説明

絶縁された円形ワイヤに識別表示を印刷する印刷装置

【課題】転写装置を用いて識別表示を絶縁されたワイヤに印刷する印刷装置。
【解決手段】転写装置は、ワイヤの一部を収容する第1の手段を持つ第1のダイ半片と、第1の手段の側を向く溝およびヒータ装置を持つ第のダイ半片と、前記第1のダイ半片と第2のダイ半片との間の間隔を狭め、又、前記第1のダイ半片と第2のダイ半片との間の間隔を広げる手段とを含む。ワイヤを第1の手段に挿入した後、第1のダイ半片と第2のダイ半片との間の間隔を狭めるときに、識別表示が印刷されている中間転写体がワイヤと第2のダイ半片との間に配置され、中間転写体の少なくとも一部がワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周面の周りに位置し、圧力とヒータ装置による加熱とを受けて、識別表示がワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周面に転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁された円形ワイヤに識別表示を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的または電子的制御装置には、多数のさまざまに異なるワイヤが、各部品またはユニット間の接続部材として用いられる。これらのワイヤは、断面が円形であって、一般に、その外周に絶縁材が配備されている絶縁された円形ワイヤである。例えば、断面が円形であって、その外周に合成樹脂製の外側絶縁材が施されている、絶縁された円形ワイヤである。
【0003】
このようなワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)には、異なる断面積、従って、異なる直径を有する非常に多くのものが有る。この異なる断面積、従って、異なる直径は、例えば、当該ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)を流れる電流密度などに応じて選択される。
【0004】
ここで、このようなワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)において、ワイヤの外周に施される外側絶縁材は、外見からで各ワイヤを分類することができるように、さまざまに異なる色を施されることがある。
【0005】
更に、各ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)の端部(片方の端や、両方の端)に各ワイヤを分類するための識別表示が付されることがある。この識別表示は、通常、ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)が使用される電気的または電子的制御装置の開発者などによって、いかなるワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)を当該電気的または電子的制御装置に使用すべきか設計資料で指定され、製造部門やそのほかのサービス部門が、誤ることなく当該設計資料で指定されたワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)を使用することを容易ならしめる目的で付されるものである。
【0006】
電気的または電子的制御装置・機器の製造量によっては、ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)は、対応する組み合わせダイと識別表示配備装置を用いて、電気的または電子的制御装置・機器内に配線される前に、各ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)の端部(片方の端や、両方の端)に付される。通常の製造の際には、自動的な識別表示配備技術とバンドリング技術を用いて、ユニットまたは設備全体に用いるワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)の全体的な作成を行う。そのためには電子的データ処理に関する設計資料を用いて、データを編集、供給する。
【0007】
自動的な識別表示配備装置は、識別表示を各ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)の端部に配備する、例えば、識別表示を各ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)の端部に印刷するため、溶剤を含むインクを用いながら、技術的に複雑なインクジェットプリンタを利用する。これによって、識別表示が文字からなる場合に、その文字の一部又は全部を、ワイヤ(絶縁された円形ワイヤ)の端部の表面の周りに塗布、印刷する。
【0008】
製造量が比較的小さいとき、比較的容易に用いられる識別表示配備技術は、ワイヤに粘着性のラベルを貼ることである。このラベルは、通常の熱転写印刷によって印刷され、続いてワイヤに巻き付けられて貼付される。
【0009】
その他、末端に複数の穴を持つ、幅が狭くて薄いプラスチックラベルを用いることが公知である。このプラスチックラベルは、識別表示のための文字表示が、例えば熱転写印刷または手書きによって行われている。ワイヤは2つの穴を順次通され、これにより外側にテキストを書かれたラベルがワイヤに固定される。
【0010】
その他、公知のものとして、すでに文字または数字を1つずつ事前に印刷されたチューブ、または横からスリットの入ったチューブをかぶせて行う、円形ワイヤの識別表示配備技術がある。この方法の場合、識別表示配備のため、多数の個別のチューブを、順次ワイヤにかぶせなければならない。それぞれのワイヤ直径に応じて、さまざまな直径のチューブが用いられる。
【0011】
上記の解決法に類似するものとして、熱収縮チューブ片をワイヤにかぶせるという方法がある。この識別表示配備技術には、文字を1つずつ記載した個別のチューブを用いることと比較して、熱収縮チューブ末端に、識別表示全部を施すことができるという、大きな利点がある。熱収縮チューブの印刷は、熱転写印刷機を用いる方法が公知である。
【0012】
ここに挙げた識別表示配備法は、複雑なインクジェットプリンタを例外としてその他すべて、断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材に直接印刷するのではなく、文字表示されていて、続いて、断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材に適切な方法で固定されるものを、何らか追加して用いる。
【0013】
断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材に直接印刷できる、もう1つの公知の印刷方法は、フォイルスタンピング機を用い、主としてホットスタンピング技術に従って動作する。フォイルスタンピング機には、ワイヤ直径に適合されたスタンプホイールに文字または数字を事前に成形したものが、組み込まれている。複数のスタンプホイールがフォイルスタンピング機に取り付けられ、それぞれ回転、調整され、複数桁の識別表示が作成される。これらのスタンプホイールは、相応の温度で加熱される。フォイルスタンピング機を閉じるとともに、スタンプホイールは、印刷される断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周と接触し、スタンプホイールが持つ輪郭を、通常のホットスタンプフォイルを介して、カラーで直接に断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周表面に転写する。
【0014】
この技術で有利な点は、断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周表面に直接印刷されることである。しかし、個々の文字ごとに各スタンプホイールの機械的調整を行うため、取り扱いは非常に手間がかかる。またいずれのスタンプホイールも、文字の大きさが固定され、文字のストックもきわめて小量でかつ限られている。
【0015】
断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周に印刷する印刷方法のリストアップから認められるのは、通常知られている印刷技術は、平らな印刷表面での使用を前提とするため、断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周表面で使用すると、印刷に円滑性が欠けることである。
【特許文献1】特開2002−254735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の技術的課題は、冒頭に挙げた印刷装置を形成するに当たって、手間のかかる設計や取り扱いを回避しながら、断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周表面の指定の箇所に、任意の識別表示を印刷できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明は、
転写装置を用いて識別表示23を、絶縁されたワイヤ16に印刷する印刷装置であって、
当該転写装置は、
ワイヤ16の一部を収容する第1の手段を持つ第1のダイ半片5と、
当該第1の手段の側を向く溝3およびヒータ装置26を持つ第2のダイ半片4と、
前記第1のダイ半片5と第2のダイ半片4との間の間隔を狭め、又、前記第1のダイ半片5と第2のダイ半片4との間の間隔を広げる手段とを含み、
ワイヤ16を第1の手段に挿入した後、前記第1のダイ半片5と第2のダイ半片4との間の間隔を狭めるときに、識別表示が印刷されている中間転写体7が当該ワイヤ16と第2のダイ半片4との間に配置され、当該中間転写体7の少なくとも一部がワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周面の周りに位置し、圧力とヒータ装置26による加熱とを受けて、識別表示23がワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周面に転写される印刷装置である。
【0018】
請求項2記載の発明は、
前記印刷装置が、識別表示を中間転写体7に印刷する印刷モジュール1、2と、中間転写体7を転写装置に搬送する搬送手段9、25とを持つことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置である。
【0019】
請求項3記載の発明は、
前記印刷装置が、前記第1のダイ半片5と第2のダイ半片4の間で中間転写体7を正しく位置決めする手段10、11を持つことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置である。
【0020】
請求項4記載の発明は、
前記中間転写体7が再転写フィルムとして形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置である。
【0021】
請求項5記載の発明は、
前記印刷モジュール1、2が中間転写体7に印刷するための感熱プリンタ1を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の印刷装置である。
【0022】
請求項6記載の発明は、
前記ワイヤ16が円形ワイヤからなり、前記溝3がほぼ断面半円形に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷装置である。
【0023】
請求項7記載の発明は、
前記第1のダイ半片5と第2のダイ半片4は、それぞれ異なるワイヤ直径用の大きさが異なる複数の溝3を横に順次並べて備えており、当該第1のダイ半片5及び第2のダイ半片4における複数の溝3は、前記第1のダイ半片5と第2のダイ半片4とが対向した際に、それぞれ対応する大きさの溝3同士が対向するように配備されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷装置である。
【0024】
請求項8記載の発明は、
前記第2のダイ半片4をレバーシステム19〜22を介して手動で第1のダイ半片5に向かって動かすことができることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷装置である。
【0025】
請求項9記載の発明は、
前記第2のダイ半片4を、モータまたは空気圧の駆動装置によって第1のダイ半片5に向かって動かすことができることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷装置である。
【0026】
請求項10記載の発明は、
印刷モジュールと、当該印刷モジュールに割り当てられた転写装置とが2つ横にならんで配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷装置である。
【0027】
請求項11記載の発明は、
前記第1のダイ半片5が前期転写装置に送り込み可能かつ転写装置から引き出し可能なキャリッジとして形成され、あるいはそのようなキャリッジ27に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の印刷装置である。
【0028】
請求項12記載の発明は、
前記第1のダイ半片5にワイヤ16を固定する手段が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の印刷装置である。
【0029】
請求項13記載の発明は、
前記溝3が横方向に扁平な輪郭を持つことを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の印刷装置である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の利点は、識別表示を、まず第1の転写プロセスで、平らに保持された中間転写体に印刷し、次にこの中間転写体が柔軟であることに基づき、第2の転写プロセスでワイヤの円形面、すなわち、断面が円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周に識別表示を問題なく転写できることである。
【0031】
もう1つの利点は、中間転写体の生成に、次のような市販の感熱プリンタを利用でることである。すなわち一般に市販されているインタフェースを取り付け、このインタフェースが、キーボード操作できるコンピュータとの接続に用いられる、このような感熱プリンタである。したがって印刷される識別表示の情報は、キーボードを持つコンピュータ、例えば、ラップトップコンピュータを用いて、容易にプリンタに転送できる。これにより本発明による印刷装置は、さまざまな直径のワイヤに印刷できて操作が容易な、比較的小さいポータブル機器として、形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、絶縁された円形ワイヤに識別表示を直接印刷するための、次のような印刷装置に関する。
【0033】
この印刷装置は、中間転写体である再転写フィルムに識別表示を印刷する印刷モジュールと、当該再転写フィルムに印刷されている識別表示を転写装置によって円形ワイヤに転写するために、識別表示が印刷された再転写フィルムを転写装置に搬送する搬送装置を備えている。
【0034】
転写装置は、2つのダイ半片(ダイ下半片とダイ上半片)を備えており、これらダイ半片(ダイ下半片とダイ上半片)は、さまざまな直径のワイヤのため、複数の断面半円形の溝を持つ。ダイ下半片は円形ワイヤを収めるための仕様であり、ダイ上半片にはヒータを設け、そして識別表示を持つ再転写フィルムとともにワイヤをかこむために、ダイ下半片とダイ上半片とを接近させることができる。
【0035】
この結果、ダイ下半片とダイ上半片とが印刷されるワイヤを中心として組み合わされ、この際、識別表示が印刷されている再転写フィルムがワイヤの上側とダイ上半片との間に案内されていて、圧力と熱を受け、再転写フィルムに印刷されている識別表示がワイヤの外周表面に印刷される。
【0036】
この印刷装置は、キーボード操作可能なコンピュータへの市販の接続部を持つので、印刷される識別表示を、容易かつ任意に作成、形成することができる。
【0037】
以下では、好ましい実施例について、添付の図面を引用しながら、本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0038】
図1は、本発明の印刷装置に採用される転写装置の基本原理を説明する模式的な斜視図である。
【0039】
この転写装置によって、断面円形のワイヤの外周に配備されている絶縁材の外周表面に印刷、具体的には、転写印刷が行われる。
【0040】
ダイ上半片4およびダイ下半片5を備えている転写装置と、断面が円形のワイヤ16とが図示されている。
【0041】
ダイ下半片5が第一のダイ半片として機能し、ダイ上半片4が第二のダイ半片として機能する。
【0042】
ダイ上半片4は、図1中、その下側面に複数の溝3を、ダイ下半片5は、図1中、その上側面に複数の溝3を備えている。
【0043】
ダイ上半片4の下側面に配備されている複数の溝3及び、ダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3は、いずれも、図1に示すように、識別表示23の印刷処理を受けるワイヤ16が延びる方向に延び、各ダイ上半片4およびダイ下半片5において隣接して互いに平行に延びている各溝3は、異なる径を有する断面半円形になっている。図1図示の例では、ダイ上半片4、ダイ下半片5のいずれにおいても、図1中、右側に配備されている溝3の径が一番大きく、左側に向かうに従って、溝3の径が小さくなっている。
【0044】
そして、ダイ上半片4の下側面に配備されている複数の溝3と、ダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3とは、図1図示のようにダイ上半片4とダイ下半片5とが組み合わされたときに、互いに対向する、ダイ上半片4の下向き側の溝3と、ダイ下半片5の上向き側の溝3とによって所定の形状、例えば、円形状の孔が構成され、この所定の形状が、ダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3にその一部(すなわち、下側部分)が収容されて識別表示23の印刷処理を受けるワイヤ16の断面形状、例えば、円形の断面形状に対応するようになっている。
【0045】
図1図示の実施形態では、外周に配備されている絶縁材の外周の表面に印刷処理を受けるワイヤ16は断面円形であって、すなわち、ワイヤ16は、絶縁された円形ワイヤであって、ダイ上半片4の下側面に配備されている複数の溝3、ダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3は、これに対応して、断面が半円形になっている。
【0046】
前記のダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3が、ワイヤ16の一部(すなわち、下側部分)を収容する第一の手段に該当する。
【0047】
また、ダイ上半片4の下側面に配備されている複数の溝3は、ダイ下半片5が備えている、ワイヤ16の一部(すなわち、下側部分)を収容する第一の手段たるダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3の側を向いていることになる。
【0048】
外周に配備されている絶縁材の外周の表面に印刷処理を受けるワイヤ16は、ダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3の中で、当該ワイヤ16の断面形状の大きさに対応する大きさ、例えば、適合する大きさの溝3に収容され、保持される。
【0049】
ダイ上半片4はヒータ装置26(図2)を備えている。例えば、図1図示のように、ダイ上半片4は孔12を備えており、この孔12の中にヒータ装置26が配備されている。これによって、ダイ上半片4はヒータ装置26から加熱される。
【0050】
図1図示のように、ダイ下半片5の上側面に配備されている複数の溝3の中の大きさが適合する溝3に識別表示23の印刷処理を受けるワイヤ16の一部(すなわち、下側部分)が収容され、ダイ上半片4とダイ下半片5とが組み合わされるとき、例えば、図1中、ダイ上半片4がダイ下半片5方向に向かって下降することにより、ダイ上半片4とダイ下半片5とが組み合わされるとき、図1中、ダイ上半片4の下側であって、ワイヤ16の上側に、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23が既に印刷されている中間転写体たる再転写テープ、例えば、再転写リボン7が案内されているようになっている。
【0051】
そして、図1中、ダイ上半片4がダイ下半片5方向に更に向かって下降することにより、ワイヤ16が、対向している、ダイ上半片4の下向き側の溝3と、ダイ下半片5の上向き側の溝3とによって包囲されると、再転写リボン7から、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に識別表示23が、圧力と熱によって印刷される、すなわち、転写される。
【0052】
本発明の2つの実施例を図2および3に示し、下記に詳しく説明する。
【0053】
図2に例示する本発明の印刷装置は、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23を前述した中間転写体たる再転写テープ、例えば、再転写リボン7に印刷する印刷モジュールたるサーマルプリントヘッド、例えば、感熱プリンタ1と、印刷ローラ2とを備えている。
【0054】
印刷ローラ2は、スウィングアーム18に固定され、軸受15に対して、当該軸受15を中心に回転可能に取り付けられている。
【0055】
スウィングアーム18には、つめ17により弾性をもって圧迫するプリロードがかかり、これにより印刷ローラ2は、軸受15を中心にして、図2中、時計回り方向に回転するように付勢されている。そして、これによって、印刷ローラ2は、感熱プリンタ1に押し付けられるようになっている。
【0056】
インクリボンである熱転写リボン24は、供給リール6から、印刷ローラ2と感熱プリンタ1の間を通って、巻き取りリール8に案内される。
【0057】
再転写リボン7は、供給リール25から、やはり印刷ローラ2と感熱プリンタ1の間を通って、さらにガイド10、ガイド11を経由して、水平に、図1を用いて説明した転写装置のダイ上半片4とダイ下半片5の間を通り、巻き取りリール9に案内される。
【0058】
再転写リボン7の搬送は、モータを持つ駆動装置13により、供給リール25から巻き取りリール9へと行われる。
【0059】
供給リール25、巻き取りリール9は、中間転写体たる再転写テープ、例えば、再転写リボン7を、ダイ上半片4およびダイ下半片5を備えている転写装置(図1)に搬送する搬送手段としての役割を果たす。
【0060】
前述した両者のリボン、すなわち熱転写リボン24と再転写リボン7は、感熱プリンタ1と印刷ローラ2との間で接触するので、熱転写リボン24及び再転写リボン7の搬送中にこの領域で、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23が再転写リボン7に印刷される。
【0061】
ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23が再転写リボン7に印刷された後、再転写リボン7はダイ上半片4とダイ下半片5との間の正しい位置まで搬送される。
【0062】
中間転写体たる再転写テープ、例えば、再転写リボン7の搬送と同時に、インクリボンである熱転写リボン24が搬送されて、ここには図示しない、熱転写リボン24搬送用の駆動装置によって、巻き取りリール8に巻き取られる。
【0063】
このように本発明の印刷装置においては、感熱プリンタ1と印刷ローラ2とを備えている、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23を中間転写体たる再転写リボン7に印刷する印刷モジュールに、図1を用いて説明したダイ上半片4とダイ下半片5とを備えている転写装置が割り当てられて構成されている。すなわち、感熱プリンタ1と印刷ローラ2とを備えている印刷モジュールに、ダイ上半片4とダイ下半片5とを備えている転写装置が組み合わされて構成されている。
【0064】
ダイ上半片4の孔12の中には、前述したようにヒータ装置26が配備されている。ヒータ装置26は、例えば、サーマルセンサを持つカートリッジヒータにすることができる。このサーマルセンサを持つカートリッジヒータは、電気供給系統および制御系統によって加熱されて、所定の動作温度に保たれる。
【0065】
図1および図2には、外周に配備されている絶縁材の外周の表面に識別表示23が転写印刷されるワイヤ16も示されている。断面が円形であって、外周に絶縁材が配備されている、絶縁された円形ワイヤであるところのワイヤ16は、図1図示の転写装置の中において、外周に配備されている絶縁材の外周の表面に識別表示23が印刷される領域が、ダイ上半片4とダイ下半片5の間に存在するようになる。
【0066】
ダイ上半片4は、識別表示23を再転写リボン7からワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷するため、図1中、下側方向に向かって移動する。
【0067】
これによって、再転写リボン7は、ダイ上半片4の下側面に配備されている複数の溝3の中の所定の溝3の内側輪郭(下面側の面)に接触し、これにより、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周における上側半分の部分における表面の周りに位置するようになる。
【0068】
転写印刷が終了した後、ダイ上半片4は図1中、上側方向に向かって移動するので、ダイ上半片4は図1に両方向矢印vで示す方向に移動できるようになっている。
【0069】
また、ダイ上半片4だけを両方向矢印vで示す方向に移動できるようにするだけでなく、ダイ下半片5も、不図示の駆動手段によって両方向矢印vで示す方向に移動できるようにすることができる。
【0070】
あるいは、ダイ上半片4を不動とし、ダイ下半片5だけを両方向矢印vで示す方向に移動できるようにすることもできる。
【0071】
前述したダイ上半片4の移動、あるいはダイ下半片5の移動、若しくはダイ上半片4及びダイ下半片5双方の移動は、いずれも、手動で、あるいは、不図示のモータまたは空気圧の駆動装置などによって行わせることができる。
【0072】
この前述したダイ上半片4の移動、あるいはダイ下半片5の移動、若しくはダイ上半片4及びダイ下半片5双方の移動を行わせる手段が、第1のダイ半片であるところのダイ下半片5と、第2のダイ半片であるところのダイ上半片4との間の間隔を狭め、又、広げる手段ということになる。
【0073】
図3は、本発明の他の実施形態として、二つの印刷装置が配備されている例を説明するものである、すなわち、図2を用いて説明した、感熱プリンタ1と印刷ローラ2とを備えている印刷モジュールに、ダイ上半片4とダイ下半片5とを備えている転写装置が割り当てられて構成されている(すなわち、組み合わされて構成されている)印刷装置が二つ配備されている例を説明するものである。
【0074】
二つの印刷装置は、図3図示のように横に並んで配置されている。すなわち、二つの印刷装置は、互いに平行に配置されている。二つの印刷装置は、平行に延びる印刷のために用いられる。
【0075】
二つの印刷装置は、それぞれ、互いに異なる色、例えば、黒と白の再転写リボン7を備える構成にすることができる。このようにすれば、図3中、右または左の印刷装置を選択することによって、ワイヤ16の外周に配備されている異なる色の絶縁材の外周に、コントラストに富んだ識別表示23を塗布できる。
【0076】
図3中、右側に示した印刷装置では、ダイ上半片4‐1が、上昇位置にある。この上昇位置、すなわち休止ポジションでは、感熱プリンタ1と印刷ローラ2との間で熱転写リボン24と再転写リボン7とが接触し、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23が再転写リボン7に印刷される動作と、駆動装置13による供給リール25から巻き取りリール9への再転写リボン7の搬送動作とが行なわれる。
【0077】
図3中、左側に示した印刷装置では、ダイ上半片4‐2が、下降位置にある。この下降位置では、再転写リボン7から、絶縁された円形ワイヤであるところのワイヤ16‐3への識別表示23の転写印刷が行われる。
【0078】
図3にはレバー19も図示されている。レバー19はループスプリング22とともに、ベアリングピン21を中心に回転可能に軸受されている。そして手動で作動されて、図3に符号20で示す位置に配置されると、ループスプリング22のスプリング圧に抗して、図3中、左側に示した印刷装置におけるダイ上半片4‐2を、図3中、下側方向に向かって押し下げる。
【0079】
そこで、図3中、左側に示した印刷装置におけるダイ上半片4‐2は、ダイ下半片5とともに、外周に配備されている絶縁材の外周の表面に識別表示23が印刷される絶縁された円形ワイヤであるところのワイヤ16‐3を取り囲む。この際、前述したように、再転写リボン7は、ダイ上半片4−2の下側面に配備されている複数の溝3の中の所定の溝3の内側輪郭(下面側の面)に接触し、これにより、ワイヤ16−3の外周に配備されている絶縁材の外周における上側半分の部分における表面の周りに位置するようになる。
【0080】
第一のダイ半片であるところのダイ下半片5と、第二のダイ半片であるところのダイ上半片4‐2は、このポジションである程度の時間、レバー19がループスプリング22のスプリング圧に抗してダイ上半片4‐2を図3中下側方向に向かって押し下げていることにより、ワイヤ16‐3に向かう力を受ける。
【0081】
ここで、第二のダイ半片であるところのダイ上半片4‐2は、前述したように、ヒータ装置26を備えているので、これによって加熱され、これによるダイ上半片4‐2の熱の作用が発揮されて、識別表示23がワイヤ16−3の外周に配備されている絶縁材の外周に転写され、印刷される。
【0082】
第一のダイ半片であるところのダイ下半片5、第二のダイ半片であるところのダイ上半片4−1、4‐2は、図3に示すように、外径がさまざまに異なる円形ワイヤ16−1、16−2、16−3用に、さまざまに異なる径を持ちながら隣接して互いに平行に延びる複数の溝3を備えている。
【0083】
図3において、図示されている右側の印刷装置、左側の印刷装置とも、5つの異なるワイヤ直径用にそれぞれ5本の溝を持つ実施形態が示されている。
【0084】
外周に配備されている絶縁材の外周に識別表示23が印刷されるワイヤは、その直径に応じて、第一のダイ半片であるところのダイ下半片5の対応する溝3に挿入される。例えば、図3の右側の印刷装置では、小さい直径のワイヤ16‐1及び、大きい直径のワイヤ16‐2の一部、すなわち、それぞれの下側部分が、それぞれダイ下半片5の対応する大きさの溝に収容されている。また、図3の左側の印刷装置では、所定の直径のワイヤ16‐3の一部、すなわち、その下側部分が、ダイ下半片5の対応する大きさの溝に収容されている。
【0085】
本発明の印刷装置を用いた本発明の印刷方法は、それ自体公知の熱転写印刷を応用しながら、容易かつ有利な方法として、個々の絶縁された円形ワイヤに識別表示23を印刷することを、一つの印刷プロセスで行うことを可能とする。
【0086】
ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23は、サーマルプリントヘッドであるところの感熱プリンタ1と、印刷ローラ2との間で熱転写リボン24と、中間転写体であるところの再転写リボン7とが接触することにより、まず、再転写リボン7に印刷される。
【0087】
識別表示23の印刷は、このように、第1の転写プロセスによって、まず、再転写リボン7に行われる。こうして第1の転写プロセスによって、サーマルプリントヘッドであるところの感熱プリンタ1を用いて熱転写印刷が行われた後、再転写リボン7は転写装置の中に搬送され、再転写リボン7に印刷された識別表示23が、ダイ下半片5の対応する溝3に一部、すなわち、下側部分が収容されているワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周表面における識別表示23を印刷すべき位置に対応する位置(すなわち、正しい位置)になるように、再転写リボン7は転写装置の中に搬送される。
【0088】
そして、前述したように、ダイ下半片5が不動でダイ上半片4が下側方向に向かって移動することにより、あるいは、ダイ上半片4が不動でダイ下半片5が上側方向に向かって移動することにより、若しくは、ダイ上半片4が下側方向に向かって移動すると共にダイ下半片5が上側方向に向かって移動することにより、ダイ上半片4がダイ下半片5とともに、外周に配備されている絶縁材の外周の表面に識別表示23が印刷される絶縁された円形ワイヤであるところのワイヤ16を取り囲み、この際、前記の再転写リボン7がダイ上半片の下側面に配備されている溝3の内側輪郭(下面側の面)に接触し、これにより、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周における上側半分の部分における表面の周りに位置する。
【0089】
そして、ダイ上半片4がヒータ装置26によって加熱され、これによるダイ上半片4の熱の作用が発揮されて、識別表示23がワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周に転写され、印刷される第2の転写プロセスが、前述した第1の転写プロセスに直接的に続いて実行される。
【0090】
再転写リボン7からワイヤ16の表面、すなわち、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に識別表示23を転写するためには、再転写リボン7を、ダイ上半片の下側面に配備されている溝3の内側輪郭(下面側の面)に合わせて、ワイヤ16の周囲最大180°の範囲に案内し、ダイ上半片4がダイ下半片5とともにワイヤ16を取り囲んだ際に、再転写リボン7がダイ上半片4の下側面に配備されている溝3の内側輪郭(下面側の面)に接触し、これにより、ワイヤ16上側半分の部分における表面の周りに位置するようにする。
【0091】
このために、第一のダイ半片として機能するダイ下半片5と、第二のダイ半片として機能するダイ上半片4という2つの部分を備えている転写装置を設けたものである。
【0092】
ダイ下半片5は、第2の転写プロセスにおける転写の間、ワイヤ16を支持し、ダイ上半片4は、前述したように識別表示23が印刷されている再転写リボン7をダイ上半片4の下側面に配備されている溝3の内側輪郭(下面側の面)に合わせてワイヤ16の表面(ワイヤ16上側半分の部分における表面)にあてがって、再転写リボン7に印刷されている識別表示23を、再転写リボン7からワイヤ16の表面に、圧力と熱によって転写するものである。
【0093】
ダイ上半片4は、ワイヤ16の表面を最大180°まで取り囲み、したがってワイヤ16の輪郭の上側円筒状表面に印刷する。
【0094】
ダイ上半片4にはヒータ装置26が配備されており、例えば、このヒータ装置26は、電子制御系統を用いて、転写に適切な温度を生じる。
【0095】
第二のダイ半片であるところのダイ上半片4は、このヒータ装置26の働きによって、所定の動作温度を維持し、ダイ下半片5が不動でダイ上半片4が下側方向に向かって移動することにより、あるいは、ダイ上半片4が不動でダイ下半片5が上側方向に向かって移動することにより、若しくは、ダイ上半片4が下側方向に向かって移動すると共にダイ下半片5が上側方向に向かって移動することにより、ダイ上半片4がダイ下半片5とともにワイヤ16を取り囲むときは、前述した第1の転写プロセスにより識別表示23が印刷されている再転写リボン7と、ワイヤ16の表面、すなわちワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周表面とを加熱する。
【0096】
この際、使用される再転写リボン7は、一般に、十分に柔軟であって、ダイ上半片4がダイ下半片5とともにワイヤ16を取り囲むときに、ダイ上半片4の下側面に配備されている溝3の内側輪郭(下面側の面)に案内されて、わずかな圧力で、ワイヤ16の表面、すなわちワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周表面に接触するという利点を利用する。
【0097】
したがって、本発明は、一方では、サーマルプリントヘッドであるところの感熱プリンタ1を用いて、再転写リボン7のほぼ平らな面に沿って識別表示23を印刷することを可能にし、他方では、下側面に溝3を持つダイ上半片4を用いて、再転写リボン7に印刷されている識別表示23を円形のワイヤ16の表面、すなわちワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周表面に転写することを可能とする。
【0098】
さまざまな直径のワイヤ16‐1〜16‐3に印刷するために、第一のダイ半片として機能するダイ下半片5及び、第二のダイ半片として機能するダイ上半片4は、いずれも、例えば、図3に図示したように、互いに平行にならんで配置される断面半円形の溝3を複数持ち、このダイ下半片5の上側面に配備される複数の溝3と、ダイ上半片4の下側面に配備される複数の溝3とは、互いに対応する大きさの溝3同士が対向し、ダイ下半片5とダイ上半片4とが図3の左側に図示されている印刷装置のように組み合わされた際に、溝3の大きさに対応する(適合する)直径のワイヤ16が、印刷のため、ダイ上半片4とダイ下半片5とによって取り囲まれる。
【0099】
印刷工程を行うべきワイヤ16を対応する大きさの、ダイ下半片5の上側面に配備される溝3に収容する際には、ダイ下半片5が不動の場合ダイ上半片4を上側方向に向かって移動させることにより、あるいは、ダイ上半片4が不動の場合ダイ下半片5を下側方向に向かって移動させることにより、若しくは、ダイ上半片4を上側方向に向かって移動させると共にダイ下半片5を下側方向に向かって移動させることにより、ダイ下半片5とダイ上半片4とを引き離し、例えば、図4に図示しているように、ワイヤ16を対応する大きさのダイ下半片5の上側面に配備される溝3に収容するための開放されたスペースを確保する。
【0100】
ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周の表面に転写印刷される識別表示23が、サーマルプリントヘッドであるところの感熱プリンタ1と、印刷ローラ2との間で熱転写リボン24と、中間転写体であるところの再転写リボン7とが接触することにより、再転写リボン7に印刷される。この再転写リボン7は、前記の開放されたスペースを利用して、ワイヤ16の長手方向に、案内プーリであるところのガイド10、ガイド11に案内され、これらを経由して、駆動装置13により、供給リール25から巻き取りリール9へと搬送される。
【0101】
このように、第一の転写プロセスで識別表示23が印刷された再転写リボン7を、前記の開放されたスペースを利用して、ワイヤ16の長手方向に案内するガイド10、ガイド11は、中間転写体であるところの再転写リボン7を正しく位置決めする手段、すなわち、再転写リボン7に印刷された識別表示23が、ダイ下半片5の対応する溝3に一部(すなわち、下側部分が)収容されているワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周表面における識別表示23を印刷すべき位置に対応する位置(すなわち、正しい位置)になるように、再転写リボン7を転写装置の中に搬送する際に、中間転写体であるところの再転写リボン7を正しく位置決めする手段としての役割を果たす。
【0102】
これによって、再転写リボン7に印刷された識別表示23が、ダイ下半片5の対応する溝3に一部、すなわち、下側部分が収容されているワイヤ16の外周に配備されている絶縁材の外周表面における識別表示23を印刷すべき位置に対応する位置になるように、再転写リボン7は転写装置の中に搬送され、再転写リボン7はワイヤ16のすぐ上に、そしてワイヤ16の所定の印刷領域に位置する。
【0103】
再転写リボン7は、供給リール25に収められていて、供給リール25から引き出され、同時に巻き取りリール9に巻き取られる。この搬送は、モータを持つ駆動装置13によって、巻き取りリール9へと行われる。
【0104】
識別表示23の印刷は、再転写リボン7をこのように搬送する間に、サーマルプリントヘッドであるところの感熱プリンタ1と、印刷ローラ2との間で熱転写リボン24と、中間転写体であるところの再転写リボン7とが接触することにより、再転写リボン7に対して行われる。
【0105】
図4は、本発明の特に好ましく、これまでで最も良いと思われる実施形態を説明するものである。
【0106】
この実施形態では、ダイ下半片5が、ワイヤ16が延びる方向である長手方向に移動可能な、たとえば、ワイヤ16が延びる方向である長手方向にスライド可能なキャリッジ27に取り付けられている。
【0107】
このキャリッジ27は、ワイヤ16と平行に延びるキャリッジ案内レール28に沿って、手動または自動で、図4中、左右方向に、往復移動可能である。
【0108】
これにより、ダイ半片5をキャリッジ27とともに、印刷装置の内部に位置していて転写工程が行われる図4に符号30で示す位置から、印刷装置の外部に位置していて、図4に符号29で示す位置にまで引き出すことが可能となる。
【0109】
図4に符号29で示す位置では、ダイ下半片5が、キャリッジ27の上にあって自由にアクセス可能なので、識別表示23が印刷されるワイヤ16を、ワイヤ16の一部、すなわち、ワイヤ16の下側部分を収容するためにダイ下半片5の上側面に設けられている溝3に容易に挿入できる。
【0110】
ワイヤ16を、ここには図示しない装置によってダイ下半片5に固定し、続いてキャリッジ27を、ふたたび印刷装置内に、例えば、図2に図示し、図4に符号30で示した転写工程を行う位置に引き込んで、印刷プロセスを実行する。
【0111】
その後ダイ下半片5をあらためて引き出し、印刷済みのワイヤ16を取り外し、新しいワイヤ16を挿入する。
【0112】
ダイ下半片5の溝3にワイヤ16を確実に保持できるよう、このダイ下半片5に、好ましくはクランプ、フック、ベルトなどといった、ワイヤ16を固定する手段を設けることができる。この種の手段のすべてまたは一部を、ダイ下半片5の溝3に備えることができる。
【0113】
キャリッジ27が前述した往復移動を行う間、ダイ上半片4は、例えば、図3の右側の印刷装置で説明したように、上昇位置に位置させることができる。あるいは、ダイ下半片5を下側方向に移動させておいてから、キャリッジ27に前述した往復移動を行なわせることもできる。また、ダイ上半片4を上側方向に移動させ、一方、ダイ下半片5を下側方向に移動させて両者の間に開放されたスペースを確保しておいてから、キャリッジ27に前述した往復移動を行なわせることもできる。
【0114】
図3に示すように、2つ以上の印刷装置を持つ実施形態では、対応する2つ以上のキャリッジ27と、対応する個数の、好ましくは互いに平行な案内レール28を設けることができる。このことを、図3では右側の印刷装置で示す。
【0115】
これに代わる方法として、ダイ下半片5を、それ自体キャリッジとして形成し、案内レール28にその上をスライド可能に取り付けることもできよう。
【0116】
インクリボンであるところの熱転写リボン24および再転写リボン7を駆動するモータは、電気回路で次のようにスイッチングされるのが好ましい。
【0117】
すなわち、プッシュボタンスイッチなどを作動するとき、熱転写リボン24および再転写リボン7は、後続する転写のために必要な量だけ、または再転写リボン7のうち識別表示23を付された部分の配置のために転写装置内で必要となる量だけ搬送されるようにスイッチングされるものとする。
【0118】
本発明は、ここに説明した実施例だけに限定されない。これらの実施例はさまざまに変形することができる。
【0119】
このことは例えば、ダイ上半片4およびダイ下半片5における溝3の本数に当てはまる。あらかじめ選ばれた直径のワイヤ16に識別表示23を印刷するには、通常1本の溝3で十分であろう。
【0120】
この場合、円形ワイヤではなく、そのほかの断面、例えば楕円形断面のワイヤにも印刷できる。
【0121】
この理由からさらには、溝3の輪郭を、ワイヤ16のそれぞれの断面形状に適合させるのが、合目的な場合がある。
【0122】
円形ワイヤに対して印刷を行う場合でも、ダイ上半片4における溝3の輪郭を、円形ではなく、横方向(図3中、左右方向、すなわち、ワイヤ16・溝3が延びる長手方向に直交する方向)に扁平に形成するのが有利である。例えば、円形ワイヤに対して印刷を行う場合でも、ダイ上半片4における溝3の輪郭を、図3中、左右方向、すなわち、ワイヤ16・溝3が延びる長手方向に直交する方向に楕円形に形成するのが有利である。これにより、ワイヤ16の外周に配備されている絶縁材(通常は、PVC製や、ゴム製)のため、側面のスペースが得られる。この側面のスペースは、絶縁材の横方向材料移動が、印刷温度で生じるのを可能にする。
【0123】
またそれが望ましく、あるいは必要ならば、図3で、図2を用いて説明した、感熱プリンタ1と印刷ローラ2とを備えている印刷モジュールに、ダイ上半片4とダイ下半片5とを備えている転写装置が割り当てられて構成されている(すなわち、組み合わされて構成されている)印刷装置を、2つより多く設けることができることも、明らかである。
【0124】
そのほか印刷プロセスを広範囲に自動化するための追加的な措置を意図することができるが、これにはワイヤの挿入または交換、およびキャリッジ27のスライドが含まれる。
【0125】
さらには、図1における第一のダイ半片であるダイ下半片5を上部に、そして第二のダイ半片であるダイ上半片4を下部に配置することも可能であろう。あるいは、図1における第一のダイ半片であるダイ下半片5と、第二のダイ半片であるダイ上半片4とを横に並べて配置することも可能であろう。
【0126】
そしてまたさまざまな諸特徴を、ここに説明、図示した組み合わせと異なる組み合わせで応用できることも自明である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の印刷装置に採用される転写装置の基本原理を説明する模式的な斜視図。
【図2】本発明の印刷装置の一例を説明する側面図。
【図3】本発明の印刷装置の他の例を説明する正面図。
【図4】本発明の印刷装置の更に他の例を説明する側面図。
【符号の説明】
【0128】
1 感熱プリンタ
2 印刷ローラ
3 溝
4 ダイ上半片
5 ダイ下半片
6 供給リール
7 再転写リボン
8 巻き取りリール
9 巻き取りリール
10、11 ガイド
16 ワイヤ
26 ヒータ装置
23 識別表示
24 熱転写リボン
25 供給リール
27 キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写装置を用いて識別表示(23)を、絶縁されたワイヤ(16)に印刷する印刷装置であって、
当該転写装置は、
ワイヤ(16)の一部を収容する第1の手段を持つ第1のダイ半片(5)と、
当該第1の手段の側を向く溝(3)およびヒータ装置(26)を持つ第2のダイ半片(4)と、
前記第1のダイ半片(5)と第2のダイ半片(4)との間の間隔を狭め、又、前記第1のダイ半片(5)と第2のダイ半片(4)との間の間隔を広げる手段とを含み、
ワイヤ(16)を第1の手段に挿入した後、前記第1のダイ半片(5)と第2のダイ半片(4)との間の間隔を狭めるときに、識別表示が印刷されている中間転写体(7)が当該ワイヤ(16)と第2のダイ半片(4)との間に配置され、当該中間転写体(7)の少なくとも一部がワイヤ(16)の外周に配備されている絶縁材の外周面の周りに位置し、圧力とヒータ装置(26)による加熱とを受けて、識別表示(23)がワイヤ(16)の外周に配備されている絶縁材の外周面に転写される印刷装置。
【請求項2】
前記印刷装置が、識別表示を中間転写体(7)に印刷する印刷モジュール(1、2)と、中間転写体(7)を転写装置に搬送する搬送手段(9、25)とを持つことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置が、前記第1のダイ半片(5)と第2のダイ半片(4)の間で中間転写体(7)を正しく位置決めする手段(10、11)を持つことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記中間転写体(7)が再転写フィルムとして形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷モジュール(1、2)が中間転写体(7)に印刷するための感熱プリンタ(1)を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ワイヤ(16)が円形ワイヤからなり、前記溝(3)がほぼ断面半円形に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1のダイ半片(5)と第2のダイ半片(4)は、それぞれ異なるワイヤ直径用の大きさが異なる複数の溝(3)を横に順次並べて備えており、当該第1のダイ半片(5)及び第2のダイ半片(4)における複数の溝(3)は、前記第1のダイ半片(5)と第2のダイ半片(4)とが対向した際に、それぞれ対応する大きさの溝(3)同士が対向するように配備されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第2のダイ半片(4)をレバーシステム(19〜22)を介して手動で第1のダイ半片(5)に向かって動かすことができることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第2のダイ半片(4)を、モータまたは空気圧の駆動装置によって第1のダイ半片(5)に向かって動かすことができることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
印刷モジュールと、当該印刷モジュールに割り当てられた転写装置とが2つ横にならんで配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
前記第1のダイ半片(5)が前期転写装置に送り込み可能かつ転写装置から引き出し可能なキャリッジとして形成され、あるいはそのようなキャリッジ(27)に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項12】
前記第1のダイ半片(5)にワイヤ(16)を固定する手段が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記溝(3)が横方向に扁平な輪郭を持つことを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−260292(P2008−260292A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103535(P2008−103535)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(508112195)
【氏名又は名称原語表記】Hanzel, Eleonore
【住所又は居所原語表記】Schone Aussicht 16 34359 Reinhardshagen Germany
【Fターム(参考)】