説明

給電装置とそれを用いたハーネス配索構造

【課題】フラットワイヤハーネスを渦巻き状に拡縮して余長吸収するものにおいて、ハーネス余長吸収性能を高め、構造を簡素化、低コスト化する。
【解決手段】ボス部3を中心としてフラットハーネス8を複数巻きに配索し、ボス部からフラットハーネスの巻き部8の内径部9aにかけてばね部材7,22を配置し、ばね部材で巻き部を外向きに付勢し、巻き部においてフラットハーネスを径方向に狭ピッチで配置して成る給電装置1,31を採用する。ばね部材7,22は、放射状に配置された複数の湾曲状の板ばねや、ループ状に湾曲した巻きばねである。ボス部3と巻き部9とばね部材7,22をケース6の環状壁2内に収容した。環状壁2のハーネス導出用の口部14の両側にハーネス案内用の湾曲面15を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットハーネスを螺旋状に巻いてハーネス余長を吸収し、真直に繰り出して可動構造体の移動に対応する給電装置とそれを用いたハーネス配索構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の給電装置の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この給電装置51は、フラットワイヤハーネス52を渦巻き状に収容する矩形状のケース53と、ケース内でフラットハーネス52の渦巻き部52aを支持する円板54と、渦巻き部52aの最内径部を支持する中心軸55と、フラットハーネス52の最外径部に接した複数の回転ローラ56と、各ローラ56をケース53のスリット57に沿ってピン部58で支持しつつハーネス中心に向けて付勢するばね59とを備えるものである。
【0004】
例えばケース53は車両ボディに配置され、フラットハーネス52の一方はケース53の一方の口部60から伸縮自在に導出されて、ドアに向けて配索され、フラットハーネス52の他方はケース53の他方の口部61に固定されつつ車両ボディ側に導出される。例えばドアの開時にフラットハーネス52が引き出され、ドアの閉時に渦巻き部52aの自らの復元力で引き込まれて余長(弛み)吸収される。
【0005】
ばね59を用いない場合は、フラットハーネス52の最外径部のみが大きく拡径してケース53の内面に接触し、その摩擦抵抗によってフラットハーネス52の余長吸収性能が低下するが、ばね59を外側からフラットハーネス52に弾接することで、その問題が解消されている。
【特許文献1】特開2008−60089号公報(図3,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の給電装置51にあっては、フラットハーネス52の剛性が低い場合に、ローラ56が接していない部分でフラットハーネス52が拡径されて、フラットハーネス52が渦巻き形状を維持できず、余長吸収機能が阻害されるという懸念があった。また、渦巻き部52aの最内径部から最外径部までのハーネス軌跡がフラットハーネス52の剛性に依存して均一に拡張するために、渦巻き部52aの外径寸法に対する(外径寸法が大きい割には)余長吸収能力(余長吸収長さ)が低い(短い)という懸念があった。また、部品点数が多いために構造が複雑化、高コスト化、肥大化するという懸念があった。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、フラットワイヤハーネスを渦巻き状に拡縮して余長吸収するものにおいて、ハーネス余長吸収性能を高め、また、構造を簡素化、低コスト化することのできる給電装置とそれを用いたハーネス配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る給電装置は、ボス部を中心としてフラットハーネスを複数巻きに配索し、該ボス部から該フラットハーネスの巻き部の内径部にかけてばね部材を配置し、該ばね部材で該巻き部を外向きに付勢し、該巻き部において該フラットハーネスを径方向に狭ピッチで配置したことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、ばね部材がフラットハーネスの巻き部を内側から外側に付勢する、すなわち巻き部の自らの復元力で拡径する方向に付勢するから、少数のばね部材でも巻き部が環状に維持され、フラットハーネスを繰り出して巻き取る際の余長吸収機能が確実に発揮される。また、ばね部材が余長吸収のために巻き部を付勢するのではなく、巻き部をボス部から遠く離間した位置で大径に拡径させるために作用するから、巻き部の全長がばね部材を用いない場合(巻き部が内径部から外径部にかけて均一な螺旋状となる)よりも増加し、余長吸収性能が高まる。
【0010】
請求項2に係る給電装置は、請求項1記載の給電装置において、前記ばね部材が、放射状に配置された複数の湾曲状の板ばねであることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、各板ばねがフラットハーネスの巻き部の内径部(内周面)を均一な力で外向きに押圧する。各板ばねは等ピッチで配置され、板ばねの湾曲方向(ボス部からばね自由端が突出する方向)はフラットハーネスの巻き部の巻き方向(繰り出し方向)と同じであることが、スムーズな繰り出し及び巻き取りの上で好ましい。
【0012】
請求項3に係る給電装置は、請求項1記載の給電装置において、前記ばね部材がループ状に湾曲した巻きばねであることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、一本の巻きばねがフラットハーネスの巻き部の内径部(内周面)を均一な力で外向きに押圧する。巻きばねの巻き方向はフラットハーネスの巻き部の巻き方向(繰り出し方向)と同じであることが、スムーズな繰り出し及び巻き取りの上で好ましい。
【0014】
請求項4に係る給電装置は、請求項1〜3の何れかに記載の給電装置において、前記ボス部と前記巻き部と前記ばね部材をケースの環状壁内に収容したことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、ケースの環状壁の内面にフラットハーネスの巻き部が接することで、巻き部の最外径寸法が規制(規定)される。巻き部やばね部材はケース内で外部との干渉等から安全に保護される。
【0016】
請求項5に係る給電装置は、請求項4記載の給電装置において、前記環状壁のハーネス導出用の口部の両側にハーネス案内用の湾曲面が形成されたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、ケースからフラットハーネスが引き出される際とケース内にフラットハーネスが引き込まれる際に、各湾曲面にそれぞれフラットハーネスがスムーズに摺接して、低摩擦で引き出し及び引き込みが行われる。
【0018】
請求項6に係る給電装置を用いたハーネス配索構造は、請求項4又は5記載の給電装置を用いたハーネス配索構造であって、前記ケースを車両ボディのステップ部の下側においてガイドレールの長手方向中間部の近傍で車室寄りに配置し、該ガイドレールに係合するガイドアームに沿って該ケースからスライドドアに前記フラットハーネスを配索したことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、スライドドアの全閉時にフラットハーネスがばね付勢に抗してケースからドア閉じ方向に引き出され、スライドドアの半開時にフラットハーネスがケース内に引き込まれて余長吸収され、スライドドアの全開時にフラットハーネスがばね付勢に抗してケースからドア開き方向に引き出される。ケースやフラットハーネスは車両ボディ側のガイドレールやスライドドア側のガイドアームと何ら干渉することなく省スペースで配置される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、フラットハーネスの巻き部をばね部材で内側から付勢することで、少数のばね部材でも巻き部を環状に維持させて、フラットハーネスの余長吸収機能を確実に発揮させることができる。また、ばね部材が巻き部を大径に拡径させるから、巻き部の全長を増大させて、余長吸収性能を高めることができる。また、ボス部とばね部材とフラットハーネスという少数の部品で構造が簡単でコンパクトで低コストな給電装置を提供することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、複数の板ばねでフラットハーネスの巻き部を確実に拡径させて、余長吸収機能や余長吸収性能を高めることができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、一つの巻きばねでフラットハーネスの巻き部を確実に拡径させて、余長吸収機能や余長吸収性能を高めることができる。ばね部材は一つであるので、ボス部へのばね部材の組付作業工数を低減させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、ケースの環状壁でフラットハーネスの巻き部の最外径を規制することで、フラットハーネスの引き出し長さや余長吸収長さ等の設計を容易化することができる。また、巻き部やばね部材をケース内で外部との干渉等から安全に保護することができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、口部の各湾曲面にフラットハーネスをスムーズに摺接させて、低摩擦でスムーズにフラットハーネスの引き出し及び引き込みを行うことができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、ケースをガイドレールよりも内側に配置し、且つフラットハーネスをスライドドアのガイドアームに沿って配索したことで、ケースやフラットハーネスをガイドレールやガイドアーム等との干渉なく省スペースで配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1〜図2は、本発明に係る給電装置の一実施形態を示すものである。
【0027】
図1の如く、この給電装置1は、円形の環状部(環状壁)2とその中心の円柱状のボス部3とを有する合成樹脂製のケース6と、ボス部3の外周に放射状に配設された複数の板状のばね部材7と、各ばね部材7で巻き部9の内径部9aを押圧されて環状部2の内周面2aに沿って環状に拡径した状態で収容される可撓性のフラットワイヤハーネス8とを備えるものである。
【0028】
ケース6はベース部4とカバー部5とで構成され、ベース部4は、水平な基板部10に環状部2とボス部3とを好ましくは一体に立設して構成され、カバー部5は、基板部10に重なって孔部11にねじ締め等で固定される水平な基板部12と、基板部12に立設されて環状部2を覆う蓋状(半環状)の覆い壁13とで構成されている。ボス部3を別体に形成する場合は、基板部10にボス部3をボス周方向に回転しないように固定する。
【0029】
環状部2は、円周の一部を縦方向に切欠して構成されたハーネス導出用の口部14を有し、口部14の左右両側には、外開きの対向する各湾曲面15を有するガイド壁16,17が環状部2と一体に形成され、両ガイド壁16,17の間に短いハーネス導出通路18が口部14に連通して形成されている。カバー部5の覆い壁13には、両ガイド壁16,17を露出させる開口19が形成されている。
【0030】
ボス部3は、外周面3aの一部から中心を通るスリット20を有し、スリット20の内側にハーネス挟持用の垂直な突条21が複数千鳥状に配置形成されて、ハーネス固定部を成している。フラットハーネス8は例えばスリット20内で90°方向に折り曲げられて底部側の基板部10を貫通して外部(例えば車両ボディ側)に導出される。
【0031】
ばね部材7は、自由状態で真直な(あるいは僅かに湾曲した)板ばねであり、基端7a7aをボス部3の第二の各スリット(図示せず)内に差し込んで固定し、あるいはボス部3の外周面3aにねじ止め等で固定して、ボス部3の接線方向に伸長し、先端(自由端)7bをフラットハーネス8の巻き部9の内周面9aに弾接させて、湾曲状に撓んでいる。
【0032】
各ばね部材7の湾曲方向は、フラットハーネス8の巻き部9の巻き方向と同じであり、巻き部9をケース6から引き出す方向に湾曲内側面7cを向け、ケース内にフラットハーネス8を引き込む方向に湾曲外側面7dを向けている。ばね部材7の材質は、フラットハーネス8への傷付きを防止する上で合成樹脂であることが好ましいが、金属材を用いて先端を湾曲させる等して傷付きを防いでもよい。
【0033】
本例では四枚のばね部材7が等ピッチで配置されている。ばね部材7の枚数は四枚に限るものではないが、フラットハーネス8を楕円状ではなく環状に巻くためには、最低三枚は必要である。フラットハーネス8は各ばね部材7で巻き部9の内径部9aを外向きに押圧されて、ケース6の環状部2の内面2aの近傍で大径な螺旋状に集合されている。
【0034】
図3は参考までにばね部材7を用いない場合のフラットハーネス8の形状を示すものであり、ボス部3から環状部2にかけてフラットハーネス8が径方向にほぼ均一な隙間を存して拡がっている。この状態では、フラットハーネス8の渦巻き部(符号8で代用)の長さは短くなってしまい、図2のようにばね部材7の付勢力でフラットハーネス8を外周寄りで螺旋状に巻くことで、すなわち、フラットハーネス8の巻き部9を成す各巻きハーネス部分91〜93を径方向に狭ピッチで近接ないし接して配置することで、ケース内のフラットハーネス8の長さを長く設定することができ、これによりハーネス余長吸収長さが増大する。
【0035】
ばね部材7はフラットハーネス8を外周寄りに環状に集合させるためのものであり、余長吸収(ケース内への引き込み)はフラットハーネス8が真直な状態から巻き状態に自ら弾性的に復元する力で行われる。勿論、ばね部材7が圧縮された状態から径方向に拡がる力で、フラットハーネス8をケース内に積極的に引き込むことができる。
【0036】
図4〜図5は、本発明に係る給電装置の他の実施形態を示すものである。図1〜図2と同じ構成部分には同じ符号を付して説明する。
【0037】
図4の如く、この給電装置31は、円形の環状部(環状壁)2とその中心の円柱状のボス部3とを有する合成樹脂製のケース6と、ボス部3から外向きにループ状に巻かれて拡径する一本のループ状のばね部材22と、ばね部材22で巻き部9の内径部9aを押圧されて環状部2の内周面2aに沿って環状に拡径した状態で収容される可撓性のフラットワイヤハーネス8とを備えるものである。ばね部材22に係る構成以外は図1〜図2の実施形態と同じである。
【0038】
ケース6はベース部4とカバー部5とで構成され、ベース部4は、水平な基板部10に環状部2とボス部3とを好ましくは一体に立設して構成され、カバー部5は、基板部10に重なって孔部11にねじ締め等で固定される水平な基板部12と、基板部12に立設されて環状部2を覆う蓋状の覆い壁13とで構成されている。ボス部3を別体に形成する場合は、基板部10にボス部3をボス周方向に回転しないように固定する。
【0039】
環状部2は、円周の一部を縦方向に切欠して構成されたハーネス導出用の口部14を有し、口部14の左右両側には、外開きの対向する湾曲面15を有するガイド壁16,17が環状部2と一体に形成され、両ガイド壁16,17の間に短いハーネス導出通路18が口部14に連通して形成されている。
【0040】
ボス部3は、外周面3aから径方向に切欠された長短二つのスリット20,23を有し、長いスリット23の内側にハーネス挟持用の垂直な突条21が複数千鳥状に配置形成されて、ハーネス固定部を成している。フラットハーネス8は例えばスリット20内で90°方向に折り曲げられて底部側の基板部10を貫通して外部(例えば車両ボディ側)に導出される。また、短いスリット23の内側にばね部材22の基端部22aが折り曲げられて差込固定されている。
【0041】
ばね部材22は、自由状態で真直な板ばね又は大きなループ状に湾曲した巻きばねであり、図4,図5の組付状態で、ばね部材22の先端(自由端)22bは基端(固定端)22aに対して一周+1/4周程度の少ない巻き数でループ状に位置している。ばね部材22が長い(巻き数が多い)とフラットハーネス8と共にケース6から引き出されてしまうという問題を生じ、ばね部材22の巻き数が一周以上あればフラットハーネス8を最外径部寄りに集合させるのに十分である。
【0042】
ばね部材22は、基端22aをボス部3のスリット内に差し込んで固定して、ボス部3の接線方向に湾曲し、外側面22cをフラットハーネス8の巻き部9の内周面9aに弾接させて、ループ状に撓んでいる。ばね部材22の巻き方向は、フラットハーネス8の巻き方向と同じで、フラットハーネス8をケース6から引き出す方向である。
【0043】
ばね部材22の材質は、フラットハーネス8の摩耗を防止する上で合成樹脂であることが好ましいが、先端22bを丸めれば金属材を用いることも可能である。フラットハーネス8はばね部材22で巻き部9の内径部9aを外向きに押圧されて、ケース6の環状部2の内面2aの近傍で大径な螺旋状に集合されている。
【0044】
前述の図3の如く、ばね部材22を用いない場合はボス部3から環状部2にかけてフラットハーネス8が径方向に均一に拡がり、この状態では、フラットハーネス8の渦巻き部の長さは短くなってしまうが、図5のようにばね部材22の付勢力でフラットハーネス8を外周寄りで螺旋状に巻くことで、すなわち、フラットハーネス8の巻き部9を成す各巻きハーネス部分91〜93を径方向に狭ピッチで近接ないし接して配置することで、ケース内のフラットハーネス8の長さを長く設定することができ、ハーネス余長吸収長さが増大する。
【0045】
ばね部材22はフラットハーネス8を外周寄りに集合させるためのものであり、余長吸収(ケース内への引き込み)はフラットハーネス8が真直な状態から巻き状態に弾性的に復元する力で行われる。勿論、ばね部材22が圧縮(縮径)された状態から径方向に拡がる力で、フラットハーネス8をケース内に積極的に引き込むことができる。
【0046】
図6は、図1,図4の各実施形態におけるケース6から引き出されたフラットハーネス8の先端部を給電側(取付側)等に固定するためのハーネス固定部材24の一形態を示すものである。
【0047】
このハーネス固定部材24は、上記ケース6を車両ボディ32(図7)側に水平に配置した際に、スライドドア33(図7)の水平なガイドアーム35に組み付けられるものであり、ガイドアーム35の先端部に沿う略J字状に湾曲した壁部25と、壁部25の外側面26から上面27に沿ってフラットハーネス8を二カ所で90°方向に屈曲して配索する溝状の案内路28と、案内路28の入口の左右両側に形成されたハーネスガイド用の湾曲面29とを有している。
【0048】
図7〜図9は、本発明に係る給電装置を用いたハーネス配索構造の一実施形態を示すものである。給電装置1,は図1,図4の何れの実施形態のものでもよい(作用は同じである)。
【0049】
図7は、自動車のスライドドア(可動構造体)33の全閉状態であり、ケース6(カバー部5の図示を省略する)は車両ボディ(固定構造体)32の昇降口のステップ部の下側のパネル36に水平に配置され、スライドドア33の前端側のガイドアーム35のローラ35aを溝34a内にスライド自在に案内するガイドレール34がパネル36の上側に懸架配置され、ケース6はガイドレール34の長手方向中間部の近傍で車両内側に配置されている。
【0050】
ガイドアーム35の先端に図6のハーネス固定部材24が固定され、フラットハーネス8の一方はケース6から前方に引き出されて、ハーネス固定部材24に固定されつつスライドドア側に配索されて補機等(図示せず)に接続されている。フラットハーネス8の他方(図示せず)はケース6の例えば底部側から車両ボディ側に配索される。
【0051】
図7のスライドドア33の全閉状態で、フラットハーネス8はばね部材7(22)の付勢力に抗してケース6から斜め前方に大きく(長く)引き出され、ケース内でフラットハーネス8の巻き部9は縮径され(巻き部9の巻き数は拡径時と同じであることが好ましい)、ばね部材7(22)は巻き部9の最内径部で内向きに押されて縮径している。フラットハーネス8はケース6の口部14の前側の湾曲面15に沿って湾曲状にスムーズに導出されている。ガイドアーム35はガイドレール34の前端側に位置している。図7で符号37はリヤホイル、38はリヤホイルアーチである。
【0052】
図8のスライドドア33の半開状態で、ガイドアーム35はガイドレール34の前半の湾曲部34bから後半の真直部34cに移動し、ガイドアーム35がケース6に接近した状態で、フラットハーネス8は自らの復元力とばね部材7(22)の拡径方向のばね力でケース内に積極的に引き込まれて余長吸収される。フラットハーネス8はケース6の口部14から真直にガイドアーム35に向けて短く導出されている。
【0053】
図9のスライドドア32の全開状態で、フラットハーネス8はばね部材7(22)の付勢力に抗してケース6から後方に大きく(長く)引き出され、ケース内でフラットハーネス8の巻き部9は縮径され(巻き数は拡径時と同じであることが好ましい)、ばね部材7(22)は巻き部9の最内径部で内向きに押されて縮径している。フラットハーネス8はケース6の口部14の後側の湾曲面15に沿って湾曲状にスムーズに導出され、ガイドレール34の後半部34cの下側を通ってガイドアーム35の先端に達している。ガイドアーム35はガイドレール34の後端側に位置している。
【0054】
なお、図7〜図9においては、給電装置1,31を自動車のスライドドア32への給電に適用した例を示したが、給電装置1,31はスライドドア以外の可動体としてヒンジ開閉式のドアやスライドシート等(図示せず)への給電にも適用可能である。
【0055】
例えばヒンジ開閉式のドア又は車両ボディ(固定構造体)にケース6を垂直に配置した場合、フラットハーネス8はドアの開時にケース6から引き出され、ドアの閉時にケース内に巻き戻される。また、車体フロア(固定構造体)にケース6を水平又は垂直に配置し、フラットハーネス8の先端をスライドシートに配索した場合、スライドシートの前後方向のスライド移動に伴ってフラットハーネス8がケース6に対して伸縮する。
【0056】
また、上記実施形態においては、ケース6を用いてフラットハーネス8の最大拡径時の寸法を規制したが、例えば図7〜図9においてケース6の環状部2やカバー部5を省略(排除)した場合でも、水や塵等の侵入の心配はあるが、図8の半開時にフラットハーネス8が復元力で最大径に拡がった際に、フラットハーネス自体の復元力に限界があるから、たとえケース6がなくてもフラットハーネス8の最大径は規定されることになる。従って、水や塵の侵入の心配のない部位ではケース6を省略可能である(ボス部3とそれを取付側に固定する部分10は必要である)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る給電装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同じく給電装置の内部構造を示す平面図である。
【図3】ばね部材を用いない場合の内部構造を参考的に示す平面図である。
【図4】本発明に係る給電装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】同じく給電装置の内部構造を示す平面図である。
【図6】給電側のハーネス固定部材の一形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の給電装置を用いたハーネス配索構造の一実施形態を示す、スライドドア全閉時の斜視図である。
【図8】同じくスライドドア半開時の斜視図である。
【図9】同じくスライドドア全開時の斜視図である。
【図10】従来の給電装置の一形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1,31 給電装置
2 環状壁
3 ボス部
6 ケース
7,22 ばね部材
8 フラットハーネス
9 巻き部
9a 内径部
14 口部
15 湾曲面
32 車両ボディ
33 スライドドア
34 ガイドレール
35 ガイドアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部を中心としてフラットハーネスを複数巻きに配索し、該ボス部から該フラットハーネスの巻き部の内径部にかけてばね部材を配置し、該ばね部材で該巻き部を外向きに付勢し、該巻き部において該フラットハーネスを径方向に狭ピッチで配置したことを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記ばね部材が、放射状に配置された複数の湾曲状の板ばねであることを特徴とする請求項1記載の給電装置。
【請求項3】
前記ばね部材がループ状に湾曲した巻きばねであることを特徴とする請求項1記載の給電装置。
【請求項4】
前記ボス部と前記巻き部と前記ばね部材をケースの環状壁内に収容したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の給電装置。
【請求項5】
前記環状壁のハーネス導出用の口部の両側にハーネス案内用の湾曲面が形成されたことを特徴とする請求項4記載の給電装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の給電装置を用いたハーネス配索構造であって、前記ケースを車両ボディのステップ部の下側においてガイドレールの長手方向中間部の近傍で車室寄りに配置し、該ガイドレールに係合するガイドアームに沿って該ケースからスライドドアに前記フラットハーネスを配索したことを特徴とする給電装置を用いたハーネス配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−16939(P2010−16939A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173132(P2008−173132)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)