説明

線維芽細胞増殖因子受容体またはその変異体により媒介されるシグナリングの調整に対して感受性を示す細胞の同定方法

本発明は、FGF−R基質2(FRS−2)の(特にチロシン)リン酸化を示す細胞が、かかるリン酸化を欠如する細胞とは対照的に、線維芽細胞増殖因子−受容体シグナリングのモジュレーター、特に阻害剤での処置が、例えば患者からの生物学的試料からの、かかるリン酸化を示す細胞において成功するであろうという予測を可能にするという所見に基づく。それ故に、FRS−2のリン酸化を処置の成功の可能性に関するバイオマーカーとして提供できる。本発明はこのバイオマーカーの適用時に有用な種々の方法、使用、キットおよび試薬に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFGFRもしくはその変異体のインビボ活性化もしくは阻止を測定する方法、および/または線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)もしくはその変異体が関与するシグナリングの調整に対して感受性(例えば阻止または活性化)を示す腫瘍細胞(例えば腫瘍検体)のような細胞を同定する方法、該目的のための生体反応認因子の使用、それらを含むキット、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す細胞の同定における使用のためのそれらを検出するための試薬、およびかかるキットの製造のためのこれらの使用、ならびにその他の記載された使用、方法および発明の態様に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子(FGF)は多様な組織または器官において発達的に調節および発現される20を超える構造関連ポリペプチドのファミリーを構成する。FGFは増殖、細胞遊走および分化を刺激し、そして骨格および肢の発達、創傷治癒、組織修復、造血、血管新生および腫瘍形成において主要な役割を果たす(Ornitz, Novartis Found Svmp 232:63-76; discussion 76-80, 272-82(2001)にて概説される)。
【0003】
FGFの生物学的作用はタンパク質キナーゼの受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーに属する特異的細胞表面受容体により媒介される。これらのタンパク質は細胞外結合ドメイン、単一の膜貫通ドメインおよびFGFの結合時にリン酸化を受ける細胞内チロシンキナーゼドメインからなる。今までに4つのFGF−Rが同定されている:FGF−R1(Flg、fms様遺伝子、flt−2、bFGF−R、N−bFGF−RまたはCek1とも称される)、FGF−R2(Bek細菌発現キナーゼ−、KGFR、Ksam、KsamlおよびCek3とも称される)、FGF−R3(Cek2とも称される)およびFGF−R4。全ての成熟FGF−Rは、アミノ末端シグナルペプチド、免疫グロブリン(Ig)ドメインの間で酸性領域(「酸性ボックス(acidic box)」ドメイン)を有する3つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン(IgドメインI、IgドメインII、IgドメインIII)、膜貫通ドメインおよび細胞内キナーゼドメイン(Ullrich and Schlessinger, Cell 61:203(1990); Johnson and Williams, Adv. Cancer Res. 60:1-41(1992))からなる共通の構造を共有する。異なるFGF−Rアイソフォームは異なるFGFリガンドに関して異なる結合親和性を有し、故にFGF8(アンドロゲン誘発性成長因子)およびFGF9(グリア活性化因子)はFGF−R3に関して選択性が増大されているように見える(Chellaiah et al. J Biol. Chem, 269:11620(1994))。
【0004】
最近の発見は、最も一般的な形態であるヒト低身長症である軟骨無形性症を含む、増え続けている骨格異常はFGF−Rにおける変異の結果であることを示す。FGF−R1、FGF−R2およびFGF−R3の様々なドメインにおける特異的点変異は頭蓋骨癒合症症候群および低身長症症候群として分類される常染色体優性ヒト骨格異形成に関連する(Coumoul and Deng, Birth Defects Research 69:286-304(2003))。FGF−R3変異関連骨格異形成には、軟骨低形成症、発育遅延および黒色表皮腫を伴う重篤な軟骨無形性症(SADDAN)、ならびに致死性骨異形成症(TD)が含まれる(Webster et al., Trends Genetics 13(5):178-182(1997); Tavormina et al., Am. J. Hum. Genet., 64:722-731(1999))。FGF−R3変異体はまた2つの頭蓋骨癒合症表現型:Muenke冠状頭蓋骨癒合症(Bellus et al., Nature Genetics, 14:174-176(1996); Muenke et al., Am. J. Hum. Genet., 60:555-564(1997))および黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群(Meyers et al., Nature Genetics, 11:462-464(1995))においても記載されている。クルーゾン症候群はFGF−R2における特異的点変異に関連し、そして家族性および孤発性双方の形態のパイフェル症候群はFGF−R1およびFGF−R2における変異に関連する(Galvin et al., PNAS USA, 93:7894-7899(1996); Schell et al., Hum Mol Gen, 4:323-328(1995))。FGF−Rにおける変異は、変異受容体の構成的活性化および受容体タンパク質チロシンキナーゼ活性の増大を招き、細胞および組織を分化不能にする。
【0005】
具体的には、軟骨無形性症変異は結果的に変異受容体の安定性の強化を招き、受容体活性化を下方調節と切り離し、軟骨細胞変異抑制および骨成長阻止に至る(Vajo et al., Endocrine Reviews, 21(1):23-39(2000)にて概説される)。
種々の型の癌において変異活性化FGF−R3に関する累積証拠がある。
【0006】
2つの一般的な上皮癌、膀胱および子宮頸部において、ならびに多発性骨髄腫において構成的に活性化されたFGF−R3は癌腫におけるFGF−R3に関する発癌的役割の最初の証拠である。加えて、大部分の良性皮膚腫瘍におけるFGF−R3活性化変異の存在が非常に最近の研究により報告される(Logie et al., Hum Mol Genet (2005))。FGF−R3は現在膀胱癌において最も頻繁に変異した癌遺伝子であると考えられ、それは膀胱癌の全症例のほとんど50%で、および表在性膀胱腫瘍を有する症例の約70%で変異する(Cappellen, et al., Nature Genetics, 23; 19-20(1999); van Rhijn, et al., Cancer Research, 61:1265-1268(2001); Billerey, et al, Am. J. Pathol., 158:1955-1959(2001)、第WO2004/085676号)。また膀胱癌(表在性および浸潤性)におけるFGF−R3の過剰発現が報告されている(Gomez-Roman et al. Clinical Cancer Research (2005))。t(4,14)染色体転座の結果としてのFGF−R3の異常な過剰発現が多発性骨髄腫症例の10−25%で報告される(Chesi et al., Nature Genetics, 16:260-264(1997); Richelda et al., Blood, 90:4061-4070(1997); Sibley et al., BJH, 118:514-520(2002); Santra et al., Blood, 101:2374-2476(2003))。FGF−R3活性化変異はt(4,14)染色体転座を伴う多発性骨髄腫の5−10%で認められ、そして腫瘍進行と関連する(Chesi et al., Nature Genetics, 16:260-264(1997); Chesi et al., Blood, 97(3):729-736(2001); Intini, et al, BJH, 114:362-364(2001))。この状況で、FGF−R3シグナリングの結果はしばしば細胞型特異的であるように見える。軟骨細胞では、FGF−R3活性化過剰は成長阻止を招くが(Omitz (2001)にて概説される)、一方骨髄腫細胞では、それは腫瘍の進行に寄与する(Chesi et al.(2001))。
【0007】
FGF−R3活性の阻止は、例えば限定するものではないが、関節リウマチ(RA)、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、セリアック病および重症筋無力症を含むT細胞媒介炎症または自己免疫疾患の処置において、T細胞媒介炎症または自己免疫疾患を処置するための手段を示すことが見出されている。WO2004/110487を参照されたい。FGF−R3変異が引き起こす障害はまたWO03/023004およびWO02/102972にも記載される。
【0008】
FGF−R3およびまたその他のFGF−R類により促進される疾患の中でも(特に例えばFGF23血清レベル異常に関連して)、さらに常染色体優性低リン血症性くる病(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症性くる病(XLH)、腫瘍誘発性骨軟化症(TIO)、骨の線維性骨異形成症(FH)が言及されるべきである(X. Yu et al., Cytokine & Growth Factor Reviews 16:221-232(2005)およびX. Yu et al., Therapeutic Apheresis and Dialysis 9(4):308-312(2005))。
【0009】
FGF−R1、FGF−R2およびFGF−R4の遺伝子増幅および/または過剰発現が乳癌に関連している(Penault-Llorca et al., Int J Cancer (1995); Theillet et al., Genes Chrom. Cancer (1993); Adnane et al., Oncogene (1991); Jaakola et al., Int J Cancer (1993); Yamada et al., Neuro Res (2002))。FGF−R1およびFGF−R4の過剰発現はまた膵臓腺癌および星状細胞腫にも関連する(Kobrin et al., Cancer Research (1993); Yamanaka et al., Cancer Research (1993); Shah et al., Oncogene (2002); Yamaguchi et al., PNAS (1994); Yamada et al., Neuro Res (2002))。前立腺癌もまたFGF−R1過剰発現に関係している(Giri et al., Clin Cancer Res (1999))。
【0010】
FGF/FGF−Rはまた血管新生にも関与する。それ故に、FGF−R系のターゲティングはまた原発性腫瘍および転移を処置するための抗血管新生治療として予見される(例えばPresta et al., Cytokine & Growth Factors Reviews 16:159-178(2005)参照)。
【0011】
特にFGF−R3(例えばFGF−R3b)における変異はまた口腔扁平上皮癌の症例におけるこれらの受容体の構成的活性化に寄与すると記載されている(例えばY. Zhang et al, Int. J. Cancer 117:166-168(2005)参照)。
【0012】
FGF−R類、特にFGF−R1の増強された(特に気管支)発現は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連すると報告されている(例えばA. Kranenburg et al., J. Pathol. 206:28-38(2005)参照)。
【0013】
FGF−R類、特にFGF−R1またはFGF−R4を拮抗する方法はまた、肥満、糖尿病ならびに/またはメタボリックシンドローム、心血管疾患、高血圧、コレステロールおよびトリグリセリドレベル異常、皮膚障害(例えば感染)、静脈瘤、黒色表皮腫、湿疹、運動不耐性、2型糖尿病、インスリン抵抗性、抗コレステロール血症、胆石症、整形外科的傷害、血栓塞栓性疾患、冠血管もしくは血管制限(vascular restriction)(例えばアテローム性動脈硬化症)、日中の眠気、睡眠時無呼吸、末期腎疾患、胆嚢疾患、痛風、熱中症、免疫応答不全、呼吸機能不全、創傷に続く感染、不妊症、肝疾患、腰痛、産科および婦人科合併症、膵臓炎、発作、手術合併症、腹圧性尿失禁および/もしくは胃腸管障害のようなそれに関係する疾患の処置に有用であると記載されている(例えばWO2005/037235(A2)参照)。
【0014】
酸性線維芽細胞増殖因子(特にFGF−1)およびFGF−R1はまた網膜芽細胞腫におけるシグナリング異常に関与し、FGF−1の結合による増殖に至ると記載されている(例えばS. Siffroi-Fernandez et al., Arch. Ophthalmology 123:368-376(2005)参照)。
【0015】
滑膜肉腫の成長は線維芽細胞増殖因子シグナリング経路の崩壊により阻止されることが示されている(例えばT. Ishibe et al., Clin. Cancer Res. 11(7):2702-2712(2005))。
さらに、甲状腺癌の症例では、FGF−Rの関与を実証できた。
【0016】
前記で言及した全ての症例において、FGF−Rシグナリングの異常活性の調整(特にかかるキナーゼの活性の阻止)が、言及された疾患の処置において有用であることは合理的に予期できる。
【0017】
しかしながら、いつFGF−Rシグナリングを調整、例えば阻止または活性化する薬物での処置が有用であることを期待できるかの指示を有すること、および、さらにFGF−R調整およびかかる調整化合物での処置が有効であるかどうかをモニタリングすることを可能にするマーカーを有することが望ましいであろう。
【0018】
いつ薬剤での処置がFGF−Rシグナリングを阻止するかの指示を得ることが特に望まれる。
【0019】
FRS−2はまたSNT1とも称され、FGF−R活性化と細胞内シグナリング経路との間の一次連結として提供される脂質アンカーアダプタータンパク質である(Lin et al., Mol. Cell Biol. 18:3762-3770(1998); Xu et al., J. Biol. Chem. 273:17987-17990(1998); Dhalluin et al., Mol. Cell 6:921-929(2000); Ong et al., Mol. Cell Biol. 20:979-89(2000))。FRS−2はFGF−Rの膜近傍領域に構成的に関連するホスホチロシン結合クラス(PTB)の受容体認識配列、および複数のチロシンおよびセリンリン酸化部位を有するエフェクタードメインを含む。FGF−R活性化はFRS−2チロシン残基のリン酸化に至り、その後にそこにGrb2およびチロシンホスファターゼShp2が補充されてMAPKおよびPI3Kシグナリングを開始する(Xu et al. (1998), loc. cit.; Ong et al. (2000), loc. cit.; Hadari et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:8578-83(2001))。FGFシグナリングにおけるFRS−2の重要性は、FRS−2遺伝子の崩壊後にマウスの発達の間に観察された胎仔致死の表現型に反映される。加えて、FRS−2欠損マウス胎仔線維芽細胞により、FGF誘起の遊走、増殖およびMAK活性化の機能障害が示される(Hadari et al. (2001))。
【発明の概要】
【0020】
発明の一般的な記載
驚くべきことに、FRS−2の(特にチロシン)リン酸化状態が、記載した(特に増殖性)疾患および障害に対するかかる調整性化合物の有効性に関するバイオマーカーとして働き得ることが本発明により見出された:特にFGF−Rシグナリングの阻止に対して感受性がある細胞においてはFRS−2が高度にチロシンリン酸化されているが、増殖に関してFGF−Rに非依存的である細胞系ではされていないことが示された。
【0021】
故に本発明は、FGFRモジュレーターによるFGFR阻止がリン酸化FRS−2のレベルの低下を招くという所見に基づく。増殖(例えば腫瘍)細胞において、FGF−Rシグナリングの阻止に応答する細胞におけるFRS−2のチロシンリン酸化の程度はFGF−Rシグナリング阻害剤の存在下で減じられるが、阻止に応答しない細胞におけるチロシンリン酸化のレベルは検出不可能である、すなわち非常に低いからゼロであるか、またはより一般的にはモジュレーター、特に阻害剤の添加による変化に影響されず、そしてFRS−2のチロシンリン酸化を示す細胞のみがFGF−Rシグナリングの阻止に感受性を示すと予期できる。
【0022】
あるいは、FGF−Rシグナリングの活性化が望ましい場合(例えば創傷治癒の症例では)、活性化剤(例えばFGF誘導体等)がFRS−2、その変異体またはホスホチロシン含有フラグメントのリン酸化の増大に至るかどうかを試験し、故に(次いで望ましい)FGF−Rシグナリングの活性化を示すことも可能である。
【0023】
それ故に、増殖細胞におけるFRS−2のチロシンリン酸化の程度(特にチロシンリン酸化の存在)を用いて、FGF−Rシグナリングモジュレーター、特に阻害剤での処置に反応することができる細胞を、かかる処置に非応答性である細胞と区別することができる。故に細胞におけるFRS−2のチロシンリン酸化状態は、FGF−Rシグナリングの阻害剤による(例えば望ましくない)細胞増殖を調整、特に阻止する可能性に関するバイオマーカーである。FRS−2チロシンリン酸化のレベルを用いてFGFRおよびその変異体のモジュレーターの活性をエキソビボで決定することもできる。
【0024】
さらにFRS−2チロシンリン酸化(または同義的にFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態)の決定はとりわけFGF−R活性(特にその活性に関して)を調整する化合物/薬物の同定に有用であり、そしてFGF−Rモジュレーター、特に阻害剤での処置から利益を享受し得る患者を同定するための診断方法、および処置の有効性をモニタリングするための診断方法にも適用できる。
【0025】
発明の詳細な説明
第1の態様では本発明は、生物学的試料中のFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化状態を、阻止に対するかかる感受性に関するバイオマーカーとして決定することを含む、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す(好ましくは、例えば細胞培養物または細胞懸濁液中で単離された)細胞(単離された細胞、または単離された組織および/もしくは器官からの、一般的には生物学的試料からの、最も好ましくは患者からの細胞を含む)の同定の方法に関する。
【0026】
さらなる態様では本発明は、FRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントにおけるリン酸化(特にホスホチロシン)同定を、活性亢進性の、特に構成的に活性化されたFGF−Rシグナリングを示す、特にFGF−Rまたはその変異体の阻害剤で処置でき、そしてかかる阻害剤に応答する、特に患者からの生物学的試料からの細胞または組織または器官に関するバイオマーカーとして使用する方法またはその使用に関し、該方法または使用は、FRS−2におけるホスホチロシンを認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて、生物学的試料からのFRS−2における、その変異体における、またはそのチロシン含有フラグメントにおけるホスホチロシンの存在を決定し、FRS−2におけるリン酸化の陽性の所見は活性亢進性の、特に構成的に活性化されたFGF−Rシグナリングを示し、そして好ましくは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻害剤に対して応答性である細胞または組織または器官を、阻害剤に非応答性であるかかる細胞または組織または器官と区別するために、FGF−Rまたはその変異体により媒介されるシグナリングの阻害剤の不在下および存在下のリン酸化状態を比較することを含み、阻害剤の存在下でのリン酸化の低下はかかる応答性を示す。
【0027】
本発明はまた:
a)FRS−2または変異体またはチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬と生物学的試料を接触させ;そして
b)該FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントにおけるチロシンのリン酸化状態を、該リン酸化状態を認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて測定し;そして
c)リン酸化状態を、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体(特に活性亢進性、例えば構成的活性形態)が関与するシグナリングの阻止に対する感受性および/または症状状態および/または処置有効性と相関させること;
を含む、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す(好ましくは、例えば細胞培養物または細胞懸濁液中で単離された)細胞(単離された細胞、または単離された組織および/もしくは器官からの、一般的には生物学的試料からの、特に患者からの細胞を含む)の同定のための方法に関する。
【0028】
さらなる態様では本発明はまた、好ましくは患者からの生物学的試料中の、FRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定するための手段、特にリン酸化、さらに特にチロシンリン酸化されたFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントを同定するための手段を含む、特にFGF−R阻害剤での処置が有用である患者の同定において使用するための、FGF−Rまたはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性がある、特に患者からの生物学的試料の同定において、調整、特に阻止に対するかかる感受性に関するバイオマーカーとして使用するためのキットに関し;ここで好ましくはキットが調整なしで、さらに好ましくはFGF刺激なしでリン酸化の陽性の所見を可能にするとき、すなわちなおさらに好ましくはFGF−Rシグナリングの構成的活性化のとき、特に阻害剤で処置されない試料と比較して、阻害剤で処置された試料においてリン酸化が低下するとき、これは阻止に対する感受性を示す。
【0029】
本発明のなおさらなる態様は、FRS−2の、もしくはその変異体の、もしくはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識する(特にそこのホスホチロシンを認識する)ことができる生体分子特異的認識試薬(特に抗ホスホチロシン抗体)の使用、または線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す、特に生物学的試料からの、特に患者からの細胞の同定における使用のための(さらに特にFGF−R阻害剤での処置が有用である患者の同定における使用のための)そのような該生体分子特異的認識試薬に関し、ここで該使用は好ましくは該FRS−2またはその変異体もしくはフラグメントのリン酸化状態を決定することを含み;ここで調整なしでのリン酸化の所見は、好ましくは該阻止に対する感受性を予期できることを意味し;好ましくはFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化の同定における使用のためである。好ましいのは、該患者からの生物学的試料中のFRS−2、その変異体、またはホスホチロシン含有フラグメントにおけるリン酸化、特にチロシンリン酸化の同定を含む、FGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答する患者における症状の同定において使用するための生体分子特異的認識試薬またはその使用である。
【0030】
本発明の別の態様は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングのモジュレーター(活性を調整する化合物または薬物)の同定において使用するための、FRS−2リン酸化(または同義的にFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態)の決定のための方法に関し、かかるモジュレーターの不在下および存在下でのFRS−2リン酸化状態を決定し、そして各々、該(可能性のある)モジュレーターを添加した場合に該リン酸化の低下が見出されたとき、そのモジュレーターを阻害剤のクラスに割り当て、モジュレーターを添加した場合に該リン酸化の増大が見出されたとき、そのモジュレーターをシグナリングの活性化剤のクラスに割り当てることを含み;特にFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化を示す細胞を同定するためである。
【0031】
本発明の別の態様はFGF−Rモジュレーター、特に阻害剤での処置から利益を享受し得る患者の同定において、特に阻害剤なしでかかるリン酸化が存在する(特に阻害剤での処置から利益を享受し得る患者を示すかかるリン酸化の陽性の所見)かどうか、および好ましくはかかる患者からの生物学的試料中、阻害剤の存在下でそれが低下するかどうかを決定することを含むか、またはかかるFGF−Rモジュレーターでの処置、特に阻害剤での処置の有効性のモニタリングにおいて、かかる患者からの生物学的試料中、処置なしで陽性と見出された場合のかかるリン酸化がモジュレーター、特に阻害剤の存在下で変化する、特に低下するかどうかを決定することを含み;好ましくはかかる患者の生物学的試料中のFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化の同定における使用のためのFRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬(特に抗ホスホチロシン抗体)の診断方法もしくは使用、または使用のための該生体分子特異的認識試薬に関する。
【0032】
本発明のその上に別の態様は、好ましくはFRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて、患者からの生物学的試料中のFRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントの(好ましくはチロシン)リン酸化形態を同定することを含む、FGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答する(特に増殖性)疾患(または患者)を診断する方法、または該診断方法において使用するための該生体分子特異的認識試薬に関し;ここで好ましくはFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化の同定における使用である。
【0033】
本発明のその上に別の態様は、好ましくはFRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて、生物学的試料中のFRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態の不在を同定することを含む、FGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に影響されない増殖性疾患を診断する方法、または該診断方法において使用するための該生体分子特異的認識試薬に関する。
【0034】
本発明の別の態様は、患者におけるFGF−Rシグナリングに依存的な障害を処置するための治療に対する応答性をモニタリングする方法に関し、該治療の前に該患者から生物学的試料を入手し、FRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントのリン酸化形態の存在、特にリン酸化の程度の各々を決定し、そして、該治療の開始後に1個以上のさらなる生物学的試料を入手し、そして該FRS−2の、該変異体の、または該チロシン含有フラグメントのリン酸化の程度が変化しているか、特に低下しているかどうかを決定することを含み、ここでリン酸化の程度の低下は処置の成功を示す。
【0035】
その上に本発明のさらなる態様は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整に感受性がある生物学的試料からの細胞または組織からの細胞の同定のための診断薬の製造のための、リン酸化FRS−2またはその変異体またはチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬の使用に関し、該同定はFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定することを含む。
【0036】
なおさらなる態様では本発明は、FGF−Rシグナリングを調整する化合物の同定に有用な細胞を同定するための、リン酸化FRS−2、その変異体またはフラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬の使用に関する。
【0037】
本発明のさらなる態様は:
a)単離された細胞または組織の試料をFGF−R阻害剤の不在下で培地に、そして並行試料をFGF−R受容体阻害剤の存在下、FGFの不在下に付し;
b)該試料からFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントを少なくとも部分的に精製し;
c)該試料中のFRS−2のリン酸化状態を決定し;そして
d)処理された試料中のリン酸化状態を、阻害剤で処理されていない試料中のものと比較することを含み、阻害剤の存在下でのリン酸化の低下は、阻害剤を同定するのに適切である細胞が、FGF−Rシグナリングの活性亢進を含む症状の処置に有用であることを示している;
増殖のために特に構成的なFGF受容体活性化を必要として増殖し、そしてFGF−Rシグナリングの阻止に応答する細胞を同定するための方法に関する。
【0038】
その方法は増殖のためにFGF依存的またはFGF非依存的な、特に構成的なFGF受容体活性化により増殖する細胞を同定するために有用である。
【0039】
なお本発明のさらなる態様は、生物学的試料からのFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を該試薬を用いて決定することを含み、FGF−R依存的シグナリングの潜在的阻害剤の同定のためのリン酸化FRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬の使用の方法またはその使用に関し、そしてリン酸化が判明した場合には、被験化合物の存在下でリン酸化の程度をその不在下のものと比較し、リン酸化の低下はFGF−R依存的シグナリングの阻害剤としての被験化合物の有用性を示す。
【0040】
全ての前記の方法、使用、試薬、キットおよび本発明のその他の態様により、好ましくはFGF−Rシグナリングのモジュレーターでの処置に応答すると予期され得る症状、特に障害または疾患を有する患者を同定することが、特にFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントにおけるホスホチロシンの陽性同定の事例で可能になる。
【0041】
前記および後記にて用いられる一般的な用語は、好ましくは本開示の局面で、特記しない限り、次の意味を有し、本明細書、特に請求の範囲において用いられる何らかの1個以上の一般的な表現をその他の用語とは独立して、次に提供される、故に本発明の好ましい態様を定義するさらに具体的な定義で置き換えることができる。
【0042】
「線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整に対する感受性」を示す細胞は、好ましくは該シグナリングのモジュレーター、特に阻害剤での処置に応答し、そして患者からの生物学的試料中に含まれる細胞を意味する。これらの細胞はFGF−Rのモジュレーターの存在下のFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化において、モジュレーターの不在下でのリン酸化と比較して変化を示し、特にモジュレーターが阻害剤である場合には、リン酸化の増大、またはさらに好ましくはモジュレーターが阻害剤である場合には、リン酸化の低下が見出される。モジュレーター、好ましくは阻害剤は、好ましくはFGF−Rまたはその変異体に結合し、そして好ましくはFRS−2またはその変異体に関するその(好ましくはチロシン)タンパク質キナーゼ活性を阻止する分子である。
【0043】
「リン酸化状態」(または「リン酸化の程度」)とは、FRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントの一次アミノ酸配列におけるリン酸化されたセリン、スレオニンおよび/または(好ましくは、および唯一の)チロシン分子の不在または部分的もしくは完全な存在を指す。本発明によれば、リン酸化状態は、例えば(例えば構成的)FGF−Rシグナリングに依存的である症状、例えば疾患または障害を患う患者からの生物学的試料(ここでリン酸化が存在することが示され得る)を、かかる依存性が与えられない試料(ここでリン酸化が存在しないか、または弱いリン酸化しか存在しないことが示され得る)と区別する手段である。
【0044】
特にFGF−Rシグナリングのモジュレーター(特に阻害剤)の存在下および不在下でのインキュベーションの後、生物学的試料のリン酸化状態を比較することにより、FGF−Rシグナリングを調整(特に阻止)できる(そしてそれは故にかかるモジュレーター、特に阻害剤での処置に応答し、それは阻害剤の事例では、阻害剤なしでリン酸化が見出され、そしてこのリン酸化が阻害剤の存在下で減じられるかまたは除去される事例である)生物学的試料を、かかる調整、特に阻止がリン酸化状態に影響を及ぼさない(すなわち阻害剤の場合には、ここで阻害剤の存在下もしくは不在下の双方でリン酸化が存在しないとき、または阻害剤を伴うかもしくは伴わない試料を比較して、所定のリン酸化の変化が認められない)生物学的試料と区別することが可能である。
【0045】
最も好ましくは本発明により、特にFGF−Rシグナリングの活性亢進、最も具体的には構成的活性化のために、過度に増殖し、そしてそれ故にFRS−2またはその変異体においてチロシンリン酸化を示し、それ故に(FGF−Rシグナリングの阻害剤の存在下および不在下の双方でそのリン酸化状態を試験することによりさらに区別できるので)FGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答すると予期される細胞を同定することが可能になり、かかるリン酸化が不在であり、そしてそれ故にFGF−Rシグナリングの阻害剤での処置が成功しないと予期される細胞から区別することが可能になる。
【0046】
概して、故にFGF刺激の不在下または故に生物学的試料にも存在するFRS−2または変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化(特にチロシンリン酸化)の所見は、故に本発明による非常に好ましいバイオマーカーであり、そして全ての本発明の態様は、非常にこの上なく特にFGF−Rまたはその変異体のこの型の活性亢進、特に構成的活性を示すかかる細胞の所見を指す。
【0047】
生物学的試料が患者からのものであるならば、モジュレーター(特に阻害剤)の存在下および不在下でのリン酸化状態(その用語を本明細書の「リン酸化の程度」なる用語と置き換えることもできる)およびリン酸化の存在または変動の欠如により、故に患者がモジュレーター、特に阻害剤での処置から恩恵を受けることができるか、またはできないかを決断することが可能になる(阻害剤の存在下でリン酸化が減じられるか、またはリン酸化されないことが見出されるが、阻害剤の不在下でより高度なリン酸化が見出されるものを、かかる阻害剤での処置から恩恵を受けると予測できる)。
【0048】
「リン酸化」とは、本明細書で用いられるときはいつも、好ましくはチロシンリン酸化を指す。
【0049】
患者は特に活性亢進により、特に構成的活性化により、またはその他の理由のために(例えばFGFに対する拡大された敏感性および/またはFGFレベルの増大、FGF−R生合成の増大等)FGF−Rシグナリングの過活性に(少なくとも部分的に)依存する症状または障害を患う傾向があるかまたは患っている好ましくは温血動物、さらに好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0050】
症状のうち、特に以下から選択される疾患または障害が重要である:
軟骨無形性症、最も一般的な形態であるヒト低身長症、頭蓋骨癒合症症候群および低身長症症候群として分類される骨格異形成、例えば軟骨低形成症、発育遅延および黒色表皮腫を伴う重篤な軟骨無形性症(SADDAN)、ならびに致死性骨異形成症、Muenke冠状頭蓋骨癒合症、黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群、常染色体優性低リン血症性くる病、X染色体連鎖低リン血症性くる病(XLH)、腫瘍誘発性骨軟化症、骨の線維性骨異形成症を含む骨格異常。
【0051】
自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、乾癬、若年発症糖尿病、シェーグレン病、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、セリアック病および重症筋無力症、口腔扁平上皮癌。
【0052】
慢性閉塞性肺疾患、肥満、糖尿病ならびに/またはメタボリックシンドローム、心血管疾患、高血圧、コレステロールおよびトリグリセリドレベル異常、皮膚障害(例えば感染、静脈瘤、黒色表皮腫、湿疹)、運動不耐性、2型糖尿病、インスリン抵抗性、抗コレステロール血症、胆石症、整形外科的傷害、血栓塞栓性疾患、冠血管もしくは血管制限(vascular restriction)(例えばアテローム性動脈硬化症)、日中の眠気、睡眠時無呼吸、末期腎疾患、胆嚢疾患、痛風、熱中症、免疫応答不全、呼吸機能不全、創傷に続く感染、不妊症、肝疾患、腰痛、産科および婦人科合併症、膵臓炎、卒中発作、手術合併症、腹圧性尿失禁および/もしくは胃腸管障害のようなそれに関係する疾患。
【0053】
特に重要なものは増殖性障害、特に膀胱もしくは子宮頸部の上皮癌、多発性骨髄腫、皮膚腫瘍、乳癌、膵臓腺癌、星状細胞腫、前立腺癌、血管新生が役割を果たす固形腫瘍、網膜芽細胞腫、滑膜肉腫、甲状腺癌、さらなるメラノーマ、悪性リンパ腫、胃腸管癌、その他の膵臓癌、肺癌、食道癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、骨肉腫、筋肉肉腫、神経膠芽腫、8p11骨髄増殖障害または白血病のような組織、器官または血液細胞の癌または腫瘍疾患等である。
【0054】
FGF−RはFGF(それはまた変異体、例えば20を超える遺伝子およびいくつかのアイソフォームをも示す)に関する高親和性受容体であり、それは種々の変異体で見出され得る。
【0055】
「FGF−R」、特にFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3およびFGF−R4なる用語は本明細書で使用される際には、全てのこれらの変異体、特に依然構成的に活性な、または公知の22個の線維芽細胞増殖因子(FGF)の1つまたはそれより多くの(好ましくは解離定数が10−3またはそれより強い、さらに好ましくは10−5またはそれより強い、なおさらに好ましくは10−7またはそれより強い)結合のために活性な、FRS2をリン酸化して、抗ホスホチロシン抗体(例えば4G10)を用いて、および特に実施例のアッセイにより証明できる、そのホスホチロシン形態を生じることができる、またはWO2006/000420においてFGF−R3(細胞アッセイ)もしくはFGF−R3(酵素アッセイ)として言及されるものに相当するアッセイにおいて活性(チロシンリン酸化)を示すものを含む。
【0056】
好ましくは変異体は、約(「約」が付いた各数値は特に±10パーセントまたは好ましくは正確にその値を用いる場合を意味する)70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも約85%以上同一、なおさらに好ましくは約90%以上同一、その上さらに好ましいのは約95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一である配列(アミノ酸基盤で)を含む(好ましくはからなる)。FGF−R、特にFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3またはFGF−R4とその変異体との間の、相同性とも称される配列同一性のパーセンテージを、好ましくはこの目的のために一般的に用いられるGAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Cmputer Group, University Reseach Park, Madison Wisconsin, USA)(それはSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2:482-489(1981)のアルゴリズムを使用し、特にギャップオープンペナルティー12およびギャップ伸長ペナルティー1でアフィンギャップ検索を用いる)のようなコンピュータープログラムにより決定する。
【0057】
前記で与えられた全配列変異体の同一性に関して比較するために、FGF−R1、FGF−R2、FGF−R3およびFGF−R4の元来の配列に加えて好ましい基礎は:
FGF−R1に関しては;
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?val=M34185;にて与えられるタンパク質配列(受託番号M34185);
FGF−R2に関しては;
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&val=108773805にて与えられるタンパク質配列(受託番号NM 022970_NM_022969);
FGF−R3に関しては;
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&val=13112047にて与えられるタンパク質配列(受託番号NM_022965);および
FGF−R4に関しては;
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nuccore&val=47524176に示されるタンパク質配列(受託番号NM_022963)である。
【0058】
「変異体」なる用語には、特にアイソフォーム、突然変異体(1個またはそれより多い、例えば10個までのアミノ酸の非保存的または特に保存的な、例えば置換、欠失および/または付加、逆位をも含む)、対立遺伝子変異体、多型に基づく変異体、融合タンパク質、トランケートされた形態(例えば完全配列と比較して、10個から50個のアミノ酸を欠如する)等のような種々の形態が含まれる。特に好ましいのは、突然変異体、アイソフォーム、転座変異体および次の段落で具体的に言及されるようなものである。
【0059】
FGF−Rに関して4つの一般的な遺伝子、すなわちFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3およびFGF−R4があり、各々はいくつかのアイソフォームを含む(例えばFGF−R1:a、b、c;FGF−R2:b、c;FGF−R3:b、c;FGF−R4:トランケートされた形態)。多型が与えられ、変異体が存在し(例えばFGF−R3に関して:R248C(#)、S249C(#)、P250R、N328I、G370/372C(#)、S371/373C、Y373/375C(#)、G375/377C、G380/382R(#)、A391/393E(#)、I538/540V、N540/542K、T、SまたはV、K650/652E(#)、K650/652M(#)、K650/652Q(#)、K650/652N、K650/652T(#)、X807/809C、G、L、R、W等)、その多くは癌形成のような疾患に関与し、例えば#を記したものは、例えば膀胱癌および/または骨格異形成において見出すことができ、同等な突然変異もまたFGF−R1およびFGF−R2に関して存在し;融合タンパク質は転座の結果として存在し、例えばFGF−R1:Bcr−FGF−R1、ZNF198−FGF−R1、CEP110−FGF−R1、FOP−FGF−R1、Trim−FGF−R1、MYO18A−FGF−R1、TIF1−FGF−R1;FGF−R2:Tel−FGF−R3(例えばEswarakumat et al., J. Cytokine & Growth Factor Reviews 16:139-149(2005)参照)。
【0060】
故に一般的に突然変異体(置換、欠失、挿入を含む)、アイソフォーム、多型変異体および融合タンパク質、例えばFGF−Rタンパク質の1つまたはそれより多い以下の部分:IgドメインI、酸性ボックス、IgドメインII、IgドメインIII、膜貫通ドメイン、キナーゼ1、キナーゼインサートおよび/またはキナーゼ2;もまた包含される。
【0061】
SNT(Suc関連神経栄養因子誘発性チロシンリン酸化標的)とも称される様々なFRS−2型もまた見出される。タンパク質のFRS−2ファミリーは基本的に、SH2ドメイン含有タンパク質Grb1およびSH2含有タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)SHP−2を補充する脂質アンカー多基質アダプター分子であるFRS−2α(SNT1)およびFRS−2β(SNT2)からなる。FRS−2αのチロシルリン酸化はFGF−Rシグナリングの開始に重大な意味を持つ。本開示にてFRS−2が記載されているとき、これはまたFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3および/またはFGF−R4にまだ結合できるFRS−2−α(SNT1)およびFRS−2β(SNT2)の変異体、すなわち特にFRS−2αまたはFRS−2βに対して70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも約85%以上同一、なおさらに好ましくは約90%以上同一、その上さらに好ましいのは約95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一であるその種類のFRS−2変異体にも関係する。FRS−2αまたはFRS−2βとその変異体との間の、相同性とも称される配列同一性のパーセンテージを、好ましくはこの目的のために一般的に用いられるGAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Cmputer Group, University Reseach Park, Madison Wisconsin, USA)(それはSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2:482-489(1981)のアルゴリズムを使用し、特にギャップオープンペナルティー12およびギャップ伸長ペナルティー1でアフィンギャップ検索を用いる)のようなコンピュータープログラムにより決定する。
【0062】
故にFRS−2(FRS−2αまたはFRS−2β)の変異体には、特にアイソフォーム、変異体(1個またはそれより多い、例えば10個までのアミノ酸の非保存的または特に保存的な、例えば置換、欠失および/または付加、逆位をも含む)、対立遺伝子変異体、多型に基づく変異体、融合タンパク質、トランケートされた形態(例えば完全配列と比較して、10個から50個のアミノ酸を欠如する)等が含まれる。特に好ましいのは、FRS−2αおよびFRS−2βであり;任意の変異体にはリン酸化に利用可能な少なくとも1つの部位、特にチロシンが含まれなければならない。
【0063】
FRS−2またはその変異体のチロシン含有フラグメントは、(例えば顎下腺プロテアーゼ、黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼ、ペプシン、Asp−N−プロテアーゼ、キモトリプシンもしくはトリプシンのようなプロテアーゼでのタンパク質分解性部位特異的切断により、または例えばブロモシアンでの化学的切断により、好ましくは生物学的試料、特に細胞または組織または器官、まさしく特に腫瘍から得られたFRS−2またはその変異体のタンパク質分解性または化学的切断により得られた各々)その鎖にリン酸化され得る、そしてこれらのペプチドの非リン酸化およびリン酸化形態を特にまたその他のペプチドから、例えばその他のタンパク質から区別することができる生体分子特異的認識試薬により依然認識され得る1つまたはそれより多いチロシン部分を有するようなペプチドである。好ましくは、フラグメントは5個またはそれより多い、さらに好ましくは10個またはそれより多い近接アミノ酸、なおさらに好ましくは20個またはそれより多い、特に50個またはそれより多い、切断されたFRS−2の元来の配列を有する。
【0064】
FRS−2の、その変異体の、またはチロシン含有フラグメントの「リン酸化形態」は好ましくは該FRS−2、変異体またはフラグメントの一次アミノ酸構造における1つまたはそれより多いセリン、スレオニンまたは(特に)チロシン部分でリン酸化されているものである。
【0065】
「生物学的試料」なる用語は、例えば痰、血液、血漿、血清、滑液、腹腔内液、肺内液もしくは尿のような体液、またはさらに好ましくは細胞、細胞構成要素または組織もしくは器官検体(器官または特に腫瘍からの試料を含む)、または試験されるべき(例えば影響を受けるかまたは影響を受けると推測される細胞、腫瘍またはその他の組織もしくは器官からの)細胞、器官もしくは組織からの組織もしくは器官試料または細胞もしくは細胞ライゼートのような、その2つもしくはそれより多くの混合物を指す。好ましくは単離された生物学的試料を意味する。これらを培養物から誘導できるか、または好ましくは患者から入手されていてよい。本発明による方法および使用において、通常単離された生物学的試料が用いられ、すなわちその方法および使用は患者不在で、例えば別個の研究室等で行われるのが好ましい。故に生物学的試料を入手する工程、およびその試験の工程を別個にでき、そしてこの事例では、別個であるのが好ましく、そして本発明による方法または使用は試料採取または試料の型に依存しない。「細胞」なる用語が本明細書で使用されるとき、これは直前に定義されたような生物学的試料からの細胞、細胞フラグメントまたは細胞ライゼートを指す。
【0066】
本発明による方法または使用は、1つの好ましい態様では、患者から試料を入手する工程を含まない、すなわち純粋にインビトロの方法または使用であり、すなわち患者の身体の外部および不在下のものである。一方この試料の入手もまた包含されるこれらの態様は、許容される本発明の好ましい態様である。
【0067】
「生体分子特異的認識試薬」は抗体でよく、具体的な場合では(特に二次または三次標識された生体分子特異的認識分子として)、それは抗体結合タンパク質(例えば細菌に由来するプロテインAまたはプロテインG)でもよいか、またはそれはアプタマー(特異的分子標的に結合する二本鎖DNAまたは一本鎖RNA分子を含む)もしくはアフィボディ(望ましいタンパク質に対して選択することができ、そして例えばコンビナトリアルタンパク質ライブラリーから単離できるタンパク質結合ポリペプチド)でよい。
【0068】
一般的な用語「抗体」は、本開示内では、他に特記しない限り、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、二特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、または依然FRS−2および/もしくは変異体および/もしくはそのチロシン含有フラグメントを認識し、特にそれに対して(好ましくは解離定数Kが10−4以下、さらに好ましくは10−6以下、なおさらに好ましくは10−8以下で)(実質的な、または十分に選択的な)結合親和性を示すこれらの形態の任意の1つもしくはそれより多くのフラグメントを含むと意図され、立体配置または(好ましくは)一次構造関連(例えばホスホチロシン含有)エピトープの1つまたは双方を含む。故に「抗体」は特に結合タンパク質(抗原の特異的(立体配置的および/または一次構造関連)エピトープに結合することができる分子)として機能的に定義されるタンパク質および、免疫グロブリンコード化遺伝子のフレームワーク領域から誘導されているとして当業者により認識されるアミノ酸配列を含むとして構造的に定義されるものを指す。構造的には、最も単純な天然発生抗体(例えばIgG)は4つのポリペプチド鎖、重(H)鎖の2つのコピーおよび軽(L)鎖の2つのコピー、ジスルフィド結合により共有結合で連結された全てを含んだ。エピトープに対する結合の特異性はHおよびL鎖の可変(V)領域において見出される。一次構造である抗体の領域は定常(C)である。「抗体」なる用語には、全長抗体、依然結合するフラグメント、抗体の修飾または誘導体が含まれる。それはまた組換え生成物または二特異性抗体もしくはヒト化抗体のようなキメラ抗体でもよい。抗体はポリクローナル混合物または(1を超える、特に1つの)モノクローナルでよい。それらは1つまたは複数の天然の供給源から誘導されたインタクトな免疫グロブリンでよく、そしてインタクトな免疫グロブリンの免疫反応性(結合)部分でよい。抗体は例えばFv(VおよびVドメインからなる)、dABフラグメント(Vドメインからなる;Ward et al., Nature 341:544-546(1989))、単離された相補性決定領域(CDR)、Fab(V、V、CおよびCH1ドメインからなる)、およびF(ab)(ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント)を含む種々の形態を示すことができ、一本鎖でも同様である。重鎖および軽鎖に関する遺伝子が単一のコード化配列に組み合わされた一本鎖抗体(SCA)を用いることもできる。いくつかのSCAは軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域およびそれらを連結する適当なポリペプチドリンカーを含有する組換え分子である。認識すること、または認識とは特に目的の各々の分子に対して(好ましくは例えば100倍、好ましくは1000倍、さらに好ましくは10000倍特異的な、または各々の事例で、試料中に存在する任意のその他の分子に関するよりも低い解離定数の)高い親和性を有する、例えば解離定数が10−4、さらに好ましくは10−6、なおさらに好ましくは10−8、または各々の場合でそれより低い結合があることを意味する。
【0069】
FRS−2(この用語は用いられるときはいつもFRS−2、その変異体(特に前記で定義の通り)またはその(非リン酸化および/またはリン酸化)チロシン含有フラグメントを含む)のリン酸化状態の決定は、例えば古典的なクロマトグラフィーもしくは高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)および/または二次元電気泳動もしくは特にドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)のような電気泳動技術による、さらに好ましくはFRS−2特異的生体分子特異的認識試薬、例えば1つもしくは複数の抗体、さらに好ましくはポリクローナル抗体を用いる免疫沈降、続いてSDS−PAGEによる、または2つもしくはそれより多いかかる技術の任意の適切な組み合わせ、続いてリン酸化FRS−2、変異体またはフラグメント(特にそこに含まれるホスホチロシン)を認識する(それ自体未標識または標識された)生体分子特異的認識試薬を用いる、リン酸化(特にチロシンリン酸化)FRS−2、変異体もしくはフラグメントの存在もしくは量またはFRS−2もしくは変異体もしくはフラグメントにおけるホスホチロシン含量の決定のためのリン酸化FRS−2、変異体もしくはそのフラグメントに関するスクリーニングによる、例えば組織、細胞または細胞フラグメントの溶解、および1つまたはそれより多い富化工程を含む、例えば生物学的試料からのFRS−2または変異体またはそのチロシン含有フラグメントの(少なくとも部分的な)精製を含み得る。
【0070】
「部分的精製」とは、試料中に元来存在するその他のタンパク質と相対的に比較して、FRS−2、変異体またはそのフラグメントが少なくとも2倍、さらに好ましくは少なくとも5倍、なおさらに好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも25倍富化されていることを意味する。
【0071】
あるいは、FRS−2を認識する生体分子特異的認識試薬はまた例えば共有結合により、または吸収により固体支持体(例えば膜または反応容器、例えばマルチウェルプレート)に結合させ、評価されるべきFRS−2を含む培地(例えば組織または細胞ライゼート)と接触させ、そして次にリン酸化(特にチロシンリン酸化)FRS−2結合の量を、リン酸化FRS−2、特にそこに含まれるホスホチロシンを認識および標識することができる生体分子特異的認識試薬により決定することもできる。
【0072】
また別に、FRS−2のリン酸化形態に、特にホスホチロシンに特異的な生体分子特異的認識試薬を固体支持体(最後の段落を参照)に結合させ、評価されるべきFRS−2を含む培地と接触させ、そして次に結合FRS−2を認識および標識することができる生体分子特異的認識試薬を用いてFRS−2結合を決定することができる。
【0073】
各場合、標識工程は、好ましくは標識されたプロテインA、標識されたプロテインG、標識されたストレプトアビジン、例えば抗体の定常領域に特異的な標識されたさらなる抗体等のような、そのエピトープに結合する抗体に結合できる1つまたはそれより多いさらなる標識された特異的認識分子を含む。
【0074】
原理上は、例えば変異体またはそのフラグメントを含むFRS−2のリン酸化形態に特異的である生体分子特異的認識試薬を用いて一工程決定が可能であり、そしてそれを標識および/または単離することが可能になる。
【0075】
さらに、(例えばその比率を得るために)試料中のFRS−2のリン酸化(例えばリン酸化形態にのみ結合する生体分子特異的認識試薬により)および非リン酸化形態(例えば非リン酸化形態にのみ結合する生体分子特異的認識試薬により)の双方を決定し、そうして、定量の可能性を含み、試料中のわずかな差異についてさらに詳細な情報を得ることも可能である。
【0076】
FRS−2のリン酸化状態を決定するためのこれらのまたは種々のその他の方法が可能であり、したがって本発明の一部である。
【0077】
認識薬、すなわちFRS−2、その変異体もしくはチロシン含有フラグメントのための、または免疫沈降物のための固体支持体は、例えば細胞および免疫化学において通例的なプラスチックもしくはガラス容器またはプレートもしくはマルチウェルプレートでよいか、またはそれらは膜、例えばニトロセルロースもしくはPVDF膜でよい。
【0078】
決定工程では、生体分子特異的認識試薬または(前記および後記で定義される通り)それに結合するさらなる標識された特異的認識分子を標識するために、それは例えば西洋ワサビペルオキシダーゼのようなペルオキシダーゼでの例えば酵素抱合により通例的な方式で標識されるのが好ましく、故に色素またはその他の試薬との反応のような通例的な反応で結合したペルオキシダーゼ抱合認識薬の存在を決定することが可能になり、例えば、ルミノールおよび光度に関するエンハンサーを含むSuperSignal(登録商標)West Dura Extended Duration Substrate 検出系(Pierce, Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, USA; #34075)を用いるか、または4−クロロ−1−ナフトールおよびHで、アルカリ性ホスファターゼで(ホスファターゼ/BCIP−NBT系を用いる)、β−ガラクトシダーゼで;リンゴ酸デヒドロゲナーゼで、ブドウ球菌ヌクレアーゼで、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼで、酵母アルコールデヒドロゲナーゼで、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼで、トリオースリン酸イソメラーゼで、もしくはグルコアミラーゼで染色し、ビオチン/ストレプトアビジン系の構成要素(生体分子特異的認識試薬に結合しないもの)、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、フルオレサミンまたはユウロピウムもしくはその他のランタニド系のような蛍光発光金属原子のような色素産生性、蛍光性(例えば蛍光性ユウロピウムキレーターまたはCy5)、生物発光性もしくは化学発光性マーカー、または放射活性標識等で標識し、各場合、公知の、および特に当分野において公知の標準的な検出反応が可能であり、故に例えば酵素基盤、色基盤、化学発光基盤、蛍光基盤、生物発光基盤もしくは放射活性基盤(例えば蛍光)のまたはその他の検出および定量方法が可能である。
【0079】
あるいは、リン酸化FRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントに結合する生体分子特異的認識分子を直接標識する代わりに、標識された(例えば直前に記載した標識された)抗体または細菌タンパク質(例えばプロテインAまたはプロテインG)のような、さらなる標識された生体分子特異的認識分子を用いることができ、例えば当分野において公知のような、例えば既に結合した生体分子特異的認識分子、例えば抗体(例えば標識された抗マウスまたは抗ウサギAB)上の定常領域またはオリゴ糖に結合し、したがって、結合抗体の決定が可能になるものを用いることができる。
【0080】
リン酸化(特にチロシンリン酸化)FRS−2を、各場合で、リン酸化FRS−2またはリン酸化基を含むそのフラグメントの立体構造および/または一次構造に基づくエピトープを特異的に認識することが可能である生体分子特異的認識薬(特に抗体)により、特に抗ホスホチロシン抗体により特異的に認識できる。
【0081】
「認識すること」または「認識する」とは、好ましくは例えば生体分子特異的認識薬に関して示された解離定数で特異的に結合することを意味する。
【0082】
種々の抗ホスホチロシン抗体は、例えば多くの供給源から市販により入手可能であり、本発明の方法に適当である。例えばPY−7E1、PY−1B2およびPY20はZymed(San Francisco, Calif.)から別個に、またはPY−PLUS.(商標)の下で販売されるカクテルとして入手可能なモノクローナルマウス抗ホスホチロシン抗体である。Zymedはまた親和性精製ポリクローナルウサギ抗ホスホチロシン抗体、Z−PY1をも提供する。マウス抗ホスホチロシン抗体、クローンPT−66はSigma(St. Louis, Mo.)から入手可能である。さらに当分野において周知の免疫方法にしたがってポリクローナルホスホチロシン抗体を種々の種において上昇させることができる。モノクローナル抗ホスホチロシン抗体の生成のための方法は米国特許第4543439号に記載され、その内容は、特に抗ホスホチロシン抗体の入手および試験の方法(特にその他の抗ホスホチロシン抗体をスクリーニングするために用いることもできる特異性に関する選択系)ならびに入手可能な抗ホスホチロシン抗体に関しては、出典明示により本明細書の一部とする。
【0083】
免疫沈降の目的のために、ポリクローナルまたは二特異性抗体(抗原、特にFRS−2上の2つの異なるエピトープに結合する)を用いることができ(大きな抗体/抗原凝集物の形成が可能になる)、特に固体支持体への結合に好ましく、言及された抗体またはその誘導体のいずれかは依然(特に特異的な)結合活性が可能であることを示している。
【0084】
1つの好ましい変異体では、本発明による方法または使用は、例えば生物学的試料からのFRS−2、その変異体またはその(非リン酸化またはリン酸化)チロシン含有フラグメント(本明細書で以後「FRS−2x」と称されるこれらのバリエーションのいずれか)を、例えばFRS−2xを認識することができる第1の生体分子特異的認識試薬(例えば抗体)を用いて沈降または結合することによる第1の(少なくとも部分的)精製し、そして次に例えばSDS−PAGEにより生体分子特異的認識試薬からFRS−2xを分離すること、例えばFRS−2xを膜にブロッティングすることによりFRS−2xを固定すること、次いでリン酸化FRS−2x、特にホスホチロシンを認識することができる第2の生体分子特異的認識試薬(さらなる標識反応が必要とされないようにそれ自体標識されていてよいか、または未標識でよい)を結合させること、および(第2の生体分子特異的認識試薬がそれ自体未だ標識されていない場合)標識された生体分子特異的認識試薬(標識および標識された生体分子特異的認識試薬は好ましくは前記で定義されたようのものでよい)を、FRS−2xに結合した第2の生体分子特異的認識試薬に結合させること、および結合した標識された生体分子特異的認識試薬を同定することを含む。故に試料中にリン酸化、特にチロシンリン酸化FRS−2xが存在するかどうか、またはどの程度存在するかを知ることができる。
【0085】
本明細書において「チロシン含有フラグメント」が記載されているところでは、それらは非リン酸化および/または(好ましくは)リン酸化形態でよい。
【0086】
本明細書にて用いられる免疫沈降、標識、ブロッティングおよびその他の方法をHarlow et al., Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory(1988); Coligan et al., Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience(1991); E. Bast:Mikrobiologische Methoden((Microbiologic Methods)), 2nd edition, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg/Berlin (2001); Hans Guenter Gassen/Gangolf Schrimpf(eds.), Gentechnische Methoden, 2nd edition Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg/Berlin (1999))(その全てを好ましくは出典明示により本明細書の一部とする)のような標準的な研究から推定できる。
【0087】
本発明による特別な態様では、方法または使用はまた、リン酸化状態が、FGF−Rが関与するシグナリングの阻止に対する感受性を推定するのに十分であるかどうかを決定するために、患者の生物学的試料からのFRS−2または変異体またはそのチロシン含有フラグメントの(特にチロシン)リン酸化状態を、FGF−Rが関与するシグナリングの阻止に対して感受性を示さない患者および/またはかかる感受性を示す患者から得られた試料において以前に決定された範囲と比較することを含む。リン酸化比率が高いほど、予期されるFGF−Rシグナリングの阻止に対する敏感性が高い。
【0088】
解離定数は、記載されているとき、好ましくはpH7.4のリン酸塩緩衝生理食塩水中で測定され、それを以下のように調製することができる:蒸留水8l中、NaCl 800g、KCl 20g、NaHPO 144gおよびKHPO 24gを溶解し、そして10lまで上乗せすることにより、10×PBSの10リットルストックを調製することができる。pHは〜6.8であるが、1×PBSで希釈すると、7.4まで変化するはずである。希釈時は、得られた1×PBSの最終濃度は:137mM NaCl、10mM リン酸塩、2.7mM KCl、pH7.4;であろう。
【0089】
本明細書では理解されるように、「バイオマーカー」(または「マーカー」)なる用語は生物学的分子(本明細書では特に非リン酸化またはリン酸化FRS−2、またはその変異体またはチロシン含有フラグメント)を指し、その存在および/または濃度を検出し、そして公知の症状、特にFGF−Rが関与するシグナリングに依存し、そして/または感受性を示す疾患または障害と相関させることができる。それはまたFRS−2またはその変異体のリン酸化状態(特にリン酸化チロシンを含む)を決定することが依然可能であるフラグメント(例えばプロテアーゼ処理(例えば部位特異的プロテアーゼを用いて)により入手可能であるかまたはFRS−2様のもの)をも含む。かかるバイオマーカーは、FGF−Rまたはその変異体が関与するシグナリングの阻止に応答する疾患または障害のような症状を患う対象およびかかる阻止に応答しない疾患を有する患者において差次的に存在する。
【0090】
本発明はまたFGF−Rまたはその変異体が関与するシグナリングの阻止に対して感受性を示すことを可能にするキットにも関し、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定するための手段、特に生物学的試料中のリン酸化、さらに特にチロシンリン酸化FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを阻止に対するかかる感受性に関するバイオマーカーとして同定するための手段を含む。
【0091】
本発明によるキットは、例えば、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)基盤のイムノアッセイ、ウェスタンブロット、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ(RIA)および/または免疫放射線測定アッセイ(IRMA)のような、サンドイッチイムノアッセイ(ELISA)(サンドイッチELISAまたは競合ELISAを含む)に関する、蛍光基盤のイムノアッセイに関する、またはその他のイムノアッセイもしくは酵素イムノアッセイに関するキットでよい。かかるアッセイに必要とされる構成要素および成分は当分野において公知であり、そして本発明によるキットはFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を同定することを可能にする少なくとも2つのかかる構成要素を含む。
【0092】
キットはまたバイオチップ、例えばCiphergen Biosystems, Inc.(Fremont, CA, USA)、Packard Bioscience Co.(Meriden, CT, USA)、Zyomyx(Hayward, CA, USA)、Phylos(Lexington, MA, USA)またはBiacore(Uppsala, Sweden)からの、タンパク質の捕捉のために適合させた例えばタンパク質バイオチップを含むことができ、それは例えば米国特許第6225047号;WO99/5177;米国特許第6329209号;WO00/56934;または米国特許第5242828号に記載される。
【0093】
好ましくは本発明によるキットはFRS−2、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定するための手段として、リン酸化FRS−2、その変異体またはその(好ましくはリン酸化)チロシン含有フラグメントを認識する、特に結合することができる生体分子特異的認識試薬、特に抗体、さらに特に抗ホスホチロシン抗体;ならびになおさらに好ましくは、加えて、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントの少なくとも部分的な精製のための手段として、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを認識する、好ましくは免疫沈降することができる生体分子特異的認識試薬、およびFRS−2、その変異体またはその(好ましくはリン酸化)チロシン含有フラグメントを認識する、特に結合することができる該生体分子特異的認識試薬を同定するための標識を含む。標識は好ましくは、例えば前記で定義されたような、リン酸化FRS−2、その変異体またはその(好ましくはリン酸化)チロシン含有フラグメントを認識する、特に結合することができる生体分子特異的認識試薬を認識、特に結合するさらなる生体分子特異的認識分子の形態でよく、その状態では、後者は標識されたプロテインA、標識されたプロテインG、標識されたストレプトアビジン、例えば抗体の定常領域に特異的な、標識されたさらなる抗体等のような前記の通りに標識された、リン酸化FRS−2、そのリン酸化変異体またはそのリン酸化チロシン含有フラグメントに結合する。
【0094】
FGF−Rまたはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止を可能にする化合物は例えば:(特にヒト化)抗体、そのフラグメント、一本鎖抗体または特にその他の化学的薬剤、特に阻害剤、例えば米国特許第6774237号(特に請求の範囲に入る化合物(最終生成物)、さらに好ましくはそこで実例として具体的に言及された化合物に関して、出典明示により本明細書の一部とする)において記載された1個以上、3−(2,6−ジクロロ−3,5−ジメトキシフェニル)−1−{6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1−メチル尿素(本明細書では阻害剤1とも称される、実施例1参照)、WO2006/000420(A)(特に請求の範囲に入る化合物(最終生成物)、さらに好ましくはそこで実例として具体的に言及された化合物に関して、出典明示により本明細書の一部とする)の請求の範囲に入る、もしくは特にそこで言及されるその他の化合物、PD17307(阻害剤2)、または米国特許第5733913号(特に請求の範囲に入る最終的な生成物、さらに好ましくはそこで実例として具体的に言及された化合物に関して、出典明示により本明細書の一部とする)の請求の範囲に入る、もしくは特にそこで言及されるまたはその他の化合物(最終生成物)、PD166866(J. Med. Chem. 40:2296-2303(1997))からなる群から選択され得る特にモジュレーター、好ましくは阻害剤である。
【0095】
本明細書の記載および請求の範囲の全体にわたって、「からなる」および、「からなり」または「からなって」のようなその変化形(この語が起因する構成要素または特徴が言及されるものに限定されることを意味する)とは対照的に、「含有する」および「含む」なる語、ならびにその語の変化形、例えば「含有し」および「含み」は通常「含むが、それに限定されない」ことを意味し、そしてその他の部分、付加物、構成要素、完全体または工程を排除することを意図しない(そして排除しない)。「含む」または「含み」が用いられるとき、適切な、そして合理的なとき、これを「からなる」または「からなること」により置き換えることができる。
【0096】
本開示における文書または参照文献の任意の言及は参照された材料が本発明の特許性および範囲に否定的に影響する先行技術であるという承認を意図するものではなく、それを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】細胞系におけるFRS−2チロシンリン酸化を示す。指数関数的に成長する細胞を溶解し(実施例1参照)、そして全細胞ライゼートをα−FRS−2抗体と共に免疫沈降に供し、続いて抗pTyr抗体もしくは抗FRS−2抗体で免疫ブロッティングするか、または実施例1の表1で与えられる抗pFRS2抗体で直接免疫ブロッティングに供する。WB=ウェスタンブロット(ブロッティング)、IP=免疫沈降
【図2】RT4細胞においてFGF−R阻害剤PD173074(阻害剤1、実施例1の方法参照)で、RT112の事例では、TKI258/CHIR258、4−アミノ−5−フルオロ−3−[6−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]−2(1H)−キノリノン(阻害剤2、実施例1の方法参照)での処理後のFRS−2リン酸化の比較分析。指示された細胞系を示されたように処理する。特異的FRS−2抗体での免疫沈降、続いて抗FRS−2ウェスタンブロッティングにより、またはFRS2上のリン酸化Tyr196を検出する抗体を用いるウェスタンブロットによりFRS−2チロシンリン酸化を決定する。注:FRS−2タンパク質はしばしばMAPKによるセリン/スレオニン残基上のリン酸化により引き起こされる異なる電気泳動移動度シフトを示す(Lax et al., Mol. Cell 10:709−719(2004))。Inhib. 1=阻害剤1、Inhib. 2=阻害剤2、DMSO=ジメチルスルホキシド。(A)=膀胱癌細胞系RT4(B)=膀胱癌細胞系RT112
【図3】成長因子刺激時のFRS−2チロシンリン酸化の比較分析:膀胱癌細胞系RT112およびRT2をaFGF/ヘパリン(50ng/ml//5μg/ml)、EGF(10ng/ml)(R & D Systems, Inc., Minneapolis, MN, USA; #236-EG-200)またはインスリン(5μg/ml)(Sigma, Sigma-Aldrich, Inc., St. Louis, MO, USA; #1882)で刺激する。細胞を溶解し、そして全タンパク質ライゼートを除去する。実施例1の表1にて言及される抗体を用いてFRS−2チロシンリン酸化を免疫沈降、続いて抗pTyr抗体ウェスタンブロッティングにより決定する。抗ホスホMAPK(実施例1の表1のpMAPK抗体)を用いて全細胞ライゼートをウェスタンブロッティングによりMAPK活性化に関して試験する。α−MAPK(実施例1の表1のMAPK1)を用いてウェスタンブロッティングにより等量のMAPKタンパク質をモニタリングする。WB=ウェスタンブロッティング、IP=免疫沈降、Untr.=未処理、INS=インスリン
【0098】
図1から3では、実施例1の表1を参照して、PTyr抗体を用いてウェスタンブロットを行う場合、Santa Cruzからの抗体#sc−8318を免疫沈降に使用し、抗FRS−2抗体を用いてウェスタンブロットを行う場合、抗体#05−502を免疫沈降に使用する。FRS−2に関してウェスタンブロットを行うための抗体はSanta Cruzからの#Sc−8318である。「#」はカタログ番号を表す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明の好ましい態様
以下では、本発明のいくつかの好ましい態様に言及し、前記の通りの他の好ましい態様は、態様を記載する1個以上の用語を、前記または実施例において与えられた定義により置き換えることにより得ることができる。
【0100】
(A1) 1つの好ましい態様では、本発明は生物学的試料中のFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を、阻止に対するかかる感受性に関するバイオマーカーとして決定することを含む、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対する感受性を示す細胞の同定の方法に関し、ここでFRS−2のチロシンのリン酸化状態をバイオマーカーとして使用する。
【0101】
(A2) 本発明の別の好ましい態様は(A2)による方法に関し、ここでモジュレーター、特にFGFの不在下でのFRS−2またはその変異体における特にチロシンのリン酸化の陽性の所見を、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻止がシグナリングに影響を及ぼす、特にシグナリングを阻止するために有効であり得ることの指標として使用する。
【0102】
(A3) 本発明の別の好ましい態様は(A2)または(A3)による方法に関し、ここで阻害剤の投与に対して応答する細胞を同定するために、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻害剤の存在下および不在下でインキュベートした後の生物学的試料中のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を比較し、ここで、リン酸化の阻止の所見は、かかる応答が予期されるはずである指標と考えられる。
【0103】
(A4) 本発明の別の好ましい態様は(A1)から(A3)のいずれか1つによる方法に関し、ここでFGF−Rまたは変異体なる用語は依然、1種以上の線維芽細胞増殖因子への、好ましくは解離定数が10−3もしくはそれより強い、さらに好ましくは10−5もしくはそれより強い、なおさらに好ましくは10−7もしくはそれより強い結合のために活性であるか、または好ましくは構成的に活性であり、FRS−2をリン酸化して抗ホスホチロシン抗体で証明できる、そのホスホチロシン形態を生じることができ、そしてFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3またはFGF−R4の各々のうちの1つと比較した場合、70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも85%以上同一、なおさらに好ましくは90%以上同一、その上さらに好ましいのは95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一である配列を含む、好ましくはそれからなるFGF−Rの全てのこれらの形態または変異体を含み、そしてここでFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントなる用語はFRS−2αもしくはFRS−2βまたはそのホスホチロシン含有フラグメントに70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも約85%以上同一、なおさらに好ましくは約90%以上同一、その上さらに好ましいのは約95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一であるFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3および/またはFGF−R4、特にFRS−2変異体に依然結合することができるFRS−2のこれらの形態を含む。
【0104】
(A5) 本発明の別の好ましい態様は(A1)から(A4)のいずれか1つによる方法に関し、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを少なくとも部分的に精製し、そして次にFRS−2の、変異体の、またはそのフラグメントのリン酸化形態、特にそこに含有されるホスホチロシンを認識することができる生体分子特異的認識試薬でリン酸化、特にチロシンリン酸化の存在または量を決定することを含み、ここで該生体分子特異的認識試薬または、該生体分子特異的認識試薬に結合することができる投与されるさらなる生体分子特異的認識分子のいずれかを標識し、そして投与し、故にFRS−2の、変異体の、またはそのフラグメントのリン酸化形態の検出が可能になる。
【0105】
(A6) 本発明の別の好ましい態様は、生体分子特異的認識試薬が抗体である(A5)の方法に関する。
【0106】
(A7) 本発明の別の好ましい態様は(A1)から(A6)のいずれか1つによる方法に関し、ここでホスホチロシンを含むFRS−2、ホスホチロシンを含むその変異体またはそのホスホチロシン含有フラグメントを、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対する感受性を示す細胞の指標となるバイオマーカーとして使用し、そして好ましくは該FRS−2、変異体またはそのフラグメントにおけるチロシンリン酸化の存在または量を決定するために、抗ホスホチロシン抗体の形態の生体分子特異的認識試薬を使用することを含む。
【0107】
(A8) 本発明の別の好ましい態様は(A1からA7)のいずれか1つによる方法に関し、ここでFGF−Rシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性のある細胞を、FGF−Rと非依存的に増殖するかかる細胞から区別し、特にここで阻止に対して感受性のある細胞は、FGF非依存的な、さらに特に構成的なFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化、特にチロシンリン酸化が見出されることを示す。
【0108】
(A9) 本発明の別の好ましい態様は(A1)から(A8)のいずれか1つによる方法に関し、ここでFRS−2のリン酸化の不在、特にFRS−2の、変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントの不在下でのリン酸化の不在は、FGF−Rシグナリングの阻害剤によるFGF−Rシグナリングの阻止が予期されるものではないという証拠と考えられる。
【0109】
(B1) あるいは、本発明は好ましくはFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントにおけるリン酸化(特にホスホチロシン)同定を、活性亢進性の、特に構成的に活性化されたFGF−Rシグナリングを示し、特にFGF−Rまたはその変異体の阻害剤で処置でき、そしてかかる阻害剤に応答する細胞、組織または器官に関するバイオマーカーとして使用する方法またはその使用に関し、該方法または使用は生物学的試料からのFRS−2における、その変異体における、またはそのチロシン含有フラグメントにおけるリン酸化チロシンの存在を、FRS−2中のホスホチロシンを認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて決定することを含み、リン酸化の陽性の所見は活性亢進性の、特に構成的に活性化されたFGF−Rシグナリングを示す。
【0110】
(B2) 本発明の別の好ましい態様は(B1)による方法に関し、さらにFGF−Rまたはその変異体が関与するシグナリングの阻害剤に対して応答性である細胞または組織または器官を、非応答性であるかかる細胞または組織または器官から区別するために、FGF−Rまたはその変異体により媒介されるシグナリングの阻害剤の不在下および存在下のチロシンリン酸化状態を比較することを含み、阻害剤の存在下でのチロシンリン酸化の低下はかかる応答性を示す。
【0111】
(B3) 本発明の別の好ましい態様は(B1)または(B2)による方法に関し、ここで阻害剤の投与に対して応答する細胞を同定するために、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻害剤の存在下および不在下でインキュベートした後の生物学的試料中のFRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化の程度を比較し、ここでリン酸化の部分的または完全な阻止の所見、すなわちリン酸化の低下は、かかる応答性が予期されるはずである指標と考えられる。
【0112】
(B4) 本発明の別の好ましい態様は(B1)から(B3)のいずれか1つによる方法に関し、ここでFGF−Rまたは変異体なる用語は依然、1種以上の線維芽細胞増殖因子への、好ましくは解離定数が10−3もしくはそれより強い、さらに好ましくは10−5もしくはそれより強い、なおさらに好ましくは10−7もしくはそれより強い結合のために活性であるか、または好ましくは構成的に活性であり、FRS−2をリン酸化して抗ホスホチロシン抗体で証明できる、そのホスホチロシン形態を生じることができ、そしてFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3またはFGF−R4の各々のうちの1つと比較した場合、70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも85%以上同一、なおさらに好ましくは90%以上同一、その上さらに好ましいのは95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一である配列を含む、好ましくはそれからなるFGF−Rの全てのこれらの形態または変異体を含み、そしてここでFGF−R2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントなる用語はFRS−2αもしくはFRS−2βまたはそのホスホチロシン含有フラグメントに70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも約85%以上同一、なおさらに好ましくは約90%以上同一、その上さらに好ましいのは約95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一であるFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3および/またはFGF−R4、特にFRS−2変異体に依然結合することができるFRS−2のこれらの形態を含む。
【0113】
(B5) 本発明の別の好ましい態様は(B1)から(B4)のいずれか1つによる方法に関し、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを少なくとも部分的に精製し、そして次に該ホスホチロシンを認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて該FRS−2における、該変異体におけるまたは該そのチロシン含有フラグメントにおけるホスホチロシンの存在または量を決定することを含み、ここで該生体分子特異的認識試薬または、該生体分子特異的認識試薬に結合することができるさらなる生体分子特異的認識分子のいずれを標識し、そして投与し、故にFRS−2の、変異体の、またはそのフラグメントのリン酸化形態の検出が可能になる。
【0114】
(B6) 本発明の別の好ましい態様は、生体分子特異的認識試薬が抗ホスホチロシン抗体である(B6)の方法に関する。
【0115】
(B7) 本発明の別の好ましい態様は(B1)から(B6)のいずれか1つによる方法に関し、ここでホスホチロシンを含むFRS−2、ホスホチロシンを含むその変異体またはそのホスホチロシン含有フラグメントを、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻止に対する感受性を示す細胞の指標となるバイオマーカーとして使用し、そして好ましくは該FRS−2、変異体またはそのフラグメントにおけるチロシンリン酸化の存在または量を決定するために抗ホスホチロシン抗体の形態の生体分子特異的認識試薬を使用することを含む。
【0116】
(B8) 本発明の別の好ましい態様は(B1)から(B7)のいずれか1つによる方法に関し、ここでFGF−Rシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性のある細胞をFGF−Rと非依存的に増殖するかかる細胞から区別し、特にここでFGF非依存的な、さらに特に構成的なFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化、特にチロシンリン酸化が見出される。
【0117】
(B9) 本発明の別の好ましい態様は(B1)から(B8)のいずれか1つによる方法に関し、ここでFRS−2の、変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化の不在は、FGF−Rシグナリングの阻害剤によるFGF−Rシグナリングの阻止が予期されるものではないという証拠と考えられる。
【0118】
(B10) 本発明の別の好ましい態様は(B1)から(B10)のいずれか1つによる方法に関し;
a)FRS−2または変異体またはそのチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬と生物学的試料とを接触させ;そして
b)ホスホチロシン生体分子特異的認識試薬を用いてチロシンのリン酸化状態を決定し;そして
c)リン酸化状態を、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)が関与するシグナリングの阻止に対する感受性および/または症状状態および/または処置の有効性と相関させること;
を含む。
【0119】
(C1) 本発明のさらに好ましい態様は、生物学的試料からの細胞、特に線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性がある細胞または組織または器官の同定において使用するための、FGF−Rまたはその変異体に関する生体分子特異的認識試薬およびFRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬を含むキットに関し、該キットは生物学的試料中のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を、阻止に対するかかる感受性に関するバイオマーカーとして決定するための手段を含み、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性がある細胞または組織または器官からの細胞の同定において使用するための、FRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬(特に抗ホスホチロシン抗体)を、リン酸化状態を決定するための手段として含み、特にFGF−Rシグナリングの活性亢進、さらに特にFGF−Rシグナリングの構成的活性化を決定することを可能にするために、FRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定することを含む。
【0120】
(C2) 本発明の別の好ましい態様は(C1)によるキットに関し、ここでFRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬は抗ホスホチロシン抗体であり、そしてFGF−Rまたはその変異体に関する生体分子特異的認識試薬はモノクローナルまたはポリクローナル抗体である。
【0121】
(C3) 本発明の別の好ましい態様は(C1)または(C2)によるキットに関し、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定するための手段として、リン酸化FRS−2、その変異体またはその(好ましくはリン酸化)チロシン含有フラグメントを認識する、特に結合することができる生体分子特異的認識試薬、特に抗体、さらに特に抗ホスホチロシン抗体;ならびに加えて、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントの少なくとも部分的な精製のための手段として、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを認識する、好ましくは免疫沈降することができる生体分子特異的認識試薬、およびFRS−2、その変異体またはリン酸化そのチロシン含有フラグメントを認識する、特に結合することができる該生体分子特異的認識試薬を同定するための標識を含む。
【0122】
(D1) 本発明の別の好ましい態様は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す細胞(特に生物学的試料からの、さらに特に患者からの)、特にFGF−Rシグナリングの活性亢進、さらに特に構成的活性化を示す細胞の同定において使用するための、FRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬に関し、ここで該使用は好ましくは該FRS−2または変異体またはそのフラグメントのリン酸化状態を決定することを含み;ここで調整の不在下でのリン酸化の所見は、好ましくは該阻止に対する感受性を予期できることを意味する。さらに好ましくは、生体分子特異的認識薬はFGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答する患者の症状の同定において使用するためである。
【0123】
(D2) 本発明の別の好ましい態様はFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化を示す細胞の同定において使用するための(D1)による生体分子特異的認識試薬に関する。
【0124】
(D3) 本発明の別の好ましい態様は(D1)から(D2)のいずれか1つによる生体分子特異的認識試薬に関し、それはFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を同定することができ、さらに好ましくはそれは抗ホスホチロシン抗体である。
【0125】
(E1) なお本発明のさらに好ましい態様は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整に感受性がある細胞または組織からの細胞の同定のための診断薬の製造のための、リン酸化FRS−2または変異体またはそのチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬の使用に関し、該同定はFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定することを含み、ここで生体分子特異的認識試薬はFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を決定することができ、さらに好ましくは抗ホスホチロシン抗体である。
【0126】
(E2) 本発明の別の好ましい態様は、FGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化を示す細胞を同定するための(E1)による使用に関する。
【0127】
(F1) 本発明のなお別の好ましい態様は、FGF−Rシグナリングを調整する化合物の同定に有用な細胞を同定するための、リン酸化FRS−2、その変異体またはそのフラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬の使用に関し、ここで生体分子特異的認識試薬はFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を同定することができ、さらに好ましくは抗ホスホチロシン抗体である。
【0128】
(F2) 本発明の別の好ましい態様は(F1)による使用に関し、公知のFGF−Rシグナリングの阻害剤の不在下および存在下でFRS−2、変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化の程度を比較することを含み、阻害剤の存在下でのリン酸化の低下は細胞がその他の阻害剤を同定するのに有用であることを示している。
【0129】
(G1) 別の好ましい態様では、本発明は増殖のためのFGF非依存的、特に構成的FGF受容体活性化を必要として増殖し、そしてFGF−Rシグナリングの阻止に応答する細胞同定するための方法に関し;
a)単離された細胞または組織の試料をFGF−R阻害剤の不在下で培地に、そして並行試料をFGF−R受容体阻害剤の存在下、FGFの不在下で付し;
b)該試料からFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを少なくとも部分的に精製し;
c)該試料中のFRS−2のリン酸化状態を決定し;そして
d)処理された試料中のリン酸化状態を、阻害剤で処理されていない試料中のものと比較することを含み、阻害剤の存在下でのリン酸化の低下は、阻害剤を同定するのに適切である細胞が、FGF−Rシグナリングの活性亢進を含む症状の処置に有用であることを示しており;
ここで工程c)におけるリン酸化状態の決定を、FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を同定することができる生体分子特異的認識試薬により、さらに好ましくは抗ホスホチロシン抗体により行う。
【0130】
(H1) 本発明のさらに好ましい態様は、FGF−R依存的シグナリングの潜在的阻害剤の同定のための、リン酸化FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬を使用する方法またはその使用に関し、該試薬で生物学的試料からのFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定することを含み、そしてリン酸化の所見の場合には、被験化合物の存在下でのリン酸化の程度を、その不在下のものと比較して、リン酸化の低下はFGF−R依存的シグナリングの阻害剤としての被験化合物の有用性を示し、ここで生体分子特異的認識試薬はFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を同定することができ、さらに好ましくは抗ホスホチロシン抗体である。
【0131】
(H2) 本発明の別の好ましい態様はH1による方法または使用に関し、ここで生物学的試料はFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF−R非依存的活性、さらに特に構成的活性を示す。
【0132】
(I1) 本発明のさらに好ましい態様はFGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答する疾患を診断する方法に関し、患者からの生物学的試料中のFRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を同定することを含み、ここで好ましくはFRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬、特に抗ホスホチロシン抗体を用いて同定を行う。
【0133】
(I2) さらに好ましいのは、患者から採取された生物学的試料中のFGF−Rシグナリングの活性亢進、特にFGF非依存的活性化、さらに特に構成的活性化の同定における(I1)による方法であり、それは好ましくは、特にEGFまたはその他のFGF−Rシグナリングの活性化剤の不在下でも、チロシン−リン酸化FRS−2、その変異体またはチロシン部分を含むそのフラグメントを同定することにより示される。
【0134】
前記および後記の態様の全てにおいて、リン酸化の欠如を示すことは、好ましくはFGF−Rシグナリングの阻止に応答しないであろうと予期され得る生物学的試料からの細胞を同定し、したがって例えばかかる試料中の得られた細胞または組織による症状を有する患者、したがってFGR−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答しない、したがってそれを受け入れられない患者を同定し、それによりかかる阻害剤を含む処置スケジュールに不必要に曝すことを回避することを可能にするために提供されるが、他方では特に好ましくは構成的な(例えばFGFまたはその他のFGF−Rシグナリング活性化剤の不在下にも関わらないことを意味する)FRS−2、その変異体またはチロシン部分を含むそのフラグメントの(特にチロシン)リン酸化を示し、そして特にFGF−Rシグナリングの阻害剤に応答し(阻害剤の存在下でチロシンリン酸化が減じられたことを示す生物学的試料)、したがって薬物としてFGF−Rシグナリングの阻害剤を用いる処置に応答すると考えることができる患者をその患者から採取された生物学的試料に基づいて同定することを可能にする。
【0135】
最も好ましいのは、FGF−Rシグナリングの阻止に利用可能であるはずのFGF−Rシグナリングのモジュレーター、特にFGFの不在下での、生物学的試料中のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントにおけるチロシンリン酸化の陽性の同定(これは細胞がFGF−Rシグナリング活性(例えば活性亢進または構成的活性)を示すことを意味するので)に関する本発明による全ての態様である。
【0136】
阻害剤が処置する症状に有利な影響を及ぼすと予期され得る場合、各々の患者からの生物学的試料は、処置の間に患者のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化の程度が減じられたことを示すであろう。これは好ましい状況である。しかしながら逆もまた同様であり、活性化剤が処置されるべき症状に有利な影響を及ぼすと予期され得る場合、各々の患者からの生物学的試料は、処置の間に患者のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化の程度が増大されたことを示すであろう。
【0137】
非常に好ましいのは、実施例において提示された方法および構成要素、ならびに本発明の方法または使用の1つにおいて使用するためのそこで言及された抗体である。
本発明はまた要旨の内容にも関し、それ故にそれを出典明示により本明細書の一部とする。
【0138】
以下の実施例は本発明を説明するために提供され、その範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0139】
細胞系におけるFRS−2のリン酸化を識別するための免疫沈降およびウェスタンブロット
1 方法
1.1 細胞系および細胞培養条件
(ATCC:American Type Culture Collection, LGC Promochem GmbH, Mercatorstr. 51, Wesel, Germany またはhttp://www.lgcpromochem-atcc.com/を介して利用可能;
DSMZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH=German Collection of Microorganisms and Cell Cultures, Braunschweig, Germany)。
【0140】
RT112:原発性膀胱癌から樹立されたヒト膀胱移行上皮癌、組織学的等級G2、段階は記録されていない(Masters et al., Cancer Res. 46:3630-6(1986))。細胞をDSMZ ACC#418から入手する。
RT4:再発性膀胱癌から樹立されたヒト膀胱移行上皮癌、組織学的等級G1、段階T2(Masters et al., loc. cit. (1986))。細胞をATCC #HTB-2から入手する。
VMCUB−1:原発性膀胱癌から樹立されたヒト膀胱移行上皮癌。段階および組織学的等級は記録されていない(Masters et al., loc. cit. (1986))。細胞をDSMZ ACC#400から入手する。
J82:原発性膀胱癌から樹立されたヒト膀胱移行上皮癌、組織学的等級G3、段階T3(Masters et al., loc. cit. (1986))。細胞をATCC #HTB-1から入手する。
HT1197:再発性膀胱癌から樹立されたヒト膀胱移行上皮癌、組織学的等級G4、段階T2(Masters et al., loc. cit. (1986))。細胞をATCC #CRL-1473から入手する。
1%L−グルタミン(Amimed #5-10K00-H)、1%MEM NEAA(MEM非必須アミノ酸溶液)(Amimed #5-13K00-H)、1%ピルビン酸Na(Amimed #5-60F00-H)および10%FCS(Gibco, Invitrogen AG, Basel, Schweiz, #10082-147)を補充したMEM EBS(Earls Basal Saltsを含む最小必須培地)(Amimed, Allschwil, Switzerland, #1-31F0-I)中で膀胱癌細胞系を成長させる。
【0141】
SUM52:乳癌患者からの胸水検体から誘導されたヒト乳癌細胞系(Ethier et al., Cancer Res. 56:899-907(1996);Forozan et al., Br. J. Cancer 81:1328-34(1999))。細胞系はDr. N Hynes(Friedrich Miescher Institute, Basel, Switzerland)から提供される。
1%L−グルタミン(Amimed #5-10K00-H)、2%FCS(Gibco #10082-147)、0.1%BSA(Gibco #15260-037)、10mM HEPES(Gibco #15630-56)、10μM T3(Sigma, Sigma−Aldrich, Inc., St. Louis, MO, USA, #T6397)、1μg/mlヒドロコルチゾン(Sigma #H0888)、インスリン−トランスフェリン−セレン−xサプリメント(Gibco #51500-056)を補充したHAM'S F12(Amimed #1-14F01-I)中でSUM52細胞を成長させる。
【0142】
OPM2およびKMS11:終末期疾患患者から誘導されたヒト多発性骨髄腫(MM)細胞系。OPM2細胞をDSMZ ACC#50から入手する。
KMS11細胞はDr. T Otsuki(Kawasaki Medical School, Okayama, Japan)から提供される。双方の細胞系はt(4,14)転座を担持し、そしてFGF−R3の変異した、構成的に活性化された形態を発現することが報告されている。とりわけ、OPM2細胞はキナーゼドメインのATP結合ポケットに変異を宿し、その結果650位置のリジンのグルタミン酸への変化を招く。KMS11細胞は受容体の細胞外ドメインに変異を宿し、373位置のチロシンをシステインに変化させる。1%L−グルタミン(Amimed #5-10K00-H)および20%FCS(Gibco #10082-147)を補充したRPMI1640(Gibco #21875)中で双方の細胞系を成長させる。
【0143】
1.2 抗体
この報告で使用された抗体を表1に列挙する:
【表1】

WB:ウェスタンブロット;
IP:免疫沈降;
P−tyr:ホスホチロシン
Santa Cruz:Sant Cruz Biotechnology, Inc.
Upstate Biotechnology:Upstate Biotechnology, Inc.、現在 Millipore Corp., Billerica, MA, USAの一部。
Cell Signaling: Cell Signaling Technology, Inc., Boston, MA, USA.
Amersham:Amersham plc, Buckinhamshire, United Kingdom、現在GE Healthcareの一部。
【0144】
1.3 FGF−R阻止化合物
Parke DavisからのFGF−R特異的阻害剤、PD173074(本明細書では阻害剤1とも称される)(Mohammadi et al., EMBO J. 17:5896-5904参照)、その特異性および効力を確認する。それは式:
【化1】

を有する。
【0145】
ChironからのFGF−R阻害剤、TKI258/CHIR258(本明細書では阻害剤2とも称される)、それのFGFR1、FGFR2およびFGFR3に対する活性を確認する。それは式:
【化2】

を有する。
【0146】
1.4 免疫沈降/WB
プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する1%Triton 抽出バッファー(「溶解バッファー」50mM Tris pH7.5、150mM NaCl、1mM EGTA、5mM EDTA、1%Triton、2mM バナジウム酸Na、1mM PMSFおよびプロテアーゼ阻止カクテル(Hoffmann−LaRoche, Basel, Switzerland, #1187358001))中で細胞を可溶化する。ライゼートを12000×gで15分間の遠心により清澄化し、そしてDCタンパク質アッセイ試薬(Bio Rad, Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercules, CA, USA, #500-0116)(Coomassie Blue(登録商標)(ICI)を用いるBradford, M.の方法に基づくアッセイ、Anal. Biochem., 72:248(1976)参照)および標準ウシ血清アルブミン(BSA)を用いてタンパク質濃度を決定する。
【0147】
等量のタンパク質を図の説明文において示される抗体1μgと共に氷上で2時間インキュベートすることにより免疫沈降を実施する。プロテインA−またはプロテインG−セファロース(Sigma, #P-9424; Sigma, #P-3296)を用いて免疫複合体を収集し、そして溶解バッファーで3回洗浄する。2×試料バッファー(20%SDS、20%グリセロール、160mM Tris pH6.8、4%β−メルカプトエタノール、0.04%ブロモフェノールブルー)中で沸騰させることにより結合タンパク質を放出させる。
【0148】
試料(全細胞ライゼートまたは免疫複合体)をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供し、そしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜にブロットする。一次抗体を添加する前に、α−FGF−R3(抗FGF−R3抗体、「α−X」は一般的には抗X抗体を表し、Xは抗体の標的を表す)、サイクリンD1もしくはチューブリンウェスタンブロットの事例では、ろ液を20%ウマ血清(inVitromex, Geilenkirchen, Germany; #S092I)または、5%乳で遮断する。SuperSignal(登録商標)West Dura Extended Duration Substrate 検出系(Pierce, Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, USA; #34075、ルミノールおよび光度に関するエンハンサーを含む)を用いて、ペルオキシダーゼ結合抗マウスまたは抗ウサギABでタンパク質を可視化する。62.5mM Tris−HCl pH6.8;2%SDS;1/125 β−メルカプトエタノール中、60℃で30分、膜を取り除く。
【0149】
2 結果
2.1 増殖に関してFGF−Rシグナリングに依存的な癌細胞系においてFRS−2はチロシンリン酸化される
FRS−2はFGF−Rの基質であるので、耐性細胞系と対比して、FGF−R阻害剤に対して感受性があり、そして恐らく高いFGF−R活性を有する細胞系においてFRS−2のホスホチロシンレベルを試験した。
【0150】
膀胱癌細胞系RT4およびRT112、多発性骨髄腫系OPM2およびKMS11、ならびに乳癌系SUM52はFGF−R類のいずれかに依存的であり、そしてその成長は阻害剤1および/または阻害剤2により阻止される。逆に、膀胱癌系J82、VMCUB1またはHT1197は阻害剤1による、および阻害剤2による阻止に対して抵抗性である。詳細には、FGF−R1、FGF−R2およびFGF−R4発現を各々特異的抗体:sc−121(Santa Cruz)、sc−122(Santa Cruz)およびsc−124(Santa Cruz);を用いてウェスタンブロットにより決定する。FGF−R3の発現を決定するために、最初にFGF−R3を抗体F−0425(Sigma)で免疫沈降し、そして免疫複合体を抗体F−0425(Sigma)を用いるウェスタンブロットに供する。96ウェルプレートで細胞増殖を測定する。前記で与えられた成長培地中ウェルあたり100μlの容量で細胞を播種する。RT112、RT4およびSUM52に関しては、8500セル/ウェルを播種し、VMCUB1、J82、HT1197およびKMS11に関しては、5000セル/ウェルを播種し、OPM2に関しては、30000セル/ウェルを播種する。各々播種後24時間にFGF−R阻害剤1、FGFR阻害剤2または(対照として)DMSOを含有する培地を添加する。72時間後、グルタルアルデヒド(20%)25μl/ウェルの添加により、室温(RT)で10分間細胞を固定する。次いで細胞をHO 200μl/ウェルで2回洗浄し、そしてメチレンブルー(0.05%)100μlを添加する。RTで10分間のインキュベーションの後、細胞をHO 200μl/ウェルで3回洗浄する。HCl(3%)200μl/ウェルを添加し、そしてプレートシェーカーでRTで30分間のインキュベートした直後に光学密度(OD)を650nmで測定する。50%の増殖阻止を提供する阻害剤1の濃度をExcel モジュールを用いて計算する。結果を表2にまとめる。
【0151】
示された細胞系の各々に関してFGF−R依存性ならびに阻害剤1および/または阻害剤2に対する感受性を前記で示したように特徴付けする。細胞生存性に及ぼす阻害剤1および阻害剤2の影響を増殖アッセイにより評価する;示されたIC50はいくつかの独立したアッセイのIC50の平均である(その数をNで与える)。
【0152】
【表2】

SD:標準偏差
ND:決定されなかった
FRS−2ホスホチロシンレベルは、FGF−R阻害剤に対して感受性のある全ての細胞系で上昇するが、抵抗性細胞系J82、HT1197、VMCUB1では検出されないか、または非常に低い(図1)。
【0153】
2.2 FGF−R阻止はFRS−2チロシンリン酸化を遮断する
特異的FGF−R−阻害剤、阻害剤1およびFGF−R阻害剤、阻害剤2は、その化合物により成長阻止されることが示されている癌細胞系においてFRS−2チロシンリン酸化を無効にする。この結果により、これらの細胞系では、FGF−RがFRS−2のリン酸化の原因となることが示される(図2)。
示された癌細胞系を図2の説明文および図2において示されるように処理する。注:FRS−2タンパク質はしばしば、MAPKによるセリン/スレオニン残基のリン酸化により引き起こされる異なる電気泳動移動度シフトを示す(Lax et al. (2002))。
【0154】
2.3 EGF−RまたはINS−RリガンドではなくFGF−RによりFRS−2リン酸化が誘起される
FGF−Rに関係しない他のRTKの活性化もまたFRS−2リン酸化を調整し得るかどうかを試験する。EGFおよびインスリンはRT112細胞におけるMAPKを活性化するが、しかしながらホスホFRS−2を誘起することはできない。同様にEGFはRT4細胞においてpMAPKを強く誘起するが、ホスホFRS−2を誘起しない。予期されるように、aFGFはその細胞系においてFRS−2ホスホチロシンを効率的に増大させる(図3)。
【0155】
3 考察
FRS−2はFGF−Rファミリーメンバーの下流基質であり、そしてFGF−Rシグナル伝達に関与する複数のタンパク質に関するドッキング分子として非常に重大な役割を果たすことが示されている。
ホスホFRS−2の著明なレベル上昇を提示し、そしてFGF−R阻止に対して非常に感受性が高いヒト癌細胞系のパネルを同定し、それはこれらの系における活性なFGF−R−FRS−2シグナリングを示唆している。これを支持して、特異的FGF−R阻害剤、阻害剤1はFRS−2リン酸化を完全に阻止する。加えてFGF−Rリガンド、aFGFのみがFRS−2リン酸化をさらに増大させることができるが、EGF−RまたはINS−Rリガンドはできない。
【0156】
故にこれらの結果によりホスホFRS−2が細胞型、特に患者の細胞型、ならびにしたがって構成的FGF−Rシグナリングを有する、およびFGF−R阻害剤に応答する潜在力を有する患者集団を選択するためのバイオマーカーとして有用であることが支持される。
さらに阻害剤を用いる実験のためのその有用性に関して細胞系を選択することが可能であり、故に潜在的薬物のスクリーニングのための適切な試験系を確立することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対する感受性を示す細胞の同定であって、生物学的試料中のFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはチロシン含有フラグメントのリン酸化状態をかかる阻止に対する感受性に関するバイオマーカーとして決定することを含む、方法。
【請求項2】
FRS−2のチロシンのリン酸化状態をバイオマーカーとして使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モジュレーターの不在下でのFRS−2またはその変異体における特にチロシンのリン酸化の陽性の所見を線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻止がシグナリングに影響を及ぼす、特にシグナリングを阻止するために有効であり得ることの指標として使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
阻害剤の投与に対して応答する細胞を同定するために線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの阻害剤の存在下および不在下でインキュベートした後の生物学的試料中のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を比較し、ここでリン酸化の阻止の所見はかかる応答が予期されるはずである指標と見なす、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
FGF−Rまたは変異体なる用語が、依然、1種以上の線維芽細胞増殖因子への好ましくは解離定数が10−3もしくはそれより強い、さらに好ましくは10−5もしくはそれより強い、なおさらに好ましくは10−7もしくはそれより強い結合のために活性であるか、または好ましくは構成的に活性であり、FRS−2をリン酸化して抗ホスホチロシン抗体で証明できる、そのホスホチロシン形態を生じることができ、そしてFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3またはFGF−R4の各々のうちの1つと比較した場合、70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも85%以上同一、なおさらに好ましくは90%以上同一、その上さらに好ましいのは95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一である配列を含む、好ましくはそれからなるFGF−Rの全てのこれらの形態または変異体を含み、そしてここでFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントなる用語はFRS−2αまたはFRS−2βまたはそのホスホチロシン含有フラグメントに70%以上同一、さらに好ましくは少なくとも約85%以上同一、なおさらに好ましくは約90%以上同一、その上さらに好ましいのは約95%以上同一、非常に好ましいのは98%以上同一であるFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3および/またはFGF−R4、特にFRS−2変異体に依然結合することができるFRS−2のこれらの形態を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
FRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを少なくとも部分的に精製し、そして次にFRS−2の、変異体の、またはそのフラグメントのリン酸化形態、特にそこに包含されるホスホチロシンを認識することができる生体分子特異的認識試薬でリン酸化、特にチロシンリン酸化の存在または量を決定することを含み、ここで該生体分子特異的認識試薬または、該生体分子特異的認識試薬に結合することができる投与されるさらなる生体分子特異的認識分子のいずれかを標識し、そして投与し、故にFRS−2の、変異体の、またはそのフラグメントのリン酸化形態の検出を可能にする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ホスホチロシンを含むFRS−2、ホスホチロシンを含むその変異体またはそのホスホチロシン含有フラグメントを、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す細胞の指標となるバイオマーカーとして使用し、そして該FRS−2、変異体またはそのフラグメントにおけるチロシンリン酸化の存在または量を決定するために好ましくは抗ホスホチロシン抗体の形態の生体分子特異的認識試薬を使用することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
FRS−2中のホスホチロシンを認識することができる生体分子特異的認識試薬を用いて生物学的試料からのFRS−2におけるその変異体における、またはそのチロシン含有フラグメントにおけるリン酸化チロシンの存在を決定することを含み、リン酸化の陽性の所見は活性亢進性の、特に構成的に活性化されたFGF−Rシグナリングを示す活性亢進性の、特に構成的に活性化されたFGF−Rシグナリングを示し、特にFGF−Rまたはその変異体の阻害剤で処置でき、そしてかかる阻害剤に応答する細胞、組織または器官に関するバイオマーカーとしてFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントにおけるリン酸化同定を使用する、方法またはその使用。
【請求項9】
さらにFGF−Rまたはその変異体が関与するシグナリングの阻害剤に対して応答性である細胞または組織または器官を、非応答性であるかかる細胞または組織または器官から区別するためにFGF−Rまたはその変異体により媒介されるシグナリングの阻害剤の不在下および存在下のチロシンリン酸化状態を比較することを含み、阻害剤の存在下でのチロシンリン酸化の低下はかかる応答性を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料中のFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を阻止に対するかかる感受性に関するバイオマーカーとして決定するための手段を含む、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性がある生物学的試料からの細胞の同定において使用するための、FGF−Rまたはその変異体に関する生体分子特異的認識試薬およびFRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬を含む、キット。
【請求項11】
線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性がある細胞または組織または器官からの細胞の同定において使用するために、リン酸化状態を決定するための手段としてFRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態(特に抗ホスホチロシン抗体)を認識することができる生体分子特異的認識試薬を含み、特にFGF−Rシグナリングの活性亢進、さらに特にFGF−Rシグナリングの構成的活性化を決定することを可能にするために、FRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定することを含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整、特に阻止に対して感受性を示す細胞、特にFGF−Rシグナリングの活性亢進、さらに特に構成的活性化を示す細胞の同定において使用するためのFRS−2の、または変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬。
【請求項13】
同定がFGF−R基質2(FRS−2)、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化状態を決定することを含む、線維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)またはその変異体が関与するシグナリングの調整に感受性がある生物学的試料からの細胞または組織からの細胞の同定のための診断薬の製造のためのリン酸化FRS−2または変異体またはそのチロシン含有フラグメントを認識することができる生体分子特異的認識試薬の使用。
【請求項14】
生体分子特異的認識試薬はFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を同定することができ、さらに好ましくは抗ホスホチロシン抗体である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
a)単離された細胞または組織の試料をFGF−R阻害剤の不在下で培地に、そして並行試料をFGF−R受容体阻害剤の存在下、FGFの不在下で付し;
b)該試料からFRS−2、その変異体またはそのチロシン含有フラグメントを少なくとも部分的に精製し;
c)該試料中のFRS−2のリン酸化状態を決定し;そして
d)処理された試料中のリン酸化状態を、阻害剤で処理されていない試料中のものと比較することを含み、阻害剤の存在下でのリン酸化の低下は、阻害剤を同定するのに適切である細胞が、FGF−Rシグナリングの活性亢進を含む症状の処置に有用であることを示す;
増殖のために特に構成的なFGF受容体活性化を必要として増殖し、そしてFGF−Rシグナリングの阻止に応答する細胞を同定するための方法。
【請求項16】
患者からの生物学的試料中のFRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのリン酸化形態を同定することを含む、FGF−Rシグナリングの阻害剤での処置に応答する疾患を診断する方法。
【請求項17】
FRS−2の、その変異体の、またはそのチロシン含有フラグメントのチロシンリン酸化形態を認識することができる生体分子特異的認識試薬、特に抗ホスホチロシン抗体を用いて同定を行う、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−518869(P2010−518869A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551182(P2009−551182)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052271
【国際公開番号】WO2008/104523
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】