説明

線維性肺疾患の処置のための方法および組成物

【課題】 線維性肺疾患を予防および処置ないし治療するための、ならびに、線維性肺疾患、例えば、特発性肺線維症などの症状を軽減または回復するための、方法および化合物が開示される。
【解決手段】 化合物はLOXL2タンパク質の抑制剤を含み、かつ、方法は当該抑制剤を製造および使用するための方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2009年8月21日に出願された米国仮出願番号61/235,846の利益を主張し、この開示は、全ての目的のために、その全てが本願に引用によって取り込まれる。
【0002】
[連邦政府の支援に関する陳述]
(支援は)適用されない。
【技術分野】
【0003】
本出願の開示は線維性肺疾患、特に、特発性肺線維症(IPF)の分野に含まれる。
【背景技術】
【0004】
線維性肺疾患は、肺の中の結合組織の炎症および病理学的な強化によって特徴付けられ、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)のような状態ないし症状を含んでいる。これらには、現在、有効な治療がなく、そのために、慢性の進行性の疾病である。
【0005】
IPFは肺組織の炎症と、結局のところ、線維症によって特徴付けられるが、これらの2つの症状は切り離して考えることもでき得る。IPFの原因は未知であり、それは自己免疫疾患から、あるいは感染の結果として、発生するかもしれない。IPFの症状は、疾患の進行(増悪)としての主要症状になる呼吸困難(つまり息切れ)および乾いた咳を含む。低酸素血、右心不全、心臓発作、肺塞栓症、ストロークあるいは肺感染症に起因して死亡する場合があり、それらのすべては、その疾患によってもたらされ得る。
【0006】
病理学的に、IPFの初期段階は、肺胞の線維症が後に続く、肺胞の炎症が特徴である。これは肺実質に、線維芽細胞の活性化、線維芽細胞と筋線維芽細胞の拡張および細胞外マトリックスの異常な堆積物を含む。IPFに関連した筋線維芽細胞は、活性化された線維芽細胞に由来するかもしれないし、循環(血中)骨髄から取り出された前駆細胞から伝わるかもしれないか、または、肺の肺胞上皮細胞の「上皮間葉移行(EMT)」に起因するかもしれない。肺胞の線維性瘢痕化は、酸素移動に対する能力を低下し、低酸素血症を引き起こす。そして、低酸素血は、肺高血圧症を誘発する場合があり、それは、結局、(心臓の)右心室を弱める。
【0007】
IPFに対する第一次の(主な)治療法ないし処理は薬剤であり、また、ほとんどのIPF患者は、生涯にわたって治療を必要とする。IPFの治療に使用される最も一般的な薬剤は、コルチコイド(例えば、プレドニゾン)、ペニシラミンおよび様々な抗腫瘍剤(例えばシクロフォスファミド、アザチポレン、クロラムブチル、ビンクリスチンおよびコルヒチン)である。他の治療は、酸素投与と、そして極端な場合には、肺移植を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
顕著なことに、肺移植以外のIPFのすべての治療法は線維症の障害を回復しないが、単に、さらなる線維症を予防する。したがって、疾患の進行を防ぐだけでなく既存の線維症の障害を回復する、IPFのための非侵入性の処置ないし治療法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
線維性肺疾患を予防し処置(治療)するための方法および組成物がここに開示される。線維性肺疾患の症状を改善(回復)および/または緩和するための方法および組成物も開示される。
【0010】
開示の組成物は、リシル酸化酵素(リシルオキシダーゼ)関連のタンパク質-2(lysyl oxidase-related protein-2)(LOXL2)の抑制剤を含み、例えば、小分子、核酸およびタンパク質(例えば、抗体;例えば、抗LOXL2抗体)を含む。薬学的に許容可能な添加剤ないし賦形剤と任意に組合せて、LOXL2の抑制剤(例えば、抗LOXL2抗体)を含有する薬剤も提供される。
【0011】
典型的な線維性肺疾患は、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺炎および急性呼吸促迫症候群(ARDS)を含む。
【0012】
線維性肺疾患の症状は、以下に限られないが、体重の減少、肺重量の減少、肺線維症、病的な状態の肺構造(例えば、「ハチの巣」肺)アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加、CD45+/コラーゲン+細胞の数の増加、肺細胞の増殖および拡張、並びに、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加を含むことができる。症状も、例えば、下記に示す、一つ以上の分子の増加した肺のレベルを含むことができ、それらの分子は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長(ないし増殖)因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1(SDF-1)(例えば、SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2である。
【0013】
開示された処置(治療)は線維性肺疾患の患者(被験者)にリシル酸化酵素関連タンパク質-2(LOXL2)の抑制剤を投与することを含む。典型的な抑制剤は、制限されないが、LOXL2に対する抗体を含む。典型的な抗体は、ここに開示されたAB0023およびAB0024の抗体である。
【0014】
さらに、患者からの肺組織のサンプルでLOXL2のレベルを測定することにより、患者の線維性肺疾患を診断するための方法が提供され、ここで、増加したLOXL2レベルは、線維性肺疾患の発病あるいは進行を示す。LOXL2のレベルは当技術で既知の任意の方法によって測定することができ、例えば、抗LOXL2抗体でサンプルと接触すること、サンプルで抗体とLOXL2との間の複合体(complex)の形成を発見すること、および形成された複合体の量を測定すること、によってできる。追加の測定方法はLOXL2mRNAのレベルを検出することを含む。mRNAを検出するための方法は当技術において周知である。
【0015】
さらに、肺の組織において、例えば、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1(SDF-1)(例えば、SDF-1αまたはSDF-1β)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2のレベルの上昇は、線維性肺疾患の発病または進行を示す。
【0016】
追加の実施形態では、予後(prognostic)の方法が提供される。よって、本開示は、患者からの肺組織のサンプルでLOXL2のレベルを測定することにより、患者の線維性肺疾患を処置するための治療に対する患者の反応をモニターする方法を含んでおり、ここで、減少したLOXL2レベルは、線維性肺疾患の改善ないし回復を示す。LOXL2のレベルは当技術で既知の任意の方法によって測定することができ、例えば、抗LOXL2抗体でサンプルと接触すること、サンプルで抗体とLOXL2との間の複合体の形成を発見すること、および形成された複合体の量を測定すること、によってできる。追加の測定方法はLOXL2 mRNAのレベルを検出することを含む。mRNAを検出するための方法は当技術分野において周知である。
【0017】
さらに、肺の組織において、例えば、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1(SDF-1)(例えば、SDF-1αまたはSDF-1β)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2のレベルの下降は、線維性肺疾患の改善ないし回復を示す。
【0018】
したがって、本開示は、以下に限定されないが、下記の実施態様を含む:
【0019】
形態1. 被験者ないし患者の線維性肺疾患の予防のための方法であって、該方法は、被験者に対して、リシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤を投与することを含む。
【0020】
形態2. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態1の方法。
【0021】
形態3. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態1の方法。
【0022】
形態4. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態3の方法。
【0023】
形態5. 上記抗体はヒト化抗体である、形態3の方法。
【0024】
形態6. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態5の方法。
【0025】
形態7. 被験者ないし患者の線維性肺疾患の処置ないし治療のための方法であって、該方法は、被験者に対して、リシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤を投与することを含む。
【0026】
形態8. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態7の方法。
【0027】
形態9. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態7の方法。
【0028】
形態10. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態9の方法。
【0029】
形態11. 上記抗体はヒト化抗体である、形態9の方法。
【0030】
形態12. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態11の方法。
【0031】
形態13. 被験者ないし患者の線維性肺疾患の症状を回復するための方法であって、該方法は、被験者に対してリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤を投与することを含む。
【0032】
形態14. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態13の方法。
【0033】
形態15. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態13の方法。
【0034】
形態16. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態15の方法。
【0035】
形態17. 上記抗体はヒト化抗体である、形態15の方法。
【0036】
形態18. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態17の方法。
【0037】
形態19. 上記症状は、体重の減少、肺重量の増加、線維症、肺構造、アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加、およびCD45/コラーゲン細胞数の増加から構成される群から選択される、形態13の方法。
【0038】
形態20. 上記症状は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2から構成される群から選択される、一以上の分子の増加したレベルである、形態13の方法。
【0039】
形態21. 上記症状は気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加である、形態13の方法。
【0040】
形態22. 線維性肺疾患の予防若しくは処置ないし治療のための、または、被験者ないし患者の線維性肺疾患の症状を回復するための医薬化合物であって、該化合物は、リシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤および薬学的に許容可能な添加剤ないし賦形剤を含む。
【0041】
形態23. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態22の化合物。
【0042】
形態24. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態22の化合物。
【0043】
形態25. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態24の化合物。
【0044】
形態26. 上記抗体はヒト化抗体である、形態24の化合物。
【0045】
形態27. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態26の化合物。
【0046】
形態28. 上記症状は、体重の減少、肺重量の増加、線維症、肺構造、アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加、およびCD45/コラーゲン細胞数の増加から構成される群から選択される、形態22の化合物。
【0047】
形態29. 上記症状は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2から構成される群から選択される一つ以上の分子の増加したレベルである、形態22の化合物。
【0048】
形態30. 上記症状は気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加である、形態22の化合物。
【0049】
形態31. 被験者ないし患者の線維性肺疾患を診断するための方法であって、該方法は、下記ステップ:
(a)被験者ないし患者からの肺組織のサンプルを得るステップ、および
(b)該サンプルのLOXL2のレベルを決定するステップ、
を含み、
対照サンプルと比較して、該サンプルのLOXL2の増加したレベルが、線維性肺疾患の存在を示す。
【0050】
形態32. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態31の方法。
【0051】
形態33. 上記サンプルのLOXL2のレベルは、抗体と該サンプル中のLOXL2との間の複合体の形成をさせるように、該サンプルにLOXL2に対する抗体を接触させることによって決定され、形成される複合体の量を測定する、形態31の方法。
【0052】
形態34. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態33の方法。
【0053】
形態35. 上記抗体はヒト化抗体である、形態33の方法。
【0054】
形態36. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態35の方法。
【0055】
形態37. 線維性肺疾患を処置するための治療(セラピー)に対する被験者ないし患者の応答をモニターするための方法であって、該方法は、下記ステップ:
(a)被験者ないし患者からの肺組織のサンプルを得るステップ、および
(b)該サンプルのLOXL2のレベルを決定するステップ、
を含み、
対照サンプルと比較して、該サンプルのLOXL2の減少したレベルが、線維性肺疾患の改善を示す。
【0056】
形態38. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態37の方法。
【0057】
形態39. 上記サンプルのLOXL2のレベルは、抗体と該サンプル中のLOXL2との間の複合体の形成をさせるように、該サンプルにLOXL2に対する抗体を接触させることによって決定され、形成される複合体の量を測定する、形態37の方法。
【0058】
形態40. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態39の方法。
【0059】
形態41. 上記抗体はヒト化抗体である、形態39の方法。
【0060】
形態42. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態41の方法。
【0061】
形態43. 上記処置はLOXL2の抑制剤を被験者ないし患者に投与することを含む、形態37の方法。
【0062】
形態44. 上記抑制剤は抗体である、形態43の方法。
【0063】
形態45. 上記抑制剤はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態44の方法。
【0064】
形態46. 上記抑制剤はヒト化抗体である、形態44の方法。
【0065】
形態47. 上記抑制剤はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態46の方法。
【0066】
形態48. 線維性肺疾患の予防に使用するためのリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤。
【0067】
形態49. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態48の抑制剤。
【0068】
形態50. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態48の抑制剤。
【0069】
形態51. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態50の抑制剤。
【0070】
形態52. 上記抗体はヒト化抗体である、形態50の抑制剤。
【0071】
形態53. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態52の抑制剤。
【0072】
形態54. 線維性肺疾患の処置に使用するためのリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤。
【0073】
形態55. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態54の抑制剤。
【0074】
形態56. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態54の抑制剤。
【0075】
形態57. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態56の抑制剤。
【0076】
形態58. 上記抗体はヒト化抗体である、形態56の抑制剤。
【0077】
形態59. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態58の抑制剤。
【0078】
形態60. 被験者ないし患者の線維性肺疾患の症状の改善に使用するためのリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤。
【0079】
形態61. 上記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、形態60の抑制剤。
【0080】
形態62. 上記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、形態60の抑制剤。
【0081】
形態63. 上記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、形態62の抑制剤。
【0082】
形態64. 上記抗体はヒト化抗体である、形態62の抑制剤。
【0083】
形態65. 上記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、形態64の抑制剤。
【0084】
形態66. 上記症状は、体重の減少、肺重量の増加、線維症、肺構造、アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加、およびCD45/コラーゲン細胞数の増加から構成される群から選択される、形態60の抑制剤。
【0085】
形態67. 上記症状は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2から構成される群から選択される一つ以上の分子の増加したレベルである、形態60の抑制剤。
【0086】
形態68. 上記症状は気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加である、形態60の抑制剤。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】予防研究の経過中の平均体重を示す。菱形は、生理用食塩水で処置された対照動物(群1)を示す;星印は、0日目にブレオマイシン処置された動物(群2)を示す;そして、円は、抗LOXL2抗体で前処理され、0日目にブレオマイシン処置されて、その後、抗LOXL2抗体で週に2度処置された動物(群3)を示す。
【図2】(左から右に)生理用食塩水(saline)で処置された対照動物(群1)、ブレオマイシン処置された動物(群2)、並びに抗LOXL2抗体で前処理および後処理され、ブレオマイシン処置された動物(群3)からの気管支肺胞洗浄液での平均白血球数を示す。
【図3】α-平滑筋アクチン(α-SMA 左パネル)およびLOXL2(右パネル)について免疫組織化学によって分析された肺の切片を示す。上部パネルは、ブレオマイシンおよび抗体希釈剤で処置された動物(群2)からの切片を示す。下部パネルは、ブレオマイシンで処理された動物の切片、並びに抗LOXL2抗体(AB0023)で前処理および後処理された動物からの切片を示す。
【図4】群1(生理用食塩水(saline))、群2(ブレオマイシン:ビヒクル)および群3(ブレオマイシン:AB0023)の動物からの肺の切片におけるLOXL2シグナルの平均面積(エリア)を示す。
【図5】群1(生理用食塩水(saline))、群2(ブレオマイシン:ビヒクル)および群3(ブレオマイシン:AB0023)の動物からの肺の切片におけるα-SMAシグナルの平均面積(エリア)を示す。
【図6】ブレオマイシンで処置された動物(群2、上部左)およびブレオマイシンと抗LOXL2抗体で処置された動物(群3、上部右)からの肺のH&Eで染色された切片を示す。倍率20x。対照動物(生理用食塩水の対照(saline control))、ブレオマイシン処置動物(ブレオマイシン:ビヒクル)およびブレオマイシンと抗LOXL2抗体で処置された動物(ブレオマイシン:AB0023)からの肺についてのアッシュクロフト・スコアは、下部パネルで示される。
【図7】透過光での観察により、ブレオマイシン処置動物(群2、上部左)およびブレオマイシン+抗LOXL2抗体処置動物(群3、上部右)からの肺のシリウスレッド染色の切片を示す。倍率20x。ブレオマイシン処置動物(ブレオマイシン:ビヒクル)およびブレオマイシンと抗LOXL2抗体で処置された動物(ブレオマイシン:AB0023)からの肺について、架橋結合されたコラーゲン(偏光によってシリウスレッド染色を検出することで確認される)のレベルの定量は、下部パネルに示される。
【図8】ブレオマイシン処理動物(群2、左上)およびブレオマイシン+抗LOXL2抗体処理動物(群3、右上)の肺の切片で、免疫組織化学によってストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)の存在について分析された切片を示す。倍率20x。対照動物(生理用食塩水の対照(saline control))、ブレオマイシン処置動物(ブレオマイシン:ビヒクル)およびブレオマイシンと抗LOXL2抗体で処置された動物(ブレオマイシン:AB0023)からの肺の切片におけるSDF-1αシグナルの定量は、下部パネルに示される。
【図9】ブレオマイシン処理動物(群2、左上)およびブレオマイシン+抗LOXL2抗体処理動物(群3、右上)の肺の切片で、免疫組織化学によってTGFβ-1の存在について分析された切片を示す。倍率20x。対照動物(生理用食塩水の対照(saline control))、ブレオマイシン処置動物(ブレオマイシン:ビヒクル)およびブレオマイシンと抗LOXL2抗体で処置された動物(ブレオマイシン:AB0023)からの肺の切片におけるTGFβ-1シグナルの定量は、下部パネルに示される。
【図10】ブレオマイシン処置マウス(さらに、抗LOXL2抗体(AB0023、右)あるいはコントロール抗体(AC-1、左)のいずれかで処置され、ELISAによって決定された)のp-SMAD2の相対的なレベルを示す。
【図11】ブレオマイシン処理動物(群2、左上)およびブレオマイシン+抗LOXL2抗体処理動物(群3、右上)の肺の切片で、免疫組織化学によってエンドセリン-1(ET-1)の存在について分析された切片を示す。倍率20x。対照動物(生理用食塩水の対照(saline control))、ブレオマイシン処置動物(ブレオマイシン:ビヒクル)およびブレオマイシンと抗LOXL2抗体で処置された動物(ブレオマイシン:AB0023)からの肺の切片におけるET-1シグナルの定量は、下部パネルに示される。
【図12】タイプIコラーゲン(緑)およびCD45(赤)について染色された肺の切片の代表的な画像を示す。上部パネル:倍率20x、下部パネル:倍率63X。左の2つのパネルは、ブレオマイシンで処置されていた動物(1Uブレオマイシン:ビヒクル)からの肺の切片を示し、右の2つのパネルは、ブレオマイシンおよび抗LOXL2抗体で処置されていた動物(1Uブレオマイシン:AB0023)からの肺の切片を示す。CD45陽性細胞およびコラーゲンの共同局在(co-localization)(矢印によって示す)は、可能な(possible)線維細胞(つまり肺の中の繊維症の一因となる繊維芽細胞の前駆細胞)の存在を示す。抗体での処置は、肺組織での線維細胞前駆細胞の発生率を減じた。
【図13】抗LOXL2抗体AB0023(上のグラフ線)あるいはLOXL2を認識しないコントロール抗体(AC-1、下のグラフ線)のいずれかの、処置後の注入を受けたブレオマイシン処置動物の体重の平均増加の測定を示す。
【図14】ブレオマイシン処置動物および対照動物の肺重量の測定を示す。ブレオマイシン非処置の対照動物(Saline)、ブレオマイシン処置直後の動物(Harvest Rx)、コントロール抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo: AC-1)、抗LOXL2抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo:AB0023)からの肺重量が図中に示される。
【図15】マウス肺のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色の切片を示す。上部パネルは、ブレオマイシン投与後、7日目の抗体処理の開始後の24-48時間に取得された、肺組織が肥厚して広範囲の肺の障害のハーベストRxサンプルからの代表的な切片を示す。中央のパネルは、コントロールAC-1抗体の注入を受けていた、ブレオマイシン処置動物からの代表的な肺の切片(その肺の障害は進行していた)を示す。下部パネルは、ブレオマイシン処置によって引き起こされた肺障害の改善および肺構造の正常化を示す、抗LOXL2 AB0023抗体の注入を受けていた、ブレオマイシン処置動物からの代表的な肺の切片を示す。
【図16】ブレオマイシン非処置の対照動物(Saline)、ブレオマイシン処置直後の動物(Harvest Rx)、コントロール抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo: AC-1)、抗LOXL2抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo:AB0023)からのアッシュクロフト・スコアを示す。
【図17】ブレオマイシン非処置の対照動物(Saline)、ブレオマイシン処置直後の動物(Harvest Rx)、コントロール抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo: AC-1)、抗LOXL2抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo:AB0023)からのα-SMAのレベルを示す。α-SMAレベルは免疫組織化学によって決定され、また、MetaMorph Imaging Software (Molecular Devices, Downingtown, PA)を用いて定量された。
【図18】ブレオマイシン非処置の対照動物(Saline)、ブレオマイシン処置直後の動物(Harvest Rx)、コントロール抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo: AC-1)、抗LOXL2抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo:AB0023)からのLOXL2のレベルを示す。LOXL2のレベルは免疫組織化学によって決定され、また、MetaMorph Imaging Software (Molecular Devices, Downingtown, PA)を用いて定量された。
【図19】、偏光によってシリウスレッド染色を検出することで確認された、ブレオマイシン非処置の対照動物(Saline)、ブレオマイシン処置直後の動物(Harvest Rx)、コントロール抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo: AC-1)、抗LOXL2抗体の週2度の注入を受け、ブレオマイシン処置後の22日目の動物(Bleo:AB0023)からの架橋結合されたコラーゲンのレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
詳細な記載
本開示の実施は、特段の指示ない限り、当該技術の範囲内にあるものとして、細胞生物学の技術分野における標準方法および従来の技術、即ち、毒物学、分子生物学、生化学、細胞培養、免疫学、腫瘍学、組換DNA、並びに関連する分野におけるものを用いる。そのような技術は文献に述べられており、そのため、当業者に利用可能である。例えば、Alberts, B. et al., "Molecular Biology of the Cell," 5th edition, Garland Science, New York, NY, 2008; Voet, D. et al. "Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level," 3rd edition, John Wiley & Sons, Hoboken, NJ, 2008; Sambrook, J. et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001; Ausubel, F. et al., "Current Protocols in Molecular Biology," John Wiley & Sons, New York, 1987 及び定期的更新; Freshney, R.I., "Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique," 4th edition, John Wiley & Sons, Somerset, NJ, 2000; 及び "Methods in Enzymology"のシリーズ、 Academic Press, San Diego, CA.を参照されたい。
【0089】
[線維性肺疾患]
線維性肺疾患は、肺実質の炎症および線維症が特徴である。これらの疾病の病因は確立されておらず、また、予後は一般に悪い。現在、線維性肺疾患は、発生頻度で調整されて、下記の群に分類される:特発性肺線維症(IPF)、非特異性の間質性肺炎(NSIP)、呼吸の毛細気管支炎に関連する間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、急性間質性肺炎およびリンパ球性間質性肺炎(LIP)。急性呼吸促迫症候群(ARDS)も、線維性肺疾患であると認定されている。
【0090】
追加的な線維性肺疾患は、強皮症関連肺線維症およびサルコイドーシスの後遺症としての線維症の障害を含む。
【0091】
線維性肺疾患の症状は、体重の減少、肺重量の増加、活性化された線維芽細胞または線維細胞の存在、線維細胞前駆細胞(例えば、CD45とコラーゲンの両方を発現する細胞)の存在、異常な肺構造(例えば、肺胞の肥厚、肺細胞の増殖および拡張、ならびに、ハチの巣肺を含む)アッシュクロフト・スコア(一般的な肺構造(lung structure and architecture)を反映する)の増加、コラーゲンレベルの増加、並びに、気管支肺胞洗浄液中の白血球数の増加を含む。
【0092】
線維性肺疾患の分子レベルでの症状は、下記の一つ以上のタンパク質のレベルの増加を含む:LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、ストロマ由来因子-1β(SDF-1β)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2。
【0093】
[線維性肺疾患におけるLOXL2の関与]
線維性肺疾患の患者からの肺生検の検査は、IPFのすべての組織学的に定義された段階でLOXL2の広範囲の発現を明らかにする。LOXL2は、特に、疾患に関連した血管、およびマトリクス改造(matrix remodeling)および活発な線維成長の領域で強く発現される。LOXL2発現も線維症の肺組織の反応性タイプII肺細胞に検出される。
【0094】
さらに、LOXL2過剰発現の部位は、アルファ平滑筋アクチン(α-SMA)が発現される部位と相関がある。SMAは活性化された線維芽細胞のマーカーであり、それは線維性組織の特徴である。したがって、線維性肺組織のLOXL2の主要源(primary sources)は、活性化された線維芽細胞(「線維細胞」)および疾患に関連した(「反応性」)肺細胞であるように見受けられる。
【0095】
線維性の肺のLOXL2の過剰発現、並びに線維成長および線維芽細胞活性化の部位でのLOXL2過剰発現の共局在性(co-localization)に照らして、発明者らは、LOXL2の抑制が線維性肺疾患を予防し、かつ/または、処置ないし治療する有効な方法であることを決定した。さらに、発明者らは、LOXL2の抑制が、上述したものを含む肺線維症の症状を回復することを確認した。よって、肺線維症の進行を阻害、改善または予防する、他の方法とは対照的に、ここに開示された方法および組成物は、線維性の肺組織の治癒ないし回復(healing)を実際に促進し、したがって、線維性肺疾患の過程を逆転(reverse、即ち、回復)するために使用することができる。
【0096】
[リシル酸化酵素型酵素]
本願で使用される場合、用語「リシル酸化酵素型酵素」は、とりわけ、リシン及びヒドロキシリシン残基のε‐アミノ基の酸化的脱アミノ化を触媒するタンパク質のファミリーのメンバーであることを意味し、かくて、ペプチジルリシンのペプチジル‐α‐アミノアジピック‐δ−セミアルデヒド(アリシン)への変換をもたらし、アンモニア及び過酸化水素の化学量論的量を放出する。

【0097】
この反応は、ほとんどの場合、細胞外のコラーゲン及びエラスチンのリシン残基に生じる。アリシンのアルデヒド残基は、活性であり、同時に他のアリシン及びリシン残基と凝集することができ、かくて、コラーゲン分子の架橋結合(crosslinking)をもたらし、コラーゲン原繊維を形成する。
【0098】
リシル酸化酵素型酵素は、ニワトリ、ラット、マウス、ウシ及びヒトから精製されている。すべてのリシル酸化酵素型酵素は、長さ約205アミノ酸であり、タンパク質のカルボキシ末端部分に位置し、酵素の活性部位を含む、共通の触媒ドメインを含む。活性部位は、Cu(II)原子と配位する4つのヒスチジン残基を含む保存アミノ酸配列を含む銅結合部位を含む。活性部位はまた、リシン残基とチロシン残基の間の分子内共有結合により形成されるリシルチロシルキノン(LTQ)補因子も含む(ラットリシル酸化酵素では、314番目のlys及び349番目のtyrに相当し、ヒトリシル酸化酵素では、320番目のlys及び355番目のtyrに相当する)。LTQ補因子を形成するチロシン残基を取り巻く配列はまた、リシル酸化酵素型酵素の間でも保存される。触媒ドメインはまた、5つのジスルフィド結合の形成に関与する10つの保存システイン残基をも含む。触媒ドメインはまた、フィブロネクチン結合ドメインをも含む。最終的に、成長因子及びサイトカインレセプタードメインに類似し、4つのシステイン残基を含むアミノ酸配列が、触媒ドメインに存在する。これらの保存領域が存在するにも関わらず、異なるリシル酸化酵素型酵素は、これら触媒ドメインの内部及び外側の両方における、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の相違する領域の効力(virtue)によって、他の異なるリシル酸化酵素型酵素とお互いに区別され得る。
【0099】
単離され、特徴付けられた、この酵素のファミリーの最初のメンバーは、リシル酸化酵素(EC 1.4.3.13)であった。これはまた、タンパク質‐リシン6‐酸化酵素、タンパク質‐L‐リシン:酸素‐6‐酸化還元酵素(脱アミノ化)又はLOXとしても知られる。例えば、Harris et al., Biochim. Biophys. Acta 341:332-344 (1974); Rayton et al., J. Biol. Chem. 254:621-626 (1979); Stassen, Biophys. Acta 438:49-60 (1976)を参照されたい。
【0100】
更なるリシル酸化酵素型酵素が、続いて発見された。これらのタンパク質は、「LOX様」又は「LOXL」と称されている。これらの全ては、上記の共通の触媒ドメインを含み、類似の酵素的活性を有する。これまでのところ、5つの異なったリシル酸化酵素型酵素が、ヒトとマウスの両方に存在することが知られている。すなわち、LOXタンパク質及び4つのLOXに関連するタンパク質又はLOX様タンパク質であるLOXL1(これらはまた、「リシル酸化酵素様」「LOXL」又は「LOL」とも示される)、LOXL2(これは、「LOR−I」とも示される)LOXL3(これは、「LOR−2」とも示される)及びLOXL4である。5つの異なるリシル酸化酵素型酵素をエンコードする各遺伝子は、異なった染色体上に存在する。例えば、Molnar et al. (2003) Biochim Biophys Acta. 1647:220- 24、Csiszar (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32、2001年11月8日公開WO 01/83702、及び 米国特許番号6,300,092を参照されたい(これらの全ては本願に引用として組み込まれる)。LOXL4といくつかの類似性を有するが、異なる発現パターンを有する、LOXCと呼ばれるLOX様タンパク質は、マウスEC細胞系統から単離されている(Ito et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:24023-24029)。DmLOXL−1とDmLOXL−2の2つのリシル酸化酵素型酵素は、ショウジョウバエから単離されている。
【0101】
全てのリシル酸化酵素型酵素が、共通の触媒ドメインを共有しているにも関わらず、これらはまた、特に、そのアミノ末端領域内において、お互いに異なる。LOXと比較して、4つのLOXLタンパク質は、アミノ末端伸張を有する。従って、ヒトプレプロLOX(つまり、シグナル配列の切断の前の一次翻訳産物、以下参照)は、417アミノ酸残基を含み、LOXL1は574(アミノ酸残基)を含み、LOXL2は638(アミノ酸残基)を含み、LOXL3は753(アミノ酸残基)を含み及びLOXL4は756(アミノ酸残基)を含む。
【0102】
これらのアミノ末端領域の範囲内において、LOXL2、LOXL3及びLOXL4は、4つのスカベンジャーレセプターのシステインに富む(SRCR)ドメインの繰り返しを含む。これらのドメインは、LOX又はLOXL1には存在しない。SRCRドメインは、分泌性のタンパク質、膜貫通型タンパク質又は細胞外マトリクスタンパク質に見られ、いくつかの分泌性の及びレセプタータンパク質におけるリガンド結合を媒介することが知られている(Hoheneste et al. (1999) Nat. Struct. Biol. 6:228-232、Sasaki et al. (1998) EMBO J. 17:1606-1613)。このSRCRドメインに加えて、LOXL3は、核局在シグナルをそのアミノ末端領域に含む。プロリンに富むドメインは、LOXL1に特有であると思われる(Molnar et al. (2003) Biochim. Biophys. Acta 1647:220-224)。様々なリシル酸化酵素型酵素はまた、それらのグリコシル化パターンの点でも異なる。
【0103】
組織分布もまた、リシル酸化酵素型酵素の間で異なる。ヒトLOXmRNAは、心臓、胎盤、睾丸、肺、腎臓及び子宮において高発現するが、脳及び肝臓においては、僅かに発現する。ヒトLOXL1のmRNAは、胎盤、腎臓、筋肉、心臓、肺及び膵臓において発現し、LOXと同様に、脳及び肝臓においては、(これらと比較して)はるかに少ないレベルで発現する。子宮、胎盤及び他の器官において、LOXL2mRNAは高いレベルで発現するが、LOX及びLOXL1と同様に、脳及び肝臓においては、低いレベルで発現する(Jourdan Le-Saux et al.(1999) J. Biol. Chem. 274:12939:12944)。LOXL3mRNAが、睾丸、脾臓及び前立腺において高発現し、胎盤においては、中程度に(moderately)発現し、肝臓では発現しない一方で、LOXL4mRNAの高レベル(の発現)が肝臓において観察される(Huang et al. (2001) Matrix Biol. 20:153-157、Maki and Kivirikko (2001) Biochem. J. 355:381-387、Jourdan Le-Saux et al. (2001) Genomics 74:211-218、及びAsuncion et al. (2001) Matrix Biol. 20:487-491)。
【0104】
疾病における異なったリシル酸化酵素型酵素の発現及び/又は関与も変化する。例えば、Kagan (1994) Pathol. Res. Pract. 190:910-919、Murawaki et al. (1991) Hepatology 14:1167-1173、Siegel et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:2945-2949、Jourdan Le-Saux et al. (1994) Biochem. Biophys. Res. Comm. 199:587-592、及び Kim et al. (1999) J. Cell Biochem. 72:181-188を参照されたい。リシル酸化酵素型酵素もまた、頭部及び首部の癌、膀胱癌、大腸癌、食道癌及び乳癌を含むいくつかの癌にも関係しているとされている。例えば、Wu et al. (2007) Cancer Res. 67:4123-4129、Gorough et al. (2007) J. Pathol. 212:74-82、Csiszar (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32及び、Kirschmann et al. (2002) Cancer Res. 62:4478-4483を参照されたい。
【0105】
従って、リシル酸化酵素型酵素は、構造及び機能においていくつかの重なりを示すが、その上、それぞれが異なった機能を有する。構造に関して、例えば、ヒトLOXタンパク質の触媒ドメインに対して挙げられた、ある抗体は、ヒトLOXL2に結合しない。機能に関して、標的とされるLOXの欠失は、マウスにおいて、出産の際に致死的であると思われるが、一方、LOXL1の欠損は、深刻な発達表現型を引き起こさないことが報告されている(Hornstra et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:14387-14393、Bronson et al. (2005) Neurosci. Lett. 390:118-122)。
【0106】
しかしながら、もっとも広く報告されているリシル酸化酵素型酵素の活性は、細胞外のコラーゲン及びエラスチンにおける特定のリシン残基の酸化であるが、リシル酸化酵素型酵素がまた、いくつかの細胞内プロセスにも関与することの証拠がある。例えば、いくつかのリシル酸化酵素型酵素は、遺伝子発現を制御するという報告がある(Li et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12817-12822、Giampuzzi et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:36341-36349)。加えて、LOXは、ヒストンH1におけるリシン残基を酸化することが報告されている。更なるLOXの細胞外の活性は、単核球、繊維芽細胞及び平滑筋細胞の走化性の誘導を含む(Lazarus et al. (1995) Matrix Biol. 14:727-731、Nelson et al. (1988) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 188:346-352)。LOX自体の発現は、TGF‐β、TNF‐α及びインターフェロンのような、いくつかの増殖因子及びステロイドにより誘導される(Csiszar (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32)。近年の研究により、LOXには、発生調節、腫瘍抑制、細胞運動性及び、細胞老化のような、異なった生物学的機能における他の役割があると考えられている。
【0107】
様々な材料由来のリシル酸化酵素(LOX)タンパク質の例は、次の配列の1つから発現し又は翻訳されるポリペプチドに実質的に相同であるアミノ酸配列を有する酵素を含む(EMBL/GenBank受託番号: M94054;AAA59525.1−−mRNA;S45875;AAB23549.1−mRNA;S78694;AAB21243.1−mRNA;AF039291;AAD02130.1−mRNA;BC074820;AAH74820.1−mRNA;BC074872;AAH74872.1−mRNA;M84150;AAA59541.1――ゲノムDNA。LOXの1つの実施形態は、ヒトリシル酸化酵素(hLOX)プレプロタンパク質である。
【0108】
リシル酸化酵素様酵素をエンコードする配列の例示的な開示は、次の通りである。LOXL1は、GenBank/EMBL BC015090;AAH15090.1で寄託されるmRNAによってエンコードされる。LOXL2は、GenBank/EMBL U89942で寄託されるmRNAによってエンコードされ、LOXL3は、GenBank/EMBL AF282619;AAK51671.1で寄託されるmRNAによってエンコードされ、及び、LOXL4は、GenBank/EMBL AF338441;AAK71934.1で寄託されるmRNAによってエンコードされる。
【0109】
プレプロペプチドとして知られるLOXタンパク質の一次翻訳産物は、1−21番目のアミノ酸に広がるシグナル配列を含む。このシグナル配列は、マウス及びヒトLOXの両方において、21番目のCysと22番目のAlaの間の切断によって細胞内に放出され、LOXの形態の46−48kDaのポリペプチドを生じ、これはまた、本願において、全長形態と称される。プロポリペプチドは、ゴルジ体を通過する間に、N−グリコシル化され、50kDaタンパク質を生じ、続いて、細胞外環境に分泌される。この段階において、タンパク質は、触媒活性的に、不活性である。マウスLOXにおける168番目のGlyと169番目のAspの間での更なる切断(cleavage)、及びヒトLOXにおける174番目のGlyと175番目のAspの間での更なる切断によって、成熟な、酵素活性的に活性な、30−32kDAの酵素が生じ、18kDaのプロペプチドを放出する。この最終的な切断の事象は、骨形成タンパク質1(BMP−1)としても知られる、メタロエンドプロテアーゼのプロコラーゲンC−プロティナーゼによって触媒される。興味深いことに、この酵素はまた、LOXの基質であるコラーゲンのプロセシングにおいても機能する。N−グリコシル化ユニットは、その後に取り除かれる。
【0110】
潜在的なシグナルペプチド切断部位は、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4のアミノ末端に存在することが予測されている。予測シグナル切断部位は、LOXL1の25番目のGlyと26番目のGlnの間、LOXL2の25番目のAlaと26番目のGlnの間、LOXL3の25番目のGlyと26番目のSerの間及び、LOXL4の23番目のArgと24番目のProの間に存在する。
【0111】
LOXL1タンパク質におけるBMP−1切断部位は、354番目のSerと355番目のAspの間に同定されている(Borel et al. (2001) J. Biol. Chem.276:48944-48949)。他のリシル酸化酵素型酵素における潜在的なBMP−1切断部位が、プロコラーゲン及びプロ‐LOXにおいて、Ala/Gly‐Aspの配列(これには、しばしば、酸性又は荷電残基が続く)にある、BMP−1切断のコンセンサス配列に基づいて、予測されている。LOXL3における予測BMP−1切断部位は、447番目のGlyと448番目のAspの間に位置し、この部位でのプロセシングによって、成熟LOXと類似する大きさの成熟ペプチドを生じ得る。BMP−1の潜在的な切断部位はまた、LOXL4内でも、残基569番目のAlaと570番目のAspの間にも同定された(Kim et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:52071-52074)。LOXL2もまた、LOXLファミリーの他のメンバーに類似の形でタンパク質分解的に(proteolytically)切断され、分泌され得る(Akiri et al.(2003) Cancer Res. 63:1657-1666)。
【0112】
リシル酸化酵素型酵素における共通の触媒ドメインの存在から予期されるように、活性部位が位置する、プロ酵素のC末端30kDa領域の配列が、高度に保存される(およそ95%)。より穏やかな程度の保存(約60−70%)が、プロペプチドドメインにおいて観察される。
【0113】
本開示の目的において、用語「リシル酸化酵素型酵素」は、上述の5つのリシン酸化酵素(LOX、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4)の全てを含み、LOX,LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4の機能的なフラグメント及び/又は誘導体(これらは実質的に酵素的活性(例えば、リシル残基の脱アミノ化を触媒する能力)を保持する)もまた含む。典型的には、機能的なフラグメント又は誘導体は、少なくとも、50%のリシン酸化活性を保持する。いくつかの実施形態において、機能的なフラグメント又は誘導体は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は、100%のリシン酸化活性を保持する。
【0114】
リシル酸化酵素型酵素の機能的なフラグメントは、本質的に、触媒活性を変更させない(天然のポリペプチド配列に関する)保存的なアミノ酸置換を含むことができることもまた意図される。用語「保存的なアミノ酸置換」は、特定の共通の構造及び/又は特性を基にした、アミノ酸の群分け(grouping)を意味する。共通の構造に関して、アミノ酸は、非極性側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン及びトリプトファン)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン及びシステイン)、及び、荷電極性側鎖を有するアミノ酸(リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びヒスチジン)に群分けされ得る。芳香族側鎖を含むアミノ酸の群は、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含む。複素環の側鎖は、プロリン、トリプトファン及びヒスチジンに存在する。非極性側鎖を含むアミノ酸の群の中で、短い炭化水素側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)は、より長い非炭化水素側鎖を有するアミノ酸(メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン)から区別され得る。荷電極性側鎖を有するアミノ酸の群の中で、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)は、塩基性側鎖を有するアミノ酸(リジン、アルギニン及びヒスチジン)から区別され得る。
【0115】
個々のアミノ酸の共通の特性を定義するための機能的な方法は、相同的な生物の対応するタンパク質の間のアミノ酸変化の正規化された頻度を解析することである(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1979)。そのような解析によって、一つの群内のアミノ酸が、相同的なタンパク質において、相互に優先的に置換されることが定義され、そしてそれ故、タンパク質構造の全体において類似の影響を有し得る(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1979)。この種類の解析において、互いに保存的な置換が可能なアミノ酸の下記の群が識別できる:
(1)Glu、Asp、Lys、Arg及びHisからなる、荷電基を含むアミノ酸、
(2)Lys、Arg及びHisからなる、正荷電基を含むアミノ酸、
(3)Glu及びAspからなる、負荷電基を含むアミノ酸、
(4)Phe、Tyr及びTrpからなる、芳香族基を含むアミノ酸、
(5)His及びTrpからなる、窒素環基を含むアミノ酸、
(6)Val、Leu及びIleからなる、大きな脂肪族非極性基を含むアミノ酸、
(7)Met及びCysからなる、僅かに極性な基を含むアミノ酸、
(8)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProからなる、小さい残基の基を含むアミノ酸、
(9)Val、Leu、Ile、Met及びCysからなる、脂肪族基を含むアミノ酸、
(10)Ser及びThrからなる、ヒドロキシル基を含むアミノ酸。
【0116】
従って、上で例示された、アミノ酸の保存的な置換は、当業者に知られ、(置換の)結果の分子の生物学的活性を変更することなく一般的に行なわれ得る。この技術分野の当業者はまた、一般的に、ポリペプチドの本質的でない領域における単一のアミノ酸置換は、実質的に、生物学的活性を変更しないことも認識する。例えば、Watson, et al., "Molecular Biology of the Gene,"第4版, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park, CA, p.224を参照されたい。
【0117】
リシル酸化酵素に関する更なる情報については、例えば、Rucker et al. (1998) Am. J. Clin. Nutr. 67:996S-1002S及びKagan et al. (2003) J. Cell. Biochem 88:660-672を参照されたい。また、同一出願人による米国特許出願(公開)US 2009/0053224(2009年2月26日)及びUS 2009/0104201(2009年4月23日)を参照されたい。
【0118】
[リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子ないしモジュレータ(modulator)]
リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子は、アクチベータ(アゴニスト)および抑制剤(アンタゴニスト)の両方を含んで、様々なスクリーニングアッセイの使用により選択することができる。一実施形態において、調節因子は試験化合物がリシル酸化酵素型酵素に結合するかどうかを判断することによって識別することができ、ここで、結合が生じている場合、化合物は調節因子の候補である。任意に、追試はそのような調節因子の候補で行なうことができる。あるいは、候補化合物はリシル酸化酵素型酵素で接触(コンタクト)ができ、また、リシル酸化酵素型酵素の生物活性は分析され、リシル酸化酵素型酵素の生物活性を変更する化合物は、リシル酸化酵素型酵素の調節因子である。一般に、リシル酸化酵素型酵素の生物活性を減じる化合物は、酵素の抑制剤である。
【0119】
リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子を識別する他の方法は、1つ以上のリシル酸化酵素型酵素を含有する細胞培養中の候補化合物をインキュベーションすること、および、細胞の1つ以上の生物活性または特性を分析することを含む。培養(液)中の細胞の生物活性または特性を変更する化合物は、リシル酸化酵素型酵素の活性の潜在的な調節因子である。分析することができる生物活性は、例えば、リジン酸化、過酸化物生成、アンモニア生成、リシル酸化酵素型酵素のレベル、リシル酸化酵素型酵素をエンコードするmRNAのレベルおよび/またはリシル酸化酵素型酵素に特有の1つ以上の機能を含む。前述の分析の追加の実施形態では、候補化合物との接触がない状態で、1つ以上の生物活性または細胞特性は、1つ以上のリシル酸化酵素型酵素のレベルあるいは活性と関連する。例えば、生物活性は、マイグレーションないし泳動、走化性、上皮-間葉転化(epithelial-to-mesenchymal transition)、または間葉-上皮転化(mesenchymal-to-epithelial transition)のような細胞機能になり得、また、変更は1つ以上の対照(コントロール)または参考サンプルと比較することによって検出される。例えば、負の対照サンプルは、候補化合物が加えられるリシル酸化酵素型酵素の減少したレベルを備えた培養(液ないし物)か、あるいは、テスト培養と同じ量のリシル酸化酵素型酵素を備えるが、候補化合物の追加のない培養(液ないし物)を含むことができる。いくつかの実施形態では、異なるレベルのリシル酸化酵素型酵素を含んでいる個別の培養(液ないし物)は、候補化合物と接触される。生物活性の変化が観察される場合、かつ、その変化がリシル酸化酵素型酵素の高レベルを有する培養(液ないし物)で大きい場合、化合物は、リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子であると確認される。化合物がリシル酸化酵素型酵素のアクチベータまたは抑制剤かどうかの決定は、化合物によって引き起こされた表現型から明白かもしれないし、または1つ以上のリシル酸化酵素型酵素の酵素活性に対する化合物の影響試験のような一層の分析を要求するかもしれない。
【0120】
上述されるようなリシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子を識別する、細胞培養および酵素分析のための方法と同様に、生化学的にあるいは組み換えのいずれかで、リシル酸化酵素型酵素を得る方法も、当該技術で知られている。
【0121】
リシル酸化酵素型酵素の酵素活性は、多くの異なる方法によって分析することができる。例えば、リシル酸化酵素活性は、過酸化水素、アンモニウム・イオンおよび/またはアルデヒドの生成を検出し、かつ/または定量することにより、リジン酸化および/またはコラーゲン架橋結合の分析により、あるいは細胞の侵襲能、細胞粘着性、細胞増殖または転移成長をアッセイないし分析することにより、評価することができる。例えば、Trackman et al. (1981) Anal. Biochem. 113:336-342; Kagan et al. (1982) Meth. Enzymol. 82A:637-649; Palamakumbura et al. (2002) Anal. Biochem. 300:245-251; Albini et al. (1987) Cancer Res. 47:3239-3245; Kamath et al. (2001) Cancer Res. 61:5933-5940; U.S. Patent No. 4,997,854およびU.S. patent application publication No. 2004/0248871を参照されたい。
【0122】
試験化合物は、下記に制限されないが、例えば、小さな有機化合物(例えば、約50から約2,500daの間の分子量を有する有機分子)、核酸、またはタンパク質を含む。化合物あるいは複数の化合物は、化学的な合成か、微生物学的に生成でき、かつ/または、例えば植物、動物、微生物からのサンプル、例えば、細胞抽出液に含むことができる。さらに、その化合物はこれまでリシル酸化酵素型酵素の活性を修飾ないし調節する(modulating)ことができるとは知らなかったが、当該技術で知ることができる。リシル酸化酵素型酵素の調節因子について分析するための反応混合物は、無細胞抽出液となり得るか、または細胞培養か組織培養を含むことができる。多くの化合物が、例えば、反応混合物に添加できるか、培地に添加できるか、細胞に注入できるか、または遺伝子組み換え動物に投与できる。分析で使用される細胞または組織は、例えば、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、霊長動物の細胞、ヒト細胞であり得るか、あるいは、ヒト以外の遺伝子組み換え動物(の細胞)を含むことができるか、又はヒト以外の遺伝子組み換え動物から得ることができる。
【0123】
リシル酸化酵素型酵素のような標的ないしターゲットに対する特異的親和性を有する化合物を識別するために巨大なライブラリを生成しスクリーニングすることについて、いくつかの方法は当業者に知られている。これらの方法は、無作為化されたペプチドがファージから表示され、固定されたレセプターを使用するアフィニティー・クロマトグラフィーによってスクリーニングされる、ファージディスプレイ方法(phage display method)を含む。例えば、WO 91/17271、WO 92/01047、及び米国特許5,223,409を参照されたい。別のアプローチでは、固体支持ないしサポート(例えば「チップ」)上に固定されたポリマーの組み合わせライブラリは、フォトリソグラフィを使用して合成される。例えば、米国特許5,143,854、WO 90/15070、WO 92/10092を参照されたい。固定されたポリマーは、標識レセプター(例えば、リシル酸化酵素型酵素)で接触され、そして、サポートは、標識(ラベル)の位置を決定するために、それによって、レセプターに結合しているポリマーを識別するために、走査(スキャン)される。
【0124】
関心のある(例えば、リシル酸化酵素型酵素)ポリペプチドの結合リガンドの識別のために使用することができる連続的なセルロース膜の支持(物)ないしサポート上のペプチドライブラリの合成およびスクリーニングは、例えば、Kramer (1998) Methods Mol. Biol. 87: 25-39に記載されている。そのような分析によって識別されたリガンドは、関心のあるタンパク質の候補の調節因子であり、そして、さらなる試験のために選択できる。この方法も、例えば、関心のあるタンパク質において、結合部位および認識モチーフの決定のために使用することができる。例えば、Rudiger (1997) EMBO J. 16:1501-1507およびWeiergraber (1996) FEBS Lett. 379:122-126を参照されたい。
【0125】
WO98/25146には、所望の特性(例えば、ポリペプチドまたはその細胞のレセプターにアゴナイズ(刺激)、結合、またはアンタゴナイズ(拮抗)する能力)を有する化合物のための複合体(コンプレックス)のライブラリをスクリーニングするための追加的な方法の記載がある。そのようなライブラリの複合体は、試験における化合物、化合物の合成において少なくとも1ステップを記録するタグ、およびリポーター分子によって修正しやすいテザー(tether)を含む。テザーの修正は、複合体が所望の特性を有する化合物を含むことを示すために使用される。タグは、そのような化合物の合成における少なくとも1ステップを明らかにするために解読することができる。リシル酸化酵素型酵素と相互作用する化合物を識別する他の方法は、例えば、ファージディスプレイ・システムでのインビトロスクリーニング、フィルターバインディングアッセイ、及び、例えば、BIAcore装置(ファルマシア)を用いる相互作用の「リアル・タイム」測定である。
【0126】
これらの方法はすべてリシル酸化酵素型酵素または関連するポリペプチドのアクチベータ/アゴニスト(作用剤)および抑制剤/アンタゴニスト(拮抗剤)を識別するために本開示に従って使用することができる。
【0127】
リシル酸化酵素型酵素の調節因子の合成への別のアプローチは、ペプチドの模倣のアナログを使用することである。模倣のペプチド・アナログは、アミノ酸を自然に発生するために、例えば、立体異性体(つまりDアミノ酸)を置換することによって生成することができ、例えば、Tsukida (1997) J. Med. Chem. 40:3534-3541を参照されたい。さらに、模倣しやすい(pro-mimetic)成分は、オリジナルのポリペプチドの一部の除去の際失われ得る、配座(conformational)特性を再構築するためにペプチドに組み入れることができる。例えば、Nachman (1995) Regul. Pept. 57:359-370を参照されたい。
【0128】
ペプチド模倣薬を構築する別の方法は、脂肪族鎖のポリメチレン・ユニットによるアミド結合の置換に帰着して、ペプチドに対してアキラルな(achiral)O-アミノ酸残基を組み入れることである。Banerjee (1996) Biopolymers 39:769-777。他のシステムでの小さなペプチド・ホルモンの超活性なペプチド模倣物(peptidomimetic)なアナログが記述されている。Zhang (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 224:327-331。
【0129】
リシル酸化酵素型酵素の調節因子のペプチド模倣物も、連続のアミド・アルキル化によるペプチド模倣物の組み合わせライブラリ(combinatorial libraries)の合成によって識別することができ、その後、生じる化合物の試験(例えば、それらの結合および免疫学的性質について)が後続する。ペプチド模倣物の組み合わせライブラリの生成および使用の方法が記述されている。例えば、Ostresh, (1996) Methods in Enzymology 267:220-234およびDorner (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:709-715を参照されたい。さらに、1つ以上のリシル酸化酵素型酵素の三次元および/または結晶(学的)構造は、1つ以上のリシル酸化酵素型酵素の活性のペプチド模倣物抑制剤のデザインに使用できる。Rose (1996) Biochemistry 35:12933-12944; Rutenber (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:1545-1558。
【0130】
自然(天然)の生物学的なポリペプチドの活性を模倣する低分子量の合成分子の構造に基づいたデザインおよび合成は、例えば、Dowd (1998) Nature Biotechnol. 16:190-195; Kieber-Emmons (1997) Current Opinion Biotechnol. 8:435-441; Moore (1997) Proc. West Pharmacol. Soc. 40:115-119; Mathews (1997) Proc. West Pharmacol. Soc. 40:121-125; and Mukhija (1998) European J. Biochem. 254:433-438にさらに述べられている。
【0131】
小さな有機化合物の模倣物を設計し、合成し、評価することができること、例えば、リシル酸化酵素型酵素の基質またはリガンドとして作用できることも当業者に知られている。例えば、ハパロシン(hapalosin)のD-グルコースの模倣物が、細胞毒性での多剤耐性の支援に関連するタンパク質(multidrug resistance assistance-associated protein)に拮抗する際に、ハパロシンとして、同様の効率(効果的な作用)を示したことが記載されている。Dinh (1998) J. Med. Chem. 41:981-987。
【0132】
リシル酸化酵素型酵素の構造は、例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物および抗体のような調節因子の選択をガイドするために調査することができる。リシル酸化酵素型酵素の構造特性は、リシル酸化酵素型酵素に結合するか、あるいは、リシル酸化酵素型酵素のリガンド、基質、結合パートナーまたはレセプターとして機能する、天然または合成分子を識別することを支援できる。例えば、Engleman (1997) J. Clin. Invest. 99:2284-2292を参照されたい。例えば、リシル酸化酵素型酵素の構造モチーフのフォールディング・シミュレーション(folding simulations)およびコンピューター・リデザイン(computer redesign)は、適切なコンピュータ・プログラムを使用して実行できる。Olszewski (1996) Proteins 25:286-299; Hoffman (1995) Comput. Appl. Biosci. 11:675-679。タンパク質折り畳みのコンピューター・モデリングは、詳細なペプチドおよびタンパク質構造の配座およびエネルギー分析について使用することができる。Monge (1995) J. Mol. Biol. 247:995-1012; Renouf (1995) Adv. Exp. Med. Biol. 376:37-45。適切なプログラムは、補足的なペプチド配列のコンピューター支援型サーチを使用して、リガンドおよび結合パートナーと相互作用する、リシル酸化酵素型酵素での、部位の識別に使用することができる。Fassina(1994)Immunomethods 5:114-120。タンパク質とペプチドのデザイン用の追加的なシステムは、例えば、Berry (1994) Biochem. Soc. Trans. 22:1033-1036; Wodak (1987), Ann. N.Y. Acad. Sci. 501:1-13; and Pabo (1986) Biochemistry 25:5987-5991に記載されている。上記構造分析から得られた結果は、例えば、1つ以上のリシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子として機能する、有機分子、ペプチドおよびペプチド模倣物の調製のために使用することができる。
【0133】
リシル酸化酵素型酵素の抑制剤は、競合抑制剤、不競合(uncompetitive)抑制剤、混合型抑制剤または非競合(non-competitive)抑制剤であり得る。競合抑制剤は、しばしば、基質と構造上の類似点を持ち、通常、活性部位に結合し、低い基質濃度で、より効果的である。見かけのKMは、競合抑制剤が存在する状態で増加される。不競合抑制剤は、一般に、酵素・基質複合体、または基質が活性部位に結合した後で利用可能になり、活性部位を変形(distort)しうる部位に結合する。見かけのKMおよびVmaxの両方は不競合抑制剤が存在する状態で減少し、また、基質濃度は抑制に対して、効果がほとんどないか、または全くない。混合型抑制剤は、酵素が存在しない基質と、酵素・基質複合体の両者に結合することが可能であり、よって、基質の結合と触媒作用の両者に影響する。非競合抑制剤は、抑制剤が等しい親和性で酵素と酵素・基質複合体を結合する、混合型阻害の特殊なケースであり、また、抑制は基質濃度によって影響を受けない。非競合抑制剤は、一般に、活性部位の外側の領域で酵素に結合する。酵素阻害に関する追加の詳細については、例えば、上記のVoet et al. (2008)を参照されたい。リシル酸化酵素型酵素(その天然基質(例えば、コラーゲン、エラスチン)は、通常、生体内で膨大に超過して存在する(生体内で達成し得る、あらゆる抑制剤の濃度と比較して))などの酵素については、抑制が基質濃度に依存しないので、非競合抑制剤は有利である。
【0134】
[抗体]
ある実施形態では、リシル酸化酵素型酵素の調節因子は抗体である。追加の実施形態では、抗体は、リシル酸化酵素型酵素の活性の抑制剤である。
【0135】
ここに使用されるように、用語「抗体」は、特異的に抗原エピトープを結合する、ペプチド配列(例えば、可変部シーケンス)を含む、分離または組換えポリペプチド結合剤を意味する。用語はその最も広い意味で使用され、所望の生物活性を示す限り、特に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ(nanobodies)、ジアボディ(diabodies)、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、並びに、下記に限定されないが、Fv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFab2を含む抗体のフラグメントを含む。用語「ヒト抗体」は、考えられる非ヒトCDR領域(non-human CDR regions)を除いて、ヒトの起源のシーケンスを含んでいる抗体を指し、免疫グロブリン分子の完全な構造が存在することを意味せず、単に、抗体はヒトで最小限の免疫効果を有する(つまり、その抗体自体に対する抗体の産生を引き起こさない)ことを意味する。
【0136】
「抗体フラグメント」は、完全長抗体の一部、例えば、完全長抗体の抗原結合部または可変部を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab'、F(ab')2およびFvフラグメント、ジアボディ、リニアアンチボディ(linear antibodies)(Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10):1057-1062)、一本鎖の抗体分子、抗体フラグメントから形成された多特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化は、2つの同一の抗原結合フラグメント(「Fab」フラグメントと呼び、夫々、単一の抗原結合部位を備える)と、残余の「Fc」フラグメント(容易に結晶させる能力を反映することの設定)を生成する。ペプシン処置は、2つの抗原結合部位を有し、抗原の架橋結合がさらに可能である、「F(ab')2」フラグメントを産出する。
【0137】
「Fv」とは、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含有する最小限の抗体フラグメントである。この領域は、密接に非共有結合される1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上において抗原結合部位を規定するのは、この立体構造においてである。6つのCDR総体で、抗原結合特異性が抗体に賦与される。しかしながら、全Fvフラグメントよりも低度の親和性においてではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な6つのCDRのうちの3つだけを含む、分離されたVHまたはVL領域)であっても、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0138】
「Fab」フラグメントは重鎖可変領域と軽鎖可変領域に加え、また、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fabフラグメントは、抗体の下記のパパイン消化で元来観察された。Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメントが抗体ヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加により、Fabフラグメントとは異なる。F(ab’)2フラグメントは、ジスルフィド結合によって、ヒンジ領域の近くで、結合された2つのFabフラグメントを含んでおり、抗体の下記のペプシン消化で元来観察された。Fab’−SHが、定常ドメインの(1つまたは複数の)システイン残基が遊離チオール基を保有するFab’フラグメントの本明細書における呼称である。抗体フラグメントの他の化学結合もまた知られている。
【0139】
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つに割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じ、免疫グロブリンは、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てることができ、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類することができる。
【0140】
「一本鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体フラグメントは、1本のポリペプチド鎖内に存在する抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能とする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチド・リンカーをさらに含む。sFvの総説については、Pluckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」、第113巻、RosenburgおよびMoore編、ニューヨーク、Springer−Verlag社、269〜315頁(1994年)Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113 (Rosenburg and Moore eds.) Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0141】
「ダイアボディ」(diabody)という用語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体フラグメントを指し、該フラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)内において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合させた重鎖可変ドメイン(VH)を含有する。短すぎるために同じ鎖上における2つのドメイン間における対合が可能とならないリンカーを用いることにより、該ドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻、6444〜6448頁(1993年)EP 404,097; WO 93/11161 and Hollinger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448においてより詳細に説明されている。
【0142】
「単離」抗体は、その自然環境の成分から識別され、また分離され、なおかつ/または回収されたものである。その自然環境の成分は、酵素、ホルモンおよび他のタンパク性または非タンパク性溶質を含んでもよい。いくつかの実施形態において、単離抗体は、(1)ロウリー(Lowry)法によって決定される、抗体の重量の95%を越えて、例えば、重量で99%を上回り、(2)例えば、スピンカップ・シーケネイター(a spinning cup sequenator)の使用によって、Nターミナルまたは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るために十分な程度に、あるいは、(3)クマシーブルーまたは銀染色による検出で、還元条件または非還元条件下でゲル電気泳動(例えば、SDS-PAGE)によって均質に、精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、用語「単離抗体」は、組換え細胞内にin situで存在する抗体を含む。ある実施形態では、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体またはヒト抗体である。ヒト化抗体は、受容体(レシピエント)の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力ないし性質を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。よって、非ヒト(例えば、マウス(murine))抗体のヒト化の形体は、ヒト以外の免疫グロブリンに由来する最小の配列ないしシーケンスを含んでいる、キメラ的な免疫グロブリンである。非ヒト配列は、特に、相補性決定領域(CDRs)で主として可変部に位置する。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒトの残基によって置換される。ヒト化抗体は、さらに、レシピエント抗体でも、運び込まれた(imported)CDRやフレームワーク・シーケンスでも見つからない残基を含むことができる。ある実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、また、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDRのすべてまたは本質的にすべては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、また、フレームワーク領域のすべてまたは本質的にすべてはヒト免疫グロブリン・コンセンサス配列のものである。本開示の目的において、ヒト化抗体は、Fv, Fab, Fab', F(ab')2などの免疫グロブリンフラグメント、または、抗体の他の抗原結合配列も含むことができる。
【0144】
ヒト化抗体は、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むことができる。例えば、Jones et al. (1986) Nature 321:522-525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-329;およびPresta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照されたい。
【0145】
非ヒト抗体をヒト化(humanize)するための方法は当該技術で知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源から該抗体に導入される、一以上のアミノ酸残基を有する。それらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート(import)」または「ドナー」残基として言及され、それらは、典型的には、「インポート」または「ドナー」可変ドメインから得られる。例えば、ヒト化は、ヒト抗体の対応するシーケンスについて、げっ歯類のCDRsまたはCDRシーケンスを置換することによって、Winterとその仲間の方法に従って実質的に行うことができる。例えば、上記のJones et al.,; 上記のRiechmann et al.,及びVerhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536を参照されたい。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許4,816,567号)を含み、ここで、実質的に完全でないヒトの可変ドメインは、非ヒト種からの対応配列によって置換されている。ある実施形態では、ヒト化は、いくつかのCDR残基および任意に、いくつかのフレームワーク領域の残基は、げっ歯類の抗体(例えば、マウス・モノクローナル抗体)の類似部位からの残基によって置換される、ヒト抗体である。
【0146】
ヒト抗体も、例えば、ファージディスプレイ・ライブラリを用いることによって生成できる。Hoogenboom et al. (1991) J. Mol. Biol, 227:381; Marks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222:581。ヒトモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、Cole et al. (1985) "Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy," Alan R. Liss, p. 77およびBoerner et al. (1991) J. Immunol. 147:86-95によって記載されている。
【0147】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン(遺伝子)座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的に、または完全に不活性化された遺伝子組み換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作成することができる。免疫学的な攻撃に際して、ヒト抗体の生成が観察され、それは遺伝子再構成、アセンブリおよび抗体レパートリーを含み、すべての点でヒトに見られるものに非常によく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許5,545,807; 5,545,806; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; 5,661,016, 並びに、下記の科学文献: Marks et al. (1992) Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856-859; Morrison (1994) Nature 368:812-813; Fishwald et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851; Neuberger (1996) Nature Biotechnology 14:826;及びLonberg et al. (1995) Intern. Rev. Immunol. 13:65-93に記載されている。
【0148】
抗体は、上記のような既知の選択および/または突然変異生成方法を使用して親和性成熟(抗体)となり得る。いくつかの実施形態では、親和性成熟抗体は、成熟抗体を調製するところの出発抗体(一般的に、マウス、ウサギ、トリ、ヒト化またはヒト)の5倍以上、10倍以上、20倍以上または30倍以上である親和性を有する。
【0149】
抗体は二重特異性抗体にもなり得る。二重特異性抗体はモノクローナルで、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する、ヒトまたはヒト化抗体であってよい。この場合、2つの異なる結合特異性は、2つの異なるリシル酸化酵素型酵素、または単一のリシル酸化酵素型酵素の2つの異なるエピトープに向けることができる。
【0150】
ここに開示されるような抗体はさらに免疫抱合体(immunoconjugate)であり得る。そのような免疫抱合体は、レポーターなど第二分子に接合する抗体(例えば、リシル酸化酵素型酵素に接合する)を含む。免疫抱合体は、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、菌類、植物、若しくは、動物由来の酵素活性な毒素、または、その断片)、または、放射性同位体(つまり、放射性接合体(radioconjugate))のような細胞毒性剤に結合した抗体も含むことができる。
【0151】
特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチドのエピトープに「特異的に結合する」または「特異的で」ある抗体は、他のポリペプチド若しくはポリペプチド・エピトープに本質的に結合することなく、当該特定のポリペプチドまたはエピトープに結合するものである。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、モノクローナル抗体の形態、scFv、Fab、または約4℃、25℃、37℃若しくは42℃の温度で測定した抗体の他の形態で、100nM以下、任意で10nM未満、任意で1nM未満、任意で0.5nM未満、任意で0.1nM未満、任意で0.01nM未満、若しくは、任意で0.005nM未満の解離定数(Kd)で、そのターゲットに対して、特異的に結合する。
【0152】
ある実施形態において、本開示の抗体は、リシル酸化酵素型酵素の1つ以上の処理部位(例えば、タンパク(質)分解的切断の部位)に結合し、それによって、触媒的な活性酵素へのプロ(前)酵素ないし酵素前駆体または前プロ酵素ないし前酵素前駆体(preproenzyme)の処理を効果的に阻止(block)して、それによって、リシル酸化酵素型酵素の活性を減じる。
【0153】
ある実施形態において、本開示による抗体は、より大きな結合親和力(例えば、他のリシル酸化酵素型酵素(例えば、LOX、LOXL1、LOXL3およびLOXL4)へのその結合親和力より、少なくとも10倍、少なくとも100倍、または、少なくとも1000倍も)でヒトLOXL2に結合する。
【0154】
ある実施形態において、本開示による抗体は、リシル酸化酵素型酵素の触媒活性ないし作用の非競合抑制剤である。ある実施形態において、本開示による抗体は、リシル酸化酵素型酵素の触媒ドメインの外部で結合する。ある実施形態において、本開示による抗体は、LOXL2のSRCR4ドメインに結合する。ある実施形態で、LOXL2のSRCR4ドメインに結合し、非競合抑制剤抗として機能する、抗LOXL2抗体は、同一出願人による米国特許出願公開2009/0053224および米国2009/0104201に記載のAB0023抗体である。ある実施形態では、LOXL2のSRCR4ドメインに結合し、非競合抑制剤抗として機能する、LOXL2抗体は、同一出願人による米国特許出願公開2009/0053224および米国2009/0104201に記載のAB0024抗体(AB0023抗体のヒト版)である。
【0155】
任意に、本開示による抗体は、リシル酸化酵素型酵素に結合するだけでなく、リシル酸化酵素型酵素の(例えば、インテグリン・ベータ1または他の細胞のレセプター若しくはタンパク質による)摂取若しくは内在化を減じるかまたは抑制する。
【0156】
リシル酸化酵素型酵素を認識する典型的な抗体、およびリシル酸化酵素型酵素の抗体に関係のある付加的な開示は、同一出願人による米国特許出願公開米国2009/0053224および米国2009/0104201に提供されており、それらの開示は、リシル酸化酵素型酵素に対する抗体、それらの製造およびそれらの使用について記述する目的のために、参照によって組込まれる。
【0157】
[リシル酸化酵素型酵素の発現を調節するためのポリヌクレオチド]
アンチセンス
リシル酸化酵素型酵素の調節(modulation)(例えば、抑制)は、転写または翻訳のレベルのいずれかで、リシル酸化酵素の発現をダウンレギュレート(down-regulating)することにより達成することができる。調節のそのような1つの方法は、リシル酸化酵素型酵素をエンコードするmRNA転写物との配列特異的な結合が可能なアンチセンスオリゴまたはポリヌクレオチドの使用を含む。
【0158】
目標mRNA分子にアンチセンス・オリゴヌクレオチド(またはアンチセンス・オリゴヌクレオチド・アナログないし類似物)を結合することは、細胞内RNaseHによるハイブリッドの酵素切断に導くことができる。ある場合には、アンチセンスRNA−mRNAハイブリッドの構成が正確なスプライシングを妨害することがあり得る。両方の場合において、翻訳に適している完全で機能的な目標mRNAの数は減じられるか、または除去される。他の場合では、目標mRNAにアンチセンス・オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのアナログを結合することは、リボソーム結合を防ぐことがあり得(例えば、立体障害によって)、それによって、mRNAの翻訳を妨げる。
【0159】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドは任意のタイプのヌクレオチド・サブユニットを含むことができ、例えば、それらは、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)のようなアナログないし類似物、または前述したものの混合であり得る。RNAオリゴヌクレオチドは、目標mRNA分子を備えた、より多くの安定した二重鎖(duplex)を形成するが、ハイブリダイズされていないオリゴヌクレオチドは他のタイプのオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド・アナログほど細胞内で安定していない。これは、この目的のために設計されたベクターを使用して、細胞内のRNAオリゴヌクレオチドを発現することによって打ち消すことができる。例えば、豊富で長命のタンパク質をエンコードするmRNAをターゲットとすることを試みる場合、このアプローチが使用されてもよい。
【0160】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドが、(i)標的配列に結合することにおける十分な特異性;(ii)可溶性;(iii)細胞内及び細胞外のヌクレアーゼに対する安定性;(iv)細胞膜への浸透能;および(v) 生物を処理するために使用されたときの低い毒性を含んで設計される場合、さらなる検討が考慮され得る。
【0161】
目標mRNAに対する最も予期される結合親和力を有するオリゴヌクレオチド配列ないしシーケンスを、目標mRNAおよびオリゴヌクレオチドの両方の構造の変更のエネルギーを説明する熱力学サイクルに基づき、決定するためのアルゴリズムが利用可能である。例えば、Walton et al. (1999) Biotechnol. Bioeng. 65:1-9は、ウサギβグロブリン(RBG)およびマウス腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)転写物を対象にするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを設計する、そのような方法を使用した。同じ研究群は、細胞培養中の3つのモデル目標mRNA(ヒトの乳酸脱水素酵素AおよびB並びにネズミgp130)に対する合理的に選択されたオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性がほとんどすべての場合に有効であると証明されたことも報告した。これは、リン酸ジエステルおよびホスホロチオエートの化学的性質ないし構造の両者によって作成されたオリゴヌクレオチドを使用して、2つの細胞タイプに3つの異なる目標に対するテストを含んだ。
【0162】
加えて、in vitroシステムを使用して、特定のオリゴヌクレオチドの効率を設計し予期するためのいくつかのアプローチも利用可能である。例えば、Matveeva et al. (1998) Nature Biotechnology 16:1374-1375を参照されたい。
【0163】
本開示によるアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、少なくとも10のヌクレオチド(例えば、10と15の間、および15と20の間、若しくは少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも30、あるいは少なくとも40のヌクレオチド)のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド・アナログないし類似物を含む。そのようなポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドのアナログないし類似物は、生理学的条件下で、in vivo(生体内)で、リシル酸化酵素型酵素(例えば、LOX、またはLOXL2)をエンコードするmRNAと、アニールまたはハイブリダイズできる(つまり、塩基の相補性に基づいて二本鎖構造を形成する)。
【0164】
本開示によるアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、細胞または組織へ投与された核酸構成物から発現できる。任意に、アンチセンスのシーケンスの発現は、誘導プロモータによってコントロールされ、それは、アンチセンスのシーケンスの発現が細胞または組織でオン・オフ(on and off)できるようなものである。あるいは、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、化学的な合成が可能であり、例えば、医薬組成物の部分として、細胞または組織へ直接的に投与できる。
【0165】
アンチセンスの技術は、非常に正確なアンチセンスの設計アルゴリズムの生成および種々様々のオリゴヌクレオチド送達ないしデリバリーシステムに結びついており、それによって、当業者が既知のシーケンスの発現をダウンレギュレートするのに適した、アンチセンスのアプローチを設計し実行することを可能にする。アンチセンスの技術に関係のある追加情報については、Lichtenstein et al., "Antisense Technology: A Practical Approach," Oxford University Press, 1998を参照されたい。
【0166】
低分子RNAおよびRNAi
リシル酸化酵素型酵素の活性を抑制するための別の方法は、RNA干渉(RNAi)であり、それは、目標のmRNAに相同で、その分解に結びつく、二重らせん構造の小型干渉RNA(siRNA)分子を利用するアプローチである。Carthew (2001) Curr. Opin. Cell. Biol. 13:244-248。
【0167】
RNA干渉は、典型的に、2ステップの方法(プロセス)である。第一ステップ(それは開始ステップとして名付けられる)では、入力dsRNA(input dsRNA)は、おそらく、ダイサー(Dicer)(それはATP依存性の手法で二重らせん構造のRNAを分解する、二本鎖に特異的なリボヌクレアーゼのRNase IIIファミリーの一員)の作用によって、21-23のヌクレオチド(nt)小型干渉RNA(siRNAs)へ消化される。入力RNAは、例えば、直接的に、またはトランスジーンまたはウイルスによって、送達することができる。引続く分裂ないし開裂の事象は、RNAを、2つのヌクレオチドの3'突出を各々伴う、19-21bp二本鎖(siRNA)に消化する。Hutvagner et al. (2002) Curr. Opin. Genet. Dev. 12:225-232; Bernstein (2001) Nature 409:363-366。
【0168】
第二のエフェクター・ステップ(effector step)で、siRNAの二本鎖は、RNA誘発型沈黙複合体(RNA-induced silencing complex)(RISC)を形成するためにヌクレアーゼ複合体に結合する。siRNA二本鎖のATP依存性の解放(unwinding)は、RISCの活性化に必要である。その後、活性RISC(単一のsiRNAおよびRNaseを含む)は、塩基の対になっている相互作用によって相同転写物をターゲットとし、siRNAの3'末端から開始して、典型的には、mRNAをおよそ12のヌクレオチドの断片(フラグメント)に開裂(ないし分割)する。上記のHutvagner et al.,; Hammond et al. (2001) Nat. Rev. Gen. 2:110-119; Sharp (2001) Genes. Dev. 15:485-490。
【0169】
RNAiおよび関連する方法もTuschl (2001) Chem. Biochem. 2:239-245; Cullen (2002) Nat. Immunol. 3:597-599;およびBrantl (2002) Biochem. Biophys. Acta. 1575:15-25に記載されている。
【0170】
本開示の用途に適しているRNAi分子の合成のための典型的な戦略は、リシル酸化酵素型酵素の活性の抑制剤として、AAジヌクレオチド配列ないしシーケンスのための開始コドンの下流の適切なmRNA配列を走査することである。各AAに加えた、下流の(つまり、3'の隣接する)19のヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位として記録される。mRNAの非翻訳領域(UTR) で結合するタンパク質および/または翻訳開始複合体が、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げるかもしれないので、コード領域における標的部位が好ましい。上記Tuschl(2001)。しかしながら、GAPDH遺伝子の5'UTRに対するsiRNAが、細胞のGAPDH mRNAで約90%の減少を媒介し、完全にタンパク質レベルを無効にした例で実証されているように、非翻訳領域に向けられたsiRNAsは有効になり得ることも評価されるであろう。 (www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)。上述のように、一旦、1セットの潜在的な標的部位が得られれば、潜在的な目標の配列は、配列アラインメント・ソフトウェア(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でNCBIから入手可能なBLASTソフトウェアのような)を使用して、適切なゲノムのデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較される。なお、他のコード配列に有意の相同性を表す潜在的な標的部位は拒絶される。
【0171】
適切な標的配列は、siRNA合成のためのテンプレートとして選ばれる。G/C含有量が55%を超えるものと比較して、遺伝子抑制(ないしサイレンシング)の介在において、より有効であることが示されたように、選択された配列ないしシーケンスは、低いG/C含有量を含むことができる。いくつかの標的部位は、評価について標的遺伝子の長さに沿って選択できる。選択されたsiRNAsのより良い評価については、接近して負の対照(ネガティブコントロール)が使用される。負の対照siRNAは、テストsiRNAと同じヌクレオチド組成を備えた配列を含むことができるが、ゲノムに対する有意の相同性を欠いている。したがって、例えば、siRNAの混ぜ合わせの(scrambled)ヌクレオチド配列は使用、提供されてよく、任意の他の遺伝子に対する有意な相同性も表示しない。
【0172】
本開示のsiRNA分子は、宿主細胞へ既に導入された、siRNA転写の安定した発現を促進できる発現ベクターから転写することができる。これらのベクターは、小型のヘアピンRNA(shRNAs)を発現するために遺伝子工学的に合成ないし改変され(engineered)、それは遺伝子特異的抑制(gene-specific silencing)を実行できるsiRNA分子に生体内(in vivo)で処理される。例えば、Brummelkamp et al. (2002) Science 296:550-553; Paddison et al (2002) Genes Dev. 16:948-958; Paul et al. (2002) Nature Biotech. 20:505-508; Yu et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052を参照されたい。
【0173】
小型のヘアピンRNA(shRNAs)は、二重らせん構造のヘアピン・ループ構造を形成する、単鎖のポリヌクレオチドである。二重らせん構造の領域は、リシル酸化酵素型酵素(例えば、LOXまたはLOXL2のmRNA)をエンコードするポリヌクレオチドのような標的配列にハイブリダイズさせることができる、第一配列、および第一配列に補足的な第二配列から形成される。第一および第二配列は二重らせん領域を形成し、一方、第一配列と第二配列との間に位置する塩基対でないリンカーヌクレオチドが、ヘアピン・ループ構造を形成する。shRNAの二重らせん構造の領域(軸、stem)は、制限酵素認識部位を含むことができる。
【0174】
shRNA分子は、例えば、2-bp突出のような、任意のヌクレオチドの突出(overhangs、例えば、3'UU突出)を有し得る。様々な変化ないしバリエーションがあってよく、軸の長さは、典型的には、およそ15から49、およそ15から35、およそ19から35、およそ21から31bpまたはおよそ21から29bpの範囲であり、またループのサイズは、およそ4から30bp、例えば、約4から23bpの範囲である。
【0175】
細胞内のshRNAsの発現については、プロモーター(例えば、RNAポリメラーゼIII H1-RNAプロモーターまたはU6 RNAプロモーター)、shRNAをエンコードする配列の挿入のためのクローニング部位および転写終結シグナル(例えば、4-5のアデニン・チミジン塩基ペアの伸張(stretch))を含む、プラスミドベクターは使用することができる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般に、明確に定義された転写開始および終結部位を有し、また、それらの転写物はポリ(A)尾部(テール)を欠く。これらのプロモーターのための終止シグナルは、ポリチミジン経路(tract)によって定義され、また、転写物は第2のエンコードされたウリジンの後で、典型的に開裂される。この位置での開裂は、発現されたshRNAの3'UU突出を生成し、それは合成siRNAsの3'突出に類似している。哺乳類細胞でshRNAを発現するための追加の方法は、上記で引用した参照文献に述べられている。
【0176】
適切なshRNA発現ベクターの一例はpSUPER(商標)(Oligoengine, Inc.、シアトル、ワシントン)であり、それは、明確に定義された転写開始部位および5つの連続したアデニン・チミジン・ペアから構成される終止シグナルを具備するポリメラーゼ-III H1-RNA遺伝子プロモーターを含む。上記Brummelkamp等。転写産物は、合成のsiRNAs(それらはヌクレオチド突出も含む)の末端に類似する転写物を産出して、(終止配列によってエンコードされた5つの)第2のウリジンに続く部位で開裂される。それらがmRNA目標(例えば、リシル酸化酵素型酵素をエンコードするmRNA)の一部に補足的な第一配列を含む転写物を生成するように、shRNAへ転写される配列は、短いスペーサーによって第一配列の逆相補を含む第二配列から分けられて、そのようなベクターにクローニングされる。生じる転写物は、それ自体が折り返されてステムループ構造を形成し、それは、RNA干渉(RNAi)を媒介する。
【0177】
別の適切なsiRNA発現ベクターは、個別のポリメラーゼIIIプロモーターの制御下で、センスおよびアンチセンスのsiRNAをエンコードする。Miyagishi et al. (2002) Nature Biotech. 20:497-500。このベクターによって生成されたsiRNAは、さらに5つのチミジン(T5)終止シグナルも含む。
【0178】
siRNAs、shRNAsおよび/またはそれらをエンコードするベクターは、様々な方法(例えば、リポフェクション)によって細胞へ導入することができる。ベクターを媒介とした方法も開発されている。例えば、siRNA分子は、レトロウイルスを使用して、細胞へ送達することができる。レトロウイルスの送達が効率的で一定になり得、安定した「ノック・ダウン」細胞について直ちに選択するので、レトロウイルスを使用するsiRNAの送達は、ある状況での利点を提供できる。Devroe et al. (2002) BMC Biotechnol. 2:15。
【0179】
最近の科学的な出版物は、目標mRNA発現を抑制する際にそのような短い二本鎖RNA分子の性能を有効にし、そのような分子の治療的可能性を明白に実証した。例えば、RNAiは、C型肝炎ウイルス(マカフリーら(2002)ネイチャー418:38-39)に感染した細胞、HIV-1感染細胞(ジャックら(2002)ネイチャー418:435-438)、子宮頸癌細胞(チアンら(2002)オンコジーン21:6041-6048)および白血病細胞(ウィルダら(2002)オンコジーン21:5716-5724)の抑制のために利用されている。
【0180】
[リシル酸化酵素型酵素の発現を調節するための方法]
リシル酸化酵素型酵素の活性を調節するための別の方法は、それをエンコードしている遺伝子を調節することであり、遺伝子発現が抑制される場合、より低い活性レベルに導き、また、遺伝子発現が活性化される場合、より高い活性レベルに導く。細胞における遺伝子発現の調節は、多くの方法によって達成することができ得る。
【0181】
例えば、鎖置換(strand displacement)によって、または三重らせん構成によって、ゲノムDNA(例えば、リシル酸化型遺伝子の調節領域)を結合するオリゴヌクレオチドは、転写を阻むことができ、それによって、リシル酸化酵素型酵素の発現を防ぐ。この点に関して、いわゆる「スイッチバック(switch back)」化学的なリンク(chemical linking)(ここで、オリゴヌクレオチドはその目標の1つの鎖上の1つの鎖上のポリプリン(polypurine)伸張および別の鎖上のホモプリン(homopurine)配列を認識する)の使用が記述されている。三重らせん構成も人工の塩基を含んでいるオリゴヌクレオチドを使用して得ることができ、それによって、イオン強度とpHに関して結合条件を拡張する。
【0182】
リシル酸化酵素型酵素をエンコードする遺伝子の転写の調節も、例えば、細胞に対して、機能領域およびDNA結合領域またはそのような融合タンパク質をエンコードする核酸を含む融合タンパク質を導入することによって達成し得る。機能領域は、例えば、転写活性領域または転写抑制領域になり得る。典型的な転写活性領域はVP16、VP64およびNF-κBのp65サブユニットを含み、典型的な転写抑制領域はKRAB、KOXおよびv-erbAを含む。
【0183】
ある実施形態では、そのような融合タンパク質のDNA結合領域部分は、リシル酸化酵素型酵素をエンコードする遺伝子内で、若しくは、その遺伝子の近くで、またはそのような遺伝子の調節領域内で、結合する、配列特異的DNA結合領域(sequence-specific DNA-binding domain)である。DNA結合領域は、遺伝子の配列または遺伝子の近くの配列または調節領域のいずれかに当然ながら結合でき、または、結合して遺伝子工学的に合成できる。例えば、DNA結合領域は、リシル酸化酵素型酵素をエンコードする遺伝子の発現を規制ないし調節する、自然に発生するタンパク質から得ることができる。あるいは、DNA結合領域は、リシル酸化酵素型酵素をエンコードする遺伝子内の、若しくはその遺伝子の近くの、またはそのような遺伝子の調節領域の、選択の配列に結合するために、遺伝子工学的に合成できる。
【0184】
この点に関して、選択の任意のDNA塩基配列に結合するように亜鉛フィンガー・タンパク質を遺伝子工学的に合成できるので、亜鉛フィンガー結合領域は有用である。亜鉛フィンガー結合領域は1つ以上の亜鉛フィンガー構造を含む。Miller et al. (1985) EMBO J 4:1609-1614; Rhodes (1993) Scientific American, February: 56-65; 米国特許第6,453,242。典型的には、単一の亜鉛フィンガーは約30のアミノ酸の長さであり、4つの亜鉛を配位するアミノ酸残基を含む。構造研究は、標準の(C2H2)亜鉛フィンガー・モチーフがアルファ・ヘリックス(ヒスチジン残基を配位する2つの亜鉛を一般に含む)に対してパックされた2つのベータシート(2つの亜鉛を配位するシステイン残基を一般に含み、βターンで保持)を含むことを実証した。
【0185】
亜鉛フィンガーは、標準のC2H2亜鉛フィンガー(つまり亜鉛イオンが2つのシステインおよび2つのヒスチジン残基によって配位されるもの)と、例えば、C3H亜鉛フィンガー(亜鉛イオンが3つのシステイン残基および1つのヒスチジン残基によって配位されるもの)およびC4亜鉛フィンガー(亜鉛イオンが4つのシステイン残基によって配位されるもの)のような非標準の亜鉛フィンガーとの両者を含む。非標準の亜鉛フィンガーは、さらに、システインまたはヒスチジン以外のアミノ酸がこれらの亜鉛を配位する残基のうちの1つの代わりに用いられるものを含むことができる。例えば、WO 02/057293、US2003/0108880(2003年6月12日)(2002年7月25日)を参照されたい。
【0186】
亜鉛フィンガー結合領域は、自然に発生する亜鉛フィンガー・タンパク質と比較して、新規な結合特異性を有するように遺伝子工学的な合成が可能であり、それによって、亜鉛フィンガー結合領域の構造を選択の配列に結合するために遺伝子工学的に合成させる。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340; Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660; Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637; Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416を参照されたい。技術的な方法は、以下に限定されないが、合理的な設計および様々なタイプの経験的な選択方法を含む。
【0187】
合理的な設計は、例えば、トリプレット(またはクアドロプレット(quadruplet))ヌクレオチド配列および個々の亜鉛フィンガー・アミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、ここで、各トリプレットまたはクアドロプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドロプレットシーケンスを結合する亜鉛フィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連する。例えば、米国特許第6, 140,081; 6,453,242; 6,534,261; 6,610,512; 6,746,838; 6,866,997; 7,030,215; 7,067,617; 米国特許出願公開2002/0165356; 2004/0197892; 2007/0154989; 2007/0213269; および国際公開番号WO 98/53059およびWO 2003/016496を参照されたい。
【0188】
ファージディスプレイ、インターアクショントラップ、ハイブリッドセレクションおよびツーハイブリッドシステムを含む、典型的な選択方法が米国特許第5,789,538; 5,925,523; 6,007,988; 6,013,453; 6,140,466; 6,200,759; 6,242,568; 6,410,248; 6,733,970; 6,790,941; 7,029,847および7,297,491と、同じく、米国特許出願公開2007/0009948および2007/0009962; WO 98/37186; WO 01/60970並びにGB 2,338,237に開示されている。
【0189】
亜鉛フィンガー結合領域のための結合特異性の増強は、例えば、米国特許6,794,136(2004年9月21日)に記載されている。フィンガー間のリンカー配列(inter-finger linker sequences)に関して、亜鉛フィンガー・エンジニアリングの追加的な態様は、米国特許第6,479,626および米国特許出願公開2003/0119023に示される。Moore et al. (2001a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1432-1436; Moore et al. (2001b) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1437-1441およびWO 01/53480も参照されたい。
【0190】
遺伝子工学的に改変された亜鉛フィンガーDNA結合領域を含む融合タンパク質の使用についてのさらなる詳細は、例えば、米国特許第6,534,261;6,607,882;6,824,978;6,933,113;6,979,539;7,013,219;7,070,934;7,163,824及び7,220,719に見られる。
【0191】
リシル酸化酵素型酵素の発現を調節する追加の方法は、遺伝子の発現を制御ないしコントロールする遺伝子の、または調節領域の、いずれかの標的遺伝子突然変異を含む。ヌクレアーゼ領域および遺伝子工学的に改変されたDNA結合領域を含む融合タンパク質を使用する標的遺伝子突然変異のための典型的な方法は、例えば、米国特許出願公開2005/0064474;2007/0134796;および2007/0218528に提供される。
【0192】
[製剤、キットおよび投与ルート(経路)]
リシル酸化酵素型酵素(例えば、リシル酸化酵素型酵素の抑制剤あるいはアクチベータ)の活性の調節因子であると確認される化合物を含む治療合成物ないし組成物も提供される。そのような組成物は、典型的には、調節因子および薬学的に許容可能な担体を含む。補足的な活性化合物もその組成物に組み入れることができる。例えば、LOXL2の抑制剤は、線維性肺疾患の処置のためのステロイド、抗生物質、または抗腫瘍剤(anti-neoplastic)と組合せて有用である。従って、ここに開示される治療組成物は、リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子と、ステロイド、抗生物質および/また抗腫瘍剤の両方を含むことができる。
【0193】
ここに使用されるように、用語「治療上有効な量」または「有効量」は、細胞、組織または被験者(例えば、ヒト若しくは霊長動物、げっ歯動物、牛、馬、ブタ、羊などのヒト以外の動物のような哺乳動物)に単独で、または他の治療薬と組合せて投与されたときに、疾病の状態若しくは疾病の進行を防ぐかまたは改善、あるいは、疾患の進行を回復する(逆進させる、reverse progression)ために有効である、治療薬の量を示す。治療上の有効量(effective dose)は、さらに、症状の十分または部分的な改善(例えば、関連の病状の処置、治癒、予防若しくは改善、または、そのような症状の処置、治癒、予防若しくは改善の割合の増加に帰着する十分な化合物の量を示す。例えば、リシル酸化酵素型酵素の活性の抑制剤の治療上の有効量は、疾病または障害の種類、疾病または障害の広範さ、および疾病または障害に苦しむ生命体の大きさに応じて変わる。
【0194】
ここに示される治療組成物は、とりわけ、線維症の障害の軽減および線維性肺疾患の進行の改善のために有効である。従って、リシル酸化酵素型酵素(例えば、LOXL2)の活性の調節因子(例えば、抑制剤)の治療上の有効量は、肺線維症の障害の改善に帰着する量になり得る。例えば、LOXL2抑制剤が抗体で、その抗体が生体内投与される場合、正常な投薬量は、哺乳動物の体重で、一日につき、約10ng/kgから100mg/kgまたはそれ以上まで、変化する場合があり、例えば、約1μg/kg/日から50mg/kg/日まで、任意で、約100μg/kg/日から20mg/kg/日まで、500μg/kg/日から10mg/kg/日まで、または、1mg/kg/日から10mg/kg/日若しくは約15mg/kg/日まで、体重、投与ルート、疾患の重篤度などに依存して変化する。さらに、投薬量は毎日投与されるのではなく、哺乳動物体重で、1回の服用量(ドース)につき、約10ng/kgから100mg/kgまたはそれ以上まで、例えば、約1μg/kg/服用量から50mg/kg/服用量まで、任意で、約100μg/kg/服用量から20mg/kg/服用量まで、500μg/kg/服用量から10mg/kg/服用量まで、または、1mg/kg/服用量から10mg/kg/服用量若しくは約15mg/kg/服用量の量で、週に一度、二度または三度投与できる。一実施例において、服用量は約15mg/kg/が週に2回である。処置の期間は、例えば、2週、3週、4週、5週、6週、またはそれ以上に及ぶことができる。
【0195】
リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子が、ステロイド、抗生物質または抗腫瘍剤と組合せて使用される場合、一つは、調節因子と、組合せで、連続的に、または同時に投与されても、肺線維症の障害の軽減に帰着する他の剤との組合せの量である、組合せの治療上の有効量を示すこともできる。濃度の一つ以上の組合せは、治療上有効になり得る。
【0196】
様々な医薬組成物、並びに、それらの調製および使用についての技術は、本願開示に照らして、当業者に知られている。それらの投与に適切な医薬組成物および技術の詳細なリストについて、一つは詳細な教示をここに示し、それは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985; Brunton et al., "Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics," McGraw-Hill, 2005; University of the Sciences in Philadelphia (eds.), "Remington: The Science and Practice of Pharmacy," Lippincott Williams & Wilkins, 2005; and University of the Sciences in Philadelphia (eds.), "Remington: The Principles of Pharmacy Practice," Lippincott Williams & Wilkins, 2008のようなテキストでさらに補足されてよい。
【0197】
開示された治療組成物は、さらに、薬学的に許容可能な物質、化合物またはビヒクル(vehicle)(液体若しくは固体の充填剤ないしフィラーなど)、希釈剤、賦形剤(excipient)、溶剤、あるいは封入材(つまり、担体)を含む。これらの担体(carriers)は、被験者ないし患者の調節因子を、身体の1つの器官または領域から、身体の別の器官または領域に輸送ないし移動することに関与する。各担体は、製剤の他の成分と互換性をもち患者にとって有害でないという意味で「許容可能」とされるべきである。薬学的に許容可能な担体として役立つことができる物質のいくつかの例は次のものを含む:ラクトーゼ、グルコースおよびショ糖のような砂糖;コーンスターチおよびじゃが芋澱粉のようなでんぷん;カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのような、セルロースおよびその誘導体;粉末のトラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオバターおよび坐薬ワックスのような添加剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブオイル、トウモロコシ油および大豆油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのような多価アルコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;ピロゲンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに、医薬製剤で使用される他の無毒な互換性をもつ物質。着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味料、芳香剤、防腐剤および酸化防止剤と同様に、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような、湿潤剤、乳化剤および潤滑剤も、さらに化合物に存在し得る。
【0198】
本開示の別の態様は、リシル酸化酵素型酵素(例えば、LOXL2抑制剤)の活性の調節因子の投与を実行するためのキットに関連する。本開示の別の態様は、リシル酸化酵素型酵素の活性の調節因子と、ステロイド、抗生物質または抗腫瘍剤との併用投与を実行するためのキットに関連する。1つの実施態様では、キットは、1つ以上の別個の医薬製剤で適切の調製された、少なくとも1つのステロイド、抗生物質または抗腫瘍剤を任意に含有する、製薬担体に調製された、リシル酸化酵素型酵素の活性の抑制剤(例えば、LOXL2の抑制剤)を含む。
【0199】
製剤および送達方法は、線維症の障害の部位(複数)および程度によって適応できる。典型的な製剤は、以下に制限されないが、非経口的投与、例えば、肺内、静脈内、動脈内、眼球内または皮下投与に適したものであり、ミセル、リポソームまたは薬物放出カプセル(持続放出のために設計された生体適合性コーティング内に取り込んだアクチベータ)にカプセル化した製剤、摂取可能な製剤、点眼薬、クリーム、軟膏およびゲルのような局所使用のための製剤;並びに、吸入剤、エアゾールおよびスプレーのような他の製剤を含んでいる。開示の化合物の投与量は、処置ないし治療の必要の範囲および重大度、投与された化合物の活性、被験者ないし患者の総体的な健康、および当業者に知られている他の考察によって変化するであろう。
【0200】
追加の実施形態では、ここに記述された組成物は、例えば、肺内に、局所的に送達される。したがって、LOXL2の抑制剤を含む製剤は、吸入によって投与でき、また、霧状化製剤は、経口または経鼻のいずれかで、投与できる。局所的送達は、組成物の送達を、非全身的にさせて、それによって、全身性送達と比較して、化合物の体内蓄積を減じる。そのような局所送達は、例えば、限定されないが、ステントおよびカテーテルを含む、様々な医学的な埋め込み装置の使用を通じて、達成することができるか、または、吸入、注入若しくは外科によって達成することができる。ステントまたはカテーテルのような医療機器に所望の(薬)剤をコーティング、インプラントないし注入、埋め込み、またあるいは、付着するための方法は当該技術で確立され、ここに熟考される。
【0201】
[抗LOXL2抗体]
LOXL2に対するモノクローナル抗体は、同一出願人による米国特許出願公開US 2009/0053224 (Feb. 26, 2009)に記載されている。この抗体はAB0023と呼ばれる。AB0023のCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を有する重鎖と、AB0023のCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を有する軽鎖とを有する抗体が対象である。CDRの配列およびその重鎖の可変部の介在フレームワーク領域は、以下のとおり(CDR1、CDR2およびCDR3の配列が下線で強調される)である:
MEWSRVFIFLLSVTAGVHSQVQLQQSGAELVRPGTSVKVSCKASGYAFTYYLIEWVKQRPGQGLEWIGVINPGSGGTNYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSDDSAVYFCARNWMNFDYWGQGTTLTVSS (SEQ ID NO:1)
SEQ ID NO:1に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上または99%以上の相同性を有する、追加の重鎖可変部アミノ酸配列も提供される。
【0202】
AB0023抗体のCDRの配列および軽鎖の可変部の介在フレームワーク領域は、(CDR1、CDR2およびCDR3の配列が下線で強調される)である:
MRCLAEFLGLLVLWIPGAIGDIVMTQAAPSVSVTPGESVSISCRSSKSLLHSNGNTYLYWFLQRPGQSPQFLIYRMSNLASGVPDRFSGSGSGTAFTLRISRVEAEDVGVYYCMQHLEYPYTFGGGTKLEIK (SEQ ID NO:2)
SEQ ID NO:2に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上または99%以上の相同性を有する、追加の軽鎖可変部アミノ酸配列も提供される。
【0203】
上述の抗LOXL2モノクローナル抗体のヒト化バージョン(型)は、同一出願人による米国特許出願公開US 2009/0053224 (Feb. 26, 2009)に記載されている。典型的なヒト化抗体はAB0024と呼ばれる。AB0024のCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を有する重鎖と、AB0024のCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を有する軽鎖とを有するヒト化抗体が対象である。CDRの配列およびその重鎖の可変部の介在フレームワーク領域は、以下のとおり(CDR1、CDR2およびCDR3の配列が下線で強調される)である:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYAFTYYLIEWVRQAPGQGLEWIGVINPGSGGTNYNEKFKGRATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNWMNFDYWGQGTTVTVSS
(SEQ ID NO:3)
SEQ ID NO:3に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上または99%以上の相同性を有する、追加の重鎖可変部アミノ酸配列も提供される。
【0204】
AB0024抗体のCDRの配列および軽鎖の可変部の介在フレームワーク領域は、(CDR1、CDR2およびCDR3の配列が下線で強調される)である:
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCRSSKSLLHSNGNTYLYWFLQKPGQSPQFLIYRMSNLASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMQHLEYPYTFGGGTKVEIK
(SEQ ID NO:4)
SEQ ID NO:4に対して75%以上、80%以上、90%以上、95%以上または99%以上の相同性を有する、追加の軽鎖可変部アミノ酸配列も提供される。
【0205】
可変部の追加のヒト化された変形、フレームワーク領域アミノ酸配列および相補性決定領域のアミノ酸配列を含む追加の抗LOXL2抗体配列は、同一出願人による米国特許出願公開2009/0053224(2009年2月26日)に開示され、その開示全体は、様々な抗LOXL2抗体のアミノ酸配列を提供する目的で、参照によってここに組込まれる。
【0206】
[線維性肺疾患のための診断のマーカーとしてのLOXL2]
ここに示される肺線維症の組織中のLOXL2レベルの増加およびここにまた示される、LOXL2抑制剤での処置後の肺構造の正常化に伴うLOXL2レベルの付随する減少は、肺組織中のLOXL2レベルが線維性肺疾患のための診断のマーカーとして使用することができることを示す。従って、肺組織の中のLOXL2レベルの増加は、線維性肺疾患の発症または進行を示す。
【0207】
LOXL2レベルを測定する方法は当該技術で知られており、酵素活性のための分析、LOXL2タンパク質のための分析およびLOXL2 mRNAのための分析を含む。例えば、米国特許出願公開US2006/0127402(2006年6月15日)、2009/0053224(2009年2月26日)、2009/0104201(2009年4月23日)およびRodriguez et al. (2010) J. Biol. Chem. 285:20964-20974を参照されたい、そして、LOXL2の検出、定量および抑制の分析を記載する目的のために、これら全体の開示は参照によってここに組込まれる。
【0208】
[線維性肺疾患のための予後のマーカーとしてのLOXL2]
線維性肺疾患は、病的状態および/または死に帰着する、急性期によって断続した相対的安定性の期間を含むことができる。従って、良好な予後のマーカーが必要である。
【0209】
本発明者は、線維性肺疾患の特性であるLOXL2の過剰発現がLOXL2抑制剤での処置ないし治療によって改善されることを決定付けた。その結果、肺組織の中のLOXL2レベルは、線維性肺疾患の処置ないし治療法の有効性を評価するために、徴候の改善および改善された予後を示すLOXL2レベルの減少と共に、予後のマーカーとして使用することができる。処置ないし治療は、ステロイド、抗生物質若しくは抗腫瘍処置および/またはLOXL2抑制剤を使用する処置ないし治療を含み得る。
【実施例】
【0210】
[実施例1:モデルシステム(Model System)]
マウスのブレオマイシン誘発性肺線維症が認められる、IPF及び他の線維性肺疾患におけるスタンダードモデルシステム。例えば、Harrison and Lazo (1987) J. Pharmacol. Exp. Ther. 243:1185-1194; Walters and Kleeberger (2008) Current Protocols Pharmacol. 40:5.46.1-5.46.17を参照されたい。このシステムは、LOXL2抑制剤の影響を検討するために肺線維症の経過および結果において、抗LOXL2抗体の形態で使用された。
【0211】
要するに、肺線維症は、ブレオマイシンの中咽頭への投与によって、オスのC57B/L6マウスに引き起こされた。ブレオマイシン投与については、動物は麻酔されて、上切歯の下に輪ゴムを通し、ほぼ60度の角度によって、背中で吊るされた。舌は詰め物のしてある1セットのピンセットの1つの腕で保持され、それによって、気道を開いた。ブレオマイシン溶液はピペットによって口腔の後部へ導入され、液体が口において、目視できなくなるまで、舌と口は開けたままにされた。
【0212】
ブレオマイシン処置の前(予防研究: 実施例2)、あるいはその処置の後(処置研究: 実施例3)のいずれかにおいて、マウスは抗LOXL2抗体(AB0023)も投与された。AB0023抗体は、「抗LOXL2抗体」と称されて、本開示に示され、そして、同一出願人によるUS2009/0053224(2009年2月26日)に記載されている。その開示は、抗LOXL2抗体、それらの調製およびそれらの特性について記述する目的のために参照によってここに組込まれる。
【0213】
[実施例2:予防研究]
この研究では、生後7-8週目の年齢21匹のオスのC57BL/6マウスが3つの群に分けられた。群1は5匹の動物を含み、群2および3は各々8匹の動物を含んだ。群1は、動物が0日目で生理用食塩水によって処置され、その後、週2回の生理用食塩水処置された、対照群とした。群2の動物は、0日目に1ユニット/kgのブレオマイシンを受けた。4日目と0日目に、ブレオマイシン投与に先立って、群2の動物も抗体希釈剤(PBS)の注射を受け、ブレオマイシンの投与の後に、週に2度の抗体希釈剤の注射を受けた。群3の動物は、0日目に1ユニット/kgのブレオマイシンを受けた。4日目と0日目に、ブレオマイシン投与に先立って、群3の動物は、15mg/kgの抗LOXL2抗体(AB0023)を注入され、また、それらは、ブレオマイシン投与の後に、15mg/kgの抗体の注入を週に2度受けた。研究設計は表1に示される。
【0214】
硫酸ブレオマイシン(MP Biomedicals、カタログ#19030、ロット2373K)は、0.9%の生理用食塩水に溶解され、キログラム体重当たり1ユニットの終濃度を与えるために麻酔下で中咽頭に処置された。上記Walters and Kleebergerを参照されたい。15mg/kgの終濃度を与えるために、AB0023は、PBSの中の3mg/mlの原液の腹腔内投与によって、投与された。ビヒクル(PBS)は腹腔内投与によって、投与された。
【0215】
表1:予防研究設計

【0216】
14日目に研究が終了し、すべての動物は分析のために犠牲にされた。血液は心臓の穴あけによって集められ、血清の調製に使用された。肺は解剖されて、重量が計測された。各群における動物の半分からの肺は、ハンクスの平衡塩類溶液による散布によって気管支肺胞の洗浄液の収集に使用された。洗浄液は遠心分離され、そして、上澄みは除去されて、凍結された。ペレット中の細胞は、赤血球を溶解するために2mlの1x Pharmalyse緩衝剤(BDバイオサイエンス、サンホセ(CA))で再懸濁された。溶解はPBS+2%のウシ血清アルブミンの追加によって終了し、細胞は遠心分離された。ペレット中の白血球はトリパンブルー排除(Trypan Blue exclusion)によって識別され、血球計数器を使用して数えられた。
【0217】
洗浄の後、これらの肺は10%の中性緩衝ホルマリンに固定された。残りの動物からの肺は液体窒素でスナップ凍結され、組織病理とタンパク質定量のために−80℃で保存された。
【0218】
[免疫組織化学(IHC)および免疫蛍光検査法(IF)]
特に明記しない場合、溶液と試薬はすべてバイオケアメディカル(Biocare Medical) (Concord, CA)から得られ、また、すべての手法は室温で行なわれた。切片(5μm)はホルマリン固定または新鮮な凍結肺組織からカットされ、そして、ヘマトキシリンおよびエオシン(hematoxylin and eosin)(H&E)、またはシリウスレッド(Sirius Red)のいずれかで染色された。
【0219】
ホルマリン固定組織切片上のIHCあるいはIFについて、抗原回復は90℃で45分間のデクローキングチャンバー(decloaking chamber)で実施された。コラーゲンI、α-平滑筋アクチン、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、endothelin-1(ET-1)、CD45およびストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α/CXCL12)に対する一次抗体は、AbCam(ケンブリッジ、MA)から得られ、そして、1-10μg/mlの濃度で使用された。
【0220】
新鮮な凍結組織は、4%のパラホルムアルデヒドで固定され、そして、IHCは、一次抗LOXL2ポリクローナル抗体(Arresto Biosciences, Inc., Palo Alto, CA)を使用して実行された。
【0221】
一次抗体との接触に先立って、切片は、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻むPeroxidazed-1(Biocare Medical, Concord, CA)およびバックグラウンド・スナイパー(Background Sniper) (Biocare Medical, Concord, CA)で処置された。
【0222】
IHCのための手順は以下のとおりであった。一次抗体はスライドに加えられ、30分間にわたってインキュベートされた。洗浄後、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)-結合の二次抗体(MACH 2, Biocare Medical, Concord, CA)が加えられ、30分間のインキュベーションがなされた。二次抗体を洗い流した後に、スライドは1分間のジアミノベンジジン(diaminobenzidine(DAB))色素でインキュベートされ、次に、ヘマトキシリンで対比染色された。
【0223】
ホルマリンで固定した組織の切片上のIFについて、一次抗体(ネズミ抗CD45あるいはヤギ抗コラーゲンI)の溶液がスライドに添加され、1時間インキュベートされた。洗浄後、Alexa Fluor 488(緑)ヤギ抗ウサギおよびAlexa Fluor 546(赤)ヤギ抗ネズミ二次抗体(両方ともInvitrogen, Carlsbad, CAから入手)の混合物が添加され、そして、1時間のインキュベーションが実行された。スライドはDAPIで対比染色され、マウントされ、そして、蛍光顕微鏡で観察された。Alexa Fluor488(緑、コラーゲンを示す)の可視化については、495nmの励起波長と519nmの発光(放射)波長が使用された。Alexa Fluor546(赤、CD45を示す)の可視化については、556nmの励起波長と573nmの発光(放射)波長が使用された。
【0224】
3つの処置群の各々については、異なる肺からの3乃至4領域が各抗原に関してテストされた。1領域当たりのシグナルエリアは、MetaMorphイメージングソフトウェア(Molecular Devices, Downingtown, PA)を使用して定量された。
【0225】
pSMAD2のためのELISAアッセイ
肺組織は1mM PMSFを含有する細胞融解バッファー(Cell Signaling Technology, Inc., Danvers, MA)で均質化され、そして、ホモジェネートはリン酸化SMAD2(p-SMAD2)のためにELISA分析で使用された。
【0226】
結果
ブレオマイシンで処置された動物は、研究を通して、制限のある体重の増量、またはわずかな程度の体重の減量(例えば、群2)を示した。しかしながら、AB0023でも処置されたブレオマイシン処置動物(例えば、群3)は、安定した体重の増量を示した(図1)。予想通りに、生理用食塩水で処理された(対照動物群1)も、研究を通して、安定した体重の増量を示した。
【0227】
生理用食塩水で処理した対照群(群1)と比較して、ブレオマイシン処置動物(群2)においてBAL流体中の総合の白血球数はより高かった。図2を参照。追加の実験で、ブレオマイシンのより高い濃度とBAL流体中の白血球のより多い総数との間で相関性が観察された。Ab0023での処置は、生理用食塩水コントロール(図2)で観察されたものと同様のレベルまでブレオマイシン処置動物のBALの白血球数の縮小となった。同様の結果は第二の研究で得られた(p=0.032)。
【0228】
架橋結合されたコラーゲンの増加したレベルとα‐SMAポジティブ細胞(α-SMA-positive cells)(“活性化線維芽細胞”または“線維細胞”)の増殖によって証拠づけられるように、1ユニット/kgのブレオマイシンでのマウスの処置(群2)は、強力な線維症の反応を惹起した。肺胞の肥大および肺細胞(主としてタイプII肺細胞)の増殖により証拠づけられるように、肺構造も歪められた。
【0229】
研究動物からの肺の分析は、ブレオマイシン処置の結果として、LOXL2発現が肺上皮細胞(タイプIおよびタイプII肺細胞)および浸潤線維芽細胞に引き起こされることが明らかになった(図3(右上部のパネル);図4)。活性化線維芽細胞または筋線維芽細胞を識別するために使用される、α-平滑筋アクチン(α-SMA)に陽性の細胞も、ブレオマイシン処置マウスの肺に見られた(図3(左上部のパネル);図5)。Ab0023でも処置され、ブレオマイシンに曝された動物は、LOXL2およびα-SMA陽性細胞の両方において、顕著に低いレベルを示した(図3、下部パネル、図4、図5)。
【0230】
肺損傷はAshcroft scoring guidelinesを使用して形態学的に評価された。Ashcroft et al. (1988) J. Clin. Pathol. 41:467-470.を参照されたい。研究群の識別に対して盲目にされて、3人の異なる個人によって分析が行なわれた。生理用食塩水対照群の動物からの肺には、1未満(<1)のアッシュクロフト・スコアが示された。ブレオマイシンビヒクル処置された動物からの平均アッシュクロフト・スコアは3で、このスコアは、AB0023での処置によって著しく減少された(p=0.0029、図6)。よって、肺構造も抗LOXL2抗体での処置によって回復された。
【0231】
線維症の独立した量的評価は、架橋結合された原線維性のコラーゲンを検知するためにシリウスレッド染色(Sirius Red staining)を使用してなされた。ブレオマイシン処置された動物からの肺には大量の架橋結合されたコラーゲンを含んでいた(図7(左上))、一方、ブレオマイシン処置された動物への抗LOXL2抗体の投与は、ブレオマイシンへの接触に起因した、架橋結合されたコラーゲン(肺線維症を示す)の量を大幅に減じた(図7(右上))。偏光下で観察したシグナルエリアの定量は、減少が統計的に有意であることを示した(p=0.0001、図7、下部)。
【0232】
TGFβ-1およびSDF-1αは、ヒトの線維症の肺病およびブレオマイシン誘発性線維症モデルの両者で、疾病ドライバー(disease drivers)であると確認された。ストロマ細胞由来因子-1(SDF-1)は好中球とマクロファージによって主に産生される、ケモカインであり、そのレセプター(CXCR4)は骨髄幹細胞のわずかな集団で見られる。SDF-1は代替スプライシングによって生産されて、2つの形態で存在し、それらの形態はSDF-1αおよびSDF-1βである。IPFの病理ないし病状で、SDF-1αは、肺へのこれらのCXCR4+幹細胞の動員を媒介すると考えられ、そこでは、線維細胞に分化してコラーゲンを産生し、線維症の損害に寄与する。例えば、Xu, et al. (2007) Am. J. Resp. Cell. Mol. Biol. 37:291-299.を参照されたい。IPFでのTGF-β1の役割については、Noble (2008) Eur. Respir. Rev. 17:123-129.を参照されたい。
【0233】
IPFの病理におけるこれらのタンパク質の役割のために、線維症の肺でのそれらの発現に対する抗LOXL2 AB0023の効果は免疫組織化学を使用して評価された。
【0234】
ブレオマイシン処置(図8(左上))の動物の肺の生理用食塩水対照群と比較して、SDF-1αレベルは、タイプII肺細胞、潜在的な線維細胞および恐らく他の細胞型による発現で、実質的に増加された。AB0023での処置はブレオマイシン接触に起因するSDF-1α発現を顕著に減少した(図8(右上))。シグナルエリアの定量は、減少が統計的に有意であることを示した(p<0.0001、図8、下部)。
【0235】
ブレオマイシン処置は、マクロファージ、タイプII肺細胞、筋線維芽細胞および恐らく線維細胞を含んで、肺の様々な細胞型によってTGFβ−1の発現が生じた(図9(左上))。TGFβ-1レベルは、AB0023で処置された動物の肺で著しく減少された(図9(右上)) (p<0.0001、図9、底部)。
【0236】
個別の研究で、リン酸化SMAD2(p-SMAD2)のレベル、TGFβ-1のシグナル経路の活性化マーカーが決定された。肺線維症を引き起こすためにブレオマイシンで処置されたマウスで、組織に基づくELISA分析は、対照ないしコントロール抗体で処置されたマウスと比較して、抗LOXL2抗体で処置されたマウスのSMAD2のリン酸化の減少を明らかにした(図10)。
【0237】
エンドセリン-1(ET-1)の発現はTGFβ-1によって引き起こされ、また、エンドセリン-1は肺線維症の病因のTGFβ-1と協働する。免疫組織化学による分析は、ET-1発現のパターンがブレオマイシン処置の動物でのTGFβ-1のそれに非常に類似しており(図11(左上))、また、ET-1の著しい減少もAB0023処置で観察された(図11(右上))ことを示した。シグナルエリアの定量は、減少が統計的に有意であることを示した(p=0.005、図11、下部)。
【0238】
線維症の肺のコラーゲン産生細胞の源のうちの1つは、CD45陽性の造血幹細胞に由来するように見える。これらの前駆細胞(「線維細胞」)は、コラーゲンとCD45のための反応性の共同局在性によって組織切片において検出できる。群2および3の動物の肺からの切片がタイプIコラーゲンとCD45のための免疫蛍光検査法によって検査されたとき、ブレオマイシン処置された動物(群2)からの肺は、多くの線維細胞を所有することが確認された(図12、左パネル)。より少ない線維細胞は、ブレオマイシンおよび抗LOXL2抗体の両方を受けた群3動物からの肺で見つかった(図12、右パネル)。
【0239】
結論
抗LOXL2抗体での処置は、ブレオマイシン誘発性肺線維症のマウスで、一般的な健康(増加した体重によって証拠づけられた)を改善し、BAL流体中の白血球数を標準化し、線維症を軽減し、肺胞の肥大を軽減し、肺構造を改善し、線維芽細胞の数を減少し、CD45+/Collagen I+線維芽細胞前駆細胞の数を減少し、アッシュクロフト・スコアを改善した。さらに、下記のタンパク質(それらのすべては線維性組織のマーカーである)のレベルは、抗LOXL2処置によって減じた:LOXL2、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、endothelin-1、p-SMAD2およびストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α/CXCL12)。これらの結果は、重症度を軽減し、肺線維症の症状を回復に向かわせて、LOXL2抑制剤、特に、抗LOXL2抗体の有効性を実証する。
【0240】
[実施例3:処理(処置)研究]
この研究において、マウスはブレオマイシンを投与されて肺線維症にされ、次いで、抗LOXL2抗体(AB0023)または対照ないしコントロール抗体(AC-1)のいずれかで処置された。
【0241】
研究設計
C57BL/6マウス(生後7-8週目)は、3つの群に分けられた。群1(対照群)は5匹の動物から構成され、一方、群2および3は、夫々、8匹の動物で構成された。0日目においては、投与量が2.5ユニット/kgであったこと以外、実施例2に記載したように群2および3の動物が、ブレオマイシンに曝された。群1の対照動物は、同じ方法を使用して、等量の生理用食塩水が投与された。それ以上の処置は群1の動物に処置されず14日目に犠牲にされた。7日目においては、群2の動物が15mg/kgのAC-1抗体(コントロール)を受け、また群3の動物が15mg/kgの抗LOXL2抗体AB0023を受けた。抗体の投与は腹腔内(IP)注入によってなされた。群2および3の動物に対する抗体の投与は、同じ抗体、濃度および投与ルートを使用して、週に2度行われ、その後も継続された。22日目に、群2および3の動物は分析のために犠牲にされた。研究設計を表2に要約する。
【0242】
表2:処置研究の設計

【0243】
分析
ブレオマインに曝す前にすべての動物の体重が量られ、研究が終了するまで週に2度、体重が計測された。
【0244】
収穫期では、血液は末端の心臓の出血(terminal cardiac bleed)によって収集され、血清が調製された。動物のうちのいくつかの肺は解剖され重量が量られた。残りの動物からの肺は、液体窒素においてスナップ冷凍(snap frozen)され、組織病理学のために-80℃で保存されるか、または10%の中性緩衝ホルマリンを使用して固定された。
【0245】
免疫組織化学(IHC)分析に使用された溶液は、バイオコアメディカル(Biocare Medical)(Concord, CA)から得られた。すべての処置(procedures)は室温で行なわれた。切片は生成され、シリウスレッド(Sirius red)、抗LOXL2ポリクローナル抗体(Arresto Biosciences, Palo Alto, CA)および抗αSMA抗体(1:250; Abcam, Cambridge, MA)で染色された。抗原回復はホルマリン固定組織の5μm切片上でなされ、内因性ペルオキシダーゼはPeroxidazed-1(Biocare Medical)でブロックされ、またバックグラウンドはバックグラウンド・スナイパー(Background Sniper)(Biocare Medical)でブロックされた。切片は一次抗体で30分間染色され、二次抗体(MACH 2、HRP結合抗ウサギ、Biocare Medical、Concord, CA)で30分間インキュベートされ、DABで1分間インキュベートされ、そして、ヘマトキシリンで対比染色された。無作為に選ばれた5つの肺からの4領域(fields)が各処置のために染色された。肺の切片でシグナルによって占められた領域は、切片のDAB染色領域を測定するMetaMorph Imaging Software (Molecular Devices, Downingtown, PA)を用いて定量された。
【0246】
結果
体重:22日目においては、AB0023処置動物(ポスト・ブレオマイシン接触、群3)は、7日目の抗体処置の開始以来、平均1.34グラムを得て、一方、AC-1処置動物(群2)は同じ期間内でわずか平均0.64グラムしか得なかった(図13)。予想通り、生理用食塩水で処置された対照動物(群1)も、研究を通して、安定した増量を示した。
【0247】
減少した体重がIPFおよび他の肺の線維症の障害の症状であるので、これらの結果は、LOXL2抑制剤での処置がIPFのような肺の線維症の障害の症状を緩和することを示す。
【0248】
肺重量:群2および3から選ばれた、ブレオマイシン処置の7匹の動物が、7日目に、抗体投与の24-48時間以内に犠牲にされた。これらの動物は、「ハーベストRx」サンプルを示す。これらの動物からの肺では、平均重量が239.5mgであった。これと比べて、22日目で犠牲にされた対照動物(生理用食塩水処置の群1)からの肺では、平均重量が186.4mgであった。処置期間の終わり(つまり22日目)に、AC-1コントロール抗体の注入を受けた、ブレオマイシン処置動物(群2)からの平均肺重量は、239.5mgのハーベストRx値から平均322.7mgまで増加し、一方で、AB0023抗LOXL2抗体の注入を受けた、ブレオマイシン処置動物(群3)からの肺の平均重量は、ハーベストRx値をわずかに上回り、248.2 mgまで増加した。これらのデータは図14に示される。したがって、LOXL2抑制剤は、ブレオマイシン処置によって引き起こされた肺重量の増加を防いだ。
【0249】
肺重量の増加がIPFおよび他の肺線維症の障害の症状であるので、これらの結果は、LOXL2抑制剤での処置がIPFのような肺線維症の障害の症状を軽減することを示す。
【0250】
肺構造:免疫組織化学による分析は、ブレオマイシン処置動物の肺に強健な線維症の反応が惹起されたことを明らかにした(図15)。肺損傷は、肺胞の肥大、線維症の病巣および蜂巣肺の存在を含んだ。抗LOXL2抗体での処置は、ブレオマイシン処置動物に対して、正常に近い肺構造に戻し、この損傷を、軽減して回復に向わせた(例えば、図15、下部パネル)。
【0251】
アッシュクロフト・スコア:肺損傷もアッシュクロフト・スコアリングガイドライン(Ashcroft scoring guidelines)(上記Ashcroft et al.,)を使用して評価された。図16を参照されたい。評価は、研究群の識別を知らされていなかった個人によってなされた。生理用食塩水対照群(群1)の動物の肺ではアッシュクロフト・スコア<1を示した。処置の開始時に(ハーベストRx)、ブレオマイシン処置動物からの肺では、平均4.23のアッシュクロフト・スコアを示した。22日目においては、AC-1の注入を受けた、ブレオマイシン処置動物(群2)からの肺が、巣状(班状)蜂巣肺の多発性の実例を備えた重篤な疾病の証拠を示し(図15、中央パネル)、アッシュクロフト・スコア5.33を示した。AB0023の注入を受けた、ブレオマイシン処置動物(群3)からの肺では平均3.13のアッシュクロフト・スコアを示した(図16)。したがって、AC-1処置と比較して、AB0023処置では、線維症の進行を著しく阻害(p<0.027、図16)しただけでなく、処置開始近辺の動物から分離された肺の損傷の特徴も回復に向わせた。22日目のAB0023処置動物(図15、下パネル)の肺の組織学的な外観は、タイプII肺細胞数のわずかな増加に加えて、生理用食塩水処置動物のそれ(組織学的な外観)と同様であった。アッシュクロフト・スコアはこの知見を反映している。
【0252】
免疫組織化学:対照群および抗体処置動物からの肺は、アルファ平滑筋アクチン(α-SMA)免疫反応性(活性化線維芽細胞の特徴);およびLOXL2免疫反応性に関してテストされた。22日目に収穫された肺で行なわれた、これらの分析は、AC-1処置動物(群2)からの肺と比較して、α-SMAレベル(図17)で、LOXL2レベル(図18)で、AB0023処置動物(群3)からの肺で、統計的に顕著な緩和を示した。さらに、ブレオマイシン処置動物からのハーベストRxサンプルは、広範囲な線維芽細胞活性化(正常肺と比較して、α-SMA陽性細胞の増加によって証拠づけられた)(それはAB0023処置動物(図17)からの22日目サンプルで回復に向かった)を示した。
【0253】
IHC分析でも、LOXL2発現が処置の初めに収穫された肺(ハーベストRxサンプル)とAC-1処置の肺で、線維芽細胞の病巣の領域と一致することを明らかにした。さらに、ブレオマイシン処置動物からのハーベストRxサンプルは、広範囲なコラーゲン沈着(生理用食塩水処置対照群と比較して、LOXL2シグナルの増加によって証拠づけられた)(それはAB0023処置動物(図18)からの22日目サンプルで回復に向かった)を示した。
【0254】
これらのデータは、肺線維症を促進し、かつ保持するに際し、LOXL2が重要な役割を果たし、また、LOXL2抑制剤(例えば、抗LOXL2抗体など)が、とりわけ、線維芽細胞活性化およびコラーゲン沈着の抑制により、肺損傷(障害)を緩和だけでなく、回復に向かわせることを実証する。
【0255】
上皮形態:高倍率でのH&E染色切片の分析は、ブレオマイシン処置動物へのAB0023の投与が、肺胞壁の線維症を軽減し、ブレオマイシン誘発性線維症を伴った肺細胞の拡大を回復に向かわせたことを示した。
【0256】
コラーゲンレベル:対照群および抗体処置の動物からの肺はシリウスレッドで染色され、そして、染色された切片は、偏光の下で分析された。これらの条件下では、染色度は、線維状の架橋結合されたコラーゲン(fibrillar cross-linked collagen)のレベルを反映する。これらの分析結果は、AC-1の注入を受けた、ブレオマイシン処置動物と比較して、抗体処置の開始直後にブレオマイシン処置動物の線維状の架橋結合されたコラーゲンのレベルの増加(ハーベストRxサンプル)と、AB0023の注入を受けた、ブレオマイシン処置動物からの肺の切片で、架橋結合されたコラーゲンのレベルの統計的に有意な回復(つまり線維症の回復)を示した(図19)。
【0257】
Masson's Trichrome(別のコラーゲン特異的な試薬)での染色は、AC-1処置の線維症の肺と比較して、AB0023処置の線維症の肺でコラーゲン沈着の緩和を確認し、これは、AB0023処置に続く線維症の損傷(損害)の緩和のための一層の支援を提供する。
【0258】
結論
確立した肺線維症のブレオマイシン誘発性モデルにおけるLOXL2抑制剤(つまり抗LOXL2抗体AB0023)での処置は、線維症および活性化された線維芽細胞数の著しい減少に、並びに、肺構造、肺重量および体重の正常化に、帰着した。さらに、AB0023処置に伴う、活性化された線維芽細胞の緩和およびLOXL2自体のレベルの緩和は、繊維症の徴候の改善、肺上皮の回復および保護を促進した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者ないし患者の線維性肺疾患を予防するための方法であって、該方法は、該被験者に対して、リシル酸化酵素関連2タンパク質(lysyl oxidase-related 2 protein(LOXL2))の活性の抑制剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記線維性肺疾患は、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体はSEQ ID NO:1の重鎖配列とSEQ ID NO:2の軽鎖配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体はSEQ ID NO:3の重鎖配列とSEQ ID NO:4の軽鎖配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
被験者ないし患者の線維性肺疾患を処置ないし治療するための方法であって、該方法は、該被験者に対して、リシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤を投与することを含む、方法。
【請求項8】
前記線維性肺疾患は、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体はSEQ ID NO:1の重鎖配列とSEQ ID NO:2の軽鎖配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体はSEQ ID NO:3の重鎖配列とSEQ ID NO:4の軽鎖配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
被験者ないし患者の線維性肺疾患の症状を回復するための方法であって、該方法は、該被験者に対して、リシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤を投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記線維性肺疾患は、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体はSEQ ID NO:1の重鎖配列とSEQ ID NO:2の軽鎖配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体はSEQ ID NO:3の重鎖配列とSEQ ID NO:4の軽鎖配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記症状は、体重の減少、肺重量の増加、線維症、肺構造、アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加およびCD45/コラーゲン細胞数の増加から構成される群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記症状は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2から構成される群から選択される、一以上の分子の増加したレベルである、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記症状は気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
線維性肺疾患の予防若しくは処置ないし治療のための、または、被験者ないし患者の線維性肺疾患の症状を回復するための医薬化合物であって、該化合物は、リシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤および薬学的に許容可能な添加剤ないし賦形剤を含む、医薬化合物。
【請求項23】
前記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
前記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
前記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
前記症状は、体重の減少、肺重量の増加、線維症、肺構造、アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加およびCD45/コラーゲン細胞数の増加から構成される群から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項29】
前記症状は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2から構成される群から選択される一つ以上の分子の増加したレベルである、請求項22に記載の化合物。
【請求項30】
前記症状は気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加である、請求項22に記載の化合物。
【請求項31】
被験者ないし患者の線維性肺疾患を診断するための方法であって、該方法は、下記ステップ:
(a)被験者ないし患者からの肺組織のサンプルを得るステップ、および
(b)該サンプルのLOXL2のレベルを決定するステップ、
を含み、
対照サンプルと比較して、該サンプルのLOXL2の増加したレベルが、線維性肺疾患の存在を示す、方法。
【請求項32】
前記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルのLOXL2のレベルは、抗体と該サンプル中のLOXL2との間の複合体の形成をさせるように、該サンプルにLOXL2に対する抗体を接触させることによって決定され、形成される複合体の量を測定する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
線維性肺疾患を処置するための治療(セラピー)に対する被験者ないし患者の応答をモニターするための方法であって、該方法は、下記ステップ:
(a)被験者ないし患者からの肺組織のサンプルを得るステップ、および
(b)該サンプルのLOXL2のレベルを決定するステップ、
を含み、
対照サンプルと比較して、該サンプルのLOXL2の減少したレベルが、線維性肺疾患の改善を示す、方法。
【請求項38】
前記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記サンプルのLOXL2のレベルは、抗体と該サンプル中のLOXL2との間の複合体の形成をさせるように、該サンプルにLOXL2に対する抗体を接触させることによって決定され、形成される複合体の量を測定する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記処置はLOXL2の抑制剤を被験者ないし患者に投与することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記抑制剤は抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抑制剤はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抑制剤はヒト化抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記抑制剤はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
線維性肺疾患の予防に使用するためのリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤。
【請求項49】
前記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項48に記載の抑制剤。
【請求項50】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項48に記載の抑制剤。
【請求項51】
前記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項50に記載の抑制剤。
【請求項52】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項50に記載の抑制剤。
【請求項53】
前記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項52に記載の抑制剤。
【請求項54】
線維性肺疾患の処置に使用するためのリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤。
【請求項55】
前記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項54に記載の抑制剤。
【請求項56】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項54に記載の抑制剤。
【請求項57】
前記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項56に記載の抑制剤。
【請求項58】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項56に記載の抑制剤。
【請求項59】
前記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項58に記載の抑制剤。
【請求項60】
被験者ないし患者の線維性肺疾患の症状の改善に使用するためのリシル酸化酵素関連2タンパク質(LOXL2)の活性の抑制剤。
【請求項61】
前記線維性肺疾患が、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および特発性肺線維症(IPF)から構成される群から選択される、請求項60に記載の抑制剤。
【請求項62】
前記抑制剤はLOXL2に対する抗体である、請求項60に記載の抑制剤。
【請求項63】
前記抗体はSEQ ID NO:1に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:2に記載の軽鎖配列を含む、請求項62に記載の抑制剤。
【請求項64】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項62に記載の抑制剤。
【請求項65】
前記抗体はSEQ ID NO:3に記載の重鎖配列およびSEQ ID NO:4に記載の軽鎖配列を含む、請求項64に記載の抑制剤。
【請求項66】
前記症状は、体重の減少、肺重量の増加、線維症、肺構造、アッシュクロフト・スコアの増加、肺のコラーゲンレベルの増加、およびCD45/コラーゲン細胞数の増加から構成される群から選択される、請求項60に記載の抑制剤。
【請求項67】
前記症状は、LOXL2、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、トランスフォーミング成長因子β-1(TGFβ-1)、ストロマ由来因子-1α(SDF-1α)、エンドセリン-1(ET-1)およびリン酸化SMAD2から構成される群から選択される一つ以上の分子の増加したレベルである、請求項60に記載の抑制剤。
【請求項68】
前記症状は気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球数の増加である、請求項60に記載の抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−502435(P2013−502435A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525746(P2012−525746)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046244
【国際公開番号】WO2011/022706
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(512043588)ギリアド バイオロジクス,インク. (7)
【氏名又は名称原語表記】GILEAD BIOLOGICS,INC.
【Fターム(参考)】