説明

網戸用ネット

【課題】紫外線透過抑制機能を有する網戸用ネットを提供する。
【解決手段】繊維形成性熱可塑性ポリマーからなるモノフィラメントが経糸及び緯糸に配されてなる織物からなる網戸用ネットであって、該モノフィラメントの直径が10〜100μm、該織物の経方向、緯方向の織密度が共に50〜500本/inchであり、かつ該織物に、粒径が0.01〜0.5μmの紫外線吸収剤が該織物の重量に対して1.0〜5.0重量%付着していることを特徴とする網戸用ネットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収性能を有する網戸用ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、網戸は家屋をはじめとする建造物において広く用いられている。網戸は、建造物の窓部等に取り付けられ、窓を開けて内外気の交換を行なう際、虫や塵の室内侵入を防ぐ役割を果たす物である。これまで用いられてきた網戸用ネットとしては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、或いはステンレスやアルミといった金属が用いられ、繊径が200〜300μm程度の比較的太いモノフィラメントを経糸及び緯糸に配し、織密度14〜22本/inchという比較的低い密度で織られたものがよく知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、このような太径のモノフィラメントを用いて低密度で織られた網戸用ネットは、通気性は高いものの、紫外線の透過を抑制することができなかった。
【0003】
これに対して、紫外線の透過を抑制する網戸として、紫外線をカットするフィルムを貼着した網戸が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、かかる網戸には、フィルムによってメッシュの開口部が塞がれ通気性が低下するという問題があり、網戸本来の機能を有するものではない。
【0004】
一方、粉塵や花粉等の侵入を防ぎ、これらの微細な有害物質を効果的に捕捉できる網戸用ネットとして、細いモノフィラメントからなる高密度の網戸用ネットが提案されている(特許文献4参照)。しかし、かかる高密度な網戸用ネットは、微細な有害物質を捕捉する効果はあるものの、紫外線の透過までを抑制することはできないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−54375号公報
【特許文献2】特開2002−227563号公報
【特許文献3】特開2005−264683号公報
【特許文献4】実用新案登録第3093012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術が有する問題点を解決する為になされたものであり、その目的は、紫外線透過抑制機能を有する網戸用ネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記目的は、細い繊径のモノフィラメントからなる織密度の高いメッシュ織物を用い、それに付与する紫外線吸収剤について検討した結果、該剤によっては、モノフィラメントの物性の低下を抑制するだけでなく、屋内への紫外線の侵入を著しく防止できることを見出した。
【0008】
かくして、本発明によれば、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなるモノフィラメントが経糸及び緯糸に配されてなる織物からなる網戸用ネットであって、該モノフィラメントの直径が10〜100μm、該織物の経方向、緯方向の織密度が共に50〜500本/inchであり、かつ該織物に、粒径が0.01〜0.5μmの紫外線吸収剤が該織物の重量に対して1.0〜10.0重量%付着していることを特徴とする網戸用ネットが提供される。また、該織物を黄色染料で、染色することによって、両方の効果が相まって、一段と紫外線抑制効果が高くなることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通気性を低下させる事無く、優れた紫外線透過抑制機能を有する網戸用ネットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の網戸用ネットは、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなるモノフィラメントが経糸及び緯糸に配されてなる織物からなる網戸用ネットであって、該モノフィラメントの直径が10〜100μm、該織物の経方向、緯方向の織密度が共に50〜500本/inchであり、かつ該織物に、粒径が0.01〜0.5μmの紫外線吸収剤が該織物の重量に対して1.0〜5.0重量%付着していることを特徴とする網戸用ネットであり、以下、詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の網戸用ネットを構成する、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなるモノフィラメントの直径は10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。該直径が100μmよりも大きくなると、高い密度で織る事が難しくなる上、通気性も低下する為好ましくない。また逆に、該直径が10μmより小さくなると、強度が低下し、製織中或いは使用中にモノフィラメントが切れてしまう恐れがある為好ましくない。係るモノフィラメントの繊径については、経糸と緯糸で同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0012】
前記モノフィラメントを形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーの具体例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられ、中でも、ポリエステルが最も好ましい。繊維形成性熱可塑性ポリマーとしてポリエステルを採用する事で織物の染色が可能となり、プリント柄の使用、或いは、着色により更なる紫外線透過抑制機能の付与が可能となる。
【0013】
上記のポリエステルとしては、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート系ポリエステル、又は、主たる繰り返し単位がブチレンテレフタレートであるポリブチレンテレフタレート系ポリエステル、又は、主たる繰り返し単位がトリメチレンテレフタレートであるポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルが好ましい。
【0014】
前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーには、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて添加剤を加えても良い。添加剤としては、細細孔形成剤、カチオン可染剤、着色剤、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消し剤、帯電防止剤、吸湿剤、抗菌剤、無機微粒子等が挙げられる。
【0015】
前記モノフィラメントの繊維形態は、繊維軸方向に連続したモノフィラメントであれば特に限定されず、その断面形状も特に限定されない。断面形状としては、丸、三角、扁平、中空等が挙げられる。尚、モノフィラメントの断面形状が丸以外の場合、繊径は径の最大部を測定するものとする。更に、該モノフィラメントは、常法の紡糸方法により得られるもので良く、強伸度の物性については特に限定されない。
【0016】
本発明の網戸用ネットを構成する織物は、前記のモノフィラメントが、経糸及び緯糸に配された織物である。織密度としては、経方向、緯方向共に50〜500本/inch、好ましくは80〜400本/inchである。織密度が500本/inchよりも大きいと、製織が困難となる上、開口部が小さくなり過ぎて通気性が低下する為好ましくない。また逆に、織密度が50本/inchよりも小さいと、開口部が大きくなり過ぎて網戸用ネットとしての濾過機能、及び紫外線透過抑制機能が低下する為好ましくない。かかる織物の織密度については、経方向と緯方向で同じであっても良いし、異なっていても良い。かかる織物の織組織については特に限定されない。織組織としては平織、綾織、朱子織等が挙げられるが、中でも、強度を保持し目ズレを低減させる上で平組織が最も好ましい。また、かかる織物は、レピア織機等の織機を用いて常法の製織により得られる。
【0017】
本発明の網戸用ネットにおいては、粒径が0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.4μm、より好ましくは0.05〜0.3μmの紫外線吸収剤が該織物の重量に対して1.0〜5.0重量%付着していることが肝要である。かかる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、サリチル酸系等が挙げられるが、中でも、ベンゾトリアゾール系が好ましい。例えば、通常用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の粒径は0.7μm程度であるが、本発明においては上記粒径に微粒子化された紫外線吸収剤を織物に付着させることで、均一かつ効率的に紫外線吸収性能を付与することができることを見出した。
【0018】
かかる紫外線吸収剤の付着量としては、織物の重量に対して1.0〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%である。紫外線吸収剤の添加量が1.0重量%より少ないと、十分な紫外線透過抑制機能を得ることができず、また逆に5.0重量%より多いと、添加した剤の量に比例した紫外線透過抑制機能を得ることができない。
【0019】
本発明の網戸用ネットは、無着色でも良いが、黄色に着色するのが好ましい。黄色に着色することにより、紫外線吸収性能を一層高めることが可能となる。本発明に用いる染料は、アゾ系、アントラキノン系の黄色分散染料を挙げることができ、中でも特にアゾ系染料が望ましい。かかるアゾ系染料としては具体的には、Dianix Yellow AC-E、Dianix Yellow S-6G、Dianix Orange Plus、 Mikeron Polyester Yellow 5G、MikeronPolyester Yellow 5G(以上、ダイスタージャパン株式会社)、CIBASET Yellow 2GC、TERASIL Yellow 4G(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)、Kayalon Polyester Yellow 4G-E(日本化薬株式会社)を挙げることができる。
【0020】
かかる染料の含有量としては、織物の重量に対して好ましくは1.0〜5.0重量%、より好ましくは1.0〜3.0重量%である。染料の含有量が1.0重量%より少ないと、十分な紫外線透過抑制機能が低下する傾向にあり、また逆に5.0重量%より多いと、それ以上量を多くしても紫外線透過抑制機能が得られず、染色堅牢性が低下し、洗濯等で他の衣料を汚染し易くなり好ましくない。
【0021】
本発明おいては、屋内への紫外線の侵入を防止する上で、網戸用ネットの、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満であることが望ましく、前記の量および粒径の紫外線吸収剤を織物に付着させることにより、これを達成することができる。また、該織物を黄色染料で、染色することによって、両方の効果が相まって、一段と紫外線抑制効果が高くなり、上記透過率を容易に達成することができる。
【0022】
本発明において、織物に紫外線抑制剤を付着させる方法としては、染色前加工時に付加する方法、染色浴中に添加する方法、染色後加工時に付加する方法等が挙げられるが、染色浴中に添加する方法が最も好ましい。
【0023】
染色方法としては、ビーム染色、ジッガー染色、チーズ染色、液流染色等が挙げられるが、目ズレやシワが起こり難いビーム染色が最も好ましい。また、染色加工条件としては、温度130〜135℃、30〜60分間の範囲が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、実施例における紫外線透過率は、分光光度計(株式会社島津製作所『UV−3600型』)を用いて波長200nm〜700nmの範囲を測定し、その中に含まれる280nm〜380nmの値を記載した。
【0025】
[実施例1]
直径30μmの、ポリエチレンテレフタレートからなる丸断面のモノフィラメントを経糸及び緯糸に用いて、レピア織機にて織密度が経緯共に300本/inchとなるよう平織で製織した。得られた織物を170℃でプレセットした後、ビーム染色機を用いた高圧130℃の染色条件において、0.3μmに微粒子化分散したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(日華化学株式会社製『サンライフLPX−80』)2.0重量%(o.w.f)を添加して60分間処理した。その後、130℃で乾燥し、更に170℃でファイナルセットする事により網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280nm〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満となり、紫外線透過抑制機能に優れるものであった。
【0026】
[実施例2]
高圧染色時に紫外線吸収剤1.0重量%(o.w.f)、及び黄色分散染料(ダイスタージャパン株式会社製『Dianix Yellow AC−E』)1.0重量%(o.w.f)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満となり、紫外線透過抑制機能に優れるものであった。
【0027】
[実施例3]
高圧染色時に紫外線吸収剤を5.0重量%(o.w.f)添加した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満となり、紫外線透過抑制機能に優れるものであった。
【0028】
[実施例4]
高圧染色時に紫外線吸収剤1.0重量%(o.w.f)、及び黄色分散染料5.0重量%(o.w.f)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満となり、紫外線透過抑制機能に優れるものであった。
【0029】
[実施例5]
直径80μmのポリエチレンテレフタレートからなる丸断面のモノフィラメントを経糸及び緯糸に用いて、レピア織機にて織密度が経緯共に100本/inchとなるよう平織で製織した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満となり、紫外線透過抑制機能に優れるものであった。
【0030】
[実施例6]
直径150μmの、ポリエチレンテレフタレートからなる丸断面のモノフィラメントを経糸及び緯糸に用いて、レピア織機にて織密度が経緯共に50本/inchとなるよう平織で製織した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%未満となり、紫外線透過抑制機能に優れるものであった。
【0031】
[比較例1]
粒径が0.7μmの紫外線吸収剤(日華化学株式会社製『サンライフLP−240』)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で編戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%を上回り、十分な紫外線透過抑制機能があるとは言えなかった。
【0032】
[比較例2]
染色処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%を大きく上回り、紫外線透過抑制機能があるとは言えなかった。
【0033】
[比較例3]
高圧染色時に紫外線吸収剤0.5重量%(o.w.f)のみを添加した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%を上回り、十分な紫外線透過抑制機能があるとは言えなかった。
【0034】
[比較例4]
高圧染色時に黄色分散染料2.0重量%(o.w.f)のみを添加した以外は、実施例1と同様の方法で網戸用ネットを得た。
得られた網戸用ネットの紫外線透過率を測定した結果、波長280〜380nmにピークを有する紫外線に対する透過率が50%を上回り、十分な紫外線透過抑制機能があるとは言えなかった。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維形成性熱可塑性ポリマーからなるモノフィラメントが経糸及び緯糸に配されてなる織物からなる網戸用ネットであって、該モノフィラメントの直径が10〜100μm、該織物の経方向、緯方向の織密度が共に50〜500本/inchであり、かつ該織物に、粒径が0.01〜0.5μmの紫外線吸収剤が該織物の重量に対して1.0〜5.0重量%付着していることを特徴とする網戸用ネット。
【請求項2】
紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、請求項1記載の網戸用ネット。
【請求項3】
繊維形成性熱可塑性ポリマーがポリエステルである、請求項1または2に記載の網戸用ネット。
【請求項4】
網戸用ネットの、波長280〜380nmにピークを有する紫外線の透過率が50%未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の網戸用ネット。
【請求項5】
網戸用ネットが黄色染料により染色されている、請求項1〜4のいずれかに記載の網戸用ネット。
【請求項6】
黄色染料がアゾ系分散染料であり、黄色染料の含有量が織物の重量に対して1.0〜5.0重量%である、請求項5に記載の網戸用ネット。

【公開番号】特開2010−180588(P2010−180588A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23917(P2009−23917)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】