統合維持管理システム
【課題】複数の機器が設置されたプラント設備に接続される、機器の高効率運転に最適な運転計画を策定できる統合維持管理システムを提供する。
【解決手段】統合維持管理システム1は、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能2、データに基づいて複数の機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを策定する運転計画策定機能3、上記運転スケジュールに基づいて各々の機器の運転開始、終了時刻を設定する運転時刻設定機能4を備え、運転計画策定機能3において、機器の運転状態を評価し、運転状態が所定基準を満たさない機器(低評価機器)の運転時間を短縮し、短縮した運転時間相当分について、運転状態が一定基準を満たす機器(高評価機器)の運転時間を延長するように、運転スケジュールを修正する。
【解決手段】統合維持管理システム1は、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能2、データに基づいて複数の機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを策定する運転計画策定機能3、上記運転スケジュールに基づいて各々の機器の運転開始、終了時刻を設定する運転時刻設定機能4を備え、運転計画策定機能3において、機器の運転状態を評価し、運転状態が所定基準を満たさない機器(低評価機器)の運転時間を短縮し、短縮した運転時間相当分について、運転状態が一定基準を満たす機器(高評価機器)の運転時間を延長するように、運転スケジュールを修正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備を構成する複数の機器の運転スケジュール(運転計画)を最適化させるための統合維持管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転計画システムにおいては、異常診断システムからのデータ、余寿命評価結果、保全計画、他のプラントの運転計画、プラント生成物の需要予測に関するデータを用いて運転計画を立案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−331507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の運転計画システムは、処理性能が高い機器の稼動を優先させる、省エネルギーが期待される機器の稼動を優先させる、また、スケジュール運転を行う各機器の運転時間を平準化させるための運転計画の策定ができていなかった。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、複数の機器から得られたデータ(プラントデータまたは点検データ)を収集し、各データを統合的に管理する統合維持管理システムにおいて、上記データを基に、プラント状況に応じた最適な運転スケジュール(運転計画)を策定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる統合維持管理システムは、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データに基づいて複数の上記機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを作成する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転スケジュールに基づいて運転の開始及び終了時刻を設定する運転時刻設定機能を備え、上記運転計画策定機能において、上記データから、複数の上記機器の運転状態を評価し、複数の上記機器のうち、運転状態が所定基準を満たさない上記機器を低評価機器とし、上記低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、運転状態が所定基準を満たす上記機器の一部または全部である高評価機器の運転時間を延長するように、上記運転スケジュールを修正することを特徴とするものである。
【0006】
また、この発明に係わる統合維持管理システムは、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データ中の所定の運転制御データに対して複数の閾値を用意して、上記運転制御データと上記閾値とを比較した結果により運転する上記機器の台数を増減させる台数制御を行うように、上記データから複数の上記機器の運転状態を評価して順番を付け、上記機器の運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように複数の上記機器の運転計画を策定する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転計画に基づいて運転の開始及び終了の条件である上記運転制御データに対する上記閾値を設定する運転制御閾値設定機能を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の統合維持管理システムによれば、自動的に、低評価機器の稼動率を、高評価機器の稼動率よりも抑えた運転スケジュールを策定することができる。
【0008】
また、この発明の統合維持管理システムによれば、自動的に、複数の機器の運転状態に応じて、運転状態が良好な順に運転時間が長くなる運転順序となるように運転計画を策定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
次に、この発明の実施の形態1について、図1〜図3を用いて説明する。図1の構成図に示すように、統合維持管理システム1は、ネットワーク8を介して点検システム5、データベース装置6、監視制御装置7に接続されている。データベース装置6と監視制御装置7によってプラント監視制御システム100が構成されている。なお、図1においては、監視制御装置7を1台のみ記載しているが、複数台がネットワーク8に接続される場合もある。
【0010】
上述の点検システム5は、プラント設備(例えば水処理プラント)を構成する機器を定期的に点検するシステムであり、点検によって、定期的に目視等で確認することで得られた点検データをデータベース5aに格納している。また、監視制御装置7は、プラント設備を構成する複数の機器に繋げられ、機器の状態を常に監視することでプラントデータを得ることができる。プラントデータは、データベース装置6のデータベース6aに格納される。
【0011】
統合維持管理システム1は、点検システム5から点検データを収集するデータ収集機能(装置)2を備えるとともに、点検データ5等のデータを格納するためのデータベース2aを備えている。また、データベース2aに蓄積された点検データを参照し、異常発生頻度が増加傾向にある機器(低評価機器)については一運転周期内での運転時間を短縮するように運転スケジュールを調整し、新たな運転スケジュールを策定する運転計画策定機能(装置)3を備えている。さらに、機器の一運転周期(例えば24時間を一周期とする。)における運転開始、終了(停止)時刻を、機器毎に個別に設定可能な運転時刻設定機能4を備えている。運転時刻設定機能(装置)4によって設定された運転時刻情報は、ネットワーク8を介して、機器を監視制御する監視制御装置7に提供される。
【0012】
この発明の統合維持管理システム1は、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能2、データに基づいて複数の機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを作成する運転計画策定機能3、複数の機器の各々について、運転スケジュールに基づいて運転の開始及び終了時刻を設定する運転時刻設定機能4を備え、運転計画策定機能3において、データから、複数の上記機器の運転状態を評価し、複数の機器のうち、運転状態が所定基準を満たさない機器を低評価機器とし、低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、運転状態が所定基準を満たす機器の一部または全部である高評価機器の運転時間を延長するように、運転スケジュールを修正することを特徴としている。そして、この実施の形態1では、データとして、複数の機器を定期的に点検して得られた点検データを用い、運転計画策定機能において、点検データから複数の機器について、個別に、正常、異常の評価を行い、異常と評価された機器を低評価機器、正常と評価された機器を高評価機器とするように、運転スケジュールを修正する場合について説明する。
【0013】
次に、この実施の形態1による統合維持管理システム1の動作について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、点検データテーブルを示し、図3は、修正前後の運転スケジュールを示し、図4は動作フローを示している。
統合維持管理システム1はデータ収集機能2によって、点検システム5から点検データを収集し、点検データは、データベース2aに図2に示すような点検データテーブル(点検データ一覧表)9aの形式で保存される。点検データテーブル9aは、少なくとも機器名称とその機器に対応する点検結果の属性を有している。
統合維持管理システム1の運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として図3(a)に示すような運転スケジュール10aが保存されている。
【0014】
図4は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ20からステップ27の処理によって構成される。次に、各ステップの動作について詳細に説明する。
まず、統合維持管理システム1のデータ収集機能2によって点検システム5から収集した点検データを点検データテーブル9aに保存する(ステップ20)。
次に、運転計画策定機能3によって、点検データテーブル9aの点検結果から異常の有無を判別する(ステップ21)。点検データテーブル9aの点検結果の欄に異常(異常振動)の表示があるため、ここではYesの矢印方向となるステップ22に進む。仮に、点検データデーブル9aの点検結果に異常が無い場合、Noの矢印方向へ進み、この動作を終了する。なお、機器がポンプの場合、吐出不可の場合や突発的な異常により運転継続不能である場合は、そのポンプを運転スケジュールに組み込めないため、対象外機器として取り扱う。ここでの「異常」とは、故障の前兆を捉えた段階で、運転状態が良好ではないが運転継続が可能な状態を言う。
【0015】
次に、異常機器を抽出する(ステップ22)。図2の点検データテーブル9aに示すように、複数の機器としてNo1ポンプ〜No4ポンプが有る場合、点検結果に「異常振動」と表示があるNo4ポンプが異常機器であり、この機器がスケジュール修正される低評価機器となる。点検結果が「正常」と表示されているNo1〜No3ポンプは正常機器である。この実施の形態1では、後述するように正常機器の全てをスケジュール修正対象とするため、No1〜No3ポンプの全てが高評価機器に相当する。
【0016】
次に、図3(a)に示す、現在用いられている運転スケジュール10aに異常機器が含まれているかどうかを判定する(ステップ23)。上述したように、No4ポンプが異常機器であるため、運転スケジュール10aに異常機器が含まれる場合に該当し、Yesの矢印方向へ進む。
ここで、運転スケジュール10aに示すように、この機器の運転は24時間(1日)周期で行われており、同じ機能を持つ複数の機器としてNo1ポンプ〜No4ポンプが備えられており、0時から24時まで、常に1台のポンプが交代で稼動するように運転スケジュール10aが策定されている。運転スケジュール10aでは、No1ポンプの運転時間が0〜6時、No2ポンプの運転時間が6〜12時、No3ポンプの運転時間が12〜18時、No4ポンプの運転時間が18〜24時となっており、各ポンプが6時間ずつ稼動するように計画されていた。
【0017】
次に、異常機器(No4ポンプ)の運転時間を予め設定された比率で短縮し(ステップ24)、正常機器の運転時間は異常機器の短縮時間に相当する時間を延長する演算を行う(ステップ25)。次に、図3(b)に示すような修正後の運転スケジュール11aを設定する(ステップ26)。
【0018】
図3(b)の修正後の運転スケジュール11aの具体的修正内容は、次のようになる。異常機器であるNo4ポンプの運転時間を1/2(3時間)に短縮し、短縮した3時間分の運転時間を正常機器であるNo1ポンプ〜No3ポンプの3台に1時間分ずつ割り振って運転時間を延長させた。その結果、修正後の運転スケジュール11aに示すように、No1ポンプの運転時間が0〜7時、No2ポンプの運転時間が7〜14時、No3ポンプの運転時間が14〜21時、No4ポンプの運転時間が21〜24時となるように修正がなされた。
【0019】
次に、全ての運転スケジュール(10a以外で、存在する運転スケジュール)について修正完了かどうかを判別し(ステップ27)、完了ならばYesの矢印方向に進んで処理を停止し、未完了ならばNoの矢印方向に進んでステップ23に戻り、別の運転スケジュールに異常機器が存在するかどうかの判定を行う。処理停止後、機器の運転開始、終了時刻を設定可能な運転時刻設定機能4によって修正後の運転スケジュール11aを参照し、監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0020】
このように、点検システム5から点検データを収集し、点検結果から機器の異常を判別することにより異常機器を抽出し、運転スケジュール10aに異常機器が含まれている場合に、異常機器の運転時間を短縮し、その短縮時間相当分について正常機器の運転時間を延長(拡張)して埋め合わせをするように修正後の運転スケジュール11aを自動調整することが可能であり、処理性能が高い機器(省エネルギーが期待される機器)の稼動を優先させることができる。
上述の例では、低評価機器が1台であり、運転スケジュール修正対象となる高評価機器が複数台である場合について説明したが、低評価機器が複数台である場合についても同様であり、複数の低評価機器の短縮した運転時間(合計時間)を埋め合わせるように、1台または複数台(一部または全部)の高評価機器の運転時間を延長するように運転スケジュールを修正することが可能である。また、所定の基準値を満たす複数の機器のうち、一部の機器を運転スケジュール修正(運転時間延長)対象となる高評価機器として選定する場合において、評価が良い機器を優先して運転時間を延長させる方が望ましいことは言うまでもない。
なお、この実施の形態1では機器としてポンプを例示したが、これ以外にブロア等に対しても、同じ要領で運転スケジュールを修正することが可能である。
【0021】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2における統合維持管理システム1について図1、図5〜図7を参照して説明する。先述の実施の形態1では、統合維持管理システム1のデータ収集機能2によってネットワーク8を介して点検システム5から点検データを収集して、運転スケジュールを策定することについて示したが、この実施の形態2では、データ収集機能2によってネットワーク8を介してデータベース装置6のデータベース6aからプラントデータを収集して、運転スケジュールを策定することについて述べる。統合維持管理システム1およびその周囲の構成は図1に示すとおりである。
なお、データ収集機能2が収集し、データベース2aに格納されるプラントデータは、プラント設備を構成する複数の機器を制御するとともに常時機器の状態を監視する監視制御装置7から得られた、機器の運転に用いる情報である。
【0022】
この実施の形態2の統合維持管理システム1では、運転計画策定機能3において、プラントデータから複数の機器について、個別に、単位時間当たりの故障発生数を表す故障発生頻度を算出し、故障発生頻度が所定の設定値(基準値)を超える機器を低評価機器、故障発生頻度が所定値を超えない(所定基準を満たす)機器を高評価機器とするように、低評価機器の運転スケジュール内の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、高評価機器の運転スケジュール内の運転時間を延長するように、運転スケジュールを修正する。
【0023】
次に、この実施の形態2における統合維持管理システム1の動作について図5〜図7を参照して説明する。統合維持管理システム1は、データベース装置6からプラントデータを収集し、このプラントデータを、データベース2aに、図5に示すプラントデータテーブル9bの形式で保存する。プラントデータテーブル9bは、少なくとも機器名称とその機器に対応する故障発生頻度の属性を有する。例示されたプラントデータテーブル9bでは、機器名称として、No1ポンプ〜No4ポンプと記録され、各ポンプに対応する故障発生頻度の評価結果として「高」または「低」が記録されており、No1ポンプ〜No3ポンプは、故障発生頻度が「低」、No4ポンプは「高」と評価されている。
現在、統合維持管理システム1の運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として、図6(a)に示す修正前の運転スケジュール10bが保存されている(運転スケジュール10bは、上述の運転スケジュール10aと同じ内容であるため、説明は省略する。)。
【0024】
図7は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ30からステップ37の処理で構成されている。
まず、データ収集機能2によってデータベース装置6からプラントデータをデータベース2内のプラントデータテーブル9bに保存する(ステップ30)。
次に、プラントデータテーブル9bの故障発生頻度データから故障発生頻度を判別し、プラントデータテーブル9bの故障発生頻度の欄に「高」の評価が有る場合は、Yesの矢印方向に進み、複数の機器の評価が「低」のみである場合は、Noの矢印方向に進む(ステップ31)。本例の場合は、「高」の評価が有るためYes方向のステップ32に進む。機器の評価に「低」のみしかない場合は、この動作フローを終了し、運転スケジュールの修正は必要ないと見なす。
次に、故障発生頻度の高い機器(低評価機器)としてNo4ポンプを抽出する(ステップ32)。No1〜No3ポンプは故障発生頻度が低いため高評価機器とすることができる。この実施の形態2では、No1〜No3ポンプの全てをスケジュール修正対象となる高評価機器とした場合について説明する。
【0025】
ここで、故障発生頻度の判別は、予め単位時間当たりの故障発生数を示す故障発生頻度の基準値(所定値)を設定しておき、その基準値を超えた機器について故障発生頻度が高いと見なす。
運転スケジュール10bに故障発生頻度の高い機器が存在するかどうかを判別し(ステップ33)、故障発生頻度の高い機器が存在する場合はYesの矢印方向に進み、運転スケジュール10b内に該当する機器が無い場合は、Noの矢印方向に進み、別の運転スケジュール内で該当する機器の有無を判別し、全ての運転スケジュールの修正が終了している場合は動作を終了する。
【0026】
ステップ33からYes方向に進むと、故障発生頻度が高い機器であるNo4ポンプの運転時間を予め設定された比率で短縮する(ステップ34)。ここで、運転時間短縮の比率であるが、機器の種類や役割等を鑑み、操作係員によって適切に設定されるものとする。図6(b)に示すように、故障発生頻度が低い3台の機器(No1〜No3ポンプ)の運転時間は、故障発生頻度が高い機器の運転短縮時間に相当する時間分だけ延長し、No1〜No3ポンプの延長運転時間の合計と、No3ポンプの短縮した運転時間が釣り合うように調整する(ステップ35)。次に、運転スケジュール(修正後)11bに修正したスケジュールを設定する(ステップ36)。全運転スケジュールについて修正完了かどうかを判別し(ステップ37)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ33に戻る。処理停止後、運転時刻設定機能4によって、運転スケジュール11bを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0027】
このように、この発明の統合維持管理システム1によれば、プラント監視制御システム100からプラントデータを収集し、故障発生頻度の高い機器を抽出し、運転スケジュール10bに該当機器が含まれている場合に、該当機器の運転時間を短縮し、その短縮時間分について正常機器の運転時間を拡張するように運転スケジュール(修正後)11bを自動調整することが可能である。さらに、高評価機器の中で、より評価が良い機器の稼動を優先させ、他の機器よりも長い稼動時間とすること、また故障発生頻度の低い機器のうち、一部の機器のみを優先してスケジュール修正対象とするなど、様々な調整方法を採用することができる。このように、処理能力が高い機器の稼動を優先させることが可能となる。
【0028】
なお、故障発生頻度の評価において、故障発生頻度が予め設定された所定値を超える機器を「高」、所定値を超えない機器を「低」と評価しているが、故障発生頻度を決める故障発生数は、故障発生1回につき数量1として計数する方法について示した。この計数の方法以外に、故障発生数に故障の内容を加味してポイントを加算し、故障発生頻度を評価することも可能である。例えば、軽度の故障が1度発生する毎にポイント1、重度の故障が1度発生する毎にポイント3を加算するように、重大な故障であるほど高ポイントを加算するポイント制を採用し、加算されたポイントが所定の設定値を超える機器は故障発生頻度が「高」、所定値を超えない機器は故障発生頻度が「低」と評価することも可能であり、機器の故障内容がさまざまであることが予想される場合に有効な判定方法である。なお、軽度の故障の例としては、運転は継続できるが、不具合が生じている状態(ポンプにおいては、封水断など。)、重度の故障の例としては、運転が継続できない状態(ポンプにおいては、軸受温度高など。)が挙げられる。
【0029】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による統合維持管理システム1について説明する。統合維持管理システム1の構成については、上述の実施の形態1〜2において示したとおりである。この実施の形態3では、データ収集機能2が収集するデータは、プラントデータであり、運転計画策定機能3において、プラントデータから複数の機器について、個別に、所定の期間における累計運転時間を算出し、累計運転時間が所定値を超える機器を低評価機器とするように、低評価機器の運転スケジュール内の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、高評価機器の運転時間を延長するように運転スケジュールを修正する。
【0030】
次に、上記実施の形態3の動作について図8〜図10を参照しながら説明する。図8にデータベース装置6から収集したプラントデータを、プラントデータテーブル9cとして示す。プラントデータテーブル9cは、少なくとも機器名称とその機器に対応する運転時間の属性を有する。ここで運転時間は予め設定された期間(24時間)の機器運転時間を集計したものである。統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として、図9(a)に示す運転スケジュール10cが保存される。
【0031】
図10は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ40からステップ44の処理で構成される。
まず、データ収集機能2は、データベース装置6から収集したプラントデータを、データベース2a内のプラントデータテーブル9cに保存する(ステップ40)。次に、運転計画策定機能3において、修正前の運転スケジュール10cにおける各機器(No1ポンプ〜No4ポンプ)の運転時間を比較し、運転時間が長い機器を抽出する(ステップ41)。ここで運転時間が長いかどうかの判別は、運転スケジュールを構成する機器の運転時間平均からの乖離率が予め設定した値を超過した機器、または予め設定した運転時間基準値を超過した機器について運転時間が長いと見做す。
【0032】
プラントデータテーブル9cのデータでは、各機器の運転時間は次のように記録されている。No1ポンプの運転時間が4時間、No2ポンプは10時間、No3ポンプは8時間、No4ポンプは14時間である。この4つのポンプの平均運転時間は8時間であり、8時間以上の運転時間であって、平均値からの乖離率が最も大きく、所定の設定値を超過した機器(または予め設定した運転時間基準値を超過している機器)はNo4ポンプであり、No4ポンプが低評価機器とされ、例えば、最も運転時間が短いNo1ポンプが高評価機器とされる。
なお、この例では一運転周期となる24時間を運転時間を累計する期間としているが、プラント設備によって機器の運転方法が異なるため、操作係員の経験から累計する期間を変更する場合がある。
【0033】
図9(b)に示すように、運転時間が長いと判断された機器(低評価機器であるNo4ポンプ)は、運転時間が短い機器(高評価機器であるNo1ポンプ)のスケジュールと入れ替える(ステップ42)。スケジュールの入れ替えは、まず、運転時間が最長と最短の機器を入れ替え、2番目に運転時間が長い機器(スケジュールが未修正である機器の中で最も運転時間が長い機器)と2番目に運転時間が短い(スケジュールが未修正である機器の中で最も運転時間が短い機器)機器を入れ替え、3番目以降も同様に繰り返し、運転時間が長いと判断された機器が無くなった時点で終了する。次に運転スケジュール11cに修正後のスケジュールを設定する(ステップ43)。全ての運転スケジュールについて修正完了かどうか判別し(ステップ44)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ41に戻る。処理停止後、運転時刻設定機能4によって、運転スケジュール11cを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0034】
このように、プラント監視制御システム100内のデータベース6aからプラントデータを収集し、機器運転時間の長い機器を抽出し、運転スケジュールに該当機器が含まれている場合に、機器運転時間の短い機器のスケジュールと入れ替えることにより、累計稼動時間が長い機器については運転時間を短縮し、累計稼動時間が短い機器については、運転時間を短縮した機器の短縮時間相当分だけ稼働時間を延長して、短縮した運転時間を埋め合わせすることが可能となり、各機器の運転時間が平準化されるように運転スケジュールを自動調整することができ、特定の機器のみに負担が集中することを抑制できる。
【0035】
なお、上記の例では、累計稼動時間から機器を評価し、一つのステップで、1台の低評価機器と1台の高評価機器の運転スケジュールを入れ替えるスケジュール修正方法について主に述べたが、1台または複数台の低評価機器と、複数台の高評価機器の運転スケジュールを入れ替えるようスケジュール修正する場合もある。その場合は、上述した実施の形態1、2の場合と同様に、低評価機器の短縮した運転時間(合計時間)が複数の高評価機器の延長した運転時間の合計時間となるように、埋め合わせることで運転スケジュールを自動調整する。また、低評価機器が複数台、高評価機器が1台の場合も、同様に、短縮した運転時間と延長した運転時間とが釣り合うようにスケジュール調整を行うものとする。このスケジュール修正方法は、累計運転時間によって評価された低評価機器および高評価機器に限るものではなく、他の方法によって評価された低評価機器および高評価機器にも当てはめて用いることが可能であることは言うまでもない。評価の指標として、異常の有無、故障発生頻度、後述する処理能力値、消費電力量比率等が有る。
【0036】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による統合維持管理システム1について説明する。統合維持管理システム1の構成については、上述の実施の形態1〜3において示したとおりである。この実施の形態4では、データ収集機能2が収集するデータは、点検データであり、運転計画策定機能3において、点検データから複数の機器について、個別に、仕様値に対する計測値の比率を示す処理能力値を算出し、処理能力値が所定の設定値を下回る機器を低評価機器、処理能力値が所定の設定値以上である機器を高評価機器とするように、低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように高評価機器の運転時間を延長するように運転スケジュールを修正する。
【0037】
次に、この実施の形態4の動作について、図11〜図13を参照しながら説明する。
図11は、データ収集機能2のデータベース2aに記録された点検データテーブル9dである。点検データテーブル9dは、少なくとも機器名称とその機器に対応する処理能力を示すデータ(ポンプの吐出圧など)の仕様(仕様値)及び点検時における計測値の属性を有する。図11の例では、複数の機器であるNo1ポンプ〜No4ポンプの吐出圧(仕様値)が120である場合において、吐出圧(計測値)は、No1ポンプが120、No2ポンプが100、No3ポンプが100、No4ポンプが80として記録されている。
【0038】
また、図12(a)に示すように、統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として修正前の運転スケジュール10dが保存されている。
図13は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ50からステップ54の処理で構成される。
データ収集機能2では、点検システム5から収集した点検データをデータベース2a内の点検データテーブル9dに保存する(ステップ50)。
【0039】
次に、運転計画策定機能3において、運転スケジュール10dにおける各機器について処理能力が低い機器を抽出する(ステップ51)。
ここで処理能力が低いかどうかの判別は、点検データテーブル9dから処理能力を示すデータである仕様値と計測値の比率(=計測値/仕様値)を処理能力値として算出し、処理能力値が予め設定した基準値(所定の設定値)に満たない場合、処理能力が低い機器(低評価機器)と見做す。処理能力が低いと判断された機器は、処理能力が高く、かつ運転時間が低評価機器よりも長い機器(高評価機器)のスケジュールと入れ替えることで、その運転時間を短縮し、高評価機器の運転時間を短縮した運転時間分だけ延長する(ステップ52)。
スケジュールの入れ替えは、まず、処理能力が最高かつ入れ替え対象となる機器よりも運転時間が短い機器と、処理能力が最低の機器を入れ替え、次に、2番目に処理能力が高く、かつ入れ替え対象となる機器よりも運転時間が短い機器と2番目に処理能力が低い機器を入れ替え、3番目以降も同様の要領で入れ替えを繰り返し、処理能力が低いと判断された機器が無くなった時点で運転スケジュール10dについては処理を終了する。
【0040】
次に運転スケジュール11dに修正後のスケジュールを設定する(ステップ53)。
全ての運転スケジュールについて修正完了かどうか判別し(ステップ54)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ51に戻る。
処理停止後、運転時刻設定機能4によって、修正後の運転スケジュール11dを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0041】
このように、点検システム5から点検データを収集し、処理能力の低い機器を抽出し、運転スケジュール10dに該当機器が含まれている場合に、該当機器の運転時間を短縮し、その短縮時間相当分について処理能力が高い機器の運転時間を拡張するように、運転スケジュールを入れ替えることで、運転スケジュール11dを自動調整することができ、処理性能が高い機器の稼動を優先させることができる。
【0042】
なお、上記の例では、低評価機器と高評価機器との運転スケジュールを入れ替える手段によって低評価機器の運転時間を短縮する場合について述べたが、実施の形態1または実施の形態2において示したように、仕様値に対する計測値の比率よりなる処理能力値を判断指標として、所定の設定値を下回る処理能力値の低評価機器については運転時間を所定の比率で短縮し、所定の設定値以上の処理能力値である高評価機器については、低評価機器での短縮分だけ運転時間を延長して埋め合わせをするようにスケジュール調整を行うことも可能である。なお、機器の運転方法によっては、所定台数の機器を同時に運転させる等の台数制御、稼動時間帯の制約がある場合もあるため、予め必要となる条件を運転計画策定機能3に入力し、最適な運転スケジュールを策定できるように調整する必要があること、処理能力値以外にも、累計運転時間や後述する消費電力量比率等を判断指標とできることは言うまでもない。
【0043】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5による統合維持管理システム1について説明する。統合維持管理システム1の構成については、上述の実施の形態1〜4において示したとおりである。この実施の形態5では、データ収集機能2が収集するデータは、プラントデータであり、プラントデータから複数の機器について、個別に、定格出力に対する消費電力量の比率を示す消費電力量比率を算出し、消費電力量比率が所定の設定値よりも高い機器を低評価機器、設定値以下の消費電力量比率である機器を高評価機器とするように、低評価機器の運転時間を短縮し、短縮した運転時間を埋め合わせるうように高評価機器の運転時間を延長して運転スケジュールを修正する。
以下の例では、最も消費電力量比率が大きい機器を第一の(優先的に運転時間を短縮する)低評価機器とし、設定値以下の消費電力量比率である機器のうち、運転スケジュール内での運転時間が最短である機器を選択して第一の(優先的に運転時間を延長する)高評価機器とし、両者の運転スケジュールを入れ替えることで、スケジュール修正を行う方法について詳細に説明する。
【0044】
次に、この実施の形態5の動作について、図14〜図16を参照しながら説明する。
図14は、データ収集機能2のデータベース2aに記録されたプラントデータテーブル9eである。プラントデータテーブル9eは、少なくとも機器名称とその機器に対応する定格出力と消費電力量の属性を有する。図14の例では、複数の機器であるNo1ポンプ〜No4ポンプの定格出力が120である場合において、消費電力量は、No1ポンプが120、No2ポンプが118、No3ポンプが125、No4ポンプが140であることが記録されている。
【0045】
統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、図15(a)に示すような、機器の運転開始、停止時間に関する情報として運転スケジュール10eが保存されている。
図16は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ60からステップ64の処理で構成される。
データ収集機能2は、データベース装置6から収集したプラントデータをプラントデータテーブル9eに保存する(ステップ60)。
【0046】
次に、運転計画策定機能3によって、運転スケジュール10eにおける各機器について消費電力量が大きい低評価機器としてNo4ポンプをを抽出する(ステップ61)。ここで消費電力量が大きいかどうかの判別は、プラントデータテーブル9eから機器の定格出力と消費電力量の比率(消費電力量比率=消費電力量/定格出力)を算出し、この消費電力量比率が予め設定した設定値(所定の基準値)を超える場合、消費電力量が大きい機器と見做す。
次に、消費電力量が大きい機器と小さい機器の運転スケジュールを入れ替えるが、消費電力量が小さい機器の中から、運転時間が最短の機器をスケジュール修正対象の高評価機器として選ぶ必要がある。ここでは、基準値を1として考え、No1ポンプとNo2ポンプが消費電力量比率が小さいと判断される。さらに、No2ポンプよりもNo1ポンプの方が運転時間が短いため、高評価機器としてはNo1ポンプが選ばれる。図15(b)に示すように、消費電力量が大きいと判断された機器(低評価機器であるNo4ポンプ)と、消費電力量が設定値以下であり、かつ運転時間が最短の機器(高評価機器であるNo1ポンプ)の運転スケジュールを入れ替える(ステップ62)。
【0047】
スケジュールの入れ替えは、消費電力量比率が最大であって所定基準を満たさない機器と、所定値以下の消費電力量比率であって所定基準を満たす、運転時間が最短の機器を入れ替え、同様に2番目以降も同じ要領でスケジュール入れ替えを繰り返し、消費電力量が大きいと判断された機器が無くなった時点で終了する。
次に運転スケジュール11eに修正後のスケジュールを設定する(ステップ63)。
全ての運転スケジュールについて修正完了かどうか判別し(ステップ64)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ61に戻る。
処理停止後、運転時刻設定機能4によって、修正後の運転スケジュール11eを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0048】
このように、プラント監視制御システム100からプラントデータを収集し、同一定格出力の機器の中から消費電力量が大きい低評価機器を抽出し、運転スケジュールに該当機器が含まれている場合に、消費電力量比率が所定の設定値以下であり、かつ低評価機器よりも運転時間が短い高評価機器と運転スケジュールを入れ替えることで、低評価機器の運転時間を短縮し、その短縮時間分について、高評価機器の運転時間を拡張して埋め合わせできるように、運転スケジュール11eを自動調整することが可能となり、処理性能が高い機器(省エネルギーが期待される機器)の稼動を優先させることができる。
なお、上述の例では、一つのステップで、消費電力量比率によって評価された1台の低評価機器と1台の高評価機器の運転スケジュールを入れ替える場合について説明したが、実施の形態3において述べたように、低評価機器が1台または複数台、高評価機器が1台または複数台のいかなる組み合わせであっても、低評価機器の短縮した運転時間分だけ、高評価機器側で運転時間を延長させるようにスケジュールを修正することが可能であることは言うまでもない。
【0049】
実施の形態6.
上述の実施の形態1〜5においては、統合維持管理システム1は、修正後の運転スケジュールを監視制御装置7に設定するための機能として運転時刻設定機能4を備えていたが、この実施の形態6では、運転時刻を入力して機器をスケジュール運転させるのではなく、プラントデータ中の所定の運転制御データを定めて、この運転制御データが所定の閾値(制御閾値)よりも大きいか小さいかで運転期間を決める。そのため、図17の統合維持管理システム1およびその周囲の構成を示す構成図にあるように、運転時刻設定機能4に代えて運転制御閾値設定機能4aを備えている。例えばポンプ井に備えられた複数のポンプを稼動させるための運転制御データとして、水位が設定されている場合がある。
【0050】
この実施の形態6による統合維持管理システム1は、複数の機器から収集したデータ(点検データまたはプラントデータ)を保存するデータ収集機能2、データ中の所定の運転制御データに対して複数の閾値を用意して、運転制御データと閾値とを比較した結果により運転する機器の台数を増減させる台数制御を行うように、データから複数の機器の運転状態を評価して順番を付け、機器の運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように複数の機器の運転計画を策定する運転計画策定機能3、複数の機器の各々について、運転計画に基づいて運転の開始及び終了を決める条件である運転制御データに対する閾値を設定する運転制御閾値設定機能4aを備えるように構成されている。
【0051】
複数の機器の運転状態を評価するためのデータとして、図18に示すようなプラントデータテーブル9fが、データ収集機能2のデータベース2aに記録されている場合について説明する。プラントデータテーブル9fは、少なくとも機器名称とその機器に対応する定格出力と消費電力量の属性を有する。図18の例では、複数の機器であるNo1ポンプ〜No4ポンプの定格出力が120である場合において、消費電力量は、No1ポンプが140、No2ポンプが118、No3ポンプが125、No4ポンプが120であることが記録されている。
【0052】
複数の機器であるポンプを台数制御によって運転する場合の台数制御例について図19を用いて説明する。図19(a)に示すように、ポンプ井(水位が、高い順にH2、H1、L1、L2、LLと設定されている。水位のデータが運転制御データに相当し、H2,H1、L1、L2、LLという値が制御閾値に相当する。)に備えられた4台のポンプは、水位LLで1〜4台目のポンプが停止し、水位L2まで液面が上昇した段階で1台目のポンプの運転が開始され、さらに液面が上昇し、L1に達すると2台目のポンプが運転を開始し(1台目は運転中)、同様に、H1まで液面が上昇した段階で3台目のポンプが、H2まで液面が上昇した段階では4台目のポンプも運転開始され全ポンプが運転する状態となる。図19(a)に示す太実線でポンプの運転台数および範囲を模式的に示す。
【0053】
なお、図19(b)は、液面がどのレベル(水位)にあるときに、どのポンプが稼動しているかを示す、ポンプの運転範囲を模式的に示した図であり、液面が水位H2に達した後、H1に到るまでは1〜4台目のポンプが運転され、液面が水位H1に達した後、L1に到るまでは1〜3台目のポンプが運転され、液面が水位L1に達した後、L2に到るまでは1、2台目のポンプが運転され、液面が水位L2に達した後、LLに到るまでは1台目のみのポンプが運転されることが示されている。
【0054】
統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、図20(a)に示すような台数制御における機器の運転順序を定義した運転順序設定10fが保存されている。現在の運転順序設定10fの場合、ポンプの運転順序が、1台目となっているNo1ポンプは、水位がL2以上で運転されるため、他のポンプよりも運転時間が長く、2台目となっているNo2ポンプは、水位がL1以上で運転されるため、2番目に運転時間が長く、3台目のNo3ポンプは、水位がH1以上で運転されるため、3番目に運転時間が長く、4台目のNo4ポンプは、水位がH2以上で運転されるため、この4台のポンプの中で最も運転時間が短くなるように設定されている。
【0055】
図21は、統合維持管理システム1の動作を示すフロー図であり、ステップ70からステップ74の処理で構成される。
データ収集機能3は、データベース装置6から収集したプラントデータをプラントデータテーブル9fに保存する(ステップ70)。
【0056】
次に、運転計画策定機能3において、運転順序設定10fにおける各機器について消費電力量が小さい順に順番を付ける(ステップ71)。ここで消費電力量が小さい順に付ける順番は、プラントデータテーブル9fから機器の定格出力と消費電力量の比率(消費電力量比率=消費電力量/定格出力)を算出し、複数の機器の運転状態を消費電力量比率から評価して、消費電力量比率が小さい順に良好な運転状態であると判断し、順番を付ける。プラントデータテーブル9fから判断すると、最も消費電力量比率が小さいNo2ポンプが1番良好な運転状態であり、No4ポンプが2番、No3ポンプが3番、No1ポンプが4番という順序となっている。
【0057】
次に、機器の運転状態が良好な順に、運転時間が長くなるように、複数の機器の運転順序を入れ替え、図11(b)に示すように、No2ポンプを1台目、No4ポンプを2台目、No3ポンプは3台目、No4ポンプは2台目にそれぞれ運転が開始されるように変更する(ステップ72)。
次に、運転順序設定11fに修正後の運転順序(つまり、運転開始、終了となる制御閾値となる水位。)を設定する(ステップ73)。
全ての運転順序設定について修正完了かどうか判別し(ステップ74)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ71に戻る。
処理停止後、運転制御閾値設定機能4aによって、修正した運転順序設定11fを参照し監視制御装置7の運転順序設定を変更する。
【0058】
このように、プラント監視制御システム100からプラントデータを収集し、同一定格出力の機器の中から消費電力量比率が小さい順に機器に順番を付け、運転状態が良好な順序を消費電力量比率が小さい順として判断し、運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように機器の運転順序を変更し、運転状態が良好でない機器の運転時間を短縮するように運転順序設定11fを自動調整することができ、処理性能が高い機器(省エネルギーが期待される機器)の稼動を優先させることができる。
なお、機器の運転状態を判断する指標としては、消費電力量比率のほか機器故障の前兆を示すデータの発生頻度や、機器の故障発生頻度、機器の累計運転時間、機器の処理能力等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態1における、統合維持管理システムおよびその周囲の構成との関係を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による統合維持管理システムに記録された点検データテーブルを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図5】この発明の実施の形態2における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【0060】
【図8】この発明の実施の形態3における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図11】この発明の実施の形態4における、統合維持管理システムに記録された点検データテーブルを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態4による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図13】この発明の実施の形態4における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図14】この発明の実施の形態5における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【0061】
【図15】この発明の実施の形態5による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図16】この発明の実施の形態5における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図17】この発明の実施の形態6における、統合維持管理システムおよびその周囲の構成との関係を示す構成図である。
【図18】この発明の実施の形態6における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【図19】この発明の実施の形態6における、機器の運転順序および機器の台数制御例を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態6による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転順序設定を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態6における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0062】
1 統合維持管理システム 2 データ収集機能、
2a、5a、6a データベース 3 運転計画策定機能、
4 運転時刻設定機能 4a 運転制御閾値設定機能、
5 点検システム 6 データベース装置
7 監視制御装置 8 ネットワーク、
9a、9d 点検データテーブル 10a〜10e 運転スケジュール
11a〜11e 運転スケジュール(修正後)、
10f 運転順序設定 11f 運転順序設定(修正後)、
100 プラント監視制御システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備を構成する複数の機器の運転スケジュール(運転計画)を最適化させるための統合維持管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転計画システムにおいては、異常診断システムからのデータ、余寿命評価結果、保全計画、他のプラントの運転計画、プラント生成物の需要予測に関するデータを用いて運転計画を立案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−331507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の運転計画システムは、処理性能が高い機器の稼動を優先させる、省エネルギーが期待される機器の稼動を優先させる、また、スケジュール運転を行う各機器の運転時間を平準化させるための運転計画の策定ができていなかった。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、複数の機器から得られたデータ(プラントデータまたは点検データ)を収集し、各データを統合的に管理する統合維持管理システムにおいて、上記データを基に、プラント状況に応じた最適な運転スケジュール(運転計画)を策定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる統合維持管理システムは、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データに基づいて複数の上記機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを作成する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転スケジュールに基づいて運転の開始及び終了時刻を設定する運転時刻設定機能を備え、上記運転計画策定機能において、上記データから、複数の上記機器の運転状態を評価し、複数の上記機器のうち、運転状態が所定基準を満たさない上記機器を低評価機器とし、上記低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、運転状態が所定基準を満たす上記機器の一部または全部である高評価機器の運転時間を延長するように、上記運転スケジュールを修正することを特徴とするものである。
【0006】
また、この発明に係わる統合維持管理システムは、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データ中の所定の運転制御データに対して複数の閾値を用意して、上記運転制御データと上記閾値とを比較した結果により運転する上記機器の台数を増減させる台数制御を行うように、上記データから複数の上記機器の運転状態を評価して順番を付け、上記機器の運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように複数の上記機器の運転計画を策定する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転計画に基づいて運転の開始及び終了の条件である上記運転制御データに対する上記閾値を設定する運転制御閾値設定機能を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の統合維持管理システムによれば、自動的に、低評価機器の稼動率を、高評価機器の稼動率よりも抑えた運転スケジュールを策定することができる。
【0008】
また、この発明の統合維持管理システムによれば、自動的に、複数の機器の運転状態に応じて、運転状態が良好な順に運転時間が長くなる運転順序となるように運転計画を策定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
次に、この発明の実施の形態1について、図1〜図3を用いて説明する。図1の構成図に示すように、統合維持管理システム1は、ネットワーク8を介して点検システム5、データベース装置6、監視制御装置7に接続されている。データベース装置6と監視制御装置7によってプラント監視制御システム100が構成されている。なお、図1においては、監視制御装置7を1台のみ記載しているが、複数台がネットワーク8に接続される場合もある。
【0010】
上述の点検システム5は、プラント設備(例えば水処理プラント)を構成する機器を定期的に点検するシステムであり、点検によって、定期的に目視等で確認することで得られた点検データをデータベース5aに格納している。また、監視制御装置7は、プラント設備を構成する複数の機器に繋げられ、機器の状態を常に監視することでプラントデータを得ることができる。プラントデータは、データベース装置6のデータベース6aに格納される。
【0011】
統合維持管理システム1は、点検システム5から点検データを収集するデータ収集機能(装置)2を備えるとともに、点検データ5等のデータを格納するためのデータベース2aを備えている。また、データベース2aに蓄積された点検データを参照し、異常発生頻度が増加傾向にある機器(低評価機器)については一運転周期内での運転時間を短縮するように運転スケジュールを調整し、新たな運転スケジュールを策定する運転計画策定機能(装置)3を備えている。さらに、機器の一運転周期(例えば24時間を一周期とする。)における運転開始、終了(停止)時刻を、機器毎に個別に設定可能な運転時刻設定機能4を備えている。運転時刻設定機能(装置)4によって設定された運転時刻情報は、ネットワーク8を介して、機器を監視制御する監視制御装置7に提供される。
【0012】
この発明の統合維持管理システム1は、複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能2、データに基づいて複数の機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを作成する運転計画策定機能3、複数の機器の各々について、運転スケジュールに基づいて運転の開始及び終了時刻を設定する運転時刻設定機能4を備え、運転計画策定機能3において、データから、複数の上記機器の運転状態を評価し、複数の機器のうち、運転状態が所定基準を満たさない機器を低評価機器とし、低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、運転状態が所定基準を満たす機器の一部または全部である高評価機器の運転時間を延長するように、運転スケジュールを修正することを特徴としている。そして、この実施の形態1では、データとして、複数の機器を定期的に点検して得られた点検データを用い、運転計画策定機能において、点検データから複数の機器について、個別に、正常、異常の評価を行い、異常と評価された機器を低評価機器、正常と評価された機器を高評価機器とするように、運転スケジュールを修正する場合について説明する。
【0013】
次に、この実施の形態1による統合維持管理システム1の動作について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、点検データテーブルを示し、図3は、修正前後の運転スケジュールを示し、図4は動作フローを示している。
統合維持管理システム1はデータ収集機能2によって、点検システム5から点検データを収集し、点検データは、データベース2aに図2に示すような点検データテーブル(点検データ一覧表)9aの形式で保存される。点検データテーブル9aは、少なくとも機器名称とその機器に対応する点検結果の属性を有している。
統合維持管理システム1の運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として図3(a)に示すような運転スケジュール10aが保存されている。
【0014】
図4は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ20からステップ27の処理によって構成される。次に、各ステップの動作について詳細に説明する。
まず、統合維持管理システム1のデータ収集機能2によって点検システム5から収集した点検データを点検データテーブル9aに保存する(ステップ20)。
次に、運転計画策定機能3によって、点検データテーブル9aの点検結果から異常の有無を判別する(ステップ21)。点検データテーブル9aの点検結果の欄に異常(異常振動)の表示があるため、ここではYesの矢印方向となるステップ22に進む。仮に、点検データデーブル9aの点検結果に異常が無い場合、Noの矢印方向へ進み、この動作を終了する。なお、機器がポンプの場合、吐出不可の場合や突発的な異常により運転継続不能である場合は、そのポンプを運転スケジュールに組み込めないため、対象外機器として取り扱う。ここでの「異常」とは、故障の前兆を捉えた段階で、運転状態が良好ではないが運転継続が可能な状態を言う。
【0015】
次に、異常機器を抽出する(ステップ22)。図2の点検データテーブル9aに示すように、複数の機器としてNo1ポンプ〜No4ポンプが有る場合、点検結果に「異常振動」と表示があるNo4ポンプが異常機器であり、この機器がスケジュール修正される低評価機器となる。点検結果が「正常」と表示されているNo1〜No3ポンプは正常機器である。この実施の形態1では、後述するように正常機器の全てをスケジュール修正対象とするため、No1〜No3ポンプの全てが高評価機器に相当する。
【0016】
次に、図3(a)に示す、現在用いられている運転スケジュール10aに異常機器が含まれているかどうかを判定する(ステップ23)。上述したように、No4ポンプが異常機器であるため、運転スケジュール10aに異常機器が含まれる場合に該当し、Yesの矢印方向へ進む。
ここで、運転スケジュール10aに示すように、この機器の運転は24時間(1日)周期で行われており、同じ機能を持つ複数の機器としてNo1ポンプ〜No4ポンプが備えられており、0時から24時まで、常に1台のポンプが交代で稼動するように運転スケジュール10aが策定されている。運転スケジュール10aでは、No1ポンプの運転時間が0〜6時、No2ポンプの運転時間が6〜12時、No3ポンプの運転時間が12〜18時、No4ポンプの運転時間が18〜24時となっており、各ポンプが6時間ずつ稼動するように計画されていた。
【0017】
次に、異常機器(No4ポンプ)の運転時間を予め設定された比率で短縮し(ステップ24)、正常機器の運転時間は異常機器の短縮時間に相当する時間を延長する演算を行う(ステップ25)。次に、図3(b)に示すような修正後の運転スケジュール11aを設定する(ステップ26)。
【0018】
図3(b)の修正後の運転スケジュール11aの具体的修正内容は、次のようになる。異常機器であるNo4ポンプの運転時間を1/2(3時間)に短縮し、短縮した3時間分の運転時間を正常機器であるNo1ポンプ〜No3ポンプの3台に1時間分ずつ割り振って運転時間を延長させた。その結果、修正後の運転スケジュール11aに示すように、No1ポンプの運転時間が0〜7時、No2ポンプの運転時間が7〜14時、No3ポンプの運転時間が14〜21時、No4ポンプの運転時間が21〜24時となるように修正がなされた。
【0019】
次に、全ての運転スケジュール(10a以外で、存在する運転スケジュール)について修正完了かどうかを判別し(ステップ27)、完了ならばYesの矢印方向に進んで処理を停止し、未完了ならばNoの矢印方向に進んでステップ23に戻り、別の運転スケジュールに異常機器が存在するかどうかの判定を行う。処理停止後、機器の運転開始、終了時刻を設定可能な運転時刻設定機能4によって修正後の運転スケジュール11aを参照し、監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0020】
このように、点検システム5から点検データを収集し、点検結果から機器の異常を判別することにより異常機器を抽出し、運転スケジュール10aに異常機器が含まれている場合に、異常機器の運転時間を短縮し、その短縮時間相当分について正常機器の運転時間を延長(拡張)して埋め合わせをするように修正後の運転スケジュール11aを自動調整することが可能であり、処理性能が高い機器(省エネルギーが期待される機器)の稼動を優先させることができる。
上述の例では、低評価機器が1台であり、運転スケジュール修正対象となる高評価機器が複数台である場合について説明したが、低評価機器が複数台である場合についても同様であり、複数の低評価機器の短縮した運転時間(合計時間)を埋め合わせるように、1台または複数台(一部または全部)の高評価機器の運転時間を延長するように運転スケジュールを修正することが可能である。また、所定の基準値を満たす複数の機器のうち、一部の機器を運転スケジュール修正(運転時間延長)対象となる高評価機器として選定する場合において、評価が良い機器を優先して運転時間を延長させる方が望ましいことは言うまでもない。
なお、この実施の形態1では機器としてポンプを例示したが、これ以外にブロア等に対しても、同じ要領で運転スケジュールを修正することが可能である。
【0021】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2における統合維持管理システム1について図1、図5〜図7を参照して説明する。先述の実施の形態1では、統合維持管理システム1のデータ収集機能2によってネットワーク8を介して点検システム5から点検データを収集して、運転スケジュールを策定することについて示したが、この実施の形態2では、データ収集機能2によってネットワーク8を介してデータベース装置6のデータベース6aからプラントデータを収集して、運転スケジュールを策定することについて述べる。統合維持管理システム1およびその周囲の構成は図1に示すとおりである。
なお、データ収集機能2が収集し、データベース2aに格納されるプラントデータは、プラント設備を構成する複数の機器を制御するとともに常時機器の状態を監視する監視制御装置7から得られた、機器の運転に用いる情報である。
【0022】
この実施の形態2の統合維持管理システム1では、運転計画策定機能3において、プラントデータから複数の機器について、個別に、単位時間当たりの故障発生数を表す故障発生頻度を算出し、故障発生頻度が所定の設定値(基準値)を超える機器を低評価機器、故障発生頻度が所定値を超えない(所定基準を満たす)機器を高評価機器とするように、低評価機器の運転スケジュール内の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、高評価機器の運転スケジュール内の運転時間を延長するように、運転スケジュールを修正する。
【0023】
次に、この実施の形態2における統合維持管理システム1の動作について図5〜図7を参照して説明する。統合維持管理システム1は、データベース装置6からプラントデータを収集し、このプラントデータを、データベース2aに、図5に示すプラントデータテーブル9bの形式で保存する。プラントデータテーブル9bは、少なくとも機器名称とその機器に対応する故障発生頻度の属性を有する。例示されたプラントデータテーブル9bでは、機器名称として、No1ポンプ〜No4ポンプと記録され、各ポンプに対応する故障発生頻度の評価結果として「高」または「低」が記録されており、No1ポンプ〜No3ポンプは、故障発生頻度が「低」、No4ポンプは「高」と評価されている。
現在、統合維持管理システム1の運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として、図6(a)に示す修正前の運転スケジュール10bが保存されている(運転スケジュール10bは、上述の運転スケジュール10aと同じ内容であるため、説明は省略する。)。
【0024】
図7は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ30からステップ37の処理で構成されている。
まず、データ収集機能2によってデータベース装置6からプラントデータをデータベース2内のプラントデータテーブル9bに保存する(ステップ30)。
次に、プラントデータテーブル9bの故障発生頻度データから故障発生頻度を判別し、プラントデータテーブル9bの故障発生頻度の欄に「高」の評価が有る場合は、Yesの矢印方向に進み、複数の機器の評価が「低」のみである場合は、Noの矢印方向に進む(ステップ31)。本例の場合は、「高」の評価が有るためYes方向のステップ32に進む。機器の評価に「低」のみしかない場合は、この動作フローを終了し、運転スケジュールの修正は必要ないと見なす。
次に、故障発生頻度の高い機器(低評価機器)としてNo4ポンプを抽出する(ステップ32)。No1〜No3ポンプは故障発生頻度が低いため高評価機器とすることができる。この実施の形態2では、No1〜No3ポンプの全てをスケジュール修正対象となる高評価機器とした場合について説明する。
【0025】
ここで、故障発生頻度の判別は、予め単位時間当たりの故障発生数を示す故障発生頻度の基準値(所定値)を設定しておき、その基準値を超えた機器について故障発生頻度が高いと見なす。
運転スケジュール10bに故障発生頻度の高い機器が存在するかどうかを判別し(ステップ33)、故障発生頻度の高い機器が存在する場合はYesの矢印方向に進み、運転スケジュール10b内に該当する機器が無い場合は、Noの矢印方向に進み、別の運転スケジュール内で該当する機器の有無を判別し、全ての運転スケジュールの修正が終了している場合は動作を終了する。
【0026】
ステップ33からYes方向に進むと、故障発生頻度が高い機器であるNo4ポンプの運転時間を予め設定された比率で短縮する(ステップ34)。ここで、運転時間短縮の比率であるが、機器の種類や役割等を鑑み、操作係員によって適切に設定されるものとする。図6(b)に示すように、故障発生頻度が低い3台の機器(No1〜No3ポンプ)の運転時間は、故障発生頻度が高い機器の運転短縮時間に相当する時間分だけ延長し、No1〜No3ポンプの延長運転時間の合計と、No3ポンプの短縮した運転時間が釣り合うように調整する(ステップ35)。次に、運転スケジュール(修正後)11bに修正したスケジュールを設定する(ステップ36)。全運転スケジュールについて修正完了かどうかを判別し(ステップ37)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ33に戻る。処理停止後、運転時刻設定機能4によって、運転スケジュール11bを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0027】
このように、この発明の統合維持管理システム1によれば、プラント監視制御システム100からプラントデータを収集し、故障発生頻度の高い機器を抽出し、運転スケジュール10bに該当機器が含まれている場合に、該当機器の運転時間を短縮し、その短縮時間分について正常機器の運転時間を拡張するように運転スケジュール(修正後)11bを自動調整することが可能である。さらに、高評価機器の中で、より評価が良い機器の稼動を優先させ、他の機器よりも長い稼動時間とすること、また故障発生頻度の低い機器のうち、一部の機器のみを優先してスケジュール修正対象とするなど、様々な調整方法を採用することができる。このように、処理能力が高い機器の稼動を優先させることが可能となる。
【0028】
なお、故障発生頻度の評価において、故障発生頻度が予め設定された所定値を超える機器を「高」、所定値を超えない機器を「低」と評価しているが、故障発生頻度を決める故障発生数は、故障発生1回につき数量1として計数する方法について示した。この計数の方法以外に、故障発生数に故障の内容を加味してポイントを加算し、故障発生頻度を評価することも可能である。例えば、軽度の故障が1度発生する毎にポイント1、重度の故障が1度発生する毎にポイント3を加算するように、重大な故障であるほど高ポイントを加算するポイント制を採用し、加算されたポイントが所定の設定値を超える機器は故障発生頻度が「高」、所定値を超えない機器は故障発生頻度が「低」と評価することも可能であり、機器の故障内容がさまざまであることが予想される場合に有効な判定方法である。なお、軽度の故障の例としては、運転は継続できるが、不具合が生じている状態(ポンプにおいては、封水断など。)、重度の故障の例としては、運転が継続できない状態(ポンプにおいては、軸受温度高など。)が挙げられる。
【0029】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による統合維持管理システム1について説明する。統合維持管理システム1の構成については、上述の実施の形態1〜2において示したとおりである。この実施の形態3では、データ収集機能2が収集するデータは、プラントデータであり、運転計画策定機能3において、プラントデータから複数の機器について、個別に、所定の期間における累計運転時間を算出し、累計運転時間が所定値を超える機器を低評価機器とするように、低評価機器の運転スケジュール内の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、高評価機器の運転時間を延長するように運転スケジュールを修正する。
【0030】
次に、上記実施の形態3の動作について図8〜図10を参照しながら説明する。図8にデータベース装置6から収集したプラントデータを、プラントデータテーブル9cとして示す。プラントデータテーブル9cは、少なくとも機器名称とその機器に対応する運転時間の属性を有する。ここで運転時間は予め設定された期間(24時間)の機器運転時間を集計したものである。統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として、図9(a)に示す運転スケジュール10cが保存される。
【0031】
図10は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ40からステップ44の処理で構成される。
まず、データ収集機能2は、データベース装置6から収集したプラントデータを、データベース2a内のプラントデータテーブル9cに保存する(ステップ40)。次に、運転計画策定機能3において、修正前の運転スケジュール10cにおける各機器(No1ポンプ〜No4ポンプ)の運転時間を比較し、運転時間が長い機器を抽出する(ステップ41)。ここで運転時間が長いかどうかの判別は、運転スケジュールを構成する機器の運転時間平均からの乖離率が予め設定した値を超過した機器、または予め設定した運転時間基準値を超過した機器について運転時間が長いと見做す。
【0032】
プラントデータテーブル9cのデータでは、各機器の運転時間は次のように記録されている。No1ポンプの運転時間が4時間、No2ポンプは10時間、No3ポンプは8時間、No4ポンプは14時間である。この4つのポンプの平均運転時間は8時間であり、8時間以上の運転時間であって、平均値からの乖離率が最も大きく、所定の設定値を超過した機器(または予め設定した運転時間基準値を超過している機器)はNo4ポンプであり、No4ポンプが低評価機器とされ、例えば、最も運転時間が短いNo1ポンプが高評価機器とされる。
なお、この例では一運転周期となる24時間を運転時間を累計する期間としているが、プラント設備によって機器の運転方法が異なるため、操作係員の経験から累計する期間を変更する場合がある。
【0033】
図9(b)に示すように、運転時間が長いと判断された機器(低評価機器であるNo4ポンプ)は、運転時間が短い機器(高評価機器であるNo1ポンプ)のスケジュールと入れ替える(ステップ42)。スケジュールの入れ替えは、まず、運転時間が最長と最短の機器を入れ替え、2番目に運転時間が長い機器(スケジュールが未修正である機器の中で最も運転時間が長い機器)と2番目に運転時間が短い(スケジュールが未修正である機器の中で最も運転時間が短い機器)機器を入れ替え、3番目以降も同様に繰り返し、運転時間が長いと判断された機器が無くなった時点で終了する。次に運転スケジュール11cに修正後のスケジュールを設定する(ステップ43)。全ての運転スケジュールについて修正完了かどうか判別し(ステップ44)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ41に戻る。処理停止後、運転時刻設定機能4によって、運転スケジュール11cを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0034】
このように、プラント監視制御システム100内のデータベース6aからプラントデータを収集し、機器運転時間の長い機器を抽出し、運転スケジュールに該当機器が含まれている場合に、機器運転時間の短い機器のスケジュールと入れ替えることにより、累計稼動時間が長い機器については運転時間を短縮し、累計稼動時間が短い機器については、運転時間を短縮した機器の短縮時間相当分だけ稼働時間を延長して、短縮した運転時間を埋め合わせすることが可能となり、各機器の運転時間が平準化されるように運転スケジュールを自動調整することができ、特定の機器のみに負担が集中することを抑制できる。
【0035】
なお、上記の例では、累計稼動時間から機器を評価し、一つのステップで、1台の低評価機器と1台の高評価機器の運転スケジュールを入れ替えるスケジュール修正方法について主に述べたが、1台または複数台の低評価機器と、複数台の高評価機器の運転スケジュールを入れ替えるようスケジュール修正する場合もある。その場合は、上述した実施の形態1、2の場合と同様に、低評価機器の短縮した運転時間(合計時間)が複数の高評価機器の延長した運転時間の合計時間となるように、埋め合わせることで運転スケジュールを自動調整する。また、低評価機器が複数台、高評価機器が1台の場合も、同様に、短縮した運転時間と延長した運転時間とが釣り合うようにスケジュール調整を行うものとする。このスケジュール修正方法は、累計運転時間によって評価された低評価機器および高評価機器に限るものではなく、他の方法によって評価された低評価機器および高評価機器にも当てはめて用いることが可能であることは言うまでもない。評価の指標として、異常の有無、故障発生頻度、後述する処理能力値、消費電力量比率等が有る。
【0036】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による統合維持管理システム1について説明する。統合維持管理システム1の構成については、上述の実施の形態1〜3において示したとおりである。この実施の形態4では、データ収集機能2が収集するデータは、点検データであり、運転計画策定機能3において、点検データから複数の機器について、個別に、仕様値に対する計測値の比率を示す処理能力値を算出し、処理能力値が所定の設定値を下回る機器を低評価機器、処理能力値が所定の設定値以上である機器を高評価機器とするように、低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように高評価機器の運転時間を延長するように運転スケジュールを修正する。
【0037】
次に、この実施の形態4の動作について、図11〜図13を参照しながら説明する。
図11は、データ収集機能2のデータベース2aに記録された点検データテーブル9dである。点検データテーブル9dは、少なくとも機器名称とその機器に対応する処理能力を示すデータ(ポンプの吐出圧など)の仕様(仕様値)及び点検時における計測値の属性を有する。図11の例では、複数の機器であるNo1ポンプ〜No4ポンプの吐出圧(仕様値)が120である場合において、吐出圧(計測値)は、No1ポンプが120、No2ポンプが100、No3ポンプが100、No4ポンプが80として記録されている。
【0038】
また、図12(a)に示すように、統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、機器の運転開始、停止時間に関する情報として修正前の運転スケジュール10dが保存されている。
図13は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ50からステップ54の処理で構成される。
データ収集機能2では、点検システム5から収集した点検データをデータベース2a内の点検データテーブル9dに保存する(ステップ50)。
【0039】
次に、運転計画策定機能3において、運転スケジュール10dにおける各機器について処理能力が低い機器を抽出する(ステップ51)。
ここで処理能力が低いかどうかの判別は、点検データテーブル9dから処理能力を示すデータである仕様値と計測値の比率(=計測値/仕様値)を処理能力値として算出し、処理能力値が予め設定した基準値(所定の設定値)に満たない場合、処理能力が低い機器(低評価機器)と見做す。処理能力が低いと判断された機器は、処理能力が高く、かつ運転時間が低評価機器よりも長い機器(高評価機器)のスケジュールと入れ替えることで、その運転時間を短縮し、高評価機器の運転時間を短縮した運転時間分だけ延長する(ステップ52)。
スケジュールの入れ替えは、まず、処理能力が最高かつ入れ替え対象となる機器よりも運転時間が短い機器と、処理能力が最低の機器を入れ替え、次に、2番目に処理能力が高く、かつ入れ替え対象となる機器よりも運転時間が短い機器と2番目に処理能力が低い機器を入れ替え、3番目以降も同様の要領で入れ替えを繰り返し、処理能力が低いと判断された機器が無くなった時点で運転スケジュール10dについては処理を終了する。
【0040】
次に運転スケジュール11dに修正後のスケジュールを設定する(ステップ53)。
全ての運転スケジュールについて修正完了かどうか判別し(ステップ54)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ51に戻る。
処理停止後、運転時刻設定機能4によって、修正後の運転スケジュール11dを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0041】
このように、点検システム5から点検データを収集し、処理能力の低い機器を抽出し、運転スケジュール10dに該当機器が含まれている場合に、該当機器の運転時間を短縮し、その短縮時間相当分について処理能力が高い機器の運転時間を拡張するように、運転スケジュールを入れ替えることで、運転スケジュール11dを自動調整することができ、処理性能が高い機器の稼動を優先させることができる。
【0042】
なお、上記の例では、低評価機器と高評価機器との運転スケジュールを入れ替える手段によって低評価機器の運転時間を短縮する場合について述べたが、実施の形態1または実施の形態2において示したように、仕様値に対する計測値の比率よりなる処理能力値を判断指標として、所定の設定値を下回る処理能力値の低評価機器については運転時間を所定の比率で短縮し、所定の設定値以上の処理能力値である高評価機器については、低評価機器での短縮分だけ運転時間を延長して埋め合わせをするようにスケジュール調整を行うことも可能である。なお、機器の運転方法によっては、所定台数の機器を同時に運転させる等の台数制御、稼動時間帯の制約がある場合もあるため、予め必要となる条件を運転計画策定機能3に入力し、最適な運転スケジュールを策定できるように調整する必要があること、処理能力値以外にも、累計運転時間や後述する消費電力量比率等を判断指標とできることは言うまでもない。
【0043】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5による統合維持管理システム1について説明する。統合維持管理システム1の構成については、上述の実施の形態1〜4において示したとおりである。この実施の形態5では、データ収集機能2が収集するデータは、プラントデータであり、プラントデータから複数の機器について、個別に、定格出力に対する消費電力量の比率を示す消費電力量比率を算出し、消費電力量比率が所定の設定値よりも高い機器を低評価機器、設定値以下の消費電力量比率である機器を高評価機器とするように、低評価機器の運転時間を短縮し、短縮した運転時間を埋め合わせるうように高評価機器の運転時間を延長して運転スケジュールを修正する。
以下の例では、最も消費電力量比率が大きい機器を第一の(優先的に運転時間を短縮する)低評価機器とし、設定値以下の消費電力量比率である機器のうち、運転スケジュール内での運転時間が最短である機器を選択して第一の(優先的に運転時間を延長する)高評価機器とし、両者の運転スケジュールを入れ替えることで、スケジュール修正を行う方法について詳細に説明する。
【0044】
次に、この実施の形態5の動作について、図14〜図16を参照しながら説明する。
図14は、データ収集機能2のデータベース2aに記録されたプラントデータテーブル9eである。プラントデータテーブル9eは、少なくとも機器名称とその機器に対応する定格出力と消費電力量の属性を有する。図14の例では、複数の機器であるNo1ポンプ〜No4ポンプの定格出力が120である場合において、消費電力量は、No1ポンプが120、No2ポンプが118、No3ポンプが125、No4ポンプが140であることが記録されている。
【0045】
統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、図15(a)に示すような、機器の運転開始、停止時間に関する情報として運転スケジュール10eが保存されている。
図16は、統合維持管理システム1の動作を示すフローチャートであり、ステップ60からステップ64の処理で構成される。
データ収集機能2は、データベース装置6から収集したプラントデータをプラントデータテーブル9eに保存する(ステップ60)。
【0046】
次に、運転計画策定機能3によって、運転スケジュール10eにおける各機器について消費電力量が大きい低評価機器としてNo4ポンプをを抽出する(ステップ61)。ここで消費電力量が大きいかどうかの判別は、プラントデータテーブル9eから機器の定格出力と消費電力量の比率(消費電力量比率=消費電力量/定格出力)を算出し、この消費電力量比率が予め設定した設定値(所定の基準値)を超える場合、消費電力量が大きい機器と見做す。
次に、消費電力量が大きい機器と小さい機器の運転スケジュールを入れ替えるが、消費電力量が小さい機器の中から、運転時間が最短の機器をスケジュール修正対象の高評価機器として選ぶ必要がある。ここでは、基準値を1として考え、No1ポンプとNo2ポンプが消費電力量比率が小さいと判断される。さらに、No2ポンプよりもNo1ポンプの方が運転時間が短いため、高評価機器としてはNo1ポンプが選ばれる。図15(b)に示すように、消費電力量が大きいと判断された機器(低評価機器であるNo4ポンプ)と、消費電力量が設定値以下であり、かつ運転時間が最短の機器(高評価機器であるNo1ポンプ)の運転スケジュールを入れ替える(ステップ62)。
【0047】
スケジュールの入れ替えは、消費電力量比率が最大であって所定基準を満たさない機器と、所定値以下の消費電力量比率であって所定基準を満たす、運転時間が最短の機器を入れ替え、同様に2番目以降も同じ要領でスケジュール入れ替えを繰り返し、消費電力量が大きいと判断された機器が無くなった時点で終了する。
次に運転スケジュール11eに修正後のスケジュールを設定する(ステップ63)。
全ての運転スケジュールについて修正完了かどうか判別し(ステップ64)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ61に戻る。
処理停止後、運転時刻設定機能4によって、修正後の運転スケジュール11eを参照し監視制御装置7の運転スケジュール設定を変更する。
【0048】
このように、プラント監視制御システム100からプラントデータを収集し、同一定格出力の機器の中から消費電力量が大きい低評価機器を抽出し、運転スケジュールに該当機器が含まれている場合に、消費電力量比率が所定の設定値以下であり、かつ低評価機器よりも運転時間が短い高評価機器と運転スケジュールを入れ替えることで、低評価機器の運転時間を短縮し、その短縮時間分について、高評価機器の運転時間を拡張して埋め合わせできるように、運転スケジュール11eを自動調整することが可能となり、処理性能が高い機器(省エネルギーが期待される機器)の稼動を優先させることができる。
なお、上述の例では、一つのステップで、消費電力量比率によって評価された1台の低評価機器と1台の高評価機器の運転スケジュールを入れ替える場合について説明したが、実施の形態3において述べたように、低評価機器が1台または複数台、高評価機器が1台または複数台のいかなる組み合わせであっても、低評価機器の短縮した運転時間分だけ、高評価機器側で運転時間を延長させるようにスケジュールを修正することが可能であることは言うまでもない。
【0049】
実施の形態6.
上述の実施の形態1〜5においては、統合維持管理システム1は、修正後の運転スケジュールを監視制御装置7に設定するための機能として運転時刻設定機能4を備えていたが、この実施の形態6では、運転時刻を入力して機器をスケジュール運転させるのではなく、プラントデータ中の所定の運転制御データを定めて、この運転制御データが所定の閾値(制御閾値)よりも大きいか小さいかで運転期間を決める。そのため、図17の統合維持管理システム1およびその周囲の構成を示す構成図にあるように、運転時刻設定機能4に代えて運転制御閾値設定機能4aを備えている。例えばポンプ井に備えられた複数のポンプを稼動させるための運転制御データとして、水位が設定されている場合がある。
【0050】
この実施の形態6による統合維持管理システム1は、複数の機器から収集したデータ(点検データまたはプラントデータ)を保存するデータ収集機能2、データ中の所定の運転制御データに対して複数の閾値を用意して、運転制御データと閾値とを比較した結果により運転する機器の台数を増減させる台数制御を行うように、データから複数の機器の運転状態を評価して順番を付け、機器の運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように複数の機器の運転計画を策定する運転計画策定機能3、複数の機器の各々について、運転計画に基づいて運転の開始及び終了を決める条件である運転制御データに対する閾値を設定する運転制御閾値設定機能4aを備えるように構成されている。
【0051】
複数の機器の運転状態を評価するためのデータとして、図18に示すようなプラントデータテーブル9fが、データ収集機能2のデータベース2aに記録されている場合について説明する。プラントデータテーブル9fは、少なくとも機器名称とその機器に対応する定格出力と消費電力量の属性を有する。図18の例では、複数の機器であるNo1ポンプ〜No4ポンプの定格出力が120である場合において、消費電力量は、No1ポンプが140、No2ポンプが118、No3ポンプが125、No4ポンプが120であることが記録されている。
【0052】
複数の機器であるポンプを台数制御によって運転する場合の台数制御例について図19を用いて説明する。図19(a)に示すように、ポンプ井(水位が、高い順にH2、H1、L1、L2、LLと設定されている。水位のデータが運転制御データに相当し、H2,H1、L1、L2、LLという値が制御閾値に相当する。)に備えられた4台のポンプは、水位LLで1〜4台目のポンプが停止し、水位L2まで液面が上昇した段階で1台目のポンプの運転が開始され、さらに液面が上昇し、L1に達すると2台目のポンプが運転を開始し(1台目は運転中)、同様に、H1まで液面が上昇した段階で3台目のポンプが、H2まで液面が上昇した段階では4台目のポンプも運転開始され全ポンプが運転する状態となる。図19(a)に示す太実線でポンプの運転台数および範囲を模式的に示す。
【0053】
なお、図19(b)は、液面がどのレベル(水位)にあるときに、どのポンプが稼動しているかを示す、ポンプの運転範囲を模式的に示した図であり、液面が水位H2に達した後、H1に到るまでは1〜4台目のポンプが運転され、液面が水位H1に達した後、L1に到るまでは1〜3台目のポンプが運転され、液面が水位L1に達した後、L2に到るまでは1、2台目のポンプが運転され、液面が水位L2に達した後、LLに到るまでは1台目のみのポンプが運転されることが示されている。
【0054】
統合維持管理システム1における運転計画策定機能3には、図20(a)に示すような台数制御における機器の運転順序を定義した運転順序設定10fが保存されている。現在の運転順序設定10fの場合、ポンプの運転順序が、1台目となっているNo1ポンプは、水位がL2以上で運転されるため、他のポンプよりも運転時間が長く、2台目となっているNo2ポンプは、水位がL1以上で運転されるため、2番目に運転時間が長く、3台目のNo3ポンプは、水位がH1以上で運転されるため、3番目に運転時間が長く、4台目のNo4ポンプは、水位がH2以上で運転されるため、この4台のポンプの中で最も運転時間が短くなるように設定されている。
【0055】
図21は、統合維持管理システム1の動作を示すフロー図であり、ステップ70からステップ74の処理で構成される。
データ収集機能3は、データベース装置6から収集したプラントデータをプラントデータテーブル9fに保存する(ステップ70)。
【0056】
次に、運転計画策定機能3において、運転順序設定10fにおける各機器について消費電力量が小さい順に順番を付ける(ステップ71)。ここで消費電力量が小さい順に付ける順番は、プラントデータテーブル9fから機器の定格出力と消費電力量の比率(消費電力量比率=消費電力量/定格出力)を算出し、複数の機器の運転状態を消費電力量比率から評価して、消費電力量比率が小さい順に良好な運転状態であると判断し、順番を付ける。プラントデータテーブル9fから判断すると、最も消費電力量比率が小さいNo2ポンプが1番良好な運転状態であり、No4ポンプが2番、No3ポンプが3番、No1ポンプが4番という順序となっている。
【0057】
次に、機器の運転状態が良好な順に、運転時間が長くなるように、複数の機器の運転順序を入れ替え、図11(b)に示すように、No2ポンプを1台目、No4ポンプを2台目、No3ポンプは3台目、No4ポンプは2台目にそれぞれ運転が開始されるように変更する(ステップ72)。
次に、運転順序設定11fに修正後の運転順序(つまり、運転開始、終了となる制御閾値となる水位。)を設定する(ステップ73)。
全ての運転順序設定について修正完了かどうか判別し(ステップ74)、完了ならば処理を停止し、未完了ならばステップ71に戻る。
処理停止後、運転制御閾値設定機能4aによって、修正した運転順序設定11fを参照し監視制御装置7の運転順序設定を変更する。
【0058】
このように、プラント監視制御システム100からプラントデータを収集し、同一定格出力の機器の中から消費電力量比率が小さい順に機器に順番を付け、運転状態が良好な順序を消費電力量比率が小さい順として判断し、運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように機器の運転順序を変更し、運転状態が良好でない機器の運転時間を短縮するように運転順序設定11fを自動調整することができ、処理性能が高い機器(省エネルギーが期待される機器)の稼動を優先させることができる。
なお、機器の運転状態を判断する指標としては、消費電力量比率のほか機器故障の前兆を示すデータの発生頻度や、機器の故障発生頻度、機器の累計運転時間、機器の処理能力等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態1における、統合維持管理システムおよびその周囲の構成との関係を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による統合維持管理システムに記録された点検データテーブルを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図5】この発明の実施の形態2における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【0060】
【図8】この発明の実施の形態3における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図11】この発明の実施の形態4における、統合維持管理システムに記録された点検データテーブルを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態4による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図13】この発明の実施の形態4における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図14】この発明の実施の形態5における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【0061】
【図15】この発明の実施の形態5による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転スケジュールを示す図である。
【図16】この発明の実施の形態5における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【図17】この発明の実施の形態6における、統合維持管理システムおよびその周囲の構成との関係を示す構成図である。
【図18】この発明の実施の形態6における、統合維持管理システムに記録されたプラントデータテーブルを示す図である。
【図19】この発明の実施の形態6における、機器の運転順序および機器の台数制御例を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態6による統合維持管理システムにて策定された修正前後の運転順序設定を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態6における、統合維持管理システムの処理フローを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0062】
1 統合維持管理システム 2 データ収集機能、
2a、5a、6a データベース 3 運転計画策定機能、
4 運転時刻設定機能 4a 運転制御閾値設定機能、
5 点検システム 6 データベース装置
7 監視制御装置 8 ネットワーク、
9a、9d 点検データテーブル 10a〜10e 運転スケジュール
11a〜11e 運転スケジュール(修正後)、
10f 運転順序設定 11f 運転順序設定(修正後)、
100 プラント監視制御システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データに基づいて複数の上記機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを作成する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転スケジュールに基づいて運転の開始及び終了時刻を設定する運転時刻設定機能を備え、上記運転計画策定機能において、上記データから、複数の上記機器の運転状態を評価し、複数の上記機器のうち、運転状態が所定基準を満たさない上記機器を低評価機器とし、上記低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、運転状態が所定基準を満たす上記機器の一部または全部である高評価機器の運転時間を延長するように、上記運転スケジュールを修正することを特徴とする統合維持管理システム。
【請求項2】
上記データは、複数の上記機器を定期的に点検して得られた点検データであり、上記運転計画策定機能において、上記点検データから複数の上記機器について、個別に、正常または異常の評価を行い、異常と評価された上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項3】
上記データは、複数の上記機器を制御するとともに上記機器の状態を監視する監視制御装置から得られた、上記機器の運転に用いる情報であるプラントデータであり、上記運転計画策定機能において、上記プラントデータから複数の上記機器について、個別に、単位時間当たりの故障発生数を表す故障発生頻度を算出し、上記故障発生頻度が所定値を超える上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項4】
上記データは、複数の上記機器を制御するとともに上記機器の状態を監視する監視制御装置から得られた、上記機器の運転に用いる情報であるプラントデータであり、上記運転計画策定機能において、上記プラントデータから複数の上記機器について、個別に、所定の期間における累計運転時間を算出し、上記累計運転時間が所定値を超える上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項5】
上記データは、複数の上記機器を定期的に点検して得られた点検データであり、上記運転計画策定機能において、上記点検データから複数の上記機器について、個別に、仕様値に対する計測値の比率を示す処理能力値を算出し、上記処理能力値が所定値よりも小さい上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項6】
上記データは、複数の上記機器を制御するとともに上記機器の状態を監視する監視制御装置から得られた、上記機器の運転に用いる情報であるプラントデータであり、上記運転計画策定機能において、上記プラントデータから複数の上記機器について、個別に、定格出力に対する消費電力量の比率を示す消費電力量比率を算出し、上記消費電力量比率が所定値を超える上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項7】
上記運転スケジュールの修正は、上記低評価機器の上記運転スケジュールと、上記低評価機器よりも運転時間が短い上記高評価機器の上記運転スケジュールの入れ替えによってなされることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の統合維持管理システム。
【請求項8】
複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データ中の所定の運転制御データに対して複数の閾値を用意して、上記運転制御データと上記閾値とを比較した結果により運転する上記機器の台数を増減させる台数制御を行うように、上記データから複数の上記機器の運転状態を評価して順番を付け、上記機器の運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように複数の上記機器の運転計画を策定する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転計画に基づいて運転の開始及び終了の条件である上記運転制御データに対する上記閾値を設定する運転制御閾値設定機能を備えることを特徴とする統合維持管理システム。
【請求項1】
複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データに基づいて複数の上記機器の一運転周期内の運転時間帯を定めた運転スケジュールを作成する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転スケジュールに基づいて運転の開始及び終了時刻を設定する運転時刻設定機能を備え、上記運転計画策定機能において、上記データから、複数の上記機器の運転状態を評価し、複数の上記機器のうち、運転状態が所定基準を満たさない上記機器を低評価機器とし、上記低評価機器の運転時間を短縮し、この短縮した運転時間を埋め合わせるように、運転状態が所定基準を満たす上記機器の一部または全部である高評価機器の運転時間を延長するように、上記運転スケジュールを修正することを特徴とする統合維持管理システム。
【請求項2】
上記データは、複数の上記機器を定期的に点検して得られた点検データであり、上記運転計画策定機能において、上記点検データから複数の上記機器について、個別に、正常または異常の評価を行い、異常と評価された上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項3】
上記データは、複数の上記機器を制御するとともに上記機器の状態を監視する監視制御装置から得られた、上記機器の運転に用いる情報であるプラントデータであり、上記運転計画策定機能において、上記プラントデータから複数の上記機器について、個別に、単位時間当たりの故障発生数を表す故障発生頻度を算出し、上記故障発生頻度が所定値を超える上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項4】
上記データは、複数の上記機器を制御するとともに上記機器の状態を監視する監視制御装置から得られた、上記機器の運転に用いる情報であるプラントデータであり、上記運転計画策定機能において、上記プラントデータから複数の上記機器について、個別に、所定の期間における累計運転時間を算出し、上記累計運転時間が所定値を超える上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項5】
上記データは、複数の上記機器を定期的に点検して得られた点検データであり、上記運転計画策定機能において、上記点検データから複数の上記機器について、個別に、仕様値に対する計測値の比率を示す処理能力値を算出し、上記処理能力値が所定値よりも小さい上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項6】
上記データは、複数の上記機器を制御するとともに上記機器の状態を監視する監視制御装置から得られた、上記機器の運転に用いる情報であるプラントデータであり、上記運転計画策定機能において、上記プラントデータから複数の上記機器について、個別に、定格出力に対する消費電力量の比率を示す消費電力量比率を算出し、上記消費電力量比率が所定値を超える上記機器を上記低評価機器とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の統合維持管理システム。
【請求項7】
上記運転スケジュールの修正は、上記低評価機器の上記運転スケジュールと、上記低評価機器よりも運転時間が短い上記高評価機器の上記運転スケジュールの入れ替えによってなされることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の統合維持管理システム。
【請求項8】
複数の機器から収集したデータを保存するデータ収集機能、上記データ中の所定の運転制御データに対して複数の閾値を用意して、上記運転制御データと上記閾値とを比較した結果により運転する上記機器の台数を増減させる台数制御を行うように、上記データから複数の上記機器の運転状態を評価して順番を付け、上記機器の運転状態が良好な順に運転時間が長くなるように複数の上記機器の運転計画を策定する運転計画策定機能、複数の上記機器の各々について、上記運転計画に基づいて運転の開始及び終了の条件である上記運転制御データに対する上記閾値を設定する運転制御閾値設定機能を備えることを特徴とする統合維持管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−157624(P2009−157624A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334663(P2007−334663)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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