説明

絶縁電線及びワイヤハーネス

【課題】放熱性に優れ、丸ケーブルとの結束に要する作業が容易な絶縁電線及びそのような絶縁電線を含むワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、最も幅の広い樋状ケーブル10と丸ケーブル9と結束材8とを備える。樋状ケーブル10の湾曲絶縁被覆3は、複数の導体2を内包し、複数の導体2を幅方向において湾曲する湾曲面F1に沿って並列する状態で保持する。湾曲絶縁被覆3は、幅方向において湾曲する凹面をなす第一表面311を形成する凹側被覆部31と、凸面をなす第二表面321を形成する凸側被覆部32と、一対の庇部33とを有する。一対の庇部33は、凹側被覆部31における幅方向の両側の縁部各々から、第一表面311の延長面に沿って、もしくはその延長面よりも幅方向の内側へ向かって延びて形成されている。結束材8は、丸ケーブル9が凹側被覆部31に対向する状態で樋状ケーブル10と丸ケーブル9とを束ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスにおいて、ごく一般的に採用される絶縁電線は、線状の導体からなる1本の芯線と、絶縁材料からなり1本の芯線を内包する絶縁被覆とを備え、概ね円柱状に形成されている。以下、そのような絶縁電線のことを丸ケーブルと称する。
【0003】
一方、車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、特許文献1に示されるように、フラットケーブルが採用される場合がある。フラットケーブルは、線状の複数の導体と、絶縁材料からなり、複数の導体を内包するとともに、複数の導体をそれらが平面に沿って並列する状態で保持する絶縁被覆とを備えた絶縁電線である。
【0004】
フラットケーブルは、丸ケーブルに比べ、導体の総断面積に対する総表面積の比が大きく放熱性に優れており、通電電流を大きくできる。そのため、電気自動車及びハイブリッド自動車などの電動車両においては、電線に流れる電流の増大に伴い、電線の過剰な発熱を防止するため、フラットケーブルの採用機会が増えつつある。
【0005】
従って、ワイヤハーネスにおいて、粘着テープ又は結束ベルトなどの結束材によって結束される複数の絶縁電線の中に、フラットケーブルと丸ケーブルとが混在する状況が増えつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−14449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フラットケーブルと丸ケーブルとが束ねられる場合、丸ケーブルがフラットケーブルの平坦な表面上を滑りやすく、フラットケーブルと丸ケーブルとの位置関係が安定しない。そのため、従来のフラットケーブルは、丸ケーブルとの結束に要する作業が煩雑であるという問題点を有している。
【0008】
本発明は、放熱性に優れ、丸ケーブルとの結束に要する作業が容易な絶縁電線及びそのような絶縁電線を含むワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る絶縁電線は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、第1の方向に沿う線状の複数の導体である。
(2)第2の構成要素は、絶縁材料からなり、複数の前記導体を内包するとともに、複数の前記導体をそれらが前記第1方向に直交する第2方向において湾曲する湾曲面に沿って並列する状態で保持する湾曲絶縁被覆である。この湾曲絶縁被覆は、以下に示される凹側被覆部、凸側被覆部及び一対の庇部を有する。前記凹側被覆部は、前記第2方向において湾曲する凹面をなす第1の表面を形成し、並列した複数の前記導体の一方の側を第1の厚みで覆う部分である。また、前記凸側被覆部は、前記第1の表面に対し反対側で前記第2方向において湾曲する凸面をなす第2の表面を形成し、並列した複数の前記導体の他方の側を第2の厚みで覆う部分である。また、前記一対の庇部は、前記凹側被覆部における前記第2方向の両側の縁部各々から、前記凹側被覆部の前記第1の表面の延長面に沿って、もしくは前記凹側被覆部の前記第1の表面の延長面よりも前記第2方向における内側へ向かって延びて形成された一対の部分である。
【0010】
また、本発明に係る絶縁電線において、前記凹側被覆部の前記第1の表面及び前記凸側被覆部の前記第2の表面の各々に、前記第1方向に沿う複数の溝が形成されていることが考えられる。
【0011】
また、本発明は、以上に示された本発明に係る絶縁電線を備えたワイヤハーネスの発明として捉えられることもできる。即ち、本発明に係るワイヤハーネスは、第1の方向に沿う複数の絶縁電線と、複数の前記絶縁電線を束ねた結束材と、を備えるワイヤハーネスである。そして、複数の前記絶縁電線は、最も幅の広い第1の絶縁電線とそれ以外の第2の絶縁電線とを含む。ここで、前記第1の絶縁電線は、前述した本発明に係る絶縁電線である。また、前記結束材は、前記第2の絶縁電線が前記第1の絶縁電線における前記凹側被覆部に対向する状態で前記第1の絶縁電線と前記第2の絶縁電線とを束ねている。
【0012】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、複数の前記絶縁電線が、2つの前記第1の絶縁電線と1つ以上の前記第2の絶縁電線とを含むことが考えられる。この場合、前記結束材は、前記第2の絶縁電線が2つの前記第1の絶縁電線各々の前記凹側被覆部に挟み込まれる状態で前記第1の絶縁電線と前記第2の絶縁電線とを束ねている。
【発明の効果】
【0013】
以下の説明において、本発明に係る絶縁電線のことを第1の絶縁電線と称する。また、粘着テープ又は結束ベルトなどの結束材によって本発明に係る絶縁電線と一緒に結束される丸ケーブルなどの他の絶縁電線のことを第2の絶縁電線と称する。
【0014】
第1の絶縁電線において、凹側被覆部の表面(第1の表面)は、幅方向において湾曲する凹面をなしている。さらに、一対の庇部は、凹側被覆部の両側において、凹面が形成する溝の深さをより深くし、凹面と凹面の両外側とを仕切る仕切り壁となっている。即ち、第1の絶縁電線は樋状に形成されており、凹側被覆部及び一対の庇部は、第2の絶縁電線の配線空間となる溝を形成している。
【0015】
従って、第1の絶縁電線よりも幅の狭い第2の絶縁電線が、凹側被覆部に対向する状態、即ち、凹側被覆部及び一対の庇部が形成する溝内に配置された状態で、第1の絶縁電線と第2の絶縁電線とが束ねられた場合、第2の絶縁電線は、凹側被覆部と一対の庇部とにより形成される深い溝(配線空間)の中に安定的に収まりやすい。そのため、本発明によれば、第1の絶縁電線と丸ケーブルなどの第2の絶縁電線との結束に要する作業が容易である。
【0016】
さらに、結束された第1の絶縁電線及び第2の絶縁電線に外力が加わった場合でも、結束状態が乱れたり解けたりする事態が生じにくい。即ち、第1の絶縁電線と1つ以上の第2の絶縁電線全体との密着度合いが高く、複数の絶縁電線の結束状態が安定したワイヤハーネスが得られる。
【0017】
また、第1の絶縁電線において、複数の導体は、湾曲絶縁被覆により、湾曲面に沿って並列する状態で保持されている。そのため、第1の絶縁電線は、従来のフラットケーブルと同様に、丸ケーブルよりも、導体の総断面積に対する総表面積の比が大きく放熱性に優れている。
【0018】
また、第1の絶縁電線において、凹側被覆部の表面(第1の表面)及び凸側被覆部の表面(第2の表面)の各々に、第1方向に沿う複数の溝が形成されていればなお好適である。この場合、湾曲絶縁被覆は、複数の溝各々の幅が僅かに伸縮することにより、幅方向において比較的大きく撓むことが可能である。従って、第1の絶縁電線は、一緒に結束される第2の絶縁電線全体の外形に応じて、凹側被覆部により形成される湾曲面(凹面)の曲率の調整が可能となる。その結果、第1の絶縁電線と第2の絶縁電線全体との密着度合いがより高まり、複数の絶縁電線の結束状態がより安定したワイヤハーネスが得られる。
【0019】
また、本発明に係るワイヤハーネスが、2つの第1の絶縁電線を備えることも考えられる。この場合、第2の絶縁電線が2つの第1の絶縁電線各々の凹側被覆部に挟み込まれる状態で、第1の絶縁電線と第2の絶縁電線とが結束されれば、第2の絶縁電線は、対向する2つの凹側被覆部と二対の庇部との間に形成される配線空間に安定的に収まりやすい。その結果、2つの第1の絶縁電線と1つ以上の第2の絶縁電線との結束に要する作業が容易となる。また、2つの第1の絶縁電線と1つ以上の第2の絶縁電線全体との密着度合いが高く、複数の絶縁電線の結束状態がより安定したワイヤハーネスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樋状ケーブル10の一部の断面図を含む斜視図である。
【図2】樋状ケーブル10の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の一部の断面図を含む斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aの一部の断面図を含む斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る樋状ケーブル10Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0022】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る絶縁電線の一例である樋状ケーブル10及び本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の構成について説明する。
【0023】
<樋状ケーブル>
図1及び図2に示されるように、樋状ケーブル10は、複数の導体2と湾曲絶縁被覆3とを備えた絶縁電線である。導体2各々は、例えば、軟銅、銅の合金、アルミニウム又はアルミニウムの合金などの金属材料からなる線状の導体である。
【0024】
導体2は、寄り合わされた複数の線材からなる撚り線、又は1本の線材からなる単線であることが考えられる。各図に示される例では、樋状ケーブル10は、7本の導体2を備えるが、導体2の数は、2本乃至6本、又は7本以上であることも考えられる。
【0025】
以下の説明において、線状の導体2の長手方向を第1方向と称する。各図に記された座標軸におけるX軸の方向が第1方向である。導体2は、第1方向に沿う線状の導電性部材である。
【0026】
湾曲絶縁被覆3は、絶縁材料からなり、複数の導体2を内包し、複数の導体2全体の覆う部材である。湾曲絶縁被覆3は、その内側の導体2とその外側に存在する物とを電気的に絶縁する部材であり、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル又はポリアミド系ナイロンなどの樹脂の部材である。湾曲絶縁被覆3は、複数の導体2を内包し、複数の導体2全体を覆う。
【0027】
また、湾曲絶縁被覆3は、複数の導体2をそれらが第1方向に直交する第2方向において湾曲する第一湾曲面F1に沿って並列する状態で保持する部材でもある。従って、湾曲絶縁被覆3は、第一湾曲面F1に沿って湾曲した樋状に形成されている。
【0028】
本実施形態においては、第一湾曲面F1は、半径R1の円弧面である。しかしながら、第一湾曲面F1が、楕円弧面又は円弧面以外の湾曲面などであることも考えられる。
【0029】
また、本実施形態においては、湾曲絶縁被覆3は、複数の導体2を第一湾曲面F1に沿って一列に並列した状態で保持するが、より細い複数の導体2が、第一湾曲面F1に沿って二列以上で並列した状態で、湾曲絶縁被覆3によって保持されることも考えられる。
【0030】
図1から図3に示される例では、複数の導体2は、隣接する導体2どうしが接して並列する状態で保持されている。しかしながら、湾曲絶縁被覆3が、複数の導体2を複数のグループに分けて絶縁し、各グループ内において導体2どうしが接する状態で保持することも考えられる。
【0031】
なお、各図に記された座標軸におけるY軸の方向が第2方向である。また、各図に記された座標軸におけるZ軸の方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向である。即ち、第1方向(X軸方向)は、樋状ケーブル10の長手方向であり、第2方向(Y軸方向)は、樋状ケーブル10の幅方向である。
【0032】
より具体的には、湾曲絶縁被覆3は、凹側被覆部31と凸側被覆部32と一対の庇部33とを有している。凹側被覆部31は、第2方向において湾曲する凹面をなす第一表面311を形成し、並列した複数の導体2の一方の側を第1の厚みD1で覆う部分である。
【0033】
本実施形態においては、第一表面311は、半径R1よりも小さな半径R2の円弧面である第二湾曲面F2に沿って形成されている。しかしながら、第一表面311が沿う第二湾曲面F2が、楕円弧面又は円弧面以外の湾曲面であることも考えられる。
【0034】
一方、凸側被覆部32は、第一表面に対し反対側で前記第2方向において湾曲する凸面をなす第二表面321を形成し、並列した複数の導体2の他方の側を第2の厚D2みで覆う部分である。例えば、第2の厚みD2は、第1の厚みD1と同じ又は第1の厚みD1よりも大きい。
【0035】
本実施形態においては、第二表面321は、半径R1よりも大きな半径の円弧面に沿って形成されている。しかしながら、第二表面321が、楕円弧面又は円弧面以外の湾曲面に沿った凸面であることも考えられる。
【0036】
また、一対の庇部33は、凹側被覆部31における第2方向の両側の縁部各々から、凹側被覆部31の第一表面311の延長面に沿って、即ち、第二湾曲面F2に沿って延びて形成された一対の部分である。樋状ケーブル10において、凹側被覆部31と一対の庇部33とを併せた部分の長さ(第二湾曲面F2に沿う長さ)は、凸側被覆部32の長さよりも長く形成されている。
【0037】
また、本実施形態においては、凹側被覆部31の第一表面311には、第1方向に沿う複数の溝312が形成されている。同様に、凸側被覆部32の第二表面321にも、第1方向に沿う複数の溝322が形成されている。
【0038】
また、本実施形態においては、複数の溝312,322は、隣り合う導体2の境界線に対向する位置に形成されている。これにより、凹側被覆部31における溝312が形成された部分の厚み、及び凸側被覆部32における溝322が形成された部分の厚みが、他の部分よりも薄くなることが回避される。
【0039】
図1及び図2に示される樋状ケーブル10は、一般的なフラットケーブル及び丸ケーブルと同様に、絶縁被覆の成形用の金型であるダイスを用いた押し出し成形により製造される。但し、樋状ケーブル10の製造に用いられるダイスの出口側の開口の形状は、図2に示される樋状ケーブル10の断面形状に対応した形状である。
【0040】
<ワイヤハーネス>
また、図3に示されるように、ワイヤハーネス1は、第1の方向に沿う1つの樋状ケーブル10と、第1方向に沿う複数の丸ケーブル9と、結束材8とを備えている。
【0041】
丸ケーブル9は、線状の導体からなる1本の芯線と、絶縁材料からなり一本の芯線を内包する絶縁被覆とを備え、概ね円柱状に形成された一般的な絶縁電線である。丸ケーブル9各々の幅(直径)は、樋状ケーブル10の幅よりも小さい。即ち、ワイヤハーネス1において束ねられた複数の絶縁電線のうち、最も幅の広い絶縁電線が樋状ケーブル10である。
【0042】
結束材8は、粘着テープ又は結束ベルトなどである。ワイヤハーネス1において、結束材8は、複数の丸ケーブル9が樋状ケーブル10における凹側被覆部31に対向する状態で、樋状ケーブル10と丸ケーブル9とを束ねている。
【0043】
<効果>
樋状ケーブル10において、凹側被覆部31の表面(第一表面311)は、幅方向(第2方向)において湾曲する凹面をなしている。さらに、一対の庇部33は、凹側被覆部31の両側において、凹面(第一表面311)が形成する溝の深さをより深くし、凹面と凹面の両外側とを仕切る仕切り壁となっている。即ち、樋状ケーブル10は、樋状に形成されており、凹側被覆部31及び一対の庇部33は、丸ケーブル9などの他の絶縁電線の配線空間となる溝を形成している。
【0044】
従って、樋状ケーブル10よりも幅の狭い丸ケーブル9が、凹側被覆部31に対向する状態、即ち、凹側被覆部31及び一対の庇部33が形成する溝内に配置された状態で、樋状ケーブル10と丸ケーブル9とが束ねられた場合、丸ケーブル9は、凹側被覆部31と一対の庇部33とにより形成される深い溝(配線空間)の中に安定的に収まりやすい。
【0045】
即ち、従来のフラットケーブルと丸ケーブルとが束ねられる場合とは異なり、丸ケーブル9は、凹側被覆部31の第一表面311上を滑って凹側被覆部31の外側へはみ出しにくく、樋状ケーブル10と丸ケーブル9との位置関係が安定する。従って、樋状ケーブル10が採用されることにより、従来のフラットケーブルが採用される場合よりも、樋状ケーブル10と丸ケーブル9との結束に要する作業が容易である。
【0046】
さらに、結束された樋状ケーブル10及び丸ケーブル9、即ち、ワイヤハーネス1に外力が加わった場合でも、結束状態が乱れたり解けたりする事態が生じにくい。即ち、樋状ケーブル10及び1つ以上の丸ケーブル9の結束状態が安定したワイヤハーネス1が得られる。
【0047】
また、樋状ケーブル10において、複数の導体2は、湾曲絶縁被覆3により、第1湾曲面F1に沿って並列する状態で保持されている。そのため、樋状ケーブル10は、従来のフラットケーブルと同様に、丸ケーブル9よりも、導体2の総断面積に対する総表面積の比が大きく放熱性に優れている。
【0048】
また、樋状ケーブル10において、凹側被覆部31の表面(第一表面311)及び凸側被覆部32の表面(第二表面321)の各々に、第1方向に沿う複数の溝312,322が形成されている。そのため、湾曲絶縁被覆3は、複数の溝312,322各々の幅が僅かに伸縮することにより、幅方向(第2方向)において比較的大きく撓むことが可能である。
【0049】
従って、樋状ケーブル10は、一緒に結束される複数の丸ケーブル9全体の外形に応じて、凹側被覆部31により形成される湾曲面(凹面)の曲率の調整が可能となる。その結果、樋状ケーブル10と複数の丸ケーブル9全体との密着度合いがより高まり、樋状ケーブル10及び複数の丸ケーブル9の結束状態がより安定したワイヤハーネス1が得られる。
【0050】
<第2実施形態に係るワイヤハーネス>
次に、図4を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aについて説明する。このワイヤハーネス1Aは、図3に示されたワイヤハーネス1と比較して、樋状ケーブル10が追加された構成を有している。図4において、図1から図3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス1Aにおけるワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明する。
【0051】
ワイヤハーネス1Aが備える複数の絶縁電線は、2つの樋状ケーブル10と1本以上の丸ケーブル9とを含む。図4に示される例では、ワイヤハーネス1Aは、12本の丸ケーブル9を備えている。
【0052】
そして、ワイヤハーネス1において、結束材8は、丸ケーブル9が2つの樋状ケーブル10各々の凹側被覆部31に挟み込まれる状態で、2つの樋状ケーブル10と1つ以上の丸ケーブル9とを束ねている。
【0053】
<効果>
ワイヤハーネス1Aにおいては、丸ケーブル9は、対向する2つの凹側被覆部31と二対の庇部33との間に形成される配線空間に安定的に収まりやすい。その結果、2つの樋状ケーブル10と1つ以上の丸ケーブル9との結束に要する作業が容易となる。
【0054】
さらに、2つの樋状ケーブル10と1つ以上の丸ケーブル9全体との密着度合いが高く、2つの樋状ケーブル10及び1つ以上の丸ケーブル9の結束状態がより安定したワイヤハーネス1Aが得られる。
【0055】
<第2実施形態に係る樋状ケーブル>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る絶縁電線の一例である樋状ケーブル10Aについて説明する。この樋状ケーブル10Aは、図1及び図2に示された樋状ケーブル10と比較して、一対の庇部33とは形状の異なる一対の庇部33Aを有している点のみが異なる。図5において、図1及び図2に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、樋状ケーブル10Aにおける樋状ケーブル10と異なる点についてのみ説明する。
【0056】
樋状ケーブル10Aは、樋状ケーブル10の湾曲絶縁被覆3に相当する湾曲絶縁被覆3Aを備える。樋状ケーブル10Aの湾曲絶縁被覆3Aは、凹側被覆部31と凸側被覆部32と一対の庇部33Aとを有している。
【0057】
一対の庇部33Aは、凹側被覆部31における第2方向の両側の縁部各々から、凹側被覆部31の第一表面311の延長面よりも第2方向における内側へ向かって、即ち、第二湾曲面F2よりも内側へ向かって延びて形成された一対の部分である。樋状ケーブル10Aにおいて、凹側被覆部31と一対の庇部33Aとを併せた部分の長さは、凸側被覆部32の長さよりも長く形成されている。
【0058】
樋状ケーブル10Aにおいて、一対の庇部33Aは、凹側被覆部31の両側において、凹面(第一表面311)が形成する溝の深さをより深くし、凹面と凹面の両外側とを仕切る仕切り壁となっている。即ち、樋状ケーブル10Aは、樋状に形成されており、凹側被覆部31及び一対の庇部33Aは、丸ケーブル9などの他の絶縁電線の配線空間となる溝を形成している。
【0059】
また、ワイヤハーネス1において樋状ケーブル10Aが採用された場合、結束材8は、複数の丸ケーブル9が樋状ケーブル10Aにおける凹側被覆部31に対向する状態で、樋状ケーブル10と丸ケーブル9とを束ねる。即ち、複数の丸ケーブル9は、樋状ケーブル10Aにおける凹側被覆部31と一対の庇部33Aとが形成する溝に配置された状態で、樋状ケーブル10Aと結束される。
【0060】
従って、ワイヤハーネス1において樋状ケーブル10Aが採用された場合も、樋状ケーブル10が採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。
【0061】
<その他>
以上に示された各実施形態においては、樋状ケーブル10,10Aと一緒に結束される他の絶縁電線は、複数の丸ケーブル9である。しかしながら、樋状ケーブル10,10Aと一緒に結束される他の絶縁電線が、樋状ケーブル10,10Aよりも幅の狭い1本の丸ケーブル9であることも考えられる。また、樋状ケーブル10,10Aと一緒に結束される他の絶縁電線が、樋状ケーブル10,10Aよりも幅の狭い1本以上のフラットケーブルを含むことも考えられる。
【0062】
また、樋状ケーブル10,10Aにおいて、溝312,322のない凹側被覆部31及び凸側被覆部32が採用されることも考えられる。
【符号の説明】
【0063】
1,1A ワイヤハーネス
2 導体
3,3A 湾曲絶縁被覆
8 結束材
9 丸ケーブル(第2の絶縁電線)
10,10A 樋状ケーブル(第1の絶縁電線)
31 凹側被覆部
32 凸側被覆部
33,33A 庇部
311 第一表面
312,322 溝
321 第二表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿う線状の複数の導体と、
絶縁材料からなり、複数の前記導体を内包するとともに、複数の前記導体をそれらが前記第1方向に直交する第2方向において湾曲する湾曲面に沿って並列する状態で保持する湾曲絶縁被覆と、を備え、
前記湾曲絶縁被覆は、
前記第2方向において湾曲する凹面をなす第1の表面を形成し、並列した複数の前記導体の一方の側を第1の厚みで覆う凹側被覆部と、
前記第1の表面に対し反対側で前記第2方向において湾曲する凸面をなす第2の表面を形成し、並列した複数の前記導体の他方の側を第2の厚みで覆う凸側被覆部と、
前記凹側被覆部における前記第2方向の両側の縁部各々から、前記凹側被覆部の前記第1の表面の延長面に沿って、もしくは前記凹側被覆部の前記第1の表面の延長面よりも前記第2方向における内側へ向かって延びて形成された一対の庇部と、を有することを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記凹側被覆部の前記第1の表面及び前記凸側被覆部の前記第2の表面の各々に、前記第1方向に沿う複数の溝が形成されている、請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
第1の方向に沿う複数の絶縁電線と、
複数の前記絶縁電線を束ねた結束材と、を備えるワイヤハーネスであって、
複数の前記絶縁電線は、最も幅の広い第1の絶縁電線とそれ以外の第2の絶縁電線とを含み、
前記第1の絶縁電線は、
前記第1の方向に沿う線状の複数の導体と、
絶縁材料からなり、複数の前記導体を内包するとともに、複数の前記導体をそれらが前記第1方向に直交する第2方向において湾曲する湾曲面に沿って並列する状態で保持する湾曲絶縁被覆と、を備え、
前記湾曲絶縁被覆は、
前記第2方向において湾曲する凹面をなす第1の表面を形成し、並列した複数の前記導体の一方の側を第1の厚みで覆う凹側被覆部と、
前記第1の表面に対し反対側で前記第2方向において湾曲する凸面をなす第2の表面を形成し、並列した複数の前記導体の他方の側を第2の厚みで覆う凸側被覆部と、
前記凹側被覆部における前記第2方向の両側の縁部各々から、前記凹側被覆部の前記第1の表面の延長面に沿って、もしくは前記凹側被覆部の前記第1の表面の延長面よりも前記第2方向における内側へ向かって延びて形成された一対の庇部と、を有し、
前記結束材は、
前記第2の絶縁電線が前記第1の絶縁電線における前記凹側被覆部に対向する状態で前記第1の絶縁電線と前記第2の絶縁電線とを束ねていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
複数の前記絶縁電線は、2つの前記第1の絶縁電線と1つ以上の前記第2の絶縁電線とを含み、
前記結束材は、
前記第2の絶縁電線が2つの前記第1の絶縁電線各々の前記凹側被覆部に挟み込まれる状態で前記第1の絶縁電線と前記第2の絶縁電線とを束ねている、請求項3に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37805(P2013−37805A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170839(P2011−170839)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】