説明

綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための糸スプライシング装置

【課題】スプライシング過程のために設けられた糸端部の長さを、いつでも、迅速に問題なくかつ最適に適合させることができるように、糸クランプ兼切断装置が支承されている、糸スプライシング装置を提供する。
【解決手段】綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための糸スプライシング装置において、糸スプライシング装置10が、下側の糸クランプ兼切断装置23A及び上側の糸クランプ兼切断装置23Bのために調節駆動装置18,19を備えており、糸クランプ兼切断装置23A,23Bはそれぞれ、スプライシング角柱体32に対して外側の制限ポジション35と内側の制限ポジション36との間において移動可能に支承されていて、両糸クランプ兼切断装置23A,23Bの間の間隔aが調節可能であり、該間隔aは1つの間隔aminと別の間隔amaxとの間にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式の、綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための糸スプライシング装置、すなわち、空気を供給可能なスプライシング角柱体と、スプライシングされる糸端部を固定しかつ所定長さに切断する糸クランプ兼切断装置と、スプライシング角柱体のスプライシング通路内において準備された糸端部を位置決めするための糸供給装置とが設けられている形式の糸スプライシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の糸スプライシング装置は、繊維工業において、特に自動綾巻きワインダとの関連において、以前から公知である。
【0003】
有効性が実証されているこのような糸スプライシング装置は、通常、空気を供給可能なスプライシング角柱体と、スプライシングされる糸端部を固定しかつ所定長さに切断する下側及び上側の糸クランプ兼切断装置と、スプライシング角柱体のスプライシング通路内において準備された糸端部を位置決めするための糸供給装置とを有しており、このような糸スプライシング装置は例えば、DE19510171A1又はDE102006006390A1に詳しく記載されている。
【0004】
このような糸スプライシング装置によって、糸切れ又はコントロールされたクリアラ切断によって生じた2つの糸端部を、空気力によって交絡させて、結節のない糸継ぎ部を形成することができ、この糸継ぎ部は、本来の糸にほぼ等しい糸強度を有し、かつ理想的には本来の糸と等しい外観を有している。
【0005】
DE19510171A1に基づいて公知である糸スプライシング装置では、糸スプライシング装置の種々様々な機能エレメント、つまり糸クランプ兼切断装置、スプライサのカバーエレメント及び糸供給装置といった機能エレメントの駆動は、カムディスクユニットを介して行われ、このカムディスクユニットは、コネクタを介して糸巻返し部固有の駆動装置に接続されている。
【0006】
DE102006006390A1に記載された糸スプライシング装置は、そのスプライサハウジングの内部に、外歯列を備えていて旋回可能に支承された制御セグメントと、駆動ピニオンを備えていて規定されて制御可能なステップモータとを有している。
【0007】
駆動可能な制御セグメントには、直接又は間接的に、糸スプライシング装置の種々様々な機能エレメントが接続されている。すなわち制御セグメントは例えば、その周囲の領域にボールジョイント接続部を有しており、このボールジョイント接続部には制御ロッドを介して糸供給装置が接続されている。さらに制御セグメントは、特殊なレバー機構を介して糸スプライシング装置の糸クランプ兼切断装置及びカバーエレメントと接続されている。
【0008】
上に記載した糸スプライシング装置では、糸クランプ兼切断装置はさらにそれぞれ、異なったポジションにおいてスプライサハウジングに固定可能である。すなわち相応に構成された保持装置を用いて、糸クランプ兼切断装置はスプライサハウジングにねじ結合されることができ、これによって糸端部は、スプライシングされる糸に応じて決定される、糸クランプ兼切断装置のポジションに関連して、種々様々な長さを有することができる。
【0009】
糸端部の長さに関してはこの場合、スタンダード調節と弾性糸調節とコンパクト糸調節との間において区別することができる。
【0010】
公知の糸スプライシング装置はしかしながら次のような欠点を有している。すなわち公知の糸スプライシング装置では、3つの長さ調節の間においてしか選択をすることができないので、問題のある糸ではしばしば、糸端部の長さの正確な調節が不可能である。
【0011】
公知のスプライシング装置では、長さ調節の各変化は、かなりの時間を要する作業と結び付いており、しかもこの作業は、繊維機械の停止状態においてしか実施することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE19510171A1
【特許文献2】DE102006006390A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の糸スプライシング装置を改良して、スプライシング過程のために設けられた糸端部の長さを、いつでも、迅速に問題なくかつ最適に適合させることができるように、糸クランプ兼切断装置が支承されている、糸スプライシング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、本発明によれば請求項1記載のように構成された糸スプライシング装置によって解決される。
【0015】
すなわち前記課題を解決するために、本発明の構成では、綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための糸スプライシング装置であって、空気を供給可能なスプライシング角柱体と、スプライシングされる糸端部を固定しかつ所定長さに切断する糸クランプ兼切断装置と、スプライシング角柱体のスプライシング通路内において準備された糸端部を位置決めするための糸供給装置とが設けられている形式のものにおいて、糸スプライシング装置は、下側の糸クランプ兼切断装置及び上側の糸クランプ兼切断装置のために調節駆動装置を備えており、糸クランプ兼切断装置はそれぞれ、スプライシング角柱体に対して外側の制限ポジションと内側の制限ポジションとの間において移動可能に支承されていて、両糸クランプ兼切断装置の間の間隔が調節可能であり、該間隔は1つの間隔と別の間隔との間にある。
【0016】
本発明の別の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0017】
糸スプライシング装置の本発明による構成には特に次のような利点がある。すなわち本発明による糸スプライシング装置では、糸クランプ兼切断装置の間における間隔をほぼ無段階に調節できることに基づいて、スプライシングされる糸端部の長さの最適な適合が可能である。
【0018】
その結果、本発明のように構成された糸スプライシング装置によって、スプライシングされる糸端部が常に、その都度の糸材料に最適に合わせられた有利な長さを有することを、簡単に保証することができる。本発明による糸スプライシング装置によって所定長さに切断された糸端部は、要求されている品質基準に常に相当する、糸継ぎを確実に生ぜしめることができる。
【0019】
請求項2記載のように、別の有利な態様では、下側の糸クランプ兼切断装置及び上側の糸クランプ兼切断装置は、調節駆動装置を用いてそれぞれ別個に位置決め可能である。
【0020】
このように構成されていると、特に、問題のある糸の場合でも、極めて特殊にかつ極めて繊細に応じることができ、すなわち必要とあれば、例えば下側の糸クランプ兼切断装置はスプライシング角柱体に対して、上側の糸クランプ兼切断装置とは異なった間隔を有することができる。
【0021】
このようにして、種々異なる長さを有する糸端部による糸継ぎ部を形成することができる。例えば下糸の糸端部は、上糸の糸端部よりも幾分長くなるように切断することができ、しかしながら必要な場合には、下糸の対応する糸端部よりも大きな長さを有する、上糸の糸端部を形成することも可能である。
【0022】
請求項3に記載された別の有利な態様では、ウォーム伝動装置が、糸クランプ兼切断装置用の調節駆動装置の構成部材である。
【0023】
このようなウォーム伝動装置は特に、比較的小さな空間で大きな減速比を実現できるという利点を有しており、これは、糸クランプ兼切断装置のポジションの極めて正確な調節を可能にする。
【0024】
さらに大きな減速比を有するこのようなウォーム伝動装置は自縛式であるので、調節駆動装置との関連において付加的なロック装置を省くことができる。
【0025】
しかしながら糸クランプ兼切断装置用の調節駆動装置との関連において、必ずしもウォーム伝動装置を使用する必要はなく、他の形式の伝動装置を使用することも可能である。
【0026】
図4に記載されているように、択一的な態様では、例えば、偏心伝動装置が、糸クランプ兼切断装置用の調節駆動装置の構成部材である。このような偏心伝動装置は例えば極めて安価であり、しかも汚染に対して比較的鈍感である。
【0027】
請求項5もしくは6に記載されているように、別の有利な態様では、糸クランプ兼切断装置用の調節駆動装置は手動操作可能であっても(請求項5)、又は例えば、自動綾巻きワインダの中央制御装置を介してそれぞれ機械式に制御可能であってもよい(請求項6)。
【0028】
手動式の操作可能性(請求項5)はこの場合特に、製造コストが僅かであるという利点を有しているが、しかしながら、操作員が調節駆動装置を操作するために常に該当する作業位置に赴き、そこで操作を行う必要があり、これは比較的面倒であり、かつ時間がかかる。
【0029】
請求項6記載のように、糸クランプ兼切断装置が自動綾巻きワインダの中央制御装置を介してそれぞれ機械式に制御可能である糸クランプ兼切断装置は、手動式の操作とは異なり、例えばロット交換時に、自動綾巻きワインダの多数の糸スプライシング装置の迅速な適合を中央において行うことができる、という利点を有している。すなわち、スプライシングされる糸端部の長さは、新たな糸材料に応じて問題なく、かつ正確に適合させることができる。
【0030】
請求項6記載のように、糸クランプ兼切断装置の調節駆動装置がそれぞれ機械式に制御可能である場合には、位置決めのための電動機式の駆動装置として、糸クランプ兼切断装置のそれぞれに、規定されて制御可能なステップモータを設ける(請求項7)と、有利である。
【0031】
このようなステップモータは、糸クランプ兼切断装置の正確かつ再現可能な位置決めを、いつでも簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のように形成された糸スプライシング装置を備えた、自動綾巻きワインダの1つの作業位置を示す側面図である。
【図2】スプライシングされる糸端部の挿入中に、無段階式に移動調節可能な上側の糸クランプ兼切断装置と下側の糸クランプ兼切断装置を備えた、糸スプライシング装置を示す斜視図である。
【図3】図2に示した糸スプライシング装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
図1には、全体を符号1で示した、綾巻きパッケージを製造する繊維機械、図示の実施形態では自動綾巻きワインダが側面図で示されている。
【0035】
公知のように、このような自動綾巻きワインダ1は、その両終端位置(図示せず)の間に、それぞれ同一形式の多数の作業位置、ここでは糸巻返し部2を有している。
【0036】
これらの糸巻返し部2においては、例えば、リング精紡機(図示せず)において製造された紡績コップ9が大容積の綾巻きパッケージ15に巻き返され、綾巻きパッケージ15はその完成後に、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21に引き渡される。
【0037】
図示の実施形態では、自動綾巻きワインダ1は、コップ・巻管搬送システム3として形成された機械固有の補給装置(Logistikeinrichtung)を有しており、図1にはこの補給装置のうち、単に、コップ供給区間4、可逆式に駆動可能な貯え区間5、糸巻返し部2に通じる横方向搬送区間6及び巻管戻し区間7が示されている。
【0038】
このコップ・巻管搬送システム3において、皿形の搬送台8に鉛直方向に位置付けられて、つまり起立した状態で、紡績コップ9もしくは空管が循環する。
【0039】
供給された紡績コップ9は、それぞれ横方向搬送区間6の領域において糸巻返し部2に位置する繰出し位置ASにおいて、大容積の綾巻きパッケージ15に巻き返される。
【0040】
個々の糸巻返し部2は、そのために、公知のようにゆえに単に略示されているが、この作業位置2の整然とした運転を保証する種々様々な装置を有している。
【0041】
これらの公知の装置は例えば、バス導体42を介して自動綾巻きワインダ1の中央制御装置43に接続された糸巻返し部コンピュータ29、旋回軸16を中心にして可動で負圧供給可能な吸込みノズル12、旋回軸13を中心にして可動で負圧供給可能なグリッパ管11、及び空気力式の糸スプライシング装置10である。
【0042】
空気力式の糸スプライシング装置10は、通常の糸走路に対して幾分後退させられて配置されていて、例えばその中央ハウジング31で糸巻返し部ハウジング33に固定されている。
【0043】
このような糸スプライシング装置10は、図2及び図3を参照して後で詳しく述べるように、空気を供給可能なスプライシング通路20を備えたスプライシング角柱体(Spleissprisma)32の他に、さらに上側の糸クランプ兼切断装置23B及び下側の糸クランプ兼切断装置23A、旋回可能に支承された糸供給装置(Fadenzubringer)26、並びに同様に旋回可能に支承されたカバーエレメント25と有しており、このカバーエレメント25はスプライシング過程中にスプライシング角柱体32のスプライシング通路を閉鎖する。
【0044】
図2及び図3に示すように、スプライシング角柱体32は分配ブロック46に配置されており、この分配ブロック46にはさらに保持兼解繊管47が挿入されている。
【0045】
綾巻きパッケージ15は、巻取りプロセス中に自由回転可能に、巻取り装置24のパッケージフレーム28に保持されていて、図示の実施形態ではその表面で溝付ドラム14に接触しており、この溝付ドラム14は綾巻きパッケージ15を、摩擦によって連行し、かつ綾巻きパッケージ15に乗り上げる糸を整然と綾巻きするために働く。
【0046】
図1には、例えば1つの作業位置2における糸切れ後に生じる状況が示されている。吸込みノズル12は、糸切れ後に綾巻きパッケージ15に巻き上げられた上糸17oを受容し、この上糸17oを糸スプライシング装置10内に挿通する。
【0047】
同時に又は幾分時間をずらされて、グリッパ管11は、糸テンショナ(図示せず)において準備された下糸17uを保持し、次いでこの下糸17uを同様に糸スプライシング装置10内に挿通する。
【0048】
図2及び図3にはそれぞれ、本発明によるスプライシング装置10のうちの1つが詳しく示されている。
【0049】
例えばDE102006006390A1に詳しく記載されているように、この公知のスプライシング装置10では、中央ハウジング31の内部に電動機式の個別駆動装置、有利にはステップモータが配置されており、このステップモータの駆動ピニオンは制御セグメントの外歯列と噛み合っている。
【0050】
制御セグメント自体は、互いに異なるレバー機構を介して、糸クランプ兼切断装置23A,23B、旋回可能に支承された糸供給装置26及び、同様に旋回可能に支承されたカバーエレメント25に結合されている。
【0051】
特に図2から分かるように、スプライシングハウジング31には分配ブロック46が固定されており、この分配ブロック46は規定の空気を供給可能なスプライシング角柱体32を保持している。分配ブロック46はさらにいわゆる保持兼解繊管47を備えて構成されていて、これらの保持兼解繊管47内において、上糸17o及び下糸17uの、所定長さに切断された糸端部が、後続のスプライシング過程のために準備される。
【0052】
図2及び図3に示すように、糸スプライシング装置10はさらに調節駆動装置18,19を有しており、これらの調節駆動装置18,19は、それぞれ外側の制限ポジション35と内側の制限ポジション36との間における糸クランプ兼切断装置23A;23Bの無段階式の調節を可能にする。
【0053】
すなわち調節駆動装置18,19の相応な制御によって、糸クランプ兼切断装置23A,23Bの間の間隔aは、間隔aminと間隔amaxとの間において変化させることができ、ひいては上糸及び下糸の切断される糸端部の長さをほぼ無段階に調節することができる。
【0054】
調節駆動装置18,19はこの場合種々様々な実施形態を有することができる。調節駆動装置18,19は例えばウォーム伝動装置として形成されていてよく、手動か又は機械によって操作することができる。
【0055】
機械による操作時にウォーム伝動装置は例えばステップモータによって規定されて制御され、このステップモータは糸巻返し部コンピュータ29を介して例えば自動綾巻きワインダ1の中央制御装置43と接続されている。ウォーム伝動装置の代わりにしかしながらまた例えば、偏心伝動装置又はこれに類したもののような他の駆動装置を使用することも可能である。
【0056】
偏心伝動装置もまたこの場合操作員によって手動で操作されても、又は既に述べたように、機械式に制御されてもよい。
【0057】
本発明による糸スプライシング装置の作用形式:
ロットスタートの前に、初めに、その都度存在する糸材料に関連して、自動綾巻きワインダ1の糸スプライシング装置10の糸クランプ兼切断装置23A,23Bが最適に調節される。すなわち自動綾巻きワインダ1の中央制御装置43を介して糸スプライシング装置10の調節駆動装置18,19が制御されて、上糸17oの切断された糸端部と下糸17uの切断された糸端部とがそれぞれ所定の長さを有するようにされる。
【0058】
巻取り過程中に自動綾巻きワインダ1の糸巻返し部2の1つにおいて糸切れが発生した場合、又は糸欠陥に基づいてコントロールされたクリアラ切断が実施された場合に、該当する綾巻きパッケージ15はまず制動されて停止させられる。
【0059】
次いで吸込みノズル12が上糸17oを綾巻きパッケージ15から連れ戻し、この上糸17oを、例えばガイドプレートを用いて、上側の糸クランプ兼切断装置23Bの糸クランプ装置、スプライシング角柱体32におけるスプライシング通路、並びに下側の糸クランプ兼切断装置23Aの糸切断装置内に挿通する。
【0060】
同時に又はほぼ同時に、グリッパ管11によって下糸17uもまた保持され、同様に糸ガイドプレートを用いて、下側の糸クランプ兼切断装置23Aの糸クランプ装置、スプライシング角柱体32におけるスプライシング通路、並びに上側の糸クランプ兼切断装置23Bの糸切断装置内に位置決めされる。
【0061】
次いで、糸巻返し部コンピュータ29を介して糸スプライシング装置10が制御される。すなわち、スプライシング装置ハウジング31内に配置されたステップモータは、制御セグメントの旋回を開始させ、これによりカバーエレメント25、糸クランプ兼切断装置23A,23B及び糸供給装置26が操作され、これによって短時間後に、まずカバーエレメント25がスプライシング角柱体32の上に装着されて、スプライシング通路が覆われる。
【0062】
制御セグメントのさらなる旋回によって、同時に又は直後に、糸クランプ兼切断装置23A,23Bが操作され、両糸クランプ兼切断装置23A,23Bによって、上糸17o及び下糸17uの糸端部がクランプされて、所定長さに切断される。
【0063】
その後で、ステップモータ、ひいては制御セグメントは短時間停止させられ、スプライシング角柱体32の分配ブロック46内に配置された保持兼解繊管47に圧力空気が供給され、上糸17o及び下糸17uの糸端部は保持兼解繊管47内に吸い込まれて、そこで両糸端部の撚りが十分に解される。
【0064】
次にセグメントエレメントはステップモータによってさらに旋回させられ、この際に制御ロッドを介して糸供給装置26を操作し、この糸供給装置26は、上糸17o及び下糸17uの準備された糸端部を保持兼解繊管47から引き出し、両糸端部をスプライシング角柱体32のスプライシング通路内において、所定可能な重ね合わせをもって位置決めする。
【0065】
すなわちアームがそれぞれ、所属の保持兼解繊管47とは反対の側において上糸17oもしくは下糸17uの糸ストランドを掴んで、糸ループを生ぜしめるようになっている、糸供給装置26は、制御セグメントもしくはステップモータを介して制御され、これによって糸端部は保持兼解繊管47からスプライシング角柱体32のスプライシング通路に向かって引き出される。糸供給装置26はこの際に目標角度位置に旋回させられ、この目標角度位置においては、スプライシング通路内に引き戻された糸端部が、所定された最適なオーバラップを有することが保証されている。
【0066】
糸供給装置26の目標角度位置もまた、有利にはロットスタートの前に、バスシステム42を介して多数の作業位置2の糸巻返し部コンピュータ29と接続されている、自動綾巻きワインダ1の中央制御装置43において、調節することができる。
【0067】
両糸端部が、このような最適な重なり、つまり例えば糸材料又は糸番手のような種々様々な糸パラメータに関連した最適な重なりを得ると、すなわち糸供給装置26が所定された目標角度位置において位置決めされると、スプライシング空気が、カバーエレメント25によって閉鎖されたスプライシング角柱体32のスプライシング通路に吹き込まれ、スプライシング通路の内部に位置決めされた両糸端部は空気力によって交絡させられる。次いで制御エレメントはステップモータによって再びその出発位置に戻し旋回させられる。
【0068】
制御セグメントはこの際に糸クランプ兼切断装置23A,23B及びカバーエレメント25を開放し、その結果空気力によって結合された糸17は解放される。さらにこの際に糸供給装置26はその0位置に内方旋回させられる。その後で当該作業位置2における巻取り過程を新たに開始することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 自動綾巻きワインダ、 2 糸巻返し部、 3 コップ・巻管搬送システム、 4 コップ供給区間、 5 貯え区間、 6 横方向搬送区間、 7 巻管戻し区間、 8 搬送台、 9 紡績コップ、 10 糸スプライシング装置、 11 グリッパ管、 12 吸込みノズル、 13 旋回軸、 14 溝付ドラム、 15 綾巻きパッケージ、 16 旋回軸、 17o 上糸、 17u 下糸、 18,19 調節駆動装置、 20 スプライシング通路、 21 パッケージ搬送装置、 23A,23B 糸クランプ兼切断装置、 24 巻取り装置、 25 カバーエレメント、 26 糸供給装置、 28 パッケージフレーム、 29 糸巻返し部コンピュータ、 31 中央ハウジング、 32 スプライシング角柱体、 33 糸巻返し部ハウジング、 35 外側の制限ポジション、 36 内側の制限ポジション、 42 バス導体、 43 中央制御装置、 46 分配ブロック、 47 保持兼解繊管、 a 間隔、 AS 繰出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための糸スプライシング装置であって、空気を供給可能なスプライシング角柱体と、スプライシングされる糸端部を固定しかつ所定長さに切断する糸クランプ兼切断装置と、スプライシング角柱体のスプライシング通路内において準備された糸端部を位置決めするための糸供給装置とが設けられている形式のものにおいて、
糸スプライシング装置(10)は、下側の糸クランプ兼切断装置(23A)及び上側の糸クランプ兼切断装置(23B)のために調節駆動装置(18,19)を備えており、糸クランプ兼切断装置(23A,23B)はそれぞれ、スプライシング角柱体(32)に対して外側の制限ポジション(35)と内側の制限ポジション(36)との間において移動可能に支承されていて、両糸クランプ兼切断装置(23A,23B)の間の間隔(a)が調節可能であり、該間隔(a)は1つの間隔(amin)と別の間隔(amax)との間にあることを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための糸スプライシング装置。
【請求項2】
下側の糸クランプ兼切断装置(23A)及び上側の糸クランプ兼切断装置(23B)は、調節駆動装置(18;19)を用いてそれぞれ別個に位置決め可能である、請求項1記載の糸スプライシング装置。
【請求項3】
ウォーム伝動装置が、糸クランプ兼切断装置(23A,23B)用の調節駆動装置(18,19)の構成部材である、請求項1記載の糸スプライシング装置。
【請求項4】
偏心伝動装置が、糸クランプ兼切断装置(23A,23B)用の調節駆動装置(18,19)の構成部材である、請求項1記載の糸スプライシング装置。
【請求項5】
糸クランプ兼切断装置(23A,23B)用の調節駆動装置(18,19)は手動操作可能である、請求項1記載の糸スプライシング装置。
【請求項6】
糸クランプ兼切断装置(23A,23B)用の調節駆動装置(18,19)は、自動綾巻きワインダ(1)の中央制御装置(43)を介してそれぞれ機械式に制御可能である、請求項2記載の糸スプライシング装置。
【請求項7】
糸クランプ兼切断装置(23A,23B)用の調節駆動装置(18,19)はそれぞれ、規定されて制御可能なステップモータを有している、請求項6記載の糸スプライシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43780(P2013−43780A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180756(P2012−180756)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】