説明

絶縁紙の劣化抑制方法

【課題】 油入電気機器が有する絶縁紙の劣化を簡便に且つ安価に抑制することが可能な絶縁紙の劣化抑制方法を提供すること。
【解決手段】 相互に接触する導電性部材11、12間が絶縁紙で絶縁されている電気機器1において、絶縁紙を、炭化水素系基油並びにアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物を含有する電気絶縁油13に浸漬する。これにより、アミン系化合物及び/又はフェノール系化合物の作用により絶縁紙の劣化が十分に抑制されるため、導電性部材11、12間の電気絶縁性を長期にわたって高水準に維持できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油入変圧器、油入リアクトルなどの油入電気機器においては、導電性部材間の絶縁に固体絶縁物及び電気絶縁油が用いられている。例えば油入変圧器の場合、鉄心と巻線との間に固体絶縁物を介在させ、これらを電気絶縁油中に浸漬することによって、鉄心と巻線との間の絶縁が図られている。(例えば、特許文献1を参照。)
【0003】
上記の固体絶縁物としては、天然・合成繊維等からなる絶縁紙、マイカ、石綿、ガラス繊維等があり、これらの中でも絶縁紙は安価で使い勝手がよいため広く利用されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
また、電気絶縁油としては、その電気絶縁性を確保するために、高度に精製された鉱油系基油、あるいはアルキルベンゼン、ポリオレフィンなどの合成系基油を用いるのが一般的である。(例えば、特許文献2、3を参照。)
【特許文献1】特開2001−143933号公報
【特許文献2】特開平6−325622号公報
【特許文献3】特開平9−279160号公報
【非特許文献1】「電気絶縁紙」、コロナ社、第1章、第1〜2頁、1969年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固体絶縁物として絶縁紙を用いた油入電気機器において、内部の局部加熱や放電等が起こると、絶縁紙や電気絶縁油が徐々に劣化して絶縁耐力が低下し、ついには絶縁破壊に至ることが懸念される。そして、このような油圧電圧機器の寿命は電気絶縁油よりも絶縁紙の劣化に左右されることが多い。
【0006】
そこで、油入電気機器の長寿命化の観点から、耐久性に優れた特殊な固体絶縁物(例えば、エポキシ樹脂)の使用が提案されているが、このような固体絶縁物の多くは高価であり、また、既設の電気機器については適用が困難であるため、根本的な解決策とはなり得ない。また、電気絶縁油については、上記特許文献2、3に記載のように電気絶縁油自体の劣化を抑制する技術に関する検討はいくつかなされているものの、絶縁紙の劣化の抑制の観点からの検討は十分になされていない。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、油入電気機器が有する絶縁紙の劣化を簡便に且つ安価に抑制することが可能な絶縁紙の劣化抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、導電性部材間が絶縁紙で絶縁されている電気機器において、絶縁紙を、炭化水素系基油並びにアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物を含有する電気絶縁油に浸漬することを特徴とする絶縁紙の劣化抑制方法を提供する。
【0009】
本発明の絶縁紙の劣化抑制方法においては、絶縁紙を、炭化水素系基油並びにアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物を含有する電気絶縁油に浸漬することで、アミン系化合物及び/又はフェノール系化合物の作用により絶縁紙の劣化が十分に抑制されるため、導電性部材間の電気絶縁性を長期にわたって高水準に維持できるようになる。したがって、本発明によれば、電気機器の長寿命化を簡便に且つ安価に達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の絶縁紙の劣化抑制方法によれば、油入電気機器が有する絶縁紙の劣化を簡便に且つ安価に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明が適用される油入電気機器(油入変圧器)の一例を示す模式断面図である。図1に示した油入変圧器1においては、タンク10内に、鉄心11と、鉄心11に巻き付けられた巻線12と、鉄心11及び巻線12を浸漬するのに十分な量の電気絶縁油13とが収容されている。また、タンク10の上部には、ブッシング14を有するタンクカバー15が設けられている。
【0013】
巻線12は絶縁紙で被覆されたもので、この絶縁紙と電気絶縁油13とにより鉄心11と巻線12とが絶縁されている。絶縁紙は天然又は合成繊維を主成分とするもので、この絶縁紙には所定の化学処理が施されていてもよい。絶縁紙としては、具体的には、クラフトパルプ等のパルプ、シアノエチル化紙、アセチル化紙等のセルロース誘導紙、アミン添加紙、モルホリン添加紙、活性アルミナ添加紙等の薬品添加紙、あるいはDuPont社性Nomex Pater等の合成繊維紙などが挙げられる。
【0014】
また、電気絶縁油13は、炭化水素系基油並びにアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物を含有する電気絶縁油である。以下、電気絶縁油13の各構成成分について詳述する。
【0015】
電気絶縁油13に含まれる炭化水素系基油は、鉱油系基油又は合成系基油のいずれであってもよい。鉱油系基油としては、具体的には、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、合成系基油としては、具体的には、ポリα−オレフィン、(ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなど)、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルアルカン(アルキルジフェニルエタン、アルキルフェニルキシリルエタン、ベンジルトルエンなど)、アルキルビフェニルなどの炭化水素系合成油が挙げられる。上記した基油のうち、水素化分解鉱油などの高度精製鉱油、並びに炭化水素系合成油は、衝撃破壊電圧が高く、また、絶縁紙に対する悪影響が小さい点で好ましい。
【0016】
本発明においては、上記した炭化水素系基油のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の混合割合で組み合わせて用いてもよい。また、本発明にかかる基油の粘度は任意であるが、40℃における動粘度が1〜50mm/sであることが好ましく、3〜40mm/sであることがより好ましく、5〜30mm/sであることが更に好ましい。
【0017】
また、電気絶縁油13がフェノール系化合物を含む場合、かかるフェノール系化合物としては、フェニル−α−ナフチルアミン系化合物、ジアルキルジフェニルアミン系化合物、ベンジルアミン系化合物、及びポリアミン系化合物が挙げられ、中でもフェニル−α−ナフチルアミン系化合物、アルキルジフェニルアミン系化合物が好ましい。
【0018】
フェニル−α−ナフチルアミン系化合物としては、下記一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが好ましく用いられる。
【化1】


[式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。]
【0019】
一般式(1)中のRがアルキル基である場合、当該アルキル基は前述の通り炭素数1〜16の直鎖上又は分岐状のものである。このようなアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。なお、Rの炭素数が16を超える場合には分子中に占める官能基の割合が小さくなり、絶縁紙の劣化抑制効果が低下する傾向にある。
【0020】
一般式(1)中のRがアルキル基である場合、基油に対する溶解性に優れる点から、Rは、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、溶解性に優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。更に優れた溶解性を得るためには、Rは、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が特に好ましい。
【0021】
一般式(4)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンとしては、市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用いて、フェニル−α−ナフチルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはフェニル−α−ナフチルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィンオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、具体的には例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化鉄等の金属ハロゲン化物;硫酸、リン酸、五酸化リン、フッ化ホウ素、酸性白土、活性白土等の酸性触媒;等を用いることができる。
【0022】
ジアルキルジフェニルアミン系化合物としては、下記一般式(2)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンが好ましく用いられる。
【化2】


[式(2)中、R15及びR16は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。]
【0023】
及びRで表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。これらの中でも、高温での絶縁紙の劣化をより長期にわたって抑制できる点から、R及びRとしては、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、炭素数3又は4のオレフィン又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレン等が挙げられるが、高温での絶縁紙の劣化をより長期にわたって抑制できる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。また、R又はRとしては、更に優れた酸化防止性が得られることから、それぞれプロピレンから誘導されるイソプロピル基、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が最も好ましい。
【0024】
なお、R及びRの一方又は双方が水素原子である化合物を用いると、当該化合物自体の酸化によりスラッジが発生する恐れがある。また、アルキル基の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、高温での絶縁紙の劣化抑制効果が低下する恐れがある。
【0025】
一般式(2)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用い、ジフェニルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物とジフェニルアミンとの反応、あるいはジフェニルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィン又はこれらのオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、フェニル−α−ナフチルアミンの説明において例示された金属ハロゲン化物や酸性触媒等が用いられる。
【0026】
上記一般式(1)、(2)で表される化合物はいずれも芳香族アミンである。これらの芳香族アミンは1種を単独で用いても良いし、構造の異なる2種以上の混合物を用いても良いが、高温での絶縁紙の劣化をより長期にわたって抑制できる点から、一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンと一般式(2)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンとを併用することが好ましい。この場合の混合比は任意であるが、質量比で1/10〜10/1の範囲にあることが好ましい。
【0027】
また、電気絶縁油13がフェノール系化合物を含有する場合、フェノール系化合物としては、例えば、下記の一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
【化3】


[式(3)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(i)又は(ii):
【化4】


(一般式(i)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Rは炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化5】


(一般式(ii)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R10は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、kは0又は1を示す。)
で表される基を示す。]
【化6】


[一般式(4)中、R12及びR14は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、R13及びR15は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R16及びR17は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜18のアルキレン基又は下記の一般式(iii):
【0028】
−R18−S−R19− (iii)
(一般式(iii)中、R18及びR19は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
【化7】

【0029】
一般式(5)中、R20は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R21は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R22は炭素数1〜6のアルキレン基又は下記一般式(iv):
【化8】


(一般式(iv)中、R23及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
で表される基を示す。]
【0030】
上記一般式(3)で表される化合物において、Rが一般式(i)で表される基である化合物の場合、一般式(i)中のRが炭素数1〜2のアルキレン基であり、Rが炭素数6〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基であるものがより好ましく、一般式(i)のRが炭素数1〜2のアルキレン基であり、Rが炭素数6〜12の分枝状アルキル基であるものが特に好ましい。
【0031】
一般式(3)で表される化合物の中で好ましいものを以下に示す。
【0032】
が炭素数1〜4のアルキル基である場合の化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等を挙げることができる。
【0033】
が一般式(i)で表される基である場合の化合物の例としては、下記のものを挙げることができる。(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル等が挙げられる。
【0034】
が一般式(ii)で表される基である場合の化合物の例としては、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等;及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0035】
次に、一般式(4)で表されるアルキルフェノールについて説明する。
【0036】
一般式(4)中のAが炭素数1〜18のアルキレン基である場合の特に好ましい化合物は、下記式(4−1)で表される化合物である。
【化9】

【0037】
また、一般式(4)中のAが式(iii)で表される基である場合の特に好ましい化合物は、下記式(4−2)で表される化合物である。
【化10】

【0038】
次に、一般式(5)で表されるアルキルフェノールについて説明する。
【0039】
一般式(5)で表されるアルキルフェノールとして特に好ましいものは、具体的には、下記式(5−1)又は(5−2)で表される化合物である。
【化11】


【化12】

【0040】
電気絶縁油13は、アミン系化合物又はフェノール系化合物の一方のみを含有してもよく、あるいはアミン系化合物及びフェノール系化合物の双方を含有してもよいが、絶縁紙の性能への悪影響を考慮すると、フェノール系化合物を用いることが好ましい。アミン系化合物及びフェノール系化合物の含有量の合計は、電気絶縁油13全量を基準として、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。当該含有量の合計が前記下限値未満の場合には絶縁紙の劣化抑制効果が不十分となる傾向にあり、また、前記上限値を超えると絶縁紙の性能に悪影響を与える傾向にある。
【0041】
電気絶縁油13は、上記の炭化水素系基油とアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物とからなるものであってもよいが、必要に応じて公知の電気絶縁油用添加剤を更に含有してもよい。かかる添加剤としては、具体的には、ベンゾトリアゾールなどの流動帯電防止剤;塩素化パラフィンとナフタリンとの縮合物、ポリメタクリレート、オレフィン重合体(エチレン−プロピレンコポリマー、アルキル化ポリスチレンなどを含む)などの流動点降下剤;インドリジン、イソインドール、インドール、4H−キノリジン、カルバゾール、インドリン、イソインドリン等の含窒素複素環式化合物などが挙げられる。これらの添加剤の含有量は任意であるが、絶縁紙への悪影響を抑制する点から、上記添加剤の含有量の合計は、電気絶縁油13全量を基準として、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0042】
電気絶縁油13の動粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は1〜50mm/sであることが好ましく、3〜40mm/sであることがより好ましく、5〜30mm/sであることが更に好ましい。
【0043】
上記実施形態によれば、鉄心11と巻線12とを絶縁する絶縁紙を電気絶縁油13に浸漬することで、アミン系化合物及び/又はフェノール系化合物の作用により絶縁紙の劣化が十分に抑制されるため、鉄心11と巻線12との間の電気絶縁性を長期にわたって高水準に維持することができ、その結果、油入変圧器1の長寿命化が実現可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明が適用される油入電気機器は、絶縁紙が介在する導電性部材間を電気絶縁油に浸漬することができるものであれば特に制限されず、発電所、工場、大規模施設などにおいて屋外に設置される各種変圧器、更には高圧ケーブル、高圧遮断器、コンデンサーなどの高電圧機器、変成器に好ましく適用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1に示す組成を有する電気絶縁油を調製した。
基油1:ナフテン系鉱油(40℃における動粘度:7mm/s、%CN:70)
基油2:分岐型アルキルベンゼン(40℃における動粘度:7mm/s)
添加剤1:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール。
【0047】
次に、予め脱水処理を施した絶縁紙(シアノエチル化紙、15mm×160mm×70μm、商品名:permalex、GE社製)及び銅板(15mm×175mm×0.2mm)を容量100mlの試験管に入れて密栓し、更に、真空注油法により、試験管内を真空脱気しながら上記の電気絶縁油100mlを注入した。
【0048】
この試験管を上部が開口したステンレス製容器に入れて開栓した後、ステンレス製容器の開口を天板で覆った。なお、ステンレス容器の開口側に通気用の空隙を確保するために、天板は、ステンレス製容器に対して離間して配置した。天板の下面とステンレス製容器の上端との距離は2mmとした。このようにして試験管が収容されたステンレス容器を150℃の空気恒温槽に入れて15日間加熱した。その後、試験管から絶縁紙を取り出し、溶剤洗浄により付着した電気絶縁油を除去した。
【0049】
このようにして加熱処理が施された絶縁紙について、JIS P 8113に準拠して引張強度を測定し、以下の式に従って引張強度残率を求めた。得られた結果を表1に示す。
(引張強度残率[%])={(加熱処理後の引張強度)/(加熱処理前の引張強度)}×100。
【0050】
[比較例1]
先ず、上記の基油1及び基油2を用いて、表1に示す組成を有する電気絶縁油を調製した。次に、得られた電気絶縁油を用いたこと以外は実施例1と同様にして加熱処理を行い、加熱処理後の絶縁紙の引張強度残率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示したように、実施例1においては、フェノール系化合物を含有する電気絶縁油によって、絶縁紙の劣化が十分に抑制されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】油入電気機器(油入変圧器)の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1…油入変圧器、10…タンク、11…鉄心、12…巻線、13…電気絶縁油、14…ブッシング、15…タンクカバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材間が絶縁紙で絶縁されている電気機器において、前記絶縁紙を、炭化水素系基油並びにアミン系化合物及び/又はフェノール系化合物を含有する電気絶縁油に浸漬することを特徴とする絶縁紙の劣化抑制方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−278916(P2006−278916A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98730(P2005−98730)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】