説明

緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有した懸濁用組成物およびその呈味改善方法

【課題】 コストの不要な増大を招くことなく、使用者が抵抗感なく摂取することができる、呈味が改善された新たな懸濁用組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明者らは、上記の課題を解決するための手段を鋭意検討した結果、懸濁用組成物に含有されるカルシウム化合物に卵殻カルシウムを用いることにより、他のカルシウム化合物(例えば、サンゴカルシウムや石灰石カルシウムなど)を用いた懸濁用組成物よりも呈味が改善されることを見出した。よって、コストの不要な増大を招くことなく、使用者が抵抗感なく摂取することができる懸濁用組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有した懸濁用組成物およびその呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗しょう症は、中高齢者の骨折の主要な原因である。骨折によってもたらされる骨格変形は、生活動作の障害や寝たきり状態の原因となり、介護の必要性を増加させることにもつながる。このため、骨粗しょう症の予防についての関心が高まっている。
【0003】
骨粗しょう症を予防する方法としては、日々の食事を通じたカルシウム摂取や適度な運動が知られている。食事を通じたカルシウム摂取については、高齢女性に対して1200mg/日のカルシウムと、800IUのビタミンDを投与することにより、骨折の発生が抑えられたという報告がある。また、「日本人の食事摂取基準」(2010年版)によると、成人の1日あたりのカルシウム摂取推奨基準は600〜800mg程度とされている。しかし、これらの量を通常の食事から摂取することは容易ではないため、より簡単にカルシウムを摂取できるサプリメントが用いられている。
【0004】
カルシウムを摂取するためのサプリメントとしては、錠剤、カプセルなど様々な商品が市販されているが、カルシウム以外の栄養素(例えば、緑葉に含まれる食物繊維など)も一緒に摂取することができ、例えば水などの飲料に溶かして(懸濁させて)容易に摂取することが可能な懸濁用組成物がより好ましい。しかし、カルシウム化合物と緑葉の粉末とを混ぜた懸濁用組成物は、味が良くない、ザラザラとした舌触りがある等の不快な要素があるため、これを摂取することに抵抗感がある使用者もいる。そこで、懸濁用組成物を使用者にとって摂取しやすいものとするために、懸濁用組成物の呈味の改善が求められていた。
【0005】
ここで、カルシウム化合物を含む飲食品の呈味の改善には、カルシウム化合物を、レシチン類及びポリグリセリン脂肪酸エステルと組み合わせること(特許文献1)、糖リン酸エステルと組み合わせること(特許文献2)など、カルシウム化合物と他の成分とを組み合わせる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−238645号公報
【特許文献2】特開2003−079337号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(ライフサイエンス出版株式会社発行)
【非特許文献2】「「日本人の食事摂取基準」(2010年版)」(厚生労働省)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、それらの成分を懸濁用組成物に追加すると、追加した分だけコストが増大するという問題点がある。このため、他の成分を追加せずに、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物の呈味を改善する手段が求められていた。
【0009】
この期待に応え、本発明は、コストの不要な増大を招くことなく、使用者が抵抗感なく摂取することができる、呈味が改善された新たな懸濁用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の懸濁用組成物は、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物であって、前記カルシウム化合物に卵殻カルシウムを用いることで呈味を改善するものである。
【0011】
請求項2に記載の懸濁用組成物は、請求項1に記載の懸濁用組成物において、前記緑葉の粉末が、大麦、ケール、キャベツ、甘藷の茎葉、アシタバの茎葉、チャの葉、ヨモギから選択される少なくとも1つから得られるものである。
【0012】
請求項3に記載の懸濁用組成物の呈味改善方法は、緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物の呈味改善方法であって、前記カルシウム化合物に卵殻カルシウムを用いることで呈味を改善するものである。
【0013】
請求項4に記載の懸濁用組成物の呈味改善方法は、請求項3に記載の懸濁用組成物において、前記緑葉の粉末が、大麦、ケール、キャベツ、甘藷の茎葉、アシタバの茎葉、チャの葉、ヨモギから選択される少なくとも1つから得られるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の懸濁用組成物によれば、含有されるカルシウム化合物に卵殻に由来するカルシウム化合物(以下、卵殻カルシウムとする)を用いているので、他のカルシウム化合物(例えば、サンゴカルシウムや石灰石カルシウムなど)を用いた懸濁用組成物よりも呈味が改善される。よって、コストの不要な増大を招くことなく、使用者が抵抗感なく摂取することができる懸濁用組成物を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態の記載により限定して解釈されるものでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0016】
本発明の懸濁用組成物は、緑葉の粉末と卵殻カルシウムとを含有している。
【0017】
本発明の懸濁用組成物に含有される緑葉の粉末は、緑葉を粉砕したものであれば特に限定されない。なお、本明細書において「緑葉」と記載した場合、特に断りのない限り、植物の茎なども含む概念で使用している。この緑葉としては、例えば、イネ科植物(大麦、小麦、えん麦、ライ麦等の麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきび等)の緑葉、キク科植物(ヨモギ等)、セリ科植物(アシタバの茎葉、パセリ、セロリ等)、クワ科植物(クワ等)、ドクダミ科植物(ドクダミ等)、シソ科植物(シソ等)、アブラナ科植物(ケール、キャベツ、小松菜、ブロッコリー等)、ユリ科植物(アスパラガス等)、シナノキ科植物(モロへイヤ等)、ヒルガオ科植物(甘藷の茎葉等)、アカザ科(ホウレンソウ等)、ツバキ科(チャ等)のような緑色植物の緑葉が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい緑葉としては、イネ科植物(好ましくは大麦)、セリ科植物(好ましくはアシタバの茎葉)、アブラナ科植物(好ましくはケール、キャベツ)、ヒルガオ科植物(好ましくは甘藷の茎葉)、キク科植物(好ましくはヨモギ)又はツバキ科(チャ等)等を挙げることができ、より好ましくは大麦若葉、ケール、甘藷の茎葉、アシタバの茎葉、ヨモギ等が挙げられる。
【0018】
上述した植物の緑葉から緑葉の粉末を製造するには、これらの植物の緑葉を、適当な大きさに切断し、必要に応じて、ブランチング(熱水)処理等の変色防止処理や乾燥処理を施し、次いで適当な大きさに粉砕すれば良い。なお、乾燥処理を行う場合は、凍結乾燥、高温加熱乾燥または低温加熱乾燥(例えば、温風乾燥)の何れでも良い。上述した一連の処理により得られる緑葉の粉末は、緑葉を搾汁することなくそのまま乾燥粉末にしているために、緑葉の有効成分を逃がすことなく含んでいる。
【0019】
なお、上述した一連の処理以外にも、緑葉を採取した後、水、アルコール等の溶媒と共にミキサーで均質化し、その後熱風乾燥や凍結乾燥やスプレードライで乾燥して、緑葉の粉末を得ても良い。
【0020】
本発明の懸濁用組成物に含有されるカルシウム化合物は、炭酸カルシウムを主要成分として含有する組成物である。
【0021】
本発明の懸濁用組成物に含有される卵殻カルシウムは卵殻を元に製造される。卵殻としては、特に制限されるものではなく、鳥類の卵から得られる卵殻の何れでも良い。その中でも、入手が容易である鶏卵の卵殻が好ましい。また、本発明に用いられる卵殻カルシウムは、未焼成卵殻カルシウム、あるいは焼成卵殻カルシウムの何れでも良い。卵殻カルシウムが未焼成卵殻カルシウムの場合には、卵殻を水洗してから粗粉砕し、その後、不要成分(卵殻膜等)を除去し、更に脱水、乾燥、粉砕及び微粉砕等の製造工程を通して調製される。
【0022】
本発明の懸濁用組成物には野菜粉末を含有しても良い。この野菜粉末としては、ニンジン、ニガウリ、トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、スピルリナ、カボチャ、浅葱、明日葉、アスパラガス、さやいんげん、さやえんどう、おかひじき、オクラ、貝割れ大根、かぶの葉、からし菜、ぎょうじゃにんにく、京菜、クレソン、こごみ、小松菜、山東菜、ししとうがらし、サラダ菜、しそ、十六ささげ、春菊、せり、大根の葉、高菜、たらの芽、チンゲンサイ、つくし、つるむらさき、唐辛子、とんぶり、ナズナ、なばな、ニラ、ニンニクの芽、万能ねぎ、野沢菜、パクチョイ、バジル、パセリ、パプリカ、ピーマン、広島菜、ブロッコリー、ほうれん草、みつば、芽キャベツ、よめな、よもぎ、リーキ、ロケットサラダ、わけぎ等が挙げられる。
【0023】
本発明の懸濁用組成物に含有し得る野菜粉末は、上述した各野菜を乾燥して粉末に加工して生成される。乾燥野菜粉末としては、例えば、凍結乾燥粉末や熱風乾燥粉末等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の懸濁用組成物には、更に、例えば、還元麦芽糖、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビット等の甘味料や、ビタミンBやビタミンD等の栄養添加剤、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維、香料を含有しても良い。その他にも、松樹皮抽出物、ジャガイモ抽出物、葛の花抽出物、チャ抽出物、チャの花抽出物、大豆抽出物、キャベツ粉末、タマネギ粉末を含有しても良い。
【0025】
また、本発明の懸濁用組成物は、水、牛乳、豆乳、清涼飲料などに添加することで、飲食品類として利用することができる。また、これ以外にも、本発明の懸濁用組成物は、食用に適した形態、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状などに成形することで、食品素材として利用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0027】
(試験例:懸濁用組成物の官能評価)
懸濁用組成物の官能評価試験について説明する。緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物の官能評価試験を実施するにあたり、後述する実施例1と比較例1〜2の全3例をそれぞれ製造し、官能評価試験に供した。
【0028】
(実施例1)
卵殻未焼成カルシウムを13重量%、ケール葉粉末を15重量%、アシタバ粉末15重量%の割合となるように配合した粉末状の懸濁用組成物3gを100mlの水と混合し、よく混ぜ合わせて試験飲料Aとした。
【0029】
(比較例1)
サンゴを元に製造された炭酸カルシウムを含有する組成物(以下「サンゴカルシウム」と称する)を13重量%、ケール葉粉末を15重量%、アシタバ粉末15重量%の割合となるように配合した粉末状の懸濁用組成物3gを100mlの水と混合し、よく混ぜ合わせて試験飲料Bとした。
【0030】
(比較例2)
石灰石を元に製造された炭酸カルシウム(以下「石灰石カルシウム」と称する)を13重量%、ケール葉粉末を15重量%、アシタバ粉末15重量%の割合となるように配合した粉末状の懸濁用組成物3gを100mlの水と混合し、よく混ぜ合わせて試験飲料Cとした。
【0031】
(試験方法)
官能試験の評価者には、20〜30代の健常女性10人が選択された。試験飲料A〜Cの各試験飲料の官能評価を行うにあたり、各評価者は試験飲料の摂取前に少量の水を含んでマウスウォッシュを行った。評価者は、各試験飲料について、味が良くないものを1とし、味が良いものを5とする、1〜5までの5段階での評価を行った。
【0032】
(試験の結果)
10人の評価者による評価の平均値を取った結果を、表1に示す。
【0033】
(表1)

【0034】
表1に示すように、卵殻未焼成カルシウムを用いた試験飲料Aは、サンゴカルシウムや石灰石カルシウムを含む試験飲料B、Cよりも評価が高く、特に石灰石カルシウムを含む試験飲料Cと比較した場合には、1ポイント以上も差が生じた。本試験の結果から、カルシウム化合物として卵殻カルシウムを用いることで、呈味の改善された懸濁用組成物を製造できることが見出された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の懸濁用組成物は、緑葉の粉末と混合するカルシウム化合物として卵殻カルシウムを用いることを特徴としているため、コストの不要な増大を招くことなく、呈味が改善されるため、使用者が抵抗感なく摂取することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物であって、前記カルシウム化合物に卵殻カルシウムを用いることで、前記懸濁用組成物の呈味を改善したことを特徴とする、懸濁用組成物。
【請求項2】
前記緑葉の粉末が、大麦、ケール、キャベツ、甘藷の茎葉、アシタバの茎葉、チャの葉、ヨモギから選択される少なくとも1つから得られることを特徴とする、請求項1に記載の懸濁用組成物。
【請求項3】
緑葉の粉末とカルシウム化合物とを含有する懸濁用組成物の呈味改善方法であって、前記カルシウム化合物に卵殻カルシウムを用いることで、前記懸濁用組成物の呈味を改善したことを特徴とする、懸濁用組成物の呈味改善方法。
【請求項4】
前記緑葉の粉末が、大麦、ケール、キャベツ、甘藷の茎葉、アシタバの茎葉、チャの葉、ヨモギから選択される少なくとも1つから得られることを特徴とする、請求項3に記載の懸濁用組成物の呈味改善方法。


【公開番号】特開2012−85583(P2012−85583A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235622(P2010−235622)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】