜が変化し用紙先端が捌き板に当接する角度が変化する形態とし、第2の構成としては、上記形態のもので、複数枚の用紙を2つ折りの親紙で挟んだ用紙束をも給紙できるように、捌き板と給紙ローラの間隔を調整できるようにするとともに同時に給紙ローラとの間隔を調整できる搬送ローラを設けるようにしたものであり、第3の構成は、前記搬送ローラに代えて単なる滑り板としたものであり、第4の構成は、上記第1ないし第3の形態のものに、更に捌き板を単一のものではなく幅方向で3グループに分割し、両側グループのものの摩擦を中央グループのものより小さくすることにより捌き圧を強くしないで一層、重送や連鎖を生じないようにする他用紙先端に座屈を生じないようにする形態のものである。
【0021】
第5の構成は、捌き板は捌き圧を調整できるだけでその位置は動かさず、ガイド板を上下することにより、用紙の先端が捌き板に当接する角度を調節して、重送、連鎖を生じさせないようにする形態である。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明給紙装置の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明給紙装置の第1の構成の実施例(実施例1)の側面図である。
図2は、図1の給紙板1の前端部分、給紙ブラケットおよびガイド支持枠16部分の側面拡大図である。
図3は、(a)が図1、図2におけるガイド支持枠16を下から見た下面図であり、(b)は図2の(b)の状態における搬送ガイド5を上から見た上面図であり、位置関係を分かり易くするために補助給紙ローラ4および給紙ローラ2を1点鎖線で併記してある。
【0023】
本発明の給紙装置は図1に示すように、給紙板1に積載された用紙15が補助給紙ローラ4によって搬送ガイド5の方へ送給され、給紙ローラ2と捌き板6の狭間へ入り給紙ローラ2と接した最上面の用紙1枚のみが前方(搬送方向)へ送り出され、これを繰り返すことにより用紙を1枚ずつ送給するというものである。
しかし、コート紙などのように用紙間の摩擦が大きい場合には、用紙が2枚重なって送り出されたり(重送)、用紙の一部分が重なって繋がった状態で送り出される連鎖が生ずる。
【0024】
このような重送や連鎖を生じないようにするには、捌き板の給紙ローラに対する接触圧(捌き圧)を強くして用紙と給紙ローラの摩擦を用紙間の摩擦や用紙と捌き板との摩擦よりも大きくして、給紙ローラと接している用紙のみを送り出すことができるが、捌き圧を強くすると給紙ローラや補助給紙ローラの駆動負荷が大きくなり、駆動源が大型化するという問題があるので、本願発明第1の構成では、複数枚の用紙が給紙板から送り出されて来たときに、下層の用紙が捌き板に当接する角度が大きくなり、前進に対するブレーキ作用が大きくなるようにして、重送や連鎖を防止しようとするものである。
【0025】
そこで図1、図2に示すように、捌き板6の搬送方向上流側に上流に向って下方に傾斜する傾斜部10を設け、この捌き板6に上流側から被さるように先端が接し、ガイド板回動軸13によって回動可能に支持されたガイド板8を設けるとともに、捌き板6が搬送方向前後に移動できるように、捌き板6を捌き台7に貼着し、この捌き台7を捌き台支持ブラケット17に捌き台支軸14によって支持し、この捌き台支持ブラケット17を前後に移動できるようにしたものである。
【0026】
その構造は、図3の(a)の下面図に示すように、ガイド支持枠16に前後移動ガイド穴18を設け、捌き台支持ブラケット17には前後移動ガイドピン12を設けて前後移動ガイド穴18に挿入して前後移動可能なようにし、位置を変えて試行を行った後、適切な位置に前後移動ロックねじ11で固定できるようにしたものである。
【0027】
図2の(a)は、このような構造により捌き板6を搬送方向上流側寄りに移動させた場合であり、図2の(b)は捌き板6を下流側寄りに移動させた場合である。
図2に示すように捌き板6には図で左下りの傾斜部10を有しており、この傾斜部10に上から被さるようにしてガイド板8が設けられている。このガイド板8はガイド板回動軸13により回動可能に軸支されており、軸より右側の方が左側より重いので、右側の先端が自重で捌き板6に当接している。従って、図2の(a)の状態から捌き板6を図で右の方へ移動させると傾斜部10が右へ移動することになり、ガイド板8の右先端が捌き板に接する箇所は下がることになる。その状態が図2の(b)に示されている。給紙板1から送られてくる用紙はガイド板8にガイドされて進入してくる。そうすると、(a)の場合には進入して来て捌き板6に接する用紙に対する捌き板6の傾斜角は小さいのに対し、(b)の場合には進入して来て捌き板6に接する用紙に対する捌き板6の傾斜角は大きくなる。
【0028】
進入用紙に対する捌き板の傾斜角が大きくなると、用紙の前進に対するブレーキ効果が大きくなる。
その結果、給紙ローラ2に接した最上層の用紙が送り出されて行くときに用紙間の摩擦によって引き摺られて出ていくということ(重送、連鎖)がなくなるようにすることができる。
重送や連鎖は、重なった用紙間の摩擦によるものであり、用紙間の摩擦は用紙の種類によって様々である。
【0029】
従って、本発明装置では、用紙の種類に応じてブレーキ作用を調整することができるように、傾斜部10を有する捌き板6を前後に移動できるようにし、同時にガイド板8をガイド板回動軸13により、捌き板6の移動に応じて自重で回動できるようにし、進入用紙と捌き板とのなす角度が調整できるようになっている。
【実施例2】
【0030】
図4は、本発明第2の構成の実施例の2面図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のガイド支持枠16を下から見た下面図である。図2と異なる点は、捌き台7の前方部に搬送ローラ21を設けたことである。
図1〜図3の給紙装置は、給紙板1に積載された用紙束から用紙を1枚ずつ給紙するものであるが、図4の給紙装置は、1枚ずつの給紙に加えて、複数枚の用紙が親紙で束ねられた用紙束を1部ずつ送給できるようにしたものである。
【0031】
搬送ローラ21の取付けは(b)に示すように、捌き台7の前方部分を搬送ローラ21が入るように凹部を設けその両側に、図示されていない軸受けを設けて、搬送ローラを回転可能に軸支し、下方側に回転駆動を受ける駆動軸22を設けている。(a)は、このような捌き台7を前後移動ロックねじ11を緩めて左側の方へ移動させてロックし、捌き圧調整ねじ9を回して、捌き台支軸14に支持されている捌き台を下げることにより、捌き板6と給紙ローラ2の間および搬送ローラ21と給紙ローラ2の間の間隔を用紙束1部を送り出せる間隔に調整できるようになっている。また、この状態から捌き台7を前進させ、捌き圧を1枚給紙が可能なように調整したときには、搬送ローラ21は給紙ローラ2から離れているので1枚給紙が可能となる。
【実施例3】
【0032】
図5は、本発明第3の構成の実施例の側面図である。
この構造は、捌き台7上で捌き板6の下流側位置に捌き板6と面を揃えて、捌き板6よりも用紙に対する摩擦が小さい滑り板23を設けたものである。捌き台7を前後移動させたり、給紙ローラ2から離したり近付けたりする構造は図2〜図4と同様である。
(a)は、捌き台7を後方(図では左方)へ後退させ、捌き板6の先端部分と滑り板23が給紙ローラ2に接している状態であり、(b)は捌き台7を前方(図では右方)へ前進させ捌き板6と滑り板23の後端が給紙ローラ2に接している状態であり、いずれも1枚給紙を行わせる場合の状態図である。
【0033】
これに対して(c)は、捌き圧調整ねじ9によって捌き台7および滑り板23を給紙ローラ2から離すように調整して給紙ローラ2との間に、複数枚の用紙が親紙で束ねられた用紙束が1部ずつ給紙されるようにした状態図である。
【実施例4】
【0034】
図6は、本発明第4の構成の実施例を示す図であって、搬送ガイド5を上から見た上面図であり、位置関係を分かり易くするために補助給紙ローラ4および給紙ローラ2を1点鎖線で併記してある。
本実施例では、捌き板が3分割されており、中央が高摩擦捌き板25となっており、その両側が低摩擦捌き板24となっている。
捌き板の摩擦係数が高い方が低い捌き圧で高い摩擦力が得られる。しかし、摩擦力が高いことによって、用紙が圧接部に入ったときに、用紙先端の、捌き板に当接している部分が座屈し易くなる。
【0035】
そこで、高摩擦捌き板の幅を狭くして座屈の可能性を減じておいて、その両側で低摩擦捌き板と給紙ローラの協働で用紙を前進させることにより、分離送給させる。中央の高摩擦捌き板の効果により、捌き圧は低く抑えつつ座屈の発生を抑制できる。
【実施例5】
【0036】
図7は、本発明第5の構成の実施例の側面図である。
図8は、図7の要部拡大図2態である。
実施例5では、捌き台7は給紙ローラに対する捌き圧が調整される他は位置の移動はない。これに対してガイド板8はガイド板上下機構26により上下位置を変えることができ、選んだ位置でロックすることができる。
図8の(a)はガイド板8を上げたときの状態図であり、(b)はガイド板8を下げたときの状態図である。ガイド板8には、平面で見ると四角いガイド穴19があり、捌き板6はガイド板8の下側からこのガイド穴19を通して給紙ローラ2に圧接するようになっている。
【0037】
捌き板8は他の実施例におけると同様に、給紙ローラ2に対向する側の面の用紙搬送方向上流側部分が上流側に向って下方に傾斜する傾斜部10を有している。
給紙板1から出た用紙の先端はガイド板8に沿って進む。ガイド穴19があってもそれは用紙の幅方向で見て捌き台7の幅よりやや大きい程度で用紙幅よりは狭いから、用紙幅の、ガイド穴19より左右両側の部分はガイド板8に接しており、用紙全体としてはガイド板8に沿って進むことになる。従って、図8の(a)のようにガイド板8が上がっている場合には、ガイド板8に沿って進んだ用紙の先端が捌き板6と接する位置における用紙と捌き板6とのなす角度は小さい。
【0038】
これに対して、(b)のようにガイド板8を下げると、給紙板1から送り出された用紙の先端も下方へ屈曲して、捌き板6の傾斜部10へ当接することになるから当接箇所における用紙先端部分と捌き板6の傾斜部10とのなす角度は大きくなる。
捌き板6に用紙先端がある角度で当接した場合、その角度が大きい程、捌き板6から受ける摩擦によるブレーキ効果が大きい。このブレーキ効果が用紙同士の摩擦より大きければ、給紙ローラ2によって搬送される最上層の用紙に引き摺られて第2層の用紙が出て行くということはない。即ち、重送や連鎖は生じない。
従って、コート紙などのように用紙間の摩擦が大きい用紙の場合には、捌き板6の用紙に対するブレーキ効果も大きくなるようにガイド板8を下げるとよいことになる。
【0039】
以上のように、本実施例では、用紙の種類即ち用紙同士の摩擦の大小に応じて、ガイド板8の固定位置を上下方向に変えることにより、捌き圧を大きくしなくとも、重送や連鎖を生じないようにすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 給紙板
2 給紙ローラ
3 ベルト
4 補助給紙ローラ
5 搬送ガイド
6 捌き板
7 捌き台
8 ガイド板
9 捌き圧調整ねじ
10 傾斜部
11 前後移動ロックねじ
12 前後移動ガイドピン
13 ガイド板回動軸
14 捌き台支軸
15 用紙
16 ガイド支持枠
17 捌き台支持ブラケット
18 前後移動ガイド穴
19 ガイド穴
20 給紙ブラケット
21 搬送ローラ
22 駆動軸
23 滑り板
24 低摩擦捌き板
25 高摩擦捌き板
26 ガイド板上下機構
27 捌きレバー
28 捌き圧ばね
29 給紙圧ばね
30 捌き板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙ローラと、捌き台の上部に設けられ、前記給紙ローラの外周面に圧接される捌き板とを有し、該給紙ローラと該捌き板の狭間を目指して送り込まれた複数枚の用紙のうち給紙ローラに接している1枚のみを送り出す給紙装置であって、
前記捌き板は、前記給紙ローラに対向する面の用紙搬送方向上流側に、上流側に向って下方に傾斜する傾斜部を有し、前記上流側から前記捌き板に回動可能に被さりその先端が前記捌き板に接するガイド板と、前記捌き台を用紙搬送方向前後に移動ができる捌き板移動機構とを有することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記捌き台上の捌き板下流側位置に、回転周面が搬送方向で捌き板の先端と揃う搬送ローラと捌き台を給紙ローラから離したり近付けたりする移動手段とを有することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記捌き台上で捌き板の下流側位置に捌き板と面を揃えて、捌き板よりも用紙に対する摩擦が小さい滑り板を設けるとともに、捌き台を給紙ローラから離したり近付けたりする移動手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項4】
前記捌き板が、幅方向に複数分割されて形成されており、1列または複数列の高摩擦捌き板の両側にそれぞれ1列又は複数列の低摩擦捌き板が設けられ、低摩擦捌き板の幅の合計が高摩擦捌き板の幅合計よりも大なることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項5】
給紙すべき用紙の束を積載する給紙板と、給紙ローラと、捌き台の上部に設けられ前記給紙ローラの外周面に圧接される捌き板と、給紙板から出た用紙の流れを導くガイド板と、このガイド板の上下位置を調節する上下位置調節機構とを有し、
前記給紙ローラと前記捌き板の狭間に向けて送り込まれた複数枚の用紙のうち給紙ローラに接している1枚のみを送り出す給紙装置であって、前記捌き板は、前記給紙ローラに対向する側の面の用紙搬送方向上流側部分が上流側に向って下方に傾斜する傾斜部を有し、
前記ガイド板は、上面から見て捌き板の存在する部分では、捌き板と抵触しないようにする穴を有しており、側面から見たガイド板と捌き板の上下位置関係は、捌き板の上流端側ではガイド板が上であり、下流端側では捌き板が上となっていることを特徴とする給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−173846(P2010−173846A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21590(P2009−21590)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000109727)株式会社デュプロ (195)
【Fターム(参考)】