説明

締固め砂杭造成装置及び締固め砂杭造成工法

【課題】従来の締固め砂杭造成装置において、砂杭材料流動化物の使用を可能にする締固め砂杭造成装置および締固め砂杭造成工法を提供すること。
【解決手段】砂杭材料流動化プラントと、砂杭造成用の中空管と、該中空管上部の混合機内蔵のホッパーと、該砂杭材料流動化プラントで製造された該砂杭材料流動化物を該ホッパーに送る圧送ポンプと、該圧送ポンプと該ホッパーとを接続する流動化物供給配管と、塑性化剤供給装置と該ホッパーとを接続する塑性化剤供給配管と、を備える締固め砂杭造成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に締固めた拡径砂杭を適宜のピッチで多数造成して地盤の強化を図る締固め砂杭造成装置および締固め砂杭造成工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008−285810号公報には、砂杭材料流動化プラントと、砂杭造成用の中空管と、該砂杭材料流動化プラントで製造された該砂杭材料流動化物を該中空管に送る圧送ポンプと、該圧送ポンプと該中空管とを接続する流動化物供給配管と、塑性化剤供給装置と該中空管とを接続する塑性化剤供給配管と、を備える砂杭造成装置および地盤改良に用いる砂杭材料に流動化剤を加え、流動化させた地盤改良材を地盤中に注入する過程で、塑性化剤を加え、塑性化した地盤改良材で砂杭を造成する砂杭造成工法がそれぞれ開示されている。また、特開2008−285810号公報には、中空管の近傍で砂杭材料流動化物と塑性化剤を混合する混合機を用いること、更に中空管上部の移動バケットに流動化物を貯めて、そこに塑性化剤を添加し、砂杭を造成することが開示されている。
【0003】
特開2008−285810号公報の砂杭造成装置および砂杭造成工法によれば、既設構造物の直下や直近など砂杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭い砂杭造成区域であっても砂杭の造成をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−285810号公報(請求項1及び4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2008−285810号公報の砂杭造成装置および砂杭造成工法において、砂杭材料流動化物と塑性化剤が混合されて塑性化した砂杭材料となるのは、中空管を通過する途中又は中空管をでたところであり、ホッパー内ではない。これは砂杭材料流動化物と塑性化剤が別々に送られて混合されるため、混合状態が不均一になり易いためであり、実際には、締固め砂杭造成装置を利用することができないものであった。
【0006】
すなわち、本発明の目的は、従来の締固め砂杭造成装置において、砂杭材料流動化物の使用を可能にする締固め砂杭造成装置および締固め砂杭造成工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、締固め砂杭造成装置のホッパー内において、砂杭材料流動化物と塑性化剤を砂杭材料が塑性化するまで混合し、塑性化した砂杭材料、すなわち流動化前の砂杭材料に還すことで、中空管上部への移動バケットが不要な締固め砂杭造成装置が利用できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、砂杭材料流動化プラントと、砂杭造成用の中空管と、該中空管上部の混合機内蔵のホッパーと、該砂杭材料流動化プラントで製造された該砂杭材料流動化物を該ホッパーに送る圧送ポンプと、該圧送ポンプと該ホッパーとを接続する流動化物供給配管と、塑性化剤供給装置と該ホッパーとを接続する塑性化剤供給配管と、を備える締固め砂杭造成装置を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、地盤改良に用いる砂杭材料に流動化剤を加え、流動化させた地盤改良材と塑性化剤を中空管上部のホッパー内で混合して地盤改良材を塑性化し、塑性化した地盤改良材を中空管に通して砂杭を造成する締固め砂杭造成工法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、砂杭材料流動化プラントで製造された砂杭材料流動化物を、圧送ポンプにより配管を通して砂杭造成用施工機のホッパーに送るI工程と、塑性化剤供給装置で製造された塑性化剤を該ホッパーに送るII工程と、該砂杭材料流動化物と該塑性化剤を混合して、該ホッパー内で砂杭材料流動化物を塑性化するIII工程と、当該塑性化した砂杭材料を地中に締固めるIV工程と、を有する締固め砂杭造成工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、汎用の送液ポンプを用いて砂杭材料流動化物を締固め砂杭造成装置のホッパー内に送ることができる。そして、ホッパー内において、砂杭材料流動化物と塑性化剤を砂杭材料が塑性化するまで混合し、塑性化した砂杭材料、すなわち流動化前の砂杭材料に還された砂杭材料を中空管に入れることができる。このため、中空管上部への移動バケットが不要な砂杭材料流動化物を用いた締固め砂杭造成装置の利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】締固め砂杭造成装置の概略図である。
【図2】(A)は砂杭材料の流動化を説明する模式図、(B)は砂杭材料の塑性化を説明する模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次ぎに、本発明の実施の形態における締固め砂杭造成工法及び締固め砂杭造成装置(以下、単に「砂杭造成工法及び砂杭造成装置とも言う。」の一例を図1及び図2を参照して説明する。図1は砂杭造成装置の概略図、図2(A)は砂杭材料の流動化を説明する模式図、(B)は砂杭材料の塑性化を説明する模式図である。
【0014】
砂杭造成装置50は、砂杭材料流動化プラント10と、砂杭造成用の中空管23と、中空管上部の混合機内蔵のホッパー27と、砂杭材料流動化プラント10で製造された砂杭材料流動化物をホッパー27に送る圧送ポンプ4と、圧送ポンプ4とホッパー27とを接続する流動化物供給配管34と、塑性化剤供給装置5とホッパー27とを接続する塑性化剤供給配管35を備える。
【0015】
砂杭材料流動化プラント10は、砂杭造成区域26より離れた場所にあるもので、砂杭材料流動化物を製造する装置群である。砂杭材料流動化プラント10は、例えば砂杭材料流動化物供給手段1、砂杭材料供給手段2、流動化剤供給手段3、砂杭材料移送配管31、流動化剤移送配管32及び砂杭材料流動化物移送配管33からなる。なお、それぞれの供給手段には、必要に応じて、貯留タンクや供給ポンプなど設置される。また、砂杭材料移送配管31、流動化剤移送配管32、砂杭材料流動化物移送配管33のそれぞれの配管途中に流量計を設置してもよい。このような砂杭材料流動化プラント10は、砂杭造成区域26に設置しなくてもよく、既設構造物の直下や直近に砂杭を造成する際の設置スペースを確保する必要がない点で好適である。流動化物供給配管34は、通常可撓性ホースが使用され、その長さは適宜決定されるが、概ね10m以上、200m未満である。
【0016】
砂杭材料としては、従来の砂杭造成工法で使用されてきた公知の材料でよく、砂、シルトや礫を含む砂、砕石及びスラグ等が挙げられる。砂杭材料は、最大粒径が10mm以下であることが好ましく、更に好ましくは、粒径1mm以下の含有率が10〜100%、0.075mm以下(細粒分)の含有率が15%以下、好ましくは10%以下である。砂杭材料の最大粒径が10mmを超えると、大きな粒径の砂杭材料がポンプや配管内で詰まったりし、流動化物の圧送に問題が生じる。一方、細粒分の含有率が多すぎると、十分に締め固まった砂杭ができないため、地盤改良効果が得られない。
【0017】
砂杭材料流動化プラント10は、上記の形態に限定されず、例えば砂杭材料流動化物供給手段1及び砂杭材料流動化物移送配管33を省略し、砂杭材料移送配管31を直接、圧送ポンプ4に接続すると共に、砂杭材料移送配管31に流動化剤移送配管32を接続する形態であってもよい。これにより、砂杭材料と流動化剤を配管内で混合することができる。また、砂杭材料流動化物の製造に際して、更に水の添加が必要である場合には、別途の水供給手段を設置すればよい。
【0018】
圧送ポンプ4は、公知のものが使用でき、例えばピストンポンプ、スクイズポンプなどが挙げられる。
【0019】
砂杭造成用の中空管23は、公知の地盤改良機20に取り付けられるものである。地盤改良機20は、従来の締固め砂杭造成工法を実施する装置が挙げられる。締固め砂杭造成工法を実施する装置としては、例えば図1に示すようなリーダ24の上部に付設されるラックとピニオンを使用した強制昇降装置22による回転圧入施工により、中空管23の貫入及び引き抜きを行う静的締固め砂杭工法を実施する装置、振動する中空管を使用し、貫入、引き抜き及び打ち戻しを繰り返す打ち戻し式サンドコンパクション工法を実施する装置が挙げられる。
【0020】
ホッパー27は、中空管23の上部に設置されるもので、従来の締固め砂杭造成装置のホッパーを使用すればよい。また、ホッパー27は、不図示の混合機を内蔵している。混合機としては、パドルミキサー等が挙げられる。従来の締固め砂杭造成装置のホッパーを使用する場合、混合機を新たに取り付ければよい。また、混合機には、例えば混合機の回転抵抗値の上昇を測定する回転抵抗測定器が設置されたものがよい。ホッパー27内において砂杭材料流動化物と塑性化剤が混合し、砂杭材料流動化物が塑性化して砂杭材料に戻ると、回転抵抗が増加するため、回転抵抗測定器によって、塑性化の有無を判別できる。
【0021】
塑性化剤供給装置5としては、通常、塑性化剤貯留タンクと塑性化剤供給ポンプを有するものであり、適宜流量計などが設置される。塑性化剤供給装置5は、砂杭造成区域26の近傍又は離れた場所に設置するものであるが、好適には砂杭造成区域26の離れた場所に設置するものが、既設構造物の直下や直近に砂杭を造成する際の設置スペースを確保する必要がない点で好適である。
【0022】
砂杭造成装置50において、流動化物供給配管34の先端は、ホッパー27のいずれの部分に接続されてもよく、図1においてはホッパー27の上部開口である。また、塑性化剤供給配管35の先端は、ホッパー27のいずれの部分に接続されてもよく、図1においてはホッパー27の上部開口である。
【0023】
次ぎに、砂杭造成工法について説明する。本発明の砂杭造成工法は、地盤改良に用いる砂杭材料に流動化剤を加え、流動化させた地盤改良材と塑性化剤を中空管上部のホッパー内で混合して地盤改良材を塑性化し、塑性化した地盤改良材を中空管に通して砂杭を造成する工法である。砂杭材料流動化物は、砂杭材料及び流動化剤を含むものである。砂杭材料は、前記砂杭造成装置で記載されたものと同様のものである。
【0024】
流動化剤は、砂杭材料を流動し易くするか、あるいはパイプ輸送できるようにするものである。流動化剤が無配合の場合、配管内で目詰まりが生じ、パイプ輸送ができない。流動化剤としては、吸水性ポリマー及び高分子剤等が挙げられる。流動化剤は、これらの1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
吸水性ポリマーとしては、アクリル酸ナトリウム重合体部分架橋物、アクリル酸ナトリウム重合体架橋物が挙げられる。このうち、アクリル酸ナトリウム重合体部分架橋物が好ましい。
【0026】
高分子剤としては、ノニオン系高分子剤、アニオン系高分子剤、カチオン系高分子剤及び両性高分子剤が挙げられる。ノニオン系高分子剤としては、ポリアクリルアミドが挙げられる。アニオン系高分子剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸などの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合体が挙げられる。カチオン系高分子剤としては、アクリルアミドと、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート又は系N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートモノマーとの共重合体が挙げられる。高分子剤は、粉末状及び液体状のいずれのものも使用できる。高分子剤は、天然物又は合成物いずれも使用できるが、合成物とすることが、少ない配合量で流動化物を得ることができる点で好ましい。これらの高分子剤は、特公昭34−10644号公報などに記載の公知の方法で製造することができる。
【0027】
好ましい高分子剤は、分子量が100万以上、好ましくは200万以上、1000万以下であり、イオン化度が0〜100モル%のアクリル系高分子からなる分散粒子径が100μm以下の油中水型エマルジョン形態のものである。
【0028】
流動化剤の配合割合は、適宜決定されるが、通常、砂杭材料に対して、重量比配合で0.01〜10.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%である。流動化剤が水で希釈されている場合、別途の水を添加しなくとも砂杭材料を流動化させることができる。例えば、水で希釈された6.4%濃度の流動化剤の場合、配合割合は、砂杭材料に対して重量比配合で好ましくは1.6〜16重量%である。流動化剤の配合割合は少な過ぎると、砂杭材料が流動化せず、配管内において分離したり、目詰まりしたりして移送できなくなる。また、流動化剤の配合割合が多過ぎても、流動化効果は変わらず、却ってコストを上昇させることになる。砂杭材料流動化物は、上記必須成分の他、例えば水、流動化促進剤などが含まれていてもよい。
【0029】
圧送ポンプでパイプ輸送できる流動性とは、日本道路公団規格(JHS A 313−1992)で規定される「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」1.2シリンダー法におけるフロー値が100mm以上のものを言う。シリンダー法とは、以下の方法を言う。内径80mm、高さ80mmのシリンダーを水平な板の上に静置し、試料をシリンダーにあふれさせないように上端まで静かに入れ、試料の表面をシリンダーの上端に一致させる。その後、シリンダーを鉛直上方に引き上げ、試料が広がった径を測定し、フロー値mmとして表示する。
【0030】
また、砂杭材料流動化物は、「シリンダー法」以外に、手で把持し、体感で判断することもできる。すなわち、砂杭材料流動化物を手で把持した場合、圧密せず、分離せず、ドロドロ感があり、手に残らないものは好適な流動化物である。流動化は、図2(A)に示すように、流動化剤42が保水すると共に、砂41の粒子間距離を保持することで内部摩擦を低減するため、流動性が高まるものと思われる。
【0031】
塑性化剤としては、カチオン系合成高分子剤、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、水酸化アルミニウム等が挙げられる。塑性化剤は粉体又は液状のいずれも使用できる。カチオン系合成高分子剤としては、アンモニア、脂肪族アルキルモノ又はジアミン又はポリアミンとエピハロヒドリンの重縮合物が挙げられる。アルキルモノアミンとしては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミンが挙げられる。また、ジアミン又はポリアミンとしては、アミノエチル-メチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。また、エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
【0032】
塑性化剤の使用量は、 流動化物を塑性化できる配合量であり、適宜決定されるが、具体的には、流動化物中の砂杭材料に対して、重量比配合で0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%である。塑性化剤の添加が少な過ぎると、流動化物は塑性化せず、締固められず、設計通りの砂杭が造成できなくなる。また、塑性化剤の添加が多過ぎると、コストを上昇させてしまう。塑性化は、図2(B)に示すように、流動化剤42が塑性化剤と触れることで分子の結合が分解され保水していた水を吐き出すため、砂杭材料が元の粒度の性状に戻る。このように塑性化剤と流動化剤が反応して砂杭材料が元の粒度の正常に戻る塑性を化学的塑性化という。以下、塑性化は化学的塑性化を言う。
【0033】
塑性化の判断は、混合機に設置された回転抵抗測定器により判断することができる。塑性化は、砂杭を造成した後の砂杭の湿潤密度で判断されるが、実際には、土質試験で一次判定し、次いで、混合機を使用した実験室的模擬試験により混合機の回転抵抗値で二次判定する。土質試験は、日本工業規格(JIS A 1210:1999)で規定される「突固めによる土の締固め試験」の試料作成方法で作成した試料の湿潤密度の測定を行うものであり、流動化前の加水した砂(原砂)を締固めて得られた結果(湿潤密度)と比較して、湿潤密度で90%以上の回復率、好ましくは95%以上の回復率を示すものである。なお、塑性化できていない流動化砂は、突固めができず、ランマーがモールドの底まで届く。このことからでも塑性化を判断することができる。すなわち、流動化物を混合機で混合した際の回転抵抗値(R1)を測定し、次いで、土質試験で上記値に回復した塑性化物を混合機で混合した際の回転抵抗値(R2)を測定し、これらのデータを回転抵抗測定器に入力しておき、更に回転抵抗値がR1からR2に変化した際、信号を発するようにしておけばよい。
【0034】
次に、塑性化した地盤改良材で砂杭を造成する。この砂杭の造成工法としては、静的締固め砂杭造成工法や打ち戻し式サンドコンパクション工法などの公知の締固め砂杭造成工法と同じである。
【0035】
また、本発明の砂杭造成工法は、砂杭材料流動化プラントで製造された砂杭材料流動化物を、圧送ポンプにより配管を通して砂杭造成用施工機のホッパーに送るI工程と、塑性化剤供給装置で製造された塑性化剤を該ホッパーに送るII工程と、該砂杭材料流動化物と該塑性化剤を混合して、該ホッパー内で砂杭材料を塑性化するIII工程と、当該塑性化した砂杭材料を地中に締固めるIV工程と、を有する工法である。通常、I工程〜IV工程は、この順序で連続するが、I工程とII工程は、実施する順序が逆であってもよい。
【0036】
I工程の砂杭材料流動化プラントにおいては、予め予備実験により、砂杭材料及び流動化剤の配合割合を決定しておき、連続して圧送ポンプに供給する方法が好適である。このような砂杭材料流動化物は、パイプ輸送でホッパーに送られる。これにより、離れた場所からの移送が可能となり、既設構造物の近傍での設備を小型化できる。
【0037】
II工程の塑性化剤供給装置においては、予め予備実験により、砂杭材料に対する塑性化剤の配合割合を決定しておき、連続して圧送ポンプに供給する方法が好適である。このような塑性化剤は、パイプ輸送でホッパーに送られる。これにより、離れた場所からの移送が可能となり、既設構造物の近傍での設備を小型化できる。
【0038】
III工程においては、ホッパー内で砂杭材料流動化物と塑性化剤とを混合し、ホッパー内で砂杭材料流動化物を塑性化する。砂杭材料流動化物と塑性化剤との混合から砂杭材料流動化物の塑性化までの時間としては、塑性化剤の種類及び配合量により一概に決定できないが、施工時間などを考慮すると、概ね30秒〜2分である。III工程の実施後、ホッパー内には流動化前の砂杭材料が存在することになる。
【0039】
IV工程は、塑性化した砂杭材料を地中に締固める工程である。この工程は、前述の塑性化した地盤改良材で砂杭を造成する工程で説明されたものと同様であり、その説明を省略する。
【0040】
塑性化した砂杭材料は、分離水、流動化剤及び塑性化剤を含むものである。このうち、水は地中に持ち込まれるが、砂杭造成後は、地中において毛細管現象により蒸散する。また、流動化剤及び塑性化剤は砂杭中に存在するが、少量でもあり、砂杭の強度に悪影響することはなく、また環境を汚染することもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の締固め砂杭造成工法及び締固め砂杭造成装置によれば、既存の締固め砂杭造成装置を利用でき、また、砂杭材料を汎用の送液ポンプでホッパーに供給できるため、中空管上部への移動バケットが不要となり、砂杭造成装置が簡素となり施工コストを抑制できる。
【0042】
次ぎに、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0043】
参考例1
(砂杭材料流動化物の製造)
粒径0.07〜2.0mmの乾燥状態の川砂(砂杭材料)に、水を砂杭材料に対して重量比配合で30%加水し、アニオン化度10モル%の油中水型エマルジョン形態のノニオン系ポリアクリルアミド(濃度6.4%)「ハイモロックV−310」(ハイモ社製)(流動化剤A)を、砂杭材料に対して重量比配合で5.0%添加して、砂杭材料流動化物を製造した。なお、この配合量はノニオン系ポリアクリルアミド濃度は0.32重量%である。
【0044】
(砂杭材料流動化物の評価)
上記製造方法で得られた流動物の流動性を、シリンダー法及び把持試験により評価した。シリンダー法の結果を表1に示した。また、把持試験では、圧密せず、分離せず、ドロドロ感があり、手に残らないという良好な結果であった。
【0045】
参考例2
流動化剤Aの0.32重量%配合に代えて、表1の流動化剤Aを無配合とした以外は、参考例1と同様の方法で行った。また、参考例1と同様の方法で砂杭材料流動化物の評価を行った。シリンダー法の結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
参考例1のものは、シリンダー法におけるフロー値が100mm以上であり、流動性に優れたものであった。
【0048】
参考例3
参考例1の流動化物に対して、塑性化剤溶液を砂杭材料に対して9.075%(重量比)添加し、パドルミキサーを用い自転速度毎分284回転で混合して塑性化物Aを得た。塑性化剤溶液は、ポリ塩化アルミニウムを0.55%(重量比)と、カチオン系合成高分子剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリンの重縮合の4級塩)を0.275%(重量比)を、水に溶解したものである。この塑性化物について下記の土質試験を実施した。その結果を表2に示す。なお、流動化物と塑性化剤溶液の混合後、塑性化までの時間は30秒であった。塑性化はパドルミキサーの回転抵抗の変化を観察することで行った。
【0049】
参考例4
参考例1の流動化物について下記の土質試験を実施した。その結果を表2に示す。
すなわち、参考例1の流動化物は塑性化剤溶液を添加しないものである。
【0050】
参考例5
参考例1の砂杭材料について下記の土質試験を実施した。その結果を表2に示す。すなわち、参考例5は参考例1の砂杭材料は原砂である。
【0051】
(土質試験)
突固めによる土の締固め試験方法(JIS A1210)の試料作成方法で作成した試料の湿潤密度の測定を行う。締固め試験の試料作成方法は、円筒容器に入れた塑性化物(試料)を所定条件下で突き固め、圧密体を得るものである。この所定条件とは、例えばA法の場合、質量2.5kgのランマーを用い、各突き固め面から30cmの高さから10cmモールドで、突き固め層数3回、1層当たり突き固め回数25回の突き固めを行なう。突き固められた土の湿潤密度は、所定の計算式から求める。
【0052】
【表2】

【0053】
参考例3の塑性化物は、回復率が101%であり、砂杭材料として好適なものであった。このため、締固め砂杭造成装置のホッパー内でこのような砂杭材料流動化物の塑性化物を得ることで、従来の締固め砂杭造成を行い、締固め砂杭を造成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 砂杭材料流動化物供給手段
2 砂杭材料供給手段
3 流動化剤供給手段
4 圧送ポンプ
5 塑性化剤供給装置
10 砂杭材料流動化プラント
20 地盤改良機
23 砂杭造成用の中空管
24 リーダ
26 砂杭造成区域
27ホッパー
31 砂杭材料移送配管
32 流動化剤移送配管
33 砂杭材料流動化物移送配管
34 流動化物供給配管
35 塑性化剤供給配管
50 砂杭造成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂杭材料流動化プラントと、
砂杭造成用の中空管と、
該中空管上部の混合機内蔵のホッパーと、
該砂杭材料流動化プラントで製造された該砂杭材料流動化物を該ホッパーに送る圧送ポンプと、
該圧送ポンプと該ホッパーとを接続する流動化物供給配管と、
塑性化剤供給装置と該ホッパーとを接続する塑性化剤供給配管と、
を備えることを特徴とする締固め砂杭造成装置。
【請求項2】
地盤改良に用いる砂杭材料に流動化剤を加え、流動化させた地盤改良材と塑性化剤を中空管上部のホッパー内で混合して地盤改良材を塑性化し、塑性化した地盤改良材を中空管に通して砂杭を造成することを特徴とする締固め砂杭造成工法。
【請求項3】
砂杭材料流動化プラントで製造された砂杭材料流動化物を、圧送ポンプにより配管を通して砂杭造成用施工機のホッパーに送るI工程と、
塑性化剤供給装置で製造された塑性化剤を該ホッパーに送るII工程と、
該砂杭材料流動化物と該塑性化剤を混合して、該ホッパー内で砂杭材料流動化物を塑性化するIII工程と、
当該塑性化した砂杭材料を地中に締固めるIV工程と、を有することを特徴とする締固め砂杭造成工法。
【請求項4】
前記砂杭材料流動化物は、砂杭材料及び流動化剤を含むものであることを特徴とする請求項2又は3記載の締固め砂杭造成工法。

【図1】
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【図2】
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