説明

緑化駐車場

【課題】駐車エリアに芝生などの緑化植物を良好に育成でき、しかも美観に優れた緑化駐車場を提供する。
【解決手段】長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向に10cmの相互間隔で配列された3本一列のタイヤ支持バー4,4,4の上面と、その間に幅10cmの帯状に植え込まれた芝生8とが交互に並んだ幾何学模様を形成するため、緑化駐車場として優れた美観が得られる。ここで、芝生育成砂5は、駐車エリアの地面1の上方に縦横に連続して形成される上方空間に充填されているため、芝生育成砂に5植設された芝生8は、縦横に充分に根を張ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車エリアを芝生により緑化することができる緑化駐車場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策の一環として緑化運動が推進されている昨今、駐車エリアを芝生により緑化することができる緑化駐車場が注目されている。この種の緑化駐車場として、特許文献1には、芝生を植えた駐車エリアに左右一対のタイヤガイドを敷設した構造の緑化駐車場が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、駐車場の舗装面に多数の凸部と多数の開口部とを有する植生用敷板を縦横に並べて敷設し、これらの植生用敷板の多数の凸部間の凹空部に客土を充填して芝生を植栽する構造の緑化駐車場が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−41938号公報
【特許文献2】特開2009−77687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の緑化駐車場は、芝生を植えた駐車エリアに左右一対のタイヤガイドを敷設しただけの簡易的な構造であるため、車両の入出庫の繰り返しにより、タイヤガイドが駐車エリアに沈み込んだり、あるいは位置ずれを起こす虞があり、駐車エリアに植えられた芝生を痛めてしまうという問題がある。加えて、タイヤガイドが多数の横桟を有する梯子状に枠組みされただけのものであるため、緑化された駐車エリアの美観が損なわれるという問題もある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の緑化駐車場では、舗装面に縦横に並べて敷設される植生用敷板の厚さが5〜10cm程度であって、植生用敷板の多数の凸部間の凹空部、すなわち、客土が充填されて芝生が植栽される多数の凹空部の深さが浅く、しかも、各凹空部が相互に独立している。このため、芝生は充分に根を張ることができず、芝生を良好に育成できない虞がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に対応してなされたものであり、駐車エリアに芝生を良好に育成でき、しかも美観に優れた緑化駐車場を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明に係る緑化駐車場は、駐車エリアの地面に複数の支持ブロックを介して相互に平行な複数列に敷設される複数本の受け基礎部材と、複数列の受け基礎部材上に所定の相互間隔で平行な複数列に架設される複数本のタイヤ支持バーと、複数本のタイヤ支持バーの上面が露出する状態で駐車エリアの地面の上方空間に充填される芝生育成砂とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る緑化駐車場では、所定の相互間隔で平行な複数列に架設されるタイヤ支持バーの相互間に露出する芝生育成砂の表面に芝生が植設されることにより、タイヤ支持バーの上面と緑化植物とが複数本の帯状の幾何学模様を形成する。
【0010】
ここで、芝生育成砂は、駐車エリアの地面の上方空間、すなわち、駐車エリアの地面に複数の支持ブロックを介して複数列に敷設される受け基礎部材と、複数列の受け基礎部材上に複数列に架設されるタイヤ支持バーとの間に縦横に連続して形成される上方空間に充填されているため、芝生育成砂に植設された芝生は、縦横に充分に根を張ることができる。
【0011】
本発明の緑化駐車場において、各受け基礎部材の上面には、複数本のタイヤ支持バーを架設するための複数の受溝が形成されているのが好ましい。この場合、複数本のタイヤ支持バーの相互間隔を所定の相互間隔に保持することができる。
【0012】
また、本発明の緑化駐車場においては、複数本の受け基礎部材が車両の入出庫方向に沿って複数列に敷設されており、複数本のタイヤ支持バーが車両の入出庫方向と直交または斜交して架設されているのが好ましい。この場合、駐車エリアに入出庫される車両のタイヤは、車両の入出庫方向と直交または斜交して架設された複数本のタイヤ支持バー上に適切に支持されるようになり、各タイヤ支持バーの間に植設された緑化植物がタイヤに踏み付けられるのが防止される。
【0013】
本発明の緑化駐車場において、芝生育成砂は磨砕スラグとするのが好ましい。磨砕スラグは、高炉水砕スラグや溶融水砕スラグの針状部分を材料同士の摩擦により除去して粒状化したものであり、太陽光の熱を受けて蓄熱し、徐々に放熱するという特性を有するため、寒冷地においても芝生を良好に育成することができる。しかも水はけが良いため、優れた芝生育成砂となる。
【0014】
また、本発明の緑化駐車場において、寒冷地における芝生の育成を良好にするため、支持ブロック、受け基礎部材、タイヤ支持バーの少なくとも一つは、磨砕スラグを骨材に含むコンクリート製とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る緑化駐車場によれば、複数列に架設されたタイヤ支持バーの相互間に露出する芝生育成砂の表面に芝生が植設されることにより、タイヤ支持バーの上面と芝生とが複数本の帯状の幾何学模様を形成するため、緑化駐車場として優れた美観を得ることができる。また、駐車エリアの地面の上方に縦横に連続して形成される上方空間に芝生育成砂が充填されているため、芝生育成砂に植設された芝生は、縦横に充分に根を張ることができ、芝生を駐車エリアに良好に育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る緑化駐車場における一区画の駐車エリアを示す平面図である。
【図2】図1のII矢視断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す部分断面図である。
【図4】図3に示した部分の一部の断面斜視図でる。
【図5】一実施形態の変形例を示す図4に対応した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る緑化駐車場の実施の形態を説明する。一実施形態の緑化駐車場は、複数台の車両を駐車させる複数区画の駐車エリアを芝生などの緑化植物により緑化するものであり、図1および図2は、1台の車両を駐車させる一区画の駐車エリアを示している。
【0018】
一実施形態の緑化駐車場は、図2および図3に示すように、駐車エリアの地面1に複数の支持ブロック2,2…を介して敷設される複数本の受け基礎部材3,3…と、各受け基礎部材3,3…上に架設される複数本のタイヤ支持バー4,4…と、駐車エリアの地面1の上方空間に充填される芝生育成砂5とを備えて構成されている。
【0019】
一実施形態の緑化駐車場において、駐車エリアの地面1は、例えば既設の砕石路盤上に舗装された既設のアスファルト舗装面となっている。また、各支持ブロック2,2…は、いわゆるコンクリートブロックであり、その上面に据付モルタル6を介して受け基礎部材3を支持している。
【0020】
各受け基礎部材3は、角柱状に成形されたコンクリートブロックからなり、その上面には、複数本(図示の例では5本)のタイヤ支持バー4,4…を直交方向に横架するための複数(図示の例では5つ)の受溝3A,3A…が所定のピッチ間隔で成形されている。各受溝3Aの断面形状は、図示の例では倒立台形であるが、角形、V字形、半円形など、適宜の断面形状とすることができる。
【0021】
各受け基礎部材3の寸法は、例えば長さが100cm、断面の幅が16cm、断面の高さが18cmである。また、各受け基礎部材3の上面に成形された各受溝3Aの寸法は、例えば深さが8cm、溝底の幅が8cmであり、各受溝3A,3A…のピッチ間隔は20cmである。このような受け基礎部材3,3…は、図1に破線の隠れ線で示すように、長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向に沿って相互に平行な4列に敷設されている。
【0022】
各タイヤ支持バー4は、受け基礎部材3の受溝3Aの断面形状に対応した倒立台形の断面形状を有する角柱状に成形されたコンクリートブロックからなる。このタイヤ支持バー4の寸法は、例えば長さが100cm、断面の高さが10cmであって、図3に示すように、タイヤ支持バー4の上面は受け基礎部材3の上面より2cmほど上方に突出している。
【0023】
このようなタイヤ支持バー4,4…は、図1に示す例では、長方形の駐車エリアの長手方向に沿って4列に敷設された受け基礎部材3,3…上に3本が一列に横架されている。そして、3本一列のタイヤ支持バー4,4,4が長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向に例えば10cmの相互間隔で複数列に配列されている。
【0024】
このように複数列に配列され3本一列のタイヤ支持バー4,4,4のうち、駐車エリアに駐車される車両(図示省略)の例えば後輪タイヤに対面する位置にある3本一列のタイヤ支持バー4,4,4の上面には、タイヤ止めブロック7がボルト・ナットなどの適宜の固定手段により固定されている。
【0025】
駐車エリアの地面1の上方空間に充填される芝生育成砂5は、園芸用に使用される土砂や砂でも構わないが、一実施形態の緑化駐車場においては、太陽光の熱を受けて蓄熱し、徐々に放熱するという芝生の育成に適した特性を有する磨砕スラグが採用されている。
【0026】
磨砕スラグは、例えば製鉄所の高炉で発生する針状の高炉水砕スラグをスラグ同士の摩擦等により、針状部分を除去して粒形の揃った砂状に加工したものであり、その粒度は、例えば粒径で5mm以下、好ましくは5〜0.5mm程度となっている。なお、この磨砕スラグは、廃棄物処理場の溶融炉で発生する針状の溶融水砕スラグを砂状に加工したものであってもよい。
【0027】
このような芝生育成砂5は、図4に示すように、タイヤ支持バー4,4…の上面が露出する状態で受け基礎部材3,3…の上面を覆っている。すなわち、芝生育成砂5は、受け基礎部材3,3…の上面を2cm程の厚さでタイヤ支持バー4,4…の上面付近まで覆っている。
【0028】
そして、図1〜図4に示すように、長方形の駐車エリアの長手方向に複数列に配列されている3本一列のタイヤ支持バー4,4,4の相互間に幅10cmの帯状に露出する芝生育成砂5の表面には、芝生8が植え込まれている。この芝生8は、例えばゴルフ場や一般家庭の庭に張られる芝として最もポピュラーな高麗芝の芝生である。
【0029】
以上のように構成された一実施形態の緑化駐車場では、図1に示すように、長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向に10cmの相互間隔で配列された3本一列のタイヤ支持バー4,4,4の上面と、その間に幅10cmの帯状に植え込まれた芝生8とが交互に並んだ幾何学模様を形成するため、緑化駐車場として優れた美観を得ることができる。
【0030】
ここで、芝生育成砂5は、駐車エリアの地面1の上方空間、すなわち、駐車エリアの地面1に複数の支持ブロック2,2…を介して4列に敷設される受け基礎部材3,3…と、4列の受け基礎部材3,3…上に複数列に横架されるタイヤ支持バー4,4…との間に縦横に連続して形成される上方空間に充填されているため、芝生育成砂5に植設された芝生8は、縦横に充分に根を張ることができ、芝生8を駐車エリアに良好に育成することができる。
【0031】
加えて、芝生育成砂5が磨砕スラグであって、太陽光の熱を受けて蓄熱し、徐々に放熱するという特性を有するため、寒冷地においても芝生8を良好に育成することができる。
【0032】
また、一実施形態の緑化駐車場においては、複数本の受け基礎部材3,3…が長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向に沿って4列に敷設されており、3本一列のタイヤ支持バー4,4,4が長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向に例えば10cmの相互間隔で複数列に配列されているため、駐車エリアに入出庫される車両のタイヤは、車両の入出庫方向と直交して架設された複数列のタイヤ支持バー4,4,4上に適切に支持されるようになり、各タイヤ支持バー4,4,4の間に植設された芝生8がタイヤに踏み付けられるのが防止される。
【0033】
本発明に係る緑化駐車場は、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、各タイヤ支持バー4の上面には、図5に示すように、芝生8が根を張り伸ばすことのできる根張り溝4Aを斜めストライプなどの適宜のパターンで形成してもよい。この場合、タイヤ支持バー4,4…の上面が斜めストライプなどの適宜のパターンで緑化されるため、美観に一層優れた緑化駐車場となる。
【0034】
また、タイヤ支持バー4,4…は、図1に示す長方形の駐車エリアの入出庫方向である長手方向と斜めに交差する斜交状態で配列してもよい。
【0035】
さらに、受け基礎部材3,3…は、線路の枕木に使用するような材質の木材製としてもよい。同様に、タイヤ支持バー4,4…も適宜の材質の木材製とすることができる。
【0036】
ここで、支持ブロック2,2…、受け基礎部材3,3…、タイヤ支持バー4,4…は、磨砕スラグを骨材に含むコンクリート製としてもよい。この場合、磨砕スラグが有する特性、すなわち、太陽光の熱を受けて蓄熱し、徐々に放熱するという特性により、寒冷地においても芝生8を良好に育成することができる。
【0037】
なお、芝生8用の芝草としては、前述した高麗芝に限らず、姫高麗芝、朝鮮芝、ビロード芝などの日本芝や、バーミューダグラス類、ベントグラス類、ライグラス類、ブルーグラス類、フェスク類などの西洋芝を採用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 :地面
2 :支持ブロック
3 :受け基礎部材
3A:受溝
4 :タイヤ支持バー
4A:根張り溝
5 :芝生育成砂
6 :据付モルタル
7 :タイヤ止めブロック
8 :芝生

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車エリアの地面に複数の支持ブロックを介して相互に平行な複数列に敷設される複数本の受け基礎部材と、
前記複数列の受け基礎部材上に所定の相互間隔で平行な複数列に架設される複数本のタイヤ支持バーと、
前記複数本のタイヤ支持バーの上面が露出する状態で前記駐車エリアの地面の上方空間に充填される芝生育成砂とを備えて構成されていることを特徴とする緑化駐車場。
【請求項2】
前記受け基礎部材の上面には、前記複数本のタイヤ支持バーを架設するための複数の受溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の緑化駐車場。
【請求項3】
前記複数本の受け基礎部材は、車両の入出庫方向に沿って複数列に敷設されており、前記複数本のタイヤ支持バーは、車両の入出庫方向と直交または斜交して架設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の緑化駐車場。
【請求項4】
前記芝生育成砂が磨砕スラグであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1の請求項に記載の緑化駐車場。
【請求項5】
前記支持ブロック、受け基礎部材、タイヤ支持バーの少なくとも一つが磨砕スラグを骨材に含むコンクリート製であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1の請求項に記載の緑化駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239402(P2012−239402A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110284(P2011−110284)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(507351894)
【Fターム(参考)】