説明

締固め度測定装置及び締固め度測定方法

【課題】 コンクリート等や土の締固め作業をしながらリアルタイムに、且つ容易に締固め度を判断することができる締固め度測定装置および締固め度測定方法の提供。
【解決手段】 締固め度測定装置は、転圧ローラー11を備えた締固め装置10に、コンクリート、モルタルあるいは土に接触するように連設した板体13と、この板体の上に設けた弾性波測定手段12と、この弾性波測定手段からのデータを演算処理する演算手段とを備える。また、締固め度測定方法は、板体を締固め装置に連設すると共に、コンクリート、モルタルあるいは土に接触するように配置し、板体上に弾性波測定手段を設け、締固め装置でコンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、弾性波測定手段により、コンクリート、モルタルあるいは土が発生する弾性波を測定し、この弾性波によってコンクリート、モルタルあるいは土の締固め度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、締固め度測定装置に関し、詳細には、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル、あるいは土の締固め度の測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】打設後のコンクリートまたはモルタル(以下、「コンクリート等」という。)は、締め固めが不足すると、充分な圧縮強度が得られないといった障害が発生するため、様々な方法によって締固めを行っており、例えば、ダム建設のRCD工法においては、振動ローラーを使用して締固めを行っている。
【0003】しかしながら、振動ローラーでコンクリート等の締固めを行っても、締め固め作業中、どの程度まで締め固まっているか、リアルタイムで判らないために振動ローラーの転圧回数が過不足することがあり、これによって、一定の締固め度が得られず、コンクリート等の品質が低下したり、あるいは不均一になることがある。
【0004】そのため、締固め度測定方法の一つとしてRI法と称される方法が提案されており、これによってコンクリート等の品質低下や品質不均一を防止している。このRI法とは、放射線発生端子を締固め後のコンクリート等に埋め込み、放射線測定部をコンクリート等の表面に設置し、コンクリート等を透過する放射線量を測定して、締固め度を判定する方法である。
【0005】なお、以上のような振動ローラーは土の締固め作業、例えば造成地や交通施設等の盛土の締固め作業においても使用されており、RI法が同様に、その締固め度測定のために使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ダムのRCD工法で用いるコンクリートは、最初からスランプ0cmというように固く練り混ぜられており、締め固めの際には、振動ローラーで転圧されてさらに固く締め固められる。したがって、RI法をダムのRCD工法に適用する場合、RCD用コンクリート中に放射能発生端子を埋め込むのに非常な労力が必要になる。そのため、振動ローラーでRCD用コンクリートを転圧しながら、締め固め度を測定するには、測定点当り5〜10分程度の時間を要し、施工範囲が広い場合には、多大な測定時間が必要となるといった問題点がある。この問題点は、盛土の締固め度測定においても同様である。
【0007】本発明は前記問題点を解決せんとしたものであり、その目的は、コンクリート等や土の締固め作業をしながらリアルタイムに、且つ容易に締固め度を判断することができる締固め度測定装置および締固め度測定方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的に鑑みてなされたものであり、その要旨は、転圧ローラーを備えたコンクリート、モルタルあるいは土の締固め装置において、コンクリート、モルタルあるいは土に接触するように連設した板体と、この板体の上に設けた弾性波測定手段と、この弾性波測定手段からのデータを演算処理する演算手段とを備える締固め度測定装置にある。
【0009】また本発明の別の要旨は、転圧ローラーを備えたコンクリート、モルタルあるいは土の締固め装置に板体を連設すると共に、板体をコンクリート、モルタルあるいは土に接触するように配置し、前記板体の上に弾性波測定手段を設け、締固め装置でコンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、前記弾性波測定手段によって、コンクリート、モルタルあるいは土が発生する弾性波を測定し、この弾性波によってコンクリート、モルタルあるいは土の締固め度を判定する締固め度測定方法にある。
【0010】本発明の締固め度測定装置及び締固め度測定方法において、測定対象となるコンクリートは、骨材、セメント、水及び混和剤等のコンクリート構成材料が互いに十分結合されておらず、まだ固まらない状態のコンクリートであれば良く、ミキサで練り混ぜられたばかりの状態から、セメントの水和反応が進み、コンクリート構成材料が一体となった硬化コンクリートに近い状態までのものを含む。またモルタルとは、上記コンクリートと同様に、モルタル構成材料が互いに十分結合されておらず、まだ固まらない状態のものをいう。
【0011】また、本発明の締固め度測定装置及び締固め度測定方法において、弾性波測定手段とは、例えば、機械的振動を電気信号に変換する圧電素子を備える、「AEセンサー」と呼ばれるセンサーを使用することができる。かようなAEセンサーによって、コンクリート、モルタルあるいは土が締固められる時に発生する弾性波(AE:アコースティックエミッション)、すなわち、コンクリート、モルタルの構成材料の骨材、セメント、水あるいは混和剤等が相互に衝突や摩擦して発生する超音波領域の弾性波、または、セメントの水和反応でコンクリート構成材料が一体となって硬化する際に発生する超音波領域の弾性波、あるいは土そのものが圧縮されるときに発生する超音波領域の弾性波、もしくは、コンクリートや土に接地した板体の振動に伴う弾性波を測定することができる。
【0012】さらに、本発明の締固め度測定装置において、演算手段は、AEセンサーの測定値を解析して、AEカウント、AE包落線検波(ヒット数、エネルギー、継続時間、立上り時間、及び最大振幅)等の様々なAEパラメーターを求めることができれば良く、例えば、慣用のパーソナルコンピューターを使用することができる。
【0013】更にまた、本発明の締固め度測定装置及び締固め度測定方法において、板体とは、この板体をコンクリート、モルタルあるいは土に接触するように配置した際に、締固め時に発生する弾性波が、これら接触面から表面まで良好に伝導することができる部材であれば良く、例えば鋼板等の金属性の板を採用することができる。かような鋼板の両端部をスキー板先端部のように湾曲させれば、この板体を締固め中のコンクリート、モルタルあるいは土の上で引き摺っても、弾性波測定手段の設けられた板体の表面に、コンクリート等が乗り上がることが無く、安定した測定値を得ることができる。
【0014】また、本発明の別の要旨は、予め、コンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、これらコンクリート、モルタルあるいは土から発生する弾性波および締固め度を実測して、これら弾性波の解析データと締固め度との回帰式を求め、以後、締固め作業を行ないながら弾性波を測定すると共に弾性波解析データを求め、この弾性波解析データを前記回帰式に代入して締固め度を算出する締固め度判定方法にある。
【0015】本発明の締固め度判定方法において、測定対象となるコンクリート、モルタルおよび土は上記と同様であり、また、コンクリート、モルタルあるいは土から発生する弾性波も、上記と同様である。さらに、弾性波解析データとは、弾性波から算出した、AEカウント数、AE包落線検波(ヒット数、エネルギー、継続時間、立上り時間、及び最大振幅)等の様々なAEパラメーターを含む。更にまた、コンクリート、モルタルあるいは土の締固め度は、表面型RI密度計により測定した実測密度、または、この実測密度を理論密度で除した密度比とすることができ、さらに、土の場合には試験によって最大乾燥密度を予め求めておくと共に、RI密度計によっても密度を求め、この密度を最大乾燥密度で除した値を締固め度としても良い。
【0016】
【作用】本発明の締固め度測定方法では、弾性波測定手段を設けた板体を締固め装置に連設し、締固め装置でコンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、弾性波測定手段によって、コンクリート、モルタルあるいは土が発生する弾性波を測定する。コンクリート、モルタルあるいは土は、締め固められるにしたがって、混練している空気が抜けて、徐々に密実さを増していく。かように密実さが増していくと、コンクリート、モルタルあるいは土の中は、弾性波が均等に伝わりやすくなり、測定される弾性波のAEヒット数、AEカウント数、AEエネルギー等の様々なAEパラメーターも変化する。したがって、予め、弾性波のAEパラメーターと、コンクリート、モルタルあるいは土の締固め度との関係を求めておくことによって、建設施工現場でコンクリート、モルタルあるいは土の締固め度をリアルタイムに判定することができる。
【0017】また、本発明の締固め度判定方法では、上記締固め度測定方法のように、弾性波のAEパラメーターを求め、このAEパラメーターと実測締固め度との回帰式を求め、以後、締固め作業を行ないながら弾性波を測定してAEパラメーターを算出すると共に、このAEパラメーターを回帰式に代入して締固め度を算出する。
【0018】
【実施例】以下に、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。本発明の締固め度測定装置は、進行方向前後に振動転圧ローラー11を備えた締固め装置10に連設した鋼板13と、この鋼板13の上に設けた弾性波測定手段としてのAEセンサー12と、このAEセンサー12からのデータを演算処理するためにAEセンサー12に接続された演算処理装置(図示せず)とを主要部として備える。
【0019】ここで、鋼板13は100〜400mm程度の厚さで、縦×横が250×550mm程度の鋼板を使用し、その進行方向の前後端部をスキー板先端部のように湾曲させて形成し、この鋼板13を前後の転圧ローラー11間でコンクリート、モルタルあるいは土に接触するように配置し、車体下面の部材に索条体14等の連結部材によって連結固定する。
【0020】また、演算処理装置はCPU、ROMおよびRAMを含む構成とし、このROMには、AEセンサーの測定値を解析して、AEカウント、AE包落線検波(ヒット数、エネルギー)等のAEパラメーターを求めるプログラム、および密度比とAEパラメーターとの回帰式を予め記憶させ、この回帰式によって、締固め度を判定することができる構成とする。ここで、密度比とは表面型RI密度計による実測密度を理論密度で除した値をいい、締固めが行なわれるにしたがって増加するものである。また、回帰式は例えば、y=ax+b(y:密度比、x:AEパラメーター、a,b:変数)とすることができる。かような構成の演算処理装置では、AEセンサーの実測値からAEパラメーターを求め、このAEパラメーターを回帰式に代入して密度比を求め、この密度比が所定値以上であれば締固め充分であると判定し、密度比が所定値以下であれば締固め不充分であると判定する。
【0021】さらに、締固め装置10には、上記演算処理装置に接続してディスプレイ16を設け、上記回帰式から求めた密度比、この密度比から求めた締固め度の段階的評価、あるいは締固め充分/不充分をこのディスプレイ16に表示する構成とする。かような構成によって、締固め装置10を操作する作業員はディスプレイ16を見ることで、リアルタイムにコンクリート、モルタルあるいは土の締固め度を知ることができ、したがって、振動転圧ローラーの転圧回数が過不足して、コンクリートやモルタルの構造物あるいは盛土の品質が低下したり、あるいは不均一になったり、さらには、必要以上に転圧して施工時間を無駄にすることを防止できる。
【0022】次に、上記締固め度測定装置を備えた締固め装置10により、締固めを行ないながらAEカウントやAE包落線検波(ヒット数、エネルギー)といったAEパラメータを測定し、締固め度を判別する方法について説明する。なお、以下に説明する試験は、実際のダム施工におけるRCD用コンクリートに関して行なったものである。
【0023】《転圧回数とAEパラメータとの関係を求めるためのモニタリング試験》コンクリート単位体積当たりのセメント量が120Kg/m3で、コンクリート単位体積当たりの単位水量(以下「W」にて表記する。)が90Kg/m3であるRCD用コンクリートを200m3程度作成し、これを面積166m2程度の範囲に打設し、この範囲を締固め装置10の振動転圧ローラー11で転圧して締め固めながら、その際に生じる弾性波をAEセンサー(日本フィジカルアコースティック(株)製)によって計測した。ここで、AEセンサーは、30〜60kHzの範囲の弾性波を検知することができる60kHz共振型センサーと、100〜200kHzの範囲の弾性波を検知することができる150kHz共振型センサーと、100〜1000kHzの範囲の弾性波を検知することができる1000kHz共振型センサーとを使用し、この三個のAEセンサーを厚さ20mmで自重19kg(接地圧力29.1gf/cm2)の鋼板の上に固定した。
【0024】図2(a)〜(c)では、それぞれ、転圧0回から20回までの一分間当たりのAEヒット数、AEカウント数およびAEエネルギーの計測結果を示す。図2(a)〜(c)では、締固め装置の転圧回数が増加するにしたがってAEヒット数、AEカウント数およびAEエネルギーは減少し、転圧回数が14回以上では三つのAEパラメーターが、ほぼ一定の値を示している。このことから、コンクリートは締め固まるにしたがって、弾性波の発生頻度が減少し、一定以上に締め固まるとAEパラメーターも変化せずに一定値を示すことが判る。また、コンクリートに関する、上記のような転圧回数とAEパラメーターとの関係は、モルタルや土においても同様の傾向を示すことが推定できる。
【0025】《AEパラメータと密度比との関係を求めるモニタリング試験》コンクリート単位体積当たりのセメント量が120Kg/m3で、W=90Kg/m3のRCD用コンクリートを200m3程度作成し、これを面積166m2程度の範囲に打設し、この範囲を転圧して締め固めながら、その際に生じる弾性波をAEセンサーで計測すると共に表面型RI密度計により密度を測定し、この実測密度を理論密度で除して密度比を求めた。ここで、AEセンサーは、100〜1000kHzの範囲の弾性波を検知することができる1000kHz共振型センサーを使用し、このAEセンサーを厚さ20mmで自重19kg(接地圧力29.1gf/cm2)の鋼板の上に固定した。
【0026】図3(a)〜(c)に、AEヒット数、AEカウント数またはAEエネルギーのそれぞれのAEパラメーターと、密度比との計測結果を示した。これら図3(a)〜(c)のグラフからは、密度比が増加するにしたがって、AEヒット数、AEカウント数およびAEエネルギーが減少するといった相関関係があることが判る。したがって、実際の建設作業現場においても、最初にコンクリート及びモルタルの配合条件や、土の締固め度ごとに、(密度比)=a×(AEパラメーター)+b、{a,b:変数}といった密度比とAEパラメーターとの回帰式を求めておけば、以後、締固め作業を行ないながら、コンクリート、モルタルあるいは土から発生する弾性波をAEセンサーで計測し、演算処理装置でAEパラメーターや密度比を算出して締固め度をリアルタイムに判断することができる。
【0027】
【発明の効果】本発明では、締固め装置でコンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、同時に、これらコンクリート等あるいは土から生じる弾性波を測定することができ、この測定した弾性波を解析することによって建設施工現場でコンクリート、モルタルあるいは土の締固め度をリアルタイム且つ容易に判定することができる。
【0028】また本発明では、予め、コンクリート、モルタルあるいは土から発生する弾性波の解析データと締固め度との回帰式を求め、以後、締固め作業を行ないながら弾性波を測定して回帰式で締固め度をリアルタイムに算出することができるため、締固め施工範囲が広い場合でも、従来のRI法のような多大な測定時間を要せず、締固め度を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の締固め度測定装置の側面図である。
【図2】単位セメント量が120Kg/m3で、単位水量が90Kg/m3であるRCD用コンクリートに関する締固め試験結果であって、(a)はAEヒット数と転圧回数とのグラフ、(b)はAEカウント数と転圧回数とのグラフ、(c)はAEエネルギーと転圧回数とのグラフである。
【図3】単位セメント量が120Kg/m3で、単位水量が90Kg/m3であるRCD用コンクリートに関する締固め試験結果であって、(a)はAEヒット数と密度比とのグラフ、(b)はAEカウント数と密度比とのグラフ、(c)はAEエネルギーと密度比とのグラフである。
【符号の説明】
10 締固め装置
11 転圧ローラー
12 AEセンサー(弾性波測定手段)
13 鋼板(板体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 転圧ローラーを備えたコンクリート、モルタルあるいは土の締固め装置において、コンクリート、モルタルあるいは土に接触するように連設した板体と、この板体の上に設けた弾性波測定手段と、この弾性波測定手段からのデータを演算処理する演算手段とを備えた締固め度測定装置。
【請求項2】 転圧ローラーを備えたコンクリート、モルタルあるいは土の締固め装置に板体を連設すると共に、板体をコンクリート、モルタルあるいは土に接触するように配置し、前記板体の上に弾性波測定手段を設け、締固め装置でコンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、前記弾性波測定手段によって、コンクリート、モルタルあるいは土が発生する弾性波を測定し、この弾性波によってコンクリート、モルタルあるいは土の締固め度を判定する締固め度測定方法。
【請求項3】 予め、コンクリート、モルタルあるいは土を締め固めながら、これらコンクリート、モルタルあるいは土から発生する弾性波および締固め度を実測して、これら弾性波の解析データと締固め度との回帰式を求め、以後、締固め作業を行ないながら弾性波を測定すると共に弾性波解析データを求め、この弾性波解析データを前記回帰式に代入して締固め度を算出する締固め度判定方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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