説明

給電装置の制御方法

【課題】スイッチング損失を低減してブリッジ回路の冷却フィンを小型化し、装置全体の小型化、低コスト化を可能とした給電装置の制御方法を提供する。
【解決手段】スイッチングアーム直列回路とダイオード直列回路とを並列接続してなるブリッジ回路を備えた受電回路320を有し、高周波電源100の電力を受電コイル120及び共振コンデンサCを介し受電して負荷Rに直流電力を供給する給電装置の制御方法において、コイル120を流れる電流iの一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時にスイッチQ,Qのうちの一方をターンオン、他方をターンオフし、電流iの半周期後のゼロクロス点から、前記半周期より短い任意の遅延時間を経過した後にスイッチQ,Qのオン・オフ状態を反転させる一連のスイッチング動作を、電流iの周期と同期させて繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル相互間の磁気結合を利用して、主に空間を介して電力を供給する給電装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導によるコイル相互間の磁気結合を利用して負荷に電力を供給する方法として、例えば非接触給電が挙げられる。その原理は、複数のコイルを、空間を介して磁気的に結合することによっていわばトランスを形成し、前記コイル間の電磁誘導を利用して電力を授受するものである。
例えば、電力供給源に相当する一次側コイルを給電線としてレール状に配置し、二次側コイル及び受電回路を一体化して移動体を構成すると共に、一次側コイルと二次側コイルとを対向させることにより、前記給電線に沿って移動する移動体に非接触給電することが可能である。
【0003】
ここで、図11は、特許文献1に記載された非接触給電装置の従来技術を示している。図11において、高周波電源100の両端には、コイルとしての一次側給電線110が接続されている。一次側給電線110には受電コイル120が磁気的に結合しており、一次側給電線110と受電コイル120とは一種のトランスを構成している。
受電コイル120の両端は、共振コンデンサCを介して全波整流回路10の交流端子に接続されている。ここで、受電コイル120と共振コンデンサCとは、直列共振回路を構成している。
全波整流回路10は、ダイオードD,D,D,Dをフルブリッジ接続して構成されている。
【0004】
全波整流回路10の直流端子には、全波整流回路10の直流出力電圧が基準電圧値となるように制御する定電圧制御回路20が接続されている。この定電圧制御回路20は、例えば、リアクトルL、ダイオードD、平滑コンデンサC及び半導体スイッチSWからなる昇圧チョッパ回路により構成されている。また、平滑コンデンサCの両端には、負荷Rが接続されている。
なお、図11では、半導体スイッチSWをスイッチングするための制御装置を省略してある。
【0005】
図11の従来技術では、高周波電源100により一次側給電線110に高周波電流を流し、受電コイル120を介して供給された高周波電力を全波整流回路10に入力して直流電力に変換している。
一般に、この種の非接触給電装置では、一次側給電線110と受電コイル120との間のギャップ長の変化や両者の位置ズレにより、受電コイル120に誘起される電圧が変化し、これによって全波整流回路10の直流出力電圧が変動する。また、負荷Rの特性も、全波整流回路10の直流出力電圧が変動する原因となる。
このため、図11の従来技術では、全波整流回路10の直流出力電圧を定電圧制御回路20によって一定値に制御している。
【0006】
なお、非接触給電装置では、コイルを介して供給される電流の周波数が高いほど、電力伝送を行うために必要な励磁インダクタンスは小さくてよく、コイルやその周辺に配置するコアを小型化することができる。しかし、高周波電源装置や受電回路を構成する電力変換器では、回路を流れる電流の周波数が高いほど半導体スイッチのスイッチング損失が増大して給電効率が低下するため、非接触給電される電力の周波数は数[kHz]〜数十[kHz]に設定するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−354711号公報(段落[0028]〜[0031],[0041]〜[0045]、図1,図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11に示した非接触給電装置、特に、共振コンデンサCの後段の受電回路には、以下の問題点がある。
(1)受電回路が全波整流回路10及び定電圧制御回路20によって構成されているため、回路全体が大型化し、設置スペースの増大やコストの増加を招く。
(2)全波整流回路10のダイオードD,D,D,Dに加え、定電圧制御回路20のリアクトルL、半導体スイッチSW、ダイオードDでも損失が発生するため、これらの損失が給電効率の低下要因となっている。
【0009】
上記の点に鑑み、発明者らは、特願2010−257809号(以下、先願という)として、小型、低コスト、かつ高効率で安定した給電を可能にした非接触給電装置(以下、先願発明という)を提案している。
【0010】
図12は、上記先願に係る第1の非接触給電装置を示している。
図12において、310は受電回路である。この受電回路310は、フルブリッジ接続された半導体スイッチQ,Q,Q,Qと、各スイッチQ,Q,Q,Qにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD,D,D,Dと、下アームのスイッチQ,Qにそれぞれ並列に接続されたコンデンサC,Cと、これらの素子からなるフルブリッジ回路(フルブリッジインバータ)の直流端子間に接続された平滑コンデンサCと、を備えている。フルブリッジ回路の交流端子間には、共振コンデンサCと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサCの両端には、負荷Rが接続されている。
また、200は、半導体スイッチQ,Q,Q,Qをスイッチングするための駆動信号を生成する制御装置である。この制御装置200は、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iと受電回路310の直流出力電圧Vとに基づいて、前記駆動信号を生成する。
【0011】
この非接触給電装置において、半導体スイッチQ,Q,Q,Qを制御することにより、フルブリッジ回路の交流電圧vは、直流出力電圧Vを波高値とする正負電圧に制御される。一次側給電線110から受電回路310への給電電力は、受電コイル120の電流iとフルブリッジ回路の電圧vとの積であり、制御装置200が、直流出力電圧Vの検出値に基づいて半導体スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号の位相を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流出力電圧Vの一定制御が可能となる。
また、受電回路310をフルブリッジ回路によって構成することで、負荷Rが回生負荷の場合でも電力を一定に保つ動作が可能である。
【0012】
この非接触給電装置によれば、図11の従来技術のように定電圧制御回路を用いることなく、半導体スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号の位相制御によって直流出力電圧を一定に制御することができる。また、受電回路310をフルブリッジ回路及び平滑コンデンサCのみによって構成可能であるため、回路構成の簡略化、小型化、低コスト化を図ることができると共に、構成部品数を少なくして損失を低減し、高効率で安定した非接触給電が可能である。
加えて、コンデンサC,Cの充放電作用により、いわゆるソフトスイッチングを行なわせ、スイッチング損失を低減して更なる高効率化を可能にしている。
【0013】
また、図13は、上記先願に係る第2の非接触給電装置を示している。
図12の非接触給電装置では、半導体スイッチを4つ必要とすることから、冷却手段等を考慮に入れると、装置の大型化及びコスト増大のおそれがある。そこで、図13の非接触給電装置は、力行負荷のみに対応させて回生負荷には対応しないことで、更なる小型化、低コスト化を図っている。
【0014】
図13において、受電回路320は、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、を直列に接続したスイッチングアーム直列回路を有すると共に、ダイオードD,Dを直列に接続したダイオード直列回路を有している。そして、これらのスイッチングアーム直列回路とダイオード直列回路とが並列に接続され、ダイオード直列回路の両端に平滑コンデンサCが接続されている。なお、受電回路320以外の構成は、図12と同様である。
【0015】
図14は、第2の非接触給電装置の動作説明図である。
この非接触給電装置では、半導体スイッチQ,Qをデューティ比0.5の駆動信号にて制御することにより、交流電圧vは、直流出力電圧Vを波高値とする正負電圧に制御される。一次側給電線110から受電回路320への給電電力は、図14における電流iと電圧vとの積であり、制御装置200が、直流出力電圧Vの検出値に基づいて半導体スイッチQ,Qの駆動信号の位相を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流出力電圧Vの一定制御が可能となる。
【0016】
第2の非接触給電装置によれば、ブリッジ回路を構成する4素子のうち2素子について半導体スイッチが不要となるため、スイッチング損失を大幅に削減できると共に、ブリッジ回路用の冷却フィンの小型化が可能となり、装置全体の一層の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0017】
以上のように、先願発明によれば、特許文献1に係る従来技術に比べてスイッチング損失の大幅な低減、装置の小型化及び低コスト化が可能である。
しかしながら、スイッチング周波数が数[kHz]以上になると、一般的にスイッチング損失は導通損失よりも大きくなる傾向があるため、依然としてスイッチング損失がブリッジ回路の損失の半分以上を占めており、ブリッジ回路用の冷却フィンの小型化を阻む要因となっている。
【0018】
そこで、本発明の解決課題は、半導体スイッチのスイッチング損失を先願発明よりも一層低減してブリッジ回路の冷却フィンを小型化し、装置全体の小型化、低コスト化を可能とした給電装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受するコイルと、前記コイルの一端がコンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路からなるスイッチングアームを2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路と、ダイオードを2個直列に接続したダイオード直列回路と、を並列接続して構成され、前記スイッチングアーム同士の接続点と前記ダイオード同士の接続点とを前記ブリッジ回路の前記交流端子とし、前記スイッチングアーム直列回路と前記ダイオード直列回路との接続点を前記ブリッジ回路の前記直流端子としてなる給電装置を制御するための制御方法において、
前記コイルを流れる電流の一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に一方の前記半導体スイッチをターンオン、他方の前記半導体スイッチをターンオフし、前記電流の半周期後のゼロクロス点から、前記電流の半周期より短い任意の遅延時間を経過した後に前記半導体スイッチのオン・オフ状態を反転させる一連のスイッチング動作を、前記電流の周期と同期させて繰り返すものである。
【0020】
請求項2に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受するコイルと、前記コイルの一端がコンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ前記コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路を、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路からなるスイッチングアームを2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を2個並列に接続してなるフルブリッジ構成とし、前記スイッチングアーム同士の接続点を前記ブリッジ回路の前記交流端子とし、前記スイッチングアーム直列回路同士の接続点を前記ブリッジ回路の前記直流端子としてなる給電装置を制御するための制御方法において、
前記スイッチングアーム直列回路のうち一方のスイッチングアーム直列回路においては、前記コイルを流れる電流の一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に2個の前記スイッチングアームのうち何れか一方のアームの前記半導体スイッチをターンオフ、他方のアームの前記半導体スイッチをターンオンし、前記電流の半周期後のゼロクロス点と同時に、前記半導体スイッチのオン・オフ状態を反転させ、かつ、
前記スイッチングアーム直列回路のうち他方のスイッチングアーム直列回路においては、前記電流の一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に2個の前記スイッチングアームのうち何れか一方のアームの前記半導体スイッチをターンオン、他方のアームの前記半導体スイッチをターンオフし、前記電流の半周期後のゼロクロス点から、前記電流の半周期より短い任意の遅延時間を経過した後に前記半導体スイッチのオン・オフ状態を反転させ、
前記各半導体スイッチの一連のスイッチング動作を、前記電流の周期と同期させて繰り返すものである。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した給電装置の制御方法において、
前記コイルに対する外部からの給電が停止している期間では、全ての前記半導体スイッチをオフ状態とし、給電が開始された時には、前記コイルを流れる電流のゼロクロス点を検出した後に、各半導体スイッチのスイッチング動作を行うものである。
【0022】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載した給電装置の制御方法において、
前記コイルに対する外部からの給電が停止している期間では、全ての前記半導体スイッチを、前記コイルに対する給電の停止により前記コイルを流れる電流がゼロになる直前のスイッチング状態に保ち、前記コイルに対する給電が開始された時には、前記コイルを流れる電流のゼロクロス点を検出した後に、各半導体スイッチのスイッチング動作を行うものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1または2に記載した発明によれば、スイッチング損失が導通損失よりも大きくなるような周波数にて動作させる場合でも、スイッチング損失を低減してブリッジ回路の冷却フィンを小型化し、装置全体の小型化、低コスト化を図ることができる。
また、請求項3または4に記載した発明によれば、上記の効果に加えて、停電後の復電時などにコイルに対する給電が再開された場合にも、支障なく給電動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の制御方法が適用される給電装置の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明の制御方法の第1実施形態を示す動作説明図である。
【図3】本発明の制御方法の第1実施形態を示す動作説明図である。
【図4】本発明の制御方法の第2実施形態を示す動作説明図である。
【図5】本発明の制御方法が適用される給電装置の第2実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明の制御方法の第3実施形態を示す動作説明図である。
【図7】本発明の制御方法の第3実施形態を示す動作説明図である。
【図8】本発明の制御方法の第4実施形態を示す動作説明図である。
【図9】本発明の制御方法の第5実施形態を示す動作説明図である。
【図10】本発明の制御方法の第6実施形態を示す動作説明図である。
【図11】特許文献1に記載された従来技術の回路図である。
【図12】先願に係る第1の非接触給電装置を示す回路図である。
【図13】先願に係る第2の非接触給電装置を示す回路図である。
【図14】図13に示した非接触給電装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る給電装置の第1実施形態を示す回路図であり、請求項1,3,4に係る制御方法が適用されるものである。なお、本発明の制御方法は、非接触型、接触型の給電装置の何れにも適用可能であるが、以下の各実施形態では非接触給電装置に適用した場合について説明する。
【0026】
図1に示す非接触給電装置は図13と同様の構成であり、受電回路320は、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、を直列に接続したスイッチングアーム直列回路を有すると共に、ダイオードD,Dを直列に接続したダイオード直列回路を有している。これらのスイッチングアーム直列回路とダイオード直列回路とは並列に接続され、ダイオード直列回路の両端に平滑コンデンサCが接続されている。なお、スイッチングアーム直列回路の内部接続点とダイオード直列回路の内部接続点とがブリッジ回路の交流端子となり、ダイオード直列回路の両端が直流端子となっている。
ブリッジ回路の交流端子には、共振コンデンサCと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサCの両端には負荷Rが接続されている。なお、100は高周波電源、110は一次側給電線である。
【0027】
一方、制御装置200は、直流出力電圧Vと、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iとに基づいて、スイッチQ,Qの駆動信号を生成し、出力する。
【0028】
次に、この非接触給電装置の通常時の動作を説明する。この動作は、請求項1に記載した制御方法(第1実施形態、第2実施形態)によるものである。
図2は、本発明に係る制御方法の第1実施形態に相当するものであり、図1の受電コイル120を流れる電流iとブリッジ回路の交流端子間電圧vの動作波形、及び、スイッチQ,Qの駆動信号を示している。図2に示すように、スイッチQ,Qは、電流iに同期した一定周波数にてスイッチング動作を行う。
このとき、スイッチQ,Qは、先願発明の図13,図14と異なり、図2に示すごとくデューティ比が0.5ではない駆動信号により制御される。
以下に、図2の各期間I〜IIIにおける動作を説明する。
【0029】
(1)期間I(スイッチQがオン、ダイオードDが導通):電流iは、共振コンデンサC→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードD→受電コイル120の経路で流れ、電圧vは、図示のように直流出力電圧Vに相当する正電圧レベルとなる。この期間では、電流iにより平滑コンデンサCが充電される。
【0030】
(2)期間II(スイッチQがオン、ダイオードDが導通):電流iは、共振コンデンサC→受電コイル120→ダイオードD→スイッチQの経路で流れ、電圧vは、図示のように零電圧レベルとなる。
【0031】
(3)期間III(スイッチQがオン、ダイオードDが導通):電流iは、共振コンデンサC→受電コイル120→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードDの経路で流れ、電圧vは、図示のように直流出力電圧Vに相当する負電圧レベルとなる。この期間では、電流iにより平滑コンデンサCが充電される。
これ以降は、期間Iのスイッチングモードに遷移し、同様の動作が繰り返される。
【0032】
以上のように、この実施形態では、受電コイル120を流れる電流iの一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に一方のスイッチ(図2ではQ)をターンオン、他方のスイッチ(図2ではQ)をターンオフし、半周期後のゼロクロス点から、電流iの半周期より短い任意の遅延時間(期間IIに相当)を経過した後にスイッチQ,Qのオン・オフ状態を反転させる一連のスイッチング動作を、電流iの周期と同期させて繰り返すことにより、ブリッジ回路の交流端子間電圧vは、直流出力電圧Vを波高値とする正負電圧に制御される。
一次側給電線110から受電回路320への給電電力は、図1に示した電流iと電圧vとの積であり、制御装置200が、直流出力電圧Vの検出値に基づいてスイッチQ,Qの駆動信号の位相を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流出力電圧Vの一定制御が可能になる。
【0033】
次に、この実施形態において、半導体スイッチQ,Qにて発生するスイッチング損失について説明する。
図2に示すように、スイッチQ,Qのオン・オフの切替は、期間II(スイッチQがオン、ダイオードDが導通)→期間III(スイッチQがオン、ダイオードDが導通)の移行時、及び、期間III(スイッチQがオン、ダイオードDが導通)→期間I(スイッチQがオン、ダイオードDが導通)の移行時に発生する。このとき、スイッチQ,Qと、それぞれ逆並列接続されたダイオードD,Dにより構成された各スイッチングアームを流れる電流i,iは、図3に示すようになっている。
【0034】
期間II→期間IIIの移行時には、スイッチQがターンオフし、スイッチQがターンオンする。このとき、スイッチQではターンオフ損失が発生するが、スイッチQではダイオードDに電流が転流しているため、ゼロ電流スイッチングとなり、ターンオン損失は発生しない。
また、期間III→期間Iの移行時には、スイッチQがターンオンし、スイッチQがターンオフする。このとき、どちらもスイッチQ,Qの電流がゼロとなる期間でスイッチングするため、ターンオン損失、ターンオフ損失ともに発生しない。
【0035】
以上のように、請求項1に記載した制御方法によれば、スイッチQ,Qにおいて発生するスイッチング損失は、スイッチQのターンオフ損失のみとなる。従って、ブリッジ回路を構成する4素子のうち1素子のターンオフ損失のみとなるため、スイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0036】
また、スイッチQ,Qの駆動信号は、第2実施形態である図4のようにしてもよい。
以下に、図4の各期間i〜iiiにおける動作を説明する。
(1)期間i:図2の期間Iと同様。
(2)期間ii:図2の期間IIIと同様。
(3)期間iii(スイッチQがオン、ダイオードDが導通):電流iは、共振コンデンサC→スイッチQ→ダイオードD→受電コイル120の経路で流れ、電圧vは、図示のように零電圧レベルとなる。
これ以降は、期間iのスイッチングモードに遷移し、同様の動作が繰り返される。
【0037】
すなわち、図4においても、電流iの一周期のうち、最初のゼロクロス点(期間iから期間iiへの移行時)と同時に一方のスイッチ(図4ではQ)をターンオン、他方のスイッチ(図4ではQ)をターンオフし、半周期後のゼロクロス点から、電流iの半周期より短い任意の遅延時間(期間iiiに相当)を経過した後にスイッチQ,Qのオン・オフ状態を反転させる一連のスイッチング動作を、電流iの周期と同期させて繰り返すことにより、ブリッジ回路の交流端子間電圧vは、直流出力電圧Vを波高値とする正負電圧に制御される。
【0038】
期間i〜iiiにおいて、スイッチQ,Qにて発生するスイッチング損失は、スイッチQのターンオフ損失のみとなる。従って、この場合も、ブリッジ回路を構成する4素子のうち1素子のターンオフ損失のみとなるため、図2と同様のスイッチング損失低減効果を得ることができる。
【0039】
次に、図5は、本発明に係る非接触給電装置の第2実施形態を示す回路図であり、請求項2,3,4に係る制御方法が適用されるものである。
図1の回路では、ブリッジ回路にダイオード直列回路を有することでスイッチング損失を低減している半面、回生負荷に対応することができない。そこで、図5の給電装置では、ブリッジ回路を全てスイッチングアームにより構成することで、回生負荷への対応とスイッチング損失の低減を同時に実現可能とした。
【0040】
図5において、受電回路330は、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、を直列に接続したスイッチングアーム直列回路を有すると共に、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列に接続したアームと、を直列に接続したスイッチングアーム直列回路を有している。そして、これらのスイッチングアーム直列回路が並列に接続され、その接続点に平滑コンデンサCが接続されている。
なお、2つのスイッチングアーム直列回路の内部接続点がブリッジ回路の交流端子となり、2つのスイッチングアーム直列回路の並列接続点が直流端子となっている。図1と同様に、ブリッジ回路の交流端子には共振コンデンサCと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサCの両端には負荷Rが接続されている。
また、制御装置200は、直流出力電圧Vと受電コイル120を流れる電流iの検出値に基づいてスイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を生成し、出力する。
【0041】
次いで、この非接触給電装置の通常時の動作を説明する。この動作は、請求項2に記載した制御方法(第3実施形態、第4実施形態)によるものである。
図6は、本発明の制御方法の第3実施形態に相当するものであり、図5の受電コイル120を流れる電流iとブリッジ回路の交流端子間電圧vの動作波形、及び、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を示している。図6に示すように、スイッチQ,Qは図2のスイッチQ,Qと同様にスイッチング動作し、スイッチQ,Qは、電流iのゼロクロス点と同期した一定周波数にてスイッチング動作する。図6の各期間I〜IIIにおける動作は、図2の各期間I〜IIIと同様である。
【0042】
すなわち、この実施形態では、2つのスイッチングアーム直列回路のうち一方のスイッチングアーム直列回路(図6ではQ,Qの直列回路)においては、電流iの一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に上下アームの何れか一方のスイッチ(図6ではQ)をターンオフ、他方のスイッチ(図6ではQ)をターンオンし、半周期後のゼロクロス点と同時に、スイッチQ,Qのオン・オフ状態を反転させ、2つのスイッチングアーム直列回路のうち他方のスイッチングアーム直列回路(図6ではQ,Qの直列回路)においては、電流iの一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に上下アームの何れか一方のスイッチ(図6ではQ)をターンオン、他方のスイッチ(図6ではQ)をターンオフし、半周期後のゼロクロス点から電流iの半周期より短い任意の遅延時間(期間IIに相当)を経過した後、スイッチQ,Qのオン・オフ状態を反転させるようにした一連のスイッチング動作を、電流iの周期と同期させて繰り返すものである。
【0043】
図7は、各期間I〜IIIのスイッチングアームに流れる電流i,i,i,iを示している。
図1の非接触給電装置と同様に、スイッチQ,Q,Q,Qにて発生するスイッチング損失は、スイッチQのターンオフ損失のみとなる。従って、ブリッジ回路を構成する4素子のうち1素子のターンオフ損失のみとなるため、スイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0044】
また、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号は、第4実施形態である図8のようにしてもよい。図8の各期間i〜iiiにおける動作は、図4の期間i〜iiiと同様であり、期間iiiの後は、期間iのスイッチングモードに遷移して同様の動作が繰り返される。
このとき、スイッチQ,Q,Q,Qにおいて発生するスイッチング損失は、スイッチQのターンオフ損失のみとなる。従って、ブリッジ回路を構成する4素子のうち1素子のターンオフ損失のみとなるため、スイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0045】
なお、上述した図6〜図8は、図5の回路において力行負荷に対応した場合を示している。回生負荷に対応した場合にも、同様の原理によってスイッチング損失を低減可能である。
【0046】
次いで、本発明に係る制御方法の第5実施形態、第6実施形態を説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、停電などによって受電コイル120への給電が一旦停止され、その後の復電によって給電が再開される場合のものである。
図9は、請求項3の発明に相当する第5実施形態を説明するためのものであり、図1の非接触給電装置を対象として、一次側給電線110の給電停止〜再起動における受電コイル120の電流i、ブリッジ回路の交流端子間電圧vの動作波形、及び、スイッチQ,Qの駆動信号を示している。
通常の給電状態から図9のタイミング(1)で受電コイル120による給電が停止された場合、図1における電流検出手段CTにより電流iの消失を検出し、スイッチQ,Qの両方をオフ状態にしてその状態を保持する。
【0047】
その後、図9のタイミング(2)で給電が開始されると、受電コイル120には一次側給電線110の高周波電流に応じた電圧が誘起される。このとき、受電回路320のブリッジ回路は、上述したようにスイッチQ,Qがオフ状態であるため、ダイオード全波整流回路と等価となる。このため、受電コイル120→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードD→共振コンデンサCの経路で共振電流が流れる。この電流は図9のタイミング(3)で極性が反転し、受電コイル120→共振コンデンサC→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードDの経路で流れる。
【0048】
制御装置200では、電流検出手段CTにより、タイミング(3)における電流iのゼロクロス点を検出し、各スイッチQ,Qのスイッチング動作を再開するように制御する。これにより、給電再開時間は、一時的にダイオードによる全波整流動作を行うことで、受電コイル120に流れる共振電流の経路を確保し、電流iのゼロクロス点を検出した後に、所望のスイッチング動作を開始させて給電装置を正常に再起動できるようにしている。
なお、本発明を図5の非接触給電装置に適用した場合にも、同様の方法で再起動可能である。
【0049】
なお、上述した第5実施形態の回路動作は、給電再開時の受電コイル誘起電圧>直流出力電圧V(平滑コンデンサC電圧)の条件において成り立つものである。このため、接続される負荷特性によって給電再開時の受電コイル誘起電圧<直流出力電圧Vとなる場合には、以下に説明するような第6実施形態により再起動動作を行うことができる。
【0050】
図10は、請求項4の発明に相当する第6実施形態を説明するためのものであり、図9と同様に、図1の非接触給電装置を対象として、一次側給電線110の給電停止〜再起動における電流i、電圧vの動作波形、及び、スイッチQ,Qの駆動信号を示している。
【0051】
通常の給電状態から図10のタイミング(1)で受電コイル120による給電が停止された場合、この実施形態では、電流iの消失を電流検出手段CTにて検出し、各スイッチQ,Qを電流iが消失する直前の制御状態と同様にしてその状態を保持する。
このときのオン・オフ制御は、図2に示した期間Iまたは期間IIIに対応している。図10では、電流iが負であるため、スイッチQ,Qが図2の期間IIIと同じスイッチング状態で保持される場合を示している。
【0052】
次に、図10のタイミング(2)で給電が開始されると、受電コイル120には一次側給電線110の高周波電流に応じた電圧が誘起される。このとき、受電回路320のブリッジ回路は、上記のオン・オフ状態(スイッチQがオフ、スイッチQがオン)にあり、受電コイル120→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードD→共振コンデンサCの経路で共振電流が流れようとするが、給電再開時の受電コイル誘起電圧<直流出力電圧Vである場合、この経路では電流は流れ得ない。
【0053】
次いで、図10のタイミング(3)で電流iの極性が反転すると、電流iは共振コンデンサC→スイッチQ→ダイオードD→受電コイル120の経路で流れ始め、電圧vは図示のとおり零電圧レベルとなる。更に、図10のタイミング(4)で電流iの極性が反転すると、制御装置200では、電流検出手段CTの出力から電流iのゼロクロス点を検出する。
そして、制御装置200は、図2に示した通常動作と同様のスイッチング動作を再開するように制御するため、スイッチQがオン、スイッチQがオフの状態に移行し、図2に示した期間IIと同様の経路で電流が流れる。
つまり、スイッチQ,Qを電流iの消失直前と同様の制御状態としておいても、給電再開時の受電コイル120に流れる共振電流の経路を確保し、電流iのゼロクロス点を検出してスイッチング動作を再開することで、給電装置を正常に再起動可能としている。
なお、本発明を図5の非接触給電装置に適用した場合にも、同様の方法で再起動可能である。
【符号の説明】
【0054】
100:高周波電源
110:一次側給電線
120:受電コイル
200:制御装置
320,330:受電回路
C:共振コンデンサ
CT:電流検出手段
,Q,Q,Q:半導体スイッチ
,D,D,D:ダイオード
:平滑コンデンサ
R:負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との磁気結合により電力を授受するコイルと、前記コイルの一端がコンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路からなるスイッチングアームを2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路と、ダイオードを2個直列に接続したダイオード直列回路と、を並列接続して構成され、前記スイッチングアーム同士の接続点と前記ダイオード同士の接続点とを前記ブリッジ回路の前記交流端子とし、前記スイッチングアーム直列回路と前記ダイオード直列回路との接続点を前記ブリッジ回路の前記直流端子としてなる給電装置を制御するための制御方法において、
前記コイルを流れる電流の一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に一方の前記半導体スイッチをターンオン、他方の前記半導体スイッチをターンオフし、前記電流の半周期後のゼロクロス点から、前記電流の半周期より短い任意の遅延時間を経過した後に前記半導体スイッチのオン・オフ状態を反転させる一連のスイッチング動作を、前記電流の周期と同期させて繰り返すことを特徴とする給電装置の制御方法。
【請求項2】
外部との磁気結合により電力を授受するコイルと、前記コイルの一端がコンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ前記コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路を、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路からなるスイッチングアームを2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を2個並列に接続してなるフルブリッジ構成とし、前記スイッチングアーム同士の接続点を前記ブリッジ回路の前記交流端子とし、前記スイッチングアーム直列回路同士の接続点を前記ブリッジ回路の前記直流端子としてなる給電装置を制御するための制御方法において、
前記スイッチングアーム直列回路のうち一方のスイッチングアーム直列回路においては、前記コイルを流れる電流の一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に2個の前記スイッチングアームのうち何れか一方のアームの前記半導体スイッチをターンオフ、他方のアームの前記半導体スイッチをターンオンし、前記電流の半周期後のゼロクロス点と同時に、前記半導体スイッチのオン・オフ状態を反転させ、かつ、
前記スイッチングアーム直列回路のうち他方のスイッチングアーム直列回路においては、前記電流の一周期のうち、最初のゼロクロス点と同時に2個の前記スイッチングアームのうち何れか一方のアームの前記半導体スイッチをターンオン、他方のアームの前記半導体スイッチをターンオフし、前記電流の半周期後のゼロクロス点から、前記電流の半周期より短い任意の遅延時間を経過した後に前記半導体スイッチのオン・オフ状態を反転させ、
前記各半導体スイッチの一連のスイッチング動作を、前記電流の周期と同期させて繰り返すことを特徴とする給電装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した給電装置の制御方法において、
前記コイルに対する外部からの給電が停止している期間では、全ての前記半導体スイッチをオフ状態とし、給電が開始された時には、前記コイルを流れる電流のゼロクロス点を検出した後に、各半導体スイッチのスイッチング動作を行うことを特徴とする給電装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載した給電装置の制御方法において、
前記コイルに対する外部からの給電が停止している期間では、全ての前記半導体スイッチを、前記コイルに対する給電の停止により前記コイルを流れる電流がゼロになる直前のスイッチング状態に保ち、前記コイルに対する給電が開始された時には、前記コイルを流れる電流のゼロクロス点を検出した後に、各半導体スイッチのスイッチング動作を行うことを特徴とする給電装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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