説明

絶縁碍子の検査方法

【課題】絶縁碍子の内部欠陥の有無を、容易かつ精度良く検査することができる絶縁碍子の欠陥検査方法を提供しようとすること。
【解決手段】中心電極を挿通させる軸孔11を備えたスパークプラグ用の絶縁碍子1の内部欠陥の有無を検査する絶縁碍子1の欠陥検査方法。絶縁碍子1の軸孔11内に内側電極2を配置し、絶縁碍子1の外側面12に外側電極3を配置し、内側電極2と外側電極3との間に、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する検査電圧を印加することにより、内部欠陥において部分放電を発生させ、部分放電のエネルギによって内部欠陥を起点に絶縁碍子1を破壊して、内部欠陥を顕在化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心電極を挿通させる軸孔を備えたスパークプラグ用の絶縁碍子の内部欠陥の有無を検査する絶縁碍子の欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグは、筒状のハウジングと、該ハウジングの内側に保持された軸孔を備えた筒状の絶縁碍子と、該絶縁碍子の軸孔に挿通された中心電極と、上記ハウジングに固定された接地電極とを備える。そして、上記中心電極と上記接地電極とは、スパークプラグの軸方向に対向配置されて火花放電ギャップを形成しており、上記中心電極に高電圧が印加されることで、火花放電ギャップに火花放電が生じる。
ここで、上記絶縁碍子にピンホール等の内部欠陥が存在していると、該内部欠陥を通って上記中心電極と上記ハウジングとの間で、電流がリークしてしまい、正常な火花放電が行われなくなるおそれがある。このため、上記絶縁碍子の欠陥の有無を検査する必要がある。
【0003】
そして、絶縁碍子の欠陥検出方法として、例えば、絶縁碍子の中心電極を挿通させる軸孔に第1電極を配置し、絶縁碍子の外周側に第2電極を配置して絶縁碍子に対して直流電圧を印加し、その流れる電流によって内部欠陥の有無を検査する方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、近年、スパークプラグの小径化に伴い絶縁碍子の肉厚も薄くなるため、その絶縁性の低下が懸念されていた。そのため、絶縁碍子の絶縁検査では検査精度の向上が求められており、そのために、上記欠陥検査方法においては、検査電圧を高める必要がある。しかし、検査電圧を高めると、内部欠陥のない良品の絶縁碍子まで破壊するおそれがあり、さらにはその検査電圧の高さに起因して、絶縁碍子表面を通じて電流が流れるフラッシュオーバーが生じやすくなる。
【0005】
ここで、上記フラッシュオーバーを防止するために、検査装置内に高圧のエアを封止することで空気絶縁性を高めた状態にし、絶縁碍子の内側と外側とに直流電圧を印加して、その電流を測定して内部欠陥の有無を検査する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−134132号公報
【特許文献2】特開2004−108817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の方法では、高圧のエアを供給するための供給装置等を要し、検査装置が大型化し、大がかりなものとなってしまう。また、検査電圧を高めたことに起因する良品の破壊の課題については、上記特許文献2に記載の方法でも解決されない。それゆえ、検査電圧を高めて検査精度を上げるという方法では、上記課題の抜本的解決には至らない。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、絶縁碍子の内部欠陥の有無を、容易かつ精度良く検査することができる絶縁碍子の欠陥検査方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、中心電極を挿通させる軸孔を備えたスパークプラグ用の絶縁碍子の内部欠陥の有無を検査する絶縁碍子の欠陥検査方法であって、
上記絶縁碍子の上記軸孔内に内側電極を配置し、上記絶縁碍子の外側面に外側電極を配置し、
上記内側電極と上記外側電極との間に、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する検査電圧を印加することにより、上記内部欠陥において部分放電を発生させ、該部分放電のエネルギによって上記内部欠陥を起点に上記絶縁碍子を破壊して、上記内部欠陥を顕在化させることを特徴とする絶縁碍子の欠陥検査方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる絶縁碍子の欠陥検査方法においては、上記内側電極と上記外側電極との間に印加される検査電圧について、直流電流ではなく、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する検査電圧を印加することにより、上記絶縁碍子内に存在するピンホール等の空間である上記内部欠陥内において、部分放電を生じさせることができる。そして、部分放電のエネルギによって、上記内部欠陥を起点に上記絶縁碍子を破壊し、上記絶縁碍子の内側と外側との間の絶縁状態の破壊(以下、「絶縁破壊」という)を生じさせる。これによって、上記内部欠陥を顕在化させることができる。それゆえ、比較的低い電圧値によって内部欠陥を顕在化させることができる。
【0011】
さらに、上記検査電圧は、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する電圧であり、プラス側の電圧の絶対値とマイナス側の電圧の絶対値との和が電圧変動の大きさとなるため、低い電圧値にて大きな部分放電のエネルギを得ることができる。そのため、検査電圧値の高さに起因するフラッシュオーバーの発生も抑制することができる。その結果、検査装置の大型化、複雑化を招くおそれもない。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、絶縁碍子の内部欠陥の有無を、容易かつ精度良く検査することができる絶縁碍子の欠陥検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、絶縁碍子の内部欠陥の有無を検査する状態の説明図。
【図2】実施例1における、検査電圧の電圧印加の波形パターンの説明図。
【図3】実施例1における、検査電圧の印加状態における絶縁碍子の拡大説明図。
【図4】実験例1における、絶縁破壊電圧と検査電圧の電圧変化率の関係説明図。
【図5】実施例2における、検査電圧の電圧印加の波形パターンの説明図。
【図6】実施例3における、検査電圧の電圧印加の波形パターンの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、上記絶縁碍子の破壊とは、目視にて判別できる破壊のみならず、視認できない亀裂等によって内外の絶縁抵抗が大幅に低下するような現象も含む。
また、上記検査電圧は、電圧変化率が40kV/ms以上の波形を含むことが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記内部欠陥に部分放電を発生させやすくすることができ、部分放電のエネルギによる上記内部欠陥を起点とした上記絶縁碍子の破壊に要される電圧(本明細書においては、この電圧を「絶縁破壊電圧」という)を低下させることができる。そのため、検査電圧の電圧に起因するフラッシュオーバーの発生を抑制できると共に、検査精度を向上させることができる。
なお、上記電圧変化率は、マイナス(あるいはプラス)の電圧からプラス(あるいはマイナス)の電圧へ変化するとき、マイナス(プラス)の電圧のピークからプラス(マイナス)の電圧のピークまでの電圧変化を時間で除したものである。
【0015】
また、上記内側電極は、上記スパークプラグの中心電極であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、スパークプラグの製造工程において、上記絶縁碍子の軸孔に挿通される中心電極を利用して、上記絶縁碍子の欠陥検査を容易に行うことができる。それゆえ、スパークプラグの生産効率を向上させ、製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
また、上記検査電圧の発生手段として、上記スパークプラグの火花放電ギャップにおける放電のための電圧印加手段として用いられる点火コイルを用いることが好ましい(請求項4)。
この場合には、スパークプラグの製造工程において、上記点火コイルを利用して、上記絶縁碍子の欠陥検査を容易に行うことができる。それゆえ、スパークプラグの生産効率を向上させ、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
また、検査電圧の印加手段として点火コイルを用いることによって、電圧変化率の高い検査電圧を印加しやすい。つまり、上記点火コイルによる検査電圧は、一次コイルと二次コイルとの相互誘導作用と、二次コイルの自己誘導作用とによる振動波形を形成するため、電圧変化率を高くしやすい。そのため、上記内部欠陥において部分放電を発生させやすくすることができる。
【0018】
また、上記点火コイルによって発生させる上記検査電圧は、複数のパルス状の波形群からなり、各波形群の中において、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転すると共に、隣り合う上記波形群は、互いにプラスとマイナスとが反転した波形パターンとなっていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記内部欠陥における電荷量の偏りを防ぎ、より効率的に部分放電を生じさせる。これにより、部分放電のエネルギを大きくして内部欠陥の検出精度を向上させることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる絶縁碍子の欠陥検査方法につき、図1〜図3を用いて説明する。本例の絶縁碍子1の欠陥検査方法は、中心電極を挿通させる軸孔11を備えたスパークプラグ用の絶縁碍子1の内部欠陥10(図3参照)の有無を検査するものである。
そして、検査にあたっては、図1に示すごとく、絶縁碍子1の軸孔11内に内側電極2を配置し、絶縁碍子1の外側面12に外側電極3を配置する。
次いで、内側電極2と外側電極3との間に、図2に示すごとく、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する検査電圧を印加する。これにより、内部欠陥10において部分放電を発生させ、部分放電のエネルギによって内部欠陥10を起点に絶縁碍子1を破壊して、内部欠陥10を顕在化させる。
【0020】
本例の検査方法にかかるスパークプラグ用の絶縁碍子1は、アルミナ等を主成分とするセラミックスからなる筒状の成形体である。
この絶縁碍子1の外側面12は、軸心に沿って肉厚が変化する複雑な形状となっている。
【0021】
なお、このスパークプラグは、自動車エンジン等の内燃機関に適用されるものである。
そして、このようなスパークプラグに適用される絶縁碍子1は、本例の検査方法によって、下記のように、内部欠陥10の有無が検出される。
【0022】
以下において、具体的に本例の絶縁碍子1の欠陥検査方法を説明する。
まず、図1に示すごとく、絶縁碍子1の軸孔11内に内側電極2を配置し、絶縁碍子1の外側面12に外側電極3を配置する。
絶縁碍子1の軸孔11には、内側電極2を係止するための係止段部13が形成されている。また、内側電極2は、絶縁碍子1の軸孔11に挿通できるよう略円柱形状をなし、かつ係止段部13に係止される径変部23を有する。そして、内側電極2を、絶縁碍子1の軸孔11の基端側から挿通して、径変部23が係止段部13に係止した状態で配置する。ここで、内側電極2の基端部は、絶縁碍子1の基端部から突出している。
なお、本例においては、内側電極2に、スパークプラグの中心電極を使用したが、欠陥検査用の内側電極を別途用意しても構わない。
【0023】
また、外部電極3は、金属材料からなり、絶縁碍子1の外側面12を挟持できるように形成されている。なお、外部電極3の軸方向の寸法を変更することによって、内部欠陥10の検出範囲を広くすることもできる。
そして、内側電極2は、電源4の一方の電極に接続されており、電源4の他方の電極はアース5に接続されている。また、外側電極3は、アース5に接続されている。
【0024】
次いで、内側電極2と外側電極3との間に、図2に示すごとく、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する交流の検査電圧を印加する。ここで、検査電圧は、その電圧変化率が40kV/ms以上の波形を有するように設定される。
【0025】
なお、上記電圧変化率は、図2に示すごとく、マイナス(あるいはプラス)の電圧からプラス(あるいはマイナス)の電圧へ変化する時間をtとしたとき、マイナス(プラス)の電圧のピークからプラス(マイナス)の電圧のピークまでの電圧変動(|ΔV|)を上記時間(t)で除したもの(|ΔV|/t)である。
【0026】
そして、図3に示すごとく、検査電圧が印加された絶縁碍子1にピンホール等の空間を有した内部欠陥10が存在している場合には、検査電圧のプラスとマイナスとが時間的に交互に反転することに起因して、内部欠陥10内に部分放電が発生することとなる。
つまり、例えば、絶縁碍子1の内側(図3の上側)がプラス(+)、外側(図3の下側)がマイナス(−)となる状態で電圧が印加されている状態において、絶縁碍子1を構成するセラミックスの各粒子14においては、電子(−)が内側(上方)へ引き寄せられ、正孔(+)が外側(下方)へ引き寄せられることとなる。これに伴い、内部欠陥10においても同様に、電子(−)が内側(上方)へ引き寄せられ、正孔(+)が外側(下方)へ引き寄せられることとなる。
【0027】
そして、この状態から検査電圧がプラスとマイナスとで反転すると、内部欠陥10における電子(−)は、外側(下方)へ引き寄せられることとなるため、内部欠陥10において放電(図3に示す矢印A)が生じる。これが部分放電となる。
そして、上記の部分放電のエネルギによって、内部欠陥10を起点に絶縁碍子1が破壊されることとなる。その結果、内部欠陥10が顕在化されることとなり、絶縁碍子1の内部欠陥10の有無を容易に検査できる。
【0028】
他方、検査電圧が印加された、絶縁碍子1にピンホール等の空隙部分である内部欠陥10が存在しない場合には、上記の部分放電は発生し得ない。かかる場合、その絶縁碍子1は良品と判断させる。
なお、本例の欠陥検査方法は、複数の検査絶縁碍子1に対して同時に実施してもよい(図示略)。
【0029】
次に本例の絶縁碍子の欠陥検査方法における作用効果について説明する。
本例において、内側電極2と外側電極3との間に印加される検査電圧について、直流電流ではなく、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する検査電圧を印加することにより、絶縁碍子1内に存在するピンホール等の空間である内部欠陥10内において、部分放電を生じさせることができる。そして、部分放電のエネルギによって、内部欠陥10を起点に絶縁碍子1を破壊し、絶縁破壊を生じさせる。これによって、内部欠陥10を顕在化させることができる。それゆえ、比較的低い電圧値によって、内部欠陥10を顕在化させることができる。
【0030】
さらに、本例の検査電圧は、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する電圧であり、プラス側の電圧の絶対値とマイナス側の電圧の絶対値との和が電圧変動の大きさとなるため、低い電圧値にて大きな部分放電のエネルギを得ることができる。そのため、検査電圧値の高さに起因するフラッシュオーバーの発生も抑制することができる。その結果、検査装置の大型化、複雑化を招くおそれもない。
【0031】
また、検査電圧の電圧変化率は40kV/ms以上の波形を有する。これにより、内部欠陥10に部分放電を発生させやすくすることができ、絶縁破壊電圧を低下させることができる。そのため、検査電圧の電圧に起因するフラッシュオーバーの発生を抑制できると共に、検査精度を向上させることができる。
【0032】
また、内側電極2は、スパークプラグの中心電極である。これにより、スパークプラグの製造工程において、絶縁碍子1の軸孔11に挿通される中心電極を利用して、絶縁碍子1の欠陥検査を容易に行うことができる。それゆえ、スパークプラグの生産効率を向上させ、製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
以上のごとく、本例によれば、絶縁碍子の内部欠陥の有無を、容易かつ精度良く検査することができる絶縁碍子の欠陥検査方法を提供することができる。
【0034】
(実験例1)
本例は、図4に示すごとく、絶縁碍子の絶縁破壊電圧と電圧変化率との関係について、比較実験を行った。
まず、図1に示したとおり、絶縁碍子1の軸孔11内に内側電極2を配置し、絶縁碍子1の外側面12に外側電極3を配置する。
【0035】
次いで、内側電極2と外側電極3とに検査電圧を印加し、上記実施例1で示した絶縁碍子1の欠陥検査を行った。この際、検査電圧として、異なる種々の電圧変化率の交流電圧をそれぞれ用いた。そして、各検査における絶縁破壊電圧を調べた。その結果を図4に示す。同図においては、電圧変化率を1kV/msとした場合の絶縁破壊電圧に対する、各電圧変化率における絶縁破壊電圧の比をプロットした。すなわち、図4に示す曲線Bが、電圧変化率と絶縁破壊電圧との関係を表す。
【0036】
図4からわかるように、検査電圧の電圧変化率を40kV/ms以上とすることにより、絶縁破壊電圧を大きく低減でき、これ以上電圧変化率を上げても絶縁破壊電圧は変化しない。
したがって、本例の検査電圧の電圧変化率を40kV/ms以上に設定することによって、絶縁破壊電圧を充分に低下させることができる。そのため、検査電圧の電圧値に起因するフラッシュオーバーの発生を抑制できると共に、検査精度を向上することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、検査電圧の発生手段として、スパークプラグの火花放電ギャップにおける放電のための電圧印加手段として用いられる点火コイルを用いた例である。
本例では、検査電圧の印加手段として点火コイルが用いられるため、図5に示すごとく、検査電圧の波形は、減衰振動がパルス状に生じる波形となる。
【0038】
つまり、点火コイルは、その一次コイルへの通電を遮断したときに、相互誘導作用によって二次コイルに生じる高電圧の誘導起電力を利用している。この誘導起電力による電圧波形は、自己誘導作用によって減衰振動波のように、その電圧ピークが、減衰しながらもプラス、マイナスの電圧を繰り返す。それゆえ、点火コイルでは、一次コイルへの通電、遮断によって、一群の減衰振動波状のパルス波(波形群P)が生じ、各波形群Pにおける最初のマイナス(あるいはプラス)電圧のピークから、プラス(あるいはマイナス)電圧のピークまでの電圧変化率が最も大きくなる。そして、点火コイルには、一定時間間隔ごとに一次コイルへの通電、遮断を繰り返すことによって、図5のような複数の波形群Pが生じている。なお、図5においては、通電、遮断3回分の波形を示す。
その他は、実施例1と同様である。
【0039】
本例においては、スパークプラグの製造工程において、点火コイルを利用して、絶縁碍子1の欠陥検査を容易に行うことができる。それゆえ、スパークプラグの生産効率を向上させ、製造コストの低減を図ることができる。
また、本例では、検査電圧の印加手段として点火コイルを用いることによって、電圧変化率の高い検査電圧を印加しやすい。つまり、点火コイルによる検査電圧は、一次コイルと二次コイルとの相互誘導作用と、二次コイルの自己誘導作用とによる振動波形を形成するため、電圧変化率を高くしやすい。そのため、内部欠陥10において部分放電を発生させやすくすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0040】
(実施例3)
本例も、検査電圧の発生手段として、スパークプラグの火花放電ギャップにおける放電のための電圧印加手段として用いられる点火コイルを用いた例である。
ただし、本例では、図6に示すごとく、点火コイルによって発生させる検査電圧を、隣り合う波形群Pが互いにプラスとマイナスとが反転した波形パターンとしている。
これは、上述した一次コイルへの通電方向を交互に行うことで実現される。
その他は、実施例2と同様である。
【0041】
本例は、内部欠陥10における電荷量の偏りを防ぎ、より効率的に部分放電を生じさせる。これにより、部分放電のエネルギを大きくして内部欠陥10の検出精度を向上させることができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0042】
1 絶縁碍子
11 軸孔
12 外側面
2 内側電極
3 外側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極を挿通させる軸孔を備えたスパークプラグ用の絶縁碍子の内部欠陥の有無を検査する絶縁碍子の欠陥検査方法であって、
上記絶縁碍子の上記軸孔内に内側電極を配置し、上記絶縁碍子の外側面に外側電極を配置し、
上記内側電極と上記外側電極との間に、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転する検査電圧を印加することにより、上記内部欠陥において部分放電を発生させ、該部分放電のエネルギによって上記内部欠陥を起点に上記絶縁碍子を破壊して、上記内部欠陥を顕在化させることを特徴とする絶縁碍子の欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1において、上記検査電圧は、電圧変化率が40kV/ms以上の波形を含むことを特徴とする絶縁碍子の欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記内側電極は、上記スパークプラグの中心電極であることを特徴とする絶縁碍子の欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記検査電圧の発生手段として、上記スパークプラグの火花放電ギャップにおける放電のための電圧印加手段として用いられる点火コイルを用いることを特徴とする絶縁碍子の欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項4において、上記点火コイルによって発生させる上記検査電圧は、複数のパルス状の波形群からなり、各波形群の中において、プラスとマイナスとが時間的に交互に反転すると共に、隣り合う上記波形群は、互いにプラスとマイナスとが反転した波形パターンとなっていることを特徴とする絶縁碍子の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−109114(P2012−109114A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256923(P2010−256923)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】