説明

絶縁性高分子材料組成物

【課題】絶縁性能及び機械強度に優れる共に廃棄されても地球環境に悪影響を及ぼさない絶縁性高分子材料組成物の提供。
【解決手段】本発明の絶縁性高分子材料組成物は、非石油由来の原料に硬化剤としてポリフェノールを有する樹脂を添加すると共に硬化促進剤としてイミダゾール類を添加して混練して得た混練物を熱処理により三次元架橋してなる。前記非石油由来の原料としてはエポキシ化植物油からなる樹脂がある。前記エポキシ化植物油からなる樹脂としてはエポキシ化亜麻仁油からなる樹脂がある。前記ポリフェノールを有する樹脂は前記エポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.7〜1.5となるように添加するとよい。前記イミダゾール類は前記エポキシ化亜麻仁油からなる樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部添加するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性高分子材料組成物、特に、高電圧且つ高温になる電力系統の絶縁性高分子材料組成物に適応する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば筐体内に遮断器や断路器等の開閉機器を備えた電圧機器(高電圧機器等)の絶縁構成(例えば、絶縁性を要する部位)に適用(例えば、屋外に直接暴露して適用)される材料として、石油等の化石燃料由来の熱硬化性樹脂(石油を出発物質とした樹脂;エポキシ樹脂等)を主成分とした高分子材料を硬化して成る組成物、例えば高分子材料を注型して成る組成物により構成された製品(モールド注型品;以下、高分子製品と称する)が、従来から広く知られている。
【0003】
また、近年の社会の高度化・集中化に伴い、高電圧機器等の大容量化,小型化や高い信頼性(例えば、機械的物性(絶縁破壊電界特性等),電気的物性)等が強く要求されると共に、前記の高分子製品に対しても種々の特性の向上が要求されてきた。
【0004】
一般的には、高分子材料の主成分として例えばガラス転移温度(以下、Tgと称する)100℃以上の耐熱性エポキシ樹脂や比較的に機械的物性(強度等)の高いビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いた高分子製品が知られているが、前記の高分子製品を処分(例えば、寿命,故障等の理由で処分)する場合を考慮して、生分解性を有する高分子材料から成る高分子製品の開発が試みられている(例えば、特許文献1)。
【0005】
なお、種々の技術分野において、植物等のバイオマス由来の高分子材料を硬化して成る組成物を適用(例えば印刷配線ボードに適用)する試みが行われ(例えば、特許文献2)、例えば室温雰囲気下で使用した場合には十分な機械的物性が得られることが知られているが、その組成物はアルデヒド類を硬化剤として用いたものであり、高温雰囲気下では機械的物性が低くなるため高電圧機器には適用されていなかった。
【特許文献1】特開2002−358829
【特許文献2】特開2002−53699
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、高分子材料の主成分としてガラス転移温度(以下、Tgと称する)100℃以上の耐熱性エポキシ樹脂等を用いて成る高分子製品は、硬く脆弱であり、温度変化が激しい環境下で使用した場合にはクラックが発生し易い恐れがある。このため、例えば高分子材料の主成分として固形エポキシ樹脂(例えば、金属導体を用いた耐クラック性試験の結果が−30℃以下のもの)を用いたり、該高分子材料に多量の充填材を添加して耐クラック性等を向上させる試みが行われているが、その高分子材料の粘度が著しく高くなってしまい、例えば注型作業等において十分なポットライフ(工業的な作業に必要な最低限の時間)を確保できず、作業性が悪化する恐れがある。
【0007】
また、前記のビスフェノールA型のエポキシ樹脂は、機械的物性が高い特性を有することから工業製品として広く使用されているが、そのビスフェノールA自体は環境ホルモンとして有害性を有するものとみなされ、環境性の観点から懸念され始めている。高分子製品のように硬化された組成物中であれば、その組成物中からビスフェノールAが漏出することは殆どなく有害性はないとの報告もあるが、極めて微量(例えば、ppmレベル、またはそれ以下の量)であっても有害性を有する物質であることから、たとえ前記のように組成物中であっても該組成物中に未反応のビスフェノールA(低分子量成分)が存在する場合には、そのビスフェノールAが気中に漏洩してしまう可能性があり、懸念されている。
【0008】
例えば、高分子製品の製造施設において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と種々の添加剤等とを合成する工程や、その合成工程後の高分子材料を注型する工程等の限定された環境下では、高濃度のビスフェノールA雰囲気下になる恐れがある。たとえ前記製造設備の各工程において完全無人化(高分子製品の製造ラインの無人化)を図っても、それら各工程において換気設備(使用環境における空気を浄化するための設備)を要することとなるため(すなわち、従来では想定しなかった換気設備を要するため)、その製品コストの増加を招く恐れがある。
【0009】
前記の高分子製品を処分(例えば、寿命,故障等の理由で処分)する場合については、種々の処理方法を適用することが可能であるが、それぞれ以下に示す問題点がある。
【0010】
石油等の化石燃料由来の物質(例えば、エポキシ樹脂等)を主成分とする高分子材料から成る高分子製品の場合、焼却処理する方法を適用すると種々の有害物質や二酸化炭素を大量に排出し、環境汚染,地球温暖化等の問題を引き起こす恐れがある点で懸念されていた。一方、前記の高分子製品を単に埋立て処理する方法を適用することもできるが、その埋立て処理に係る最終処分場は年々減少している傾向である。この最終処分場の残余年数に関して、旧・厚生省では平成20年頃と試算している。また、旧・経済企画庁では、前記の旧・厚生省の試算に基づいて、平成20年頃に廃棄物処理費用が高騰し、経済成長率が押し下げられると予測している。これらのことから、廃棄されたときの対処がしやすい原料の使用促進は緊急の課題である。
【0011】
本発発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、その目的は絶縁性能及び機械強度に優れる共に廃棄されても地球環境に悪影響を及ぼさない絶縁性高分子材料組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、請求項1記載の絶縁性高分子材料組成物は、非石油由来の原料に硬化剤としてポリフェノールを有する樹脂を添加すると共に硬化促進剤としてイミダゾール類を添加して混練して得た混練物を熱処理により三次元架橋してなることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の絶縁性高分子材料組成物は、請求項1記載の絶縁性高分子材料組成物において、前記非石油由来の原料がエポキシ化植物油からなる樹脂であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の絶縁性高分子材料組成物は、請求項2記載の絶縁性高分子材料組成物において、前記エポキシ化植物油からなる樹脂はエポキシ化亜麻仁油からなる樹脂であることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の絶縁性高分子材料組成物は、請求項3記載の絶縁性高分子材料組成物において、前記エポキシ化亜麻仁油からなる樹脂に添加されるポリフェノールを有する樹脂は前記エポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.7〜1.5となるように添加される共に、前記イミダゾール類は前記エポキシ化亜麻仁油からなる樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部添加されることを特徴とする。
【0016】
請求項記載5の絶縁性高分子材料組成物は、請求項4記載の絶縁性高分子材料組成物において、その体積抵抗率が1.0×1015Ω・cm以上であることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の絶縁性高分子材料組成物は、請求項5記載の絶縁性高分子材料組成物において、そのガラス転移温度が85℃以上であることを特徴とする。
【0018】
請求項1〜6記載の絶縁性高分子材料組成物によれば、非石油原料であるエポキシ化亜麻仁油を主成分とした混練物を熱処理により三次元架橋したことにより、絶縁性能に優れると共に機械強度、特に高温側での機械強度特性に秀でた絶縁性高分子材料組成物を提供できることが確認されている。また、硬化剤としてポリフェノールを有する樹脂、硬化促進剤としてイミダゾール類を用いているので、非石油原料を用いた硬化物として絶縁体としての工業材料適応が実現する。さらには絶縁材料の特性として体積抵抗率が向上することが確認されている。また、主成分であるエポキシ化亜麻仁油は、化石燃料由来でない非石油原料、すなわちバイオマス由来であるので、生分解性である共にカーボンニュートラルである。
【発明の効果】
【0019】
したがって、請求項1〜6記載の絶縁性高分子材料組成物によれば、絶縁性能及び機械強度に優れる共に廃棄されても地球環境に悪影響を及ぼさない絶縁性高分子材料組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
工業材料として要求される特性をほぼ満たすことができるエポキシ樹脂原料は石油に代表される化石燃料由来である。一方、バイオマス由来の原料であって三次元架橋するものは、エポキシ樹脂原料の代替となるばかりでなく、環境ホルモンの問題も解消され、焼却処分されてもカーボンニュートラルであるので、新たに二酸化炭素を発生させるものとはみなされない。
【0021】
本発明に係る絶縁性高分子材料組成物はバイオマス由来のエポキシ樹脂としてエポキシ化植物油からなる樹脂に着目している。すなわち、本発明に係る絶縁性高分子材料組成物は、非石油由来の原料であるエポキシ化植物油からなる樹脂に硬化剤としてポリフェノールを有する樹脂を添加すると共に硬化促進剤としてイミダゾール類を添加して混練して得た混練物を熱処理により三次元架橋してなる硬化物である。
【0022】
前記エポキシ化植物油としては、エポキシ化亜麻仁油が例示される。エポキシ化亜麻仁油はエポキシ化大豆油と同じく、塩化ビニル樹脂における安定剤として広く使用されてきたが、一般的な工業用エポキシ樹脂と比べ反応性に乏しいため硬化に時間を要し、またガラス転移温度特性や機械的物性が低いことから、絶縁材料として検討されることはなかった。
【0023】
本発明に係る絶縁性高分子材料組成物は、前述のようなバイオマス由来であるエポキシ樹脂を主成分としても、石油等の化石燃料由来である従来の工業エポキシ樹脂からなる絶縁性高分子材料組成物と比べて、絶縁性に優れ且つ高温での機械強度にも優れた絶縁性高分子材料を提供できることが見出されている。また、前記エポキシ樹脂はバイオマス由来であので、生態系にとってはカーボンニュートラルであり、本発明に係る絶縁性高分子材料組成物が廃棄されても地球環境に対して悪影響を及ぼさない。
【0024】
前記絶縁性高分子材料組成物において、非石油由来のエポキシ樹脂を構成するエポキシ化植物油としては例えばエポキシ化亜麻仁油が挙げられ、より具体的にはダイセル化学製のエポキシ化亜麻仁油(ダイマックL−500)が例示される。
【0025】
前記硬化剤であるポリフェノールを有する樹脂としては住友ベークライト株式会社製のフェノールホルムアルデヒド型ノボラック(PR−HF−3)が例示される。前記ポリフェノールを有する樹脂の添加量としてはエポキシ化亜麻仁油のオキシラン濃度に基づいてエポキシ当量を計算して化学量論量比に対して0.5〜2.0の範囲で設定するとよい。より好ましくは0.9〜1.5の範囲で設定するとよい。
【0026】
前記硬化促進剤であるイミダゾール類としては四国化成工業株式会社製の2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)が例示される。前記イミダゾールの添加量としては前記エポキシ樹脂100重量部(phr)に対して0.2〜20重量部(phr)で設定するとよい。より好ましくは0.4〜20重量部の範囲で設定するとよい。
【0027】
以上の絶縁性高分子材料組成物によれば、体積抵抗率が1.0×1015Ω・cmであると共にガラス転移温度が85℃以上である絶縁性高分子材料組成物を提供できる。
【0028】
また、前記絶縁性高分子材料組成物の原料グレードは選択例の一つであって、本発明の絶縁性高分子材料組成物に係る原料、硬化剤及び硬化促進剤は前記メーカーグレードに限定されるものではない。そもそもエポキシ化亜麻仁油にフェノール樹脂、イミダゾール類を添加して高温にも耐えうる絶縁、構造材料を検討した例は過去にも見られず、本質的に芳香環と水酸基を有する物質との反応によって得られるものであり、広い意味ではエポキシ化亜麻仁油を含むエポキシ化植物油とポリフェノールとの反応である。
【0029】
また、硬化温度条件の検討は単に目的に合う物性に近づけるためのコントロールであり、温度、時間条件で硬化したものが全く異なる物性を示すものではなく、本発明報告と異なる硬化、温度時間の組み合わせも本発明に係る技術範囲内に属する。さらに、作業性、生産性を改善すべく、反応性を高め、安全にするために添加剤として反応促進剤、抑制剤等も、得られる硬化物の物性に大きな違いがない以上は発明に係る技術範囲に属する。
【0030】
以下に本発明に係る絶縁性高分子材料組成物の実施例について説明する。
【0031】
表1〜表3はエポキシ樹脂にエポキシ化亜麻仁油を採用した絶縁性高分子材料組成物の体積抵抗率とガラス点移転温度と曲げ強度を開示している。また、表4は従来技術に基づく比較例に係る絶縁性高分子材料組成物の体積抵抗率とガラス点移転温度と曲げ強度を開示している。
【0032】
表1〜表3に示された試料は、エポキシ化亜麻仁油からなる樹脂に硬化剤としてポリフェノールを有する樹脂を所定量添加すると共に、硬化促進剤としてイミダゾールを添加して所定量混練した後、この混練物を所定の硬化条件で熱処理して硬化させて得られた絶縁性高分子材料組成物である。組成物の有効性を示すという観点から硬化剤や硬化促進剤の添加量に関わりなく、各試料の硬化条件は150℃、24時間とした。尚、表1〜表3に記載されたphrは重量部を意味する。
【0033】
前記エポキシ化亜植物油にはダイセル化学工業株式会社製のエポキシ化亜麻仁油(ダイマックL−500)が採用された。前記硬化剤としてのポリフェノールを有する樹脂(以下、フェノール樹脂)は住友ベークライト株式会社製のフェノールホルムアルデヒド型ノボラック(PR−HF−3)が採用された。硬化の起点(硬化促進剤)としての前記イミダゾールには四国化成工業株式会社製の2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)が採用された。
【0034】
前記絶縁性高分子材料組成物を評価する指標として、耐熱性を示すガラス転移温度(Tg)、体積抵抗率(JIS−K6911に準拠)、室温及び80℃における曲げ強度(JIS−K7203に準拠)を測定した。
【0035】
表1に示された試料A1〜A8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し0.2重量部の範囲で添加された組成物である。
【0036】
試料B1〜B8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し0.4重量部の範囲で添加された組成物である。
【0037】
試料C1〜C8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し0.8重量部の範囲で添加された組成物である。
【0038】
試料D1〜D8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し1.5重量部の範囲で添加された組成物である。
【0039】
表2に示された試料E1〜E8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し3.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0040】
試料F1〜F8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し5.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0041】
試料G1〜G8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し8.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0042】
試料H1〜H8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し10.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0043】
表3に示された試料I1〜I8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し15.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0044】
試料J1〜J8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し20.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0045】
試料K1〜K8は前記フェノール樹脂がエポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.5〜2.0となるように添加されると共に前記イミダゾールがエポキシ化亜麻仁油100重量部に対し30.0重量部の範囲で添加された組成物である。
【0046】
表4に示された試料Lは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(バンティコ社製のCT200A)に対して、硬化剤として酸無水物(無水フタル酸,日立化成社製のHN2200)を前記エポキシ樹脂100重量部に対して60重量部添加すると共に、硬化促進剤として三級アミン(DMP−30,明電ケミカル社製のL−86)を前記エポキシ樹脂100重量部に対して3重量部添加して混練した後、この混練物に関して温度150℃及び24時間の硬化条件で熱処理して得られた絶縁性高分子材料組成物である。
【0047】
表1〜表3及び表4に示されたガラス転移温度(Tg)と曲げ強度の測定結果から明らかなように、試料A4,B3〜B5,C2〜C6,D2〜D7,E2〜E7,F2〜F7,G2〜G7,H2〜H7,I2〜I7,J3〜J6の体積抵抗率、ガラス点移転温度及び曲げ強度の値は試料Lの値(体積抵抗率(5.8×1014Ω・cm)、ガラス点移転温度(85℃)及び曲げ強度(121MPa(室温),22MPa(80℃)))以上となることが確認された。
【0048】
したがって、試料A4,B3〜B5,C2〜C6,D2〜D7,E2〜E7,F2〜F7,G2〜G7,H2〜H7,I2〜I7,J3〜J6のように、バイオマス由来のエポキシ樹脂に対してフェノール樹脂を所定量添加、特に前記エポキシ樹脂と反応する化学量論比に対し0.7〜1.5となるように添加すると共に、イミダゾール類を所定量添加、特に前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部添加することにより、絶縁性能及び機械強度特に高温のもとでの強度性に優れる絶縁性高分子材料組成物が提供されることが確認された。
【0049】
本発明の絶縁性高分子材料組成物について実施例に基づき詳細に説明したが、本発明はその技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。例えば、バイオマス由来のエポキシ樹脂に硬化剤及び硬化促進剤としてフェノール樹脂及びイミダゾール類が添加された混練物における混練条件や熱処理条件は、前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びイミダゾール類の種類や添加量に応じて適宜設定されるものであり、本実施例で示した内容に限定されるものではない。また、前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミダゾール類の他に、種々の添加剤を適宜用いた場合においても、本実施例に示したものと同様の作用効果が得られることは明らかである。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非石油由来の原料に硬化剤としてポリフェノールを有する樹脂を添加すると共に硬化促進剤としてイミダゾール類を添加して混練して得た混練物を熱処理により三次元架橋してなることを特徴とする絶縁性高分子材料組成物。
【請求項2】
前記非石油由来の原料がエポキシ化植物油からなる樹脂であることを特徴とする請求項1記載の絶縁性高分子材料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化植物油からなる樹脂はエポキシ化亜麻仁油からなる樹脂であることを特徴とする請求項2記載の絶縁性高分子材料組成物。
【請求項4】
請求項3記載の絶縁性高分子材料組成物において、前記エポキシ化亜麻仁油からなる樹脂に添加されるポリフェノールを有する樹脂は前記エポキシ化亜麻仁油と反応する化学量論比に対し0.7〜1.5となるように添加される共に、前記イミダゾール類は前記エポキシ化亜麻仁油からなる樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部添加されることを特徴とする絶縁性高分子材料組成物。
【請求項5】
請求項4記載の絶縁性高分子材料組成物において、その体積抵抗率が1.0×1015Ω・cm以上であることを特徴とする絶縁性高分子材料組成物。
【請求項6】
請求項5記載の絶縁性高分子材料組成物において、そのガラス転移温度が85℃以上であることを特徴とする絶縁性高分子材料組成物。

【公開番号】特開2007−31498(P2007−31498A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213613(P2005−213613)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】