説明

緑化ボード及び緑化システム

【課題】緑化ボードについて、廃棄する際の環境への負荷を低減すると共に、その施工性を容易化する。
【解決手段】緑化ボード5は、保水性を有する木質繊維板19からなる保水ボード13と、保水ボード13の表面に設けられると共に複数の孔を有する有孔シート28とを備えている。そして、植物10となる種が、有孔シート28によって保水ボード13上に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が生育される緑化ボード及びそれを備えた緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、植物を育生するための緑化ボード及びそれを備えた緑化システムがCO吸収や省エネルギー化等の環境向上を図る手段として注目されている。緑化システムは、例えば建物の屋上等に設置されるが、その設置場所に加わる荷重を低減するために、軽量化することが望まれている。
【0003】
そこで、不織布やフェルトのような樹脂繊維をマット状に成型した保水用ボードが提案されており、土壌の一部を軽量な保水用ボードに置き換える試みが行われている。そして、保水用ボードの上に載積された土壌層において、例えば芝生等の植物を生育するようにしている。
【0004】
しかし、上記保水用ボードは樹脂繊維からなるため、その保水用ボード自体を廃棄する際に多量のCOが排出されるという問題がある。さらに、上記保水用ボードには芝生等の根が入り込んでしまうため、例えば芝生の一部を他の植物に入れ替えるような場合には、保水用ボードごと芝生を取り外し、新たな保水用ボードと共に他の植物を設置する必要がある。この芝生の根が入り込んだ保水用ボードは、産業廃棄物として埋め立て処理しなければならず、環境配慮の観点で問題がある。
【0005】
また、上記保水用ボードは、樹脂繊維によって構成されているので、保水性に優れるものの、不必要に水分を保持してしまう問題も有している。例えば、降雨等により大量の水が保水用ボードに供給されたときには、長期にわたって水溜りのような状態が続いてしまうこととなる。
【0006】
一方、吸水ポリマーを含有する保水板によって、大量に供給された水を内部に保持することも提案されている。この保水板では、保水した水の蒸散を抑制できるが、吸水ポリマーに保持されている水分を植物が直接に利用できないため、合理的とはいえない。
【0007】
これに対し、特許文献1では、木質繊維板の全体に界面活性剤を添加し、保水性を向上させた植物栽培用の保水資材が提案されている。この保水資材によれば、植物が保水された水分を直接に利用することができる。そうして、根及び土壌からなる部分と、茎及び葉からなる部分とを有する薄層基盤化植物を、上記保水資材の表面に載置することによって緑化システムを施工するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−183177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1の緑化システムでは、予め複数の保水資材の表面に薄層基盤化植物を載置して薄層基盤化植物の根が保水資材に活着した上で、その複数の保水資材を現場に設置するか、又は、現場で複数の保水資材を設置した後に、その保水資材の上に薄層基盤化植物をさらに設置する必要があるため、施工に大きな手間がかかる問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、植物が生育される緑化ボードについて、廃棄する際の環境への負荷を低減すると共に、その軽量化を図って施工性を大幅に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、保水ボードの表面に設けた有孔シートによって植物の種を保水ボード上に保持するようにした。
【0012】
具体的に、第1の発明は、植物が生育される緑化ボードを対象としている。そして、保水性を有する木質繊維板からなる保水ボードと、保水ボードの表面に設けられると共に複数の孔を有する有孔シートとを備え、植物となる種が、有孔シートによって保水ボード上に保持されている。
【0013】
この第1の発明では、有孔シートの表面側から供給された水、又は、保水ボードに保水されている水を吸収した種が、有孔シートの孔から芽を出し、植物として育生される。ここで、保水ボードは木質繊維板からなるため、保水ボードに植物の根が絡んでいたとしても、当該植物の根と共に保水ボードを燃焼して廃棄することが可能となり、廃棄する際の環境への負荷が容易に低減される。
【0014】
また、木質繊維材からなる保水ボードは軽量であるものの、その表面が硬いため、土壌と同じように種を埋め込むことは困難であるが、本発明では、種を有孔シートによって保水ボード上に好適に保持することができる。さらに、現場への施工前に予め保水ボードの表面に薄層基盤化植物の根を活着させたり、現場に保水ボードを設置した後にその保水ボードの表面に薄層基盤化植物を載置する作業が不要となる。したがって、緑化ボードを軽量な構成としながらも薄層基盤化植物等の設置が不要となるため、その施工性を大幅に高めることが可能になる。
【0015】
第2の発明は、上記第1の発明に係る緑化ボードにおいて、植物の種は有孔シートに播種されている。
【0016】
この第2の発明では、植物の種を有孔シートによって適切に保水ボード上で保持することが可能になる。
【0017】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明に係る緑化ボードにおいて、保水ボードにおける有孔シート側の表面には、複数の穴部又は複数の溝部が形成されている。
【0018】
この第3の発明では、保水ボードの表面に複数の穴部又は複数の溝部が形成されているので、種から発芽した植物の根をその穴部又は溝部に容易に活着させることが可能になる。
【0019】
第4の発明は、上記第3の発明に係る緑化ボードにおいて、複数の穴部又は複数の溝部には、肥料が設けられている。
【0020】
この第4の発明では、植物の根が活着し得る複数の穴部又は複数の溝部に肥料を設けるようにしたので、好適に植物に栄養を与えてその育生を促進させることが可能になる。
【0021】
第5の発明は、上記第1乃至第4の発明の何れか1つに係る緑化ボードにおいて、保水ボードにおける有孔シートと反対側には、複数の保水ボードを互いに固定するための連結部材が設けられている。
【0022】
この第5の発明では、連結部材によって複数の保水ボードが互いに固定されることにより、各緑化ボードの配置ずれが防止される。
【0023】
第6の発明は、植物が生育される緑化ボードを複数備えた緑化システムを対象としている。そして、緑化ボードは、保水性を有する木質繊維板からなる保水ボードと、保水ボードの表面に設けられると共に複数の孔を有する有孔シートとを備え、植物となる種が有孔シートによって保水ボード上に保持されている。
【0024】
この第6の発明では、保水ボードに保水されている水を吸収した種が、有孔シートの孔から芽を出し、植物として育生されることとなる。そして、保水ボードは木質繊維板からなるため、廃棄する際の環境への負荷が容易に低減される。しかも、緑化ボードを軽量な構成としながらも薄層基盤化植物等の設置が不要となるため、その施工性を大幅に高めることが可能になる。
【0025】
第7の発明は、上記第6の発明に係る緑化システムにおいて、複数の緑化ボードは、保水ボードにおける有孔シートと反対側に設けられた連結部材をそれぞれ有し、連結部材によって互いに連結されている。
【0026】
この第7の発明では、連結部材によって複数の緑化ボードが互いに連結されるため、緑化システムにおける各緑化ボードの配置ずれが防止される。
【発明の効果】
【0027】
第1及び第6の発明によると、保水ボードの表面に設けた有孔シートによって植物の種を保水ボード上に保持することにより、保水ボードが木質繊維板からなるため、廃棄する際の環境への負荷を容易に低減することができ、しかも、緑化ボードを軽量な構成としなつつ薄層基盤化植物等の設置が不要となるため、その施工性を大幅に高めることができる。
【0028】
第2の発明によると、植物の種を有孔シートによって適切に保水ボード上で保持できる。
【0029】
第3の発明によると、保水ボードの表面に複数の穴部又は複数の溝部が形成されているので、種から発芽した植物の根をその穴部又は溝部に容易に活着させることができる。
【0030】
第4の発明によると、植物の根が活着し得る複数の穴部又は複数の溝部に肥料を設けるようにしたので、好適に植物に栄養を与えてその育生を促進させることができる。
【0031】
第5及び第7の発明によると、連結部材によって複数の保水ボードが互いに固定されることにより、各緑化ボードの配置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本実施形態1における緑化ボードの芝生が生育された状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態1における緑化ボードの芝生が生育される前の状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、有孔シートを装着する前の保水ボード及び連結部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、保水ボードの裏面を示す平面図である。
【図5】図5は、連結部材を示す斜視図である。
【図6】図6は、緑化ボードの外観を示す正面図である。
【図7】図7は、本実施形態1における緑化システムの構造を示す断面図である。
【図8】図8は、緑化ボードの配置を示す平面図である。
【図9】図9は、保水ボードの構造を示す断面図である。
【図10】図10は、保水ボードの構造を示す断面図である。
【図11】図11は、本実施形態2における緑化システムの構造を示す断面図である。
【図12】図12は、変形例の保水ボード及び連結部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面は、正確な寸法に対応しておらず、本発明を容易に理解し得るように概略的に記載されている。
【0034】
《発明の実施形態1》
図1〜図10は、本発明の実施形態1を示している。
【0035】
図1は、本実施形態1における緑化ボード5の芝生が生育された状態を示す斜視図である。図2は、本実施形態1における緑化ボード5の芝生が生育される前の状態を示す斜視図である。図3は、有孔シート28を装着する前の保水ボード13及び連結部材40を示す斜視図である。
【0036】
図4は、保水ボード13の裏面を示す平面図である。図5は、連結部材40を示す斜視図である。図6は、緑化ボード5の外観を示す正面図である。図7は、本実施形態1における緑化システム1の構造を示す断面図である。図8は、緑化ボード5の配置を示す平面図である。図9及び図10は、保水ボード13の構造を示す断面図である。
【0037】
本実施形態1における緑化システム1は、芝生等の植物10を育生するための緑化システムであって、図7に示すように、植物10が生育される複数の緑化ボード5と、緑化ボード5の下に設けられたシート状物としての透水耐根シート層27とを備えている。
【0038】
本実施形態1の緑化システム1は、例えば建物の屋上等を構成するコンクリートスラブ17上に設けられている。そのことにより、建物の屋上は緑化システム1によって緑化されている。
【0039】
(透水耐根シート層)
透水耐根シート層27は、厚みが0.1mm程度である例えば東洋紡株式会社の「コスモアングラス」(登録商標)等のポリエステル不織布によって構成され、コンクリートスラブ17の表面に設置されている。透水耐根シート層27は、水を透過させる一方、植物10の根を通さないように構成されたシートである。この透水耐根シート層27を設けることにより、透水耐根シート層27と緑化ボード5との間を適度に保水し、緑化ボード5の裏面側に水を供給することが可能になる。また、設置面であるコンクリートスラブ17表面を、植物10の根の侵入から確実に保護し得る。
【0040】
透水耐根シート層27には、耐根性及び透水性を有する種々のシートを適用できる。例えば厚さ0.1mm〜0.5mm程度の樹脂不織布、密に織られた樹脂織布、又は綿布等を適用することが可能である。このような材料の他の例としては、例えばビルマテル株式会社のスパンボンドポリエステル樹脂不織布である「エコロベース」(登録商標)等の透水シート等が挙げられる。
【0041】
(緑化ボード)
緑化ボード5は、図1及び図2に示すように、保水性を有する保水ボード13と、保水ボード13の表面に設けられた有孔シート28と、保水ボード13における有孔シート28と反対側に設けられた連結部材40とを有している。
【0042】
<保水ボード>
保水ボード13は、比重が0.05〜0.3程度であるいわゆるインシュレーションボードによって好適に構成される。インシュレーションボードとは、長繊維の木質繊維をバインダーやワックスとともに湿式抄造し、板状に成型した木質繊維板19である。通常、インシュレーションボードは、耐水性を向上させるためにワックスが内添されており、多少の撥水性を有している。したがって、本実施形態では、界面活性剤等によって保水ボード13の濡れ性を向上させ、保水ボード13を容易に保水状態となるようにしている。このような界面活性剤としては、例えば、株式会社ハイポネックスジャパンの「ワターイン」(登録商標)や「ワターインキレート」(商品名)を適用することができる。
【0043】
保水ボード13は、例えば縦及び横の長さがそれぞれ90cmである矩形板状に形成され、その厚みが11mm程度である。保水ボード13は、図9に示すように、撥水性を有するインシュレーションボードにおける少なくとも透水耐根シート層27と反対側の表層部に、親水性を有する親水層20が形成されている。親水層20の厚みは、例えば5mm程度とすることが可能である。こうして、保水ボード13は、保水性を有する木質繊維板19によって構成されている。
【0044】
保水ボード13は、施工後の緑化システム1を構成した状態で、その全体が親水層20となっているが、図9に示すように、施工前にはインシュレーションボードの少なくとも一部の表層部に親水層20が形成される一方、その他の部分が撥水性を有する撥水層21が形成されている。
【0045】
例えば、施工前の保水ボード13は、図9に示すように、透水耐根シート層27と反対側となる表層部のみに親水層20が形成されていてもよく、図10に示すように、表層部の全体が親水層20となり、その内側部分が撥水層21となるように形成してもよい。また、施工前の保水ボード13は、その全体が親水性とされていてもよい。
【0046】
ここで、保水ボード13を構成する木質繊維板19の比重は、0.05未満であると、その上を人が歩行するための積載荷重に対する耐性が不足するだけでなく、保水量が大幅に少なくなってしまう。一方、0.35を越えると、比重が高すぎて植物の根の活着性が低下する。したがって、木質繊維板19の比重は0.05〜0.35とされている。
【0047】
また、この木質繊維板19の厚みは、10mm未満であると、保水量が大幅に不足する一方、25mmを越えると、不必要にコストが上昇するため、10mm〜25mmとされている。
【0048】
複数の保水ボード13は、その一部を図8に示すように、マトリクス状に配置され、全体として平面状に配置されている。
【0049】
また、図3に示すように、保水ボード13における有孔シート28側(つまり、透水耐根シート層27と反対側)の表面には、複数の穴部43が形成されていてもよい。穴部43の大きさは例えば直径が約2mmであり、深さが約3mmである。穴部43を形成することにより、植物10の根の活着性を高めることができる。さらに、これら複数の穴部43には、肥料がそれぞれ設けられている。肥料は芝生用の粒状肥料である。穴部43に肥料が入れられた保水ボード13の表面には澱粉を塗布して乾燥させた。そのことにより、肥料は保水ボード13に固定されている。
【0050】
一方、図4に示すように、保水ボード13の裏面側には、複数の溝部50が形成されている。複数の溝部50はそれぞれ例えば直線状に形成され、その溝部50の両端部が保水ボード13の裏面における異なる2辺に開放端として形成されている。
【0051】
溝部50の幅は1mm〜5mm程度であり、溝部50の深さは1mm以上であって保水ボード13の厚みの半分程度以下である。溝部50の寸法や本数は、緑化ボード5の使用態様に応じて、その強度が確保できるように規定されている。本実施形態における溝部50は、幅が約2mmであって深さが約3mmであり、例えば10cm間隔で互いに平行に配置されている。また、溝部50は、保水ボード13の対向する2辺と平行に延びている。
【0052】
溝部50は1本でもよいが、本数が多いほど均一に保水ボード13の裏面に水を供給できる点で好ましい。溝部の本数を増やす場合には、その深さが大きくなると強度が低下するため、1mm〜3mm程度の深さとして強度を確保することが好ましい。一方、溝深さを1mmよりも浅くすることは、保水ボード13が吸水して膨張した際に溝形状を維持できなくなる虞があるため、好ましくない。
【0053】
このように複数の溝部50を設けることにより、隣り合う緑化ボード5同士の間等から流下した水を当該溝部50により導いて、保水ボード13の裏面全体に水を供給することが可能になる。
【0054】
<有孔シート>
有孔シート28は、図2に示すように、保水ボード13の親水層20が形成されている表面を覆うように設けられており、複数の孔を有するシートによって構成されている。有孔シート28は、例えば樹脂不織布、又は麻もしくはジュート等の植物由来の繊維織物等によって好適に形成することができる。尚、これらの樹脂不織布や植物由来の繊維織物等を組み合わせて有孔シート28を構成してもよい。
【0055】
本実施形態における有孔シート28は、厚みが0.1mmであるポリ乳酸樹脂の不織布によって構成されている。ポリ乳酸樹脂は、いわゆる生分解性プラスチックであって、1ヶ月〜1年程度で土壌に分解される。
【0056】
有孔シート28の表面には、多数の芝生の種29が播種されており、澱粉のりによって固定されている。そして、有孔シート28は、保水ボード13と共に連結部材にネジ等の固定部材44によって一体に固定されている。こうして、多数の種29が有孔シート28によって保水ボード13上に保持されている。また、他の実施例として、2枚の有孔シート28の間に種29を挟み込むように播種し、これを保水ボード13上に保持してもよい。
【0057】
<連結部材>
連結部材40は、複数の保水ボード13を互いに固定するためのものであり、図1、図2、図5及び図6に示すように、保水ボード13と略同じ大きさを有する矩形板状の樹脂部材によって構成されている。連結部材40は、保水ボード13における有孔シート28と反対側に設けられている。
【0058】
連結部材40の側面には、側方に突出した板状の突起部41と、この突起部41と略同じ幅を有する切欠部42とがそれぞれ複数形成されている。突起部41には、この突起部41を上下に貫通する貫通孔45が形成されている。一方、切欠部42には、図6に示すように、下方に突出したピン47が形成されている。
【0059】
そうして、連結部材40突起部41が、他の連結部材40の切欠部42に嵌め込まれると共にこの切欠部42のピン47が当該突起部41の貫通孔45に嵌挿されることにより、各連結部材40同士が互いに連結されるようになっている。
【0060】
この連結部材40による連結構造は、突起部41を切欠部42に着脱不可能に連結する構成としてもよく、突起部41が切欠部42に着脱可能に連結する構成としてもよい。連結部材40が互いに着脱可能であれば、一部の植物10が剥がれたり枯れたりした場合に、その部分の緑化ボード5のみを新たなものに交換することができる。
【0061】
また、連結部材40には、図5に示すように、保水ボード13側の表面に多数の貫通孔46が形成されている。これにより、保水ボード13の表面に水たまりができることなく、水はけのよい緑化システムを供給することができる。
【0062】
(植物)
植物10は、図1に示すように、緑化ボード5の有孔シート28から発芽した芽が生育したものである。植物10の根は保水ボード13に活着している。すなわち、保水ボード13の表面には、植物10が直接に植生されている。植物10は、その上で人間が歩いたり運動したりすることを考慮すると、芝生がもっとも好適である。
【0063】
植物10の上を人間が歩いたりしない場合には、つる性植物や、その他草花などを植物10としてもよい。また、苔を植物10としてもよいが、苔は根がなく剥がれやすいため、特に緑化ボード5を壁面等に載架する場合や、緑化ボード5を屋外に設置する場合等には、例えば、その表面を網状シートで覆ったり、網状シートと保水ボード13とを固定して一体化しておくことが望ましい。
【0064】
−施工方法−
次に、緑化システム1の施工方法について説明する。本実施形態では、建物の屋上等におけるコンクリートスラブ17上に緑化システム1を形成する。
【0065】
まず、コンクリートスラブ17の表面に透水耐根シート層27を配設する。その後、複数の緑化ボード5を図8に示すようにマトリクス状に配置させる。
【0066】
そこで、予め複数の緑化ボード5を形成しておく。まず、保水ボード13を形成するために、撥水性を有する木質繊維板19の裏面側(つまり、透水耐根シート層27側)に複数の溝部50を形成する。一方、木質繊維板19の表面側に複数の穴部43を形成する。
【0067】
次に、木質繊維板19に界面活性剤を含む水を接触させて、木質繊維板19に撥水性を有する撥水層21を残しつつ、この木質繊維板19の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層20を形成する。具体的には、界面活性剤「ワターイン」(登録商標)を500倍に希釈した水溶液に木質繊維板19を浮かべたり、漬けたりする。木質繊維板19を浮かべると、その水に接した部分から木質繊維板19は徐々に保水されていく。そうして、表面から5mm程度を保水状態として親水層20を形成する。こうして、保水ボード13を形成する。
【0068】
上述のように、施工前の保水ボード13は、図9に示すように、透水耐根シート層27と反対側となる表層部のみに親水層20を形成していてもよく、図10に示すように、表層部の全体を親水層20とする一方、その内側部分が撥水層21となるように形成してもよい。
【0069】
次に、穴部43に肥料を詰めた後に、有孔シート28を保水ボード13の表面側に配置すると共に連結部材40を保水ボード13の裏面側に配置した状態で、有孔シート28、保水ボード13及び連結部材40にネジ等の固定部材44を取り付けて、これらを互いに固定する。
【0070】
続いて、有孔シート28に澱粉のりを塗布し、その澱粉のりの表面に多数の芝生の種29を播種して乾燥させる。こうして、種29を保水ボード13上で有孔シート28によって保持させる。
【0071】
尚、多数の種29を予め澱粉のり等により保持させておいた有孔シート28を、保水ボード13の表面に設けるようにしてもよい。このことにより、多数の種29を一括して有孔シート28に保持させることができるため、緑化ボード5を容易に製造することが可能になる。
【0072】
また、複数の種29を保水ボード13の表面と有孔シート28とによって狭持するようにしてもよい。そのことにより、種29予め有孔シート28に播種しないので、有孔シート28自体を容易に製造できる。
【0073】
こうして形成した複数の緑化ボード5を、連結部材40によって連結させながら透水耐根シート層27の表面に設置していく。また、連結部材40の端部を固定部材によりコンクリートスラブ17の床面に固定した。
【0074】
このようにして、緑化システム1を施工する。施工した緑化ボード5の表面に散水すると、約2週間で芝生の種29が発芽し、2ヶ月後には緑化システム1の全面が芝生で覆われた。そうして、土壌を使用しないで、飛躍的に軽量な緑化システム1を実現できる。
【0075】
したがって、この実施形態1によると、まず、保水ボード13が木質繊維板19からなるため、保水ボード13に植物10の根が絡んでいたとしても、当該植物10の根と共に保水ボード13を燃焼して廃棄することが可能となり、廃棄する際の環境への負荷を容易に低減することができる。
【0076】
しかも、有孔シート28によって保水ボード13上に種29を保持するようにしたので、現場への施工前に予め保水ボード13の表面に芝生の根を活着させたり、現場に保水ボード13を設置した後にその保水ボード13の表面にロール状の芝生を展開させて載置させる作業が不要となる。したがって、緑化ボード5を軽量な構成としながらも芝生を設置する別途の作業が不要となるため、その施工性を大幅に高めることができる。
【0077】
さらに、植物10の種29を有孔シート28によって適切に保水ボード13上で保持できる。また、保水ボード13の表面に複数の穴部43を形成したので、種29から発芽した植物10の根をその穴部43に容易に活着させることができる。その上、植物の根が活着する穴部43に肥料を設けるようにしたので、好適に植物10に栄養を与えてその育生を促進させることができる。
【0078】
さらにまた、連結部材40によって複数の保水ボード13を互いに固定するようにしたので、各緑化ボード5の配置ずれを防止することができる。
【0079】
《発明の実施形態2》
図11は、本発明の実施形態2を示している。図11は、本実施形態2における緑化システム1の構造を示す断面図である。尚、以降の各実施形態では、図1〜図10と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0080】
本実施形態2における緑化システム1は、図11に示すように、植物10が生育される複数の緑化ボード5と、緑化ボード5の下に設けられたシート状物としての透水耐根シート層27とを備えている。有孔シート28は、上記実施形態1と同様の構成である。
【0081】
本実施形態2の緑化システム1は、例えば地盤18の上に設けられている。そのことにより、当該地盤18が植物が生育しにくい地質であっても、緑化システム1によって緑化することが可能になる。
【0082】
地盤18の表面には、上記実施形態1と同様に、厚みが0.1mm程度である透水耐根シート層27が設けられている。そして、透水耐根シート層27の表面に複数の緑化ボード5が設置されている。
【0083】
本実施形態における緑化ボード5は、図11に示すように、保水ボード13と、保水ボード13の表面に設けられた有孔シート28とを有している。そして、本実施形態における緑化ボード5は、連結部材40を有しない。
【0084】
実施形態1と同様に、保水ボード13は、比重が0.05〜0.3程度である木質繊維板19によって構成されている。保水ボード13は、例えば縦及び横の長さがそれぞれ90cmである矩形板状に形成され、その厚みが11mm程度である。また、保水ボード13における少なくとも有孔シート28側の表層部には、親水層20が形成されている。
【0085】
上記実施形態1における保水ボード13には、裏面側に溝部50が形成されていたのに対し、本実施形態における保水ボード13には、この保水ボード13の厚み方向に延びる複数の貫通孔51が形成されている。尚、裏面側に溝部50を形成した上で複数の貫通孔51を形成するようにしてもよい。
【0086】
したがって、この実施形態2によると、緑化ボード5が有孔シート28を有するようにしたので、上記実施形態1と同様の効果が得られることに加え、保水ボード13に複数の貫通孔51を形成するようにしたので、植物10の根の活着性を高めることができ、しかも、保水ボード13自体に透水性を持たせることが可能となる。
【0087】
尚、活着性を向上させるためには、内径が0.5mm〜1mm程度の穴でもよいが、透水性を確保するためには、貫通孔51の内径を1mmよりも大きくすることが望ましい。貫通孔51の内径が1mm以下であれば、保水ボード13が吸水によって膨潤することから、貫通孔51が塞がってしまい、透水性が大きく低下する虞があるためである。
【0088】
そのため、特に緑化ボード5の表面側から水遣りを行った場合、保水ボード13の全体に確実に水を浸透させることが可能になる。さらに、例えば、緑化システム1を屋外に設置した場合における降雨等により、緑化システム1の表面に過剰な水が供給されたときには、その水を上記複数の貫通孔51によって保水ボード13の裏面側に流下させることができるため、この緑化システム1の排水性を飛躍的に高めることができる。
【0089】
さらにまた、保水ボード13の表面に複数の貫通孔51が形成されているために、植物10の根を当該保水ボード13により好適に活着させることができる。
【0090】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、保水ボード13の有孔シート28側の表面に複数の穴部43を形成した例について説明したが、図12に示すように、例えばその表面に複数の溝部48を形成するようにしてもよい。この場合、さらに各溝部48に肥料を設けるようにしてもよい。そのことにより、種29から発芽した植物10の根を、溝部48において保水ボード13の表面に容易に活着させることができる。さらに、活着した根に溝部48内の肥料による栄養分を与えて、植物10をより好適に生育させることができる。
【0091】
また、本発明は上記実施形態1及び2に限定されるものでなく、本発明には、これらの実施形態1及び2を適宜組み合わせた構成が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明は、植物が生育される緑化ボード及びそれを備えた緑化システムについて有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 緑化システム
5 緑化ボード
10 植物
13 保水ボード
19 木質繊維板
28 有孔シート
29 種
40 連結部材
43 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が生育される緑化ボードであって、
保水性を有する木質繊維板からなる保水ボードと、
上記保水ボードの表面に設けられると共に複数の孔を有する有孔シートとを備え、
上記植物となる種が、上記有孔シートによって上記保水ボード上に保持されている
ことを特徴とする緑化ボード。
【請求項2】
請求項1に記載された緑化ボードにおいて、
上記植物の種は、上記有孔シートに播種されている
ことを特徴とする緑化ボード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された緑化ボードにおいて、
上記保水ボードにおける上記有孔シート側の表面には、複数の穴部又は複数の溝部が形成されている
ことを特徴とする緑化ボード。
【請求項4】
請求項3に記載された緑化ボードにおいて、
上記複数の穴部又は複数の溝部には、肥料が設けられている
ことを特徴とする緑化ボード。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載された緑化ボードにおいて、
上記保水ボードにおける上記有孔シートと反対側には、複数の上記保水ボードを互いに固定するための連結部材が設けられている
ことを特徴とする緑化ボード。
【請求項6】
植物が生育される緑化ボードを複数備えた緑化システムであって、
上記緑化ボードは、保水性を有する木質繊維板からなる保水ボードと、上記保水ボードの表面に設けられると共に複数の孔を有する有孔シートとを備え、
上記植物となる種が、上記有孔シートによって上記保水ボード上に保持されている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項7】
請求項6に記載された緑化システムにおいて、
複数の上記緑化ボードは、上記保水ボードにおける上記有孔シートと反対側に設けられた連結部材をそれぞれ有し、上記連結部材によって互いに連結されている
ことを特徴とする緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−223159(P2012−223159A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95329(P2011−95329)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】