説明

絶縁カバー

【課題】汎用性が高く、対象器具に対してフレキシブルに対応することができる絶縁カバーを提供する。
【解決手段】配電線路における対象器具Xを覆うための絶縁カバー1において、対象器具の形状に対応する形状に組み立て可能とすべく、互いに着脱可能な複数のカバー片2,…を備えて構成される。この構成により、複数のカバー片が互いに着脱できるため、複数のカバー片により、配電線路における対象器具のさまざま形状に対応する形状に組み立てられる。これにより、さまざまな形状の対象器具を外側から覆うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線路における、例えば、碍子、腕金、高圧カットアウトといった対象器具を覆うための絶縁カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電線路における、例えば、図9(a)に示すような碍子X1及び腕金X2や、図9(b)に示すような高圧カットアウトX3といった対象器具を覆うための絶縁カバーとして、フレキシブルに変形可能なシート状の絶縁カバー(例えば、特許文献1及び2)や、対象器具に対応する形状に予め形成される絶縁カバーが知られている(例えば、特許文献3)。
【0003】
そして、前者の絶縁カバーは、対象器具を包み込むと共に、クリップや面ファスナ等にてかかる状態が維持されることにより、対象器具を覆うことができる。また、後者の絶縁カバーは、対象器具を内嵌して、外側から対象器具を覆うことができる。
【特許文献1】実開平5−45846号公報
【特許文献2】実開平3−19219号公報
【特許文献3】特開2001−298839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の絶縁カバー(特に、特許文献3に記載される絶縁カバー)は、予め大きさや形状が決められており、汎用性に乏しい。したがって、各対象器具に適したそれぞれの絶縁カバーを準備する必要があるため、対象器具に対してフレキシブルに対応することができない。
【0005】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、汎用性が高く、対象器具に対してフレキシブルに対応することができる絶縁カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る絶縁カバーは、配電線路における対象器具を覆うための絶縁カバーにおいて、対象器具の形状に対応する形状に組み立て可能とすべく、互いに着脱可能な複数のカバー片を備えて構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、複数のカバー片が互いに着脱できるため、複数のカバー片により、配電線路における対象器具のさまざま形状に対応する形状に組み立てられる。これにより、さまざまな形状の対象器具を外側から覆うことができる。
【0008】
また、本発明に係る絶縁カバーにおいては、対象器具を内部に収容して覆うべく、箱状に組み立て可能な構成を採用してもよい。
【0009】
かかる構成によれば、さらに、箱状に組み立てることができるため、対象器具を内部に収容することにより、対象器具を覆うことができる。したがって、例えば、従来の(特許文献1及び2に記載される)シート状の絶縁シートにおいては、対象器具に対応して変形させる必要があるといった煩わしさや、対象器具からの位置ずれを防止するためにクリップ等が必要であるという不便さを有していたが、かかる不便さを解消することができる。
【0010】
また、本発明に係る絶縁カバーにおいては、骨組みを構成するための骨材を複数備え、カバー片は、骨材と着脱可能な構成を採用してもよい。
【0011】
かかる構成によれば、複数の骨材で骨組みを構成し、骨材にカバー片を取り付けることにより、例えば、容易に箱状に組み立てることができ、また、例えば、十分な強度を得ることもできる。
【発明の効果】
【0012】
以上の如く、本発明に係る絶縁カバーによれば、対象器具のさまざま形状に対応する形状に組み立てることができるため、さまざまな形状の対象器具を覆うことができ、その結果、汎用性が高く、対象器具に対してフレキシブルに対応することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る絶縁カバーにおける一実施形態について、図1〜図6を参酌して説明する。
【0014】
図1〜図2に示すように、本実施形態に係る絶縁カバー1は、配電線路における対象器具(例えば、碍子、腕金、高圧カットアウト)Xを覆うためのものであって、対象器具Xの形状に対応する形状に組み立て可能とすべく、互いに着脱可能な複数のカバー片2,…を備えて構成される。
【0015】
具体的には、絶縁カバー1は、対象器具Xを内部に収容して覆うべく、箱状に組み立て可能に構成される。また、絶縁カバー1は、骨組みを構成するための骨材3,…を複数備え、カバー片2は、骨材3と着脱可能に構成される。
【0016】
カバー片2は、図3に示すように、絶縁性を有するゴムで、平板状に形成される。具体的には、カバー片2は、矩形状のゴム板状に形成される。また、カバー片2は、全てが同一形状に形成される。
【0017】
そして、カバー片2は、他のカバー片2や骨材3と連結可能とすべく、他のカバー片2の所定部位(後に説明する「被係合部22」)や骨材3の所定部位(後に説明する「被係合部32」)を係合する係合部21と、他のカバー片2の係合部21や骨材3の所定部位(後に説明する「係合部31」)に係合される被係合部22とを備える。
【0018】
さらに、カバー片2は、他のカバー片2や骨材3と連結された際に、開口や隙間を形成しない程度に切欠部23を備える。さらに、カバー片2は、作業者の指や絶縁操作棒にて摘まれるための摘み部24を備える。
【0019】
係合部21は、一方の長辺側の中央部と一方の短辺側の中央部とに開口状に形成され、被係合部22は、他方の長辺側の中央部と他方の短辺側の中央部とに突起状に形成される。具体的には、係合部21は、大孔部21aと小孔部21bとが連設されて形成され、被係合部22は、先端側の大径部22aと基端側の小径部22bが連設されて形成される。
【0020】
また、係合部21は、大孔部21aと小孔部21bとの位置関係(長手方向における位置)が長辺側と短辺側とで相違する。そして、係合部21は、大孔部21aから挿入された被係合部22を小孔部21bに移動させることにより、小孔部21bが被係合部22の小径部22bを係合する。
【0021】
このとき、被係合部22の大径部22aは、カバー片2,2の重なる方向において、他のカバー片2を係止することにより、抜け止めの作用を有する。また、係合部21及び被係合部22は、確実に連結されるべく、ゴムよりも剛性を有して形成される。例えば、係合部21及び被係合部22は、絶縁性を有する硬質樹脂(プラスチック)で形成される。
【0022】
切欠部23は、矩形状における所定の角が切削されて構成される。そして、切欠部23は、隣接するカバー片2,2同士が密接して連結可能となるように構成される(特に図1(b)参照)。また、摘み部24は、外側の中央部に突起状に形成される。具体的には、摘み部24は、幅方向の中央部において、長手方向に沿った突条に形成される。
【0023】
骨材3は、図4及び図5に示すように、断面形状が略L字状であって、長尺に形成される。そして、骨材3は、カバー片2と連結可能とすべく、カバー片2の被係合部22を係合する係合部31と、カバー片2の係合部21に係合される被係合部32とを備える。また、骨材3は、剛性を有し、例えば、絶縁性を有する硬質樹脂(プラスチック)で形成される。
【0024】
骨材3の係合部31は、カバー片2の係合部21と略同形状に形成され、骨材3の被係合部32は、カバー片2の被係合部22と略同形状に形成される。即ち、骨材3の係合部31は、大孔部31aと小孔部31bとが連設されて形成され、骨材3の被係合部32は、先端側の大径部32aと基端側の小径部32bとが連設されて形成される。
【0025】
そして、骨材3の係合部31は、大孔部31aから挿入されたカバー片2の被係合部22を小孔部31bに移動させることにより、小孔部31bがカバー片2の被係合部22の小径部22bを係合する。
【0026】
なお、骨材3の係合部31は、上部又は下部に配置される場合(図3参照)と側部に配置される場合(図4参照)とで、大孔部31aと小孔部31bとの位置が相違する。具体的には、上部又は下部に配置される骨材3の係合部31は、長手方向に大孔部31aと小孔部31bとが連設(並設)されて形成され、側部に配置される骨材3の係合部31は、幅方向に大孔部31aと小孔部31bとが連設(並設)されて形成される。
【0027】
したがって、上記のカバー片2,…や骨材3,…で箱状に形成された絶縁カバー1は、例えば、図1に示すように、碍子X(図9(a)におけるX1)を覆うこともでき、また、図5に示すように、腕金X(図9(a)におけるX2)を覆うこともでき、さらに、図6に示すように、高圧カットアウトX(図9(b)におけるX3)を覆うこともできる。
【0028】
かかる場合、骨材3にて、骨組みとなる上部、下部、及び側部を構成し、カバー片2を、骨材3や他のカバー片2と連結させることにより、内部に対象器具Xを収容可能な直方体状(箱状)の絶縁カバー1を形成する。そして、干渉する部位(例えばケーブルを挿通する部位)には、予めカバー片2を連結することなく、開放させておく。
【0029】
したがって、対象器具Xに対して、上方から絶縁カバー1を被せることにより、容易に覆うことができる。なお、対象器具Xを絶縁カバー1にて覆った後に、干渉するのを防止すべく開放させておいた絶縁カバーの部位に、カバー片2を連結させて、かかる部位を閉塞させてもよい。
【0030】
以上より、本実施形態に係る絶縁カバー1は、複数のカバー片2,…が互いに着脱できるため、複数のカバー片2,…により、配電線路における対象器具Xのさまざま形状に対応する形状に組み立てられる。これにより、さまざまな形状の対象器具Xを覆うことができるため、汎用性が高く、対象器具Xに対してフレキシブルに対応することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る絶縁カバー1は、直方体状の箱状に組み立てることができるため、対象器具Xを内部に収容することにより、対象器具Xを覆うことができる。したがって、対象器具Xに対応して変形させる必要も無く、また、対象器具Xからの位置ずれを防止するためにクリップ等も必要としないため、従来の絶縁カバーが有する不便さを解消することができる。
【0032】
また、上記実施形態に係る絶縁カバー1は、複数の骨材3,…で骨組みを構成し、骨材3にカバー片2を取り付けることにより、容易に箱状に組み立てることができ、また、十分な強度を得ることもできる。
【0033】
なお、本発明に係る絶縁カバーは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0034】
例えば、上記実施形態に係る絶縁カバー1においては、カバー片2がゴム板状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、カバー片が絶縁シート状に形成される場合でもよい。
【0035】
また、上記実施形態に係る絶縁カバー1においては、カバー片2及び骨材3の係合部21,31が開口状に形成され、カバー片2及び骨材3の被係合部22,32が突起状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、カバー片の係合部及び被係合部と、骨材の係合部及び被係合部とが面ファスナで構成される場合でもよい。
【0036】
ここで、図7において、上記二つの構成を採用した場合のカバー片2’の一例を示し、図8において、上記二つの構成を採用した場合の骨材3’の一例を示す。
【0037】
図7に示すように、カバー片2’は、絶縁性を有するシート状に形成される。そして、カバー片2’は、他のカバー片2’や骨材3’と連結可能とすべく、一方面(表面)の周縁部に、係合部21’が設けられ、他方面(裏面)の周縁部に、被係合部22’が設けられる。
【0038】
係合部21’は、パイル状の面の布、即ち、面ファスナの雌部材であり、被係合部22’は、鉤状の突起が一面に設けられる布、即ち、面ファスナの雄部材である。また、カバー片2’は、表面の中央部に、帯状の絶縁シートが両端部を固定されて形成される摘み部24’を備える。
【0039】
また、図8に示すように、骨材3’は、断面形状が略L字状であって、長尺に形成される。そして、骨材3’は、カバー片2’と連結可能とすべく、一方面(表面、外面)の端部に、長手方向に沿って係合部31’,31’が設けられ、他方面(裏面、内面)の端部に、被係合部32’,32’が設けられる。なお、係合部31’は、面ファスナの雌部材であり、被係合部32’は、面ファスナの雄部材である。
【0040】
また、上記実施形態に係る絶縁カバー1においては、直方体状の箱状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、三角柱状や五角柱状といった多角柱状の箱状に形成される場合でもよく、三角錐や五角錐といった多角錐状の箱状に形成される場合でもよく、円柱状や円錐状の箱状に形成される場合でもよく、または、球状の箱状に形成される場合でもよい。
【0041】
また、上記実施形態に係る絶縁カバー1においては、カバー片2が切欠部23を有する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、カバー片が他のカバー片と重なる部位を薄肉に形成される場合でもよい。要するに、切欠部は、必須の構成ではない。
【0042】
また、上記実施形態に係る絶縁カバー1においては、骨材3を有する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、骨材を採用することなく、カバー片2(2’),…のみにより、さまざまな大きさに組み立てられるシート状の絶縁カバーである場合でもよい。即ち、絶縁カバーは、全体が、箱状でなく、シート状に形成される場合でもよい。
【0043】
また、上記実施形態に係る絶縁カバー1においては、骨材3が剛性を有する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、骨材が可撓性を有する場合でもよい。具体的には、骨材は、針金のように、付勢することにより変形し、付勢を解除することにより変形した形状を維持可能に構成される場合でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る絶縁カバーにおける、(a)は碍子を覆う状態の全体斜視図、(b)はA領域における拡大図を示す。
【図2】同実施形態に係る絶縁カバーのカバー片の全体図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る絶縁カバーの上部又は下部に配置される骨材の全体図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。
【図4】本発明の他の実施形態に係る絶縁カバーの側部に配置される骨材の全体図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。
【図5】同実施形態に係る絶縁カバーにおける、腕金を覆う状態の全体斜視図を示す。
【図6】同実施形態に係る絶縁カバーにおける、高圧カットアウトを覆う状態の全体斜視図を示す。
【図7】本発明の他の実施形態に係る絶縁カバーのカバー片の全体図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。
【図8】同実施形態に係る絶縁カバーの骨材の全体図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。
【図9】従来における配電線路における対象器具の要部概略斜視図を示す。
【符号の説明】
【0045】
1…絶縁カバー、2…カバー片、3…骨材、X…対象器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路における対象器具を覆うための絶縁カバーにおいて、対象器具の形状に対応する形状に組み立て可能とすべく、互いに着脱可能な複数のカバー片を備えて構成されることを特徴とする絶縁カバー。
【請求項2】
対象器具を内部に収容して覆うべく、箱状に組み立て可能に構成される請求項1に記載の絶縁カバー。
【請求項3】
骨組みを構成するための骨材を複数備え、カバー片は、骨材と着脱可能に構成される請求項2に記載の絶縁カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−9819(P2010−9819A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165587(P2008−165587)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】