説明

絶縁電力ケーブル

本発明は、非絶縁ワイヤの複数の束のマルチストランドケーブルと、ケーブルを外装する電気絶縁体とを含んでなる絶縁電力ケーブルであって、電気絶縁体が、厚さが0.0625から0.5インチ(0.16から1.3センチメートル)であり、螺旋状に巻かれたクレーピングされたテープの複数の層を含んでなり、テープが、少なくとも50重量パーセントのアラミド材料を含んでなり、テープが、クレーピングされる前、1立方センチメートルあたり0.1から0.5グラムの密度を有する絶縁電力ケーブルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電力ケーブル、特に、流体充填電気変圧器に一般に使用される絶縁ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ケーブルおよび絶縁巻線ワイヤ(insulated winding wires)が、両方、流体充填変圧器に使用される。絶縁巻線ワイヤは、変圧器の巻線を形成するために使用される。この巻線ワイヤは、変圧器の動作の際に生じる機械的応力に耐えるために、十分に剛性である必要がある。絶縁ケーブルは、巻線タップから無負荷または負荷時タップ切換器、位相相互接続(phase interconnection)、および内部巻線からブッシングコネクタなど、変圧器内のさまざまな構成要素を接続する。絶縁巻線ワイヤと対照的に、絶縁ケーブルは、接続ポイントへの容易な操縦性を可能にするために、十分に可撓性である必要がある。そこで、ケーブルは、付加的な強度が必要な場合、機械的に支持される。
【0003】
変圧器内の巻線の導体は、典型的には、1つのワイヤが別のワイヤと接触するのを防止するために個別に絶縁されたいくつかの巻線ワイヤから構成される。多くの場合、これらの絶縁巻線ワイヤは、変圧器巻線の高密度の均一なパッキングを確実にするために、断面が矩形である。対照的に、変圧器に使用される絶縁ケーブルは、通常、非絶縁ワイヤの複数の束から製造され、断面が略円形である。これらのケーブルが、高い電圧および高いアンペア数で電気を伝送するので、主要な要件は、それらが、油充填変圧器において大惨事になり得る1つのケーブルから次のケーブルへの絶縁破壊を防止するために、十分な絶縁体を有することである。油充填変圧器内のケーブルは、従来、螺旋状に巻かれたクレーピングされた(creped)セルロース紙テープで絶縁されており、変圧器に使用されるケーブルのサイズおよび数は、最初、負荷下の間のワイヤケーブルと変圧器油との間の所望の最大温度差を特定し、次に、十分なケーブルを使用して、必要な最大温度差を超えることなく所望の電流を取扱うことによって定められた。セルロース紙テープの場合、最大温度差は、一般に約20℃であり(非特許文献1)、というのは、より高い温度差は、セルロース絶縁体の早すぎる老化、および最終的なケーブル故障を引起すことがあるからである。しかし、ケーブルをより高い温度で動作させることができる場合、すなわち、最大温度差を約60℃に上げることができる場合、変圧器のために必要なケーブルのサイズおよび/またはケーブルの数を低減することができる。したがって、絶縁体の早すぎる老化を伴わずに、より高い温度に耐えることができるケーブルが必要とされている。
【0004】
非特許文献2は、「長手方向の巻き」技術を用いてワイヤ導体を巻くことができることを開示しており、ノーメックス(Nomex)(登録商標)の狭いテープが、ワイヤに平行に適用され、ワイヤの周りに巻きつけられ(folded)、シールされる。クレーピングされ、次に、軽くカレンダ加工されて、絶縁体の望ましい厚さを維持したテープを使用することが好ましい。
【0005】
非特許文献3は、油充填変圧器のための絶縁体などの、高い多孔性が望ましい特定の用途において、特殊な低密度紙、たとえばノーメックス(登録商標)411が、特に好ましいことを開示している。
【0006】
ローリング(Rolling)らへの特許文献1は、1つの導体と、導体の少なくとも一部を囲む絶縁紙とを含む電気装置を開示しており、絶縁紙は、木材パルプ繊維と、アラミド繊維であることができる合成繊維と、バインダー材料とを含み、合成繊維は2から25重量パーセントで存在する。絶縁紙は、クレーピングし、導体の周りに螺旋状に巻くことができる。
【0007】
【特許文献1】国際公開第200191135号パンフレット
【非特許文献1】ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)によって出版された変圧器工学(Transformer Engineering)、第2版、321ページ
【非特許文献2】研究開示(Research Disclosure)RD10833、1973年4月
【非特許文献3】研究開示RD10947、1973年5月
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の非絶縁ワイヤのマルチストランドケーブルと、ケーブルを外装する電気絶縁体とを含んでなる絶縁電力ケーブルであって、電気絶縁体が、厚さが0.0625から0.5インチ(0.16から1.3センチメートル)であり、螺旋状に巻かれたクレーピングされたテープの複数の層を含んでなり、テープが、クレーピングされる前1立方センチメートルあたり0.1から0.5グラムの密度を有するアラミド材料少なくとも50重量パーセントを含んでなる絶縁電力ケーブルに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、絶縁電力ケーブル、特に、流体充填電気変圧器に一般に使用される絶縁ケーブルに関する。本発明の絶縁ケーブルは、非絶縁ワイヤの複数の束を含んでなるマルチストランドケーブルと、ケーブルを外装する電気絶縁体とを含む。本発明のケーブルの一実施形態が、図に示されている。絶縁体の層2がマルチストランドケーブル3の上に外装された絶縁ケーブル1が示されている。マルチストランドケーブル3は、好ましくは複数の束5の、複数の非絶縁ワイヤ4を含んでなる。明確にするため、図に示された絶縁ケーブルは、束間の誇張された量の開いた空間6を有するが、好ましくは、および一般に、実際には、束間の非常に限られた開いた空間がある。
【0010】
マルチストランドケーブル3を外装する電気絶縁体2は、半径方向の厚さが0.0625から0.5インチ(0.16から1.3センチメートル)である。約0.0625インチ未満の絶縁体厚さが、十分な絶縁耐力をもたらすには少なすぎる量の絶縁材料を提供すると考えられる。約0.5インチを超える厚さが、妥当な曲げ半径を可能にしないケーブルを提供すると考えられる。絶縁体の厚さは、アラミド材料の多数の層から構成され、ケーブル上の電気絶縁体の外装の全密度は、1立方センチメートルあたり約0.2から0.6グラム、好ましくは1立方センチメートルあたり約0.3から0.5グラムである。絶縁体の半径方向の厚さまたは「積層(build)」が重要なパラメータであるので、材料の層の実際の数は変わることができ、10から100の層またはより多い層が可能である。アラミド材料の層は、好ましくは、幅が約0.25から2インチの狭いテープである。テープは、好ましくは、テープの幅にわたって、ランダムな隆起部および溝、またはクレープを有する。隆起部および溝は、任意の利用可能な手段によってテープ内に与えられるが、一連のランダムな隆起部および溝を与えるクレーピング方法が好ましく、ウォールトン(Walton)らへの国際公開第2002/076723号パンフレット;ウォールトン(Walton)への米国特許第3,260,778号明細書;クルエット(Cluett)への米国特許第2,624,245号明細書;ウォールトン(Walton)への米国特許第3,426,405号明細書;およびパッカード(Packard)への米国特許第4,090,385号明細書に開示されているようなマイクロクレーピング(micro−creping)またはドライクレーピング方法および設備が好ましい。マイクロクレーピングシートおよびテープのための設備は、02081マサチューセッツ州ウォルポールのマイクレックス・コーポレーション(Micrex Corporation of Walpole, MA 02081)から得ることができる。そのような設備は、一般に、テープを、被駆動ロールに対してクレーピングされるようにプレスし、被駆動ロールは、先端が被駆動ロールに隣接して保持されたリターディングブレード(retarding blade)などのリターディング要素の方にテープを前進させる。リターディング要素は、テープが、テープの繰返された柱状折り畳み(columnar collapse)によって、それ自体の上に粗く折り重ねられて、好ましい隆起部および溝を形成することを引起す。テープは、好ましくは、マイクロクレーピングプロセスの間、単位面積あたりのテープの重量増加に基いて、約10から200パーセント、好ましくは25から150パーセント機械的に線状に圧縮される。
【0011】
変圧器に使用される油が、マルチストランドケーブルの周りの絶縁体に浸透しこれを浸すことができることが重要である。したがって、絶縁体は、テープをケーブルの周りに螺旋状に巻くことによって適用され、油のためのルートが絶縁体の層の間に貫通し存在することを可能にする層が形成される。本明細書で使用する際の「螺旋状に巻かれた」は、ケーブルの外側円周の周りの1つもしくはそれ以上のテープの螺旋状またはつる巻状巻きを含むように意図される。より重要なことに、テープに使用されるアラミド材料は、1立方センチメートルあたり約0.1から0.5グラムの、クレーピング前の密度を有さなければならず、これにより、テープ材料がマルチストランドケーブル上に巻かれた後、油がテープ材料を完全に浸すことを可能にするために十分な多孔性を有する絶縁体が提供される。テープのクレーピングは、テープにいくらかの伸張性を与え、それにより、テープをケーブルの周りにきつく巻くことができ、同時に、剛性テープの使用からケーブルに与えられることがあるいかなる剛性もなくす。本発明の特定の実施形態において、テープは、ワイヤ上に製造され、たとえば1組の加熱されたカレンダロールによる、高い熱および圧力の付加的な付与によって、軽く圧縮されたが、実質的に高密度化されなかった「形成された」紙から製造される。このアラミド材料は、細断してテープにすることができるアラミド繊維を含んでなる任意の不織シート材料であることができ、さまざまなタイプのスパンボンド、スパンレース、もしくは紙状シートまたは積層構造であることができる。好ましい実施形態において、不織シート材料はアラミド紙である。本明細書で使用する際の紙という用語は、その通常の意味で使用され、それは、従来の製紙プロセスおよび設備およびプロセスを用いて準備することができる。アラミド不織シートまたは紙の厚さ(クレーピング前)は、重要でないが、典型的には、約0.002から0.015インチである。
【0012】
本発明に使用される好ましいアラミド紙は、典型的には、フィブリドおよび短繊維などのアラミド繊維材料のスラリーを形成し、次に、これを、フォードリニア(Fourdrinier)機上で、または、形成スクリーンを収容するハンドシートモールド(handsheet mold)上で手によってなど、紙に変えることによって製造される。アラミド繊維を紙に形成するプロセスについて、グロース(Gross)の米国特許第3,756,908号明細書およびヘスラー(Hesler)らの米国特許第5,026,456号明細書を参照することができる。
【0013】
本明細書で使用する際のアラミドという用語は、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合されたポリアミドを意味する。添加剤をアラミドとともに使用することができ、10重量パーセント程度までの他のポリマー材料をアラミドとブレンドすることができるか、10パーセント程度の、アラミドのジアミンと置換された他のジアミン、または10パーセント程度の、アラミドの二酸塩化物(diacid chloride)と置換された他の二酸塩化物を有するそのコポリマーを使用することができる。本発明の実施において、最もよく使用されるアラミドは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)およびポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)が好ましいアラミドである。
【0014】
絶縁材料は、少なくとも50重量パーセントのアラミド材料を含んでなる。使用することができる他の材料としては、セルロース、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、商標テクノーラ(Technora)(登録商標)で販売されるような全芳香族コポリアミド、フッ素化炭化水素、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。好ましくは、これらの他の材料は、紙中の繊維または粒子の形態である。この量より少ないアラミド材料を有する絶縁材料は望ましくなく、というのは、一般に、それは、130℃を超える動作温度に耐えることができないからである。好ましくは、アラミドポリマーの高温性能を利用するために、絶縁材料は、75から100%のアラミド材料を含んでなる。
【0015】
絶縁体によって被覆された、図に示されたマルチストランドケーブル3は、好ましくは複数の束5の形態で存在する、複数の非絶縁ワイヤ4から形成される。本発明の特定の実施形態におけるマルチストランドケーブルは、8AWGから1000MCMの全サイズ、好ましくは1/0から750MCMのサイズを有する。マルチストランドケーブルは、好ましくは、撚り合された銅導体についてのASTM規格ASTMB172、ASTMB173、またはASTMB8の少なくとも1つを満たす。そのようなマルチストランドケーブルは、アーカンソー州オセオラのリア・マグネット・ワイヤ・カンパニー・インコーポレイテッド(Rea Magnet Wire Company, Inc., of Osceola, Arkansas)およびジョージア州キャロルトンのサウスワイヤ・カンパニー(Southwire Company of Carrollton, Georgia)から入手可能である。本発明の2つのケーブルが、427の銅ワイヤを有する500MCMマルチストランドケーブルから製造され、各ケーブルは、公称直径が0.924インチであり、これは、クレーピングされたタイプ411アラミド紙テープの15または36の層によって外装された。タイプ411アラミド紙は、クレーピング前1立方センチメートルあたり0.31グラムの密度を有する非高密度化(undenisified)100%パーセントポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)紙である。15層ケーブルは、幅が1.25インチ(3.175センチメートル)の13のテープを使用し、36層ケーブルは、幅が1.3125インチ(3.334センチメートル)の32のテープを使用した。アラミド紙テープの各層は、クレーピング前、厚さが0.00834インチ(0.02センチメートル)であり、クレーピング後、厚さが0.0255インチ(0.0648センチメートル)であった。テープは、マルチストランドケーブルの周りに螺旋状に巻かれ、最終絶縁外装は、0.125インチ(0.32センチメートル)の、15層マルチストランドケーブル上の厚さまたは積層、および、0.25インチ(0.64センチメートル)の、36層マルチストランドケーブル上の厚さまたは積層を有した。ケーブルは、鉱油中に浸漬され、鉱油は、外装された絶縁体に完全に浸透した。
【0016】
本発明のケーブルの主要な利点は、それを、変圧器内で、先行技術のケーブルより高い温度で動作させることができることである。変圧器内の油とケーブルとの間の最大温度差を約60℃に上げることができ、それにより、絶縁体の早すぎる老化を伴わずに、変圧器のために必要なケーブルの数を低減する。たとえば、0.125インチの積層のセルロース絶縁体を有する3つの350MCMケーブルを使用する、50MVA、12470V変圧器が、本発明によって説明されるような0.125インチの積層のクレーピングされたアラミドシートで絶縁された同じケーブルサイズの2つだけで動作する必要があるであろう。
【0017】
一実施形態において、本発明のケーブルは、変圧器内のケーブルとして有用である。本発明の別の実施形態は、本明細書で説明されるような絶縁マルチストランドケーブルを含んでなる変圧器である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のケーブルの一実施形態の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数の非絶縁ワイヤを含んでなるマルチストランドケーブルと、
b)ケーブルを外装する電気絶縁体とを含んでなる絶縁電力ケーブルであって、
電気絶縁体が、厚さが0.0625から0.5インチ(0.16から1.3センチメートル)であり、螺旋状に巻かれたクレーピングされたテープの複数の層を含んでなり、テープが、少なくとも50重量パーセントのアラミド材料を含んでなり、テープが、クレーピングされる前、1立方センチメートルあたり0.1から0.5グラムの密度を有する絶縁電力ケーブル。
【請求項2】
ケーブル上に外装された電気絶縁体の密度が、1立方センチメートルあたり0.2から0.6グラムである請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
ケーブル上に外装された電気絶縁体の密度が、1立方センチメートルあたり0.3から0.5グラムである請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
アラミド材料が、アラミド繊維を含んでなる不織シートである請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
不織シートがアラミド紙である請求項4に記載のケーブル。
【請求項6】
アラミド材料がメタ−アラミドポリマーである請求項1に記載のケーブル。
【請求項7】
メタ−アラミドポリマーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である請求項6に記載のケーブル。
【請求項8】
アラミド材料がパラ−アラミドポリマーである請求項1に記載のケーブル。
【請求項9】
メタ−アラミドポリマーがポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である請求項6に記載のケーブル。
【請求項10】
複数の非絶縁ワイヤが、複数の束の形態で存在する請求項1に記載のケーブル。
【請求項11】
マルチストランドケーブルが、8AWGから1000MCMのサイズを有する請求項1に記載のケーブル。
【請求項12】
請求項1に記載のケーブルを含んでなる変圧器に有用なケーブル。
【請求項13】
請求項1に記載のケーブルを含んでなる変圧器。

【図1】
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【公表番号】特表2008−529257(P2008−529257A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554160(P2007−554160)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/003328
【国際公開番号】WO2006/083816
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】